JP4531286B2 - ワークの加工方法、及びプリント基板加工機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主軸に保持されたドリルやエンドミル等の工具により、プリント基板等のワークを加工するワークの加工方法、及びプリント基板加工機に関する。
【0002】
【従来の技術】
図5は、プリント基板穴明機に使用されるドリルカセット3の断面図である。ドリル1のシャンク部1aには、樹脂製のドリルリング2が容易に移動しないようにして配置されている。ドリルリング2は、上面2aからドリル1の先端1bまでの距離L1が、工具の直径にかかわらず同じになるようにして、シャンク部1aに位置決めされている。ドリルカセット3にはドリルリング2が嵌合する座ぐり穴3aと、シャンク部1a及び刃部1cが遊嵌する収納穴3bが設けられている。そして、ドリル1は、ドリルリング2が収納穴3aに位置決めされることにより、水平方向及び上下方向に位置決めされる。
【0003】
この二点鎖線で示すスピンドル22の下端22aをドリルリング2の上面2aに当接させた状態でシャンク部1aを保持すると、スピンドル22の下端からドリル1の先端1bまでの長さが常に同じになるため、ドリル1を交換した際にドリル1の長さを測定する必要がなく、加工能率を高めることができる。
【0004】
また、特開平1−306156号公報には、ドリル検出装置を備えたプリント基板加工機の技術が開示されている。この技術によれば、工具の先端位置と、工具の直径及び偏心量を確実に確認することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のドリルリング2を使用するものは、このドリルリング2が自動機又は手作業によりドリル1に装着されるが、いずれの場合も、誤って刃部の短いドリルや先端の折れたドリル(以下「不良ドリル」という。)に装着される場合がある。そして、このような不良ドリルで加工が行われると、所望深さの穴を加工することができない。しかも、刃が設けられていないシャンク部1aにおける下側の部分がワークに食い込むことによりドリル1が折れたり、ワークやスピンドル22を損傷させたりする不具合がある。
【0006】
一方、特開平1−306156号公報に記載されたものは、上述のように、工具の先端位置と、工具の直径及び偏心量は、確実に確認できるものの、加工すべき穴の深さと、ドリルの刃部の長さとの関係はみていないため、上述と同様、誤って刃部の短いドリルで加工が行われるという問題がある。
【0007】
なお、上述のような不具合や問題は、工具としてドリルを使用する場合に限らず、例えばエンドミルを使用する場合にも発生する。
【0008】
そこで、本発明は、加工能率を高めることができ、しかも不良工具による加工を予防して加工品質を向上させることができるワークの加工方法、及びプリント基板加工機を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、工具(1)の先端からあらかじめ定める位置に位置決め用のリング(2)を配置し、前記リングを基準にして加工深さを決定するワークの加工方法において、
前記工具(1)は、先端側にあって直径がほぼ等しい刃部(1c)と、前記刃部の基端側にあって前記刃部よりも大径のシャンク部(1a)とを有し、
加工に先立ち、前記工具のうちの、前記刃部である先端側の直径(D1)と、前記リングで規定された前記加工深さ(K)に対応する基端側の直径(D2)とを測定し、これら2箇所の直径がほぼ一致することを確認してから加工を行う、
ことを特徴とするワークの加工方法にある。
【0012】
また、本発明は、軸方向先端側にあって直径がほぼ等しい刃部(1c)と前記刃部の基端側にあって前記刃部よりも大径のシャンク部(1a)とを有する工具(1)を使用し、前記工具の先端からあらかじめ定める位置に位置決め用リング(2)を配置し、該位置決め用リングにより位置決めされてスピンドル(22)に前記工具のシャンク部(1a)を保持して、前記位置決め用リングを基準にして決定された加工深さ(K)により加工を行うプリント基板加工機(4)において、
前記工具の直径を測定するための工具径検出装置(8)と、
加工に先立ち、前記工具径検出装置(8)により前記スピンドル(22)に保持された前記工具(1)の前記刃部(1c)の先端側の第1の位置(J)における直径(D1)と、前記第1の位置からあらかじめ定める距離(M)だけ基端側に隔てた前記加工深さ(K)に対応する前記工具の第2の位置における直径(D2)とを測定し、前記第1、第2の位置における直径がほぼ一致することを確認してから加工の実行を許可する制御部(23)と、
を備えたことを特徴とするプリント基板加工機にある。
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより、特許請求の範囲に記載の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【0013】
