JP4597474B2 - 塗布装置及び塗布方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気テープ、電子部品、液晶表示材料、プリンターリボン、プリペードカード、機能性包材、写真フィルム等の用途に使用されるフィルムを製造するときに用いられる塗布装置及び塗布方法に関するものである。より詳しくは、ベースフィルムに対する塗布欠陥が発生するのを抑制するとともに、ベースフィルムにフィルム欠陥が発生するのを抑制することができる塗布装置及び塗布方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
連続して走行するポリエステルフィルム等のベースフィルムの表面に塗布液を塗布する方法としては、バー塗布方法、リバースロール塗布方法、グラビアロール塗布方法、エクストルージョン塗布方法等が挙げられる。これらの中でも、設備が簡単で薄層塗布が可能であるために、バー塗布方法が広く用いられている。
【0003】
従来、バー塗布方法に用いられる塗布装置は、カム及びカム伝達部品を介して端部に駆動モータが取付けられているコーティングロッドを備えている(例えば特許文献1参照。)。このコーティングロッドは、駆動モータによって3〜1000mm/秒の速度でベースフィルムの幅方向に摺動するように構成されている。そして、コーティングロッドを用い、連続して走行するベースフィルムの表面に塗布液を塗布するとともにその厚みを調整するように構成されている。さらに、コーティングロッドの摺動により、ベースフィルムに対する塗布筋欠陥等の塗布欠陥が発生するのを抑制するように構成されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平1−94965号公報(第2〜3頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この従来の塗布装置においては、コーティングロッドの摺動速度が3〜1000mm/秒と高い範囲に設定されているために、ベースフィルムに塗布された塗布液の厚みが薄いときには、ベースフィルムにはその幅方向に傷等のフィルム欠陥が発生する場合があるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、ベースフィルムに対する塗布欠陥が発生するのを抑制するとともに、ベースフィルムにフィルム欠陥が発生するのを抑制することができる塗布装置及び塗布方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の塗布装置は、連続して走行するベースフィルムの表面に塗布液を過剰に塗布するための塗布機構と、バー本体及びその表面に巻回されるワイヤーとを備える塗布厚調整用バーを有し、塗布液が塗布された側のベースフィルムの表面に前記ベースフィルムの進行方向に対して順方向に10〜100rpmの回転速度で塗布厚調整用バーを押し付けることにより塗布厚を調整するための塗布厚調整機構とを備え、塗布厚調整用バーは、塗布厚調整機構を構成する基台上に取り付けられるバーホルダに支持され、塗布厚調整用バーとバーホルダとの境界の凹み部分に溜まる塗布液の凝集を抑制する速度でベースフィルムの幅方向に揺動され、該速度が10〜20mm/分に設定されるように構成されているものである。
【0008】
請求項2に記載の発明の塗布方法は、請求項1に記載の塗布装置を用い、連続して走行するベースフィルムの表面に塗布機構によって塗布液を過剰に塗布した後、塗布液が塗布された側のベースフィルムの表面に塗布厚調整用バーを押し付けるとともに、ベースフィルムの幅方向に揺動させることにより塗布厚を調整するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1(a)に示すように、塗布装置11は、四角板状をなす基盤12に塗布機構13と塗布厚調整機構14とが据付けられて構成されている。塗布装置11は、複数の搬送ローラ15によって図1(a)のA矢視線の方向に連続して走行するベースフィルム16の下方に、塗布機構13が上流側に位置するとともに塗布厚調整機構14が下流側に位置するように配設されている。
【0010】
