JP4547863B2 - 液体噴射ヘッドの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体噴射ヘッドの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液体をノズル開口から噴射させる液体噴射ヘッドは、種々な液体を対象にしたものが知られているが、そのなかでも代表的なものとして、インクジェット式記録装置に装着されるインク噴射部をあげることができる。そこで、従来の技術を上記インクジェット式記録装置に採用されるインク噴射ヘッドを例にとって説明する。
【0003】
図13および図14は、それぞれインク噴射ヘッド全体と同ヘッドの一部の断面図である。
【0004】
インク噴射ヘッド1は、インク貯留源であるインクカートリッジ等(図示していない)からのインクを貯留するインク貯留室2と、上記インク貯留室2からインクを導入して圧力発生手段3によりインクを加圧する圧力発生室4と、上記圧力発生室4で加圧されたインクを噴射するノズル開口5を備えている。
【0005】
上記インク噴射ヘッド1は、ノズル開口5が形成されたノズルプレート6と、上記ノズルプレート6に接合されインク貯留室2が形成されたインク貯留室形成板7と、上記インク貯留室形成板7に接合されインクの供給口8が形成された供給口形成板9と、上記供給口8に連通する圧力発生室4が形成され上記供給口形成板9に一体化されている圧力発生室形成板10と、上記圧力発生室形成板10に接合され圧力発生室4を封止する振動板11と、上記振動板11に取付けられた圧力発生手段である撓み振動型の圧電素子3との各機能部材から構成されている。
【0006】
なお、ここではディスタンスプレート12が供給口形成板9と圧力発生室形成板10との間に接合され、圧力発生室4に開口する流通穴13が形成され、ノズル開口5と圧力発生室4を連通する流通穴14が設けられている。また、各部材の接合は、接着によってなされている。
【0007】
上記インク貯留室2におけるインクの圧力変動に順応させるために、大気に連通している空間とされたコンプライアンス部15が形成されている。上記コンプライアンス部15を形成するために、供給口形成板9が積層構造とされている。供給口形成板9は、板厚の厚いステンレス製の第1板材16と上記第1板材16よりも板厚が薄くされたステンレス製の第2板材17とが接着剤層である接合層18により、一体化されている。そして、第1板材16にエッチング処理を施すことにより、コンプライアンス部15が形成される。
【0008】
図15は、上記の各部の構造形態を平面的に透視して表した平面図であり、平面的に見た各部の位置関係が理解できる。
【0009】
図14は、供給口8の部分を拡大して示した部分的な断面図である。供給口8は、断面形状が円形であり、第1板材16側に形成されたテーパ穴8Aと第2板材17側に形成されたストレート穴8Bから構成されている。実際には、後述の塑性加工工程から容易に理解されるように、供給口8はその全長が塑性変形をした第1板材16を貫通しているのであるが、上記のような「第1板材16側」や「第2板材17側」なる表現は、テーパ穴8Aやストレート穴8Bが、供給口形成板9の厚さ領域において、どの辺りに存在しているかを理解するために用いられている。
【0010】
図17(A)にも示されているように、上記ストレート穴8Bは、塑性変形をした第1板材16に開口しており、その開口部(開口円)は符号8Cで示されている。上記開口部8Cの周囲には、略同心の状態で略円形の接合層19(以下、便宜上「円形接合層19」という)が露出している。上記円形接合層19は、後述の塑性加工工程後の開口工程によって表面(供給口形成板9の裏面)に露出するもので、第1板材16と第2板材17との境界部にあらわれている。
【0011】
図16は、上記供給口8の穴あけ工程を示している。なお、第1板材16と第2板材17の厚さ寸法は、それぞれ50μm,15μmであり、上記のようにステンレスで作られている。
【0012】
供給口8の穴あけ加工は、通常のパンチ20とダイ21によって行なわれる塑性加工工程と、上記塑性加工工程によって形成された膨出部を除去して供給口8を開口させる開口工程との2工程から成り立っている。上記パンチ20は、断面が円形であり、先端側に配置されたストレート部20Bと上記ストレート部20Bに連続しているテーパ部20Aが設けられ、上記テーパ部の拡開角度θ1は20度である。
【0013】
図16(A)は、ダイ21上に供給口形成板9が載置された状態を示している。ここで、パンチ20のストレート部20Bが供給口形成板9の表面に圧入され、さらにこの圧入が進行すると、テーパ部20Aの部分が第1板材16に圧入される。そして、ストレート部20Bの先端部が第2板材17の外表面22を越えた箇所でパンチ20の進出が停止される。ストレート部20Bの先端部が第2板材17の外表面22を越えた長さは、図16(B)(C)に符号Lで示されている。
【0014】
パンチ20の進出により、ダイ21の開口21A(その内径はφ1で示されている)内に、第1板材16,接合層18,第2板材17が層状になって押し込まれた状態となり、膨出部23が形成される。このような塑性加工が上記の「塑性加工工程」である。
【0015】
つぎに、パンチ20が後退し膨出部23がダイ21の開口21Aから取出されると、(C)に示すように、有底の供給口8と膨出部23が形成される。ここで、第2板材17の外表面22に沿って膨出部23を除去すなわち研磨加工をすると、(D)に示すように、供給口形成板9を貫通した供給口8が形成される。上記のように越えた長さLが確保されているので、上記の研磨加工と同時に供給口8が開口する。この開口をさせる工程が上記の「開口工程」である。なお、上記の膨出部23の除去は、このような微細な構造部分であるので、研磨工程を適用している。
