前掲の特許文献1には外周部の放射線硬化性樹脂に放射線が照射されないようにする具体的な方法などは記述されていないが、前掲の特許文献2ではマスク部材で外周部を覆うことによって外周端部の放射線硬化性樹脂が硬化されないようにしている。しかしながらこの方法では、スピンコート法により放射線硬化性樹脂を展延している過程で放射線を照射すると、振り切られた放射線硬化性樹脂がマスク部材に付着し硬化するので、展延の過程で放射線を照射することは難しい。更に特許文献1、2に開示されている放射線の照射方法では、スピン装置で放射線照射を行うと、振り切られた放射線硬化性樹脂がスピン装置の内壁に付着し硬化するので、放射線照射工程はスピン装置とは別のポジションで行わなければならないという問題がある。また、マスク部材で遮光する方法はマスク部材を放射線硬化性樹脂膜に接触させることができないので、漏れた放射線がその樹脂膜に照射され、その樹脂膜の軟化と硬化との境界領域が半硬化状態になるために、その後に高速回転工程を行っても樹脂膜の厚みを均一化させることが困難であった。また、マスク機構を備えることで装置が大型化、複雑化するばかりでなく、コストアップになるという問題もある。
特許文献3に記載された方法は、結果的に急勾配の山形の強度分布を有するスポット光を回転している基板上の塗膜に螺旋状に照射させて順次螺旋状に硬化させていく方法である。したがって、勾配の急な山形の強度分布を有するスポット光が螺旋状に照射される毎に急激に螺旋状に硬化される。この螺旋状に急速に硬化されることにより、塗膜が螺旋状に急激に硬化収縮し、この急激な硬化収縮に起因して、塗膜が螺旋状に凸凹して波うつために塗膜の平坦性が低下し、また、外観的に螺旋状の線が描かれてしまうという外観上の問題がある。さらに、塗膜を硬化させるまでに時間がかかるという欠点もある。前掲の特許文献4に記載された方法は、照射時間の経過に伴って円状の光の外径が大きくなって、光の照射範囲を拡大していくメカシャッタ方式であるので、基板の外周側に比べて内周側の光照射時間が長くなり、内周と外周とで温度差が生じて基板に反りを発生させる原因となる。また、装置全体が大型化し、重くなるだけでなく、メカシャッタを冷却するための冷却装置が必要になるなどの欠点がある。特に、次世代の光ディスクにあっては高精度の平坦性が要求されるので、このような反りの発生を無視することはできない。
前掲の特許文献5に記載された放射線照射方法は、高精度に均一な塗膜を形成する技術ではあるが、放射線の照射幅が狭い場合には前掲の特許文献3と同様な問題点が生じる。放射線の強度分布の勾配が緩やかな山形の強度分布にするほどその問題点は解決されるが、放射線の強度分布を緩やかな山形にする場合には照射境界領域が不鮮明になり、広い範囲の照射境界領域における樹脂膜が硬化が不足する。このことは、前掲の特許文献2の問題点と同様に、その後に高速回転工程を行っても樹脂膜の厚みを均一化させることは難しい。
したがって、本発明は高速回転による遠心力を利用して基板上に均一な膜厚の樹脂膜を、又は基板間に均一な膜厚の樹脂膜を形成する場合の問題点を解決することを主眼としている。先ず、前記樹脂膜を一様に硬化させるために光照射面に照射する光として、内周側又は回転中心軸線から設定位置の手前の所定位置まで、半径方向の強度分布の勾配が光の照射と非照射との境界での前記樹脂膜の硬化収縮率を、硬化が進行する方向(基板の内側から外側に向かう方向)に対して緩やかにして、前記樹脂膜に凹凸を生じない第1の光を照射し、次にその所定位置から光を制御して強度分布の勾配を急にし、所定位置から設定位置まで強度分布の勾配が急な光を照射することによって、光の照射全面にほぼ一様に光エネルギー量を照射しながら、前掲の特許文献1〜5の前記問題点を解決している。
第1の発明は、基板を回転中心軸線を中心に高速回転させることにより前記基板に供給された光硬化性樹脂を展延して所定の膜厚の樹脂膜を前記基板に形成している最中に、又は前記基板に形成した後に、前記樹脂膜に光を照射して硬化させる樹脂膜形成方法において、前記光の照射を止める前記樹脂膜の設定位置の手前の所定位置まで、前記光の強度分布の勾配が光の照射と非照射との境界で前記樹脂膜に凹凸を生じないような緩やかな勾配の第1の光を前記回転中心軸線側から外周側に向けて移行させながら照射し、前記所定位置で前記第1の光の強度分布の勾配が急傾斜になるように制御し始めて第2の光を形成し、前記設定位置では予め設定された急な勾配の強度分布になるように前記第2の光を制御し、前記設定位置近傍での第2の光の照射と非照射の境界を鮮明にすることを特徴とする樹脂膜形成方法を提供する。
第2の発明は、前記第1の発明において、光照射開始時刻t1から前記第1の光が前記所定位置に到達する時刻t2までの間、前記第1の光は前記樹脂膜の光照射面の内周側から外周側に向け移行して前記基板を照射し、前記時刻t2から、前記第1の光の強度分布の勾配が大きくなるように制御され始めた前記第2の光を前記基板に照射し、前記第2の光は、前記設定位置に到達する時刻t3には、予め設定された前記急な勾配の強度分布に制御されていることを特徴とする樹脂膜形成方法を提供する。
第3の発明は、前記第1の発明又は前記第2の発明において、前記第1の光の移行速度を、照射時間の経過に伴って前記光照射面の回転中心側に比べて外周側が遅くなるように制御することにより、前記第1の光が照射する照射面の単位面積当たりの光照射エネルギー量を一様にすることを特徴とする樹脂膜形成方法を提供する。
第4の発明は、前記第1の発明ないし前記第3の発明のいずれかにおいて、前記第1の光の照射時間を、前記光照射面の回転中心側に比べて外周側が長くなるように制御することにより、前記第1の光が照射する照射面の単位面積当たりの光照射エネルギー量を一様にすることを特徴とする樹脂膜形成方法を提供する。
第5の発明は、前記第1の発明ないし前記第4の発明のいずれかにおいて、前記基板は1層以上の信号記録層が形成されたディスク基板であり、前記光照射面は前記ディスク基板の前記信号記録層上に形成された光透過層であり、前記ディスク基板を回転させることにより前記光硬化性樹脂を展延させて所定の膜厚の前記光透過層を形成している状態で、前記第1の光及び前記第2の光が前記光透過層に照射され、前記第2の光を照射した後に、前記ディスク基板を再び回転させて、外周側の未硬化の前記光透過層を平坦化することを特徴とする樹脂膜形成方法を提供する。
第6の発明は、前記第1の発明ないし前記第4の発明のいずれかにおいて、前記第1の光の外周側への移行速度は、前記樹脂膜を形成する液状物質が展延されて前記樹脂膜が所定の厚みになっていく時間に依存し、前記樹脂膜が所定の厚みになった時点で膜厚を順次確定していくことを特徴とする樹脂膜形成方法を提供する。
第7の発明は、基板回転機構の回転による遠心力を利用して基板上に又は基板間に形成された樹脂膜に光を照射して硬化させる紫外線照射機構を備えた装置おいて、前記紫外線照射機構は、前記樹脂膜の光照射面に照射される光を発生する光源と、前記光の照射開始、照射停止を制御する制御装置と、前記光の強度分布の勾配を変える光強度分布変更機構とを備え、前記光強度分布変更機構は、前記光の照射を止める前記樹脂膜の設定位置の手前の所定位置まで、前記光の強度分布の勾配が光照射と非照射との境界で前記樹脂膜に凹凸を生じないような緩やかな勾配の光が照射されるように前記基板の回転中心軸線側から外周側に向けて前記光を移行させ、前記所定位置で前記光の強度分布の勾配が大きくなるように変更し、前記光の強度分布は前記設定位置では予め設定された急な勾配となり、前記設定位置近傍での前記光の照射と非照射の境界を鮮明にすることを特徴とする樹脂膜形成装置を提供する。
