JP4617547B2 - プライマー組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプライマー組成物に関し、より詳しくは、各種の被着体との接着性に優れ、長期間貯蔵後にも接着性の低下が抑制されるプライマー組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、自動車の窓ガラスの接着には、低温、高温、高湿度等の様々な条件下において、優れた初期接着性、高い接着強度及び接着耐久性が要求される。さらに、窓ガラス接着後には、自動車の窓ガラス廻りが外気に直接触れ、太陽光線の直射を受けるので、耐候性(光に対する耐候性、すなわち耐光性を含む)に優れることが極めて重要である。
ガラスなどの非孔質の基質を接着するのに有用なシーラントとしては、ウレタン系シーラントが代表的である。ところが、ウレタン系シーラントを用いてガラス基質を金属に接着する場合(自動車製造において窓ガラスを組込む場合など)、接着した基質の重ね剪断強さが所望の安全目標あるいは構造目標に及ばないことがある。そのため、ほとんどの車体組立作業においてフロントガラスやリアウィンドウを接着する場合には、シーラントの塗布に先立って、プライマーの塗布が一般的に行われている。
【0003】
プライマーとしては、従来よりポリエステルポリウレタンやアクリル樹脂のようなバインダー成分に、シランカップリング剤などの接着付与剤、ポリイソシアネート、カーボンブラック、触媒等を配合したものが使用されている。
接着付与剤としては、例えば、特開平5−222342号公報に開示される、有機ポリイソシアネートと、アミノシラン化合物またはメルカプトシラン化合物とを反応させてなるイソシアネート基含有シラン化合物が挙げられる。該公報によればこの化合物は、有機ポリイソシアネートのNCO基を、アミノ基またはメルカプト基に対して1/0.20〜1/0.95の割合で反応させてなるものであり、この化合物を含むプライマー組成物は、各種の被着体に対する初期接着性が高く、また、耐久性に優れていることが報告されている。
【0004】
ところが、有機ポリイソシアネートのNCO基と、メルカプトシランのメルカプト基あるいはアミノシランのアミノ基とを反応させることによりチオウレタン基、ウレア基が生成され、それらに含まれる活性水素と、該化合物の分子内に存在する未反応のNCO基との反応性が高いため、長期間貯蔵すると該化合物の活性が損われるという問題があり、硬化性を高めるために添加する有機錫化合物や3級アミンなどの触媒との併用が困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、各種被着体に対する接着性が高く、しかも、長期間貯蔵してもその効果が低下することのないプライマー用接着付与剤を提供すること、並びに、該接着付与剤を用いた、接着性および貯蔵安定性に優れたプライマー組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、プライマー用接着付与剤に使用しうる化合物として、ポリイソシアネートのNCO基と、アミノシランのアミノ基とを反応させることによりウレア基が生成される場合に、アミノシランの有する該アミノ基が置換基としてフェニル基を有している場合に、生成したウレア基中の活性水素の反応性が抑制され、長期間貯蔵後にも接着性が損われないことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、ポリイソシアネートとフェニル基あるいはその誘導体が窒素原子に直接結合した二級アミノ基を有するシランカップリング剤との反応生成物であって、NCO基と加水分解性アルコキシシリル基とをそれぞれ分子内に平均して1つ以上有するシラン化合物であるプライマー用接着付与剤を提供する。
ここで、前記ポリイソシアネートが脂肪族または脂環式ポリイソシアネートであることが好ましい。
また、前記プライマー用接着付与剤において、前記シラン化合物をNCO/NH=3/1〜3/2の反応比で反応させてなることが好ましい。
さらに、本発明は、前記プライマー用接着付与剤とフィルム形成樹脂とを含有するプライマー組成物を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のプライマー用接着付与剤は、ポリイソシアネートとフェニル基あるいはその誘導体が窒素原子に直接結合した二級アミノ基を有するシランカップリング剤との反応生成物であり、NCO基と加水分解性アルコキシシリル基をそれぞれ分子内に平均して1つ以上有するシラン化合物である。
【0009】
本発明のポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、具体的には、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、またはリジン骨格を有するリジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート、H6 XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)、およびこれらのポリイソシアネートのカルボジイミド変性物、またはこれらのイソシアヌレート変性物等が挙げられる。これらは1種でも2種以上を混合して用いることもできる。
