JP4539899B2 - リーマ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、孔の仕上げ加工等に使用されるリーマ、特に電着リーマに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
孔の仕上げ加工等に使用されるリーマは、図9〜図11に示すように、リーマ本体40の先端膨出部41に、周方向に沿って所定ピッチ、例えば、図例のように約90°ピッチに、リーマ軸心方向に延びる切屑逃し用溝42を形成し、この切屑逃し用溝42間に砥粒44を付着(電着)させて砥粒部43を形成し、さらにリーマ本体40に、先端がリーマ本体40の先端面に開口しない盲状の軸心孔45を設けると共に、この軸心孔45と切屑逃し用溝42とを連結する連結孔46を設けていた。
【0003】
そして、切削中においては、軸心孔45にその基端部から図示省略に切削油供給装置から切削油を供給して、連結孔46を介して切屑逃し用溝42に切削油を送り込むようにしていた。これによって、切削作業を円滑に行うと共に、発生する切屑を上記切屑逃し用溝42から切削油とともに外部へ排出させていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、切屑が、砥粒部と、加工用の孔の内周面との間から切屑逃し用溝42へ押出されない場合があり、押出されなければ、砥粒部43に切屑が密着して加工精度が低下する(例えば、製品の孔径、面荒さに悪影響を与える)おそれがあった。そのため、毎加工時にリーマを他のリーマと交換したり、砥粒部43からの切屑除去作業を行ったりする必要があり、作業能率が悪いものであった。また、切屑が密着することによって、この種のリーマとしての寿命が短くなり、コスト高となっていた。
【0005】
この発明は、上記従来の欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、長期にわたって安定して精度よく孔の仕上げ加工等に使用することが可能なリーマを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段及び効果】
そこで請求項1のリーマは、先端部にリーマ軸心L方向に延びる複数本の切屑逃げ用溝4を有するリーマ本体1と、このリーマ本体1の隣合う切屑逃げ用溝4、4間に砥粒が付設されてなる砥粒部2・・とを備え、上記リーマ本体1に、上記切屑逃げ用溝4に切削油を供給するための切削油供給孔5を設けたリーマであって、上記砥粒部2にリーマ軸心L方向に延びる長凹溝とした油溜め凹部8を設けると共に、上記油溜め凹部8と切削油供給孔5とを連通孔9にて連結して、切削油をこの油溜め凹部8から噴出させて切屑を切屑逃げ用溝4へ押出すことを特徴としている。
【0007】
上記請求項1のリーマでは、砥粒部2に油溜め凹部8が設けられるので、切削油供給孔5からの切削油が油溜め凹部8から噴出され、これによって、発生する切屑が切屑逃げ用溝4へ押出される。そして、切屑逃げ用溝4に入った切屑はこの切屑逃げ用溝4内の切削油によって外部へ排出される。すなわち、油溜め凹部8からの油の流出により、砥粒部2が洗い流されることになって、砥粒部2に切屑が密着(付着)しにくいものとなる。これによって、長期にわたって精度よく仕上げ加工を行うことができ、高品質(主に面荒さと加工径品質)の製品を提供することが可能となる。また、長期にわたって、他のリーマと交換する必要がなくなるので、生産性の向上及びコストの低減を図ることができると共に、自動化の促進に寄与する。
【0008】
さらに、上記請求項1のリーマでは、油溜め凹部8を有することによって、連通孔9の開口部と切削面(仕上げ加工する孔の内周面)との間に空間が形成されることになる。これによって、連通孔9からの切削油がこの空間へ流入し、さらに切屑逃げ用溝4へ流れ込むことになって、切屑の除去を確実に行える。これに対して、油溜め凹部8を形成することなく連通孔9の開口部を砥粒部2に直接開口させれば、この開口部が切削面と密接状となって、この連通孔9から切削油が流出し難いものとなり、切屑を切屑逃げ用溝4へ押出すことが困難となる。
【0010】
