以下において、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
[第1実施形態]
(通信システムの構成)
以下において、第1実施形態に係る通信システムの構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。
図1に示すように、通信システムは、無線端末10と、通信端末20と、ホームエージェント30と、第1ネットワーク100と、第2ネットワーク200と、基幹ネットワーク300とを有する。
第1実施形態では、第1ネットワーク100の遅延時間は、第2ネットワーク200の遅延時間よりも大きい。無線端末10は、第1ネットワーク100又は第2ネットワーク200を介して通信端末20と通信を行う。
なお、ネットワークの遅延時間は、通信端末20(相手方端末)からのパケットがネットワークに滞留する時間(滞留時間)だけではなくて、滞留時間のばらつき(ジッタ)を含む概念である。滞留時間は、ジッタと相関を有する。一般的には、滞留時間が長いほど、ジッタが大きくなる。
第1実施形態では、第1ネットワーク100から第2ネットワーク200へのハンドオーバを無線端末10が行うケースについて主として説明する。また、通信端末20から無線端末10へのパケットの流れについて主として説明する。
無線端末10は、携帯電話、PDA、ノート型PCなどの端末である。また、無線端末10は、モバイルルータなどの端末であってもよい。上述したように、無線端末10は、第1ネットワーク100又は第2ネットワーク200を介して通信端末20と通信を行う端末(MN;Mobile Node)である。すなわち、無線端末10は、第1ネットワーク100又は第2ネットワーク200を利用して通信端末20と通信を行う。無線端末10は、所定間隔(フレーム周期)で通信端末20から送信されたパケットを受信する。ここで、無線端末10は、第1ネットワーク100から第2ネットワーク200へのハンドオーバを行う主体である。無線端末10の詳細については後述する(図2を参照)。
通信端末20は、携帯電話、PDA、ノート型PC、デスクトップ型PCなどの端末である。通信端末20は、無線端末10と通信を行う通信端末(CN;Corresponding Node)である。通信端末20は、所定間隔(フレーム周期)で無線端末10にパケットを送信する。
通信端末20は、基幹ネットワーク300と無線で接続する端末であってもよく、基幹ネットワーク300と有線で接続する端末であってもよい。第1実施形態では、通信端末20が無線端末であるケースについて例示する。図1では示していないが、通信端末20は、複数の無線ネットワークを介して基幹ネットワーク300に接続される。通信端末20の詳細については後述する(図3を参照)。
ホームエージェント30(HA)は、基幹ネットワーク300に接続されている。ホームエージェント30は、無線端末10の気付アドレス(CoA;Care of Address)を管理する。
第1ネットワーク100及び第2ネットワーク200は、無線通信方式(物理レイヤやリンクレイヤの構成)が異なる無線ネットワークである。例えば、第1ネットワーク100は、CDMA2000に準拠する「1xEV−DO」が採用された無線ネットワークである。第2ネットワーク200は、IEEE802.16eに準拠する「WiMAX」が採用された無線ネットワークである。
但し、第1ネットワーク100及び第2ネットワーク200は、これらに限定されるものではなく、IEEE802.11に準拠する「WLAN」が採用されたネットワークであってもよい。
基幹ネットワーク300は、第1ネットワーク100及び第2ネットワーク200の上位ネットワークである。例えば、基幹ネットワーク300は、IP(Internet Protocol)に準拠するインターネットネットワークである。第1実施形態では、基幹ネットワーク300に通信端末20及びホームエージェント30が接続されている。
(無線端末の構成)
以下において、第1実施形態に係る無線端末(MN)の構成について、図面を参照しながら説明する。図2は、第1実施形態に係る無線端末10を示すブロック図である。
図2に示すように、無線端末10は、複数の無線通信部11(無線通信部11A〜無線通信部11B)と、複数のリンク制御部12(リンク制御部12A〜リンク制御部12B)と、MIH機能部13と、MIHユーザ14と、バッファ15と、アプリケーション処理部16とを有する。
無線通信部11は、上位レイヤ(例えば、MIH機能部13やアプリケーション処理部16)からの指示に応じて、物理レイヤにおける物理的な無線接続を各ネットワークと設定する。無線通信部11は、通信端末20から所定間隔でパケットを受信する。
具体的には、無線通信部11Aは、「1xEV−DO」に対応する物理的な無線接続を第1ネットワーク100と設定する。無線通信部11Bは、「WiMAX」に対応する物理的な無線接続を第2ネットワーク200と設定する。
リンク制御部12は、上位レイヤ(例えば、MIH機能部13やアプリケーション処理部16)からの指示に応じて、リンクレイヤにおける無線リンクを各ネットワークと設定する。リンク制御部12は、各ネットワークと設定された無線リンクにおいて、各種無線パラメータ(Link Parameter)を監視する。
具体的には、リンク制御部12Aは、無線通信部11Aとのインターフェース(デバイスドライバ)機能を有しており、「1xEV−DO」に対応する無線リンクを第1ネットワーク100と設定する。リンク制御部12Bは、無線通信部11Bとのインターフェース(デバイスドライバ)機能を有しており、「WiMAX」に対応する無線リンクを第2ネットワーク200と設定する。
MIH機能部13は、MIH機能部13よりも上位レイヤとして機能するMIHユーザ14やアプリケーション処理部16からの指示に応じて、ネットワーク間のハンドオーバを制御する。MIH機能部13は、物理レイヤの構成に依存しないメディア非依存ハンドオーバ機能(Media Independent Hadover Function)であり、IEEE802.21において規定されている。
ここで、MIH機能部13は、自端末が接続しているネットワークにおいてハンドオーバを行う各種条件を管理している。具体的には、MIH機能部13は、無線パラメータの種類、第1閾値(Initiate Action Threshold)と、第2閾値(Execute Action Threshold)と、第1判定用論理式と、第2判定用論理式とをネットワーク毎に管理している。
無線パラメータの種類は、自端末が接続しているネットワークと設定する無線リンクにおいて監視すべき無線パラメータを示している。
例えば、自端末が接続しているネットワークが第1ネットワーク100である場合には、第1ネットワーク100と設定する無線リンクにおいて、以下に示す無線パラメータがリンク制御部12Aによって監視される。
(a)信号対干渉波雑音比(SINR)
(b)受信電界強度(RSSI)
(c)DRC(Data Rate Control)
(d)送信電力(Tx_Power)
(e)無線基地局が無線端末から送信されたDRCを正常に受信する割合(DRC_Lock)
