ところで、特許文献1のようにケーシングとダッシュパネルとの間にシール部材を設ける場合には、シール部材に室内配管が挿通する挿通孔を形成しておき、この挿通孔に室内配管を挿通させてシール部材をケーシングに保持させておき、該シール部材と室内ユニットとを車両に一度に組み付けることで、シール部材と室内ユニットとを別々に組み付ける場合に比べて、車両組立ライン上での組み付け工数を削減することが考えられる。
また、近年、自動車においては燃費向上策の1つとして車両の小型化を図って車両重量を軽くすることが行われている反面、車室空間は広く確保したいという要求があるので、エンジンルームを狭くする必要が生じている。しかも、そのエンジンルームに搭載される機器は多くなってきているので、エンジンルームの余裕は極めて少なくなってしまう。このことに伴って、空調装置においては、室内配管の先端側の長さを短くせざるを得ず、上記のようにシール部材の挿通孔に室内配管の先端側を挿通させてシール部材を室内ユニットに保持するようにした場合には、例えばシール部材の厚さによっては室内配管の接続部がシール部材の挿通孔周囲で覆われてしまう場合がある。また、室内ユニットの搬送時の振動等によってシール部材が位置ずれした際にも、室内配管の接続部がシール部材の挿通孔周囲で覆われてしまう。このようになると、作業者がエンジンルーム側から室外配管を室内配管に接続しようとした際、室内配管の接続部を見ることができないため、接続作業が困難なものとなって接続作業に要する時間が長くなってしまう。さらに、室内配管の接続部が見えないことから、接続作業が完了したか否かを作業者が目視で確かめることができず不完全なまま終えてしまうことがあるとともに、作業後の検査工程においても配管の接続状態を目視で確認することができず、品質管理も困難になる。
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シール部材に設けた挿通孔に室内配管を挿通させてシール部材を室内ユニットに保持するようにした場合に、室内配管の接続部をシール部材から露出させることにより、室内配管と室外配管との接続作業を容易にして接続作業に要する時間を短くするとともに接続作業を確実にできるようにし、しかも、接続作業後の検査工程で配管の接続状態を容易にかつ確実に検査できるようにすることにある。
上記目的を達成するために、本発明では、室内配管の先端側にシール部材保持具を取り付けることにより室内配管の接続部をシール部材から露出させるようにした。
具体的には、請求項1の発明では、熱交換器と、該熱交換器を収容するケーシングと、基端側が上記熱交換器に接続され先端側が上記ケーシングの外部へ延びる室内配管とを有する室内ユニットを備え、上記室内配管は、室内ユニットを車室のダッシュパネル近傍に配設した状態で該ダッシュパネルに形成された貫通孔からエンジンルームに突出し、当該突出端部を接続部として該接続部にエンジンルーム側の室外配管が接続されて上記熱交換器に熱交換媒体が給排されるように構成された車両用空調装置を対象とする。
そして、上記室内ユニットには、挿通孔を有する弾性材からなるシール部材が、該挿通孔に室内配管を挿通させた状態で上記ケーシングと上記ダッシュパネルの貫通孔周囲との間をシールするように保持され、上記シール部材は、上記ケーシングと上記ダッシュパネルの貫通孔周囲との間をシールした状態で、該ケーシングと該ダッシュパネルの貫通孔周囲とにより圧縮されて変形するように形成されるとともに、変形前の状態では、上記室内配管の接続部を覆うように形成され、上記室内配管の先端側には、車両への搭載前において、上記シール部材の少なくとも挿通孔周囲を室内配管の接続部よりも該室内配管の基端側へ圧縮させることにより位置付けて接続部を露出させるシール部材保持具が取り付けられている構成とする。
この構成によれば、シール部材が保持された室内ユニットを車室に搬入してダッシュパネルの近傍に配置すると、室内配管の先端側がダッシュパネルの貫通孔からエンジンルームに突出する。このとき、シール部材の挿通孔周囲がシール部材保持具によって室内配管の接続部よりも基端側に位置付けられていて該接続部が露出しているので、作業者はエンジンルーム側から室内配管の接続部を見ることが可能になる。これにより、作業者は室外配管を室内配管の接続部に容易にかつ確実に接続することが可能になるとともに、接続作業後の検査工程で接続状態を容易にかつ確実に検査することが可能になる。
請求項2の発明では、請求項1の発明において、シール部材保持具は、室内配管の外周面に嵌合する嵌合部を備え、上記室内配管の外周面には、上記嵌合部が上記室内配管の接続部側へ変位するのを抑制するストッパ部が設けられている構成とする。
