JP4451951B2 - 高強度ばね用鋼材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱間または冷間でコイリングされ、高強度かつ高靱性を有するばね用鋼材、特にばね用鋼線に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の軽量化、高性能化に伴い、ばねも高強度化され、熱処理後に引張強度1470MPa(150kgf/mm2)を超えるような高強度鋼がばねに供されている。近年では引張強度1960MPa(200kgf/mm2)を超える鋼も使用されている。その手法としては特開昭57−32353号公報ではV、Nb、Mo等の元素を添加することで焼入れで固溶し、焼き戻しで析出する微細炭化物を生成させ、それによって転位の動きを制限し、耐へたり特性を向上させるとしている。
【0003】
しかしばね用材料としてはばねの過酷な使用環境に耐えうる破壊特性が重要である。特に腐食などにより水素が侵入すると、通常の大気環境よりもはるかに低い負荷で破断に至ることが知られている。この特性は大気強度が高いほど顕著で、実ばねの高強度化のためには、それに供するばね鋼の大気強度の高強度化だけでなく、水素の侵入する環境での強度向上が不可欠である。これに対して従来はたとえば特開平9−125197号公報のように、腐食そのものを抑制することを目的としたCu添加およびS低減、P低減などの粒界不純物の低減などが考えられてきた。しかしこれらの対策は一般論として知られた手法であり、ばねのような高強度材の水素侵入による破壊特性の低下を抑制するのに十分でなく、根本的な対策を必要とした。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は熱間または冷間でコイリングされ、十分な大気強度と水素の侵入する環境における耐破壊特性を両立できるばね用鋼材、特にばね用鋼線を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
発明者らは従来のばね鋼では見られなかった粒界の析出物の粒界における占有率を制限することによって旧オーステナイト粒界の粒界強度を強化することで水素侵入時の耐水素破壊特性を向上させた鋼材を開発するに至った。
【0006】
すなわち本発明は次に示す鋼材を要旨とする。
【0007】
(1) 質量%において、
C:0.35〜0.85%、
Si:0.9〜2.5%、
Mn:0.1〜1.2%、
Cr:0.1〜2.0%、
N:0.001〜0.007%
を含み、PおよびSを、
P<0.02、
S<0.02
に制限して残部がFeと不可避的不純物からなり、引張強度が1800MPa以上であり、旧オーステナイト粒界中の析出物の粒界占有面積率が70%以下であることを特長とする高強度ばね用鋼材。
【0008】
(2) 質量%において、
C:0.35〜0.85%、
Si:0.9〜2.5%、
Mn:0.1〜1.2%、
Cr:0.1〜2.0%
に加え、
Ti:0.005〜0.07%、
V:0.05〜0.5%、
Nb:0.01〜0.1%
の内の1種または2種以上、および、
N:0.001〜0.007%
を含み、PおよびSを、
P<0.02、
S<0.02
に制限して残部がFeと不可避的不純物からなり、引張強度が1800MPa以上であり、旧オーステナイト粒界中の析出物の粒界占有面積率が70%以下であることを特長とする高強度ばね用鋼材。
【0009】
(3) 質量%において、
C:0.35〜0.85%、
Si:0.9〜2.5%、
Mn:0.1〜1.2%、
Cr:0.1〜2.0%
に加え、
Ti:0.005〜0.07%、
V:0.05〜0.5%、
Nb:0.01〜0.1%
の内の1種または2種以上、および、
B:0.0005〜0.006%、
N:0.001〜0.007%
を含み、PおよびSを、
P<0.02、
S<0.02
に制限して残部がFeと不可避的不純物からなり、引張強度が1800MPa以上であり、旧オーステナイト粒界中の析出物の粒界占有面積率が70%以下であることを特長とする高強度ばね用鋼材。