自端末が接続しているネットワークが第2ネットワーク200である場合には、第2ネットワーク200と設定する無線リンクにおいて、以下に示す無線パラメータがリンク制御部12Bによって監視される。
(a)信号対干渉波雑音比(SINR)
(b)受信電界強度(RSSI)
(c)DL−MAP受信成功率(Successful Ratio of DL−MAP Receive)
(d)伝送レート(Rate)
(e)上り変調クラス(Uplink Modulation Class)
(f)送信電力(Tx_Power)
第1閾値(Initiate Action Threshold)は、ハンドオーバの準備要求(Initiation Action)を行うか否かを判定するために、各無線パラメータに設定された閾値である。ここで、ハンドオーバの準備要求(Initiation Action)とは、一のネットワークと無線リンクを設定しているケースにおいて、他のネットワークと無線リンクを設定する動作である。
例えば、自端末が接続しているネットワークが第1ネットワーク100である場合には、信号対干渉波雑音比(SINR)に設定された閾値は“0dB”である。他の無線パラメータについても同様に、順に“−80dBm”、“6”、“15dBm”、“0.8”が設定されている。
自端末が接続しているネットワークが第2ネットワーク200である場合には、搬送波対干渉波比(CIR)に設定された閾値は“3dB”である。他の無線パラメータについても同様に、順に“−75dBm”、“0.1”、“500kbps”が設定されている。
第2閾値(Execute Action Threshold)は、ハンドオーバの実行要求(Execute Action)を行うか否かを判定するために、各無線パラメータに設定された閾値である。ここで、ハンドオーバの実行要求(Execute Action)とは、一のネットワーク及び他のネットワークと無線リンクを設定しているケースにおいて、自端末が接続するネットワークの切り替え要求動作(BU;Binding Update、RR;Registration Requestなど)である。なお、第2閾値(Execute Action Threshold)としては、第1閾値(Initiate Action Threshold)よりも無線環境が悪化した際における値が設定される。
例えば、自端末が接続しているネットワークが第1ネットワーク100である場合には、信号対干渉波雑音比(SINR)に設定された閾値は“−5dB”である。他の無線パラメータについても同様に、順に“−90dBm”、“4”、“23dBm”、“0.8”が設定されている。
自端末が接続しているネットワークが第2ネットワーク200である場合には、信号対干渉波雑音比(SINR)に設定された閾値は“−2dB”である。他の無線パラメータについても同様に、順に“−80dBm”、“0.8”、“200kbps”、“QPSK 1/2”、“23dBm”が設定されている。
第1判定用論理式は、ハンドオーバの準備要求(Initiation Action)を行う条件(第1条件)である。具体的には、第1判定用論理式は、自端末が接続しているネットワークと設定する無線リンクにおいて複数の無線パラメータが満たすべき閾値の組み合わせを示している。
例えば、自端末が接続しているネットワークが第1ネットワーク100である場合には、下記条件のいずれかが満たされた場合に、ハンドオーバの準備要求(Initiation Action)が行われる。
(a)SINR、RSSI及びDRCの全てが上述した第1閾値よりも悪化する
(b)Tx_Power及びDRC_Lockの全てが上述した第1閾値よりも悪化する
自端末が接続しているネットワークが第2ネットワーク200である場合には、下記条件のいずれかが満たされた場合に、ハンドオーバの準備要求(Initiation Action)が行われる。
(a)SINR、RSSI及びSuccessful ratio of DL−MAP Receiveの全てが上述した第1閾値よりも悪化する
(b)Tx_Power及び上り変調クラスの全てが上述した第1閾値よりも悪化(低下)する
第2判定用論理式は、ハンドオーバの実行要求(Execute Action)を行う条件(第2条件)である。具体的には、第2判定用論理式は、自端末が接続しているネットワークと設定する無線リンクにおいて複数の無線パラメータが満たすべき閾値の組み合わせを示している。
なお、第1実施形態では、無線パラメータが満たすべき閾値の組み合わせは、第1判定用論理式と第2判定用論理式とで同じであるが、これに限定されるものではない。すなわち、無線パラメータが満たすべき閾値の組み合わせは、第1判定用論理式と第2判定用論理式とで異なっていてもよい。
MIHユーザ14は、MIHユーザ14よりも上位レイヤとして機能するアプリケーション処理部16からの指示に応じて、ネットワーク間における移動性を管理する移動性管理部である。MIHユーザ14は、MIH機能部13よりも上位レイヤとして機能する。
バッファ15は、第1ネットワーク100又は第2ネットワーク200を介して受信するパケットを一時的に蓄積する。
ここで、バッファ15には、ネットワークの遅延時間に応じて、適切なパケット量が定められている。適切なパケット量は、パケットの不足を抑制する観点及びリアルタイム性を維持する観点で定められる。ネットワークの遅延時間が大きいほど、最適なパケット量が大きい。
例えば、第1ネットワーク100を介して自端末がパケットを受信しているケースでは、バッファ15の最適なパケット量(以下、第1最適パケット量)は、第1ネットワーク100の遅延時間に応じて定められる。同様に、第2ネットワーク200を介して自端末がパケットを受信しているケースでは、バッファ15の最適なパケット量(以下、第2最適パケット量)は、第2ネットワーク200の遅延時間に応じて定められる。
上述したように、第1ネットワーク100の遅延時間は第2ネットワーク200の遅延時間よりも大きい。従って、第1最適パケット量は、第2最適パケット量よりも大きい。
アプリケーション処理部16は、MIHユーザ14よりも上位レイヤとして機能し、各種アプリケーションなどを処理する。例えば、アプリケーション処理部16は、バッファ15に蓄積されたパケットを所定速度で再生する。所定速度は、パケットを受信する所定間隔に応じて定められる。
ここで、アプリケーション処理部16は、バッファ15に蓄積されたバッファの量を最適なパケット量に維持するように、パケットの再生速度を調整する適応的バッファ制御(以下、AJB(Adaptive Jitter Buffer)制御)を行う。
例えば、第1ネットワーク100を介して自端末がパケットを受信しているケースでは、アプリケーション処理部16は、バッファ15に蓄積されたバッファの量を第1最適パケット量に維持するように、パケットの再生速度を調整する。同様に、第2ネットワーク200を介して自端末がパケットを受信しているケースでは、アプリケーション処理部16は、バッファ15に蓄積されたバッファの量を第2最適パケット量に維持するように、パケットの再生速度を調整する。