塗布機構13を構成する第1基台17はベースフィルム16の幅方向に延びる四角柱状に形成され、基盤12上に据付けられるとともに、上部には断面略円状の塗布液貯留溝18がベースフィルム16の幅方向に延びるように凹設されている。第1基台17の上面には、頂面が前方又は後方に向かうに従い低くなるように傾斜する傾斜状に形成されている五角柱状をなす塗布部19が取付けられている。
【0011】
塗布部19の頂縁は、ベースフィルム16から若干離間するとともに、開口幅が一定の塗布液噴射溝20がベースフィルム16の幅方向に延びるように凹設されている。塗布液噴射溝20は、前記塗布液貯留溝18に連通するとともに、頂部に向かうに従い幅狭になるように構成されている。
【0012】
そして、図示しない塗布液貯留タンクから塗布液貯留溝18内に塗布液21が圧入され、塗布液21は塗布液噴射溝20内を上方に向かうに従い圧縮されてその圧力が高められる。次いで、塗布液噴射溝20の上端開口部からベースフィルム16の下面に向けて塗布液21が噴射されることにより、ベースフィルム16の下面に塗布液21を過剰に塗布するように構成されている。さらに、塗布液21がベースフィルム16の下面から塗布部19の頂面に垂れ落ちたときには、塗布部19の頂面から流下させるように構成されている。
【0013】
塗布厚調整機構14を構成する第2基台22は、ベースフィルム16の幅方向に延びる四角柱状に形成されるとともに基盤12上に据付けられ、その上面には、ウレタン樹脂等の合成樹脂材料やステンレス鋼等の金属材料製の略半円柱状をなすバーホルダ23が取付けられている。図1(a)及び(b)に示すように、バーホルダ23の上端部には断面半円状のバー支持凹部24が幅方向に延びるように凹設され、バー支持凹部24内には塗布厚調整用バー25(以下、単にバー25ともいう)が支持されている。
【0014】
図3に示すように、バー25は、円柱状をなすバー本体25aの中間部の外周面にワイヤー25bが巻回されることにより形成されている。本実施形態では、バー本体25aは直径が1〜50mmであるとともに長さが0.5〜2.5mであり、ワイヤー25bの直径は50〜150μmである。バー本体25a及びワイヤー25bは、ステンレス鋼等の金属材料によりそれぞれ形成されている。尚、図1(a)〜図4においては、ワイヤー25bは、理解を容易にするためにその直径を誇張して大きく描かれている。
【0015】
図4に示すように、ワイヤー25bの表面には改質膜26が被覆され、この改質膜26によってワイヤー25bの摩耗を抑制してバー25の耐久性を向上させるようになっている。改質膜26の材質の具体例としてはダイヤモンドライクカーボン(DLC)、ハードクロム、炭化チタン等が挙げられ、改質膜26の厚みは好ましくは2.0μm以下、より好ましくは0.5〜1.0μmである。
【0016】
2.0μmを超えると、改質膜26の厚みが厚いために、バー本体25aの撓み等によって改質膜26に傷等が発生したり剥離するおそれがある。一方、0.5μm未満では、改質膜26の厚みが薄いためにワイヤー25bの摩耗を抑制することが困難になり、バー25の耐久性を十分に向上させることができない。
【0017】
図1(b)に示すように、バー25の端部には回転駆動装置27が取付けられ、この回転駆動装置27によって、バー25はベースフィルム16の進行方向に対して順方向、即ち図1(b)のB矢視線の方向に回転されるように構成されている。バー25の回転速度は好ましくは10〜100rpmに設定されている。
【0018】
10rpm未満では、バー25の回転速度が遅いために、ワイヤー25bの頂部間に塗布液21の凝集物等が付着して目詰まりが発生し、塗布抜け欠陥や塗布筋欠陥等の塗布欠陥が発生するおそれがある。一方、100rpmを超えると、バー25の回転速度が速すぎるために、バー25の回転に伴って塗布液21内に気泡を巻込み、この気泡に起因する塗布抜け欠陥や塗布筋欠陥等の塗布欠陥が発生するおそれがある。
【0019】
回転駆動装置27には揺動駆動装置28が取付けられ、揺動駆動装置28は走行盤29上に配設されるとともに底部には走行ローラ28aが取付けられている。走行盤29の上面にはベースフィルム16の幅方向に延びる走行溝29aが凹設され、揺動駆動装置28は走行ローラ28aを走行溝29a内で回転させることにより、走行溝29aに沿って走行盤29上をベースフィルム16の幅方向に往復動するように構成されている。そして、この揺動駆動装置28の往復動により、バー25は、ベースフィルム16の幅方向、即ち図1(b)のC矢視線の方向に揺動するように構成されている。