【0010】
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかに規定した化学成分に、さらに、
Mo:0.05〜1.0%
を含み、残部がFeと不可避的不純物からなり、引張強度が1800MPa以上であり、旧オーステナイト粒界中の析出物の粒界占有面積率が70%以下であることを特長とする高強度ばね用鋼材。
【0011】
(5) 上記(1)〜(4)のいずれかに規定した化学成分に、さらに、
Cu:0.05〜0.5%、
Ni:0.05〜1.0%
の1種または2種を含み、Cu>0.3%の場合にはCuおよびNiの含有率を質量%で[Cu%]<[Ni%]とし、
残部がFeと不可避的不純物からなり、引張強度が1800MPa以上であり、旧オーステナイト粒界中の析出物の粒界占有面積率が70%以下であることを特長とする高強度ばね用鋼材。
【0012】
【発明の実施の形態】
発明者は多くの従来の技術に見られるように多量に合金成分を投入することを避けつつ、焼入れ焼戻し後に高強度かつ水素環境下での破壊特性の優れる鋼材、特に鋼線を発明するに至った。
【0013】
その詳細を以下に示す。
【0014】
まず、本発明で鋼成分を限定した理由を説明する。
【0015】
Cは鋼材の基本強度に大きな影響を及ぼす元素であり、十分な強度を得るために0.35〜0.85%とした。0.35%以下では十分な強度を得られず、他の合金元素をさらに多量に投入せざるを得ず、0.85%以上では過共析に近くなり、靱性を著しく低下させる。
【0016】
Siはばねの強度、硬度と耐へたり性を確保するために必要な元素であり、少ない場合、必要な強度、耐へたり性が不足するため、0.9%を下限とした。またSiは粒界の炭化物系析出物を球状化、微細化する効果があり、積極的に添加することで粒界析出物の粒界占有面積率を小さくする効果がある。しかし多量に添加しすぎると、材料を硬化させるだけでなく、脆化する。そこで焼入れ焼戻し後の脆化を防ぐために2.5%を上限とした。
【0017】
Mnは硬度を十分に得るため、また鋼中に存在するSをMnSとして固定し、強度低下を抑制するために0.1%を下限とする。またMnによる脆化を防止するために上限を1.2%とした。
【0018】
Crは耐熱性、焼入れ性を向上させるために有効な元素であるが、添加量が多いとコスト増を招くだけでなく、脆化するために伸線時に割れを生じやすくする。そこで焼入れ性の確保のために0.1%を下限とし、脆化が顕著となる2.0%を上限とした。
【0019】
Ti、VおよびNbのこれらの元素が鋼中で窒化物、炭化物、炭窒化物として析出する。したがってこれらの元素を1種または2種以上を添加すれば、オーステナイト粒微細化効果があり、安定して靱性を高めることができる。さらにVまたはNbの析出物には腐食環境下で侵入してきた水素をトラップする効果があり、耐水素遅れ破壊特性も向上する。しかしTi、VおよびNbは添加量が多すぎると、それらの析出物が大きくなりすぎ、オーステナイト粒微細化効果を失うとともに、破壊特性に悪影響を及ぼす。
【0020】
さらにこれら元素は焼戻し軟化抵抗を高めるため、強度を制御するために焼戻しを行う場合、その温度を高めることができる。焼戻し温度を高温化すれば粒界炭化物の形状を球状化するので、析出物の粒界占有面積率が低下し、水素環境下での破壊特性を高めることができる。
【0021】
Tiについては窒化物の析出温度は高く、溶鋼中で既に析出している。またその結合力は強いので、鋼中のNを固定する場合にも用いる。Bを添加する場合にはBをBNとさせないためにも、Nを十分に固定できるだけ添加する必要がある。
【0022】
そこでTiはNを固定し、オーステナイト粒径が微細化できる最低限の必要添加量0.005%を下限とし、析出物寸法が破壊特性に悪影響を及ぼさない最大量0.07%を上限とした。またVについては0.05%以下では添加した効果がほとんど認められず、0.5%以上では粗大な未固溶介在物を生成し、靱性を低下させる。Nbも同様に0.01%以下では効果がほとんど認められず、0.1%以上では粗大な未固溶介在物を生成し、靱性を低下させる。