アプリケーション処理部16は、第1ネットワーク100から第2ネットワーク200へのハンドオーバの準備要求の開始に応じて、AJB制御を停止する。アプリケーション処理部16は、第1ネットワーク100から第2ネットワーク200へのハンドオーバの完了後において、バッファ15に蓄積されたバッファの量が第2最適パケット量となった場合に、AJB制御を再開する。
ここで、アプリケーション処理部16は、AJB制御の停止からAJB制御の再開までの間においても、AJB制御とは別に、パケットの再生速度を制御することに留意すべきである。具体的には、アプリケーション処理部16は、第1ネットワーク100から第2ネットワーク200へのハンドオーバの準備要求の開始に応じて、パケットの再生速度を所定速度よりも速い速度に変更する。ここで、パケットの再生速度の上昇幅には上限が設けられていることが好ましい。例えば、パケットの再生速度の上昇幅は、所定速度の10〜15%であることが好ましい。このようなパケットの再生速度の制御の詳細については後述する(図4〜図6を参照)。
(通信端末の構成)
以下において、第1実施形態に係る通信端末(相手方端末:CN)の構成について、図面を参照しながら説明する。図3は、第1実施形態に係る通信端末20を示すブロック図である。なお、通信端末20は、無線端末10と同様の構成を有するため、通信端末20の概略についてのみ説明する。
図3に示すように、通信端末20は、複数の無線通信部21(無線通信部21A〜無線通信部21B)と、複数のリンク制御部22(リンク制御部22A〜リンク制御部22B)と、MIH機能部23と、MIHユーザ24と、バッファ25と、アプリケーション処理部26とを有する。
無線通信部21は、上位レイヤ(例えば、MIH機能部23やアプリケーション処理部26)からの指示に応じて、物理レイヤにおける物理的な無線接続を各ネットワークと設定する。無線通信部21は、無線端末10に所定間隔でパケットを送信する。また、無線通信部21は、所定間隔よりも短い間隔で再送パケットを無線端末10に送信する。なお、無線通信部21は、所定間隔で送信するパケットの符号化レートよりも低い符号化レートで再送パケットを送信する。
再送パケットは、第1ネットワーク100から第2ネットワーク200へのハンドオーバにおいて、無線端末10が正規に受信できないパケット(ロストパケット)である。例えば、第1ネットワーク100から第2ネットワーク200へのハンドオーバを無線端末10が行うケースでは、無線端末10内で破棄されるロストパケット(破棄)、第1ネットワーク100から受信できなくなるロストパケットなどである。
リンク制御部22は、上位レイヤ(例えば、MIH機能部23やアプリケーション処理部26)からの指示に応じて、リンクレイヤにおける無線リンクを各ネットワークと設定する。
MIH機能部23は、MIH機能部23よりも上位レイヤとして機能するMIHユーザ24やアプリケーション処理部26からの指示に応じて、ネットワーク間のハンドオーバを制御する。MIH機能部23は、物理レイヤの構成に依存しないメディア非依存ハンドオーバ機能(Media Independent Hadover Function)であり、IEEE802.21において規定されている。
MIHユーザ24は、MIHユーザ24よりも上位レイヤとして機能するアプリケーション処理部26からの指示に応じて、ネットワーク間における移動性を管理する移動性管理部である。MIHユーザ24は、MIH機能部23よりも上位レイヤとして機能する。
バッファ25は、第1ネットワーク100又は第2ネットワーク200を経由して基幹ネットワーク300から受信するパケットを一時的に蓄積する。バッファ25には、ネットワークの遅延時間に応じて、適切なパケット量が定められている。適切なパケット量は、パケットの不足を抑制する観点及びリアルタイム性を維持する観点で定められる。ネットワークの遅延時間が大きいほど、最適なパケット量が大きい。
例えば、第1ネットワーク100を介して無線端末10からパケットを受信しているケースでは、バッファ15の最適なパケット量は、第1ネットワーク100の遅延時間に応じて定められる。同様に、第2ネットワーク200を介して無線端末10からパケットを受信しているケースでは、バッファ15の最適なパケット量は、第2ネットワーク200の遅延時間に応じて定められる。
アプリケーション処理部26は、MIHユーザ24よりも上位レイヤとして機能し、各種アプリケーションなどを処理する。例えば、アプリケーション処理部26は、再送パケットの送信間隔及び符号化レートを制御する。
具体的には、アプリケーション処理部26は、第1ネットワーク100の遅延時間及び第2ネットワーク200の遅延時間に基づいて、再送パケット(すなわち、ロストパケット)の量を算出する。アプリケーション処理部26は、所定間隔よりも短い間隔で再送パケットを送信するように無線通信部21に指示する。また、アプリケーション処理部26は、所定間隔で送信するパケットの符号化レートよりも低い符号化レートで再送パケットを送信するように無線通信部21に指示する。
(パケットの再生速度の制御例)
以下において、パケットの再生速度の制御例について、図4〜図6を参照しながら説明する。以下においては、第1ネットワーク100を介して通信端末20から無線端末10へ送信するパケットの遅延時間を“Dold_dn”で表し、第1ネットワーク100を介して無線端末10から通信端末20へ送信するパケットの遅延時間を“Dold_up”で表す。同様に、第2ネットワーク200を介して通信端末20から無線端末10へ送信するパケットの遅延時間を“Dnew_dn”で表し、第2ネットワーク200を介して無線端末10から通信端末20へ送信するパケットの遅延時間を“Dnew_up”で表す。
(パケットの再生速度の制御例1)
以下において、第1実施形態に係るパケットの再生速度の制御例1について、図面を参照しながら説明する。図4は、第1実施形態に係るパケットの再生速度の制御例1を示す図である。ここでは、無線端末10がSCoA(Single Care of Address)に対応するケースについて例示する。SCoAでは、無線端末10は、第1ネットワーク100及び第2ネットワーク200のいずれか一方のネットワークを介してパケットを受信する。
無線端末10は、時刻t1において、ハンドオーバ準備要求をホームエージェント30に送信する。すなわち、時刻t1において、第1判定用論理式が満たされる。無線端末10は、時刻t1において、パケットの再生速度を所定速度よりも高い(速い)速度に変更する。また、無線端末10は、時刻t1において、AJB制御を停止する。
無線端末10は、時刻t2において、ハンドオーバ実行要求をホームエージェント30に送信する。すなわち、時刻t2において、第2判定用論理式が満たされる。なお、時刻t1と時刻t2との間においては、パケットの再生速度が所定速度よりも高い(速い)ため、バッファ15に蓄積されたパケットの量が減少することに留意すべきである。
無線端末10は、時刻t3において、バッファ15に蓄積されたパケットの量が所定パケット量となったことを検出する。無線端末10は、時刻t3において、パケットの再生速度を所定速度に戻す。なお、時刻t2と時刻t3との間においては、パケットの再生速度が所定速度よりも高く(速く)、パケットが無線端末10で破棄されるため、バッファ15に蓄積されたパケットの量がさらに減少することに留意すべきである。
