JP4523812B2 - 胚性幹細胞の培養用基材及びその用途 - Google Patents

胚性幹細胞の培養用基材及びその用途 Download PDF

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Description

本発明は、胚性幹細胞の培養用基材及びその用途に関する。
本出願書類中で使用する略号は以下の通りである。
aFGF:酸性繊維芽細胞増殖因子(acidic fibroblast growth factor)
ES細胞:胚性幹細胞(embryonic stem cell)
ESM:ES培地(ES medium)
FGF4:繊維芽細胞増殖因子4(fibroblast growth factor 4)
GAG:グリコサミノグリカン
GFP:緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein)
HA:ヒアルロン酸(hyaluronic acid)
HCM:肝細胞培養培地(hepatocyte culture medium)
HGF:肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor)
LIF:白血球阻害因子(leukocyte inhibitory factor)
OsM:オンコスタチンM(oncostatin M)
RA:レチノイン酸(retinoic acid)
臓器移植に頼らずに肝臓の機能を再生する方法として、細胞をベースにした方法が注目されている。特許文献1には、細胞と細胞増殖因子とからなる組織器官のインビボ再生のための材料が記載されている。特許文献2には、細胞増殖因子を含有するヒドロゲルからなる細胞移植療法用材料が記載されている。特許文献3には、HAからなり、実質的に化学的架橋剤又は化学的修飾剤によって改質されておらず、中性溶液に難溶性であるHAゲルを含有する細胞組織再生用基材が記載されている。特許文献4には、少なくとも1種類の糖鎖をスペーサー分子を介して側鎖として結合させた糖鎖高分子からなる細胞培養基材を、三次元形状に付形したことを特徴とする三次元細胞培養基材が記載されている。特許文献5には、軟骨と骨組織の組織工学及び筋骨格障害の修復のために生体適合性及び生分解性を有するマトリクスとして使用できる、HA誘導体及び加水分解コラーゲンとから形成される多孔質複合マトリクスが開示されている。
また特許文献6には、架橋多糖スポンジが開示されている。
特開2001−316285号公報 特開2002−145797号公報 特開2003−10308号公報 特開2001−37472号公報 特表2002−531182号公報 国際公開第02/060971号パンフレット
本発明は、ES細胞から肝細胞を効率良く分化誘導させる方法及びその素材等を提供することを課題とする。
本発明の発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の性質を有する架橋多糖を用いることによって、ES細胞を極めて効率的に肝細胞に分化誘導することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、スポンジ形態の架橋多糖を主成分とする、ES細胞の培養用基材(以下、「本発明基材」という。)を提供する。この「多糖」は、HA、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸、キチン、キトサン、アルギン酸及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される1又は2以上の多糖であることが好ましい。
また、この「スポンジ形態の架橋多糖」は、以下の(1)及び(2)の性質を有することが好ましい。
(1)1mm当たりの孔の数が760個以上である。
(2)50%以上の孔の孔径が10〜50μmである。
また、この「架橋多糖」は、光反応性多糖を光照射によって架橋させて得られるものであることが好ましい。この「光反応性多糖」は、ケイ皮酸、置換ケイ皮酸、フリルアクリル酸又はチオフェンアクリル酸を光反応性残基として有する光架橋基が結合した多糖であることが好ましい。
また、この培養基材は、分化誘導を目的とする培養に用いられることが好ましい。またこの「分化誘導」は、肝細胞への分化誘導であることが好ましい。
また本発明は、本発明基材を用いてES細胞を培養することを特徴とする、ES細胞の培養方法(以下、「本発明培養方法」という。)を提供する。この培養は、増殖因子の存在下で行われることが好ましい。
また本発明は、本発明培養方法を用いてES細胞を培養するステップを少なくとも含む、ES細胞の分化誘導方法(以下、「本発明誘導方法」という。)を提供する。この「分化誘導」は、肝細胞への分化誘導であることが好ましい。
また本発明は、本発明培養方法を用いてES細胞を培養するステップを少なくとも含む、肝細胞の生産方法(以下、「本発明生産方法」という。)を提供する。