第8の発明は、前記第7の発明において、前記光強度分布変更機構は、前記光源からの光の強度分布の勾配を変えるレンズ機構と、前記レンズ機構を前記樹脂膜に対して垂直上方向に移動させる昇降装置とからなり、前記昇降装置が前記レンズ機構を前記光照射面から離れる方向に移動させるとき、前記光は前記光照射面を回転中心軸線側から外周側に向けて移行し、前記光の照射開始時刻t1から前記光が前記所定位置に到達する時刻t2に、前記レンズ機構が前記光の焦点を絞って前記光の強度分布の勾配が大きくなるように変更することを特徴とする樹脂膜形成装置を提供する。
第9の発明は、前記第8の発明において、前記昇降装置は、前記レンズ機構が前記光照射面から離れるように駆動するとき、前記レンズ機構が前記光照射面から離れるに従って、上昇速度を低下させて前記光が照射する照射面の単位面積当たりの光照射エネルギー量を一様にすることを特徴とする樹脂膜形成装置を提供する。
第10の発明は、前記第7発明において、前記紫外線照射機構は、先端部分が円環状に配置される複数の光ファイバ、又は円環状に配置される複数の発光ダイオード、あるいは円環状の紫外線照射ランプからなる円環状光形成部を備え、前記円環状光形成部から円環状の光が照射されることを特徴とする樹脂膜形成装置を提供する。
第11の発明は、前記第7の発明において、前記光強度分布変更機構は、前記光源からのスポット状の光の強度分布の勾配を変えるレンズ機構と、前記光源と前記レンズ機構とを前記光照射面に対し平行に移行させる平行移動装置とからなり、前記基板が回転している状態で、前記平行移動装置が前記光源と前記レンズ機構とを前記樹脂膜上を平行に移動させることにより、前記スポット状の光は前記光照射面を前記回転中心軸線側から外周側に向けて移行し、前記スポット状の光の照射開始時刻t1から前記スポット状の光が前記所定位置に到達する時刻t2に、前記レンズ機構が前記スポット状の光の焦点を絞り始めて前記スポット状の光の強度分布の勾配が大きくなるように変更することを特徴とする樹脂膜形成装置を提供する。
第12の発明は、前記第7の発明ないし前記第11の発明のいずれかにおいて、前記レンズ部と前記樹脂膜との間に位置するように、前記レンズ機構に特定波長カットフィルタを備え、その特定波長カットフィルタが特定波長以下の波長の前記光を通過させないことによって、光の色収差による影響を低減して設定位置Yでの光の照射と非照射の境界をより鮮明にすることを特徴とする樹脂膜形成装置を提供する。
前記第1の発明によれば、樹脂膜の回転中心軸線側から設定位置まで光を照射する場合に、遮光マスクを用いることなく、前記樹脂膜の光照射面にほぼ一様な光エネルギー与えて前記樹脂膜を一様に硬化させることができるだけでなく、設定値での光の照射と非照射との境界を狭い領域で鮮明にすることができる。したがって、従来の樹脂膜が波打つことなどによるその平坦性の低下の問題を解決できる。また、照射光が広がらないから、不要な箇所に光が照射されることがなく、樹脂膜の形成ポジションと同一のポジションで光の照射を行うことも可能である。
前記第2の発明によれば、前記第1の発明で得られる効果に加えて、少なくとも光の強度分布の勾配が樹脂膜の設定位置Yで予め設定された急な勾配になればよいので、緩やかな勾配の強度分布の光から設定された急な勾配の強度分布の光まで変更する時間を制御、例えば最短にすることによって、緩やかな勾配の光の照射時間を長くすることができ、樹脂膜の平坦化に影響することないので、均一な膜厚で平坦性のより優れた樹脂膜を形成することができる。
前記第3の発明又は前記第4の発明によれば、前記発明のいずれかで得られる効果の他に、強度分布の勾配が緩やかな照射光の外周側への移行に伴う照度の変化を補償して照射強度を一様にできるので、光の有効な照射時間を短くでき、樹脂膜の平坦性をより向上できると共に、基板の反りを抑制できる。
前記第5の発明によれば、光マスクなどを用いることなく、平坦性の優れた樹脂膜を有する品質の高い光ディスク基板を得ることができる。また、照射光が不要に広がらないから、不要な箇所に光が照射されることがなく、樹脂膜の形成した基板回転機構で光の照射を行うことも可能である。
前記第6の発明によれば、前記第1の発明ないし前記第5の発明で得られる効果の他に、光の外周側への移行速度を、樹脂膜が所定の膜厚になる箇所が内周側から外周側に移行していく速度とほぼ等しくしているので、光の照射に起因する樹脂膜の平坦性の低下、及び基板の反りの問題を解決できる。
前記第7の発明によれば、遮光マスクを用いることなく、基板の所定外周部分に光を照射せずにそれ以外の面域に良好に光を照射でき、しかも光の照射と非照射との境界が鮮明な装置を提供できる。したがって、樹脂膜の平坦性の低下の問題を解決できる。
前記第8の発明によれば、前記第7の発明で得られる効果の他に、レンズ機構によって円環状の光の焦点を絞って強度分布の勾配を変更しているので、容易に所望の勾配を有する強度分布を得ることができ、円環状の光を照射することによる影響を従来のような弊害を実質的に生じない程度まで低下させることができる。
前記第9の発明によれば、前記第7の発明で得られる効果の他に、光照射面に照射される光のエネルギーが一様になるように光を制御しているので、より一層、樹脂膜の平坦性を向上できる。
前記第10の発明によれば、前記第7の発明又は前記第9の発明によって得られる効果の他に、光ファイバの円環状の先端面から円環状の光を照射するので、光照射ヘッドを小型軽量化でき、また、放熱が小さいので冷却装置が不要であるなど、更に小型軽量化ができるので、光照射ヘッドの駆動力を小さくでき、駆動速度を高速化できる。
前記第11の発明によれば、前記第7の発明によって得られる効果の他に、レンズ機構によってスポット状の光の焦点を絞って強度分布の勾配を変更しているので、容易に所望の勾配を有する強度分布を得ることができ、スポット状の光を照射することによる影響を従来のような弊害を実質的に生じない程度まで低下させることができる。
前記第12の発明によれば、前記第7の発明ないし前記第11の発明のいずれかによって得られる効果の他に、色収差の影響を低減できるので、設定位置での光の照射と非照射の境界をより鮮明にすることができる。
