JP4519964B2 - 超伝導素子の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、超伝導体を用いた超伝導素子の製造方法に関し、詳しくは低消費電力で且つ高速性に優れた磁場制御方式の超伝導素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
素子に超伝導材料を用いることは、超伝導時の低消費電力および高速応答性を利用できるという利点があり、様々な応用展開の試みがなされてきている。しかしながら、半導体素子のように電界効果型の素子を超伝導材料で実現するためには、ジョセフソン素子やSQUID(超伝導量子干渉素子)の場合ように微細加工や高電圧を必要とする。そこで、磁場で制御する超伝導素子が提案されている。例えば、特開平3−196584号公報や特開平7−30160号公報には、超伝導体からチャネル部である半導体へ近接効果によって浸み出す超伝導電流を磁場により制御する方法が提案されている。また、特開平2−183583号公報には、磁歪体を用いて超伝導体に圧力を掛けることによって超伝導電流を制御する方法が提案されている。更に、特開平2−194667号公報には、超伝導多結晶薄膜をチャネルとして用い、このチャネルの弱結合部分に磁場を印加することによって超伝導電流を制御する方法が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のチャネルの電流を磁場で制御する超伝導素子には、以下のような問題がある。すなわち、上記特開平3−196584号公報や特開平7−301602号公報のごとく、近接効果によってチャネル部(半導体)に浸み出す超伝導電流を磁場で制御する方法においては、超伝導体と半導体(チャネル部)との接合を形成する技術や超伝導体における浸み出しの長さに対応する微細化技術が要求されるために、量産性に問題がある。また、特開平2−183583号公報や特開平2−194667号公報においては、チャネルの超伝導電流を制御するために、磁歪体を用いて超伝導体に圧力を掛けたり超伝導多結晶薄膜の弱結合に磁場を印加するのであるが、上記圧力や弱結合部分の再現性に問題がある。さらに、臨界電流が低く信頼性に欠けるという問題がある。
【0004】
このように、上記各従来の技術においては、構造が複雑になったり、加工が難しいという問題がある。また、チャネル部に流せる電流が小さいという問題が生じる。すなわち、上述のように、超伝導が本来有している低消費電力や高速応答性を十分に引き出していないという問題点がある。
【0005】
そこで、この発明の目的は、複雑な構造や高度な加工技術を用いずに、チャネル部の特性が良好で、再現性と信頼性に優れ、低消費電力と高速性に優れた超伝導素子の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明は、
信号伝達部であるチャネル部に超伝導を担うキャリアの伝導方向に異方性を有する超伝導体を用いると共に、チャネル電流を磁場で制御する超伝導素子の製造方法であって、
基板上に、上記超伝導体としてのYBa 2 Cu 3 7- δ 膜で成る上記チャネル部を、上記チャネル電流方向と上記YBa 2 Cu 3 7- δ の電気伝導が高い方向とが上記チャネル部全体において一致しており、上記磁場を印加する方向が超伝導面に対して略垂直になるように形成し、
上記チャネル電流を制御する磁場を発生させるためのゲート電極を、上記チャネル部を構成する上記YBa 2 Cu 3 7- δ 膜に対して電気伝導が低い方向に形成し、
上記チャネル部にチャネル電流を流すためのソース電極およびドレイン電極を、上記ソース電極および上記ドレイン電極の少なくとも一方が、上記チャネル部における電気伝導が高い方向と交差する面を有するように形成し、
上記ソース電極,上記ドレイン電極および上記ゲート電極の少なくとも1つは、および同じ上記YBa 2 Cu 3 7- δ で形成し、
上記ソース電極,上記ドレイン電極および上記ゲート電極を形成した後に、600℃以上且つ950℃以下の温度の酸素雰囲気中で5時間以上且つ20時間以下の時間加熱し、その後徐冷す