本発明基材は、これを用いることによってES細胞を極めて効率的に肝細胞に分化誘導することができ、極めて有用である。また本発明培養方法や本発明誘導方法は、これによってES細胞を極めて効率的に肝細胞に分化誘導することができ極めて有用である。また本発明生産方法は、ES細胞から極めて効率的に肝細胞を生産することができ、極めて有用である。そしてこのような本発明は、肝臓の再生医療分野等に大きく寄与しうるものであり、極めて有用である。
以下、発明を実施するための最良の形態により本発明を詳説する。
<1>本発明基材
本発明基材は、スポンジ形態の架橋多糖を主成分とする、ES細胞の培養用基材である。この「多糖」は特に限定されないが、親水性が高く、細胞や生体組織に対して親和性を有するものが好ましい。好ましい多糖としては、GAG(HA、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸等)、ポリウロン酸(アルギン酸、ペクチン酸等)、マンナン、デンプン、寒天、アラビアゴム、トラガカントゴム、セルロース又はその親水性誘導体(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)、ポリアミノ多糖(キチン、キトサン等)が挙げられる。
これらの中では、形成された多糖スポンジの形態安定性が高く、生体適合性、安全性が高い面からも、HA、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸、キチン、キトサン、アルギン酸及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される1又は2以上の多糖であることが好ましい。
これらの多糖の分子量(重量平均分子量)は次の通りである。HA以外の多糖の場合は、通常2,000〜3,000,000、好ましくは3,000〜2,700,000、更に好ましくは4,000〜2,500,000である。ただし、HAの場合は、通常20万〜300万、好ましくは30万〜200万、更に好ましくは40万〜120万である。これらの多糖は公知の方法で製造することもでき、市販のものを使用することもできる。
ここで、「架橋多糖」とは、多糖分子同士が相互に架橋されてなる多糖を意味する。架橋の様式は特に限定されないが、光反応性多糖を光照射によって架橋させて得られるものであることが好ましい。光反応性多糖とは、多糖に光架橋基が化学結合した誘導体を意味する。この光架橋基は、光反応性残基を有する架橋基である。光反応性残基としては、光の照射によって光二量化反応又は光重合反応を生じる化合物の残基であれば特に限定されない。本発明においては、光架橋基の導入により、多糖のグリコシド結合が切断されないような光反応性残基が好ましい。
このような光反応性残基としては、例えば、ケイ皮酸、置換ケイ皮酸(例えば、アミノケイ皮酸(ベンゼン環のいずれかの水素がアミノ基に置換したケイ皮酸:好ましくはp−アミノケイ皮酸))、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、フリルアクリル酸、チオフェンアクリル酸、シンナミリデン酢酸、ソルビン酸、チミン、クマリン等が挙げられる。「光反応性多糖」としては、このようなものを光反応性残基として有する光架橋基が結合した多糖が好ましいが、ケイ皮酸、置換ケイ皮酸、フリルアクリル酸又はチオフェンアクリル酸を光反応性残基として有する光架橋基が結合した多糖であることがより好ましいそのなかでも、ケイ皮酸又は置換ケイ皮酸(特にアミノケイ皮酸)を光反応性残基として有する光架橋基が結合した多糖が最も好ましい
また、光反応性残基の多糖に対する影響を極力低下させるために、スペーサーを介して多糖に光反応性残基が結合していることが好ましい。したがって、光架橋基としては、ケイ皮酸又は置換ケイ皮酸にスペーサーが結合した誘導体が最も好ましい。
最も好ましい光反応性残基にスペーサーが結合した光架橋基としては、例えば、ケイ皮酸のカルボキシル基にアミノアルコール(HN−(CH−OH等:n=1〜18、HN−(CH−O)−CH−OH:m=1〜9)がエステル結合したケイ皮酸アミノアルキルエステル誘導体(Ph−CH=CH−CO−O−(CH−NH、Ph−CH=CH−CO−O−CH−(CH−O)−NH等:n、mは上記と同じ、Phはフェニル基を表す)、ジアミン(HN−(CH−NH:l=1〜10)、ジオール(HO−(CH−OH等:k=1〜10)が導入された誘導体(Ph−CH=CH−CO−NH−(CH−NH、Ph−CH=CH−CO−O−(CH−OH等:l、k、Phは前記と同じ)、アミノ酸(HOOC−(CHR)−NH:j=1〜10、Rはそれぞれ独立にアミノ酸の側鎖を示す)、ペプチド等を置換ケイ皮酸(アミノケイ皮酸)に導入した誘導体(HOOC−CH=CH−Ph−NH−CO−(CHR)−NH、HOOC−CH=CH−Ph−NH−(ペプチド):R、j、Phは前記と同じ)等の残基が挙げられるが、好ましくはケイ皮酸のカルボキシル基にアミノアルコールがエステル結合で導入された誘導体(ケイ皮酸アミノアルキルエステル)の残基である。