JP4520117B2 - 放射性物質の輸送貯蔵キャスク - Google Patents
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Description
通常、実際使用されうる放射性物質の輸送貯蔵キャスクにおいて、応力的に厳しいものとなる蓋部は、半径が1000mm前後であり、材質の引張り強さが410MPa前後である。そこで、半径1000mm、引張り強さ410MPaの蓋部を基準とした場合、前記所定の圧力を0.5MPa以下にすると、引張り強さ410MPa以下の最大応力に収まる。
内胴2の外周部には、樹脂やゴム等の材料を主としてなる中性子遮蔽材3が炭素鋼或いはステンレス鋼からなる円筒状の外筒4に覆われて配置されて、遮蔽層が形成されている。中性子遮蔽材3の中には、使用済燃料集合体10aの崩壊熱を除熱するべく、内胴2から外筒4に伝熱するための銅からなる伝熱フィン3bが設けられている。
キャスク1の胴部上方に設けられた開口部には、内胴2と同じ材質の円盤状の一次蓋6が取り付けられ、その外側に円盤状の二次蓋7が取り付けられている。
また、外部構造材7aには、可溶性ネジ11が一次蓋6に設けられた貫通孔12を密封するように設置されている。この可溶性ネジ11は、800℃の高温環境下で溶けて、キャスク1内部で発生したガスを貫通孔12から放出するように構成されている。
また、外部構造材7aと中性子遮蔽材8との間には、中性子遮蔽材8の膨張代として空隙8aが設けられている。そして、外部構造材7aには、後述するリリーフ弁9が空隙8aに連結されて設けられている。
図2に示すように、キャスク1の胴部下方には、内胴2と同一材質の円盤状の底板13が内胴2と溶接固定して取り付けられるとともに、その外側には中性子遮蔽材14が底部レジンカバー15に覆われて取り付けられて、遮蔽層が形成されている。中性子遮蔽材14と底部レンジカバー15との間には、中性子遮蔽材14の膨張代として空隙14aが設けられている。そして、底部レンジカバー15には、後述するリリーフ弁16が空隙14aに連結されて設けられている。
リリーフ弁5,9,16は、所定の圧力(リリーフ圧)で弁を開放するように設定されている。リリーフ弁5,9,16は、例えば、図6に示すように、それぞれ、ねじ状のバルブ軸5a,9a,16aと、ナット5b,9b,16bと、バネとから構成されており、ナット5b,9b,16bをバルブ軸5a,9a,16aに絞め込む、或いは、緩めることにより、バネを伸縮させてリリーフ圧を調整することができるようになっている。ここで、リリーフ圧は、後述する通り、空隙3a,8a,14a内の圧力により、それぞれ、外筒4,二次蓋7の外部構造材7a,底部レンジカバー15に発生する最大応力が許容応力以下となる範囲で設定される。
尚、破損防止のため、図7に示すように、リリーフ弁5は、外筒4の外周部よりも外側に突出しないように、外筒4に設けられた座ぐり4b内に設置するのが望ましい。同様に、リリーフ弁9,16も、それぞれ、外部構造材7a,底部レンジカバー15の外周部よりも外側に突出しないように、外部構造材7a,底部レンジカバー15に設けられた座ぐり7b,15b内に設置するのが望ましい。
まず、放射性物質の輸送貯蔵キャスクの試験装置を用いた内部圧力の測定試験について、図8及び図9を用いて説明する。図8は、試験装置の概略断面図である。図9は、測定試験の結果を示す図である。
尚、測定試験に用いる試験装置は、一般的に使用される放射性物質の輸送貯蔵キャスクの設定条件を想定して設計されている。
(1)中性子遮蔽材101と円筒容器102の空隙率:90%(放射性物質の輸送貯蔵キャスクの実際の設計条件を想定)
(2)加熱温度:125℃、150℃(シリコンゴムの使用制限温度)
(3)加熱時間:1000時間
尚、胴部に比べて蓋部の方が応力的に厳しい評価となるため、ここでは、蓋部である、二次蓋7内に設けられた中性子遮蔽材8の膨張代である空隙8aを形成する外部構造材7a(半径1000mm、引張り強さ410MPa)を基準として計算を行った。
