JP4511077B2 - 雨水排水処理システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、雨水を地盤に浸透させて処理する装置であって、特に雨水の急激な増大にも対応することが可能な雨水処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
都市部では、都市化の伸展に伴い、道路や駐車場等がコンクリートやアスファルト等の舗装面で覆われ、土や木が少なくなり、雨水が地中に浸透ににくくなっている。そのため、降雨時には雨水が下水道や河川に集中して一度に多量に流れ込み、これによって浸水被害が発生しやすい。このような対策として、都市部の一部では、家屋の敷地内に雨水浸透装置を設置することが奨励されている。
【0003】
従来の雨水処理装置は、砕石地盤の中に水を浸透させ、この水を土中に浸透させる形式のものが主流である。例えば、砕石を充填した浸潤槽の中に多孔管を通す、いわゆる浸透トレンチ管を使用し、多孔管から水を砕石中に浸透させるものがその例である。この装置では、雨樋で集められた雨水を一旦貯える雨水浸透枡を設置し、この雨水浸透枡から公共下水道に至る部分に前記の浸透トレンチ管を設け、雨水を砕石中に浸透させ、さらにこの砕石から土中に雨水を浸透させる。
【0004】
【発明が解決しようとしている課題】
従来の雨水処理装置は、基本的に砕石空間を利用しているので、空隙率が一般に25%と小さく、単位時間当りの雨水の処理能力に限りがある。雨水浸透処理装置は、その設置地域における気象庁の1時間当りの最大雨量を基準に雨水の最大流入量が設定され、地盤の浸潤能力と砕石の滞留能力によって、浸潤槽の容積が決定される。このため、砕石を充填した浸潤槽の空隙率が低く、滞留能力が低い分だけ大きな容積の浸潤槽を必要とし、設置容積が大きく、施工費も高くなるという課題があった。
【0005】
さらに雨水が雨水処理装置に流入するときに、雨水に巻き込まれる汚濁物による、砕石に目詰まり等が生じやすく、早期にその機能を失ってしまい、雨水の溢水等を生じるようになる。また、汚濁物を自動的に管理桝等に排出する自浄作用はもちろん、溜まった汚濁物を定期的に排出する管理機能にも乏しく、且つその保守管理に多くの手数がかかるという課題がある。
【0006】
本発明は、このような従来の雨水処理装置における課題に鑑み、雨水と共に流入する汚濁物の処理能力が高く、さらに汚濁物を自動的に管理桝等に排出する自浄作用を有し、その管理桝等に溜まった汚濁物を定期的に排出するのが容易な管理雨水排水処理システムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明では、前記の目的を達成するため、U字形排水溝8と中空ボール状の保水ボール8を積み重ねた水浸透部2とを組み合わせ、U字形排水溝8に流入する雨水を、U字形排水溝8と水浸透部2との全体に満たし、上下に積み重ねた保水ボール8とその下のU字形排水溝8とで雨水排水に含まれる汚濁物をそれらの比重により上下に分離し、沈降させて、汚濁物質の排出を可能としたものである。さらに、U字形排水溝8の底に沈降、堆積した汚濁物質の自浄作用を持たせ、堆積汚濁物の処理、管理を容易にしたものである。
【0008】
すなわち、本発明による雨水排水処理システムは、中空楕円ボールの長軸の方向に対向して円形の通孔21を開設し、この長軸と直交し、且つ互いに直交する2本の短軸の方向に対向して前記長軸と平行な方向に長い通孔20を開設した保水ボール8を、前記一対の通孔20が上下を、他の二対の通孔20、21がほぼ水平を向くよう積み重ねた状態で地下に埋設された水浸透部2と、この水浸透部2の下に配置され、上方に向けて開口したU字形排水溝8と、このU字形排水溝8に地上から雨水を導く導水手段とを有することを特徴とするものである。
【0009】
前記のU字形排水溝8は、例えば透水性U字溝が使用される。前記のように保水ボール8は中空楕円ボール状であり、その長軸の方向に対向して開設された通孔21は円形の孔であり、この長軸と直交し、且つ互いに直交する一対の短軸の方向に対向して開設された通孔20は、長軸と平行な方向に長い長孔となっている。この保水ボール8はその一つの短軸方向に対向して開設された一対の通孔20がそれぞれ上下を向くように積み重ねられる。