【0016】
上記の開口工程により、第1板材16と第2板材17の境界部に円形接合層19が、図17(A)に示すように、露出する。なお、この露出形状はインク液によって膨潤していない状態である。
【0017】
パンチ20の圧入ストロークの進行長さと膨出部23が次第に大きくなって行く変化状態は、パンチ20のストレート部20Bが第1板材16に圧入されることにより、膨出部23の初期の小さな膨出が進行する。さらに、パンチ20が進出してテーパ部20Aが第1板材16の素材中に圧入され始めると、それに伴う素材の流動量が増加して、膨出現象が促進され、最終的には(C)のような形状となる。
【0018】
【特許文献1】
特開平8−174824号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
図16にしたがって説明したように、第1板材16に対して第2板材17が所要の厚さの下で配置されているので、第1板材16がパンチ20のストレート部20Bの方向に塑性流動をするときに、第2板材17が上記塑性流動を抑制することとなる。このような第2板材17の存在により、ダイ21の開口21A内に向って強制的に塑性流動をする素材の量が十分なものとはならない。したがって、図16(B)(C)に見られるように、パンチ20のストレート部20Bの外周面から接合層18までの肉厚S1が十分な厚さにならないので、開口工程後の状態は図17(A)に示すように、開口部8Cの直径D1と円形接合層19の直径D2の差が著しく小さな距離となる。
【0020】
上記の円形接合層19がインクに浸されて膨潤すると、同図(B)に示すように、円形接合層19の接合材料、例えば合成樹脂製の接着剤がインク貯留室2内に突出してくる。このとき上記のように、D1とD2との差が小さいものであると、膨潤によって突出してきた膨潤片19Aが、ストレート穴8Bの開口部8Cの間際にまで到ったり、さらに著しく膨潤したときにはストレート穴8Bの仮想円筒の内側にまで侵入したりした状態になる。
【0021】
上記のような膨潤片19Aが形成されると、開口部8Cの近傍でインク流に乱流が発生し、それにより開口部8Cの実質的な流路面積が小さくなるので、インク貯留室2から圧力発生室4に流入するインクが所定量を下回ることとなり、ノズル開口5からのインク滴吐出に異常を来すおそれがある。また、上記乱流による圧力損失で、同様にインク流量に不足を来すおそれがある。さらに、膨潤片19Aが存在すると、インク貯留室2内の気泡が膨潤片19Aにひっかかって、円滑に後流側へ排出されない可能性がある。
【0022】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、膨潤片による悪影響を最小化する液体噴射ヘッドの製造方法の提供をその目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法は、液体貯留源からの液体を貯留する液体貯留室と、上記液体貯留室から液体を導入して圧力発生手段により液体を加圧する圧力発生室と、上記圧力発生室で加圧された液体を噴射するノズル開口を備えた液体噴射ヘッドの製造方法であって、上記液体噴射ヘッドの一部を構成する板厚の厚い第1板材と上記第1板材よりも板厚の薄い第2板材とが接合層で一体化されている積層部材に、上記第1板材の塑性変形を行ないやすくする変形促進形状部をあらかじめ上記第2板材の膨出部が形成される領域に形成し、上記積層部材が載置されるダイと対をなす断面円形のパンチが、先端側に配置されたストレート部と上記ストレート部に連続しているテーパ部から構成され、上記パンチを上記積層部材の上記第1板材側から上記テーパ部が上記第1板材に圧入されるとともに上記ストレート部の先端部が上記第2板材の外表面を越える位置まで進出させて、積層部材の上記第2板材の外面表面方向に上記変形促進形状部の形状を変えながら上記膨出部を形成する塑性加工工程と、上記塑性加工工程の後、上記第2板材の外表面に沿って上記膨出部を除去する開口工程とからなることを要旨とする。
【0024】
すなわち、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法は、上記液体噴射ヘッドの一部を構成する板厚の厚い第1板材と上記第1板材よりも板厚の薄い第2板材とが接合層で一体化されている積層部材に、上記第1板材の塑性変形を行ないやすくする変形促進形状部をあらかじめ上記第2板材の膨出部が形成される領域に形成し、上記積層部材が載置されるダイと対をなす断面円形のパンチが、先端側に配置されたストレート部と上記ストレート部に連続しているテーパ部から構成され、上記パンチを上記積層部材の上記第1板材側から上記テーパ部が上記第1板材に圧入されるとともに上記ストレート部の先端部が上記第2板材の外表面を越える位置まで進出させて、積層部材の上記第2板材側に上記変形促進形状部の形状を変えながら膨出部を形成する塑性加工工程と、上記塑性加工工程の後、上記第2板材の外表面に沿って上記膨出部を除去する開口工程とからなっている。
【0025】