ことを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、チャネル電流方向とチャネル部を構成する超伝導体における電気伝導が高い方向とが一致しているため、上記チャネル部の信号伝達が高速に行われる。さらに、上記チャネル電流を磁場で制御するために、ジョセフソン素子やSQUID等のような微細加工によらずに形成される。さらに、上記磁場を印加する方向が超伝導面に対して略垂直であるために、最も効率的に磁場によってチャネル電流を制御でき、磁場制御用の電流を低減して低消費電力化が図られる。
【0008】
さらに、上記チャネル電流を制御する磁場を発生させるためのゲート電極を、上記チャネル部を構成する上記YBa 2 Cu 3 7- δ に対して電気伝導が低い方向に形成している。したがって、上記チャネル部とゲート電極との間のキャリア突き抜けが防止されるため特性劣化が起こり難い。さらに、上記チャネル部は、上記ゲート電極からの電場の影響を受け難くなる
【0009】
さらに、上記チャネル部にチャネル電流を流すためのソース電極およびドレイン電極の少なくとも一方は、上記チャネル部における電気伝導が高い方向と交差する面を有するように形成している。したがって、上記ソース電極あるいはドレイン電極とチャネル部との間のキャリアの流れが良好であり、高速化と低消費電力化とが図られる。
【0010】
さらに、上記ソース電極,ドレイン電極およびゲート電極の少なくとも1つを、上記チャネル部と同じ上記YBa 2 Cu 3 7- δ で形成している。したがって、不純物の混入の可能性が低減される。そして、上記同じ組成の物質で構成される領域が互いに隣接する領域である場合には、両領域の接合部分の抵抗が低減される。また、YBa2Cu37- δを用いることによって、酸化物超伝導体の臨界温度が高いという利点が生かされ、酸素の組成比の不均一に対する転移温度の変化が少なくなる。その結果、生産性が向上される。さらに、経時変化による酸素組成比の変化の影響が受け難くなる。
【0011】
さらに、上記ソース電極,上記ドレイン電極および上記ゲート電極を形成した後に、600℃以上且つ950℃以下の温度の酸素雰囲気中で5時間以上且つ20時間以下の時間加熱し、その後徐冷するようにしている。したがって、上記チャネル部の単結晶と上記ソース電極および上記ドレイン電極の多結晶との接合、および、上記多結晶内の粒界の接合を、良くすることができる。
【0012】
また、この発明の超伝導素子の製造方法は、上記チャネル部を単結晶の上記YBa 2 Cu 3 7- δ 膜で形成することが望ましい。
【0013】
上記構成によれば、上記チャネル部を単結晶の上記YBa 2 Cu 3 7- δ 膜で形成することによって粒界の影響が避けられる。さらに、欠陥が入り難いので上記チャネル部の特性向上が図られ、再現性も良好になる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。図1は、本実施の形態の超伝導素子における概略構造を示す図である。図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)におけるA−A矢視断面図であり、図1(b)はB−B矢視断面図である。非超伝導体の基板1上に酸化物超伝導体2のパターンが形成され、その上全面に絶縁膜3が形成されている。そして、絶縁膜3および酸化物超伝導体2パターンを貫通してソース電極4およびドレイン電極5が形成され、ソース電極4とドレイン電極5との中間における絶縁膜3上に「コ」字状にパターニングされたゲート電極6が形成されている。
【0015】
図2は、図1に示す超伝導素子の形成工程の一例を示す図である。先ず、図2(a)に示すように、基板1が形成される。基板1としては、例えばMgO,SrTiO3,LaAlO3基板や、Siやサファイア(α−Al23)等の上にバッファ層としてYSZ(イットリア安定化ZrO2),CeO2,CaF2を成膜した基板等を用いる。本実施の形態においてはSrLaMnO4を用いた。ところで、上記基板1は、チャネル部となる超伝導体が形成できれば良く、様々な様態が考えられるが、成膜したい超伝導材料の成膜条件に対応した熱的および化学的安定性,格子定数および熱膨張率係数の整合性が必要であり、低誘電率を有するものが望ましい。本実施の形態においては非導電性の高いものが望ましい。