ここで、所定パケット量は、第1ネットワーク100の遅延時間と第2ネットワーク200の遅延時間とに基づいて算出される。例えば、所定パケット量は、ロストパケット(破棄)に対応する再送パケットの量に基づいて算出される。通信端末20から無線端末10への再送パケットの量(数)は、“Dold_dn+Dnew_up/所定間隔(フレーム周期)”によって算出される。具体的には、通信端末20から送信される再送パケットのうち、最後の再送パケットを受信するタイミング(時刻t5)において、バッファ15に蓄積されたパケットの量が第2最適パケット量となるように、所定パケット量が算出される。
ここで、無線端末10が通信端末20からパケットを受信することができない期間(以下、間隙期間)において、バッファ15に蓄積されたパケットが枯渇しないことが好ましい。間隙期間は、“Dnew_dn+Dnew_up”によって算出される。所定パケット量及びパケットの再生速度の上昇幅は、間隙期間においてバッファ15に蓄積されたパケットが枯渇しないように定められる。
無線端末10は、時刻t4において、ハンドオーバの完了通知をホームエージェント30から受信する。無線端末10は、時刻t4と時刻t5との間において、第2ネットワーク200を介して所定間隔よりも短い間隔で再送パケットを受信する。
すなわち、通信端末20は、ハンドオーバの実行要求の受信に応じて、第2ネットワーク200を介して所定間隔よりも短い間隔で再送パケットを送信する。上述したように、通信端末20は、所定間隔で送信するパケットの符号化レートよりも低い符号化レートで再送パケットを送信する。
無線端末10は、時刻t5において、バッファ15に蓄積されたパケットの量が第2最適パケット量となったことを検出する。無線端末10は、時刻t5において、パケットの再生速度を所定速度に戻して、AJB制御を再開する。ここで、時刻t5は、通信端末20から送信される再送パケットのうち、最後の再送パケットを受信するタイミングである。
(パケットの再生速度の制御例2)
以下において、第1実施形態に係るパケットの再生速度の制御例2について、図面を参照しながら説明する。図5は、第1実施形態に係るパケットの再生速度の制御例2を示す図である。ここでは、無線端末10がSCoA(Single Care of Address)に対応するケースについて例示する。
無線端末10は、時刻t1において、ハンドオーバ準備要求をホームエージェント30に送信する。すなわち、時刻t1において、第1判定用論理式が満たされる。無線端末10は、時刻t1において、パケットの再生速度を所定速度よりも高い(速い)速度に変更する。また、無線端末10は、時刻t1において、AJB制御を停止する。
無線端末10は、時刻t2において、ハンドオーバ実行要求をホームエージェント30に送信する。すなわち、時刻t2において、第2判定用論理式が満たされる。なお、時刻t1と時刻t2との間においては、パケットの再生速度が所定速度よりも高い(速い)ため、バッファ15に蓄積されたパケットの量が減少することに留意すべきである。
無線端末10は、時刻t3において、バッファ15に蓄積されたパケットの量が所定パケット量(例えば、第2最適パケット量)となったことを検出する。無線端末10は、時刻t3において、パケットの再生速度を所定速度に戻す。
ここで、所定パケット量は、第1ネットワーク100の遅延時間と第2ネットワーク200の遅延時間とに基づいて算出される。例えば、所定パケット量は、バッファ15に蓄積されたパケットが枯渇しないように定められる。
なお、時刻t2と時刻t3との間においては、パケットの再生速度が所定速度よりも高く(速く)、パケットが無線端末10で破棄されるため、バッファ15に蓄積されたパケットの量がさらに減少することに留意すべきである。
ここで、無線端末10が通信端末20からパケットを受信することができない期間(以下、間隙期間)において、バッファ15に蓄積されたパケットが枯渇しないことが好ましい。間隙期間は、“Dnew_dn+Dnew_up”によって算出される。パケットの再生速度の上昇幅は、間隙期間においてバッファ15に蓄積されたパケットが枯渇しないように定められる。
無線端末10は、時刻t4において、ハンドオーバの完了通知をホームエージェント30から受信する。無線端末10は、ハンドオーバの完了通知の受信に応じて、パケットの再生速度を所定速度よりも高い(速い)速度に再び変更する。無線端末10は、時刻t4と時刻t5との間において、第2ネットワーク200を介して所定間隔よりも短い間隔で再送パケットを受信する。
すなわち、通信端末20は、ハンドオーバの実行要求の受信に応じて、第2ネットワーク200を介して所定間隔よりも短い間隔で再送パケットを送信する。上述したように、通信端末20は、所定間隔で送信するパケットの符号化レートよりも低い符号化レートで再送パケットを送信する。
無線端末10は、時刻t5において、バッファ15に蓄積されたパケットの量が第2最適パケット量となったことを検出する。無線端末10は、時刻t5において、パケットの再生速度を所定速度に戻して、AJB制御を再開する。
(パケットの再生速度の制御例3)
以下において、第1実施形態に係るパケットの再生速度の制御例3について、図面を参照しながら説明する。図6は、第1実施形態に係るパケットの再生速度の制御例3を示す図である。ここでは、無線端末10がMCoA(Multi Care of Address)に対応するケースについて例示する。MCoAでは、無線端末10は、第1ネットワーク100及び第2ネットワーク200の双方のネットワークを介してパケットを受信する。
無線端末10は、時刻t1において、ハンドオーバ準備要求をホームエージェント30に送信する。すなわち、時刻t1において、第1判定用論理式が満たされる。無線端末10は、時刻t1において、パケットの再生速度を所定速度よりも高い(速い)速度に変更する。また、無線端末10は、時刻t1において、AJB制御を停止する。
無線端末10は、時刻t2において、ハンドオーバ実行要求をホームエージェント30に送信する。すなわち、時刻t2において、第2判定用論理式が満たされる。なお、時刻t1と時刻t2との間においては、パケットの再生速度が所定速度よりも高い(速い)ため、バッファ15に蓄積されたパケットの量が減少することに留意すべきである。
無線端末10は、時刻t3において、バッファ15に蓄積されたパケットの量が所定パケット量となったことを検出する。無線端末10は、時刻t3において、パケットの再生速度を所定速度に戻す。なお、時刻t2と時刻t3との間においては、パケットの再生速度が所定速度よりも高い(速い)ため、バッファ15に蓄積されたパケットの量が減少することに留意すべきである。
ここで、所定パケット量は、第1ネットワーク100の遅延時間と第2ネットワーク200の遅延時間とに基づいて算出される。例えば、第1ネットワーク100を介して受信するパケットのうち、最後のパケットを受信するタイミング(時刻t5)において、バッファ15に蓄積されたパケットの量が第2最適パケット量となるように、所定パケット量が算出される。