この構成によれば、嵌合部を室内配管に嵌合させることでシール部材保持具が室内配管に取り付けられる。この嵌合部はストッパ部によって室内配管の接続部側へ変位するのが抑制されるので、シール部材の挿通孔周囲が室内配管の接続部側へ変位するのを確実に防止することが可能になる。
請求項3の発明では、請求項2の発明において、室外配管には識別部が設けられ、シール部材保持具の嵌合部には、上記室外配管の識別部に対応する保持具側識別部が設けられ、上記嵌合部は、上記保持具側識別部が室内配管における周方向の所定位置に位置付けられるように該室内配管に嵌合している構成とする。
この構成によれば、嵌合部を室内配管に嵌合させると、保持具側識別部が室内配管の所定位置に位置付けられる。そして、この室内配管に室外配管を接続する際には、該室外配管の識別部を上記嵌合部の保持具側識別部に合わせることで、室内配管の周方向の所定位置と室外配管の周方向の所定位置とが略一致する。これにより、室外配管の識別部を、該識別部と保持具側識別部とを合わせたときに室外配管のねじれが殆ど生じない位置に設けておくことで、室外配管がねじれた状態で室内配管に接続されるのを回避することが可能になる。
請求項4の発明では、請求項2または3の発明において、室内配管は、熱交換器に熱交換媒体を供給する供給用室内配管と、熱交換器から熱交換媒体を排出させる排出用室内配管との2本あり、シール部材保持具は、上記供給用室内配管及び排出用室内配管の一方の外周面に嵌合する第1嵌合部と、他方の外周面に嵌合する第2嵌合部とを備えている構成とする。
この構成によれば、両嵌合部を供給用室内配管及び排出用室内配管に嵌合させることで、該供給用室内配管の接続部及び排出用室内配管の接続部の両方がシール部材から露出した状態となる。これにより、作業者は、エンジンルーム側から供給用室外配管及び排出用室外配管を上記両室内配管の接続部に容易に接続することが可能になる。
請求項5の発明では、請求項4の発明において、シール部材保持具は、第1嵌合部と第2嵌合部とを連結して一体化する連結部を備えている構成とする。
この構成によれば、両嵌合部が一体化しているので、該両嵌合部を供給用室内配管及び排出用室内配管に嵌合させると、該供給用室内配管と排出用室内配管とがシール部材保持具によって連結されることになって、これら両室内配管の先端側の相対位置のばらつきが小さくなる。一方、ダッシュパネルの貫通孔の大きさは、両室内配管の相対位置のばらつきを考慮し、ばらつきが所定範囲内で最も大きい場合であっても室内配管の挿入が容易に行えるように設定されている。従って、上記のように供給用室内配管と排出用室内配管との相対位置のばらつきが小さくなった分、ダッシュパネルの貫通孔を小さくすることが可能になる。
また、上記のように供給用室内配管と排出用室内配管とがシール部材保持具で連結されるので、室外配管を室内配管に接続する際、例えば、供給用室内配管に曲げ力が作用しても、該供給用室内配管は排出用室内配管によって支えられることになって供給用室内配管の変形量が抑制される。
請求項6の発明では、請求項4または5の発明において、第1嵌合部には、一方の室内配管を該第1嵌合部の内側へ導く第1開放部が設けられ、第2嵌合部には、他方の室内配管を該第2嵌合部の内側へ導く第2開放部が設けられ、上記第2開放部は、上記第1嵌合部を第1開放部から一方の室内配管に嵌合させた状態で、第2嵌合部を一方の室内配管周りに回動させることにより、他方の室内配管を第2嵌合部の内側に導くように位置付けられている構成とする。
この構成によれば、第1嵌合部を例えば供給用室内配管に嵌合させた後、第2嵌合部を供給用室内配管の軸線周りに回動させると、該第2嵌合部の第2開放部から排出用室内配管が第2嵌合部の内側に導かれて該第2嵌合部が排出用室内配管に嵌合した状態となる。つまり、第1嵌合部を嵌合させてから第2嵌合部を回動させる操作を行うだけで、2つの嵌合部を供給用室内配管及び排出用室内配管に嵌合させることが可能になる。
請求項7の発明では、請求項6の発明において、第2嵌合部には、該第2嵌合部を他方の室内配管に嵌合させる際の力を小さくする嵌合力低減部が設けられている構成とする。
この構成によれば、第2嵌合部を他方の室内配管に嵌合させる際の力が小さくなるので、第2嵌合部を一方の室内配管周りに回動させて他方の室内配管に嵌合させる動作が容易に行えるようになる。
請求項8の発明では、請求項4から7のいずれか1つの発明において、第1嵌合部には、一方の室内配管に接続される室外配管に設けられた識別部に対応する第1保持具側識別部が設けられ、第2嵌合部には、他方の室内配管に接続される室外配管に設けられた識別部に対応する第2保持具側識別部が設けられている構成とする。
この構成によれば、第1保持具側識別部と一方の室外配管の識別部とを合わせることにより、一方の室外配管と一方の室内配管とが接続されることとなり、一方、第2保持部側識別部と他方の室外配管の識別部とを合わせることにより、他方の室外配管と他方の室内配管とが接続されることとなる。つまり、作業者が、保持具側識別部と室外配管の識別部とを確認しながら接続作業を行うことで、供給用室内配管に供給用室外配管を間違いなく接続し、排出用室内配管に排出用室外配管を間違いなく接続することが可能になる。