このように、上記の変形促進形状部が、塑性加工工程の途上すなわち膨出部を形成し形状を変えながら機能する。この機能は、第1板材がパンチのストレート部の方向に塑性流動をするときに、第2板材が上記塑性流動を抑制することとなるので、このような抑制現象を実質的に問題にならないレベルまで軽減するものである。具体的な機能現象としては、膨出部分の膨出変形に対して第2板材が無抵抗もしくは軽度の抵抗状態であったり、あるいは上記膨出変形の初期の段階で第2板材の変形促進形状部が破断状態になって、その後は急激に抵抗値が低下して略無抵抗の状態になったりする。したがって、第1板材の塑性流動が所期の状態で行なわれ、パンチのストレート部の外周面と接合層との間の肉厚が十分大きく確保できる。このような形状の中間加工品に開口工程を実行することにより、第1板材と第2板材の境界部に露出している接合層とストレート穴の開口部との間隔が拡大される。したがって、接合層が液体中で膨潤しても、その膨潤片による弊害が実質的にストレート穴には及ばない状態になり、圧力発生室への液体流入量や液体の円滑な流れ等が良好な状態となる。
【0026】
また、上記塑性加工工程の後、上記第2板材の外表面に沿って上記膨出部を除去する切断等の開口工程が実行されるものであるから、パンチのストレート部の外周面と接合層との間の拡大された肉厚に異常な変形等が及ぶことなく、ストレート穴の開口部と接合層との間隔が所要の値に維持される。
【0027】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法において、上記変形促進形状部が、略円形でありその中心は上記パンチおよびダイの軸線と略合致した状態で配置されている場合には、上記パンチの進出で上記積層部材がダイの開口内に押し込まれるとき、上記軸線の回り全体にわたって均一な塑性流動量が確保でき、上述の拡大された肉厚が良好な円形状態で形成される。
【0028】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法において、上記変形促進形状部の直径が、上記パンチのストレート部の直径と略同じかまたはそれよりも大きく設定されている場合には、上記ストレート部ないしはテーパ部の進出による押圧力が、塑性流動をともないながら変形促進形状部の中央部に対して初期の段階で作用し、その後は上記押圧力が変形促進形状部の全域に放射状に拡大して行く。したがって、変形促進形状部における第2板材の抵抗減少等の上記機能が中心部から周辺部に対して均一に移行し、変形促進形状部における第2板材の抵抗減少等が確実に達成される。
【0029】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法において、上記変形促進形状部の直径が、上記ダイの円形の開口の直径と略同じかまたはそれよりも小さく設定されている場合には、上記ストレート部ないしはテーパ部の進出による押圧力が、塑性流動をともないながら変形促進形状部の中央部に対して初期の段階で作用し、その後は上記押圧力が変形促進形状部の全域に放射状に拡大して行く。このように変形促進形状部が機能して行く際には、変形促進形状部の機能現象が確実に上記ダイの開口内に向ってなされるので、第1板材の塑性流動変形が第2板材によって抑制されることなく、確実にダイの開口内に向って進行する。
【0030】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法において、上記変形促進形状部の直径が、上記パンチのストレート部の直径よりも大きく、上記ダイの開口の直径よりも小さく設定されている場合には、上記のように、変形促進形状部における第2板材の抵抗減少等の上記機能が、中心部から周辺部に対して均一に移行し、変形促進形状部における第2板材の抵抗減少等が確実に達成される。これとともに、上記のように、変形促進形状部が変形しながら機能して行く際には、変形促進形状部の機能現象が確実に上記ダイの開口内に向ってなされるので、第1板材の塑性流動変形が第2板材によって抑制されることなく、確実にダイの開口内に向って進行する。したがって、パンチの進出のともなう第1板材の塑性流動が正常に開始され、その塑性流動がダイの開口内に向って的確に進行し、第2板材に抑制されない塑性加工工程が実施できる。
【0031】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法において、上記変形促進形状部が、上記第2板材を円板型に除去した円形領域である場合には、第2板材が円形の状態で存在しない領域が形成されているので、第1板材の塑性流動に対する第2板材の抑制現象すなわち抵抗現象が実質的に問題にならないレベルとなる。具体的には、上記円形領域の直径がダイの開口の直径と略同じであれば、塑性流動に対して第2板材は無抵抗であり、また、円形領域の直径がダイの開口の直径よりも小さければ、塑性流動に対して第2板材は初期の段階では抵抗があるが、塑性流動の進行にともなって略無抵抗となる。
【0032】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法において、上記変形促進形状部が、上記第2板材をリング溝状に除去したリング領域である場合には、リング領域の内側は第2板材が存在しないのに等しい状態となる。したがって、上記の第2板材を円板型に除去した円形領域の場合と同じ現象を呈する。
【0033】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法において、上記変形促進形状部が、上記第2板材の一部に配置した円板型形状部の厚さを薄くした薄肉円形領域である場合には、第1板材の塑性流動にともなうパンチの押圧力が上記の薄肉円形領域に作用すると、上記領域は薄肉化されているので容易に延び変形がなされ、それが限界に達すると破断にいたる。したがって、上記延び変形の段階においては、第2板材の抵抗現象が軽度のものとなり、また、破断すると急激に無抵抗の状態になる。