〔作用〕
加工をする前に刃部の長さを測定し、刃部の長さが加工する穴の深さよりも長い工具(例えば、ドリル、エンドミル)で加工をするから、工具不良による主軸やワークの破損は発生せず、加工品質及び加工能率を向上させることができる。しかも装置構成が簡単である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図面において同一の符号を付したものは、同一の構成又は作用をなすものであり、これらについての重複説明は適宜省略した。
【0015】
図1は、本発明に係るプリント基板加工機の一例であるプリント基板穴明機4の斜視図であり、また、図2は、工具径確認装置8の縦断面図である。
【0016】
図1において、プリント基板穴明機4に設けられたテーブル6は、駆動手段(不図示)によりベッド5上をX方向(プリント基板穴明機4に向かって前後方向)に位置決め自在である。テーブル6上には、各スピンドル22ごとに、複数(図では3個)のドリルカセット3と、ツールポスト7と、工具径確認装置8と、被加工物(ワーク)であるプリント基板9とが固定されている。
【0017】
ドリルカセット3には、多数のドリル1が保持されている。また、ツールポスト7には、ドリルカセット3と同様に、ドリルリング2(図5参照)が嵌合する座ぐり部とこの座ぐり部と同軸でドリル1のシャンク部及び刃部を収納する収納穴とからなる2個のドリル保持部7a、7bが設けられ、ドリル1を位置決めして保持することができる。
【0018】
ハウジング21は、駆動手段(不図示)により、ベッド5に固定されたクロスレール20の前面をX方向に対して横方向に直角なY方向、及びこのY方向に対して上下方向に直角なZ方向に位置決め自在である。スピンドル22は、外周をハウジング21に保持され、下端にドリル1を保持している。NC制御装置23はプリント基板穴明機4の各部の動作を制御するものである。
【0019】
図2に示すように、工具径確認装置8は、ホルダ30と、距離センサ31とを備えている。ホルダ30には、断面が円形で軸線CがZ方向の穴32が上方から設けられている。距離センサ31は、軸線Cに対向するようにしてホルダ30に固定され、測定した値をNC制御装置23に出力する。なお、距離センサ31の測定基準位置から軸線Cまでの距離はLaである。
【0020】
次に、本発明の動作を説明する。
【0021】
図3は、ドリル形状の確認手順を示すフローチャートである。なお、あらかじめ工具交換装置(不図示)により、ドリルカセット3に保持されている工具(この場合はドリル1)のうち、次に使用するドリル1をあらかじめツールポスト7の一方のドリル保持部7aに保持させておく。
【0022】
まず、スピンドル22をドリル保持部7bの軸線(Z方向)に位置決めし、保持していたドリル1をドリル保持部7bに載置した後、ドリル保持部7aに支持されているドリル1を保持する(S1)。次に、スピンドル22の軸線を工具径確認装置8の軸線Cに一致させる(S2)。
【0023】
次に、図4(a)に示すように、スピンドル22を下降させ、ドリル1の先端1bからJの位置(第1の位置:ドリル1の外周コーナ1dよりも少し上方の位置)をセンサ31の測定位置に位置決めする。そして、この状態でスピンドル22を微小速度で少なくとも1回転させ、距離センサ31から出力される測定信号のうち最も小さい距離Lbと、あらかじめ知られている距離Laとから、下記の式(1)により、ドリル1の直径D1を求める(S3)。
【0024】
D1=(La−Lb)×2……(1)
【0025】
そして、ドリル1の呼び径dと直径D1との差(d−D1)を求め、この差と許容値α(ただし、αは正の値であり、例えば、0.1mmである。)とを比較し(S4)、−α≦(d−D1)≦αである場合はS5の処理を行い、これ以外の場合、つまり(d−D1)>|α|である場合はS8の処理を行う。
【0026】
手順S5では、図4(b)に示すように、あらかじめ設定した距離Mだけスピンドル22を下降させ、上述と同様にしてその基端側の位置(第2の位置)におけるドリル1の直径D2を求める。ここで、距離Mは加工する穴の深さをK、プリント基板の板厚の公差をΔT、ドリル1の頂角をθ、ドリルの呼び径をd、余裕代をQとしたとき、次の式(2)で表される。
【0027】
M=K+ΔT−{J−(d/2)・tan(π/2−θ/2)}+Q……(2)
【0028】
なお、板厚の公差ΔTと頂角θは、あらかじめ加工プログラムに入力されている。また、余裕代Qは、例えば、呼び径dが1mm以上の場合は0.5mm、呼び径dが1mm未満の場合は0.2mmとする。なお、上述の板厚の公差ΔT及び余裕代Qをないものとした場合には、図4(b)に示すように、穴の深さKは、ドリル1の外周コーナ1dから刃部1cのうちの部位1eまでの距離、つまり刃部1cのうちの実質的に切削に寄与する部分の長さに相当することになる。
【0029】