アミノアルコールは上記一般式においてnが1〜18が好ましく、特に3〜6が好ましく、3〜4が極めて好ましい。特にケイ皮酸アミノアルキルエステルの残基を光架橋基として使用する場合には、多糖としてはカルボキシル基を有する多糖(好ましくはウロン酸を含む多糖、最も好ましくはHA)を用いることが好ましい。この場合、アミノアルキル基のアミノ基と、多糖のカルボキシル基とがアミド結合することにより光架橋基が多糖に結合される。このような光反応性多糖は、例えば、特開平6−73102号公報、特開平8−143604号公報、WO97/18244号公報、特開平9−87236号公報などの公知の方法に従って調製することができる。
製造方法1:光反応性多糖の溶液を凍結する工程(A)と、(A)工程で得られた凍結した溶液に光を照射することにより光反応性多糖を架橋して、スポンジ形態の架橋多糖を得る工程(B)とを含む製造方法。
製造方法2:光反応性多糖の溶液を凍結乾燥する工程(C)と、(C)工程で得られた凍結乾燥物に光を照射することにより光反応性多糖を架橋して、スポンジ形態の架橋多糖を得る工程(D)とを含む製造方法。
以下、製造方法1及び2を各々説明する。
<製造方法1>
(1)工程(A)
工程(A)は、光反応性多糖の溶液を凍結する工程である。調製する溶液中の光反応性多糖の濃度は、光反応性多糖における多糖の分子量と光架橋基の導入率との関係によって適宜選択されるが、通常0.1〜10重量%の範囲である。例えば、重量平均分子量40〜120万のHAに対して導入率1.0〜8.0%で光架橋基が導入されている場合は0.5〜6.0重量%が例示される。
なお、導入率とは、多糖中に存在する「光架橋基を導入可能な多糖の官能基のモル数」に対する「導入された光架橋基のモル数」を百分率で表示した値である。また、ここで、光架橋基を導入可能な多糖の官能基とは、光架橋基及び使用するスペーサーの種類によって異なる。光架橋基又はスペーサーのカルボキシル基を多糖への結合に使用する場合は、多糖中のアミノ基又はヒドロキシル基が例示される。また、光架橋基又はスペーサーのアミノ基を多糖への結合に使用する場合は、多糖中のカルボキシル基が例示される。
上記の溶液の調製に使用される溶媒としては、光反応性多糖を溶解または懸濁した状態で凍結することが可能な溶媒である限りその種類は特に限定されない。このような溶媒としては、水、水と有機溶媒(ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、ピリジン、ジオキサン等)との混合液、又は有機溶媒が挙げられる。特に調製されたスポンジ形態の架橋多糖の孔径を好ましい範囲の10〜50μmに保つためには、水又は水と有機溶媒との混合液のような、水を含有する溶媒が好ましい。従って、このような溶媒を含有する、例えば、リン酸緩衝生理的食塩水、蒸留水、注射用水などが、工程(A)の光反応性多糖の溶液の調製に用いられる。
本発明においては、前記の溶液から予め光反応性多糖と溶媒、緩衝液中の有機酸塩類等以外の、スポンジ形態の架橋多糖に残留することが好ましくない物質(例えば、未反応の光架橋基を有する反応試薬、不純物、異物)を除去しておくことにより、得られるスポンジ形態の架橋多糖の純度を医療用具などの医療目的に使用し得る程度にまで高めることができる。溶液中の不純物や異物などの除去は、例えば、透析、濾過、遠心分離などの公知の手法に従って行なうことができる。光反応性多糖は、通常、水と水溶性有機溶媒の混合液に可溶性であり、これらの溶液に溶解した溶液の状態で得られるため、この溶液に対して不純物や異物の除去操作を行うことにより、多糖と反応しなかった光架橋基を有する反応試薬の除去が極めて容易に行われる。殊に洗浄が困難な多孔質であるスポンジの調製においては、その原料である光反応性多糖が純粋に得られることは有利である。
光反応性多糖の溶液は、所望の形状にして凍結させることができる。これによって、光の照射により架橋反応させた際の形状が規定される。一方、光反応性残基として例えばケイ皮酸などの紫外線を吸収して架橋反応を起こす基を使用する場合は、凍結物の紫外線透過性を考慮し、紫外線の透過距離が1cm以下となるように凍結させることが好ましい。
凍結条件も特に限定されず、通常の条件を採用し得る。例えば、スポンジ形態の架橋多糖の形状を規定する容器などに光反応性多糖の溶液を収容して、液体窒素のような超低温雰囲気下で急激に凍結してもよく、また、溶液を凍結することができる冷凍機を使用して比較的緩やかに凍結してもよい。なお、溶液の形状規定に使用する容器の外壁を介して外部から光を照射して光架橋反応を行う場合、当該容器の材質は、光架橋基の架橋反応に必要な波長の光を吸収しない材質であって、そのような光を透過する材質でなければならない。かかる材質としては、例えば、光架橋反応に紫外線が使用される場合には、紫外線吸収率が低いポリプロピレン等の高分子化合物、ガラス、特に石英ガラス、硬質ガラス等が挙げられる。