【0016】
次に、上記基板1上に、蒸着法,MBE(分子線エピタキシャル)法,レーザアブレーション法またはスパッタ法等を用いて、例えばYBa2Cu37- δ単結晶で成る酸化物超伝導体2を50Å〜10μmの膜厚で成膜する。本実施の形態においては、レーザー蒸着法を用いてYBa2Cu37- δを約500Å程度成膜した。
【0017】
超伝導体の臨界磁場は、薄膜化してその厚みを薄くしていくと小さくなっていく。したがって、チャネル部における磁場が掛かる部分の単結晶は、必要なチャネル電流が臨界電流を超えない範囲で、薄い方が好ましい。但し、極端に薄膜化すると転移温度も下がってくるので100Å以上が好ましい。
【0018】
尚、本実施例においては、上記チャネル部を構成する酸化物超伝導体2としてYBa2Cu37- δを用いた例を示しているが、La2-XSrXCuO4+ δやBi2Sr2Ca2Cu310+ δ等の超伝導に異方性を有するものであればチャネル部の材料として用いることができる。特に、Bi2Sr2Ca2Cu310+ δやTl2Ba2Ca2Cu310等は良好な成膜性と高い超伝導転移温度を有しているために好ましい。その中でも、本実施の形態で用いるYBa2Cu37- δは、上述の性能を有するとともに、比較的簡単に製造でき、品質も良い。また、YBa2Cu37- δは、60K付近と90K付近とに酸素含有量の変化に対し安定な臨界温度を有している。したがって、他の物質に比べて酸素濃度の不均一性に対し許容性を有する。この性質を有することは、生産性の向上につながり、歩留まりの向上、更には経時変化による特性劣化が起こりにくいことを意味し、信頼性が高い。このような点から、YBa2Cu37- δはより好ましい材料と言える。
【0019】
図3は、本実施の形態において形成されたYBa2Cu37- δにおけるCuO鎖方向(b軸方向)の抵抗率とCuO鎖に垂直な方向(a軸方向)の抵抗率とを示す。横軸は温度を示している。図から分かるように、b軸方向よりもa軸方向の方の抵抗率が高い。このように、上記チャネル部の材料としてYBa2Cu37- δを用いる場合には、上記CuO鎖(b軸方向)に垂直な方向(a軸方向)をチャネル伝達方向とする方が、オフ電流を少なくできるために望ましい。このことは、YBa2Cu37- δの代わりに、YBa2Cu48や、YBa2Cu37- δ又はYBa2Cu48のYを他の元素で置き換えた類似の超伝導体等を用いる場合にも言えることである。
【0020】
上記チャネル部を構成する酸化超伝導体2としては、多結晶をチャネル部の全域において配向させたものや人工的な格子構造を形成したものを用いてもよい。より好ましくは、単結晶を用いることで、例えば臨界電流が小さいために電流が稼げない等の粒界の影響を避けることができ、より大電流を流すことができる。また、超伝導体の高速応答性を損なわない。更には、不純物の混入や欠陥を少なくでき、均一で再現性もよい。このような理由によって、上記チャネル部を構成する酸化超伝導体2には単結晶を用いるのが好ましい。
【0021】
こうして、上記基板1上に酸化超伝導体2を成膜した後、チャネル部とする領域以外の不要な領域をエッチングによって除去する。その場合、エッチングによらずに、不純物の注入等によって上記不要な領域の超伝導性を失わせる方法を用いることも可能である。
【0022】
次に、上記基板1および酸化超伝導体2パターン上に絶縁膜3を形成する。この絶縁膜3としてZrO2等を使用できる。本実施の形態においては、SrTiO3を膜厚5nmで成膜した。尚、チャネル上の絶縁膜3は、ゲート電極6の電流を絶縁可能な範囲内において、できる限り透磁率の高い物質をできるだけ薄く成膜することが好ましい。
【0023】
他の実施の形態として、上記絶縁膜3を形成する代わりに、酸化物超伝導体2の超伝導性が失われる程度に、例えばAl,Mg等の不純物を酸化物超伝導体2の表面にイオン注入等によって導入することも可能である。更には、酸化物超伝導体2の組成比を変えることによって表面側の超伝導性を失わせて、絶縁膜3の代用とすることも可能である。例えば、成膜した上記YBa2Cu37- δ単結晶の表面付近のみを脱酸素によって酸素の化学量比を減少させ、表面のみを非超伝導領域とし絶縁化することも可能である。