【0034】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法において、上記変形促進形状部が、上記第2板材をリング状に厚さを薄くした薄肉リング領域である場合には、第1板材の塑性流動の初期の段階で、パンチの押圧力が上記薄肉リング領域に集中し、これによって薄肉部分が破断する。これにより、薄肉リング領域の内側は第2板材が存在しないのに等しい状態となる。したがって、上記の第2板材を円板型に除去した円形領域の場合と同じ現象を呈する。
【0035】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法において、上記開口工程が、上記膨出部を構成する前記第1板材、前記接合層及び前記第2板材を除去するものである場合には、上記膨出部をその先端部分から徐々に研削してゆくものであるから、上述のようにパンチのストレート部の外周面と接合層との間の拡大された肉厚部分に、何等支障を及ぼすことがない。
【0036】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0037】
図1および図2は、本発明の対象になる液体噴射ヘッドの一実施の形態を示し、また、図3〜図5は本発明の液体噴射ヘッドの製造方法の実施の形態を工程的に示している。
【0038】
本発明において対象とされている液体噴射ヘッドは、上述のように種々な液体を対象にして機能させることができ、図示の実施の形態においてはその代表的な事例として、インクジェット式記録装置に採用される記録ヘッドを実施の形態の対象にしている。
【0039】
図1および図2に示されたインク噴射ヘッド1は、図13および図14で説明したものと同じであり、各部の構成部材には同一符号が付されている。すなわち、上記インク噴射ヘッド1は、ノズル開口5が形成されたノズルプレート6と、上記ノズルプレート6に接合されインク貯留室2が形成されたインク貯留室形成板7と、上記インク貯留室形成板7に接合されインクの供給口8が形成された供給口形成板9と、上記供給口8に連通する圧力発生室4が形成され上記供給口形成板9に一体化されている圧力発生室形成板10と、上記圧力発生室形成板10に接合され圧力発生室4を封止する振動板11と、上記振動板11に取付けられた圧力発生手段である撓み振動型の圧電素子3との各機能部材から構成されている。
【0040】
なお、ここではディスタンスプレート12が供給口形成板9と圧力発生室形成板10との間に接合され、圧力発生室4に開口する流通穴13が形成され、ノズル開口5と圧力発生室4を連通する流通穴14が設けられている。また、各部材の接合は、接着によってなされている。
【0041】
上記インク貯留室2におけるインクの圧力変動に順応させるために、大気に連通している空間とされたコンプライアンス部15が形成されている。上記コンプライアンス部15を形成するために、供給口形成板9が積層構造とされている。供給口形成板9は、板厚の厚いステンレス製の第1板材16と上記第1板材16よりも板厚が薄くされたステンレス製の第2板材17とが接着剤層である接合層18により、一体化されている。そして、第2板材17にエッチング処理を施すことにより、コンプライアンス部15が形成される。したがって、このように積層された構造の供給口形成板9が「積層部材」に相当している。
【0042】
上記の各部の構造形態を、平面的に透視した各部の位置関係は、図15に示したものと同じである。
【0043】
図2は、供給口8の部分を拡大して示した部分的な断面図である。供給口8は、断面形状が円形であり、第1板材16側に形成されたテーパ穴8Aと第2板材17側に形成されたストレート穴8Bから構成されている。実際には、後述の塑性加工工程から容易に理解されるように、供給口8はその全長が塑性変形をした第1板材16を貫通しているのであるが、上記のような「第1板材16側」や「第2板材17側」なる表現は、テーパ穴8Aやストレート穴8Bが、供給口形成板9の厚さ領域において、どの辺りに存在しているかを理解するために用いられている。
【0044】
図6(A)にも示されているように、上記ストレート穴8Bは、塑性変形をした第1板材16に開口しており、その開口部(開口円)は符号8Cで示されている。上記開口部8Cの周囲には、略同心の状態で略円形の接合層19(以下、便宜上「円形接合層19」という)が露出している。上記円形接合層19は、後述の塑性加工工程後の開口工程によって表面(供給口形成板9の裏面)に露出するもので、第1板材16と第2板材17との境界部にあらわれている。
【0045】
第1板材16をパンチ20で加圧することにより、パンチ20のストレート部20Bやダイ21の開口21Aに向う第1板材16の塑性変形がなされる。この塑性変形が行なわれやすくするために、第2板材にあらかじめ変形促進形状部24が形成してある。上記変形促進形状部24が変形しながら機能することにより、第1板材16の塑性変形に対する第2板材17の抑制現象が除去されたり、許容できるレベルまで低減される。
【0046】
上記変形促進形状部24の形状としては、種々なものがあり後述のように、第2板材17を円板型に除去した円形領域や第2板材17をリング溝状に除去したリング領域等が採用されている。これらのものは略円形でありすなわち変形促進形状部24が略円形であり、その中心はパンチ20およびダイ21の軸線と略合致させてある。
【0047】
図3に示されている変形促進形状部24は、第2板材17に円形の開口部25を設けた場合である。上記開口部25は、第2板材17を円板型に除去した円形領域であり、この領域にも符号25が付されている。
【0048】
