JP4562020B2 - アルミナ系セラミックス材料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
このMoやWは、導体としては抵抗率が高いという欠点があるが、抵抗率の低いAgやCuは融点が低く、高温での焼成では融解してしまい、配線導体として用いることができない。また、1600℃以上という焼成温度は、エネルギー的にも大きな損失である。
そこで、アルミナ等のセラミックス原料を、AgやCuの溶けない低温で焼結可能としたものがLTCCである。LTCCは、セラミック原料に低融点のガラス原料を混合することによって、低温での焼成を可能としたもので、これらは低温で焼成可能であるために、低抵抗のAgやCuを内部導体として用いることができる。このため無機系基板としては、低抵抗の導体を使用できることなどから、HTCCからこのLTCCが、現在主流になりつつある。
また、金属元素としてAl、Ti及びMnを含み、X線回折分析によりAl2TiO5相が認められず、1310℃以下で焼成され、組成式(100−x−y)AlO3/2−xTiO2−yMnO(ただし、x、yはモル%)で表したとき、x及びyが、3.0≦x≦9.0、0.1≦y≦1.0の範囲内にあり、かつ、10GHzにおけるQ値が10,000以上であるセラミックス材料が知られている(例えば、特開2002−80273号公報を参照。)。
1.アルミナを主成分とし、これにマンガンとチタンとの複合酸化物と、酸化バナジウムとを混合、成形し、得られた成形体を焼結させることを特徴とするアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
2.アルミナを主成分とし、これにマンガンとチタンとの複合酸化物と、酸化バナジウムとを混合し、顆粒とした後、成形し、得られた成形体を焼結させることを特徴とするアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
3.マンガンとチタンとの複合酸化物がMnTiO3である前記1または2に記載のアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
4.酸化バナジウムがV2O5である前記1乃至3のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
5.アルミナ原料として平均粒径0.3〜1μmのものを使用する前記1乃至4のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
6.マンガンとチタンとの複合酸化物原料としてBET比表面積1m2/g以上のものを使用する前記1乃至5のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
7.酸化バナジウム原料として平均粒径0.5〜3μmのものを使用する前記1乃至6のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
8.混合の際に粉砕助剤を添加する請求項1乃至7のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
9.マンガンとチタンとの複合酸化物の原料中の添加量が6〜10質量%の範囲内であり、酸化バナジウムの原料中の添加量が2〜5質量%の範囲内である前記1乃至8のいずれか1項1または2に記載のアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
10.さらに、アルカリ土類金属の酸化物を含むアルミナ系セラミックス材料を原料中の2質量%以下添加する前記1乃至9のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
11.焼結温度が、900〜1100℃の範囲内である前記1乃至10のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
12.成形体の表面にAgまたはCuの回路配線を行い、その後、焼結を行う前記1乃至11のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
13.前記1乃至12のいずれか1項に記載の製造方法により得られたアルミナ系セラミックス材料。
14.アルミナを主成分とする焼結体の結晶相にMn2V2O7相が含まれていることを特徴とするアルミナ系セラミックス材料。
15.焼結体の結晶相にMnTiO3相が含まれている前記14に記載のアルミナ系セラミックス材料。
16.焼結体の結晶相にVO2相が含まれて前記14または15に記載のアルミナ系セラミックス材料。
17.焼結体の結晶相にTiO2相が含まれている前記14乃至16のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料。
18.アルミナを主成分とする焼結体の結晶相にMn2V2O7相、MnTiO3相、VO2相及びTiO2相が含まれていることを特徴とするアルミナ系セラミックス材料。
19.X線回折測定によって測定されるCu−Kα線の回折ピークにおいて、2θ=29°付近のMn2V2O7のd201のピーク強度が、2θ=32°付近のMnTiO3のd104のピーク強度よりも大きい前記14乃至18のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料。
20.焼結温度1000℃における相対密度が94%以上である前記14乃至19のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料。
21.900〜1000℃の温度領域における溶融粘度が108〜1010(poise)である前記14乃至20のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料。