【0023】
Bは焼入れ性向上元素として知られている。さらにオーステナイト粒界の清浄化に効果がある。すなわち、粒界に偏析して靱性を低下させるP、S等の元素をBを添加することで無害化し、破壊特性を向上させる。その際、BがNと結合してBNを生成するとその効果は失われる。添加量はその効果が明確になる0.0005%を下限とし、効果が飽和する0.006%を上限とした。
【0024】
NはTiを添加する鋼ではその大部分がTiNを生成する。生成したTiNはその後のオーステナイト化温度においても固溶しない。そのため、炭窒化物の生成が容易になり、オーステナイト粒微細化のピン止め粒子となるTi系析出物の析出サイトになりやすい。そのためばね製造までに施される様々な熱処理条件で安定的にピン止め粒子を生成することができる。このような目的から0.001%以上のNを添加させる。また粗大なTiNを析出し、破壊特性を損なわない0.007%を上限とする。
【0025】
Pは鋼を硬化させるが、さらに偏析を生じ、材料を脆化させる。特にオーステナイト粒界に偏析したPは衝撃値の低下や水素の侵入により遅れ破壊などを引き起こす。そのため少ない方がよい。そこで脆化傾向が顕著となるP<0.02%と制限した。
【0026】
SもPと同様に鋼中に存在すると鋼を脆化させる。Mnによって極力その影響を小さくするが、MnSも介在物の形態をとるため、破壊特性は低下する。特にMnSから腐食を発生することが多く、水素発生源の腐食を誘起しやすいため、Sも極力少なくすることが望ましい。その悪影響が顕著となる0.02%を上限とした。
【0027】
Mo:0.05〜1.0%を添加することで焼入れ性を向上させるとともに、焼戻し軟化抵抗を与えることができる。すなわち強度を制御する際の焼戻し温度を高温化させることができる。この点は粒界炭化物の粒界占有面積率を低下させるのに有利である。すなわちフィルム状に析出する粒界炭化物を高温で焼戻すことで球状化させ、粒界面積率を低減することに効果がある。その添加量は0.05%以下では効果が認められず、1.0%以上では効果が飽和する。
【0028】
Niは焼入れ性を向上させ、熱処理によって安定して高強度化することができる。また耐食性を向上させる効果もあり、水素発生源である錆の発生を抑制し、腐食環境下での破壊特性を向上させる。その添加量は0.05%以下では効果が認められず、1.0%以上では効果が飽和する。
【0029】
Cuについては、Cuを添加することで脱炭を防止できる。脱炭層はばね加工後に疲労寿命を低下させるため、極力少なくする努力が成されている。また脱炭層が深くなった場合にはピーリングとよばれる皮むき加工によって表層を除去する。またNiと同様に耐食性を向上させる効果もある。
【0030】
したがって、脱炭層を抑制することでばねの疲労寿命向上やピーリング工程の省略することができる。Cuの脱炭抑制効果や耐食性向上効果は0.05%以上で発揮することができ、後述するようにNiを添加したとしても0.5%を超えると脆化により圧延きずの原因となりやすい。そこで下限を0.05%、上限を0.5%とした。Cu添加によって室温における機械的性質を損なうことはほとんどないが、Cuを0.3%を超えて添加する場合には熱間延性を劣化させるために圧延時にビレット表面に割れを生じる場合がある。そのため圧延時の割れを防止するNi添加量をCuの添加量に応じて[Cu%]<[Ni%]とすることが重要である。Cu:0.3%以下の範囲では圧延きずが生じないことから、圧延きず防止を目的としてNi添加量を規制する必要がない。
【0031】