しかも上記リーマでは、上記油溜め凹部8がリーマ軸心L方向に延びる凹長溝であるので、切削油が広範囲にわたって油溜め凹部8から流出(噴出)することになり、砥粒部2への切屑の密着を有効に防止することができる。
【0011】
請求項2のリーマは、上記油溜め凹部8の長手方向端部と砥粒部2のリーマ軸心方向端縁との間に砥粒残部10、10が形成されていることを特徴している。
【0012】
上記請求項2のリーマでは、油溜め凹部8と切削面とで形成される空間が密封状の中空室となり、切削油がこの中空室から放射状に噴射され、砥粒部2全体の切屑の密着を有効に防止することができる。また、砥粒残部10においても切削面を切削することができる利点もある。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、この発明のリーマの具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1〜図3はリーマの一実施の形態を示し、図1は側面図であり、図2は要部正面図であり、図3は要部断面図である。リーマは、リーマ本体1と、このリーマ本体1の先端部に設けられる砥粒部2・・とを備え、複数の砥粒部2・・をもって、切削部Sを構成する。
【0014】
すなわち、リーマ本体1の先端部に膨出部3が形成され、この膨出部3に周方向に沿って所定ピッチ、図例では約90°ピッチで断面形状が円弧状とされてリーマ軸心L方向に延びる複数本の切屑逃げ用溝4・・を形成し、さらに、膨出部3の外面に、つまり、隣合う切屑逃げ用溝4、4間に、砥粒部2を形成する砥粒を付着させている。この場合、切屑逃げ用溝4は、その幅寸法W1が砥粒部2の幅寸法W2と略同一となるように設定される。つまり、図1に示すように、横断面において、切屑逃げ用溝4と砥粒部2とは、それぞれ中心角度α、βが約45°に設定され、また、切屑逃げ用溝4のリーマ軸心L方向に対する傾斜角度θが、約10°に設定されている。なお、切屑逃げ用溝4が上記のように傾斜していれば、これにともなって砥粒部2も同様に所定角度で傾斜することになる。
【0015】
また、砥粒部2は、例えば、ダイヤモンドやCBN等の超硬質の砥粒を電着することによって形成され、その肉厚としては、数ミクロン乃至数十ミクロンとされる。なお、上記の中心角度α、βや傾斜角度θ、砥粒部2の肉厚等の数値は一例であり、もちろんこれに限るものではない。
【0016】
ところで、リーマ本体1には、図3に示すように、先端がリーマ本体1の先端面1aに開口しない盲状の切削油供給孔5が設けられ、膨出部3にこの切削油供給孔5と各切屑逃げ用4・・と連通する連通孔6・・が設けられている。すなわち、各連通孔6・・は軸心が先端に向かって順次径方向外方へ拡開するように傾斜し、この傾斜角度θ1としては50°〜60°位に設定されている。
【0017】
そして、この切削油供給孔5の基端部に、図示省略の切削油供給装置が接続され、この切削油供給装置から切削油供給孔5に例えば約20気圧の圧力でもって切削油が供給される。従って、切削油供給孔5に供給された切削油は、各連通孔6・・を介して各切屑逃げ用溝4・・へ送出されることになる。なお、切削油としては、切削する材質によって相違するが、鋼に対して極圧油、アルミニウムには白灯油、軽油あるいはそれに油性材を添加したもの、銅には水溶性切削油、軽油等を使用することができる。
【0018】
また、上記砥粒部2に断面矩形状の油溜め凹部8が設けられ、この油溜め凹部8と上記切削油供給孔5とを連通する連通孔9・・が設けられている。すなわち、リーマ本体1の膨出部3に、隣合う切屑逃げ用溝4、4間に凹溝7を設け、この凹溝7の内面に砥粒を電着しないように構成している。このため、この凹溝7と、砥粒部2の切欠部2aとでもって油溜め凹部8が形成される。また、リーマを製造する場合、リーマ本体1はその表面に例えばニッケルメッキ層等の被覆層が形成されるものであり、油溜め凹部形成部位に被覆層及び砥粒層を形成しないように構成して油溜め凹部8を形成してもよい。なお、油溜め凹部8の深さ寸法としては、例えば、0.5mm程度とされる。
【0019】