これらのうちでも、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、H6 XDIが得られる反応生成物の接着付与効果が高いため好ましい。
ここで、リジンジイソシアネートおよびリジントリイソシアネートは、下記式に示される化合物をいう。(式中、Rは、炭素数1〜8の分岐していてもよいアルキレン基を表し、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基などが好ましく挙げられる。)
【0010】
【化1】
なお、本明細書において、脂肪族ポリイソシアネートとは、NCO基が脂肪族性炭素原子に結合しているものをいい、XDIなどの化合物中にベンゼン環を有するものも含まれることとする。
【0011】
本発明のフェニル基あるいはその誘導体が窒素原子に直接結合した二級アミノ基を有するシランカップリング剤は、下記式(1)に示す構造を有する化合物である。
【化2】
式(1)において、R1 、R2 およびR3 は、それぞれ独立して加水分解性を有する基またはアルキル基を示すが、これらのうち少なくとも1つは加水分解性を有する基である。シリル基に加水分解性を有する基が2つまたは3つ結合していると、本発明のシラン化合物の接着付与効果がより高まるため好ましく、R1 、R2 およびR3 がすべて加水分解性を有する基であるのがさらに好ましい。R1 、R2 およびR3 は、用途によって、加水分解速度や接着性発現時間を調整することができる。加水分解性を有する基としては、具体的には、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。これらのうちでも加水分解性の穏やかなアルコキシ基が好ましく、特に、メトキシ基が入手容易であるので好ましい。
【0012】
また、アルキル基は、直鎖状または分枝鎖状の炭素数1〜8アルキル基であるのが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基などが挙げられ、これらの基が二重結合または三重結合を含んでいてもよい。これらのうちでも、メチル基がより好ましい。
【0013】
R4 は炭素数1〜12のアルキレン基を表す。好ましくは、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基などが挙げられ、接着性が優れる点からトリメチレン基がより好ましい。
【0014】
また、二級アミノ基の窒素原子に結合したフェニル基は、1または2以上の置換基を有するフェニル誘導体であってもよい。置換基としては、好ましくは、メチル基、エチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子からなる基などが挙げられる。
【0015】
このような構造を有する本発明のシランカップリング剤としては、例えばγ−アニリノプロピルトリメトキシシランなどが好ましく挙げられる。
【0016】
本発明のシラン化合物は、上記ポリイソシアネートの有するNCO基と、上記シランカップリング剤の有する二級アミノ基のNH基とが反応することにより得られる。以下に、本発明のシラン化合物の反応式の一例を挙げて説明する。
【0017】
【化3】
上記式で示されるように、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのポリイソシアネートと、γ−アニリノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤とを、酢酸エチルなどの溶媒中、あるいは無溶媒で混合し、約1〜3時間撹拌して製造される。反応温度は常温で行うのが好ましい。この際、触媒は特に必要ではないが、スタナスオクトエートなどの触媒の存在下で反応させると、反応時間が短縮できる。
【0018】
この反応におけるポリイソシアネートとシランカップリング剤の反応比は、ポリイソシアネートの有するNCO基が、シランカップリング剤の有するNH基に対し、NCO/NH=3/1〜3/2の割合であるのが好ましい。この反応比で反応させてなる本発明のシラン化合物は、NCO基と加水分解性アルコキシシリル基をそれぞれ分子内に平均して1つ以上有しており、分子内にこれらの反応性官能基を併有することにより接着付与効果が高められると考えられる。
また、この反応によりウレア基が生成され、従来ではこのウレア基の活性水素の反応性が高いために、長期間活性を損わずに貯蔵することが困難であった。ところが、本発明のシラン化合物は窒素原子にフェニル基またはその誘導体が直接結合するため、その立体障害と電子吸引効果により、生成されたウレア基の活性水素の反応性が抑制され、長期間貯蔵しても活性が損われず、高い接着性を付与することができ、プライマー用接着付与剤として好適に使用できる。
【0019】