次に粒界の析出物の粒界占有面積率に関して説明する。水素が侵入した場合、粒界強度が低下し、その破面に粒界破面が認められるようになる。腐食環境では化学反応によって生じた水素の一部が鋼中に侵入することで鋼を脆化させ、破壊に至るとされている。そのため粒界強度の強化が必須であるが、通常のばね鋼において、ばねに要求される高強度を達成するためには焼入れ焼戻し処理が施される。その際、オーステナイト化して焼き入れた場合、焼戻し過程で旧オーステナイト粒界に炭化物を主体とする析出物が析出する。この旧オーステナイト粒界の炭化物の形状を制御することが水素環境下における破壊を抑制するのに重要であることを見出した。そのため、鋼の成分を調整し、粒界に生じる析出物を微細化させるように粒界を清浄化し、さらに積極的に粒界の析出物を球状化するMo、Si等の元素を添加したり、析出物の成長を抑制する熱処理方法を選択することで粒界の析出物の粒界占有面積率を70%以下、好ましくは60%以下に小さくしたものである。なお、粒界占有面積率の下限は、特に限定するものではないが20%程度が製造上現実的である。
【0032】
また、鋼材の引張強度は、本発明の鋼成分の範囲内に調整し、焼入れ焼戻し処理を施すことにより1800MPa以上のばねに要求される高強度を達成でき、かつ、析出物の粒界占有面積率を70%以下に制御することにより引張強度1800MPa以上の高強度においても十分な遅れ破壊特性を有するばね用鋼材とすることができる。
【0033】
さらに、本発明の高強度ばね用鋼材(棒鋼・線材)は、線材製造のオンラインで熱処理して製造することが好ましいが、オンラインに限らずオフラインで熱処理して製造することもできる。
【0034】
【実施例】
表1に本発明と比較鋼の化学成分、熱処理条件、炭化物の粒界占有面積率、引張強度および遅れ破壊強度、ばねにおける遅れ破壊試験結果を示す。表2に実験条件の詳細を示す。
【0035】
本発明の実施例1〜13、22、23は250t転炉によって精錬したものを連続鋳造によってビレットを作成した。またその他の実施例は2t−真空溶解炉で溶製後、圧延によってビレットを作成した。その後いずれの場合もビレットからφ12mmに圧延した。圧延条件は表2に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
熱処理はバッチ炉処理、高周波熱処理、オイルテンパー処理および圧延ライン後端の水槽を利用したオンライン熱処理に分かれ、実施例2、4、8、11、14〜25はバッチ炉処理、実施例1、7、12は高周波熱処理、実施例3、6、13はオイルテンパー処理、実施例9、10は圧延ライン後端に設置した水槽に投入することによってオンライン急冷、その後、焼鈍炉によって焼戻したオンライン熱処理である。
【0039】
バッチ炉処理では1mの試験片を矯直後、加熱炉に投入して加熱し、60℃のオイル槽に投入して焼き入れた。加熱時間は30minで、熱間コイリングして製造する熱間ばねの温度履歴と対応するようにした。その後、再度加熱炉に投入して焼戻し、大気雰囲気における引張強度を調整した。焼入れおよび焼戻し時の加熱温度およびその結果得られた大気雰囲気での引張強度は表1中に明記したとおりである。
【0040】
オイルテンパー処理では加熱炉にφ12に圧延した鋼を連続的に加熱炉を通過させ、鋼内部温度が十分に加熱されるよう、加熱炉通過時間を設定した。本実施例ではでは500secで加熱炉を通過し即在に50℃のオイル槽に連続的に投入された。さらに焼戻し温度に調整されたPb層に投入したパテンティング処理を行い、強度を調整した。本実施例ではPb槽内を200secで通過させた。焼入れおよび焼戻し時の加熱温度およびその結果得られた大気雰囲気での引張強度は表1中に明記したとおりである。
【0041】
高周波熱処理では図1(a)に示すような350mm長に配置され、30kHz、250Aの条件で高周波加熱するコイル(35巻)1内部に線材2を通線することで加熱し、コイル通過後即座に水冷3して焼入れ処理を行った。さらに図1(b)に示すように、再度250mm長に配置され、10kHz、200Aの条件で高周波加熱する焼戻し処理を行った。その際の加熱温度、およびその結果得られた大気雰囲気での引張強度は表1中に明記したとおりである。加熱温度は加熱コイル通過直後に計測された温度で、条件設定は加熱温度によって行った。