(2)工程(B)
工程(B)は、工程(A)で得られた「凍結した光反応性多糖の溶液」に光を照射することにより、光反応性多糖を架橋して、スポンジ形状の架橋多糖を得る工程である。使用する使用する光架橋基に応じて照射する光線の種類を選択して行う。例えば、光架橋基としてケイ皮酸を使用した場合は、照射する光として紫外線を使用する。この場合、紫外線の波長は100〜400nmの範囲から選択するのが好ましい。
また、光の照射時間は、光源の出力および製造する架橋多糖の使用目的に応じて適宜変化させることができる。例えば、ケイ皮酸を光架橋基として使用する場合であって、400Wの高圧水銀ランプ1灯を使用して10mlの光反応性多糖溶液からスポンジ形態の架橋多糖を製造する場合において、比較的高い機械的強度(テクスチャーアナライザー(TA−XT2:Stable Micro Systems社製)を用い、固定したサンプルに直径12.5mmの球状プローブを1mm/秒の速度で押しつけた際の最大応力として、通常、4重量%の光反応性多糖溶液を用いた場合に350g以上、2重量%の溶液を用いた場合に100g以上)を有するスポンジ形態の架橋多糖を得るためには、光源からの距離4cm(10.9〜11.3mW/cm:波長280nmの紫外線に換算)で30秒間以上7分間以下の照射時間を選択する。更に長時間の光照射を行うことにより、一層高硬度のスポンジ形態の架橋多糖を得ることが可能である。また、同じ照射時間であっても、より低出力の光源を使用したり、光源からの距離をさらに長くしたりすることにより、生分解性の優れたスポンジ形態の架橋多糖を得ることができる。
前記の比較的高い機械的強度を有するスポンジ形態の架橋多糖とは、多糖の分子量によって幅はあるものの、少なくとも7%以上の架橋率を有するものであり、特に10〜40%の架橋率が好ましい。1〜5%程度の架橋率を有するスポンジ形態の架橋多糖は、生分解性に優れており、特に1〜3%の架橋率が好ましい。この「架橋率」とは、多糖1分子に結合した光架橋基の分子数を基準として、光架橋した光架橋基の分子数を百分率により表示した数値である。
<製造方法2>
工程(C)は、光反応性多糖の溶液を凍結し、常法によって凍結乾燥する工程である。光反応性多糖溶液の凍結までは、前記製造方法1における工程(A)と共通である。
(1)工程(C)
工程(C)の凍結乾燥は、「凍結した光反応性多糖の溶液」から凍結した状態で溶媒を除去する処理であれば特に限定されず、冷却を行いながら凍結した光反応性多糖の溶液を減圧して溶媒を昇華させても良く、また常温で急激に減圧して溶媒を昇華させても良い。このような処理をすることで、凍結時に溶媒が存在した部分に空隙が生じ、スポンジ形態の架橋多糖が有する孔が、好ましい孔径で形成されることになる。この工程(C)を経ることで、光反応性多糖によって形成されるスポンジ形態の架橋多糖が得られることになる。このようなスポンジ形態の架橋多糖は、160x246μmの単位面積あたり、孔数が30個以上、好ましくは40個以上であり、その孔数のうちの50%以上、好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上の孔径が10〜50μmであるという特徴を有している。
(2)工程(D)
工程(D)は、工程(C)で得られる「光反応性多糖の溶液の凍結乾燥物」に光を照射することにより、光反応性多糖を架橋してスポンジ形態の架橋多糖を得る工程である。
照射する光の種類は、製造方法1における工程(B)と共通である。
光の照射時間は、光源の出力および製造する架橋多糖の使用目的に応じて適宜変化させることができる。例えば、ケイ皮酸を光架橋基として使用する場合であって、400Wの高圧水銀ランプ1灯を使用して10mlの光反応性多糖溶液からスポンジ形態の架橋多糖を製造する場合において、比較的高い機械的強度を有するスポンジ形態の架橋多糖を得るためには、光源からの距離4cm(10.9〜11.3mW/cm:波長280nmの紫外線に換算)で25秒間以上7分間以下の照射時間を選択する。更に長時間の光照射を行うことにより、一層高硬度のスポンジ形態の架橋多糖を得ることが可能である。また、同じ照射時間であっても、より低出力の光源を使用したり、光源からの距離をさらに長くしたりすることにより、生分解性の優れたスポンジ形態の架橋多糖を得ることができる。得られるスポンジ形態の架橋多糖は、製造方法1によって調製されたスポンジ形態の架橋多糖と比較すると、形態保持能や吸水性、孔径やその分布、架橋率及び異性化率が同等の架橋多糖である。