本発明が適用される対象物は、ブルーレイディスク(Blu−ray Disc)、又はHD−DVD(High Definition DVD)と称される高記録密度の光ディスクに限られるわけではないが、特にこれら高記録密度の光ディスクにあっては、カバー層となる光透過性の樹脂膜、及び接着剤層も兼ねる透明な樹脂膜の厚みの不均一性は大きな問題になる。ブルーレイディスクでは、接着剤層とシートとからなる光透過保護層、あるいは光の透過特性に優れた樹脂膜だけからなる光透過保護層の厚みが0.1mmと非常に薄いので、接着剤層や前記樹脂膜の厚みの不均一性及び基板の反りはディスクの品質に大きな影響を及ぼし、高記録密度の光ディスクの品質を左右する。また、高記録密度の別の光ディスクであるHD−DVDにあっては、貼り合わされる双方の基板が0.6mmの厚みであって、通常のDVDと同じであるが、それらを貼り合わせる接着剤層の膜厚を十分に高い精度で均一にしなければならず、いずれにせよ接着剤層や樹脂膜の厚みの均一性及び反りの低減が高記録密度の光ディスクの品質を大きく左右する。また、通常のDVD、コンパクトディスクなど他の種々の基板に形成される樹脂膜の膜厚をより一層均一化すると共に、基板の反りを低減することが望まれる。
先ず、実施形態を説明する前に本発明の基本について図1、図2により説明する。本発明はブルーレイディスクなどのような基板1の外周端の手前の設定位置Yまで光を照射し、設定位置Yで光の照射を少なくとも一旦止めるものである。しかし、このように基板1の外周端の手前の設定位置Yまでで光の照射を止める場合には、前に述べたように、樹脂膜の波うちを防ぐために光照射と非照射との境界で前記樹脂膜に凹凸を生じないような緩やかな強度分布を有する光(光の照射範囲の広い)を設定位置まで照射するのが好ましいが、このような勾配が緩やかな強度分布を有する光が設定位置Yを越えないように照射するのは難しく、また、できるだけ光が設定位置Yを越えないように照射すると、設定位置Yの手前での光の照射と非照射との中間の領域、つまり硬化の進み方の異なる硬化が不十分な領域がかなり広くなり、後の工程によってこの中間の領域が樹脂膜の平坦性の低下を招来するという問題がある。したがって、本発明は、高速回転によって形成された樹脂膜2の設定位置Yの手前の所定位置Zまで、光照射と非照射との境界で樹脂膜2に凹凸を生じないような勾配が緩やかな強度分布を有する光を照射し、その光の強度分布を所定位置Zで制御し始め、光が設定位置Yで消滅するときには少なくとも予め決められた急な勾配の強度分布を有するように光を制御するものである。
この方法によれば、設定位置Yでの光の照射と非照射との境界が鮮明になり、樹脂膜の硬化と非硬化の中間の領域が狭くなるので、設定位置Yよりも外周側の樹脂膜に悪影響を与えることなく樹脂膜の平坦性を向上させることができる。つまり、光の照射と非照射との境界の不鮮明な中間の領域は一部の樹脂が硬化傾向を呈する状態、つまり硬化が不十分な状態にあり、次の高速回転処理時にその硬化の不十分な領域の樹脂膜が遠心力によって外周側に移動するために薄くなり、樹脂膜の平坦性を低下させるので、光の照射と非照射との境界の不鮮明な領域が狭いほど樹脂膜の平坦性の向上にとっては好ましい。あるいは前記不鮮明な領域が設定位置Yの外周側に延びていれば、後の高速回転処理によってもその領域は平坦にならず、いずれにせよ平坦性は低下する。なお、硬化とは、高速回転による遠心力で、樹脂膜が外方向に部分的にも移動しない程度まで、樹脂が固化していることを言う。
前記液状物質として紫外線硬化型の樹脂を用いる場合には、ここで用いる光は紫外線である。第1の光U1は、例えば図2に示すように、光エネルギー(強度)が緩やかにピーク値まで上昇し、ピーク値から比較的緩やかに下降する照射範囲の広い山形の強度分布(勾配の緩やかな)を有する光であり、光の照射と非照射との境界の強度が緩やかに変化する。つまり、第1の光U1が円環状の光又は円形のスポット状の光であるとき、円形状の基板1の半径方向の光幅の強度分布の勾配が光照射と非照射との境界で樹脂膜2に凹凸を生じないような緩やかに変化する光である。したがって、光照射面2Aでの第1の光U1における基板1の半径方向の光幅は後述する第2の光U2の光幅よりも大きい。
ここで、第1の光U1は緩やかな山形の強度分布を有する光であるという表現は、後述する第2の光U2のシャープな山形の強度分布の立上りの勾配、又は立上りと立下りの勾配と対比して第1の光U1の強度分布の立上りの勾配、又は立上りと立下りの勾配が緩やかであることをいう。したがって、第1の光U1は不図示の光源からの光そのものであっても良いし、またその光を拡張した光、あるいは光源からの光を縮小、例えば焦点を絞った光であっても良いが、光照射と非照射との境界で樹脂膜2に凹凸を生じないような緩やかに変化する光である。ここで、光の強度分布の立上り及び立下りの勾配は互いにほぼ同じでも、異なってもどちらでもよいが、光の強度分布の立上りが樹脂膜の硬化収縮の変化率に影響する。つまり、光の強度分布の立下りが通過するときには既に樹脂膜は硬化さており、光の強度分布の立下りは樹脂膜の硬化収縮の変化率に影響しないので、光の強度分布の立下りの勾配は実質的に問題にならない。なお、光の強度分布の立上りは基板1に照射される光の強度分布の外周側(光の進行方向)の勾配、立下りは基板1の中心軸線X側の勾配をそれぞれ言う。
高速回転により樹脂が展延されて樹脂膜2が基板1上に形成されている期間又は形成された後に、図1(A)に示すように、第1の光U1は樹脂膜2の内周端2Bに照射される。第1の光U1の照射時間は、樹脂膜2の内周端2Bが所定の膜厚になる時刻t1(以下では光照射開始時刻t1という。)から第1の設定時間T1が経過する時刻t2までの間であり、第1の光U1は第1の設定時間T1の間に内周端2Bから光照射面2Aを設定位置Yの手前の所定位置Zまで移行する。つまり、第1の光U1は時刻t2に所定位置Zに到達する。この第1の光U1が移行する過程で、どの照射箇所でも第1の光U1の強度分布に従って光の強度が変化するので、光の強度が一様になるように前記第1の光が照射する照射面の単位面積当たりの光照射エネルギー量を一様にすることが好ましい。
前述したように、スピンコート法によって樹脂膜2を形成するときには外周部で膜厚が厚くなる肉厚部分2Cが生じるので、設定位置Yは肉厚部分2Cの内周側寸前の位置である。第1の光U1の移行速度は一定、又は予め決めた速度プログラムで変化する速度であるので、第1の光U1が樹脂膜2の内周端2Bから設定位置Yの手前の所定位置Zまで移行する所要時間は予め正確に求めることができ、その所要時間が第1の設定時間T1(時刻t1〜t2)である。この第1の設定時間T1は後述する第2の設定時間T2の長さに左右される。ここで、第1の光U1はその半径方向の強度分布の勾配が緩やかに変化する光であり、光の照射と非照射との境界が比較的不鮮明な状態を呈するので、第1の光U1が外周側に移行する過程で基板1の回転により微視的に見て不連続的に照射されても、従来のように塗膜の平坦性の低下、反りあるいは外観上の問題が生じることはない。
第2の光U2は、図2に示すように、第1の光U1に比べて強度分布が急な勾配の光である。第2の光U2は、設定位置Yでの光の照射と非照射との境界が鮮明になる程度の勾配を有する強度分布に設定されている。つまり、第2の光U2は第1の光U1の強度分布を第2の設定時間T2(t2〜t3)以内に設定強度分布まで変化させる光であり、第2の設定時間T2内に強度分布の勾配が急勾配になって行く光である。したがって、光の強度分布の変更速度が速ければ第2の設定時間T2は短く、その分だけ第1の設定時間T1を長くすることができる。他方、強度分布の変更速度が遅ければ第2の設定時間T2は長くなり、その分だけ第1の設定時間T1が短くなる。第2の光U2は樹脂膜2が肉厚部分2Cの寸前の設定位置Yまで照射され、肉厚部分2Cには実質的に照射されないで消滅する。