【0024】
次に、図2(b)に示すように、ホトリソグラフィとエッチングとによって、ソース電極4およびドレイン電極5形成用の開口部7,8を形成する。そうした後に、図2(c)に示すように、ソース電極4,ドレイン電極5およびゲート電極6となる例えば金属や酸化物超伝導体等の物質9を積層する。本実施の形態においては、酸化超伝導体2と同じYBa2Cu37- δの多結晶を積層した。
【0025】
次に、図2(c)に示すように、ホトリソグラフィとエッチングとによって、ソース電極4,ドレイン電極5および磁場印加用のゲート電極6を形成する。その場合、ゲート電極6は、チャネル部を構成する酸化超伝導体2の超伝導面に磁場を略垂直に掛けることができるように「コ」字状に形成した。
【0026】
ここで、上記開口部7,8を穿つ場合には、図2(b)に示すごとく、絶縁膜3とチャネル層(酸化超伝導体2パターン)との境界よりも更にオーバーエッチングを行って、基板1の表面に到達するまで開口部7,8を穿つことが好ましい。こうすることによって、ソース電極4の側面の法線方向とドレイン電極5の側面の法線方向とをチャネル部の電気伝導が高い方向に平行にできる。したがって、図4に示すように、チャネル部に対するソース電極4及びドレイン電極5の接続を、チャネル電流がチャネル部を構成する単結晶のc軸方向の電流成分を含まないように行うことができ、ソース電極4とドレイン電極5との間にチャネル電流を効率よく流すことができるのである。
【0027】
比較のために、図5に、絶縁膜3とチャネル層2との境界にまでしかエッチングを行わずにソース電極11およびドレイン電極12を形成した、通常用いられる方法による場合のチャネル電流の流れを示す。この場合には、ソース電極11およびドレイン電極12の近傍において、チャネル電流の流れる方向にチャネル部を構成する単結晶のc軸方向の成分が含まれる。
【0028】
一方において、磁場印加用のゲート電極6が発生する磁場の方向が、チャネル部を構成する酸化超伝導体2の超伝導面に対して略垂直である必要がある。そのような磁場が形成できれば、ゲート電極6の形成場所は任意である。しかしながら、本実施の形態のように、チャネル部上における超伝導面に対して垂直方向にゲート電極6を設置した方が好ましく、チャネル部がゲート電極6からの電場の影響を受け難い。すなわち、チャネル部における電気伝導の低い方向にゲート電極6が設置されているので、ゲート電極6からの電場に基づくキャリアの注入による超伝導体の特性劣化を防ぐことができるのである。また、チャネル部の電流がゲート電極6からの電場の影響を受け難くすることができ、安定した動作が可能となる。
【0029】
さらに、上記ゲート電極6の形状は、本実施の形態の場合のように「コ」字状に形成した方が直線形状に形成する場合より同じ電流量で強磁場を発生させることができ、図6に示すように磁場の方向性も良く好ましい。但し、磁場の方向は、ゲート電流が一方のゲート電極6aの手前から奥の方へ向かって流れて、他方のゲート電極6bの奥から手前に向かって流れる場合を示している。
【0030】
比較のために、図7に、従来のようにゲート電極24が直線形状であって、電流が手前から奥へ流れている場合の磁場の様子を示す。図中の矢印付き曲線が磁場の方向を示している。本実施の形態のごとく、ゲート電極6を「コ」字状に形成した方が、従来の直線形状に形成した場合に比べて磁束密度が高く、チャネル部の信号伝達方向に垂直に磁場を掛けることが容易である。さらに、「コ」字状であれば、多層化することによって、より少ない電流で強磁場を発生することも可能である。
【0031】
また、本実施例では用いていないが、図10に示すように、ゲート電極34の周囲には絶縁膜33を残し、ゲート電極34内のチャネル部における磁場が掛かる部分の絶縁膜33を除去した方が、磁力線を絶縁膜33を透過させるよりもチャネル部に掛かる実効磁場が強くなって望ましい。尚、31は非超伝導の基板であり、32は酸化超伝導体である。
【0032】