【0042】
オンライン処理では温度は1200℃まで加熱、抽出し圧延全域にわたって900〜1000℃となるように調整し、オンラインで圧延機後端の水冷槽に投入して急冷したのち巻き取り、即座に焼戻し用焼鈍炉に投入した。表1の焼入れ温度は水冷槽投入直前の温度、焼戻し温度は焼鈍炉の設定温度である。その結果得られた大気雰囲気での引張強度は表1中に明記したとおりである。
【0043】
図2に遅れ破壊強度評価試験方法を示す。図2(a)は試験片5の形状を示し、図2(b)は試験方法を示す図である。図2(b)に示すように、装置はノッチ付き試験片5をpH3.0の硫酸浴の容器内にセットし、定電流電源7から電流密度10mA/cm2の電流を通電し、試験片5をカソードとし、Pt電極8をアノードとして硫酸を電気分解すると、水素が発生する。試験片5に容器内でこの水素をチャージをしながら荷重6を負荷し、その際の破断時間を計測できるように構成されている。なお、バンドヒーター9により浴温を30℃に保持できるようになっている。そのような試験において負荷荷重を変化させた場合、200hr経過後も破断しない最大荷重Wが計測できる。それをノッチ底断面積Sで除した公称応力(すなわちW/S)を遅れ破壊強度とした。
【0044】
粒界上の析出物の粒界占有面積率の測定を以下の手順で行った。(1)粒界破面を有する破面を現出せしめる。(2)電解により破面を腐食(エッチング)、(3)粒界破壊部を電子顕微鏡によって写真撮影、(4)画像処理装置によって析出物を二値化して粒界破面における面積率を測定する。この操作を粒界破面10個において実施し、析出物の粒界占有面積率を算出した。
【0045】
ここで電解腐食が重要であるが、オーバーエッチングになると粒界破面の判別がつかなくなり、粒界占有面積率を測定できなくなる可能性がある。本実施例の場合、その条件は通常観察の1/10程度を目安とした。すなわち電解液として10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノールを用い、電解電位−100mVSCEとして電解量は0.13〜0.15クーロン/cm2と設定した。
【0046】
エッチング後の粒界破面観察には高分解能走査型電子顕微鏡(日立製作所製S4100)を用い、加速電圧15kVで観察した。占有率の計測には10000倍の倍率で撮影した写真を用いた。その観察例を図3(a)〜(c)に示す。電解腐食ではFe部が腐食されるため、(a)では羽毛のように析出物が粒界のほぼ全面を覆っているのが観察された。(b)では板状、針状の析出物が認められ粒界全域に分布している。(c)では析出物は粒状で粒界占有面積率が極端に小さい。これらの写真を10000倍で撮影し、粒界あたり30μm2以上、10個の粒界について面積率を算出した。
【0047】
この析出物の粒界占有面積率と遅れ破壊強度の関係を図4に示す。一般的に大気強度が高いほど遅れ破壊強度は低い傾向にあるため、図4では大気強度が約1900MPaの実施例5〜25を示した。粒界占有面積率が70%を境に遅れ破壊強度が大きく変化していることがわかる。
【0048】
これらの実施例についてばねを製作し、1%硫酸水溶液中にせん断応力1200MPaを負荷して保持し、200hr後の折損の有無を確認した。バッチ炉処理材は熱間コイリングによって成形され、オイルテンパー処理、高周波熱処理およびオンライン処理材は冷間コイリングにより成形された。それぞれコイリング後にφ0.5mm硬球を50m/sで投射しするショットピーニングを行ったのち、セッチングした。塗装は施さなかった。それによると粒界占有面積率の小さな発明例は折損しなかった。
【0049】
【発明の効果】
本発明鋼は、ばね鋼を1800MPa以上に高強度化するとともに、鋼成分または熱処理を調整することによって旧オーステナイト粒界に生成する析出物の粒界占有面積率を小さくすることで、水素環境下における強度、いわゆる遅れ破壊強度を向上され、腐食環境下においても優れた破壊特性を発揮できる。よって本発明鋼を用いることで高強度かつ破壊特性に優れたばねを製造可能になる。