また、この油溜め凹部8のリーマ軸心Lに対する傾斜角度θ3は上記傾斜角度θと略同一に設定され、切屑逃げ用溝4と略平行に配設されている。しかも油溜め凹部8の両長手方向端部が、砥粒部2の軸心方向端縁に達しないように設定され、油溜め凹部8の端部と砥粒部2の軸方向端縁との間に砥粒残部10、10(図2参照)が形成される。また、連通孔9・・は、上記連通孔6と同様図3に示すように、その軸心がリーマ軸心Lに対して上記傾斜角度θ1と略同一の傾斜角度θ2で傾斜している。なお、油溜め凹部8の幅寸法W3としては、切削面を切削することができる砥粒部2を形成でき、しかも油溜めとして機能する範囲で変更可能である。また、各連通孔6、9の孔径(直径)は例えば1mm〜1.5mm位に設定される。
【0020】
次に、上記のように構成されたリーマを使用して孔の仕上げ加工を行う方法を説明する。まず、図示省略のシャンク(リーマ本体1の基端部)を図示省略の回転駆動装置に装着すると共に、切削油供給孔5に図示省略の切削油供給装置を接続する。この状態で、回転駆動装置と切削油供給装置とを駆動して、切削油を切削油供給孔5に供給しつつこのリーマをその軸心L廻りに回転させ、仕上げ加工する孔に、このリーマの切削部Sを挿入する。これによって、各砥粒部2・・が孔の内周面を切削して、この孔の内周面が仕上げられる。この際、切屑が発生するが、各切屑逃げ用溝4・・に入った切屑は、各連通孔6・・から流出している切削油とともに外部へ排出される。
【0021】
また、切削油供給孔5からは、連通孔9にも切削油が供給される。この場合、油溜め凹部8を有することによって、連通孔9の開口部と切削面(仕上げ加工する孔の内周面)との間に空間が形成されることになる。このため、連通孔9からの切削油が油溜め凹部8に流入し、この油溜め凹部8から切屑逃げ用溝4に向かって図1の矢印のように切削油が流出(噴出)することになる。従って、砥粒部2と孔の内周面との間の切屑は、油溜め凹部8から噴出する切削油によって、切屑逃げ用溝4へ押出されることになる。これによって、砥粒部2に対する切屑の密着を防止することができ、長期にわたって精度よく仕上げ加工を行うことが可能である。ところで、切屑が密着すれば、他のリーマと交換したり、切屑の除去作業を行ったりする必要があり、作業性に劣ることになるが、この発明のリーマを使用すれば、上記のように、切屑が密着し難いものであるので、作業性に優れ、多数の仕上げ加工を短時間で行うことができる。また、長期にわたって、他のリーマと交換する必要がないので、自動化の促進に寄与する。
【0022】
また、上記実施の形態では、油溜め凹部8が膨出部3の全長にわたって形成されず、長手方向端部側に砥粒残部10、10が形成され、切削面と油溜め凹部8にて形成される上記空間が密封状の中空室となる。そのため、この中空室から放射状に切削油が流出することになって、砥粒部2からの切屑の押出を確実に行うことができる。しかしながら、図2の仮想線で示すように、砥粒残部10、10を有さないもの、つまり、油溜め凹部8の長手方向端部がその長手方向に開口しているものであってもよい。この場合、長手方向開口部から切削油が流出するが、すべてがこの長手方向開口部から流出するわけではなく、隣合う切屑逃げ用溝4へも流出して、切屑を切屑逃げ用溝4へ押出すことが可能であるからである。
【0023】
次に、図4〜図6は他の実施の形態を示し、この場合、6本の切屑逃げ用溝4・・が周方向に沿って約60°ピッチで配設され、切屑逃げ用溝4及び油溜め凹部8に連通孔6、9がそれぞれ3個設けられている。また、切屑逃げ用溝4のねじれ角、つまり、リーマ軸心L方向と切屑逃げ用溝4とが成す角度θが、約15°に設定されている。さらに、連通孔6のリーマ軸心L方向に対する角度θ1が約30°に設定され、先端の連通孔9のリーマ軸心L方向に対する角度θ2が約60°に設定され、他の2個連通孔9、9のリーマ軸心L方向に対する角度θ2が約90°に設定されている。そして、リーマ本体1の膨出部3は、先端アール部3aと本体部3bと基端テーパ部3cとを備え、切屑逃げ用溝4が、先端アール部3aから基端テーパ部3cを越えて形成され、砥粒部2が、先端アール部3aから基端テーパ部3cに跨って形成され、油溜め凹部8が、本体部3bに形成されている。なお、連通孔6、9の孔径(直径)としては、例えば、1mm〜1.5mm位に設定されている。他の構成は上記図1〜図3のリーマと同様であるので、その説明を省略する。