図7および図8は、上記開口部(円形領域)25をあらかじめ形成する方法を示している。図7(A)は、開口部25が形成される前の状態を示している。(B)は、エッチング処理により複数の開口部25が形成された状態を示している。また、図8は、積層部材9として3層構造に接合される前に、第2板材17に打抜き加工等により開口部25が形成され、その後、第1板材16,第2板材17が接合層18で一体化される場合である。
【0049】
図3は、上記供給口8の穴あけ工程を示している。なお、第1板材16と第2板材17の厚さ寸法は、それぞれ50μm,15μmであり、上記のようにステンレスで作られている。
【0050】
供給口8の穴あけ加工は、通常のパンチ20とダイ21によって行なわれる塑性加工工程と、上記塑性加工工程によって形成された膨出部23を除去して供給口8を開口させる開口工程との2工程から成り立っている。上記パンチ20は、断面が円形であり、先端側に配置されたストレート部20Bと上記ストレート部20Bに連続しているテーパ部20Aが設けられ、上記テーパ部の拡開角度θ2は25度である。
【0051】
図3(A)は、ダイ21上に供給口形成板9が載置された状態を示している。
この場合の開口部25の直径は、ダイ21の開口21Aの直径φ2と略同径である。また、開口部25の直径は、パンチ20のストレート部20Bの直径よりも大きく設定してある。ここで、パンチ20のストレート部20Bが供給口形成板9の表面に圧入されてその押圧力が第1板材16に作用すると、開口部25の箇所には第2板材17が存在しないので、その押圧力によって第1板材16には直ちに塑性変形が開始される。さらにパンチ20の圧入が進行してテーパ部20Aの部分が第1板材16に圧入され、ストレート部20Bの先端部が第2板材17の外表面22を越えた箇所でパンチ20の進出が停止されると、最終的な形状の膨出部23が開口21A内に形成される。
【0052】
上記のパンチ20の進出により、ダイ21の開口21A(その内径はφ2で示されている)内に、第1板材16,接合層18が層状になって押し込まれた状態となり、膨出部23が形成される。このような塑性加工が上記の「塑性加工工程」である。
【0053】
上記の一連の成型すなわち塑性加工工程においては、開口部25の箇所に第2板材17が存在しないので、第1板材16の塑性流動に対する第2板材17の抵抗現象は発生しない。したがって、この場合における変形促進形状部24の機能は、第2板材17が第1板材16の塑性変形に対して、無抵抗の形態で果たされるのである。なお、ストレート部20Bの先端部が、第2板材17の外表面22を越えた長さは、図3(B)(C)に符号Lで示されている。図3におけるダイ21の開口21Aの口径φ2は、図16に示したφ1よりも大きく設定されている。
【0054】
つぎに、パンチ20が後退し膨出部23がダイ21の開口21Aから取出されると、(C)に示すように、有底の供給口8と膨出部23が形成される。ここで、第2板材17の外表面22に沿って膨出部23を除去すなわち研磨加工をすると、(D)に示すように、供給口形成板9を貫通した供給口8が形成される。上記のように越えた長さLが確保されているので、上記の切断と同時に供給口8が開口する。この開口をさせる工程が上記の「開口工程」である。なお、上記の切断は、このような微細な構造部分であるので、研磨加工をするのが好適である。
【0055】
上記の開口工程により、第1板材16と第2板材17の境界部に円形接合層19が、図6(A)に示すように、露出する。なお、この露出形状はインク液によって膨潤していない状態である。
【0056】
上記構成により、上記の変形促進形状部24が変形して、塑性加工工程の途上すなわち膨出部23を形成しながら機能する。この機能は、第1板材16がパンチ20のストレート部20Bの方向に塑性流動をするときに、第2板材17が上記塑性流動を抑制することとなるので、このような抑制現象を実質的に問題にならないレベルまで軽減するものである。この実施の形態では、膨出部23の膨出変形に対して第2板材17が無抵抗の状態になる。したがって、第1板材16の塑性流動が所期の状態で行なわれ、パンチ20のストレート部20Bの外周面と接合層18との間の肉厚S2が十分大きく確保できる。すなわち、第1板材16のストレート部20B側への流動量が増量され、図3に示されたパンチ20のストレート部20Bの外周面と接合層18との間の肉厚S2が大きくなる。この点について、図16に示した同様な肉厚S1と対比すると、あきらかにS2の方が増大していることが認められる。
【0057】
このような形状の中間加工品に開口工程を実行することにより、第1板材16と第2板材17の境界部に露出している円形接合層19とストレート穴8Bの開口部8Cとの間隔が拡大される。したがって、円形接合層19がインク液で膨潤しても、その膨潤片19Aによる弊害が実質的にストレート穴8Bには及ばない状態になり、圧力発生室4へのインク流入量やインクの円滑な流れ等が良好な状態となる。
【0058】
上記膨潤片19Aの形状は、図6(B)に示されている。同図に見られるように、膨潤片19Aと開口部8Cとの間隔d1,d2は図17(B)に示した場合と比べて、大幅に開口部8Cから離隔している。したがって、上記のように、膨潤片19Aによる弊害が実質的にストレート穴8Bには及ばない状態になり、圧力発生室4へのインク流入量やインクの円滑な流れ等が良好な状態となる。
【0059】
また、上記塑性加工工程の後、第2板材17の外表面22に沿って膨出部23を除去する切断等の開口工程が実行されるものであるから、パンチ20のストレート部20Bの外周面と接合層18との間の拡大された肉厚S2に異常な変形等が及ぶことなく、ストレート穴8Bの開口部8Cと円形接合層19との間隔が所要の値に維持される。
