JP4587290B2 - X線透過窓、x線吸収微細構造測定用セルおよび反応システム - Google Patents
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XAFS測定により活性点構造が決定されてきた(非特許文献2〜5)。
"EXAFS of dispersed metal catalysts", G.H.Via,J.H.Sinfelt and F.W.Lytle, J.Chem.Phys.,71,690(1979)
一方、高温高圧に耐えることができるX線透過窓を平板な窓材を用いて実現する従来の技術として、窓材としてベリリウムやダイアモンドを用いる技術がある。
角谷 均、上坂伸哉、NEW DIAMOND 、Vol.15 No.4 、14-19
一方、窓材としてベリリウムやダイアモンドを用いる従来技術では、ダイアモンドは高価であるだけでなく、回折X線を出すためにXAFS測定用セルの窓材として用いるには必ずしも良い材料ではなく、また、ベリリウムは毒性を持ち、酸化雰囲気で容易に酸化されるという点に問題がある。
上記課題およびその他の課題は、添付図面を参照した本明細書の以下の記述により明らかとなるであろう。
すなわち、上記課題を解決するために、第1の発明は、
立方晶窒化ホウ素を主成分とし、X線吸収微細構造測定に支障を生じる不純物を実質的に含まない多結晶体からなるX線透過窓を用いたことを特徴とするX線吸収微細構造測定用セルである。
ここで、立方晶窒化ホウ素を主成分とし、X線吸収微細構造測定に支障を生じる不純物を実質的に含まない多結晶体は、最も好ましくは、立方晶窒化ホウ素を主成分とし、窒化ホウ素以外の不純物を含まない多結晶体(非特許文献6参照)である。ここで、X線吸収微細構造測定に支障を生じる不純物とはNi、Cu、Coなどである。例えば、NiまたはCuが10〜100ppm含まれると、良好なスペクトルを得ることは困難となる。この多結晶体は微細な粒子からなり、また粒界に介在物をほとんど含まないため、優れた機械的特性や耐熱性を有し、高温高圧に耐え得るものであり、X線が当たっても回折X線を出さず、X線の吸収損失がほとんどなく、毒性がなく、ダイアモンドに比べてはるかに安価であり、酸化雰囲気中でも酸化されず、X線吸収微細構造測定用セルの窓材として極めて優れたものである。この多結晶体は、立方晶窒化ホウ素単相からなるのが好ましいが、立方晶以外の窒化ホウ素、例えば六方晶窒化ホウ素(hBN)、あるいは圧縮型六方晶窒化ホウ素を最大2体積%含む多結晶体でも使用することができる。これは、立方晶窒化ホウ素以外の窒化ホウ素の含有量が2体積%以下であれば、多結晶体の硬さや強度に大きな影響を及ぼさないからである。この多結晶体は、例えば、超高圧高温下で原料の六方晶窒化ホウ素を立方晶窒化ホウ素に変換させることにより合成することができる。
X線透過窓は、セルの気密性を保つ観点より、好適には、ステンレス鋼またはタングステンからなる基台、例えばステンレス鋼製フランジ上に溶接などにより接合される。これは、上記の多結晶体は、不均一な締め付けに弱いので、直接セル本体に締め付けると容易に割れてしまうため、この問題を避ける意味で有効な方法である。典型的には、このX線吸収微細構造測定用セルは、X線透過窓を互いに対向して一対有し、それらの間にX線吸収微細構造測定を行う固体試料、例えば固体触媒を有する。
X線吸収微細構造(XAFS)には、X線吸収広域微細構造(Extended X-ray Absorption Fine Structure, EXAFS)と吸収端近傍X線吸収微細構造(Near-edge X-ray Absorption Fine Structure,NEXAFS)とが含まれる。
このX線吸収微細構造測定用セルは、流通反応器にもバッチ反応器にも使用することができ、また、液相反応のみならず、気相反応にも使用することができる。
立方晶窒化ホウ素を主成分とし、X線吸収微細構造測定に支障を生じる不純物を実質的に含まない多結晶体からなるX線透過窓を用いたX線吸収微細構造測定用セルを少なくとも一つ有することを特徴とする反応システムである。