前記の製造方法1又は製造方法2に従って光を照射して多糖に結合した光架橋基の架橋反応を行うと、光反応性多糖の溶液の凍結物(工程(A)によって調製された凍結した溶液)又は凍結乾燥物(工程(C)によって調製された凍結乾燥物)は、その形状を保った状態で光架橋した多糖からなるスポンジとなる。すなわち、このスポンジ形態の架橋多糖は、精製が容易である溶液状態の光反応性多糖をもとに調製されるため、不純物を含まないスポンジを容易に形成させることができる。また、凍結状態又は凍結乾燥した状態での光架橋反応は、溶液状態での光架橋反応と比して格段に少ない光エネルギーで引き起こすことができる。従って、同じ光の照射条件で溶液に照射して得られる架橋多糖よりもさらに高架橋の架橋多糖からなるスポンジを容易に得ることができる。
また、光架橋基の導入率が同じ場合、架橋率が従来の光架橋物と比して格段と高く、例えば、医薬品、医療用具としての滅菌性を保証するための条件より厳しい条件、すなわち122℃で20分間のオートクレーブ滅菌を行った後においても、オートクレーブ滅菌を行う前のスポンジの形状を保ち続ける程度の形状保持能を有する。
このような「スポンジ形態の架橋多糖」のなかでも、以下の(1)及び(2)の性質を有するものが好ましい。
(1)1mm当たりの孔の数が760個以上である。なお、1mm当たりの孔の数は1000個以上であることが好ましい。また、1mm当たりの孔の数は4000個以下であることが好ましく、3000個以下であることがより好ましい。したがって、1mm当たりの孔の数は760個以上4000個以下が好ましく、760個以上3000個以下が好ましく、1000個以上4000個以下が好ましく、1000個以上3000個以下がより好ましい。
(2)50%以上の孔の孔径が10〜50μmである。なお、60%以上の孔が10〜50μmの孔径を有していることが好ましく、70%以上の孔が10〜50μmの孔径を有していることがより好ましい。このようなスポンジの単位面積(1mm)あたりの孔数や孔径は、得られたスポンジ形態の架橋多糖の電子顕微鏡写真などを用いて計測することができる。
また、このスポンジ形態の架橋多糖は、吸水状態でもその形状が一定に保たれることが好ましい。例えばこのスポンジ形態の架橋多糖は、24℃条件下で大過剰量の水に浸漬した際に、少なくとも1時間、より好ましくは3時間、さらに好ましくは24時間、最も好ましくは48時間経過した時点で、スポンジ形態を保っていることが好ましい。
さらにこのスポンジ形態の架橋多糖は、5秒間注射用水に浸漬した際の重量(Ww)と、さらに濾紙によってその水分を完全に除去した際の重量(Wd)とを用いて算出した含水率:{(Ww−Wd)/Ww}x100(%)が70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
本発明基材は、このようなスポンジ形態の架橋多糖を主成分とする限りにおいて、他の成分等を含有していてもよい。このような「他の成分」は、本発明基材の主成分である「スポンジ形態の架橋多糖」に対して悪影響を与えず、かつ、本発明の効果に悪影響を与えない限りにおいて特に限定されない。このような「他の成分」としては、例えば、他の医薬活性成分や、慣用の安定化剤、pH調整剤、緩衝剤、保存剤、着色剤等が例示される。
本発明基材は、ES細胞の培養に用いることができる。培養の目的は特に限定されないが、ES細胞の分化誘導を目的とする培養が好ましい。またこの「分化誘導」は、肝細胞への分化誘導であることが好ましい。
<2>本発明培養方法
本発明培養方法は、本発明基材を用いてES細胞を培養することを特徴とする、ES細胞の培養方法である。本発明基材については前記の通りである。
本発明培養方法における本発明基材の用い方も特に限定されないが、培養の際にES細胞が本発明基材に接触する態様で用いられることが好ましい。このような態様として、ES細胞の三次元培養や、平面培養(単層培養)等が例示される。
本発明培養方法における培養の条件等も、本発明基材を用いる限りにおいて特に限定されず、通常のES細胞の培養条件を採用することができる。
培養の温度は35〜38℃が好ましく、36〜37℃がより好ましい。また、CO2の濃度が0.45〜0.55%に設定されていることが好ましく、0.48〜0.52%に設定されていることがより好ましい。
培地としてはESM、DMEM(ダルベッコの改変イーグル培地(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)等を用いることができる。その他、培地には、増殖因子、糖類、アミノ酸等を添加してもよい。なかでも、培地中に増殖因子が存在している下で培養することが好ましい。増殖因子としては、FGF、HGF、OsM等が例示される。FGFとしては、aFGF、FGF4を用いることが好ましい。本発明培養方法では、特に「FGF4、aFGF及びHGF」を同時に用いることが好ましい。
なお、培養期間を通じて、培地中に存在させる増殖因子の種類を一定に保持してもよく、変化させても良い。変化させる場合には、少なくとも「FGF4、aFGF及びHGF」が同時に存在している下で培養するステップを有することが好ましい。