【0020】
バー25の揺動速度は塗布液21を掻き落とすときにその凝集を抑制する速度であり、好ましくは20mm/分以下、より好ましくは10〜15mm/分である。20mm/分を超えると、揺動速度が速いために、塗布液21の厚みが薄いときにはベースフィルム16に傷等のフィルム欠陥が発生するおそれがある。
【0021】
一方、10mm/分未満では、揺動速度が遅いために、バー25によって掻き落とされた塗布液21がバー25とバーホルダ23との境界の凹み部分に溜り、バー25とバーホルダ23との摺接による摩擦熱で凝集するおそれがある。バー25の揺動距離は本実施形態では±10mmである。即ち、バー25はベースフィルム16の進行方向に対して左右にそれぞれ10mm揺動するように構成されている。
【0022】
そして、図1(b)及び図2に示すように、ベースフィルム16にバー25が下方から押し付けられるとともにバー25が回転及び揺動されることによりベースフィルム16を押し上げるとともに、過剰分の塗布液21がバー25によって掻き落とされて塗布量が計量され、塗布厚が調整されるように構成されている。
【0023】
バー25がベースフィルム16を持ち上げる量は、前後一対の搬送ローラ15の下端部を結ぶ面とその面より上方に位置するバーの上端縁との距離が2〜5mmとなる量が好ましい。2mm未満では、バー25がベースフィルム16を押し上げる力が弱いために過剰分の塗布液を十分に掻き落とすことができず、塗布厚が不均一になるおそれがある。
【0024】
一方、5mmを超えると、バー25がベースフィルム16を押し上げる力が強いとともに、ベースフィルム16の走行速度とバー25の回転速度との差が大きくなるために、ベースフィルム16とバー25とが強く摺接しやすい。このため、ベースフィルム16に傷等のフィルム欠陥が発生するおそれがある。
【0025】
バー支持凹部24の内面には略円孔状の洗浄溝30が複数、本実施形態では前後に一対凹設され、各洗浄溝30の内部には水等の洗浄液が流れている。そして、洗浄液によって改質膜26の表面を洗浄し、さらにベースフィルム16とバー25との摺接による摩擦熱によって加熱された改質膜26、ワイヤー25b等を冷却するように構成されている。
【0026】
ここで、改質膜26がDLCにより形成されているときには、洗浄液による冷却は、改質膜26の温度が常に450℃以下になるように行うのが好ましい。改質膜26の温度が450℃を超えると、改質膜26を形成するDLCの構造が変化するおそれがある。
【0027】
図1(a)及び図2に示すように、第1基台17の上流側の側面と、各基台17,22の間とには、塗布部19の頂面から流下した塗布液21又はバー25によってベースフィルム16から掻き落とされた塗布液21を回収するための有底四角筒状をなす回収トレー31がそれぞれ配設されている。
【0028】
ベースフィルム16の材質の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルが挙げられる。塗布液21の組成は製造されるフィルムの用途によって決定され、例えば製造されるフィルムが印刷用の下地フィルムとして用いられるときには、塗布液21は酸化チタン(TiO2)粒子等の顔料を含有する。塗布液21は、乾燥するときに蒸発された溶媒を容易に処理することができるために、水性塗布液として構成されるのが好ましい。
【0029】
次に、フィルムの製造方法について説明する。ここでは、フィルム製造工程は、ベースフィルム形成工程の後に縦延伸工程と横延伸工程とが連続して施される逐次二軸延伸工程を備え、塗布工程は縦延伸工程と横延伸工程との間に実施される。
【0030】
フィルムを製造するときには、まずベースフィルム形成工程としてポリエステル原料を押出し装置に供給し、ポリエステルの融点以上の温度に加熱して溶融させる。次いで、成形用ダイのスリットから溶融シートとして押出し、溶融シートを回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷し、非晶質の未延伸フィルムを得る。このとき、未延伸フィルムの平面性を向上させるために、静電印加密着法や液体塗布密着法等によって、未延伸フィルムと回転冷却ドラムとの密着性を向上させてもよい。
【0031】