【0010】
導水手段は、例えば舗装面等に落ちた雨水を排水する場合、舗装を透水性舗装とし、その透水性舗装からU字形排水溝8に直接雨水を導入するものであってもよいが、U字形排水溝8の前段に桝1、3を配置し、この桝1、3に一旦蓄えた雨水を、U字形排水溝8の一端に溢水して供給し、この水をU字形排水溝8と水浸透部2の全体に満たすものであるのがよい。また、家屋の屋根や家屋周りの地面に落ちた雨水を排水する場合、家屋の雨樋や地面からU字形排水溝8に雨水を導水筒26から供給し、この水をU字形排水溝8と水浸透部2の全体に満たすものであるのがよい。
【0011】
このような雨水排水処理システムでは、U字形排水溝8に導かれた雨水が、そのU字形排水溝8を通して順次排水される。この過程で、雨水はU字形排水溝8とその上に水浸透部2の全体に満たされる。そして、雨水排水処理システムでは、最下段のU字形排水溝8からその上に積み重ねられた保水ボール8によって、上下に何段かの槽が分離され、そられ上下の槽が保水ボール8の通孔20を通して上下に通水可能であることから、後述するように、各槽の雨水に分散する砂、砂利、その他の塵等の汚濁物質がそれらの比重の大小によって分離される。
【0012】
さらに、このようにして比重による上下に分離した汚濁物は、その沈降速度差の違いによって順次沈降させる。これにより、比重の大きな汚濁物はU字形排水溝8の底に堆積させ、適時人為的に汲み上げて排出する。これにより、汚濁物による土壌毛管及び水浸透部2の汚濁物負荷を低減させるものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について、具体的且つ詳細に説明する。
本発明による雨水排水処理装置は、図1に示すように、基本的にU字形排水構8と水浸透部2とからなる。
図1に示すように、このU字形排水溝8は、流入桝1から雨水を受け入れて排水すると共に、雨水排水中に含まれる汚濁物の沈降貯留槽及び排出槽としての機能を有する。
【0014】
図1〜図3に示すように、U字形排水溝8は地中に埋設するが、好ましくは側壁及び底壁から水を外部に浸透させる透水性U字溝ブロックにより構築する。道路、駐車場、緑地他の設置場所によって、U字形排水溝8の基礎の仕様は各々コンクリート、モルタル、砂及び砕石等を施し、U字形排水溝8の両側面は、設置場所によって、砂及び砕石、或いは良質発生土等によって固定する。
【0015】
このU字形排水溝8の上部には、蓋を兼用する鋼製、樹脂製のグレーチングやスノコ等を嵌め込み、バッフル材16とする。このバッフル材16は、U時型排水溝8の蓋と水浸透部2のユニットをのせる台を兼用し、さらに雨水排水に含まれる汚濁物の水浸透部2への撒き上りを防止する為のものであ。
【0016】
図4と図5は、このバッフル材16の一例を示すもので、両側に端面L字形の長尺な側フレーム28を平行に配置し、さらにこの側フレーム28の間に長尺な矩形の中間フレーム29を配置し、これら側フレーム28と中間フレーム29ととにわたって長手方向に所定の間隔をおいて架設された羽板状の横板22とが一体となって固定されている。横板22は、側フレーム28と中間フレーム29の長手方向に対して上下方向に斜め45度程度の角度をなすよう架設されている。前記側フレーム28の両側は、両側方に平坦に延設されており、これと直交する側フレーム28の縦の部分がU字形排水溝8の内側に嵌め込まれ、且つ前記側フレーム28の両側部分がU字形排水溝8の両側壁の上面に載せられる。この状態で、前記横板22は、U字形排水溝8の上流側から下流側に向かって、45゜の角度で下がるような方向とする。
【0017】
図1〜図3に示すように、水浸透部2は、50mm角或いは100mm角程度の目の粗い鋼製、樹脂製の網を加工し、それらを水浸透部2の規模或いは設置場所に応じて、正方形、長方形に組み立て籠17を製作し、その中に保水ボール8を充填して積み重ね、ユニット化する。ユニットの全周には、埋戻し時の土砂の浸入を防止するために樹脂製の細目の網18を施す。図8は、この籠17を形成するための網部材17a、17b、17cを示しており、これらにより、立方体形の籠17を組み立てる。
【0018】