尚、以上の結果は、蓋部である二次蓋7の外部構造材7aが半径1000mm、引張り強さ410MPaである場合を基準としている。最大応力は半径の二乗に比例することから、蓋部の半径が例えば950mmであれば、0.5÷(0.95)2=0.55MPa以下に設定すると良い。また、蓋部材質の引張り強さが450MPaであれば、0.5×(450/410)=0.55MPa以下に設定すると良い。このように、半径が1000mm、引張り強さが410MPaである蓋部(二次蓋7の外部構造材7a)を基準とした場合、リリーフ弁5,9,16のリリーフ圧を、0.5MPa以下、望ましくは0.3MPa以下に設定すると良い。
その結果、放射性物質である使用済燃料集合体10aの崩壊熱により中性子遮蔽材3,8,14の温度が上昇することで空隙3a,8a,14aに発生する水蒸気及びガスをリリーフ弁5,9,16から開放させることができ、放射性物質の輸送貯蔵キャスク1の安全性を確保することができる。
その結果、空隙3a,8a,14aを形成する外筒4,二次蓋7の外部構造材7a,外部レンジカバー15に発生する応力が許容応力以下でリリーフ弁5,9,16を開放することができ、放射性物質の輸送貯蔵キャスク1の安全性をより確保することができる。
その結果、空隙3aが複数のセルに区分されているものであっても、複数のセルは連通部を介して部分的に連通しているため、リリーフ弁5をセル毎に設ける必要がなく、放射性物質の輸送貯蔵キャスク1の構造を簡素化することができる。
その結果、本発明を実際使用されうる放射性物質の輸送貯蔵キャスク1の範囲として適用することができる。
その結果、キャスク1を縦置きした場合でも、リリーフ弁16が作動した際にガスを逃げやすくすることができる。
2 内胴
3 中性子遮蔽材
3a 空隙
3b 伝熱フィン
4 外筒(金属部材)
5 リリーフ弁
7a 外部構造材(金属部材)
8 中性子遮蔽材
8a 空隙
9 リリーフ弁
10a 使用済燃料集合体(放射性物質)
14 中性子遮蔽材
14a 空隙
15 底部レンジカバー(金属部材)
16 リリーフ弁
Claims (5)
- 放射性物質を収容するバスケットの周囲に設けられる中性子遮蔽材と、その外側に設けられる筒状の外筒の金属部材と、を備えてなる放射性物質の輸送貯蔵キャスクであって、
当該中性子遮蔽材の周囲に中性子遮蔽材の膨張代として確保される空隙が、当該中性子遮蔽材と当該金属部材とにより二重筒状構造を構成するように当該キャスク胴部に環状に形成され、且つ、当該空隙は、伝熱フィンにより周方向に複数のセルとして区分されてなり、更に、当該複数のセルが連通部を介して部分的に連通してなり、連通している当該複数のセルに対して所定の圧力以上で外部に開放する少なくとも1つのリリーフ弁を設けることを特徴とする放射性物質の輸送貯蔵キャスク。 - 前記所定の圧力は、前記空隙内の圧力により前記金属部材に発生する最大応力が当該金属部材の許容応力以下となる範囲で設定されることを特徴とする請求項1に記載の放射性物質の輸送貯蔵キャスク。
- 前記連通部は、
前記キャスクの軸方向端部及び半径方向端部に前記空隙の空間を設けて、前記空隙の上方の空間を連通して構成され、または、
前記キャスクの軸方向端部のみ、又は、前記キャスクの半径方向端部のみに前記空隙の空間を設けて、前記伝熱フィンに小さな孔を開けて一つの空間として連通して構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の放射性物質の輸送貯蔵キャスク。 - 前記所定の圧力は、0.5MPa以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の放射性物質の輸送貯蔵キャスク。
- 前記リリーフ弁は、キャスク下部の接地面から突出しないように形成され、
当該接地面の少なくとも一部に当該リリーフ弁に通じる凹部を設けていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の放射性物質の輸送貯蔵キャスク。
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