【0024】
この図4〜図6に示すリーマを使用して、孔の仕上げ加工を行えば、上記図1〜図3のリーマと同様、油溜め凹部8から切削油を噴出させて、砥粒部2と切削面との間の切屑を切屑逃げ用溝4へ押流すことができ、砥粒部2に切屑が密着することを有効に防止することができる。
【0025】
ところで、油溜め凹部8として、図7に示すように、連通孔9より大径の円形(又は楕円乃至長円形)の凹窪部から構成してもよい。すなわち、切削油を溜めることができ、しかも、切屑逃げ溝4への切削油流出のための中空室が形成されればよい。そのため、この図7に示す油溜め凹部8であっても、油溜め凹部8から切削油を噴出させて、砥粒部2と切削面との間の切屑を切屑逃げ用溝4へ押流すことができる。
【0026】
【実施例】
次に、実施例を示す。表1に示し切削条件にて図4〜図6に示すリーマ(溝付リーマ)と、これと同一の寸法形状であって、油溜め凹部8と連通孔9を有さない溝なしリーマとを使用して孔仕上げ加工を行った。
【0027】
【表1】
【0028】
そして、その結果を図8のグラフ図で示す。すなわち、溝なしリーマでは、切削長さが10m位になれば、面荒さが規格を越えるのに対し、溝付リーマでは、切削長さが20mを越えても規格を越えなかった。このように、この発明のような溝付リーマでは、長期にわたって安定して切削面(孔の内周面)を仕上げることができる。
【0029】
以上にこの発明のリーマの具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、各連通孔6、9の数、配設ピッチ、孔径、形状、傾斜角度θ1、θ2等も変更自由であり、砥粒部2と切屑逃げ用溝4の数の増減や各幅寸法W2、W1の大きさ等の変更も自由である。また、切削部Sの軸心方向長さや外径寸法等も、加工する孔の大きさや、被加工材の材質等に応じて変更自由である。さらに、油溜め凹部8としては、その断面形状が半円形、半楕円形、半多角形等の種々の形状のものを採用することができる。また、切削部Sが基端側に向かって順次縮径するいわゆるバックテーパ型のものであってもよい。
さらに、切屑逃げ用溝4や砥粒部2の傾斜角度θの変更も可能であり、リーマ軸心L方向と平行に配設されるものであってもよく、さらには、切屑逃げ用溝4等がリーマ軸心L方向に対して湾曲していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のリーマの実施形態を示す側面図である。
【図2】上記リーマの要部正面図である。
【図3】図1のA−O−B線断面図である。
【図4】他のリーマの実施形態を示す要部半截断面図である。
【図5】上記他のリーマの要部断面図である。
【図6】上記他のリーマのリーマ本体の側面図である。
【図7】別のリーマの要部簡略正面図である。
【図8】面荒さを示すグラフである。
【図9】従来のリーマの側面図である。
【図10】従来のリーマの要部正面図である。
【図11】図9のA´−O´−B´線断面図である。
【符号の説明】
1 リーマ本体
2 砥粒部
4 切屑逃げ用溝
5 切削油供給孔
8 油溜め凹部
9 連通孔
10 砥粒残部
L リーマ軸心
Claims (2)
- 先端部にリーマ軸心(L)方向に延びる複数本の切屑逃げ用溝(4)を有するリーマ本体(1)と、このリーマ本体(1)の隣合う切屑逃げ用溝(4)(4)間に砥粒が付設されてなる砥粒部(2・・)とを備え、上記リーマ本体(1)に、上記切屑逃げ用溝(4)に切削油を供給するための切削油供給孔(5)を設けたリーマであって、上記砥粒部(2)にリーマ軸心(L)方向に延びる長凹溝とした油溜め凹部(8)を設けると共に、上記油溜め凹部(8)と切削油供給孔(5)とを連通孔(9)にて連結して、切削油をこの油溜め凹部(8)から噴出させて切屑を切屑逃げ用溝(4)へ押出すことを特徴とするリーマ。
- 上記油溜め凹部(8)の長手方向端部と砥粒部(2)のリーマ軸心方向端縁との間に砥粒残部(10)(10)が形成されていることを特徴とする請求項1のリーマ。
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