図2において、上記ソース電極4,ドレイン電極5およびゲート電極6は伝導体であればよく、金属等を用いることもできるが、ソース電極4,ドレイン電極5,ゲート電極6およびチャネル部は基本的には同じ組成で構成することが好ましい。例えば、本実施の形態のごとくソース電極4,ドレイン電極5,ゲート電極6およびチャネル部をYBa2Cu37- δで構成すれば、一部に他の物質を用いた場合のような不純物の混入等による性能劣化を防止しやすく、生産性が良い。また、ソース電極4およびドレイン電極5をチャネル部と同じ物質で構成することによって、ショットキー障壁を無くすことができ、接合面の抵抗を低減できる。さらに、超伝導体を用いるので略抵抗0で回路を形成でき、超低消費電力化が可能になる。
【0033】
上述のようにして、上記ソース電極4,ドレイン電極5およびゲート電極6が形成されると、次に熱アニールを行う。本実施の形態においては、930℃〜950℃の酸素雰囲気中で6時間程度加熱し、その後に徐冷した。これによってチャネル部(酸化超伝導体2)の単結晶とソース電極4およびドレイン電極5の多結晶との接合、および、多結晶内の粒界の接合を、良くすることができた。
【0034】
かくして、上記成膜された酸化物超伝導体2(YBa2Cu37- δ)の転移温度は90Kであった。アニールの条件は、用いる材料や得ようとする特性によって異なるが、概ね600℃〜950℃の温度で5時間〜20時間処理すればよい。
【0035】
上記構成を有する超伝導素子の動作は、ソース電極4とドレイン電極5との間のチャネル部(酸化超伝導体2)を、ゲート電流により発生する磁場によって超伝導状態と常伝導状態とに切り換え制御を行う。その場合、酸化物超伝導体2の抵抗値は、常伝導状態では非常に高く、超伝導状態では0である。したがって、ソース電極4とドレイン電極5との間は超低電圧でよい。また、チャネル部となる酸化物超伝導体2としての銅酸化物超伝導体等の単結晶はCuO2面を超伝導面としているので、多結晶の場合のような粒界の影響を受けず、より高速スイッチングが可能となる。また、磁場をCuO2面に垂直方向に掛けることによって弱い磁場で制御可能となり、ゲート電流も微少でよい。図8は、本実施の形態で用いたYBa2Cu37- δの単結晶に、磁場をc軸方向に掛けた場合(H‖c)とc軸に垂直方向に掛けた場合(H⊥c)の転移温度の変化を示す。図より、本実施の形態のごとくc軸方向に磁場を掛ける方が効果的であることがわかる。
【0036】
そして、上記YBa2Cu37- δを始めとする酸化物超伝導体2においては、c軸方向の抵抗率がCuO2面に平行な方向の抵抗率に比べて一般に100倍以上高い上に、磁場制御であるから高電圧を必要としないので、絶縁膜3の絶縁条件は格段に緩和されることになる。したがって、信頼性が高く、薄膜化が可能であることからより低磁場で制御できるのである。図9は、上述のようにして形成された超伝導素子の種々転移温度での磁場強度と抵抗率との関係を示す図である。
【0037】
図11に、温度約88Kにおける本実施の形態による超伝導素子の電流特性を示す。本実施の形態における超伝導素子は非常に低抵抗であるので、保護抵抗を用いて測定を行った。0磁場での電流値はこの保護抵抗で決定されている。
【0038】
以上のごとく、本実施の形態における超伝導素子は、素子の信号伝達部であるチャネル部に超伝導時の電気伝導方向に異方性を有するYBa2Cu37- δ等の酸化超伝導体2を用い、ソース電極4及びドレイン電極5を酸化超伝導体2を貫通して基板1に到達するまで深く形成している。こうして、酸化超伝導体2の電気伝導の高い方向とチャネル部全体の信号伝達方向とを一致させている。さらに、ゲート電極6をチャネル部上における酸化超伝導体2の超伝導面に対して垂直方向に設置し、且つ、「コ」字状に形成している。こうして、チャネル部がゲート電極6からの電場の影響を受け難くし、強磁場を発生可能にしている。
【0039】
すなわち、本実施の形態によれば、チャネル部の信号伝達を高速で行うことができる。更に、チャネル電流を磁場で制御するので、従来の電場を用いる方法に比べて微細加工を必要としないのである。また、最も効率的に磁場でチャネル部を制御できるので、ゲート電流を低減でき、低消費電力化が可能である。
【0040】