図7に示すように、前記の籠17に充填してユニット化する保水ボール8は、樹脂製の中空体保水ボール8状のものに、通孔20、21を開設したものである。保水ボール8の材質は、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレート等の廃棄樹脂資源を原料とした再資源化製品とするのがよい。保水ボール8は、長軸が300mm短軸が200mm程度とし、周壁に短軸が交差する中心部の外周部分に、幅100mm、1面の長さが200mm程度の長方形で4面を形成した端面正方形の帯状のフレーム部材19を設ける。
【0019】
4面の長方形の中心部にはそれぞれ相対する2対の横長の通孔20を合計4個開設している。この通孔20の開口寸法は、20mm×80mm程度とする。さらに、保水ボール8の壁面の長軸のと交差する部分に、1対の対向する通孔21を開設している。この通孔20の径はφ20mm程度とする。
【0020】
前記の保水ボール8を横3列に3段或いは図7に示すように横6列に3段に積み上げ、これらを梱包用の樹脂テープ等で固定し、ブロック状にしたものを1組の保水ボール8群とし、これを前述の鋼製或いは樹脂製の網17a、17b、17cで作った籠17に充填し、1ユニットとする。図1に示すように、これらのユニットを前記U字形排水溝8の長さに応じてその上に横に連ねて設置し、水浸透部2とする。この保水ボール8のユニットは、積み重ねる縦横の数により、自在な対応が可能である。
【0021】
図1に示すように、雨水排水及ぴ汚濁物の沈降貯留槽及び排水槽の機能を有した前述の透水性を有するU字形排水溝8の上面開口部に被せたバッフル材16の上に水浸透部2を載せて一体化した雨水排水処理施設の中間或いは終末にリフト桝3を設置する。リフト桝3は、排水処理施設下部の透水性を有する前記U字形排水溝8の終末と移送管11等によって接続する。また、リフト桝3の流出側では、次の段の雨水排水処理施設の水浸透部2の上部より高い位置に移流管12を接続し、ここから勾配をもって、次の段の雨水排水処理施設のU字形排水溝8の始端の底部に配管する。流入管12から透水性U字形排水溝8によつて廃水処理施設に導水された雨水排水は、リフト桝3の移流管12の前記のような設定によって、U字形排水溝8と水浸透部2の全体に水を満たすようなリフト機能が発生する。すなわち、リフト桝3は、雨水排水をリフトする機能を有する。また、排水処理施設の機能判断や装置内に沈降堆積した汚濁物を排出除去する等の管理維持を行うための管理桝ともなる。
【0022】
図1に示す雨水排水処理システムは、前記の透水性U字形排水溝8の上部バッフル材16の上に、保水ボール8をユニット化した水浸透部2を設置して一体化した構造によって、雨水排水処理施設を構成している。さらに、その透水性U字形排水溝8の上流側に、周囲の地面から適宜の手段によって雨水を流入させる流入桝1を設置し、この流入桝1の上部とU字形排水溝8の始端の底部とを勾配を有する流入管6によって配管し、流入桝1の上澄み水をU字形排水溝8の始端の底部に流入させる。前段の排水処理施設と後段の排水処理施設との間には、前述した管理桝を兼ねる前述のリフト桝3が設置されている。なお図1において図示してないが、最終段の排水処理施設の終末にも前述したようなリフト桝3が設置される。ただ、このリフト桝3には、移流管12は配管されていない。
【0023】
ここで、流入桝1とU字形排水溝8の始端底部とを接続する移流管6の流入桝1側の流出部は、水浸透部2の最上部より上に位置する。また、U字形排水溝8とリフト桝3とを接続する移送管11は、U字形排水溝8の終末底部の高さでリフト桝3に接続している。さらに、リフト桝3から次のU字形排水溝8への移流管12のU字形排水溝8からの流出端とU字形排水溝8への流入端は、それぞr流入桝1の移流管12の高さと同等とする。
【0024】
このような雨水排水処理システムの機能として重要なのは、第一に汚濁物を汚濁物の比重差によって分類する、ということである。
汚濁物を含んだ雨水排水は、流入桝1から流入桝1とU字形排水溝8を接続した流入管6によってU字形排水溝8の始端の底部に導水され、U字形排水溝8の末端に設置されたリフト桝3のリフト機能により、汚濁物を含んだ雨水排水がU字形排水溝8と水浸透部2との全体が水で満たされる。
【0025】