所定位置Zから設定位置Yまでの僅かな距離の面域は第1の光U1よりも勾配が急な第2の光U2が照射されるので、所定位置Zまでの第1の光U1の単位面積当たりの光エネルギー量とほぼ等しくできるので、基板1の照射面全面の光エネルギーをほぼ一様にすることができる。また、設定位置Yでは第2の光U2の照射と非照射との境界が鮮明であるので、樹脂膜2が肉厚部分2Cの寸前まで硬化され、肉厚部分2Cは未硬化のままで残される。このことは、従来のように光の照射を遮るマスク部材を備えることなく、光の照射が不要な領域に光を照射することなく、選択的に所望の強度分布の光を照射することを可能にする。樹脂膜2の未硬化の肉厚部分2Cはそのままに放置されるか、又は未硬化の状態の肉厚部分2Cに遠心力を与えて平坦化するための付加的なスピン処理が行われた後に光が照射され、硬化される。
[実施形態1]
図1ないし図5によって本発明の実施形態1に係る樹脂膜の形成方法及び形成装置を説明する。図3は本発明の実施形態1に係る樹脂膜の形成装置を説明するための図であり、図4は光の照射を説明するための図である。図5は基板のスピンプログラムの一例であるスピンパターンSPを示す図である。この実施形態1では、光照射と非照射との境界で樹脂膜2に凹凸を生じないような緩やかな勾配の強度分布を有する円環状の第1の光線U1が、その照射面域の光エネルギーの時間積分値(総光量)がほぼ均一になるように、樹脂膜の展延速度に対応して順次、円環状の光線U1の内径と外径とを大きくしていく。基板1の光照射面の全面にほぼ均一の光エネルギー量を照射することによって、基板の内周側から硬化させてほぼ一定の厚みに確定して行く。そして、ほぼ所定の厚みになった箇所の液状物質がその後の高速回転により放射外方向に移動するのを防ぐことによって、基板に反りを発生することなく、基板全面における液状物質の膜厚の均一化及び樹脂膜の平坦化を図っている。なお、基板1は1層以上の信号記録層を有するディスク基板、あるいはガラス基板などであるが、ここでは高記録密度の光ディスクなどのディスク基板を基板1としている。
先ず、図3によってこの樹脂膜形成装置の概略を説明すると、この樹脂膜の形成装置は選択されたスピンパターンに従って回転中心軸線Xを中心に基板1を回転させる基板回転機構3、基板1に円環状の紫外線を照射する紫外線照射機構4、紫外線照射機構4からの円環状の紫外線から所定の焦点の第1の光U1を形成し、その第1の光U1の焦点を変更して第2の光U2を形成するレンズ機構5、紫外線照射機構4の一部分とレンズ機構5とからなる光照射ヘッド6を上下に移動させる昇降装置7、及びこれらを制御する制御装置8を備える。基板回転機構3は一般的にはスピンナと称されるものであって、制御装置8のメモリ部(不図示)からの選択されたスピンパターン(例えば、図5の曲線SP)に従って回転軸3Aを回転させ得る回転駆動部3Bと、回転軸3Aの先端に固定されている基板受台3Cと、液状物質が周囲に飛散するのを防ぐカバー部材3Dとから概略なる。
図示していないが、一例として、一般的な構成の回転機構と液状物質供給機構とが別の位置に備えられており、その液状物質供給装置の吐出ノズルが紫外線硬化型樹脂のような液状物質を円環状に基板1に供給する。円環状に液状物質が供給された基板1は、不図示の搬送機構によって基板受台3C上に移載される。あるいは別の例として、図示しない図面表裏方向に旋回可能な吐出ノズルが基板受台3C上に載置された基板1に円環状に液状物質を供給しても勿論よい。この場合、紫外線照射機構4が動作する前に不図示の前記吐出ノズルは旋回して退避する。
紫外線照射機構4は、紫外線を出力する紫外線光源4Aと、多数の光ファイバを束ねてなる光ファイバケーブル4Bと、光ファイバケーブル4Bからの紫外線を円環状の紫外線(以下、環状光と言う。)にする円環状光形成部4Cとから概略なる。円環状光形成部4Cは、図4(A)に示すように、光放出面側に透明な材料からなる円環状部4C1を備え、円環状部4C1に光ファイバ4Bの先端部分が円環状に配置されている。光ファイバケーブル4Bは、その先端部分が円環状部4C1においてほぼ円錐状又は紡錘状になるように分けられ、光ファイバ4B一本一本の先端がほぼ同一平面に位置するように円環状部4C1に円環状に埋設されている。ここで、光ファイバケーブル4Bの先端部分と円環状光形成部4Cは光照射ヘッド6の一部分を構成する。
レンズ機構5は、円環状光形成部4Cからの環状光を回転中心軸線Xに対して所定の角度φとなるように外周側に方向付けるレンズ部5Aと、円環状光形成部4Cとレンズ部5Aの間隔を変えて環状光の焦点を変える焦点変更部5Bとから概略なる。レンズ機構5は、一例では円環状光形成部4Cにおける光ファイバ4Bの円環状先端面から放出される円環状の紫外線の散乱を抑制し、環状光を所定幅に保持して基板1に照射する働きを行う。レンズ部5Aは、一般的に用いられている複数個のレンズを組み合わせたレンズ構造であり、前記働きを同時に行えるようにレンズ間距離などを調整できるレンズ構造のものがよいが、種々の形状のレンズを組み合わせたもの、例えば一般的な光学式カメラに用いられているズームレンズ構造など、種々のレンズ構造を用いることができる。この実施形態では、基板1が光ディスク基板であるので、レンズ部5Aと基板1との間の距離は10〜500mmの範囲内にあるのが環状光の効率などの面から好ましい。
環状光は回転中心軸線Xに対して所定の角度φ(例えば、5〜30度)で円錐状に勾配している。光照射ヘッド6が設定最下限位置、つまりレンズ部5Aが設定最下限位置(例えば、レンズ部5Aの下面が基板1から10mm上方の位置)にあるときに、環状光である第1の光U1は基板1上に展延されている樹脂膜2の内周部を照射できるように円環状の第1の光U1の内径は決められている。例えば、図4(B)に示すように樹脂膜2の内径をDとすれば、第1の光U1の内径は樹脂膜2の内径Dよりもある程度小さくなければならない。したがって、昇降装置7によって光照射ヘッド6を最下限位置から上方に移動させることにより、樹脂膜2の内周部分を照射していた第1の光U1は基板1の外周方向に向けて移行する。なお、図4(B)に示すCPは基板受台3Cの中央に位置するセンターピンであり、基板1の位置決めなどを行う。
昇降装置7は、図示しないモータやそのモータの回転力を直線駆動力に変換する直線駆動部材などからなる構造のものであり、光照射ヘッド6を昇降させる。光照射ヘッド6の上昇速度は、レンズ機構5から照射される環状光の内径と外径の広がり速度を決めるものであり、後で詳述する。ここで、レンズ機構5と昇降装置7とは、光の強度分布の勾配を変える光強度分布変更機構の一例を構成する。
制御装置8は、樹脂膜2を形成するための液状物質の種類、粘度など種々の条件に対して所望の膜厚が得られるスピンパターン(一例として、図5の曲線SPで示す。)をその不図示のメモリに複数格納している。制御装置8は、回転駆動部3Bの回転駆動を制御する回転制御機能と、紫外線光源4Aのオンオフなどを制御する光制御機能と、樹脂膜の硬化特性や紫外線光源4Aが出力する光の照射強度などの諸条件に対して基板1の全面にほぼ均一な光エネルギーを照射する上昇速度プログラム(一例として、図5の速度パターンVPで示す。)に従って光照射ヘッド6の上昇速度を制御する上昇速度制御機能、図1で述べた時刻t2に焦点変更部5Bに信号を送ってレンズ部5Aの焦点を切り替えさせる焦点調整機能などを備える。