請求項9の発明では、請求項8の発明において、シール部材保持具には、検査具の当接の有無により、シール部材保持具の第1嵌合部及び第2嵌合部がそれぞれ一方の室内配管及び他方の室内配管に取り付けられているか否かを判別する判別部が設けられている構成とする。
この発明によれば、仮に、検査具が判別部に当接した場合に、第1嵌合部及び第2嵌合部がそれぞれ一方の室内配管及び他方の室内配管にそれぞれ嵌合してシール部材保持具が正規に組み付けられている状態であるとしておくと、検査具が判別部に当接しない場合には、シール部材保持具が正規の状態で組み付けられていないことが分かる。反対に、検査具が判別部に当接しない場合に、シール部材保持具が正規に組み付けられている状態であるとしておくと、検査具が判別部に当接した場合には、シール部材保持具が正規の状態で組み付けられていないことが分かる。
請求項1の発明によれば、室内配管の先端側にシール部材保持具を取り付けてシール部材の少なくとも挿通孔周囲を室内配管の接続部よりも該室内配管の基端側へ位置付けて接続部を露出させるようにしたので、室外配管を室内配管の接続部に容易に接続することができて、接続作業に要する時間を短くすることができるとともに接続作業を容易にかつ確実にすることができ、しかも、検査工程で配管の接続状態を容易にかつ確実に検査できる。
請求項2の発明によれば、シール部材保持具の嵌合部を室内配管の外周面に嵌合させ、この嵌合部が室内配管の接続部側へ変位するのをストッパ部により抑制するようにしたので、室内配管の接続部を確実に露出させておくことができる。
請求項3の発明によれば、嵌合部が室外配管の識別部に対応する保持具側識別部を有し、この保持具側識別部を室内配管における周方向の所定位置に位置付けるようにしたので、室外配管をねじれがない状態で室内配管に接続することができて、熱交換媒体が両配管の接続部分から漏れるのを未然に防止することができる。加えて、そのように室外配管をねじれがない状態で室内配管に接続することで、該室外配管が延びる経路を所期の経路とすることができる。このことによって、室外配管の中途部が他の部品等と接触して損傷するのを抑制できるので、室外配管の中途部から熱交換媒体が漏れるのを未然に防止することができる。
請求項4の発明によれば、シール部材保持具の第1嵌合部及び第2嵌合部を、供給用室内配管と排出用室内配管とに嵌合させるようにしたので、これら室内配管を供給用室外配管及び排出用室外配管にそれぞれ容易に接続することができる。
請求項5の発明によれば、シール部材保持具によって供給用室内配管と排出用室内配管との相対位置のばらつきを小さくすることができる。これにより、ダッシュパネルの貫通孔の開口面積を小さくすることができるので、車室に入ってくる騒音が抑制されて車室の静粛性を高めることができる。さらに、供給用室内配管及び排出用室内配管がシール部材保持具で連結された状態となるので、室内配管と室外配管とを接続する際に一方の室内配管に曲げ力が作用した場合、該室内配管の変形量を抑制することができる。
請求項6の発明によれば、第1嵌合部を一方の室内配管に嵌合させてから第2嵌合部を回動させるだけで該第2嵌合部を他方の室内配管に嵌合させることができるので、シール部材保持具を2本の室内配管に簡単に取り付けることができる。
請求項7の発明によれば、第1嵌合部を一方の室内配管に嵌合させてから第2嵌合部を回動させて他方の室内配管を嵌合させる作業を容易に行うことができる。
請求項8の発明によれば、供給用室内配管に供給用室外配管を間違いなく接続することができるとともに、排出用室内配管に排出用室外配管を間違いなく接続することができる。
請求項9の発明によれば、第1嵌合部及び第2嵌合部がそれぞれ一方の室内配管及び他方の室内配管に嵌合しているか否かを判別することができるので、シール部材保持具を室内配管に正規の状態で取り付けることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1の室内ユニット2を示す。該空調装置1は自動車の車室に搭載されるものであり、この空調装置1が搭載される自動車には、図1に示すように、車両前部に設けられたエンジンルームEと、該エンジンルームEの車両後側に設けられた車室Rとを仕切るダッシュパネルPが配設されている。このダッシュパネルPは鋼板を成形してなるものであり、車両の幅方向両端近傍に亘って延びている。上記室内ユニット2はダッシュパネルPの近傍に配置され、該ダッシュパネルPに取り付けられている。