U字形排水溝8と水浸透部2とに水が満たされる過程において、水浸透部2の保水ボール8の1部の空隙を除き、U字形排水溝8とその上部に設置された水浸透部2に3段に積み重ねた中空体の保水ボール8内に順次水が取り込まれる。これによって、水に含まれる汚濁物は、その比重の重い順にU字形排水溝8から最上段の保水ボール8にわたって4段階に分離される。この様に雨水排水の導水或いはいは排水機能を装置下部に位置させ、さらにリフト機能を有するリフト桝3を使用することによって、雨水排水に含まれる汚濁物を雨水排水によってリフトさせ、汚濁物を汚濁物の比重によって上下に分離させることが出来る。
【0026】
この雨水排水処理システムの第二の機能は、前記のようにして比重による上下に分離した汚濁物を、その沈降速度の違いによって順次沈降させ、土壌毛管及び水浸透部2の汚濁物負荷を低減することである。
前記汚濁物の分離機能によって上下に分離された汚濁物は、汚濁物の比重差によって沈降速度が異なる。ここで最も下のU字形排水溝8を汚濁物分離槽の第4槽とし、3段に積んだその上の保水ボール8を下部から第3槽、第2槽、第1槽とする。第4槽から第1槽まで比重の重い順に4段階に分離された汚濁物は、比重の重い順に沈降速度が速いため、第4槽であるU字形排水溝8においては、小砂利や砂、或いは土粒子等の比重が比較的大きな粒子物が沈降し、底に溜まる。その結果、U字形排水溝8に浮遊する残りの汚濁物は、第3槽であるすぐ上の保水ボール8の汚濁物と同等の比重となる。
【0027】
この第3槽である最下段の保水ボール8の内部は、その底の通孔21を介して第4槽であるU字形排水溝8に連じていることから、第4槽であるU字形排水溝8に浮遊している残の汚濁物と第3槽である最下段の保水ボール8の内部の汚濁物とは同時に沈降し、順次前記通孔21からその下の第4槽であるU字形排水溝8に排出される。その結果、第3槽である最下段の保水ボール8の内部で浮遊する残の汚濁物は、第2槽である中間の保水ボール8の内部の汚濁物と同等の比重となる。
【0028】
そして、第3槽である最下段の保水ボール8は、その上の通孔21と第2槽である中間の保水ボール8の下の通孔21とを介して連じていることから、今度は第3槽である最下段の保水ボール8の内部で浮遊する残りの汚濁物と第2槽である中間の保水ボール8の内部で浮遊する残りの汚濁物は同時に沈降し、第2槽である中間の保水ボール8の内部の汚濁物は、順次前記通孔21、21からその下の第3槽である最下段の保水ボール8に排出される。その結果、第2槽である中間の保水ボール8の内部で浮遊する残の汚濁物は、第1槽である最上段の保水ボール8の内部の汚濁物と同等の比重となる。
【0029】
そして、第2槽である中間の保水ボール8は、その上の通孔21と第1槽である最上段の保水ボール8の下の通孔21とを介して連じていることから、今度は第2槽である中間の保水ボール8の内部で浮遊する残りの汚濁物と第1槽である最上段の保水ボール8の内部で浮遊する残りの汚濁物は同時に沈降し、第1槽である最上段の保水ボール8の内部の汚濁物は、順次前記通孔21、21からその下の第2槽である中間の保水ボール8に排出される。
【0030】
前記リフト桝3のリフト機能により、第4槽から第1槽に取り込まれている雨水排水は、それらの全容積の約80%となる。このことから、雨水排水に含まれる汚濁物も約80%除去できる為に、周囲の土壌に対する汚濁物負荷及び保水ボール8を含む水浸透部2に対する汚濁物負荷が約80%低減出来る。また、水浸透部2内の保水ボール8の間の空隙の汚濁物もバッフル16用のグレーチング或いは、スノコの間から第4槽底部に沈降する事から、水浸透部2の汚濁物の負荷がさらに低減される。
【0031】
この雨水排水処理システムの第三の機能は、汚泥や土粒子等の汚濁物を自動的に排出する維持管理機能である。
流入桝1とU字形排水溝8の始端底部との接続は、30゜〜45゜程度の勾配をつけた流入管6で接続配管してる。前記の汚濁物の分離機能により、U字形排水溝8の底部には次第に汚濁物が沈降し、堆積する。しかし、次に降雨があった時、流入桝1から30゜〜45゜の勾配を設けた流入管6によりU字形排水溝8の始端の底部に雨水を流入させることによって、雨水排水は急激に流速を増してU字形排水溝8に流入し、U字形排水溝8の底部に堆積したの汚濁物をそのU字形排水溝8の端末に設置された桝に押し流し、そこに貯める。これにより、U字形排水溝8の底部を洗浄する自浄作用が働き、管理桝に貯留した汚濁物は汚泥バキューム車等で処理する事が出来る。また、降雨量や降雨状況によって、U字形排水溝8に汚濁物が大量に流入し雨水排水の処理機能に支障が起きると判断した場合は、U字形排水溝8内を高圧洗浄等で洗浄し、或いは洗浄しながら管理桝から汚濁物を排出し初期の機能を持続させることもできる。