ここで、X線吸収微細構造測定用セルは、例えば、反応に用いる固体触媒の反応活性の度合いをモニターするために用いることができる。すなわち、固体触媒を使用し続けると反応活性が次第に低下し、やがては失活することから、この固体触媒の活性点構造の変化をX線吸収微細構造測定によりモニターすることができる。典型的な一つの例では、このX線吸収微細構造測定用セルは、触媒装置が取り付けられた主反応管をバイパスする副反応管の途中に設置する。
第2の発明においては、その性質に反しない限り、第1の発明に関連して説明したことが成立する。
ポリベンズイミダゾールからなることを特徴とするX線透過窓である。
ここで、このX線透過窓は、温度や圧力が比較的低い場合(例えば、温度は400℃程度まで、圧力は50気圧程度まで)に用いて好適なものである。
第4の発明は、
ポリベンズイミダゾールからなるX線透過窓を用いたことを特徴とするX線吸収微細構造測定用セルである。
第5の発明は、
ポリベンズイミダゾールからなるX線透過窓を用いたX線吸収微細構造測定用セルを少なくとも一つ有することを特徴とする反応システムである。
第3〜第5の発明においては、その性質に反しない限り、第1および第2の発明に関連して説明したことが成立する。
まず、この発明の第1の実施形態によるin-situ XAFS測定用セルについて説明する。
図1〜図4はこのin-situ XAFS測定用セルを示し、図1は上面図、図2は側面図、図3は図1のIII−III線に沿っての断面図、図4は固体触媒の近傍の拡大断面図である。
このin-situ XAFS測定用セルにおいては、ボルト6〜9を十分に締めつけた状態で、X線透過窓2、4と固体触媒5および原料流通部材19とが密着しており、固体触媒5が置かれた空間の気密性が保たれるようになっている。
このin-situ XAFS測定用セルの主要部の寸法の例を挙げると、上部フランジ1および下部フランジ3の一辺の長さは75cmで厚さは25cm、凸部1a、3aの直径は16mm、X線透過窓2、4の厚さは2mm、貫通穴18、19の径が最も小さい部分の径は6mm、X線透過窓2、4の間隔、すなわち固体触媒5の厚さは2mm、原料流通部材20の厚さは16mm、原料流通口24、25の径が最も小さい部分の径は1mmである。
原料流通部材20の原料流通口24、25の連結具26、27にそれぞれ原料輸送用の管(図示)を接続し、連結具26に接続された管から原料を原料流通口24に導入し、この原料を固体触媒5に通し、この固体触媒5から出てくる原料を原料流通口25を通して連結具27に接続された管に流す。原料は液相、気相のいずれであってもよい。このとき、外部に設けられたX線発生装置(図示せず)により発生したX線を上部フランジ1の貫通穴18からX線透過窓2を通して固体触媒5に入射させ、透過X線をX線透過窓4を通して外部に取り出し、下部フランジ3の貫通穴19から外部に出てくるX線をX線検出器(図示せず)により検出し、in-situ XAFS測定を行う。
図6に、500℃における水素流通下の還元雰囲気の測定で得られたEXAFSスペクトルを示す。また、図7に反応前および高温高圧反応条件下におけるEXAFS振動構造とその差のスペクトルとを示す。図6および図7から分かるように、良好なEXAFS振動を得ることができた。
このin-situ XAFS測定用セルにおいては、X線透過窓2、4の素材としてポリベンズイミダゾールを用いる。
その他のことは、第1の実施形態によるin-situ XAFS測定用セルと同様であるので、説明を省略する。
図8にこの反応システムを示す。
図8に示すように、この反応システムにおいては、主反応管51に、固体触媒を用いた触媒装置52が取り付けられている。主反応管51の上流には、この主反応管51に流す原料の制御のためのバルブ53が設けられている。原料は液相、気相のいずれであってもよい。触媒装置52とバルブ53との間にはガス管54が接続されている。このガス管54には、このガス管54に流すガスの制御のためのバルブ55が設けられている。主反応管51には、触媒装置52の直ぐ上流と下流とをバイパスする形で副反応管56が接続されている。副反応管56には、第1または第2の実施形態によるin-situ XAFS測定用セル57が接続されている。このin-situ XAFS測定用セル57の固体触媒5は、触媒装置52に用いる固体触媒と同一のものである。このin-situ XAFS測定用セル57と触媒装置52の上流部の主反応管51との間にはバルブ58が設けられている。また、このin-situ XAFS測定用セル57と触媒装置52の下流部の主反応管51との間にはバルブ59が設けられている。一方、このin-situ XAFS測定用セル57の両側にはX線発生装置60およびX線検出器61が設置されている。X線検出器61の出力はコンピュータを用いたXAFS解析装置62に送られ、このXAFS解析装置62による解析結果に応じてバルブ53、55の開閉を制御することができるようになっている。