室内ユニット2は、樹脂製のケーシング4と、該ケーシング4に収容された冷却用熱交換器5及び加熱用熱交換器6とを備えている。冷却用熱交換器5は、空気通過面が略鉛直に延びるように向いた状態でケーシング4内の車両前側に配置されている。加熱用熱交換器6は、空気通過面が上側へ行くほど車両後側に位置するように傾斜した状態で、上記冷却用熱交換器5の車両後側に配置されている。冷却用熱交換器5と加熱用熱交換器6との間には、温度調節ダンパ(図示せず)が配設されている。また、ケーシング4の車両前部には、図示しない送風機から送風された空気をケーシング4の内部に導入する導入口(図示せず)が設けられている。さらに、ケーシング4の上壁には、デフロスタ吹出口8及びベント吹出口9が設けられ、一方、ケーシング4の下部にはフット吹出口10が設けられている。また、ケーシング4内の加熱用熱交換器6の上部には、吹き出しモードに対応して作動する吹き出し方向切替ダンパ(図示せず)が設けられている。
そして、上記導入口から導入された空気は、まず、上記冷却用熱交換器5を通過し、この通過した空気のうち温度調節ダンパにより調節された所定量が加熱用熱交換器6を通過して調和空気が生成される。この調和空気は、吹き出し方向切替ダンパにより、各吹出口8〜10に分配されて車室Rの各部に供給される。
上記加熱用熱交換器6は、エンジンの冷却水が流れるヒータコアで構成されている。この加熱用熱交換器6は、図示しないが、チューブ及びフィンを交互に配置してなるチューブアンドフィンタイプであり、チューブの両端にはヘッダタンクがそれぞれ配設されている。各ヘッダタンクには、加熱用熱交換器6にエンジン冷却水を供給する供給用室内配管12の基端部と、加熱用熱交換器6内を循環したエンジン冷却水を該加熱用熱交換器6から排出させる排出用室内配管13の基端部とが接続されている。これら室内配管12、13は金属製のパイプ材を成形してなるものであり、ケーシング4の側壁から該ケーシング4の外部へ突出した後、上方へ折り曲げられ、先端側はケーシング4の車両前側へ略水平に延びている。
ケーシング4の車両前側上部には、上記室内配管12、13の先端側を支持するブラケット14が設けられている。このブラケット14は、図示しないが、車両左側の左側部と右側の右側部とに分割可能に構成されている。供給用室内配管12の先端側は、ブラケット14の上側において左側部及び右側部で挟まれた状態でケーシング4に保持され、排出用室内配管13の先端側は、ブラケット14の下側において同様にケーシング4に保持されている。
ブラケット14の車両前面は、図1に示すように、ダッシュパネルPの車室側の面と略平行に延びるように形成されている。室内配管12、13は、ブラケット14の前面から車両前方へ突出している。一方、ダッシュパネルPには、ブラケット14と対向する部分に該ブラケット14の前面の形状よりも小さい貫通孔Xが設けられている。室内配管12、13のブラケット14前面からの突出長さは、室内ユニット2を車両に組み付けた状態で、貫通孔Xを介してエンジンルームEに突出する長さとされている。
上記供給側室内配管12の先端部には、図3にも示すように、外周面から突出して周方向に延びる先端側環状部12aが設けられている。この先端側環状部12aは、先端側へ行くほど縮径するように形成されている。供給用室内配管12の先端側における先端側環状部12aよりも基端側には、外周面から突出して周方向に延びる基端側環状部12bが設けらている。この基端側環状部12bの外径は、先端側環状部12aの外径よりも大きく設定されている。供給用室内配管12の基端側環状部12bから先端側は、後述する室外配管が接続される接続部12cとされている。尚、排出側室内配管13にも、上記供給用室内配管12と同様に、先端側環状部13a及び基端側環状部13bが設けられ、基端側環状部13bから先端側が接続部13cとされている。
上記ブラケット14の前面には、ブラケット側シール部材16とダッシュパネル側シール部材17とが重ね合わされた状態で設けられている。これらシール部材16、17はケーシング4のブラケット14と、ダッシュパネルPの貫通孔X周囲との間をシールするものである。尚、図1中、符号18はダッシュパネルPの車室R側の面に貼り付けられた吸音部材である。
ブラケット側シール部材16は、図5にも示すように、例えば発泡ウレタン等の弾性材を平面視でブラケット14の前面の形状よりも大きい長円形の板状に成形してなる。このブラケット側シール部材16は、主にエンジンルームEの騒音が貫通孔Xから車室Rに入るのを抑制するためのものである。ブラケット側シール部材16の中央近傍には、上記供給側室内配管12が挿通する供給側挿通孔16aと、上記排出側室内配管13が挿通する排出側挿通孔16bとが上下方向に間隔をあけて設けられている。ブラケット側シール部材16は、両挿通孔16a、16bに室内配管12、13を挿通させた状態で室内ユニット2に保持されている。