なお、上述したパケットの再生速度の制御例1では間隙期間が生じるが、パケットの再生速度の制御例3では間隙期間が生じないことに留意すべきである。
無線端末10は、時刻t4において、ハンドオーバの完了通知をホームエージェント30から受信する。
無線端末10は、時刻t5において、バッファ15に蓄積されたパケットの量が第2最適パケット量となったことを検出する。無線端末10は、時刻t5において、パケットの再生速度を所定速度に戻して、AJB制御を再開する。ここで、時刻t5は、第1ネットワーク100を介して受信するパケットのうち、最後のパケットを受信するタイミングである。
(通信システムの動作)
以下において、第1実施形態に係る通信システムの動作について、図面を参照しながら説明する。図7は、第1実施形態に係る通信システムの動作を示すシーケンス図である。
図7に示すように、ステップ10において、アプリケーション処理部16は、新たなアプリケーションに要求されるサービス品質(QoS Requirement)をMIHユーザ14に通知する。
ステップ11において、MIHユーザ14は、第1ネットワーク100と設定された無線リンクにおいて監視すべき無線パラメータの閾値の設定を要求する閾値設定要求(MIH_Configure.request)をMIH機能部13に通知する。
ステップ12において、MIH機能部13は、閾値設定要求(MIH_Configure.request)に応じて、第1ネットワーク100から第2ネットワーク200へのハンドオーバに係る条件の設定を要求する条件設定要求(Link_Configure_Threshold.request)をリンク制御部12Aに通知する。
条件設定要求(Link_Configure_Threshold.request)は、ハンドオーバの準備要求(Initiation Action)を行う条件(第1条件)と、ハンドオーバの実行要求(Execute Action)を行う条件(第2条件)とを少なくとも含む。
ステップ13において、リンク制御部12Aは、条件の設定が完了したことを示すLink_Configure_Threshold.confirmをMIH機能部13に通知する。
ステップ14において、MIH機能部13は、閾値の設定が完了したことを示すMIH_Configure.confirmをMIHユーザ14に通知する。
ステップ15において、リンク制御部12Aは、第1ネットワーク100と設定された無線リンクにおける無線パラメータ値がMIH機能部13によって指定された第1閾値よりも悪化しているか否かを監視する。続いて、リンク制御部12Aは、各無線パラメータ値が第1判定用論理式を満したか否かを判定する。ここでは、第1判定用論理式が満たされたものとして説明を続ける。
ステップ16において、リンク制御部12Aは、第1ネットワーク100と設定された無線リンクにおける無線パラメータ値を示すLink_Parameters_Report.indicationをMIH機能部13に通知する。
具体的には、Link_Parameters_Report.indicationは、旧無線パラメータ値、新無線パラメータ値、動作の種類及び判定用論理式を含む。
旧無線パラメータ値は、MIH機能部13に前回通知した値であり、新無線パラメータ値は、MIH機能部13に今回通知する値である。動作の種類は、ハンドオーバの準備要求(Initiation Action)又はハンドオーバの実行要求(Execute Action)を示す情報である。判定用論理式は、第1判定用論理式(Initiation Action)又は第2判定用論理式(Execute Action)を示す情報である。
なお、ステップ16では、動作の種類には、ハンドオーバの準備要求(Initiation Action)が設定されており、判定用論理式には、第1判定用論理式(Initiation Action)が設定されている。
ステップ17において、MIH機能部13は、第1ネットワーク100と設定された無線リンクにおける無線パラメータ値を示すMIH_Link_Parameters_Report.indicationをMIHユーザ14に通知する。
ステップ18において、MIHユーザ14は、ハンドオーバの準備要求(Initiation Action)を要求するMIH_Handover_Prepare.requestをMIH機能部13に通知する。
ステップ19において、MIH機能部13は、第2ネットワーク200と無線リンクを設定することを要求するLink_Up.requestをリンク制御部12Bに通知する。
ステップ20において、リンク制御部12Bは、第2ネットワーク200と無線リンクを設定する。なお、無線リンクの設定に先立って、第2ネットワーク200と物理的な無線接続を無線通信部11Bが設定することは勿論である。
ステップ21において、リンク制御部12Bは、第2ネットワーク200と無線リンクが設定されたことを示すLink_Up.indicationをMIH機能部13に通知する。
ステップ22において、MIH機能部13は、ハンドオーバの準備要求(Initiation Action)が完了したことを示すMIH_Handover_Prepare.confirmをMIHユーザ14に通知する。
ステップ23において、MIHユーザ14は、ハンドオーバ準備要求をホームエージェント30に送信する。ホームエージェント30は、ハンドオーバ準備要求を通信端末20(相手方端末)に送信する。
ステップ24において、MIHユーザ14は、ハンドオーバ準備要求を送信した旨を示すハンドオーバ準備確認をアプリケーション処理部16に通知する。
ステップ25において、アプリケーション処理部16は、第1ネットワーク100及び第2ネットワーク200の遅延時間を示す情報(Delay and Jitter Information Indication)を通信端末20に送信する。アプリケーション処理部16は、自端末が正規に受信することができないパケット(ロストパケット)に対応する再送パケットの量(数)を、“Delay and Jitter Information Indication”によって通知してもよい。アプリケーション処理部16は、再送パケットの符号化レートや送信レートを“Delay and Jitter Information Indication”によって通知してもよい。
ステップ26において、通信端末20は、第1ネットワーク100及び第2ネットワーク200の遅延時間に基づいて、無線端末10が正規に受信することができないパケット(ロストパケット)に対応する再送パケットの量(数)を算出する。
ステップ27において、アプリケーション処理部16は、第2ネットワーク200の遅延時間に基づいて、第2ネットワーク200において最適なパケット量(第2最適パケット量)を算出する。
ステップ28において、アプリケーション処理部16は、バッファ15に蓄積されたバッファの量を最適なパケット量に維持するように、パケットの再生速度を調整する適応的バッファ制御(AJB制御)を停止する。