22.示差熱分析測定において、1000℃付近で保持したときに吸熱ピークが検出される前記14乃至21のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料。
23.前記13乃至22のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料からなる絶縁層と、CuまたはAgの導体を有する多層配線基板。
24.前記13乃至22のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料からなる誘電体磁器。
25.前記13乃至22のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料の表面に、放射電極及びグランド電極とを備えた誘電体アンテナ。
26.前記13乃至22のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料を支持台として誘電体磁器を設置し、該誘電体磁器の両側に入出力端子を電磁界結合させてなることを特徴とする誘電体共振器。
27.前記24に記載の誘電体磁器を用いた通信機装置用誘電体フィルタ。
28.少なくとも2つの誘電体フィルタと、該誘電体フィルタのそれぞれに接続される入出力接続手段と、前記誘電体フィルタに共通に接続されるアンテナ接続手段とを有する誘電体デュプレクサであって、前記誘電体フィルタの少なくとも1つが前記27に記載の誘電体フィルタであることを特徴とする誘電体デュプレクサ。
29.誘電体デュプレクサと、該誘電体デュプレクサの少なくとも1つの入出力接続手段に接続される送信用回路と、該送信用回路に接続される前記入出力接続手段と異なる少なくとも1つの入出力接続手段に接続される受信用回路と、前記誘電体デュプレクサのアンテナ接続手段に接続されるアンテナとを有する通信機装置において、誘電体デュプレクサが前記28に記載の誘電体デュプレクサであることを特徴とする通信機装置。
さらに、本発明で焼結助剤として混合する、マンガン・チタン系の複合酸化物と酸化バナジウムとの混合物を、1000℃で保持した後に冷却し、X線回折測定を実施したところ、結晶相としてMn2V2O7相、MnTiO3相、VO2相、TiO2相が含まれていることが判明した。また、当該X線回折測定によって測定されるCu−Kα線の回析ピークにおいて2θ=29°付近のMn2V2O7相d201のピーク強度(ピーク高さに基づく)が2θ=32°付近のMnTiO3相d104のピーク強度(ピーク高さに基づく)よりも大きいことが特徴であり、好ましくは1.1〜6倍程度、より好ましくは1.5〜5倍程度である。
(1)MnOとV2O5とは800℃近傍より液相を生じ、該液相が冷却過程においてMn2V2O7相を生じるが、MnOとV2O5のみを焼結助剤として使用した場合には、アルミナ粒子表面と融液との濡れ性が悪いためにアルミナ粒子同士の焼結がうまく進行しないこと、及び
(2)TiO2はアルミナ粒子との濡れ性が良いことから推察すると、本発明のような比率で結晶相が存在することが焼結過程において好ましい影響を与えていると考えられる。
本発明のアルミナ系セラミックス材料の製造においては、原料の全体量に対する、例えばマンガンとチタンとの複合酸化物の添加量を6〜11質量%の範囲内、より好ましくは7〜9質量%の範囲内とし、例えば酸化バナジウムの添加量を2〜6質量%の範囲内、より好ましくは2.5〜4.5質量%の範囲内とする。マンガンとチタンとの複合酸化物の添加量が6質量%より低くなると所定温度での焼結が進まなくなり、11質量%より高くなると焼結体の特性が低下すると共に、本来のアルミナに類似した特性が見られなくなる。また、酸化バナジウムの添加量が2質量%より低くなると所定温度での焼結が進まなくなり、6質量%より高くなると焼結時に系外への拡散が見られセッターへのにじみが生じ、焼結体の質量が低下し、アルミナ本来の特性が見られなくなる。
なお、本発明では、原料にセラミック材料の誘電損失を下げる目的で、Ca等のアルカリ土類金属の酸化物等を、好ましくは2質量%以下程度添加しても良い。
原料として、アルミナ(平均粒径(以下、粒径と略す。):0.5μm、密度:3.98g/cm3)、MnTiO3(高純度化学(株)製,商品コード名:MNF05PA,BET比表面積:2.68m2/g,粒径:0.14μm、密度:4.55g/cm3)、V2O5(粒径:0.8μm、密度:3.35g/cm3)、MnO(粒径:1.1μm、密度:5.18g/cm3)及びTiO2(粒径:0.54μm、密度:4.26g/cm3)を用いた。これらの原料を表1に示す比率で遊星ボールミル(メーカー:フリッチュ社製,型式:P−5/4)を用いて乾式で混合し粉砕し、実施例1〜14及び比較例1〜5の原料混合物を調製した。混合に際して、原料粉末に対し粉砕助剤(エチレングリコール0.5質量%)を添加した。混合・粉砕条件は、200回転/分、混合・粉砕時間10分とした。混合・粉砕粉を金型に入れ、98MPaの圧力で加圧成形後、約2.5cmφの円柱状成形体を製造した。この成形体を、昇温速度600℃/時間、焼結温度1000℃、焼結時間5時間で焼結させた。焼結後のアルミナ系セラミックス材料の相対密度(RD)を表1に示す。
焼結助剤の高温溶融状態の粘度を知るために、直径7mmΦ、高さ6mmに加工した成形体をサンプルとして、平行板加圧粘度計(オプト企業製,PPVM−1100)を用いて測定した。実施例12の焼結助剤についての結果を図7に、比較例5の焼結助剤についての結果を図8に示す。
実施例10、12、13、14及び比較例5の作製法で得られた混合粉に対し、バインダとしてアクリル系樹脂を3質量%、可塑剤としてグリセリンを1質量%添加し、水を濃度50質量%になるようにしたものをボールミルにて1時間混合、混練しスラリーを作製した。作製したスラリーを坂本技研製型式DCR−2デスクアトマイザー式スプレードライ装置にて乾燥し、顆粒とした。作製した顆粒を金型に入れ、98MPaの圧力で加圧成形した。混合・粉砕粉を金型に入れ、98MPaの圧力で加圧成形後、約2.5cmφの円柱状成形体を製造した。