また、ダッシュパネル側シール部材17は、平面視で上記ブラケット側シール部材16よりも小さい長円形の板状をなしている。このダッシュパネル側シール部材17は、主に貫通孔Xから水が車室Rに入るのを抑制するためのものである。このダッシュパネル側シール部材17を構成する部材は、例えば発泡ウレタン等からなる板状の内層弾性材の両面に、例えばEPDM等からなる板状の外層弾性材を貼り付けた3層構造の部材である。上記外層弾性材の厚みは、内層弾性材の厚みよりも厚く設定されている。
ダッシュパネル側シール部材17の中央近傍には、上記ブラケット側シール部材16と同様に、上記供給側室内配管12が挿通する供給側挿通孔17aと、上記排出側室内配管13が挿通する排出側挿通孔17bとが設けられている。ダッシュパネル側シール部材17は、両挿通孔17a、17bに室内配管12、13を挿通させた状態で室内ユニット2に保持されている。尚、ブラケット側シール部材16やダッシュパネル側シール部材17を構成する材料としては、発泡ウレタンやEPDMに限られず、各種弾性材を用いることができる。
上記ブラケット側シール部材16及びダッシュパネル側シール部材17の厚みは略同じに設定されている。これらシール部材16、17を室内ユニット2に保持させ、ブラケット側シール部材16をブラケット14前面に密着させるとともに、ダッシュパネル側シール部材17をブラケット側シール部材16に密着させた状態では、ダッシュパネル側シール部材17の車両前面が室内配管12、13の基端側環状部12b、13bよりも室内配管12、13の先端側に位置している。
図6に示すように、上記室内配管12、13には、上記ブラケット側シール部材16の挿通孔16a、16b周囲及びダッシュパネル側シール部材17の挿通孔17a、17b周囲を室内配管12、13の接続部12c、13cよりも基端側に位置付けて、該接続部12c、13cを露出させるシール部材保持具20が取り付けられている。このシール部材保持具20は、図4にも示すように、供給側室内配管12の外周面に嵌合する第1嵌合部21と、排出側室内配管13の外周面に嵌合する第2嵌合部22と、これら第1嵌合部21と第2嵌合部22とを連結して一体化する連結部23とを備えている。第1嵌合部21、第2嵌合部22及び連結部23は、樹脂材を用いて一体に成形されている。
第1嵌合部21には、供給用室内配管12を該第1嵌合部21の内側へ導く第1開放部24が設けられており、第1嵌合部21は全体として略C字状に形成されている。この開放部24の幅は、供給用室内配管12の外径よりも小さく設定されている。この第1嵌合部21に供給用室内配管12を嵌合させるときには、室内配管12を第1開放部24から第1嵌合部21の内側へ押し込むようにすることで該第1嵌合部21が拡径するように弾性変形し、室内配管12が第1嵌合部21の内側に完全に移動すると、第1嵌合部21の形状が復元し、これにより、第1嵌合部21が室内配管12の外周面に嵌合した状態となる。
第2嵌合部22にも、第1嵌合部21と同様な第2開放部25が設けられており、第2嵌合部22に排出用室内配管13を嵌合させるときには、室内配管13を第2開放部25から第2嵌合部22の内側へ押し込むようにすることで第2嵌合部22が拡径するように弾性変形し、室内配管13が第2嵌合部22の内側に完全に移動して第2嵌合部22の形状が復元し、これにより、第2嵌合部22が室内配管13の外周面に嵌合した状態となる。
上記第2開放部25における連結部23側の端部は、略直線に延びるように形成されている。これにより、第2嵌合部22を室内配管13に嵌合させる際の力が、第1嵌合部21を室内配管12に嵌合させる際の力よりも小さくなる。つまり、第2開放部25における連結部23側の端部は、本発明の嵌合力低減部27である。
連結部23は、第1嵌合部21における第1開放部24と反対側の部位と、第2嵌合部22の第2開放部25近傍とを連結するように形成されている。また、この連結部23には、シール部材保持具20が室内配管12、13に正規の状態で取り付けられているか否かを、後述する検査具を用いて判別するための判別部28が設けられている。この判別部28は、連結部23から互いに逆方向に延出する第1延出部28aと第2延出部28bとで構成されている。第1延出部28aは第1嵌合部21側にのみ形成されるていて、第1延出部28aと第2嵌合部22との間には隙間Tが設けられている。上記第2延出部28bは第1嵌合部21近傍から第2嵌合部22近傍に亘って形成されており、第1延出部28aよりも大型である。