ステップ29において、アプリケーション処理部16は、パケットの再生速度を所定速度よりも速い速度に変更する。
ステップ30において、リンク制御部12Aは、第1ネットワーク100と設定された無線リンクにおける無線パラメータ値がMIH機能部13によって指定された第2閾値よりも悪化しているか否かを監視する。続いて、リンク制御部12Aは、各無線パラメータ値が第2判定用論理式を満たすか否かを判定する。ここでは、第2判定用論理式が満たされたものとして説明を続ける。
ステップ31において、リンク制御部12Aは、第1ネットワーク100と設定された無線リンクにおける無線パラメータ値を示すLink_Parameters_Report.indicationをMIH機能部13に通知する。ここで、Link_Parameters_Report.indicationは、上述したステップ16で送信される情報と同様である。
なお、ステップ31では、動作の種類には、ハンドオーバの実行要求(Execute Action)が設定されており、判定用論理式には、第2判定用論理式(Execute Action)が設定されている。
ステップ32において、MIH機能部13は、第1ネットワーク100と設定された無線リンクにおける無線パラメータ値を示すMIH_Link_Parameters_Report.indicationをMIHユーザ14に通知する。
ステップ33において、MIHユーザ14は、ハンドオーバ実行要求をホームエージェント30に送信する。ホームエージェント30は、ハンドオーバ実行要求を通信端末20に送信する。
ステップ34において、MIHユーザ14は、ハンドオーバ実行要求を送信した旨を示すハンドオーバ実行要求確認をアプリケーション処理部16に通知する。
ステップ35において、MIHユーザ14は、自端末が接続するネットワークの切り替えを指示するMIH_SwichをMIH機能部13に通知する。
ステップ36において、MIH機能部13は、自端末が接続するネットワークを第1ネットワーク100から第2ネットワーク200へ切り替える。
ステップ37において、MIH機能部13は、ハンドオーバを完了してもよいかを確認するMIH_Commit.requestをMIHユーザ14に通知する。
ステップ38において、ホームエージェント30は、ハンドオーバの完了通知をMIHユーザ14に送信する。
ステップ39において、MIHユーザ14は、ハンドオーバの完了を要求するMIH_Handover_Complete.requestをMIH機能部13に通知する。
ステップ40において、MIH機能部13は、第1ネットワーク100と設定された無線リンクの解放を要求するLink_Teardown.Requestをリンク制御部12Aに通知する。
ステップ41において、リンク制御部12Aは、第1ネットワーク100と設定された無線リンクを解放する。
ステップ42において、リンク制御部12Aは、第1ネットワーク100と設定された無線リンクの解放が完了したことを示すLink_Parameters_Report.indicationをMIH機能部13に通知する。
ステップ43において、MIH機能部13は、ハンドオーバが完了したことを示すMIH_Handover_Complete.responseをMIHユーザ14に通知する。
ステップ44において、MIHユーザ14は、ハンドオーバの完了通知を受信した旨を示すハンドオーバ完了通知確認をアプリケーション処理部16に通知する。
ステップ45において、通信端末20は、ロストパケットに対応する再送パケットを無線端末10に送信する。通信端末20は、所定間隔で送信するパケットの符号化レートよりも低い符号化レートで再送パケットを送信することが好ましい。
ステップ46において、アプリケーション処理部16は、バッファ15に蓄積されたバッファの量を最適なパケット量に維持するように、パケットの再生速度を調整する適応的バッファ制御(AJB制御)を再開する。
なお、アプリケーション処理部16は、再生速度の制御例1〜3に示したように、ステップ28〜ステップ46の間において、パケットの再生速度を適切に制御する。
(作用及び効果)
第1実施形態では、無線端末10は、ハンドオーバの準備要求の送信に応じて、パケットの再生速度を所定速度よりも速い速度に変更する。従って、第1ネットワーク100から第2ネットワーク200へのハンドオーバ後において、バッファ15に蓄積されたバッファの量を第2ネットワーク200において最適なパケット量(第2最適パケット量)に速やかに近づけることができる。これによって、パケットのリアルタイム性を向上することができる。
第1実施形態では、無線端末10は、ハンドオーバの準備要求の送信に応じて、バッファ15に蓄積されたバッファの量を最適なパケット量に維持するように、パケットの再生速度を調整する適応的バッファ制御(AJB制御)を停止する。従って、第1ネットワーク100から第2ネットワーク200へのハンドオーバに伴って、AJB制御によるパケットの再生速度の急変を抑制することができる。
[第2実施形態]
以下において、第2実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下においては、第1実施形態と第2実施形態との相違点について主として説明する。
第1実施形態では、通信端末20から無線端末10へのパケットの流れについて主として説明した。これに対して、第2実施形態では、無線端末10から通信端末20へのパケットの流れについて主として説明する。
すなわち、第2実施形態では、第1実施形態と比べて、無線端末10のアプリケーション処理部16の機能及び通信端末20のアプリケーション処理部26の機能が入れ替わる。具体的には、通信端末20のアプリケーション処理部26は、第1実施形態に係るアプリケーション処理部16の機能を有する。無線端末10のアプリケーション処理部16は、第1実施形態に係るアプリケーション処理部26の機能を有する。
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、第1ネットワーク100の遅延時間は、第2ネットワーク200の遅延時間よりも大きい。第2実施形態では、第1実施形態と同様に、第1ネットワーク100から第2ネットワーク200へのハンドオーバを無線端末10が行う。
なお、ネットワークの遅延時間は、無線端末10からのパケットがネットワークに滞留する時間(滞留時間)だけではなくて、滞留時間のばらつき(ジッタ)を含む概念である。滞留時間は、ジッタと相関を有する。一般的には、滞留時間が長いほど、ジッタが大きくなる。
(パケットの再生速度の制御例)
以下において、パケットの再生速度の制御例について、図8〜図10を参照しながら説明する。以下においては、第1ネットワーク100を介して通信端末20から無線端末10へ送信するパケットの遅延時間を“Dold_dn”で表し、第1ネットワーク100を介して無線端末10から通信端末20へ送信するパケットの遅延時間を“Dold_up”で表す。同様に、第1ネットワーク100を介して通信端末20から無線端末10へ送信するパケットの遅延時間を“Dnew_dn”で表し、第2ネットワーク200を介して無線端末10から通信端末20へ送信するパケットの遅延時間を“Dnew_up”で表す。