【0032】
この雨水排水処理システムの第四の機能は、U字形排水溝8の上面開口部に被せたバッフル材16による水浸透部2に対する流速による衝撃を和らげる機能である。すなわち、前述のように、U字形排水溝8の雨水排水の流速を連めたことから、水浸透部2に対する流速による衝撃を和らげる必要がある。図4と図5により前述したようなバッフル材16では、U字形排水溝8の幅方向に架設された流横板22が、下流に向かって斜め45゜程度の勾配で低くなるよう斜めに設けられているので、U字形排水溝8内を流れる雨水排水は、U字形排水溝8の上部で流速が弱められる。これにより、U字形排水溝8内を流れる雨水排水の衝撃によって雨水排水及び雨水排水中に含まれる汚濁物を巻上げて、汚濁物の比重差による分離を妨げる作用を防止することができる。
【0033】
前記バッフル材16は、雨水排水の流水方向に対し直交する方向に細かい間隔をおいて架設された横板22が斜め45゜の勾配に設定されている事から、リフト桝3の機能によって雨水排水及び雨水排水中に含まれる汚濁物が水浸透部2に上昇する過程にいいて、流水方向とは逆の45度に上昇する事によってさらに水浸透部2に対する衝撃は和らぎ、適性な比重差による汚濁物の分離が可能となる。
【0034】
U字形排水溝の従来の設計或いは仕様は、駐車場や道路等、不透水状況を対象に表面排水を集水して流末を河川の支流及び本流に接続し放流処理する地上開放型或いは開放可能な仕様によって設計されている。
これに対して、前述のような雨水排水処理システムでは、透水性のU字形排水溝8を地下に埋設して排水機能を求め、またその上に空洞化した保水ボール8を積み重ねて充填した水浸透部2を設置し、その排水機能を応用して汚濁物の除去と排水を行うものである。さらに、地下に埋設したU字形排水溝9の上部の水浸透部2に雨水排水を貯留しながら、雨水排水を徐々に地中に浸透させる排水と浸透の機能が同時に作用する併用工法が実現出来る。
【0035】
図1により前述したように、流入桝1とU字形排水溝8の始端底部とを接続する移流管6の流入桝1側の流出部及びリフト桝3とU字形排水溝8の始端底部とを接続する移流管11のリフト桝3側の流出部の高さは、水浸透部2の最上部より上に位置する。また、U字形排水溝8とリフト桝3とを接続する移送管11は、U字形排水溝8の終末底部の高さでリフト桝3に接続している。
【0036】
このような移流管6、11と移送管11の高さの関係によって、排水処理施設の各区間は、排水勾配を重視した水準高でなく変則的な排水処理装置の設置高の設計及び施工が可能となり、障害物及び設置場所の状況に応じて自在に対応出来る。
【0037】
図9にその例を示す。この例では、中間の2つのリフト桝3、3を利用し、その間に駐車場等の表面排水を集水するためのU字形排水溝23を設けている。前段のリフト桝3からU字形排水溝23への流出高さとU字形排水溝23から後段のリフト桝3への流入高さを何れもその前後の雨水排水処理施設の水浸透部2の最上部より高くし、且つU字形排水溝23に前段のリフト桝3から後段のリフト膜3へ雨水が流れるように若干の勾配を設ける。このような構造により、地中にある障害物を避ける等して複数の雨水排水処理施設を連結することが可能となる。
【0038】
このように排水処理施設にリフト桝3を組み合わせることにより、排水処理施設を連続して設置する場合、駐車場等の表面排水を集水するためのU字形排水溝23と排水処理施設とを交互に設置し、接続することが可能である。また、道路の場合も同様であることから、その場所に降った雨水は、その場所での処理が可能となる。これにより、支流、本流の河川に対する流入負荷は限りなく低減され、河川流末地域の水災害防止及び低減或いは浸透による地下水の涵養等及び河川の低水流保全に効果的な工法となる。
【0039】