また、第1嵌合部21の外面には、第2延出部28b側に略矩形の第1保持具側識別部29が設けられ、第2嵌合部22の外面には、第2延出部28b側に略三角形状の第2保持具側識別部30が設けられている。そして、シール部材保持具20が室内配管12、13に取り付けられた状態では、第1保持具側識別部29が供給用室内配管12側となり、第2保持具側識別部30が排出用室内配管13側となる。つまり、第1保持具側識別部29は、その識別部が位置する側の配管がエンジン冷却水を供給するための室内配管であることを表すものであり、第2保持具側識別部30は、その識別部が位置する側の配管がエンジン冷却水を排出させるための室内配管であることを表すものである。尚、図4、図5及び図7中、符号31は凹部である。
上記シール部材保持具20は、図6に示すように、室内配管12、13に取り付けられた状態で、基端側環状部12b、13bよりも基端側に位置している。さらに、図1に示すように、室内ユニット2を車両に組み付けた状態では、シール部材保持具20の略全体が、エンジンルームE内に位置するようになっており、該エンジンルームE側から第1保持具側識別部29及び第2保持具側識別部30が見えるようになっている。また、シール部材保持具20を室内配管12、13に取り付けた状態では、第1嵌合部21が供給側室内配管12の基端側環状部12bに係合して該環状部12bよりも先端側へ変位しないようになっている。さらに、第2嵌合部22は、排出側室内配管13の基端側環状部13bに係合して該環状部13bよりも先端側へ変位しないようになっている。つまり、基端側環状部12b、13bが、本発明のストッパ部を構成している。
また、上記冷却用熱交換器5は、冷凍サイクルの一要素であるエバポレータで構成され、上記加熱用熱交換器6と同様にチューブアンドフィンタイプである。図示しないが、各ヘッダタンクには、冷却用熱交換器5に冷媒を供給する供給室内配管の基端部と、冷却用熱交換器5内を循環した冷媒を該冷却用熱交換器5から排出させる排出用室内配管の基端部とが接続されている。これら供給用室内配管及び排出用室内配管も、上記加熱用熱交換器6の室内配管12、13と同様にブラケットに支持されてダッシュパネルPの貫通孔XからエンジンルームEへ突出するようになっている。また、このブラケットの前面には、ブラケット側シール部材とダッシュパネル側シール部材とが設けられ、これらシール部材が上記のようにシール部材保持具で保持されている。
一方、エンジンルームEには、図1に示すように、上記加熱用熱交換器5の供給側室内配管12に接続される供給側室外配管35と、上記排出側室内配管13に接続される排出側室外配管36とが設けられている。供給側室外配管35は、図示しないが、該室外配管35の基端部がエンジンの冷却水通路に接続され、該冷却水通路からエンジン冷却水を導出して加熱用熱交換器6に供給するように構成されている。排出側室外配管36は、該室外配管36の基端部がエンジンの冷却水通路に接続され、加熱用熱交換器6から排出されるエンジン冷却水をエンジンの冷却水通路に戻すように構成されている。これら供給側室外配管35及び排出側室外配管36は、共に可撓性を有する弾性パイプ材からなるものであり、上記室内配管12、13の外側に嵌るようになっている。
上記供給用室外配管35の先端部には、該室外配管35が供給用の配管であることを表す識別部35aが周方向の一部にのみ設けられている。また、排出用室外配管36の先端部には、該室外配管36が排出用の配管であることを表す識別部36aが周方向の一部にのみ設けられている。これら識別部35a、36aは、該識別部35a、36aをシール部材保持具20の保持具側識別部29、30と合わせたときに、室外配管35、36がねじれた状態とならないような位置に設けられている。
また、図示しないが、エンジンルームEには、冷媒圧縮機、該冷媒圧縮機で圧縮した冷媒を凝縮させる凝縮器及びこの凝縮器から流入した冷媒を気液分離する受液器が設けられている。さらに、エンジンルームEには、上記冷却用熱交換器の供給側室内配管に接続される供給側室外配管と、上記排出用室内配管に接続される排出用室外配管とが設けられている。供給側室外配管の基端側は受液器の流出口に接続され、排出側室外配管の基端側は冷媒圧縮機の吸入口に接続されている。
次に、上記ブラケット側シール部材16及びダッシュパネル側シール部材17を室内ユニット2に保持させる要領について説明する。まず、ブラケット側シール部材16の挿通孔16a、16bに供給用室内配管12及び排出用室内配管13を挿通させるとともに、ダッシュパネル側シール部材17の挿通孔17a、17bに供給用室内配管12及び排出用室内配管13を挿通させる。
その後、ダッシュパネル側シール部材17をブラケット14側へ押さえて供給用室内配管12の基端側環状部12b近傍を露出させておき、図5に示すように、シール部材保持具20の第1嵌合部21を供給用室内配管12の基端側環状部12bよりも基端側に嵌合させる。次いで、第2嵌合部22を供給用室内配管12の軸線周り(図5に矢印イで示す方向)に回動させて第2開放部25を排出用室内配管13に近接させて、第2嵌合部25を排出用室内配管13に押し付ける。こうすると、図7に示すように、排出用室内配管13が第2嵌合部22に嵌合し、シール部材保持具20が室内配管12、13に取り付けられる。つまり、第2開放部25は、第1嵌合部21を第1開放部24から供給用室内配管12に嵌合させた状態で第2嵌合部22を供給用室内配管12の周りに回動させることにより排出用室内配管13を第2嵌合部22の内側に導くように位置付けられている。