また、本実施の形態においては、上記チャネル部の電流を制御するためのゲート電極6を、チャネル部を構成する酸化超伝導体2の電気伝導の低い方向に設置している。したがって、上記チャネル部とゲート電極6との間のキャリア突き抜けを防止することができ、特性劣化が起こり難くできる。また、チャネル部がゲート電極6からの電場の影響を受け難くすることができる。
【0041】
また、本実施の形態においては、上記ゲート電極6の形状を「コ」字状にしている。したがって、チャネル電流を制御する磁場を効果的に発生することができ、小電流で必要な磁場を発生することができる。したがって、低消費電力化が可能となる。
【0042】
また、本実施の形態においては、上記チャネル部を構成する酸化超伝導体2をYBa2Cu37- δの単結晶で形成している。したがって、単結晶を用いることで粒界の影響を避けることができ、欠陥が入り難くできる。したがって、チャネルの特性を向上することができ、再現性も良好になる。
【0043】
ところで、この発明は、上述の説明や図面等の内容に何ら限定を受けるものではなく、以下の内容も含まれる。すなわち、
(1)上記実施の形態においてはゲート電極6を「コ」字状に形成しているが、臨界磁場以上の磁場を発生できれば形状にはこだわるものではない。
(2)上記実施の形態においてはゲート電極6を1つしか設けていないが、上記チャネルの上下等に複数備えても一向に構わない。
(3)上記実施の形態においてはチャネル部の単結晶とゲート電極6とを絶縁膜3を挟んで積層しているが、臨界磁場以上の磁場がチャネル部に加わればよく、磁場は空間を伝播するのでチャネル部の単結晶とゲート電極6とは離れていても差し支えない。
(4)上記実施の形態においては基板1に対して酸化超伝導体2単結晶のc軸を略垂直にしているが、ゲート電極6が発生する磁場が上記単結晶のc軸と略平行であればよく、基板1と酸化超伝導体2単結晶の軸方向との関係には特にこだわるものではない。
【0044】
【発明の効果】
以上より明らかなように、この発明の超伝導素子の製造方法は、超伝導を担うキャリアの伝導方向に異方性を有する超伝導体であるYBa 2 Cu 3 7- δ でチャネル部を構成するに際して、上記チャネル部全体においてチャネル電流の方向と上記超伝導体の電気伝導が高い方向とを一致させるので、上記チャネル部の信号伝達を高速に行うことができる。さらに、上記チャネル電流を磁場で制御するので、ジョセフソン素子やSQUID等の電場で制御する素子ように微細加工を必要とはしない。さらに、上記チャネル電流を磁場で制御するに際して、上記磁場の印加方向が超伝導面に対して略垂直であるので、最も効率的に磁場によって上記チャネル電流を制御でき、磁場制御用の電流を低減して低消費電力化を実現できる。
【0045】
上述のように、この発明によれば、上記超伝導体の特性である低消費電力,高速応答性を損なうことなく、従来の超伝導素子に比べて簡単な構造で、再現性よく、高性能で高信頼性の超伝導素子を簡単に製造できる。したがって、高速且つ超低消費電力で動作する超伝導素子を実現することができ、その実用的効果は大きい。
【0046】
さらに、上記チャネル電流を制御する磁場を発生させるためのゲート電極を、上記チャネル部を構成する上記YBa 2 Cu 3 7- δ に対して電気伝導が低い方向に形成したので、上記チャネル部とゲート電極との間のキャリア突き抜けが防止されて、特性劣化が起こり難くできる。さらに、上記チャネル部に対する上記ゲート電極からの電場の影響を受け難くできる
【0047】
さらに、上記チャネル部にチャネル電流を流すためのソース電極およびドレイン電極の少なくとも一方を、上記チャネル部における電気伝導が高い方向と交差する面を有するように形成したので、上記ソース電極あるいはドレイン電極とチャネル部との間のキャリアの流れを良好にでき、高速化と低消費電力化とを図ることができる。
【0048】
さらに、上記ソース電極,ドレイン電極およびゲート電極の少なくとも1つ、上記チャネル部と同じ上記YBa 2 Cu 3 7- δ で形成したので、上記同じYBa 2 Cu 3 7- δ で構成された領域に対する不純物の混入の可能性を低減できる。その場合に、上記同じYBa 2 Cu 3 7- δ で構成される領域が互いに隣接する領域である場合には、両領域の接合部分の抵抗を低減できる。また、YBa2Cu37- δを用いることによって、酸化物超伝導体の臨界温度が高いという利点を生かして酸素の組成比の不均一に対する転移温度の変化を少なくできる。その結果、生産性を向上できる。さらに、経時変化による酸素組成比の変化の影響を受け難くできる。