前記のような雨水排水処理システムはまた、住宅等の屋根やコンクリート床によって不透水化した雨水を敷地内で浸透処理する事を日的とする雨水浸透桝としても利用できる。例えば図10に示すように、前述の保水ボール8を積み上げて収納した水浸透部2のユニットと同様の籠17の長方形及び正方形の中心部に、角形又は円形の短管を立設し、基本桝25とする。この基本桝25の上端開口部からその基本桝25より小径の円形の短管を差し込み、これを導水筒26とする。この導水筒26の下端中間部を、基本桝25の上端に被せた支持プレート30により保持する。また、導水筒26の上端には蓋をすると共に、その上端近くの周面に受け口孔が開孔され、ここに家屋の雨樋に通じた縦樋31や地面に敷設した雨水配水管(図示せず)等を接続する。導水筒26の基本桝への差し込み深さやその受け口孔の方向は縦樋31や雨水排水水管等の方向に合わせて自在に対応できる。
【0040】
この様に、基本桝25と導水筒26を一体化して雨水導入桝とする。導入桝の左右側面及び周囲には、前述のようなブロックした保水ボール9を充填した水浸透部2を設け、基本桝25、導水筒26及びと水浸透部2をユニット化する。
前述のようなU学形排水溝8を使用し、浸透桝の下部を形成する。例えば、図10に示すように、端壁を有するU字形排水溝8を2つ継ぎ合わせ、四方に壁を有する透水桝を構成する。その上部に図12に示すようなスノコ状のバッフル23を嵌め込み、この上に前記の基本桝25、導水筒26及びと水浸透部2をユニット化したものを載せる。なお、バッフル23の中心、つまり前記導入筒26と上下に対応する部分に、通孔27が設けられている。これにより、図10及び図11に示すよう構造を有する雨水浸透桝となる。
【0041】
この雨水浸透桝においては、雨水排水が水浸透部2より高い位置から導入されることから、前記のリフト桝2を使用した雨水排水処理システムと同様に、雨水や汚濁物は、バッフル23でU字形排水溝8から撒き上がるのを防止しながらリフトされる。これにより、前記のリフト桝2を使用した雨水排水処理システムと同様の機能が得られる。また、水浸透部2の籠17の低部の網18とバッフル23の中央部を共に円形または角形に切断して、U字計排水溝8を高圧洗浄機等による洗浄可能とすることにより、U字形排水溝8に貯留堆積した汚濁物を排出して維持管理する機能も有する。このことから、初期の機能を持続出来る雨水浸透桝となる。
【0042】
さらに、前述のような透水性U字形排水溝8の透水性を高め、汚濁物等によって生ずる透水性U字形排水溝8の壁部の目詰まりを防止するために、植物性有機物を5mm〜10mm程度の角形或いは球形に固形化したものを、透水性U字形排水溝を構成する骨材に混入して製造するとよい。植物性有機物の固形物の混合比は一般には20%程度とするが、U字形排水溝8の規格、寸法等によって異なり、それらの強度、耐久性を十分考慮した混合比とする。
【0043】
透水性U字形排水溝8の骨材に混合、混入された有機固形物は、透水性U字形排水溝8の透水壁内及び網状の透水経路、いわゆる透水網に点在するが、次第に水によって溶解され、或いは微生物によって分解され、水と共に土壌中に排出される。このため、有機固形物が存在していた部分には球形や角形の空間が残され、その空間は複雑に張り巡らされた透水網の核となる。この透水網の核は透水網によって連絡され、U字形排水溝8の浸透及び透水壁内透水網は結合される。
【0044】
雨水排水及び雨水排水に含まれる汚濁物は、透水性U字形排水溝8の透水網の浸透係数より浸透土壌の浸透係数が大きい或いは同等であれば浸透土壌の毛管に対する汚濁物の負荷はない。また、透水性U字形排水溝8の透水網に対する汚濁物の負荷もないことから、土壌毛管と透水綱が目詰まりする可能性は低い。逆に浸透土壌の浸透係数が透水性U字形排水溝8の浸透係数より低い場合は、浸透土壌の浸透速度がU字形排水溝8の透水網より遅いことから水浸透部2及びU字形排水溝8内の雨水排水の水圧によって、雨水排水及び汚濁物が浸透網に押し込まれて土壌毛管や透水網を塞ぎ機能が低下する。
【0045】
U字形排水溝8の浸透壁に透水網の核として前記のような空間が点在し、透水網によってそれれらの核が連絡されている構造によって、透水網に入った汚濁物は、透水網の核に流入し、さらに透水網によって下部の核に沈降する。水の浸透速度の遅い透水土壌の外圧は高いため、浸透速度が速く、しかも核が点在する透水綱を通して汚濁物がU字形排水溝8の内側に押し出される。以上の様な機能構造によって目詰りのしにくい初期の浸透機能を持続出来る透水性U字形排水溝となる。