次に、直径D1と直径D2との差を求め(S6)、(D1−D2)≧0の場合はS7の処理を行い、これ以外の場合、つまり(D1−D2)<0の場合はS8の処理を行う。なお、一般に、ドリル1においては、刃部1cの直径Dは頂部を除く先端、つまり図4(a)、(b)における外周コーナ1bが最も大きく、基端側(同図では上端側)ほど直径が小さくなるか、または同じに設定されている。さらにドリル1における刃部1c以外の部分、例えば、シャンク部1aは刃部1cよりも直径が大きくなるように形成されている。したがって、上述の式、(D1−D2)≧0を満たすということは、D2を測定した部分が刃部1cの一部であることを意味する。つまり、ドリル1によって所定深さKの穴を形成したときに、刃部1c以外の部分、例えばシャンク部1aが加工中の穴に食い込むおそれはない。
【0030】
手順S7では、直径D1と直径D2の差と許容値β(ただし、βは正の値であり、例えば、0.05mmである。)とを比較し、(D1−D2)≦βである場合は処理を終了して穴明加工を実行し、これ以外の場合、つまりD1−D2)>βの場合はS8の処理を行う。
【0031】
手順S8では、ドリルカセット3に準備されているドリル1の中に使用可能な同径のドリル1が準備されているかどうかを確認し、同径のドリル1がある場合はS1の処理に戻り、一方、その他の場合はアラームを表示して(S9)、加工を中止する。
【0032】
この実施の形態では、直径D2を測定するのに先立ち、ドリル1の呼び径dと直径D1とを比較するようにしたので、ドリル1の先端が曲がっていたり、ドリル1の軸線がスピンドル22の軸線Cに対して偏心して保持されている場合(見かけ上の直径D1が大径になる。)は加工を行わないので、加工精度(寸法精度)及び穴の形状精度を優れたものにすることができる。
【0033】
なお、手順S7の処理は、穴の加工精度及び形状精度を一層高めるために行うものであり、特に必要がない場合には、省略することも可能である。
【0034】
また、上述では、距離センサ31を1個設ける場合について説明したが、距離センサ31を複数個とし、同一平面上に等間隔で放射状に並べるようにすると、さらにドリル径の測定精度を向上させることができる。
【0035】
さらに、本発明は、主にドリル1を使用してプリント基板を加工するプリント基板穴明機に限らず、エンドミルを用いてプリント基板の外形やドリル穴の内周面を加工するプリント基板外形加工機等、他の装置にも適用することができる。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、刃部の長さが加工する穴の深さよりも長いことを確認してから、加工を行うので、加工品質及び加工能率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るプリント基板穴明機(プリント基板加工機)の斜視図である。
【図2】工具径確認装置の縦断面図である。
【図3】ドリル形状の確認手順を示すフローチャートである。
【図4】ドリルの測定位置を説明する図である。
【図5】プリント基板穴明機に使用されるドリルカセットの断面図である。
【符号の説明】
1 工具(ドリル)
1a シャンク部
1b 先端
1c 刃部
1d 外周コーナ
2 リング
8 工具径検出装置
D1 第1の位置の直径
D2 第2の位置の直径
Claims (2)
- 工具の先端からあらかじめ定める位置に位置決め用のリングを配置し、前記リングを基準にして加工深さを決定するワークの加工方法において、
前記工具は、先端側にあって直径がほぼ等しい刃部と、前記刃部の基端側にあって前記刃部よりも大径のシャンク部とを有し、
加工に先立ち、前記工具のうちの、前記刃部である先端側の直径と、前記リングで規定された前記加工深さに対応する基端側の直径とを測定し、これら2箇所の直径がほぼ一致することを確認してから加工を行う、
ことを特徴とするワークの加工方法。 - 軸方向先端側にあって直径がほぼ等しい刃部と前記刃部の基端側にあって前記刃部よりも大径のシャンク部とを有する工具を使用し、前記工具の先端からあらかじめ定める位置に位置決め用リングを配置し、該位置決め用リングにより位置決めされてスピンドルに前記工具のシャンク部を保持して、前記位置決め用リングを基準にして決定された加工深さにより加工を行うプリント基板加工機において、
前記工具の直径を測定するための工具径検出装置と、
加工に先立ち、前記工具径検出装置により前記スピンドルに保持された前記工具の前記刃部の先端側の第1の位置における直径と、前記第1の位置からあらかじめ定める距離だけ基端側に隔てた前記加工深さに対応する前記工具の第2の位置における直径とを測定し、前記第1、第2の位置における直径がほぼ一致することを確認してから加工の実行を許可する制御部と、
を備えたことを特徴とするプリント基板加工機。
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