【0050】
さらに本発明鋼は強度の変化によって延性や衝撃値が損なわれることがないため、広い範囲の強度のばねに対応可能であり、様々な強度のばねを信頼性を損なうことなく容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】高周波による熱処理方法を示す図である。
【図2】遅れ破壊強度評価試験方法を示す図である。
【図3】粒界の析出物を観察した顕微鏡写真である。
【図4】析出物の粒界占有面積率と遅れ破壊強度の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 コイル(35巻)
2 線材
3 水冷
4 コイル(25巻)
5 試験片
6 荷重
7 定電流電源
8 Pt電極
9 バンドヒーター

Claims (5)

  1. 質量%において、
    C:0.35〜0.85%、
    Si:0.9〜2.5%、
    Mn:0.1〜1.2%、
    Cr:0.1〜2.0%、
    N:0.001〜0.007%
    を含み、PおよびSを、
    P<0.02、
    S<0.02
    に制限して残部がFeと不可避的不純物からなり、引張強度が1800MPa以上であり、旧オーステナイト粒界中の析出物の粒界占有面積率が70%以下であることを特徴とする高強度ばね用鋼材。
  2. 質量%において、
    C:0.35〜0.85%、
    Si:0.9〜2.5%、
    Mn:0.1〜1.2%、
    Cr:0.1〜2.0%
    に加え、
    Ti:0.005〜0.07%、
    V:0.05〜0.5%、
    Nb:0.01〜0.1%
    の内の1種または2種以上、および、
    N:0.001〜0.007%
    を含み、PおよびSを、
    P<0.02、
    S<0.02
    に制限して残部がFeと不可避的不純物からなり、引張強度が1800MPa以上であり、旧オーステナイト粒界中の析出物の粒界占有面積率が70%以下であることを特長とする高強度ばね用鋼材。
  3. 質量%において、
    C:0.35〜0.85%、
    Si:0.9〜2.5%、
    Mn:0.1〜1.2%、
    Cr:0.1〜2.0%
    に加え、
    Ti:0.005〜0.07%、
    V:0.05〜0.5%、
    Nb:0.01〜0.1%
    の内の1種または2種以上、および、
    B:0.0005〜0.006%、
    N:0.001〜0.007%
    を含み、PおよびSを、
    P<0.02、
    S<0.02
    に制限して残部がFeと不可避的不純物からなり、引張強度が1800MPa以上であり、旧オーステナイト粒界中の析出物の粒界占有面積率が70%以下であることを特長とする高強度ばね用鋼材。
  4. 請求項1〜3のいずれかに規定した化学成分に、さらに、
    Mo:0.05〜1.0%
    を含み、残部がFeと不可避的不純物からなり、引張強度が1800MPa以上であり、旧オーステナイト粒界中の析出物の粒界占有面積率が70%以下であることを特長とする高強度ばね用鋼材。
  5. 請求項1〜4のいずれかに規定した化学成分に、さらに、
    Cu:0.05〜0.5%、
    Ni:0.05〜1.0%
    の1種または2種を含み、Cu>0.3%の場合にはCuおよびNiの含有率を質量%で[Cu%]<[Ni%]とし、
    残部がFeと不可避的不純物からなり、引張強度が1800MPa以上であり、旧オーステナイト粒界中の析出物の粒界占有面積率が70%以下であることを特長とする高強度ばね用鋼材。
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