次いで、縦延伸工程として、未延伸フィルムを周速差のある一群のロールで未延伸フィルムの長手方向に延伸(縦延伸)することにより、ベースフィルム16を得る。このとき、延伸温度は好ましくは70〜150℃であり、延伸倍率は好ましくは2.5〜6倍である。この延伸は、一段階のみで行ってもよいし、二段階以上に分けて行ってもよい。
【0032】
続いて、図1(a)に示すように、塗布工程として、ベースフィルム16を複数の搬送ローラ15によって連続して走行させる。このとき、ベースフィルム16は一般的には幅が0.3〜2.5mであり厚さが8〜1200μmである。その後、塗布機構13によってベースフィルム16の下面に塗布液21を過剰に塗布するとともに、塗布厚調整機構14のバー25によって過剰分の塗布液21を掻き落として塗布厚を調整し、ベースフィルム16の下面に塗布液21を塗布する。
【0033】
このとき、図1(b)に示すように、バー25は回転駆動装置27によりB矢視線の方向に回転され、揺動駆動装置28の往復動によりC矢視線の方向に揺動されている。ここで、ベースフィルム16の走行速度は好ましくは10〜300m/分であり、ベースフィルム16に対してその走行方向に加える荷重はベースフィルム16の幅1m当たり好ましくは686〜980N(70〜100kgf)である。
【0034】
走行速度が10m/分未満では、走行速度が遅いために製造効率が低下する傾向にある。一方、300m/分を超えると、走行速度が速すぎるためにベースフィルム16とバー25との間に高い摩擦熱が発生し、この摩擦熱によって塗布液21が凝集するおそれがある。荷重が686N未満では、走行速度が遅くなるとともに、塗布工程中にベースフィルム16に撓み等が発生するおそれがある。一方、980Nを超えると、走行速度が速くなるとともにベースフィルム16が長手方向に延伸されるおそれがある。
【0035】
続いて、図5に示すように、横延伸工程として、塗布厚が調整された状態で塗布液が塗布されたベースフィルム16を図示しないクリップで保持し、ベースフィルム16の長手方向に対して直交方向に延伸(横延伸)して二軸延伸フィルムを得る。ここで、例えば幅が1〜2.5mのベースフィルムを8mの幅にまで横延伸する。
【0036】
延伸温度は、塗布液を急激に加熱することによってその表面だけが乾燥され、内部の乾燥が不十分になるのを防止するために、例えば延伸初期の領域e1では80℃、延伸中期の領域e2では90℃、そして延伸後期の領域e3では100℃のように、段階的に高く設定するのが好ましい。そして、二軸延伸フィルムを熱処理することにより、表面に塗布膜が被覆されたフィルムが製造される。このとき、加熱温度は好ましくは180〜250℃であり、加熱時間は好ましくは1秒〜5分である。二軸延伸フィルムを熱処理するときには20%以内の弛緩を行ってもよい。
【0037】
さて、図1(a)及び図2に示すように、塗布工程において塗布機構13によりベースフィルム16の下面に塗布された塗布液21は、バー25により過剰分が掻き落とされて塗布厚が調整される。バー25によって掻き落とされた過剰分の塗布液21は、バー25の回転に逆らうとともに改質膜26の表面に沿って流下し、さらにバーホルダ23の表面及び回収トレー31の側壁に沿って流下した後、回収トレー31内に回収される。
【0038】
改質膜26、ワイヤー25b等はバー25とバーホルダ23との摺接による摩擦熱で加熱されているために、改質膜26の表面に沿って流下する過剰分の塗布液21は、改質膜26等に加熱されることにより表面の溶媒が蒸発して粘性が高くなり、バー25とバーホルダ23との境界の凹み部分に溜る。
【0039】
このとき、バー25は塗布液21の凝集を抑制する速度で図1(b)のC矢視線の方向に揺動されているために、凹み部分に溜った塗布液21がさらに加熱されることにより凝集して凝集物32を形成するのを抑制し、揺動による振動によって凹み部分に溜った塗布液21を流下させることができる。
【0040】
ここで、凝集物32はある程度大きくなると改質膜26の表面に付着し、改質膜26の表面に付着した凝集物32に起因する塗布抜け欠陥や塗布筋欠陥等の塗布欠陥が発生すると推定される。このため、凝集物32の形成を抑制することにより、ベースフィルム16に対する塗布欠陥が発生するのを抑制することができる。さらに、ベースフィルム16の下面に塗布された塗布液21の厚みが薄いときにも、ベースフィルム16に傷等のフィルム欠陥が発生するのを抑制することができる。
【0041】