バルブ53、55、58、59をすべて開いた状態で主反応管51の上流から原料を流し、触媒装置52で触媒反応を行い、反応後の原料を下流に流す。主反応管51から流す原料は副反応管56にも流れ、in-situ XAFS測定用セル57を通って主反応管51に合流する。このin-situ XAFS測定用セル57においては、定期的、連続的あるいは任意の時刻でX線発生装置60からX線を発生させてX線検出器61により検出することでin-situ XAFS測定を行い、固体触媒5の状態をモニターする。そして、X線検出器61による検出結果をXAFS解析装置62により処理し、その処理結果から、固体触媒5の反応活性の度合いが予め定めたしきい値を下回ったと判断された場合には、バルブ53を閉じて主反応管51に原料を流すのを一時的に停止する。このとき、ガス配管54から、触媒装置52の固体触媒およびin-situ XAFS測定用セル57の固体触媒5の反応活性を回復させるためのガスを流し、活性の度合いを予め定めた基準値以上に回復させる。こうして触媒装置52の固体触媒およびin-situ XAFS測定用セル57の固体触媒5の反応活性を回復させたら、バルブ53を開いて主反応管51に再び原料を流す。
EXAFS測定により測定した結果を図9に示す。ただし、図9の縦軸はPtのLIII 吸収端EXAFS(k3 x(k))のフーリエ変換、横軸は距離を示す。図9から分かるように、固体触媒5の反応活性は、H2 Sの影響で固体触媒5の構造変化が起こるのに伴って急激に低下し、最終的には最初の1/25になる。これを同時にEXAFSで追跡すると、Pt−Sのピークが増えてPt自体が硫化されることが分かる。こうしてin-situ XAFS測定用セル57の固体触媒5の活性の変化を検出することができるので、予め決めたしきい値、例えば反応活性が最初の1/2に落ちたときに、主反応管51にガスを流すのを一時停止し、ガス管54からH2 を流すことにより、触媒装置52の固体触媒およびin-situ XAFS測定用セル57の固体触媒5の反応活性を最初の状態に回復させた。
以上により、H2 S共存下におけるテトラリンの水素化反応を高い収率で良好に行うことができた。
例えば、上述の実施形態において挙げた数値、材料、原料、形状、配置などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じて、これらと異なる数値、材料、原料、形状、配置などを用いてもよい。
Claims (7)
- 立方晶窒化ホウ素を主成分とし、X線吸収微細構造測定に支障を生じる不純物を実質的に含まない多結晶体からなるX線透過窓を用いたことを特徴とするX線吸収微細構造測定用セル。
- 上記X線透過窓が平坦な平板状の形状を有することを特徴とする請求項1記載のX線吸収微細構造測定用セル。
- 上記X線透過窓がステンレス鋼またはタングステンからなる基台上に接合されていることを特徴とする請求項1または2記載のX線吸収微細構造測定用セル。
- 上記X線透過窓を互いに対向して一対有し、それらの間に固体触媒を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のX線吸収微細構造測定用セル。
- 立方晶窒化ホウ素を主成分とし、X線吸収微細構造測定に支障を生じる不純物を実質的に含まない多結晶体からなるX線透過窓を用いたX線吸収微細構造測定用セルを少なくとも一つ有することを特徴とする反応システム。
- 上記X線吸収微細構造測定用セルは反応に用いる固体触媒の反応活性の度合いをモニターするためのものであることを特徴とする請求項5記載の反応システム。
- 上記X線吸収微細構造測定用セルは主反応管をバイパスする副反応管の途中に設置されていることを特徴とする請求項5または6記載の反応システム。
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