この成形体を、昇温速度600℃/時間、焼結温度1000℃、焼結時間5時間で焼結させた。得られた焼結体を加工して誘電特性測定に用いた。
測定周波数1GHzにおいては1.500±0.005mm角×80mmに、5GHzにおいては1.500±0.005mm角×70mmに加工した。このように加工した焼結体を120℃で2時間真空乾燥し、温度と湿度を一定条件にした部屋に1日放置した。そのように処理した焼結体の測定周波数1GHz及び5GHzにおける誘電率、誘電損失をアジレント・テクノロジー(株)ネットワークアナライザー型式8753ESにて測定した。
また、強度測定はJISR1601に基づき行った。すなわち、焼結体を加工した後、(株)オリエンテック製型式UCT−1Tにて3点曲げ強度を測定した。
以上、実施例15〜18及び比較例6の焼結体の相対密度、強度、誘電特性の結果を表2に示す。
セイコー(株)製示差熱分析計SSC220を使用した。昇温速度10℃/minで1000℃まで昇温後、1000℃にて5時間保持する温度条件で測定した。実施例12の焼結助剤について測定したTG−DTA曲線を図9に示す。
(株)リガク製X線回折装置を使用し、X線発生装置としてRU−200Bを、ゴニオメーターとしてRad−Bを使用した。X線源としてCu−Kα線を、モノクロメーターとしてグラファイトを使用し、出力50kV、180mA、スリット幅1/2−1/2−0.15mmにおけるX線回折図をスキャン速度5°/min、ステップ0.02°で測定した。実施例12の焼結助剤について1000℃、5時間保持後冷却した試料について測定したX線回折図を図10に示す。2θ=27°、36°、39°、41°、54°、57°付近にTiO2結晶相d110、d101、d200、d111、d211、d220由来の回折ピーク、2θ=24°、32°、35°付近にMnTiO3結晶相d012、d104、d110由来の回折ピーク、2θ=28°付近にVO2結晶相d201由来の回折ピーク、2θ=17°、29°、34°、43°、46°、54°付近にMn2V2O7結晶相d110、d201、d130、d311、d222、d132由来の回折ピークが検出された。
また、当該試料のMn2V2O7結晶相由来の29°付近のピーク強度(ピーク高さ)はMnTiO3結晶相由来の32°付近のピーク強度(ピーク高さ)の4倍程度であった。
一方、比較例5の焼結助剤について同様に測定したX線回折図を図11に示す。Mn2V2O7結晶相d201由来の29°付近のピーク強度(ピーク高さ)はMnTiO3結晶相d104由来の32°付近のピーク強度(ピーク高さ)の0.7倍程度であった。
2 アンテナ基体
3 入力電極
4 放射電極
5 グランド電極
11,21 誘電体共振器
12 金属ケース
13 支持台
14,22 誘電体磁器
15 入力端子
16 出力端子
23a 内導体
23b 外導体
24、46、48 誘電体フィルタ
25、50 外部結合手段
26、32 誘電体デュプレクサ
27、40 入力接続手段
28、42 出力接続手段
29、44 アンテナ接続手段
30 通信機装置
34 送信用回路
36 受信用回路
38 アンテナ
Claims (12)
- アルミナを主成分とし、アルミナ原料として平均粒径0.3〜1μmのものを使用し、これにマンガンとチタンとの複合酸化物と、酸化バナジウムとを混合、成形し、得られた成形体を焼結させることを特徴とするアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
- アルミナを主成分とし、これにマンガンとチタンとの複合酸化物と、酸化バナジウムとを混合し、顆粒とした後、成形し、得られた成形体を焼結させることを特徴とするアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
- マンガンとチタンとの複合酸化物がMnTiO3である請求項1または2に記載のアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
- 酸化バナジウムがV2O5である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
- アルミナ原料として平均粒径0.3〜1μmのものを使用する請求項2に記載のアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
- マンガンとチタンとの複合酸化物原料としてBET比表面積1m2/g以上のものを使用する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
- 酸化バナジウム原料として平均粒径0.5〜3μmのものを使用する請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
- 混合の際に粉砕助剤を添加する請求項1乃至7のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
- マンガンとチタンとの複合酸化物の原料中の添加量が6〜10質量%の範囲内であり、酸化バナジウムの原料中の添加量が2〜5質量%の範囲内である請求項1乃至8のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
- さらに、アルカリ土類金属の酸化物を含むアルミナ系セラミックス材料を原料中の2質量%以下添加する請求項1乃至9のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
- 焼結温度が、900〜1100℃の範囲内である請求項1乃至10のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
- 成形体の表面にAgまたはCuの回路配線を行い、その後、焼結を行う請求項1乃至11のいずれか1項に記載のアルミナ系セラミックス材料の製造方法。
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