改質膜26がDLCにより形成されているときには、DLCは塗布液21を弾く性質を有しているために、改質膜26の表面がベースフィルム16の下面から離間するときには、改質膜26の表面から塗布液21を容易に離すことができる。このため、塗布厚が調整された塗布液21に塗布ムラ等の塗布欠陥が発生するのを抑制することにより、塗布厚を均一にすることができるとともに塗布液21の表面の平滑性を向上させることができる。
【0042】
以上詳述した本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
・ 本実施形態の塗布装置11は、連続して走行するベースフィルム16の下面に塗布液21を過剰に塗布するための塗布機構13と、バー25を有し、ベースフィルム16の下面にバー25を押し付けることにより塗布厚を調整するための塗布厚調整機構14とを備えている。そして、バー25は、塗布液21の凝集を抑制する速度でベースフィルム16の幅方向に揺動されるように構成されている。
【0043】
このため、バー25によって掻き落とされた塗布液21がバー25とバーホルダ23との境界の凹み部分に溜った後に加熱されて凝集するのを抑制し、ベースフィルム16に対する塗布欠陥が発生するのを抑制することができる。さらに、従来の塗布装置に比べて揺動速度が遅いために、塗布液21の厚みが薄いときにもベースフィルム16にフィルム欠陥が発生するのを抑制することができる。
【0044】
・ バー25は揺動しながらバーホルダ23と摺接するために、バー25の一部分のみがバーホルダ23との摺接によって摩耗されるのを防止し、バー25全体を均一に摩耗させることができる。
【0045】
・ バー25の揺動速度は20mm/分以下に設定されるのが好ましい。この場合、ベースフィルム16に傷等のフィルム欠陥が発生するのをより確実に抑制することができる。
【0046】
・ バー25はベースフィルム16の進行方向に対して順方向に回転されている。このため、バー25がベースフィルム16の進行方向に対して逆方向に回転されている場合やバー25が回転されていない場合に比べて、ベースフィルム16とバー25との摺接抵抗を低下させることにより、ベースフィルム16に傷等のフィルム欠陥が発生するのをより確実に抑制することができる。
【0047】
・ フィルムは、ベースフィルム16に縦延伸工程、塗布工程及び横延伸工程が実施されて製造されている。よって、二軸延伸フィルムの製造と塗布膜の形成とを同時に行うことができるために、二軸延伸フィルムを製造した後に塗布液21の塗布及び乾燥を行う場合に比べてフィルムの製造効率を向上させることができる。
【0048】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ 前記ワイヤー25bと改質膜26との間に、改質膜26のワイヤー25bの表面への密着性を向上させるための密着膜を形成してもよい。この場合、改質膜26のワイヤー25bへの密着性を向上させることによって改質膜26がワイヤー25bの表面から剥離したり改質膜26に傷が発生するのを抑制し、バー25の耐久性をより向上させることができる。
【0049】
・ 前記フィルムを製造するときには、塗布工程の後に縦延伸工程と横延伸工程とを同時に実施してもよいし、二軸延伸フィルムを製造した後、二軸延伸フィルムに塗布装置を用いた塗布工程及び塗布液の乾燥工程を実施することにより、フィルムを製造してもよい。
【0050】
・ 前記塗布液21は、例えば製造するフィルムを磁気テープとして用いるための塗布液のように非ニュートン流体として構成してもよいし、製造するフィルムを写真感光フィルムとして用いるための塗布液のようにニュートン流体として構成してもよい。
【0051】
・ 前記ベースフィルム16の下面に塗布液を塗布した後、さらにベースフィルム16の上面に塗布液を塗布することにより、ベースフィルム16の両面に塗布液を塗布してもよい。
【0052】
・ 前記ベースフィルム16を単層フィルムとして構成してもよいし、共押出し積層フィルム等の多層フィルムとして構成してもよい。また、ベースフィルム16を、セルロース等により延伸工程を実施せずに形成してもよい。
【0053】
・ 前記塗布厚調整機構14において、バー25の後方及びバー25とバーホルダ23との境界の凹み部分の上方に、掻き落し板や掻き落しローラ等をバー25から若干離間して配設してもよい。ここで、掻き落しローラはバー25と同一方向に回転するように設定されている。