ここで、制御装置8は制御を行う装置の総称であって、個別のコントローラなどで行っても勿論よい。そして、これらスピンプログラム及び上昇速度プログラムはそれぞれの前記制御部におけるメモリに格納されており、選択指令によって読み出し、選択されたスピンパターンSPで回転駆動部3Bを制御して基板1を回転させ、また、選択された速度パターンVPで昇降装置7を上昇させて光照射ヘッド6を上昇させる。なお、これらスピンプログラム及び上昇速度プログラムは、基板回転機構3、昇降装置7にそれぞれ格納される構成となっていても勿論よい。
次に、実施形態1の樹脂膜形成装置の動作について説明する。先ず、円環状に液状物質が供給されている光ディスク基板のような基板1が基板受台3Cに載置され、基板受台3Cに吸着保持されると、回転駆動部3Bによって基板受台3Cが選択されたスピンパターンSP(図5)で回転するのに伴い、前記液状物質は基板1上で展延され、樹脂膜2を形成する。ここで、一例としてスピンパターンSPは、図4に示すように基板受台3Cの回転速度がゼロから高速でほぼ直線的に上昇し、設定回転数に達するとその回転数を所定時間保持する。その設定回転数に保持されている期間のある時刻t1で、つまり紫外線硬化型樹脂からなる樹脂膜2の内周部が所定の膜厚になる光照射開始時刻t1で、制御装置8からのオン信号により紫外線光源4Aがオンして紫外線を出力する。その紫外線は光ファイバケーブル4Bを通して円環状光形成部4Cで円環状の紫外線とされ、設定最下限位置にある光照射ヘッド6のレンズ部5Aからの円環状の第1の光U1が樹脂膜2の内周端2B(図1)に照射される。
このとき、レンズ部5Aは焦点変更部5Bによって所定の緩やかな焦点を呈するように調整されている。レンズ部5Aからの円環状の第1の光U1は、例えば図2に示すように、第1の光U1が外周側に移行する過程で塗膜の平坦性及び外観性を低下させない程度に焦点の絞りが緩やか山形の強度分布、つまり光エネルギーの立上りと立下りの勾配が緩やかなガウス分布(正規分布)の強度分布を有する光である。この正規分布の光はそのほぼ中心に照度のピーク値を有する。第2の光U1に比べて、第1の光U1は照射範囲が広く、そのピーク値が低いので、内側から外側に移行するときに光照射と非照射との境界で樹脂膜2に凹凸を生じないような光、つまり光の移動方向(立上り)に対する強度変化が緩やかな円環状の光である。しかしながら、後述するように第1の光U1は前記特性から光の照射と非照射との境界が不鮮明となる。第1の光U1の照射とほぼ同時に、制御装置8は選択されたスピンパターンSPに対応する速度パターンVP(図5の曲線VP)で昇降装置7を制御し、光照射ヘッド6を速度パターンVPに従って上昇させる。
これに伴い、光照射ヘッド6は速度パターンVPに従って回転中心軸線Xに沿って上昇する、つまり基板1の上面から離れていくから、第1の光U1の内径及び外径は大きくなっていき、第1の光U1は内周側から外周側に移行する。この移行速度は、樹脂膜2が展延されて内側から外側へ所定の厚みになっていく時間に従って決められる。つまり、円環状の第1の光を前記液状物質の展延にほぼ合わせて外周側に移行させ、樹脂膜2が所定の厚みになった時点で膜厚を順次確定していく。そして、光照射開始時刻t1から第1の設定時間T1が経過する時刻t2で、第1の光U1が図1で説明した設定位置Yの手前の所定位置Zに達するものとして、光照射開始時刻t1から第1の設定時間T1が経過すると同時(時刻t2で)に、制御装置8は焦点変更部5Bに信号を送出し、焦点変更部5Bはレンズ部5Aと円環状光形成部4Cとの間隔を変えてレンズ部5Aの焦点を予め設定した焦点に絞り始める。
この一連の働きによって、第1の光U1は樹脂膜2の設定位置Yの手前の所定位置Zに対応する時刻t2で焦点が絞り始められて第2の光U2になる。第2の光U2は時刻t2から第2の設定時間T2が経過する時刻t3に相当する位置である設定位置Yでは、少なくとも図2の曲線U2で示すような急勾配の設定強度分布を有する円環状の第2の光U2となる。この状態では当然に、第2の光U2の光幅は第1の光U1よりも狭くなっており、また、光エネルギーのピーク値は第1の光U1よりも大きくなっている。第2の光U2は、照射面が受ける単位面積当たりの総光量が、所定位置Zでの第1の光U1の単位面積当たりの総光量とほぼ等しくなるように移行速度が決められる。場合によっては第2の光U2の照度が制御される。したがって、第2の光U2は第2の設定時間T2内で焦点の絞りが強くなっていく光であり、焦点変更部5Bの焦点変更速度が速ければ第2の設定時間T2は短くて済み、焦点変更部5Bの焦点変更速度が遅ければ第2の設定時間T2は長くなる。このことから、第2の設定時間T2が短ければ、その分だけ第1の設定時間T1を長くすることができ、好ましい。なお、第2の光U2の焦点の絞りが強くなっていく過程で、後述する電力制御によって紫外線光源4Aが発光する光の光度を制御、例えば単位面積当たりの総光量がほぼ一定になるようにピーク値を制御してもよい。
そして、第2の光U2は設定位置Yの近傍手前で最終的な強度分布になり、その設定強度分布の第2の光U2が設定位置Yまで移行し、設定位置Yに達した時刻t3で制御装置8は紫外線光源4Aにオフ信号を送出して消滅させる。実施形態1では、第1の光U1と第2の光U2は樹脂膜2以外には照射されないので、同一の基板回転機構3で光の照射を行っても基板回転機構3のカバー部材3Dなどにほとんど射されない。樹脂膜2を設定位置Yまで硬化させた後、必要があればスピン処理を行い、前記未硬化の部分2Cを平坦化し、第3の光U3を照射して硬化させる。
実施形態1にあっては、光照射ヘッド6を上昇させることによって円環状の第1の光U1の基板1の半径方向の光幅が広がるので、それにつれて当然に照射面積が大きくなるから単位面積当たり照射される第1の光U1のエネルギー量は外周側にいくに従って小さくなる。したがって、この実施形態1では樹脂膜2に照射される紫外線の照射エネルギー量がほぼ均一になるように、第1の光U1の照射面積が増加するのに伴って光照射ヘッド6の上昇速度が低下する速度パターンVPを用いている。また、第1の光U1の照射面積が増加するのに伴って基板1の回転速度が低下するスピンパターンを組み合わせて用いてもよい。
この速度パターンVPによれば、第1の光U1が外周側に向かって移行するのに伴って光照射ヘッド6の上昇速度が低下するので第1の光U1の内径と外径の拡がりが遅くなり、つまり移行速度が遅くなるので第1の光U1の照射時間が長くなる。したがって、スピンパターンSPと速度パターンVPとを選択して組み合わせることによって、第1の光U1の内径と外径の拡がりを、樹脂膜2が所定の膜厚になる箇所が内周側から外周側に移行していく速度とほぼ等しくしながら、基板1の照射全面で第1の光U1の照射エネルギーの時間積分値をほぼ均一にすることができる。よって実施形態1によれば、基板1上に均一の膜厚の樹脂膜2を形成することができるばかりでなく、基板1の熱分布がほぼ均一になるから反りを発生せず、品質の高い樹脂膜が形成された光ディスクなどを得ることができる。