培養期間中に増殖因子の種類を変化させる場合には、例えば、以下のステップの順に変化させることが好ましい。
ステップ1:「FGF4、aFGF及びHGF」の存在下で培養する。
ステップ2:「OsM」の存在下で培養する。
なお、ステップ1の前に、「LIF及びRA」の存在下で培養するステップ(以下、「ステップ0」という。)を設けることが好ましい。またステップ2の後に、「HCM」で培養するステップ(以下、「ステップ3」という。)を設けることが好ましい。各ステップへの移行は、培地交換等によって容易に行うことができる。
各ステップにおける培養の期間も特に限定されず、当業者が適宜選択することができるが、ステップ0は2〜6日間(好ましくは3〜5日間)、ステップ1は3〜8日間(好ましくは5〜6日間)、ステップ2は1〜5日間(好ましくは2〜3日間)、ステップ3は
2〜3日間程度が好ましい。
このような本発明培養方法によってES細胞を培養すると、ES細胞を極めて効率的に分化誘導(好ましくは、肝細胞への分化誘導)をさせることができる。
<3>本発明誘導方法
本発明誘導方法は、本発明培養方法を用いてES細胞を培養するステップを少なくとも含む、ES細胞の分化誘導方法である。本発明培養方法によってES細胞を効率的に分化誘導させることができることから、これを分化誘導方法として応用したものである。
本発明誘導方法は、本発明培養方法と同様に行うことができる。したがって、その具体的手法・条件等は本発明培養方法と同じである。
ES細胞が分化誘導されたか否かは、細胞の性質や形態等を指標に当業者が適宜判別することができる。例えば、顕微鏡観察等によってES細胞とは異なる形態を有しているか、生化学的にES細胞とは異なる性質を有しているか等によって分化誘導を確認することができる。
本発明誘導方法における「分化誘導」は、肝細胞への分化誘導であることが好ましい。肝細胞に分化誘導されると、細胞の形態がES細胞よりやや大型で、卵円形、核小体が明瞭となり、またその細胞からアルブミンが産生されることとなることから、これらを指標に当業者が容易に判別することができる。
<4>本発明生産方法
本発明生産方法は、本発明培養方法を用いて胚性幹細胞を培養するステップを少なくとも含む、肝細胞の生産方法である。本発明培養方法によってES細胞を効率的に分化誘導(特に、肝細胞に分化誘導)させることができることから、これを肝細胞の生産方法として応用したものである。
本発明生産方法は、本発明培養方法と同様に行うことができる。したがって、その具体的手法・条件等は本発明培養方法と同じである。
また、肝細胞が生産されたか否かは、本発明誘導方法と同様に、得られた細胞の形態がES細胞よりやや大型で、卵円形、核小体が明瞭となっているか否か、得られた細胞からアルブミンが産生されているか否かを指標に判定することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に詳説する。
<1>材料
以下に、本実施例で用いた材料を説明する。
スポンジ形態の架橋HA(以下、「HAスポンジ」という。)は、WO02/060971に記載の方法に従って、以下の通り製造した。
HA(生化学工業株式会社製:重量平均分子量90万)の全カルボキシル基の3%にケイ皮酸アミノプロピルを導入した光反応性ヒアルロン酸(導入率3%)1gを注射用水25mLに溶解して4重量%光反応性HA水溶液を調製した。この水溶液を層厚が1mmとなるように硬質ガラス板(旭テクノグラス社製)に挟み、−80℃で急激に凍結した後、凍結状態を維持したまま、高圧水銀ランプ(シゲミスタンダード製の400Wのランプ)で5分間光を照射した。照射後の物質を室温で融解し、白色のHAスポンジを得た。
上記の光架橋ヒアルロン酸スポンジは、多孔質であることが肉眼で確認でき、指で水分を搾り出すことができ、また、水分を失ったスポンジは、容易に水分を吸収できるという優れた吸水・排水性を示した。調製したスポンジは、注射用水に5秒間浸漬したところ、6.1gとなり、濾紙によってこの水分を完全に除去すると0.8gとなった。さらに、再度注射用水に5秒間浸漬すると5.9gとなり、86.9%の含水率を示した。
このHAスポンジをプラスチックシャーレに入れ、20℃の雰囲気下、10mmHgで5時間凍結真空乾燥することにより、乾燥状態のHAスポンジを得た。その外形を図1に示す。
また、このHAスポンジの断面を電子顕微鏡(JSM−5200 走査型電子顕微鏡:日本電子株式会社製)を用いて観察したイメージを、倍率の低い順に図2〜図4に示す。撮影範囲(160x246μm=39360μm)当たり108個の孔が観察され、そのうち10〜50μmの孔径を有するものは65%であった。
aFGF、FGF4及びHGFはベリタス(VERITAS)社製のものを、ESMはインビトロジェン(Invitrogen)社製のものを、HCMは旭テクノグラス(Asahi Techno Glass)社製のものを、LIFはケミコン(Chemicon)社製のものを、OsM及びRAはシグマ(Sigma)社製のものをそれぞれ使用した。