【0054】
この場合、バー25とバーホルダ23との境界の凹み部分に溜った塗布液21が凝集して凝集物32を形成し、この凝集物32がバー25の表面に付着したときには、掻き落し板や掻き落しローラ等によってバー25の表面から凝集物32を掻き落とすことができる。このため、ベースフィルム16に対する塗布欠陥が発生するのをより確実に抑制することができる。
【0055】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(1)前記塗布厚調整用バーは、ベースフィルムの走行方向に対して順方向に回転されている前記塗布装置。この構成によれば、ベースフィルムにフィルム欠陥が発生するのをより確実に抑制することができる。
【0056】
(2)前記ベースフィルムを形成するベースフィルム形成工程と、ベースフィルムを延伸する延伸工程とを有するフィルム製造工程における延伸工程の前に施され、ベースフィルムの表面に塗布液を塗布する塗布工程に用いられるように構成されている前記塗布装置。この構成によれば、表面に塗布膜が形成されたフィルムの製造効率を向上させることができる。
【0057】
(3)上記(2)に記載の塗布装置を用い、ベースフィルムを形成するベースフィルム形成工程と、ベースフィルムを延伸する延伸工程とを有するフィルム製造工程における延伸工程の前に、塗布工程で連続して走行するベースフィルムの表面に塗布機構によって塗布液を過剰に塗布した後、塗布液が塗布された側のベースフィルムの表面に塗布厚調整機構の塗布厚調整用バーを押し付けるとともに、ベースフィルムの幅方向に揺動させることにより塗布厚を調整することを特徴とする塗布方法。この構成によれば、ベースフィルムに対する塗布欠陥が発生するのを抑制するとともに、ベースフィルムにフィルム欠陥が発生するのを抑制することができ、さらに表面に塗布膜が形成されたフィルムの製造効率を向上させることができる。
【0058】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明の塗布装置によれば、ベースフィルムに対する塗布欠陥が発生するのを抑制するとともに、ベースフィルムにフィルム欠陥が発生するのを抑制することができる。
【0059】
また、ベースフィルムにフィルム欠陥が発生するのをより確実に抑制することができる。
【0060】
請求項2に記載の発明の塗布方法によれば、塗布厚調整用バーを揺動させるという簡単な操作で、ベースフィルムに対する塗布欠陥が発生するのを抑制するとともに、ベースフィルムにフィルム欠陥が発生するのを容易に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は本実施形態の塗布装置を示す概念図、(b)は塗布厚調整用バーを示す平面図。
【図2】 塗布装置を示す要部断面図。
【図3】 塗布厚調整用バーを示す部分破断側面図。
【図4】 塗布厚調整用バーを示す要部断面図。
【図5】 横延伸工程におけるベースフィルムを示す平面図。
【符号の説明】
11…塗布装置、13…塗布機構、14…塗布厚調整機構、16…ベースフィルム、21…塗布液、25…塗布厚調整用バー、25a…バー本体、25b…ワイヤー。
Claims (2)
- 連続して走行するベースフィルムの表面に塗布液を過剰に塗布するための塗布機構と、バー本体及びその表面に巻回されるワイヤーとを備える塗布厚調整用バーを有し、塗布液が塗布された側のベースフィルムの表面に前記ベースフィルムの進行方向に対して順方向に10〜100rpmの回転速度で塗布厚調整用バーを押し付けることにより塗布厚を調整するための塗布厚調整機構とを備え、塗布厚調整用バーは、塗布厚調整機構を構成する基台上に取り付けられるバーホルダに支持され、塗布厚調整用バーとバーホルダとの境界の凹み部分に溜まる塗布液の凝集を抑制する速度でベースフィルムの幅方向に揺動され、該速度が10〜20mm/分に設定されるように構成されていることを特徴とする塗布装置。
- 請求項1に記載の塗布装置を用い、連続して走行するベースフィルムの表面に塗布機構によって塗布液を過剰に塗布した後、塗布液が塗布された側のベースフィルムの表面に塗布厚調整用バーを押し付けるとともに、ベースフィルムの幅方向に揺動させることにより塗布厚を調整することを特徴とする塗布方法。
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