実施形態1の別の例では、制御装置8が、前述の制御機能を有すると共に、紫外線光源4Aのオンオフばかりでなく、照射時間及び照射強度からなる光制御プログラムに従って紫外線光源4Aに供給される電力を制御する制御機能も有する。前記光制御プログラムによれば、基板1面上での第1の光U1の照射面積の増加率、つまり第1の光U1の半径の増加に比例して第1の光U1の照度の増加率を高めるよう、紫外線光源4Aの入力電力を制御することになる。このようにしても、基板1の全面で第1の光U1の照射エネルギーの時間積分値、つまり単位面積当たりの総光量をほぼ均一にすることができ、実施形態1と同様な品質の基板を得ることができる。基板1との間の距離の増大に従って第1の光U1が基板の外周側に移行するのに伴い、基板1の単位面積当たりの照射エネルギーが小さくなるので、その照射エネルギーの低下を補償するために、回転速度が遅いスピンパターン、上昇速度が遅い上昇速度パターンを組み合わせて行ってもよい。
また、第1の光U1の光度を増加させる場合には、前述したようなスピンパターン及び上昇速度パターンの一方又は双方と組み合わせて行っても勿論よい。なお、液状物質の基板1への供給は、基板1を基板受台3Cに載置した状態で、基板受台3Cを低速回転させながら行ってもよい。以上の実施形態の説明では、基板1上の樹脂膜2について説明したが、基板同士を貼り合せた場合の基板間の液状物質が高速回転による遠心力によって外周方向へ展延する過程で、樹脂膜が所定の厚みになる時間に同期させて第1の光U1を外周側に移行させても同様な効果がある。また、最外周の手前で第1の光U1から第2の光U2に切り替えることによって、不図示の基板間の外周端面からはみ出した樹脂を硬化させないままにできるので、その除去が容易に行える。さらに、基板の外周端面からはみ出した樹脂が硬化しない状態で不図示の一方の剥離用の基板の剥離を行うと、剥離時に粉塵が発生しないので、品質の高い多層構造の光ディスクを得ることが可能になる。なお、この光照射は、液状物質が基板全面に展延された後に行っても展延された樹脂膜を硬化させることができる。
実施形態1における紫外線照射機構4の別の例について図6により説明する。図6において、図1ないし図5で用いた記号と同じ記号は同じ名称の部材を示すものとする。図6に示す例は、実施形態1の紫外線光源4Aに代えて、紫外線を発光する発光ダイオードLEDを用いている。複数の発光ダイオードLEDは、ケースの円環状の外壁部41と円環状の内壁部42との間に密接して又は僅かな間隙で配置されており、これらで円環状光形成部4Cを構成している。この例の円環状光形成部4Cは円環状光形成部4C自身がレンズ機構5の近傍で円環状の紫外線を生じる。円環状光形成部4Cの円環状の光は実施形態1で説明したのと同様なレンズ機構5によって、図2で示したような正規分布の照度を有する第1の光U1、更には第2の光U2にされる。
図7に示す例は、適当な直径の円環状の紫外線照射ランプLPを用いている。円環状の紫外線照射ランプLPはケースの円環状の外壁部41と円環状の内壁部42との間に設けられ、紫外線照射ランプLPは発光した紫外線がほとんどレンズ部5Aに向かうようになっている。この例の円環状光形成部4Cも円環状光形成部4C自身がレンズ機構5の近傍で円環状の光を発光する。円環状光形成部4Cの円環状の光は実施形態1で説明したのと同様なレンズ機構5によって、図2で示したような正規分布の照度を有する第1の光U1、更には第2の光U2にされる。これら例においても、特別な電力制御による光度制御を行わない限り、第2の光U2は第1の光U1に比べて、その光エネルギーのピーク値は大きい。
したがって、これら例では、実施形態1と違って複数の発光ダイオードLED又は円環状の紫外線照射ランプLPが光源でもあるので、多数光ファイバを束ねた光ファイバケーブルを省略できるだけでなく、光ファイバケーブルに代えて可撓性に優れて丈夫な金属配線を円環状光形成部4C1、4C2に接続することができるので、容易に円環状光形成部4Cを上下方向に昇降させることができ、装置の信頼性を向上させることができる。なお、第1の光U1、第2の光U2の照射は、樹脂膜2を形成した後で、基板回転機構3とは別の光照射ポジションで行ってもよい。
また図示しないが、円環状光形成部4Cは相似の形状の円錐状の反射部材を2組用い、円錐状の反射部材の頂点を回転中心軸線Xに位置するように保持して円錐状の光路を形成し、光源からのスポット状の光を前記円錐状の反射部材の頂点に照射し、スポット状の光をほぼ均一に分散させて円環状の光を導出してもよい。その他にも種々の構成が考えられるが、実施形態1は円環状光形成部4Cの構成によって制限されるものではない。
[実施形態2]
図8及び図9に従って本発明の実施形態2について説明する。図8は実施形態2の方法の基本的な考え方を説明するための図であり、図9は実施形態2の装置について説明するための図である。図8及び図9において、図1ないし図7で用いた記号と同一の記号は同じ名称の部材を示すものとする。この実施形態2が実施形態1と異なる点は、円環状の光に代えてスポット状の光を樹脂膜に照射するところにある。スポット状の光は照射面である樹脂膜に平行に内周側から外周側に移行する円形状又は移行方向に長い長円状(楕円状)の光である。実施形態2では、光の照射工程中、必ず基板1は選択されたスピンパターン又は一定速度で回転している。
図8において、紫外線光源4Aは、図示しないが、紫外線を発光する発光部材とその照度を調整する部材とスイッチ機構などからなり、制御装置8からの信号によって照度調整及び発光のオン、オフを行う。紫外線光源4Aの前記発光部材は、所望の波長の紫外線を発光するレーザダイオード、小型レーザ管、発光ダイオード、あるいは紫外線ランプなどからなる。前記発光部材レーザダイオード又は発光ダイオードからなる場合、必要に応じて複数個のレーザダイオード又は発光ダイオードを密接して円状又は長円状に配置して、円状又は長円状のスポット光を得てもよい。平行移動機構10は、レールのような案内部材10Aと、案内部材10Aを図8で左右に移動する移動部材10Bと、その移動部材10Bを紫外線光源4Aとレンズ機構5とからなる光照射ヘッド6に結合する結合部材10Cからなる。なお、Eは図示しない電源から紫外線光源4Aに電力を供給する給電線であり、可撓性に優れている。ここで、レンズ機構5と平行移動機構10とは光強度分布変更機構の一例を構成する。
次に、動作説明を行う。制御装置8から信号S1により選択されたスピンパターンで回転駆動部3Bは基板を回転させる。前述したように基板1の高速回転による遠心力の作用で紫外線硬化型樹脂からなる樹脂膜2の内周部が所定の膜厚になる時刻t1で、制御装置8は紫外線光源4Aにオン信号S2を送出し、紫外線光源4Aはオンして紫外線を発光する。レンズ機構5のレンズ部5Aは既に設定焦点に調整されているので、スポット状の第1の光U1を樹脂膜2の内周部分に照射する。第1の光U1の焦点は一定であり、前述したように、第1の光U1は外周側に移行する過程で塗膜の平坦性及び外観性を低下させない程度に焦点の絞りが緩やかな光であり、樹脂膜2の光照射面2Aでは図2で説明したような緩やかな勾配を有する正規分布の強度分布の光である。つまり、第1の光U1は光の照射と非照射との境界が比較的不鮮明な状況を呈し、内側から外側に移行することによって樹脂膜2にほとんど悪影響を与えないスポット状の光である。