(パケットの再生速度の制御例1)
以下において、第2実施形態に係るパケットの再生速度の制御例1について、図面を参照しながら説明する。図8は、第2実施形態に係るパケットの再生速度の制御例1を示す図である。ここでは、無線端末10がSCoA(Single Care of Address)に対応するケースについて例示する。SCoAでは、無線端末10は、第1ネットワーク100及び第2ネットワーク200のいずれか一方のネットワークを介してパケットを送信する。
通信端末20は、時刻t1において、ハンドオーバ準備要求をホームエージェント30から受信する。通信端末20は、時刻t1において、パケットの再生速度を所定速度よりも高い(速い)速度に変更する。また、通信端末20は、時刻t1において、AJB制御を停止する。
通信端末20は、時刻t2において、ハンドオーバ実行要求をホームエージェント30から受信する。なお、時刻t1と時刻t2との間においては、パケットの再生速度が所定速度よりも高い(速い)ため、バッファ25に蓄積されたパケットの量が減少することに留意すべきである。
通信端末20は、時刻t3において、バッファ25に蓄積されたパケットの量が所定パケット量となったことを検出する。通信端末20は、時刻t3において、パケットの再生速度を所定速度に戻す。なお、時刻t2と時刻t3との間においては、パケットの再生速度が所定速度よりも高く(速く)、パケットが通信端末20で破棄されるため、バッファ25に蓄積されたパケットの量がさらに減少することに留意すべきである。また、時刻t3は、第2ネットワーク200を介して受信するパケットのうち、最初のパケット(ここでは、再送パケット)を受信するタイミングよりも前の時刻であることに留意すべきである。
ここで、所定パケット量は、第1ネットワーク100の遅延時間と第2ネットワーク200の遅延時間とに基づいて算出される。例えば、所定パケット量は、ロストパケット(破棄)に対応する再送パケットの量に基づいて算出される。無線端末10から通信端末20への再送パケットの量(数)は、“Dold_up+Dnew_dn/所定間隔(フレーム周期)”によって算出される。具体的には、無線端末10から送信される再送パケットのうち、最後の再送パケットを受信するタイミング(時刻t4)において、バッファ25に蓄積されたパケットの量が第2最適パケット量となるように、所定パケット量が算出される。
ここで、通信端末20が無線端末10からパケットを受信することができない期間(以下、間隙期間)において、バッファ25に蓄積されたパケットが枯渇しないことが好ましい。間隙期間は、“Dnew_up+Dnew_dn”によって算出される。所定パケット量及びパケットの再生速度の上昇幅は、間隙期間においてバッファ25に蓄積されたパケットが枯渇しないように定められる。
通信端末20は、時刻t3と時刻t4との間において、第2ネットワーク200を介して所定間隔よりも短い間隔で再送パケットを受信する。
すなわち、無線端末10は、ハンドオーバの完了通知の受信に応じて、第2ネットワーク200を介して所定間隔よりも短い間隔で再送パケットを送信する。無線端末10は、所定間隔で送信するパケットの符号化レートよりも低い符号化レートで再送パケットを送信する。
通信端末20は、時刻t4において、バッファ25に蓄積されたパケットの量が第2最適パケット量となったことを検出する。通信端末20は、時刻t4において、パケットの再生速度を所定速度に戻して、AJB制御を再開する。ここで、時刻t4は、無線端末10から送信される再送パケットのうち、最後の再送パケットを受信するタイミングである。
(パケットの再生速度の制御例2)
以下において、第2実施形態に係るパケットの再生速度の制御例2について、図面を参照しながら説明する。図9は、第2実施形態に係るパケットの再生速度の制御例2を示す図である。ここでは、無線端末10がSCoA(Single Care of Address)に対応するケースについて例示する。
通信端末20は、時刻t1において、ハンドオーバ準備要求をホームエージェント30から受信する。通信端末20は、時刻t1において、パケットの再生速度を所定速度よりも高い(速い)速度に変更する。また、通信端末20は、時刻t1において、AJB制御を停止する。
通信端末20は、時刻t2において、ハンドオーバ実行要求をホームエージェント30から受信する。なお、時刻t1と時刻t2との間においては、パケットの再生速度が所定速度よりも高い(速い)ため、バッファ25に蓄積されたパケットの量が減少することに留意すべきである。
通信端末20は、時刻t3において、バッファ25に蓄積されたパケットの量が所定パケット量(例えば、第2最適パケット量)となったことを検出する。通信端末20は、時刻t3において、パケットの再生速度を所定速度に戻す。ここで、所定パケット量は、第1ネットワーク100の遅延時間と第2ネットワーク200の遅延時間とに基づいて算出される。例えば、所定パケット量は、バッファ25に蓄積されたパケットが枯渇しないように定められる。
なお、時刻t2と時刻t3との間においては、パケットの再生速度が所定速度よりも高く(速く)、パケットが通信端末20で破棄されるため、バッファ25に蓄積されたパケットの量がさらに減少することに留意すべきである。また、時刻t3は、第2ネットワーク200を介して受信するパケットのうち、最初のパケット(ここでは、再送パケット)を受信するタイミングよりも前の時刻であることに留意すべきである。
ここで、通信端末20が無線端末10からパケットを受信することができない期間(以下、間隙期間)において、バッファ25に蓄積されたパケットが枯渇しないことが好ましい。間隙期間は、“Dnew_up+Dnew_dn”によって算出される。パケットの再生速度の上昇幅は、間隙期間においてバッファ25に蓄積されたパケットが枯渇しないように定められる。
通信端末20は、時刻t4において、第2ネットワーク200を介して受信するパケットのうち、最初のパケット(ここでは、再送パケット)を受信する。通信端末20は、最初のパケットの受信に応じて、パケットの再生速度を所定速度よりも高い(速い)速度に再び変更する。
通信端末20は、時刻t4と時刻t5との間において、第2ネットワーク200を介して所定間隔よりも短い間隔で再送パケットを受信する。
すなわち、無線端末10は、ハンドオーバの完了通知の受信に応じて、第2ネットワーク200を介して所定間隔よりも短い間隔で再送パケットを送信する。無線端末10は、所定間隔で送信するパケットの符号化レートよりも低い符号化レートで再送パケットを送信する。
通信端末20は、時刻t5において、バッファ25に蓄積されたパケットの量が第2最適パケット量となったことを検出する。通信端末20は、時刻t5において、パケットの再生速度を所定速度に戻して、AJB制御を再開する。
(パケットの再生速度の制御例3)
以下において、第2実施形態に係るパケットの再生速度の制御例3について、図面を参照しながら説明する。図10は、第2実施形態に係るパケットの再生速度の制御例3を示す図である。ここでは、無線端末10がMCoA(Multi Care of Address)に対応するケースについて例示する。MCoAでは、無線端末10は、第1ネットワーク100及び第2ネットワーク200の双方のネットワークを介してパケットを送信する。