サル由来のES細胞(CM・ES;以下、サルES細胞という)は、旭テクノグラス(Asahi Techno Glass)社から入手した。この細胞のDNAには、アルブミンの産生があるとGFPが発現するようにDNA断片(pALB-EGFP)が組み込まれている。
<2>方法と結果
(1)HAスポンジとマウスES細胞を用いた実験
(1−1)成長因子の存在下での培養
HAスポンジ(サイズ:10mm x 10mm x 1mm)を培養シャーレ(24ウエルのプレート)の中央に置き、このシャーレにLIF(終濃度:100 単位/ml)及びRA(終濃度:
10-8 M)を含有するESM 1.0mlを添加した後、マウス由来のES細胞(株の名称:J1;以下、マウスES細胞という。)(細胞数:2 x 106)を添加して培養を開始した(培養条件:37℃、CO2濃度0.5%)。
培養開始から3日目に、培地をFGF4(終濃度:20 ng/ml)、aFGF(終濃度:100 ng/ml)及びHGF(終濃度:50 ng/ml)を含有するESMに置換して、同じ培養条件でさらに培養した。
培地の置換から6日目(培養開始から9日目)に、培地をOsM(終濃度:10 ng/ml)を含有するESMに置換して、同じ培養条件でさらに培養した。
OsM含有培地への置換から2日目(培養開始から11日目)に、培地をHCM(トランスフェリン(transferrin; 5 μg/ml)、ヒドロコルチゾン−21−ヘミスクシネート(hydrocortisone-21-hemisuccinate;10-6 M)、ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin;0.5 mg/ml)、アスコルビン酸(ascorbic acid;2 mM)、インスリン(insulin;5 μg/ml)及びゲンタマイシン(Gentamicin;50 μg/ml)を含有する改変ウイリアムE培地(modified William E medium))を含有するESMに置換して、同じ培養条件でさらに培養を続けた。
培養開始から3日目、6日目、9日目及び12日目に、培地の一部を採取して、ELISA法を用いて培地中のアルブミン濃度を測定した。
(1−2)成長因子の非存在下での培養
培養開始から3日目の培地の置換において、成長因子(FGF4、aFGF及びHGF)を含有しないESMを用いた以外は前記(1−1)と同様にマウスES細胞を培養し、培地中のアルブミン濃度を測定した。
(2)コラーゲンスポンジを用いた実験
上記(1)におけるHAスポンジに代えてコラーゲンスポンジ(株式会社高研製)を用いて、同様に実験を行った。
HAスポンジを用いた結果を図5に、コラーゲンスポンジを用いた結果を図6に示す。図5及び図6中、成長因子存在下で培養した結果は黒のカラムで、非存在下で培養したものは白のカラムで示す。また、縦軸はアルブミン濃度(mg/dl)を示し、横軸はサンプル(培地)採取の日付を示す。
図5及び図6から、HAスポンジを用いてES細胞を培養すると、成長因子の有無にかかわらずアルブミンの産生量が増加することが示された。また、成長因子を存在させることによって、アルブミンの産生量をさらに高めることができた。
アルブミンは肝細胞によって産生されることから、HAスポンジを用いてES細胞を培養することで肝細胞への分化誘導が促進されることが示された。また成長因子を存在させることによって、その分化誘導の促進効率をさらに高めることができることが示された。
(3)サルES細胞を用いた実験
前記(1)と同様にHAスポンジを培養シャーレの中央に置き、このシャーレにESM1.0mlを添加した後、サルES細胞(細胞数:2 x 106)を添加して培養を開始した(培養条件:37℃、CO2濃度0.5%)。
培養開始から3日後に、培地をLIF(終濃度:100 ng/ml)及びRA(終濃度:10-8 M)を含有するESMに置換して、同じ培養条件でさらに培養した。
培地の置換から5日目(培養開始から8日目)に、培地を、FGF4(終濃度:50 ng/ml)、aFGF(終濃度:100 ng/ml)及びHGF(終濃度:100 ng/ml)を含有するESMに置換して、同じ培養条件でさらに培養した。
培地の置換から5日目(培養開始から13日目)に、培地をOsM(終濃度:20 ng/ml)を含有するESMに置換して、同じ培養条件でさらに培養した。
培養開始から3、6及び12日目に培地の一部を採取して、培地中の細胞におけるGFPの発現を蛍光顕微鏡で観察した。GFPの発現は、蛍光の発色によって検出することができる。その結果、HAスポンジを用いて培養したサルES細胞において、GFPが強く発現していた。