そして、制御装置8は移動部材10Bに信号S3を送出し、移動部材10Bは予め選択された速度パターンで基板1と平行に外周方向に移動する。これに伴い、スポット状の第1の光U1が樹脂膜2の表面を外周側に移行する。その速度パターンは、主に紫外線硬化型の樹脂が展延されて内側から外側へ所定の厚みの樹脂膜2を形成していく時間と、第1の光U1が外周方向に移行するのに伴い変化する周速度とを考慮して決められる。これによって、スポット状の第1の光U1を前記液状物質の展延に合わせて外周側に移行させ、樹脂膜2が所定の厚みになった時点で膜厚を順次確定していく。第1の光U1が、光照射開始時刻t1から第1の設定時間T1の経過する時刻t2まで照射される。そして、時刻t2になると同時に、制御装置8はレンズ機構5の焦点変更部5Bに信号S4を送出し、焦点変更部5Bはレンズ部5Aと樹脂膜1との距離を設定値まで変更する動作を行う。この変更動作は機械的な動作が主であるから、焦点の変更に必要最低限の時間以上の時間、つまり第2の設定時間T2が必要になる。
スポット状の第1の光U1は時刻t2が経過すると第2の光U2となる。第2の光U2は、焦点変更部5Bがレンズ部5Aの焦点の変更開始から変更終了までの第2の設定時間T2の間で、焦点が強く絞られ、図2に示したような急勾配をもつ正規分布の強度分布を有する。したがって、特別な電力制御による光度制御を行わない限り、第2の光U2は第1の光U1に比べて、その光エネルギーのピーク値は大きい。そして、第2の光U2は時刻t2から第2の設定時間T2がほぼ経過した時刻t3で樹脂膜2の設定位置Yに達し、設定位置Yでは第2の光U2の焦点は少なくとも設定値まで絞られている。第1の光U1及び第2の光U2が樹脂膜2に照射されている期間は、基板1は例えば図5に示したスピンパターンSPで回転しており、第1の光U1は前述のように光の照射と非照射との境界が比較的不鮮明な状況を呈する光であり、第1の光U1が外周側に移行する過程で極めて短い時間で見ると不連続的に照射されるから、従来のように塗膜の平坦性の低下を抑制でき、外観上の問題が生じることはない。
次に色収差の補正について説明する。以上の実施形態では光として紫外線を用いたが、図示しない紫外線光源からの紫外線は、例えば200〜400nmの波長を有する光が大部分を占める。一般的に波長に対するレンズの屈折率が異なるために、光がレンズの同一面域に入射しても、波長の異なる光はレンズでそれぞれ違う屈折率で屈折され、レンズからからの光線は僅かずつずれて光照射面に照射される。この色収差の影響によって、前述のように光の強度分布が急な勾配になるように制御しても、色収差の影響によって、光の照射と非照射との境界が十分に鮮明にならず、境界に幅が広くなり、このことは樹脂膜の不十分な硬化領域の幅を広くする傾向がある。
このような色収差の影響を低減し、光の波長による光の照射と非照射との境界を鮮明にするために、レンズ機構5におけるレンズ部5Aと基板1との間に、所定以下の波長の光を通過させないカットフィルタ(不図示)を設ける。一例として、300nm以下の波長の紫外線を除去するカットフィルタを用いることにより、基板1の樹脂膜2に照射される光は300〜400nmの波長の紫外線がほとんどになり、波長の差異による光のずれが小さくなるために、当然に樹脂膜2の設定位置Yでの光の照射と非照射の境界が鮮明になる。なお、このカットフィルタは所定位置Zまで照射される紫外線の色収差の補正を行わないものの方が好ましい。
[実施形態3]
図10によって本発明の実施形態3について説明する。図10において、図1〜図9で用いた記号と同一の記号は同じ名称の部材を示すものとする。この実施例でもスポット状の紫外線を樹脂膜2に照射するが、途中でレンズ機構により光(紫外線)の焦点を変えることなく、紫外線を発生する紫外線光源4Aを途中で下降させてスポット状の光(紫外線)の広がりを縮小し、正規分布の強度分布を急傾斜にするところに特徴がある。装置構成は図8に示した装置と類似している部分が多いので、図8を利用して説明する。この装置では、図8に示した移動機構10の結合部材10Cの少なくとも一部分が伸縮するシリンダ部材などからなる伸縮部材(不図示)から構成されていると都合が良い。なお、この実施形態3では第1の光U1の焦点の絞りを変えて第2の光U2を形成するという焦点の切替えが不要であるので、レンズ機構を省略することができる。
この方法を実現する装置は、実施形態2に比べて、平行移動機構10に対応する不図示の多方向移動装置が樹脂膜2から上方に離れて位置する。この多方向移動装置の動作については後述するが、この多方向移動装置は光強度分布変更機構の一例を構成し、紫外線光源4Aを水平方向と下方向に移動させる公知の機構を有する。実施形態2に比べて紫外線光源4Aが樹脂膜2からより離れて上方にあり、紫外線光源4Aから照射された紫外線は拡がって樹脂膜2の光照射面2Aでは緩やかな傾斜をもつ正規分布の強度分布を有する第1の光U1となる。第1の光U1の強度分布は一定であり、前述したように、第1の光U1は外周側に移行する過程で塗膜の平坦性及び外観性を低下させない程度に緩やかな強度分の光である。つまり、第1の光U1は光の照射と非照射との境界が比較的不鮮明な照射範囲の広い光であり、内側から外側に移行することによって樹脂膜2の平坦性にほとんど悪影響を与えない光である。
スポット状の第1の光U1は前記液状物質の展延に合わせて樹脂膜2と平行に外周側に移行し、選択されたスピンパターンで回転している樹脂膜2が所定の厚みになった時点で膜厚を順次確定していく。スポット状の第1の光U1は時刻t2が経過すると第2の光U2となる。時刻t2になると、制御装置8が多方向移動装置のシリンダ部材のような伸縮部材(不図示)に信号を送出し、その伸縮部材が伸長することにより紫外線光源4Aが下方向に下がる。つまり紫外線光源4Aは時刻t2から第2の設定時間T2の経過後の時刻t3に水平方向に移動しながら設定下限位置まで降下し、このとき第2の光U2は樹脂膜2の設定位置Yに達する。設定位置Yでのスポット状の第2の光U2は、当然にスポット状の第1の光U1に比べて拡がり方が少なく、かつ紫外線光源4Aと樹脂膜2との間の距離が短いので、減衰が小さいから光照射面2Aでの照射範囲が狭くなり、かつ光照度のピーク値が大きくなると共に、正規分布である強度分布の勾配が急傾斜になるので、紫外線の照射と非照射との境界が鮮明になる。
したがって、樹脂膜2が外周部で厚くなる肉厚部分2Cの寸前まで硬化され、肉厚部分2Cは未硬化のまま残される。つまり、設定位置Yでの最終的な第2の光U2の強さ(照度)がシャープであるので、硬化と未硬化との中間の領域の幅を最小にすることができ、外周部で厚くなる部分2Cの平坦化に役立つ。なお、この実施形態3においては、紫外線光源4Aが最初の高さから設定下限位置まで降下する所要時間が最低限必要であり、その時間の経過と共に第2の光U2の強度分布の勾配が急傾斜になって行く。その時間は調整が可能であるが、第1の光U1の照射時間を長くできるので短い方が好ましい。なお、この実施形態3では第1の光U1の焦点の絞りを変えて第2の光U2を形成するという焦点の切替えが不要であるので、レンズ機構5を省略することができる。例えば、紫外線を発生する紫外線源が適当な直径の円筒状の鏡筒からその紫外線を照射する構造などにあっては、レンズ機構5を省略することが可能であり、経済性に優れる。また、装置の小型・軽量化が可能である。