このとき、シール部材保持具20は、上記シール部材16、17の復元力で室内配管12、13の先端側へ押されることになるが、第1嵌合部21及び第2嵌合部22が基端側環状部12b、13bにそれぞれ係合しているので、シール部材保持具20が室内配管12、13の先端側へ変位することはない。また、第1嵌合部21と第2嵌合部22とが連結部23により一体化しているので、供給用室内配管12及び排出用室内配管13はシール部材保持具20により連結されることになって、両室内配管12、13の相対位置のばらつきが小さくなる。
しかる後、シール部材保持具20が正規の状態で室内配管12、13に取り付けられているか否かを検査具50を用いて識別する。この検査具50は、図8に示すように、板状の本体部51を備えており、この本体部51には室内配管12、13が挿通する孔部51a、51bが設けられている。図8(b)に示すように、本体部51の一側面には把持部52が突出している一方、他側面には棒状部53が突出している。棒状部53は、図6及び図7に仮想線で示すように、孔部51a、51bに室内配管12、13を挿通させた状態で、シール部材保持具20の第1延出部28aと第2嵌合部22との隙間Tから上記ダッシュパネル側シール部材17に当接するように形成されている。
従って、シール部材保持具20が、仮に上述した場合と逆向き、即ち、第1嵌合部21が排出用室内配管13に嵌合し第2嵌合部22が供給用室内配管12に嵌合した状態で誤って取り付けられた場合には、検査具50の孔部51a、51bに両室内配管12、13を挿入して行くと、室内配管12、13が所定の位置まで挿入される前に、棒状部53が第1延出部28aに当接することになって、検査具50がそれ以上挿入方向に移動しなくなる。また、シール部材保持具20が車幅方向について左右反対に取り付けられている場合には、検査具50の孔部51a、51bに両室内配管12、13を挿入して行くと、室内配管12、13が所定の位置まで挿入される前に、棒状部53が第2延出部28bに当接することになって、検査具50がそれ以上挿入方向に移動しなくなる。つまり、室内配管12、13の孔部51a、51bへの挿入代は、シール部材保持具20が正規の状態で取り付けられている場合とそうでない場合とで異なることになる。これにより、作業者は、シール部材保持具20が正規の状態で取り付けられているか否かを、検査具50の判別部28への当接の有無によって確実に識別することが可能になる。
上記のようにしてブラケット側シール部材16及びダッシュパネル側シール部材17を保持させた室内ユニット2を、図示しないが、車両組立ライン上でロボットにて車両に組み付ける。室内ユニット2が車両に組み付けられると、室内配管12、13はダッシュパネルPの貫通孔XからエンジンルームEへ突出する。また、このとき、ブラケット側シール部材16とダッシュパネル側シール部材17とは、ダッシュパネルPの貫通孔X周囲と、ブラケット14とにより圧縮される。
そして、上記室内配管12、13の先端部を室外配管35、36の先端部の内側に位置付けた状態で、該室外配管35、36を室内配管12、13の基端側へ押し付けて移動させる。こうすると、室外配管35,36の内側に室内配管12、13の接続部12c、13cが入り込む。その後、室外配管35、36の先端部が室内配管12、13の基端側環状部12b、13bに当接すると、室外配管35、36が移動しなくなって室内配管12、13と室外配管35、36とが完全に接続された状態となる。
上記室内配管12、13に室外配管35、36を接続する際には、上記両シール部材16、17がシール部材保持具20で保持されて室内配管12、13の接続部12c、13cが露出しているので、作業者はエンジンルームE側から室内配管12、13の接続部12c、13cを見ることが可能である。これにより、作業者は室外配管35、36を室内配管12、13に容易にかつ確実に接続することができて、接続作業に要する時間を短くすることができる。
また、室内配管12、13に室外配管35、36を接続する際、作業者は、室外配管35、36の先端側の位置と基端側環状部12b、13bの位置を見て完全に接続されているか否かを確認することができる。これにより、室外配管35、36と室内配管12、13との接続状態が不完全なままとなるのを回避することができる。