このようにして得られる本発明のシラン化合物は、製造された後、反応溶媒を留去し精製してプライマー組成物に配合してもよいが、精製工程を省き、反応溶媒ごと使用しても接着付与効果に差異はなく、むしろ作業性がよい。
【0020】
本発明のシラン化合物と混合するフィルム形成樹脂は、シラン化合物の分子内に存在するNCO基と反応性が高い活性水素を有するものでなければ特に限定されず、公知のウレタン系、アクリル系、塩化ビニル系、フッ素系などのフィルム形成樹脂を使用することができる。
【0021】
ウレタン系のフィルム形成樹脂は、脂肪族系、脂環族系、または芳香族系のポリイソシアネートと、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、ポリアミン類などの活性水素を有する化合物とを反応させて得られる。
ポリエーテルポリオールは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフランまたはこれらの混合物等のアルキレンオキサイドを、例えば、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、エチレンジアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン等のアミン類、またはレゾルシン、ビスフェノールなどの多価フェノール類等の2個以上の活性水素を有する化合物に付加重合させて得られる。
【0022】
ポリエステルポリオールは、上述の多価アルコール類と多塩基性カルボン酸またはヒドロキシカルボン酸との縮合物や、ラクトンの重合物などが挙げられる。
多塩基性カルボン酸としては、アジピン酸、グルタール酸、フマル酸、マレイン酸、ピロメリット酸等が挙げられる。また、ヒドロキシカルボン酸と多価アルコール類との縮合物としては、ヒマシ油、ヒマシ油とエチレングリコールとの反応生成物、ヒマシ油とプロピレングリコールとの反応生成物等を使用することもできる。ラクトンの重合物としては、プロピオンラクトン、カプロラクトン、バレロラクトン等を適当な重合開始剤で開環重合させたものが挙げられる。
【0023】
ポリマーポリオールは、例えば、上記ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールに、アクリロニトリル、スチレン、メチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させたものや、1,2−もしくは1,4−ポリブタジエンポリオール、またはこれらの水素添加物をいう。
これらのポリヒドロキシ化合物は、1種でも2種以上を混合して用いることもできる。
ポリイソシアネートは、シラン化合物で例示した化合物と同じものを使用でき、これらは1種でも2種以上を混合して用いることもできる。
ウレタン系のフィルム形成樹脂の製造方法は特に限定がなく、通常用いられる方法で製造される。
【0024】
アクリル系のフィルム形成樹脂は、1種または2種以上のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルなどの非官能性モノマーと、必要に応じて、アルコキシシリル基などの官能基を有するモノマーとを共重合させて得られる。
非官能性モノマーとしては特に限定はなく、公知のものを使用でき、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルなどが挙げられる。
【0025】
官能性モノマーも特に限定されず、公知のものを使用でき、例えば、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピルなどが挙げられる。
また、ジメタクリル酸エチレン、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレンなどの分子内に2個以上の重合性の二重結合を有するモノマーを使用することもでき、これらのモノマーを非官能性モノマーと共重合させることにより架橋構造を有するポリマーを製造することもできる。また、本発明の目的を損なわない範囲でその他のビニルモノマーやラジカル重合性のビニルモノマーと共重合させてもよい。
アクリル系のフィルム形成樹脂の製造方法は特に限定されず、例えば、これらのモノマーを過酸化物またはアゾ化合物などを重合開始剤として、通常用いられる方法で製造される。
【0026】
塩化ビニル系のフィルム形成樹脂としては、例えば、塩ビ溶液系、塩ビゾル系、塩ビラミネート系のフィルム形成樹脂が挙げられる。また、フッ素系のフィルム形成樹脂としては、例えば、二フッ化ポリエチレンを用いるPVdFタイプと、フルオロオレフィンとアルキルビニルエーテルとの交互共重合体を用いるフルオロオレフィンアルキルビニルエーテル共重合タイプのフィルム形成樹脂が挙げられる。
【0027】
本発明のプライマー組成物において、フィルム形成樹脂は、シラン化合物100重量部に対し、5〜150重量部含むのが好ましく、10〜100重量部含むのがより好ましい。
【0028】