【0049】
さらに、上記ソース電極,上記ドレイン電極および上記ゲート電極を形成した後に、600℃以上且つ950℃以下の温度の酸素雰囲気中で5時間以上且つ20時間以下の時間加熱し、その後徐冷するので、上記チャネル部の単結晶と上記ソース電極および上記ドレイン電極の多結晶との接合、および、上記多結晶内の粒界の接合を、良くすることができる。
【0050】
また、この発明の超伝導素子の製造方法は、上記チャネル部を単結晶の上記YBa 2 Cu 3 7- δ 膜で形成すれば、上記チャネル部に対する粒界の影響を避けることができ、上記チャネル電流を大きくできる。また、上記チャネル部に欠陥を入り難くして特性向上を図ることができる。さらに、再現性も良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の超伝導素子の製造方法によって形成された超伝導素子における概略構造を示す図である。
【図2】 図1に示す超伝導素子の形成工程の一例を示す図である。
【図3】 図1におけるYBa2Cu37- δのb軸方向の抵抗率とa軸方向の抵抗率とを示す図である。
【図4】 図1に示す超伝導素子におけるチャネル電流の方向を示す図である。
【図5】 ソース電極およびドレイン電極が酸化超伝導体と絶縁膜との境界まで形成された場合におけるチャネル電流の方向を示す図である。
【図6】 図1に示す超伝導素子における磁場の方向を示す図である。
【図7】 ゲート電極が直線形状である場合における磁場の方向を示す図である。
【図8】 図1におけるYBa2Cu37- δの単結晶に対する磁場の方向と転移温度変化との関係を示す図である。
【図9】 図1に示す超伝導素子における各転移温度での磁場強度と抵抗率との関係を示す図である。
【図10】 図1とは異なる超伝導素子における縦断面形状と磁場の方向を示す図である。
【図11】 図1に示す超伝導素子における電流特性を示す図である。
【符号の説明】
1,31…基板、 2,32…酸化物超伝導体、
3,33…絶縁膜、 4…ソース電極、
5…ドレイン電極、 6,34…ゲート電極、
7,8…開口部。

Claims (2)

  1. 信号伝達部であるチャネル部に超伝導を担うキャリアの伝導方向に異方性を有する超伝導体を用いると共に、チャネル電流を磁場で制御する超伝導素子の製造方法であって、
    基板上に、上記超伝導体としてのYBa 2 Cu 3 7- δ 膜で成る上記チャネル部を、上記チャネル電流方向と上記YBa 2 Cu 3 7- δ の電気伝導が高い方向とが上記チャネル部全体において一致しており、上記磁場を印加する方向が超伝導面に対して略垂直になるように形成し、
    上記チャネル電流を制御する磁場を発生させるためのゲート電極を、上記チャネル部を構成する上記YBa 2 Cu 3 7- δ 膜に対して電気伝導が低い方向に形成し、
    上記チャネル部にチャネル電流を流すためのソース電極およびドレイン電極を、上記ソース電極および上記ドレイン電極の少なくとも一方が、上記チャネル部における電気伝導が高い方向と交差する面を有するように形成し、
    上記ソース電極,上記ドレイン電極および上記ゲート電極の少なくとも1つは、上記チャネル部と同じ上記YBa 2 Cu 3 7- δ で形成し、
    上記ソース電極,上記ドレイン電極および上記ゲート電極を形成した後に、600℃以上且つ950℃以下の温度の酸素雰囲気中で5時間以上且つ20時間以下の時間加熱し、その後徐冷す
    ことを特徴する超伝導素子の製造方法
  2. 請求項1に記載の超伝導素子の製造方法において、
    上記チャネル構成する上記YBa 2 Cu 3 7- δ 膜は単結晶であることを特徴とする超伝導素子の製造方法
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