【0060】
上記開口工程は、上記膨出部23に研磨加工を行ない、膨出部23をその先端部分から徐々に研削してゆくことから、パンチ20のストレート部20Bの外周面と接合層18との間の拡大された肉厚部分(S2)に、何等支障を及ぼすことがない。
【0061】
上記ストレート穴8Bの直径D1に対する円形接合層19の直径D2の比を1.3以上とすることにより、ストレート穴8Bの開口部8Cと円形接合層19との間の距離が十分長くに確保できるので、円形接合層19の膨潤片19Aがストレート穴8Bに及ぼす悪影響が実質的に回避される。
【0062】
上記開口部25の直径は、ダイ21の開口21Aの直径φ2と略同じであるが、これをφ2よりも小さくして変形促進形状部24の機能を果たすようにすることもできる。この場合には、ダイ21の開口21Aにリング状に張り出している第2板材17の部分が、第1板材16の塑性流動で開口21Aの内部側へ屈曲するときに、上記の抑制作用が発生するが、その後は、第1板材16の塑性流動を阻止するような要素は消滅する。
【0063】
さらに、上記変形促進形状部24が、略円形でありその中心はパンチ20およびダイ21の軸線と略合致した状態で配置されている。したがって、パンチ20の進出で積層部材9がダイ21の開口21A内に押し込まれるとき、上記軸線の回り全体にわたって均一な塑性流動量が確保でき、上述の拡大された肉厚S2が良好な円形状態で形成される。
【0064】
上記開口部25の直径が、ダイ21の開口21Aの直径と略同じに設定されている。したがって、上記ストレート部20Bないしはテーパ部20Aの進出による塑性流動は、第2板材17から何等抑制を受けることなく開口部25の中央部に向ってパンチ進出の初期の段階から許容される。その後は、上記塑性流動すなわち膨出部23の成長が、開口部25の全域に直径方向に放射状に拡大して行く。このように開口部25が機能して行く際には、開口部25の機能現象が確実にダイ21の開口21A内に向ってなされるので、第1板材16の塑性流動変形が第2板材17によって抑制されることなく、確実にダイ21の開口21A内に向って進行する。
【0065】
図4は、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法の第2の実施の形態を示す。
【0066】
この実施の形態は、上記実施の形態における開口部25の直径を、ダイ21の開口21Aの直径φ2よりも大幅に小さくした場合である。また、開口部25の直径は、パンチ20のストレート部20Bの直径と略同じに設定してある。それ以外は、上記実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0067】
上記構成により、パンチ20の圧入により第1板材16の塑性流動が開始されると、その押圧力は小径の開口部25に集中する。これにより、開口部25は全体的に押し広げられ、弾性限界を越えた場合には、開口部25の内縁部が引き裂かれて第1板材の塑性流動の進行を許容する。第1板材16の塑性変形に対する開口部25の抑制現象は、上記の押し広げや弾性限界を越える前までは続行するが、その後は、第1板材16の塑性変形を阻止するような現象が消滅する。また、開口部25の直径がパンチ20のストレート部20Bの直径よりも大きい場合には、図3に示した実施の形態に近い作用効果に変化する。それ以外は、上記実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0068】
また、開口部25の直径がパンチ20のストレート部20Bの直径よりも大きく、ダイ21の開口21Aの直径φ2よりも小さく設定されている場合には、上記のように、開口部25における第2板材17の抵抗減少等の上記機能が、中心部から周辺部に対して均一に移行し、開口部25における第2板材17の抵抗減少等が確実に達成される。これとともに、上記のように、開口部25が機能して行く際には、開口部25の機能現象が確実にダイ21の開口21A内に向ってなされるので、第1板材16の塑性流動変形が第2板材17によって抑制されることなく、確実にダイ21の開口21A内に向って進行する。したがって、パンチ20の進出にともなう第1板材16の塑性流動が正常に開始され、その塑性流動がダイ21の開口21A内に向って的確に進行し、第2板材17に抑制されない塑性加工工程が実施できる。
【0069】
図5は、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法の第3の実施の形態を示す。
【0070】
この実施の形態は、上記変形促進形状部24が、第2板材17をリング溝状に除去されたリング領域26の場合である。すなわち、図5(E)(F)に示すように、リング状のスリットをエッチング処理で形成してリング領域26が形成されている。そして、ここではリング領域26の直径がダイ21の開口21Aの直径φ2と略同じとされている。なお、図8に示したように、あらかじめリング領域26を形成した第2板材17を接合する場合には、図9に示すように、リング領域26にその内外を連続する細い接続部26Aを設けておく。それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0071】