この結果からも、HAスポンジを用いてES細胞を培養すると、アルブミンの産生量が増加することが確認された。また、このHAスポンジの作用は、ES細胞の由来を問わず発揮されることが確認された。
このことから、HAスポンジを用いてES細胞を培養することで、そのES細胞の由来を問わず、肝細胞への分化誘導が促進されることが示された。

(4)マウスES細胞から分化した肝細胞の機能等の確認実験
(4−1)スフェロイドの形成
DNA断片(pALB-EGFP)を組み込んだマウスES細胞(GFP陽性細胞)を、前記と同様にHAスポンジに添加し、HCMを用いて培養を行った。
その結果、HAスポンジの網状の孔の中に、多くの細胞からなる球状組織体(スフェロイド)が形成された。組織化学的な分析により、これらのスフェロイドには20〜50個程度の肝細胞が含まれることが確認された。
(4−2)肝グルコースの産生
上記(4−1)と同様にHAスポンジを用いて培養したマウスES細胞(GFP陽性細胞
)について、培養開始後1日目の培養上清中のグルコースのレベルをグルコースオキシダーゼ法(J. Biol. Chem., 260, p12748-12753, 1985)で測定することにより、肝グルコースの産生量を調べた。
その結果、HAスポンジを用いた場合のグルコース産生量は0.079±0.004 mmol/ml/時間/104細胞(n=4)であった。一方、HAスポンジに代えてコラーゲンスポンジを用いて同様に培養した場合のグルコース産生量は0.057±0.006 mmol/ml/時間/104細胞(n=4)であった。統計学的な解析により、HAスポンジを用いた場合の肝グルコースの産生量は、コラーゲンスポンジを用いた場合に比して有意に高いことが確認された(スチューデントのt検定(Student's t-test)、p<0.05)。
(4−3)アンモニアの解毒作用
前記(4−1)におけるHCMに代えて、2.5mM NH4Clを含有するDMEMを培地として用い、前記(4−1)と同様にHAスポンジを用いてマウスES細胞(GFP陽性細胞)を培養した。培養開始後0、6、12及び24時間目に、培養上清中のNH4Cl濃度を、アンモニア−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて測定した。その結果培地中のNH4Cl濃度は時間とともに減少した。培地上清中の尿素の濃度を測定したところ、時間とともに増加した。
以上の結果から、HAスポンジを用いることによってES細胞から分化した細胞は、その機能の面においても正常な肝細胞であるといえることが確認できた。
また、HAスポンジを用いることによって、このような機能が少なくとも20日間維持されることが確認されたことから、HAスポンジは肝細胞への分化の誘導のみならず、肝細胞を生育させるための優れた基材としても利用できることが明らかになった。
本発明基材、本発明培養方法、本発明誘導方法は、ES細胞の肝細胞等への分化誘導等に利用することができる。また本発明生産方法は、肝臓の再生医療分野に使用しうる肝細胞の生産等に利用することができる。
HAスポンジの外形を示す図である。 HAスポンジを電子顕微鏡観察したイメージを示す図である。 HAスポンジを電子顕微鏡観察したイメージを示す図である。 HAスポンジを電子顕微鏡観察したイメージを示す図である。 HAスポンジを用いて培養した際のアルブミンの産生(肝細胞への分化の程度)を示す図である。 コラーゲンスポンジを用いて培養した際のアルブミンの産生(肝細胞への分化の程度)を示す図である。

Claims (7)

  1. スポンジ形態の架橋ヒアルロン酸を主成分とする、胚性幹細胞の肝細胞への分化誘導用の培養用基材。
  2. スポンジ形態の架橋ヒアルロン酸が、以下の(1)及び(2)の性質を有することを特徴とする、請求項1に記載の基材。
    (1)1mm 当たりの孔の数が760個以上である。
    (2)50%以上の孔の孔径が10〜50μmである。
  3. 架橋ヒアルロン酸が、光反応性ヒアルロン酸を光照射によって架橋させて得られるものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の基材。
  4. 光反応性ヒアルロン酸が、ケイ皮酸、置換ケイ皮酸、フリルアクリル酸又はチオフェンアクリル酸を光反応性残基として有する光架橋基が結合したヒアルロン酸であることを特徴とする、請求項3に記載の基材。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の基材を用いて胚性幹細胞を培養するステップを少なくとも含む、胚性幹細胞の肝細胞への分化誘導方法。
  6. 培養が、増殖因子の存在下で行われることを特徴とする、請求項5に記載の分化誘導方法。
  7. 請求項5又は6に記載の分化誘導方法を用いて胚性幹細胞を分化誘導させるステップを少なくとも含む、肝細胞の生産方法。
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