通信端末20は、時刻t1において、ハンドオーバ準備要求をホームエージェント30から受信する。通信端末20は、時刻t1において、パケットの再生速度を所定速度よりも高い(速い)速度に変更する。また、通信端末20は、時刻t1において、AJB制御を停止する。
通信端末20は、時刻t2において、ハンドオーバ実行要求をホームエージェント30から受信する。なお、時刻t1と時刻t2との間においては、パケットの再生速度が所定速度よりも高い(速い)ため、バッファ25に蓄積されたパケットの量が減少することに留意すべきである。
通信端末20は、時刻t3において、バッファ25に蓄積されたパケットの量が所定パケット量となったことを検出する。通信端末20は、時刻t3において、パケットの再生速度を所定速度に戻す。なお、時刻t2と時刻t3との間においては、パケットの再生速度が所定速度よりも高い(速い)ため、バッファ25に蓄積されたパケットの量がさらに減少することに留意すべきである。
ここで、所定パケット量は、第1ネットワーク100の遅延時間と第2ネットワーク200の遅延時間とに基づいて算出される。例えば、第1ネットワーク100を介して受信するパケットのうち、最後のパケットを受信するタイミング(時刻t4)において、バッファ25に蓄積されたパケットの量が第2最適パケット量となるように、所定パケット量が算出される。
なお、上述したパケットの再生速度の制御例1では間隙期間が生じるが、パケットの再生速度の制御例3では間隙期間が生じないことに留意すべきである。
通信端末20は、時刻t4において、バッファ25に蓄積されたパケットの量が第2最適パケット量となったことを検出する。通信端末20は、時刻t4において、パケットの再生速度を所定速度に戻して、AJB制御を再開する。ここで、時刻t4は、無線端末10から送信される再送パケットのうち、最後の再送パケットを受信するタイミングである。
(通信システムの動作)
以下において、第2実施形態に係る通信システムの動作について、図面を参照しながら説明する。図11は、第2実施形態に係る通信システムの動作を示すシーケンス図である。図11では、図7と同様の処理について同じステップ番号を付している。ここでは、図7と同様の処理の説明については省略する。
第2実施形態では、図11に示すように、図7に示すステップ26〜ステップ29、ステップ45、ステップ46の処理に代えて、ステップ26A〜ステップ29A、ステップ45A、ステップ46Aの処理が行われる。
ステップ26Aにおいて、アプリケーション処理部16は、第1ネットワーク100及び第2ネットワーク200の遅延時間に基づいて、無線端末10が正規に受信することができないパケット(ロストパケット)に対応する再送パケットの量を算出する。
ステップ27Aにおいて、通信端末20(相手方端末)は、第2ネットワーク200の遅延時間に基づいて、第2ネットワーク200において最適なパケット量(第2最適パケット量)を算出する。
ステップ28Aにおいて、通信端末20は、バッファ25に蓄積されたバッファの量を最適なパケット量に維持するように、パケットの再生速度を調整する適応的バッファ制御(AJB制御)を停止する。
ステップ29Aにおいて、通信端末20は、パケットの再生速度を所定速度よりも速い速度に変更する。
ステップ45Aにおいて、アプリケーション処理部16は、ロストパケットに対応する再送パケットを通信端末20に送信する。アプリケーション処理部16は、所定間隔で送信するパケットの符号化レートよりも低い符号化レートで再送パケットを送信することが好ましい。
ステップ46Aにおいて、通信端末20は、バッファ25に蓄積されたバッファの量を最適なパケット量に維持するように、パケットの再生速度を調整する適応的バッファ制御(AJB制御)を再開する。
なお、通信端末20は、再生速度の制御例1〜3に示したように、ステップ28A〜ステップ46Aの間において、パケットの再生速度を適切に制御する。
(作用及び効果)
第2実施形態では、通信端末20は、ハンドオーバの準備要求の受信に応じて、パケットの再生速度を所定速度よりも速い速度に変更する。従って、無線端末10の第1ネットワーク100から第2ネットワーク200へのハンドオーバ後において、バッファ25に蓄積されたバッファの量を第2ネットワーク200において最適なパケット量(第2最適パケット量)に速やかに近づけることができる。これによって、パケットのリアルタイム性を向上することができる。
第2実施形態では、通信端末20は、ハンドオーバの準備要求の受信に応じて、バッファ25に蓄積されたバッファの量を最適なパケット量に維持するように、パケットの再生速度を調整する適応的バッファ制御(AJB制御)を停止する。従って、無線端末10の第1ネットワーク100から第2ネットワーク200へのハンドオーバに伴って、AJB制御によるパケットの再生速度の急変を抑制することができる。
[その他の実施形態]
上述したように、本発明の一実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態が明らかとなろう。
例えば、無線端末10の動作は、コンピュータにおいて実行可能なプログラムとしても提供することができる。同様に、通信端末20の動作は、コンピュータにおいて実行可能なプログラムとしても提供することができる。
上述した実施形態では特に触れていないが、第1ネットワーク100及び第2ネットワーク200の遅延時間は、無線端末10にとって既知であってもよい。また、第1ネットワーク100及び第2ネットワーク200の遅延時間は、無線端末10にとって測定されてもよい。
上述した実施形態では、遅延時間が大きいネットワークから遅延時間が小さいネットワークへのハンドオーバについて説明した。しかしながら、本実施形態はこれに限定されるものではない。
例えば、遅延時間が小さいネットワークから遅延時間が大きいネットワークへのハンドオーバについても、本発明を適用することができる。具体的には、このようなケースでは、最適なパケット量を大きくする必要があり、かつ、パケットの受信間隔が拡がってしまう。従って、ハンドオーバの準備要求の開始に応じて、パケットの再生速度を所定速度よりも低い(遅い)速度に変更してもよい。また、ハンドオーバの準備要求の開始に応じて、AJB制御を停止してもよい。これによって、ハンドオーバ先のネットワークにおいて最適なパケット量にバッファに蓄積されたパケットの量を速やかに近づけることができる。また、バッファに蓄積されたパケットの枯渇を抑制することができる。
10・・・無線端末、11・・・無線通信部、12・・・リンク制御部、13・・・MIH機能部、14・・・MIHユーザ、15・・・バッファ、16・・・アプリケーション処理部、20・・・通信端末、21・・・無線通信部、22・・・リンク制御部、23・・・MIH機能部、24・・・MIHユーザ、25・・・バッファ、26・・・アプリケーション処理部、30・・・ホームエージェント、100・・・第1ネットワーク、200・・・第2ネットワーク、300・・・基幹ネットワーク