上記変形促進形状部24により、リング領域26の内側は第2板材17が存在しないのに等しい状態となる。したがって、上記の第2板材17を円板型に除去した円形領域25の場合と同じ現象を呈する。図5(C)に示すように、膨出部23が形成されたときには、リング領域26の内側にある円板型の第2板材17が、膨出部23の頂部に接合されたままとなっている。したがって、この実施の形態における変形促進形状部24の機能は、第1板材16の塑性変形の開始と同時に、スリット状の領域26により、第1板材16への塑性変形抑制が生じないようになることである。それ以外は、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0072】
図10は、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法の第4の実施の形態を示す。
【0073】
この実施の形態は、上記変形促進形状部24が、第2板材17の一部に配置した円板型形状部の厚さを薄くした薄肉円形領域27の場合である。この薄肉部分はプレス成型で成型するのが適している。それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0074】
上記変形促進形状部24により、第1板材16の塑性流動にともなうパンチ20の押圧力が上記の薄肉円形領域27に作用すると、上記領域27は薄肉化されているので容易に延び変形がなされ、それが弾性限界に達すると、同図(B)に示すように、破断にいたる。したがって、上記延び変形の段階においては、第2板材17の抵抗現象が軽度のものとなり、また、破断すると急激に無抵抗の状態になる。それ以外は、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0075】
図11は、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法の第5の実施の形態を示す。
【0076】
この実施の形態は、上記変形促進形状部24が、第2板材17をリング状に厚さを薄くした薄肉リング領域28の場合である。このような薄肉リング領域28の形成は、リング状の金型を押しつけて形成してもよいし、また、エッチング処理で形成してもよい。それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0077】
上記変形促進形状部24により、第1板材16の塑性流動の初期の段階で、パンチ20の押圧力が上記薄肉リング領域28に集中し、これによって薄肉部分が、同図(B)に示すように、破断する。これにより、薄肉リング領域28の内側は第2板材17が存在しないのに等しい状態となる。したがって、上記の第2板材17を円板型に除去した円形領域25の場合と同じ現象を呈する。それ以外は、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0078】
図12は、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法の第6の実施の形態を示す。
【0079】
この実施の形態は、上記変形促進形状部24が、四角錐型のポンチにより形成された場合である。このようにして形成された角錐穴29は、圧痕のような状態であり、第1板材16の塑性変形時のウイークポイント(弱い点形状部)となる。それ以外は、上記各実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0080】
上記変形促進形状部24により、パンチ20の押圧力が作用すると、第1板材16の塑性変形によって、角錐穴29は4方向に押し広げられるので、第2板材17が第1板材16の塑性流動を抑制する現象がほとんど発生しない。また、角錐穴29は、ポンチの叩き込みだけでよいから、変形促進形状部24の形成が簡素化できる。それ以外は、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0081】
上述の実施の形態は、1つの供給口8を開口するような形になっているが、実際には図15(あるいは、図7,図8)に示すように、供給口形成板9に一定間隔で配列された多数の供給口8を形成する。したがって、パンチ20やダイ21もそれに応じた複数穴を開口できる構造になっている。
【0082】
上記の実施の形態では、圧力発生素子が撓み振動モードの形式であるが、他に、縦振動モードで液体を噴射したり、液体の加熱素子で液体を噴射したりする形式のものであってもよい。また、本発明における液体貯留手段は、キャリッジにインクカートリッジを搭載する形式のものに加えて、インクタンクをインクジェット式記録装置の本体側に装着し、キャリッジには圧力変動を吸収するサブタンクを搭載した形式のものであってもよい。
【0083】
上述の実施の形態は、インクジェット式記録装置を対象にしたものであるが、本発明によってえられた液体噴射装置は、インクジェット式記録装置用のインクだけを対象にするのではなく、グルー,マニキュア,導電性液体(液体金属)等を噴射することができる。さらに、上記実施の形態では、液体の一つであるインクを用いたインクジェット式記録ヘッドについて説明したが、プリンタ等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド,液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド,有機ELディスプレー,FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド,バイオチップ製造に用いられる生体有機噴射ヘッド等の液体を吐出する液体噴射ヘッド全般に適用することも可能である。
【0084】
【発明の効果】