[実施形態4]
図11によって本発明の実施形態4におけるスポット状の光の照射方法について説明する。図11において、図1ないし図10で用いた記号と同じ記号は同じ名称の部材を示すものとする。実施形態4も基本的には実施形態2、実施形態3と同様であり、第1の光及び第2の光の形成方法が異なるので、その部分について説明する。図11に示すように、紫外線を発生する紫外線光源4Aを円板状の基板1の回転中心軸線Xから外周方向へ、又は外周方向から回転中心軸線Xにある角度で勾配させ、樹脂膜2の照射面に対する紫外線の照射角度を所定角度勾配させることによって、紫外線光源4Aの発光面よりも拡がった大きな面積のスポット状の第1の光U1を樹脂膜2の照射面に形成するところに第1の特徴があり、紫外線光源4Aを樹脂膜2の照射面に対してほぼ垂直に立てることにより、第1の光U1よりも照度の大きなスポット状の第2の光U2を得るところに第2の特徴がある。
移動・角度変更機構11は光強度分布変更機構の一例を構成し、レールのような案内部材11Aと、案内部材11Aを図8で左右に移動する移動部材11Bと、一端が移動部材11Bに結合された結合部材11Cと、結合部材11Cの他端に結合された角度変更部材11Dとからなる。角度変更部材11Dは紫外線光源4Aを支点軸11Eを中心にある角度で回転させる機能を有する。基板回転機構は前記実施形態の基板回転機構3と同じである。角度変更部材11Dは、予め制御装置8からの指令信号C1を受けて紫外線光源4Aを所定角度に傾倒させている。その傾倒角度θは任意であるが、例えば20〜60度の範囲で選択された角度である。
前述したように、基板回転機構3の高速回転によって基板2上の樹脂膜2の内周が所望の厚みになる光照射時刻t1で、制御装置8は先ず紫外線光源4Aに指令信号C2を送ってオンさせ、第1の光U1となる紫外線を発生させる。紫外線光源4Aは光照射面に対して所定角度傾倒しているので、第1の光U1は光照射面に傾斜して照射される。したがって、その強度分布は図2の曲線U1で示した分布と似たような緩やかな山形、特に立上り(外周側)に比べて立下り(回転中心側)が緩やかな勾配の山形となり、その強度分布のピーク値は一方側に偏る。制御装置8は指令信号C2とほぼ同時に、又は幾分遅れて指令信号C3を移動部材10Bに送出する。移動部材11Bは実施形態2で説明したように、所定の速度パターンで外周方向に移動する。これに伴い、第1の光U1も外周方向に前記所定の速度パターンで移行する。
そして、基板1の設定位置Yの手前のある位置に対応する時刻t2で、制御装置8は指令信号C1を角度変更部材11Dに送出する。角度変更部材11Dは指令信号C1を受けると、支点軸11Eを中心に時計方向に設定角度回転して、紫外線光源4Aを光照射面、つまり樹脂膜2とほぼ垂直になる方向に向ける。したがって、時刻t1から時刻t2まで強度分布がほぼ一定であった第1の光U1は時刻t2から照射面積が狭くなっていく第2の光U2となる。第2の光U2が設定位置Yにほぼ到達するとき(時刻t3)には、少なくとも紫外線光源4Aは樹脂膜2にほぼ垂直となる方向に向いている。
したがって、第2の光U2は樹脂膜2の設定位置Yでの強度分布の立上りと立下りが等しい急勾配の正規分布の強度分布になり、紫外線の照射と非照射との境界が鮮明になる光の立上りとなるので、樹脂膜2が外周部の肉厚部分2Cの寸前まで硬化され、肉厚部分2Cは未硬化のまま残される。つまり、設定位置Yでの最終的な第2の光U2の強度分布の立上りが急勾配であるので、硬化と未硬化との中間の領域を最小にすることができ、外周部で厚くなる部分2Cの平坦化に役立つ。なお、この実施形態4においては、紫外線光源4Aが最初の傾倒角度からほぼ垂直の向きになるまでに要する時間が最低限必要であり、その時間の経過と共に第2の光U2の強度分布はシャープになっていく。その時間は調整が可能であるが、第1の光U1の照射時間を長くできるという面から短い方が好ましい。この場合には、第2の光U2の強度分布のピーク値は第1の光U1に比べて大きい。また、紫外線光源4Aの勾配角度は図示とは逆であってもよく、この場合には、立下り(回転中心側)に比べて立上り(外周側)が緩やかな勾配の山形となる。
この実施形態4でも、スポット状の第1の光U1は前記液状物質の展延に合わせて樹脂膜2と平行に外周側に移行し、選択されたスピンパターンで回転している樹脂膜2が所定の厚みになる時点で膜厚を順次確定していくのが好ましいが、ほぼ所定の膜厚の樹脂膜2を形成した後に別の基板回転装置(図示せず)に移載し、基板を回転させながら前述したように第1の光U1と第2の光U2とを照射してもよい。
以上説明した実施形態2〜4では、円形状又は長円(楕円)状のスポット光であるので、基板がガラス板などであってその上面の回転中心点を含む全面に樹脂膜2を形成したい場合にも対応することができる。実施形態1のように円環状の光の場合にも、レンズ部を樹脂膜の近傍まで近づけることによって、回転中心点を含む全面に樹脂膜2を形成したい場合にも対応することができる。基板の樹脂膜2の中心面域を含む全面をほぼ均一な時間積分値の照射エネルギーで硬化させることができ、均一な膜厚で平坦性の優れた樹脂膜を備える高い品質の基板を得ることができる。また、実施形態2〜4では第1の光U1と第2の光U2を同一の光源から発生したが、第1の光U1と第2の光U2を別々の光源から発生しても良い。
この場合には、例えば基板1の前記設定位置Yの近傍手前に第2の光U2を発生する第2の光源を備え、第1の光U1が設定位置Yの寸前手前に到達するときに、前記第2の光源をオンさせて第2の光U2を基板1の設定位置Yに照射すればよい。また、実施形態1で述べた円環状の第1の光U1と実施形態2〜4で説明したようなスポット状の第2の光U2とを組み合わせても良い。なお、実施形態1と同様にスポット状の光が外周側に移行するのに伴って光の強度を大きくしていっても良い。
なお、本発明は、高記録密度の光ディスクの光ディスク基板に均一で薄い膜厚のカバー層を形成する際に特に有用であることは前述の通りであるが、各種の光ディスクにおける光ディスク基板又はガラスなど種々の基板間に接着剤による膜厚の均一な樹脂膜を形成して基板同士を貼り合せる場合、あるいは種々の基板へ膜厚の均一な樹脂膜を形成する際にも有用である。なお、基板同士を貼り合せる場合には、一方の基板の上に接着剤を環状又は点状に供給し、その上に他方の基板を重ね合わせた状態で高速回転させて基板間に接着剤を展延させて樹脂膜2を形成し、その樹脂膜2が所定の膜厚になった段階で、前記他方の基板を通して前述のように環状光を照射して、樹脂膜2を順次確定していってもよい。また、第1の光の照射は樹脂膜の設定値Yまでがほぼ一定の厚みになった段階で、基板の回転を停止又は回転数を低下させた状態で、前述のように行ってもよい。このとき、第2の光の照射は前述と同様である。