本発明のプライマー組成物中には、5〜95重量%の有機溶媒が含まれる。有機溶媒は、上記フィルム形成樹脂およびシラン化合物に対して不活性であり、適度な揮発性を有するものが好ましい。また、シラン化合物を反応溶媒ごと混合する場合には、該反応溶媒との相溶性がよいものを選択し、組成物全体に含まれる有機溶媒の配合量が上記範囲となるよう調整する。本発明に用いられる有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン、ジメチルアセトアミド、アセトン、n−ヘキサン、メチレンクロリド、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサンなどが挙げられ、これらの混合物であってもよい。これらのうちでも、酢酸エチル、メチルエチルケトン、またはこれらの混合物が好ましい。なお、有機溶媒は使用する際に、十分に乾燥し、または脱水してから混合するのが好ましい。
【0029】
また、本発明のプライマー組成物は、カーボンブラックを含むことができる。カーボンブラックは紫外線や可視光線を遮蔽もしくは吸収するため、カーボンブラックを配合することにより耐候性を付与できる。本発明に用いるカーボンブラックとしては、特に限定はなく、米国材料試験協会規格における、N110、N220、N330、N550、N770等あるいはこれらの混合物が使用可能である。カーボンブラックの配合量は、シラン化合物100重量部に対し、5〜300重量部が好ましく、20〜200重量部がより好ましい。この範囲であると、フィルム形成樹脂との相溶性もよく、組成物におけるカーボンブラックの分散性が確保できる。
【0030】
また、本発明のプライマー組成物は、硬化触媒を含むことができる。従来では、硬化性を上げるために硬化触媒を配合すると、貯蔵中に接着性が低下する問題があったが、本発明のシラン化合物を用いれば、そのような問題も解消され、長期間貯蔵後にも接着性が損われない。本発明に用いる硬化触媒は、通常用いられるものであれば特に限定されず、例えばトリエチレンジアミン、ペンタメチレンジエチレントリアミン、モルフォリン系アミン、トリエチルアミン等のアミン系触媒、ジラウリル酸−ジ−n−オクチル錫、ジラウリル酸ジブチル錫、スタナスオクトエート等の錫系触媒などが挙げられ、シラン化合物100重量部に対し、0.005〜0.5重量部含むのが好ましい。
【0031】
本発明のプライマー組成物は、貯蔵安定性を一層向上させる目的で吸水剤を使用してもよい。吸水剤としては、合成あるいは天然のゼオライトなどが挙げられる。例えば、合成あるいは天然のゼオライト等、ゼオライト系の吸水剤が好ましく挙げられ、市販品では、バイエル社製のバイリットLパウダー、ユニオン・カーバイド社製のモレキュラーシーブ、東ソー社製のゼオラムなどを挙げることができる。なお、吸水剤は、本発明プライマーに溶解するものでもしないものでも良く、溶解しないものの場合は、プライマー組成物に共存させればよい。
【0032】
そのほか、本発明のプライマー組成物には、耐候性、作業性をさらに向上させる目的で、各種の添加剤を配合してもよい。例えば、ランプブラック、チタンホワイト、ベンガラ、チタンイエロー、亜鉛華、鉛丹、コバルトブルー、鉄黒、アルミ粉等などの無機顔料、ネオザボンブラック RE、ネオブラック RE、オラゾールブラック CN、オラゾールブラック Ba(いずれもチバ・ガイギー社製)、スピロンブルー2BH(保土ヶ谷化学社製)などの有機染顔料、サイアソルブ(Cyasorb UV24Light Absorber、アメリカン・サイアナミド社製)、ウビヌル(Uvinul D-49 、D-50、N-35、N-539 、ジェネラル・アニリン社製)などの紫外線吸収剤等を配合すると、紫外線や可視光線を遮蔽、若しくは吸収し、耐光性の向上に有効である。さらに、ガラス粉末、クレー、粉末シリカゲル、極微粉状ケイ酸、モレキュラーシーブス(これは吸水能をも有する)などの充填剤、増粘剤、ブチルベンジルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、塩化パラフィンなどのプライマー皮膜に柔軟性を与え、接着強度を向上させる可塑剤を配合してもよい。
【0033】
本発明のプライマー組成物の製造方法としては特に限定はなく、例えば、反応容器中で、フィルム形成樹脂、シラン化合物、カーボンブラック、その他の添加剤を適宜有機溶媒に溶解し、ボールミル等の混合装置を用いて十分に混練し、均一に分散させて調製できる。
【0034】
以上のようにして得られる本発明のプライマー組成物は、長期間貯蔵後にも優れた接着性を保持しており、ガラス、アルミニウム板、塗装鋼板、またはセラミックなどの各種の被着体との接着性も高い。このような特性を有する組成物は、特に自動車のガラス固定用ウレタン系シーラントの使用に際し、非孔質な基体の表面に塗布されるプライマーとして好適である。
【0035】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
<シラン化合物S01〜S04の合成>
▲1▼シラン化合物S01の合成