以上のように、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法によれば、上記の変形促進形状部が変形して、塑性加工工程の途上すなわち膨出部を形成しながら機能する。この機能は、第1板材がパンチのストレート部の方向に塑性流動をするときに、第2板材が上記塑性流動を抑制することとなるので、このような抑制現象を実質的に問題にならないレベルまで軽減するものである。具体的な機能現象としては、膨出部分の膨出変形に対して第2板材が無抵抗もしくは軽度の抵抗状態であったり、あるいは上記膨出変形の初期の段階で第2板材の変形促進形状部が破断状態になって、その後は急激に抵抗値が低下して略無抵抗の状態になったりする。したがって、第1板材の塑性流動が所期の状態で行なわれ、パンチのストレート部の外周面と接合層との間の肉厚が十分大きく確保できる。このような形状の中間加工品に開口工程を実行することにより、第1板材と第2板材の境界部に露出している接合層とストレート穴の開口部との間隔が拡大される。したがって、接合層が液体中で膨潤しても、その膨潤片による弊害が実質的にストレート穴には及ばない状態になり、圧力発生室への液体流入量や液体の円滑な流れ等が良好な状態となる。
【0085】
また、上記塑性加工工程の後、上記第2板材の外表面に沿って上記膨出部を除去する切断等の開口工程が実行されるものであるから、パンチのストレート部の外周面と接合層との間の拡大された肉厚に異常な変形等が及ぶことなく、ストレート穴の開口部と接合層との間隔が所要の値に維持される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の対象になる液体噴射ヘッドの一実施の形態を示す断面図である。
【図2】図1のものの供給口の部分を拡大した断面図である。
【図3】本発明による製造方法の工程順序を示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態による製造方法の工程順序を示す断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態による製造方法の工程順序を示す断面図である。
【図6】供給口の開口状態を示す底面図と断面図である。
【図7】積層部材の断面図である。
【図8】積層部材の接合前の状態を示す断面図である。
【図9】リング領域の平面図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態を示す断面図である。
【図11】本発明の第5の実施の形態を示す断面図である。
【図12】本発明の第6の実施の形態を示す断面図である。
【図13】従来例を示す断面図である。
【図14】図13のものの供給口の部分を拡大した断面図である。
【図15】インク噴射ヘッドの各部の位置関係を示す平面図である。
【図16】従来技術による工程順序を示す断面図である。
【図17】従来技術で形成された供給口の開口状態を示す底面図と断面図である。
【符号の説明】
1 インク噴射ヘッド
2 インク貯留室
3 圧力発生手段,撓み振動型の圧電素子
4 圧力発生室
5 ノズル開口
6 ノズルプレート
7 インク貯留室形成板
8 供給口
8A テーパ穴
8B ストレート穴
8C 開口部
9 供給口形成板,積層部材
10 圧力発生室形成板
11 振動板
12 ディスタンスプレート
13 流通穴
14 流通穴
15 コンプライアンス部
16 第1板材
17 第2板材
18 接合層
19 略円形の接合層,円形接合層
20 パンチ
20A テーパ部
20B ストレート部
21 ダイ
21A 開口
22 外表面
23 膨出部
24 変形促進形状部
25 開口部,円形領域
26 リング領域
26A 接続部
27 薄肉円形領域
28 薄肉リング領域
29 角錐穴
L 越えた長さ
θ1 拡開角度
θ2 拡開角度
d1 膨出片の変形量
d2 膨出片の変形量
D1 ストレート穴の直径
D2 円形接合層の直径
S1 肉厚
S2 肉厚
φ1 ダイの開口径
φ2 ダイの開口径

Claims (1)

  1. 液体貯留源からの液体を貯留する液体貯留室と、上記液体貯留室から液体を導入して圧力発生手段により液体を加圧する圧力発生室と、上記圧力発生室で加圧された液体を噴射するノズル開口を備えた液体噴射ヘッドの製造方法であって、
    上記液体噴射ヘッドは、ステンレスからなる第1板材と上記第1板材よりも板厚の薄いステンレスからなる第2板材とが接着剤層から成る接合層で一体化されている穴あけ加工における塑性加工工程とこの塑性加工工程の後になされる開口工程が施された積層部材を有し、
    上記第2部材の膨出部が形成される領域の少なくとも一部には、膨出部が形成される領域以外の領域の上記第2板材の厚みよりも薄くしたか、または、上記第2板材の膨出部が形成される領域の少なくとも一部を除去した変形促進形状部を形成し、
    加工前の積層部材が載置されるダイと対をなす断面円形のパンチが、先端側に配置されたストレート部と上記ストレート部に連続すると共に上記ストレート部が配置された方向とは逆の方向に断面が拡開していくテーパ部から構成され、上記パンチを上記積層部材の上記第1板材側から上記テーパ部が上記第1板材に圧入されるとともに上記ストレート部の先端部が上記第2板材の外表面を越える位置まで進出させて、積層部材の上記第2板材の外面表面方向に上記変形促進形状部の形状を変えながら上記膨出部を形成する上記塑性加工工程と、上記塑性加工工程の後、上記第2板材の外表面に沿って上記膨出部を除去する上記開口工程を含むことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
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