【0046】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明による雨水排水処理システムでは、U字形排水溝8とその上の水浸透部2の保水ボール8により、流入する雨水に含まれる汚濁物の分離機能とその排出機能に優れ、浸透土壌に対する汚濁物の負荷の低減を大幅に図ることができる。さらに、管理桝等にたまった汚濁物を定期的に排出するのが容易であり、管理の容易な雨水排水処理システムとすることができる。これにより、手数をかけずに、所期の機能を永い間維持することができる雨水排水処理システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による雨水排水処理システムの概要を示す縦断側面図である。
【図2】同実施形態による雨水排水処理システムのU字形排水溝とその上の水浸透部を拡大して示した要部縦断側面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】同実施形態による雨水排水処理システムのU字形排水溝とその上部開口部に嵌め込まれるバッフル材の例を示す分解斜視図である。
【図5】図4に示すバッフル材の一部を拡大して示した要部拡大分解斜視図である。
【図6】同実施形態による雨水排水処理システムの水浸透部に積み重ねられる保水ボールの例を示す斜視図である。
【図7】同実施形態による雨水排水処理システムの水浸透部に充填される保水ボールを積み重ねた状態を示す斜視図である。
【図8】図8で示すような積み重ねた保水ボールを充填する籠を作るための網材を示す分解斜視図である。
【図9】前記実施形態による雨水排水処理システムのレイアウトの変形例を示す縦断側面図である。
【図10】本発明の他の実施形態による雨水排水処理システムの概要を示す縦断側面図である。
【図11】同実施形態による雨水排水処理システムの概要を示す縦断正面図である。
【図12】同実施形態による雨水排水処理システムU字形排水溝の上部開口部に嵌め込まれるバッフル材の例を示す平面図である。
【符号の説明】
1 流入桝
2 水浸透部
3 リフト桝
8 U字形排水溝
9 保水ボール
10 保水ボールの通孔
21 保水ボールの通孔
26 導水筒
Claims (5)
- 雨水を地中に排水する雨水排水処理システムにおいて、中空楕円ボールの長軸の方向に対向して円形の通孔(21)を開設し、この長軸と直交し、且つ互いに直交する2本の短軸の方向に対向して前記長軸と平行な方向に長い通孔(20)を開設した保水ボール(9)を、前記一対の通孔(20)が上下を、他の二対の通孔(20)、(21)がほぼ水平を向くよう積み重ねた状態で地下に埋設された水浸透部(2)と、この水浸透部(2)の下に配置され、上方に向けて開口したU字形排水溝(8)と、このU字形排水溝(8)に地上から雨水を導く導水手段とを有することを特徴とする雨水排水処理システム。
- U字形排水溝(8)は透水性U字溝であることを特徴とする請求項1に記載の雨水排水処理システム。
- 保水ボール(9)はその一つの短軸方向に対向して開設された一対の通孔(20)がそれぞれ上下を向くように積み重ねられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の雨水排水処理システム。
- 導水手段は、U字形排水溝(8)の前段に配置され、U字形排水溝(8)の一端に雨水を供給し、これをU字形排水溝(8)と水浸透部(2)の全体に満たす桝(1)、(3)であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の雨水排水処理システム。
- 導水手段は、家屋の雨樋や地表からU字形排水溝(8)に雨水を供給し、これをU字形排水溝(8)と水浸透部(2)の全体に満たす導水筒(26)であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の雨水排水処理システム。
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