また、シール部材保持具20の嵌合部21、22が、室内配管12、13の基端側環状部12b、13bに係合しているので、室内配管12、13の接続部12c、13cをシール部材16、17から確実に露出させておくことができる。これにより、接続作業後に行われる検査工程において、室内配管12、13と室外配管35、36との接続状態を目視で容易にかつ確実に検査することができる
また、シール部材保持具20に判別部28を設けたので、検査具50を用いることにより、シール部材保持具20を正規の状態で組み付けることができる。このとき、第1嵌合部21と第2嵌合部22とが一体であるため、シール部材保持具20の第1保持具側識別部29及び第2保持具側識別部30を、室内配管12、13の周方向について所定位置に位置付けて保持することができる。そして、この室内配管12、13に室外配管35、36を接続する際には、該室外配管35、36の識別部35a、36aを上記保持具側識別部29、30にそれぞれ合わせることで、室内配管12、13の周方向の所定位置と室外配管35、36の周方向の所定位置とが略一致する。これにより、室外配管35、36がねじれた状態で室内配管12、13に接続されるのを回避することができる。その結果、エンジン冷却水が室外配管35、36と室内配管12、13との間から漏れるのを未然に防止することができる。
また、この際、第1保持具側識別部29と供給用室外配管35の識別部35aとを合わせることにより、供給用室外配管35と供給用室内配管12とを間違うことなく接続することができる。また、第2保持部側識別部30と排出用室外配管36の識別部36aとを合わせることにより、排出用室外配管36と排出用室内配管13とを間違うことなく接続することができる。
また、供給用室内配管12の接続部12c及び排出用室内配管13の接続部13cの両方がシール部材16、17から露出しているので、作業者は、エンジンルームE側から供給用室外配管35及び排出用室外配管36を上記両室内配管12、13に容易に接続することができる。
また、シール部材保持具20の第1嵌合部21と第2嵌合部22とを供給用室内配管12及び排出用室内配管13に嵌合させ、両室内配管12、13の相対位置のばらつきが小さくなった分、ダッシュパネルPの貫通孔Xを小さくすることができる。これにより、貫通孔Xの開口面積が小さくなるので、貫通孔Xから車室Rに入ってくる騒音が抑制されて車室Rの静粛性を高めることができる。
また、上記供給用室内配管12と排出用室内配管13とがシール部材保持具20で連結されるので、室内配管12、13と室外配管35、36とを接続する際、例えば、供給用室内配管12に曲げ力が作用して変形しようとすると、該供給用室内配管12は排出用室内配管13によって支えられることになって供給用室内配管12の変形量を抑制することができる。
また、シール部材保持具20を室内配管12、13に取り付ける際には、第1嵌合部21を供給用配管12に嵌合させてから第2嵌合部13を回動させる操作を行うだけで、2つの嵌合部21、22を供給用室内配管12及び排出用室内配管13に嵌合させることができる。これにより、シール部材保持具20を2本の室内配管12、13に簡単に取り付けることができる。
また、第2嵌合部22を排出用室内配管13に嵌合させる際の力を、第1嵌合部21を供給用配管12に嵌合させる際の力よりも小さくしているので、上記のようにして回動させて嵌合させる作業を容易に行うことができる。
尚、この実施形態では、シール部材保持具20の第1嵌合部21を供給用室内配管12に嵌合させ、第2嵌合部22を排出用室内配管13に嵌合させるようにしているが、これに限らず、第2嵌合部22を供給用室内配管12に嵌合させ、第1嵌合部21を排出用室内配管13に嵌合させるようにしてもよい。この場合には、各保持具側識別部を室外配管35、36の識別部35a、36aに対応させておく。
また、この実施形態では、シール部材16、17を2枚重ね合わせて配置しているが、1枚だけ配置するようにしてもよい。
また、この実施形態では、加熱用熱交換器6の室内配管12、13と室外配管35、36とを接続する場合について説明したが、冷却用熱交換器5の室内配管と室外配管とを接続する場合も同様である。
また、この実施形態では、シール部材保持具20の第1嵌合部21と第2嵌合部22とを一体化しているが、これら第1嵌合部21と第2嵌合部22とは別体としてもよい。
また、シール部材保持具20の保持具側識別部29、30の色を互いに異ならせるようにしてもよい。同様に、室外配管35、36の識別部35a、36aの色を互いに異ならせるようにしてもよい。
また、この実施形態では、室内ユニット2をダッシュパネルPに取り付けるようにしているが、この室内ユニット2は、例えばインストルメントパネル内に配設されたインパネメンバ等の部材に取り付けてダッシュパネルPに接するように配置してもよい。
また、冷却用熱交換器5や加熱用熱交換器6の配設位置、向き、形状等は自由に設定することができるものである。