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI、住友バイエルウレタン社製)168g、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー社製)255gを、酢酸エチル106gに溶解し、スタナスオクトエートの存在下、常温で、約3時間撹拌した。反応生成物に酢酸エチルをさらに加えて濃度50.0重量%に調製した。
▲2▼シラン化合物S02の合成
リジントリイソシアネート(前記式中、Rがエチレン基(−(CH2)2 −)である化合物、NCO%:46.3%、LTI、協和発酵社製)272g、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン255gを、酢酸エチル132gに溶解し、同様に反応させてシラン化合物S02の濃度50.0重量%溶液を得た。(ここで、NCO%は、リジントリイソシアネート中のNCO基の重量%を表す。)
▲3▼シラン化合物S03の合成
HDI168g、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー社製)196gを、酢酸エチル91gに溶解し、同様に反応させてシラン化合物S03の濃度50.0重量%溶液を得た。
▲4▼シラン化合物S04の合成
HDI168g、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー社製)179gを、酢酸エチル87gに溶解し、同様に反応させてシラン化合物S03の濃度50.0重量%溶液を得た。
シラン化合物S01〜S04における、NCO基とNH基またはSH基との反応比を第1表に示す。
【0036】
【0037】
実施例1〜3
シラン化合物S01またはS02、アクリル樹脂(ゼムラックYC3623、鐘淵化学工業社製)、カーボンブラック、スタナスオクトエート、酢酸エチルを第2表に示す配合で混合し、ボールミルを用いて十分に混練し、プライマー組成物を調製した。
【0038】
比較例1、2
シラン化合物S01またはS02に代えて、窒素原子にフェニル基が結合していないシラン化合物S03またはS04を用いたことを除いては、実施例1〜3と同様にしてプライマー組成物を調製した。
実施例および比較例で得られたプライマー組成物について、以下に示す接着試験を行い、接着性を評価した。
【0039】
<接着試験>
プライマー組成物を調製後、速やかに、塗布面積12cm×2.5cmとしてシリコンハードコートされた有機ガラス(表中、SiH/Cと記す)、または表面処理を施していないフロートガラスに塗布し、その上にウレタンシーラント(横浜ゴム社製WS−95)を圧着させて試験片Aとした。
また、プライマー組成物を調製後、60℃で2週間、密閉状態で保存した組成物を用いて、試験片Aと同様にして試験片Bを作製した。
【0040】
試験例1:常温接着性
作製した試験片A、Bを、20℃、湿度(RH)65%にて3日間または7日間保存した後ナイフカット試験を行い、接着界面の状態を観察した。
接着性は、組成物が凝集破壊した面積の塗布面積に対する割合(%)で評価した。CF100は、塗布面積全てで組成物が凝集破壊し、組成物と被着体表面の界面での剥離がなかったことを示す。
【0041】
試験例2:耐水接着性
作製した試験片A、Bを、20℃、湿度(RH)65%にて7日間保存し、続いて、ウィンドウォッシャー液に水を加えて50重量%希釈液とし、これを20℃で168時間(7日間)浸漬した後、試験例1と同様にして接着性を評価した。
【0042】
試験例3:低温接着性
作製した試験片A、Bを、5℃、湿度(RH)50%にて3日間保存した後に試験例1と同様に接着性を評価した。
試験例1〜3の評価結果を第2表に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【発明の効果】
第2表に示されるように、本発明のプライマー組成物は、フロートガラス、アルミニウム板に対して通常接着性、耐水性および低温接着性すべてに優れており、これらの特性は2週間貯蔵後にも損われないことがわかる(実施例1〜3)。
一方、調製直後には同様に優れた接着性を示した比較例1または2の組成物は、長期間保存した場合に接着性が著しく低下した。これらの結果より、本発明のシラン化合物の接着付与効果が貯蔵後にも保持されるという点で、非常に優れていることがわかる。
Claims (3)
- ポリイソシアネートとフェニル基あるいはその誘導体が窒素原子に直接結合した二級アミノ基を有するシランカップリング剤との反応生成物であって、NCO基と加水分解性アルコキシシリル基とをそれぞれ分子内に平均して1つ以上有するシラン化合物とフィルム形成樹脂とを含有し、
前記フィルム形成樹脂の含有量が、前記シラン化合物100重量部に対して5〜150重量部である、プライマー組成物。 - 前記ポリイソシアネートが脂肪族または脂環式ポリイソシアネートである請求項1に記載のプライマー組成物。
- 前記シラン化合物をNCO/NH=3/1〜3/2の反応比で反応させてなる請求項1または2に記載のプライマー組成物。
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