JP4450637B2 - リア・アンダーラン・プロテクタ - Google Patents

Description

本発明は、車両同士の衝突時に、一方の車両が他方の車両の下に潜り込むことを防止すべく、車両の後部に設けられるリア・アンダーラン・プロテクタに関する。

リア・アンダーラン・プロテクタは、トラック等の重量級車両の後部に設けられ、乗用車等の中軽量級車両との衝突（追突）時に、それら中軽量級車両が重量級車両の下に潜り込むことを防止し、大事故を回避するものである。

図５に示すように、リア・アンダーラン・プロテクタ１は、車両の後部に車幅方向に延出して設けられたＲＵＰ本体２を有する。ＲＵＰ本体２は、閉断面形状に成形されることが多い。かかるＲＵＰ本体２は、取付ブラケット４及びサポート５を介して車体フレーム６に取り付けられ、衝突荷重を支持して車両の潜り込みを防止する。

本発明者が開発中のリア・アンダーラン・プロテクタ１は、図５に示すように、ＲＵＰ本体２に断面コ字状のブラケット４を挟むようにして溶接し、そのブラケット４の背面部に上方から見てＬ字形に曲げられたサポート５をボルトナット等で固定し、そのサポート５を車体フレーム６に取り付けて構成される。

なお、リア・アンダーラン・プロテクタに関する先行技術文献は特に見い出せなかったが、フロント・アンダーラン・プロテクタに関する先行技術文献としては下記の特許文献１がある。

特表２００１−５１５４３２号公報

ところで、リア・アンダーラン・プロテクタ１は、衝突時の荷重を支持するため、所定の剛性が必要となる。よって、図５に示すように、車両衝突時の模擬の一形態として、車両の最外側より所定長さ（325mm 以下）内側に、所定の荷重（車重の12.5％等）Ｆを加える試験が行われる。

すると、図６に示すように、ＲＵＰ本体２が車両の前方に撓み、車幅方向内側への分力ｆ１が発生する。そのため、ＲＵＰ本体２とブラケット４との取付部７においては、車両前方への力ｆ２の他、車幅方向内側への力ｆ１と、取付部７を略中心とした回転（曲げモーメントＭ）とが働くことになる。

ここで、取付部７が剛体であれば、ＲＵＰ本体２は、図７(b)に示すように、片持梁にモデル化できる。しかし、上記ＲＵＰ本体２は、荷重Ｆをブラケット４とサポート５との取付部７で集中して受けるため、その取付部７に応力集中が生じ、図８に示すようにサポート５に折れが生じたり、図９に示すようにブラケット４に凹みが生じ易い。よって、取付部７を剛体とみなすことはできず、ＲＵＰ本体２は、図７(a)に示すように、回転可能な支点で支持された支持梁にモデル化される。

この図７(a)に示す支持梁タイプは、図７(b)に示す片持梁タイプと比べると、同じ荷重Ｆを受けた場合であっても、支持部分（取付部７）が回転するため、ＲＵＰ本体２の端部２ａの前方への移動量が大きくなり、耐荷重性能が低下する。また、ＲＵＰ本体２の撓みによって荷重Ｆの入力点が前方へ変位すると、その変位の増大に伴って分力ｆ１が更に増大するという悪循環が生じ、リア・アンダーラン・プロテクタ１としての耐荷重性能が著しく低下してしまう。このため、ＲＵＰ本体２が有する断面性能を効率よく発揮することができなかった。

この対策として、ブラケット４やサポート５の板厚を厚くすることが考えられるが、重量アップやコストアップを招く。

以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、ブラケットやサポートの板厚を厚くせずに、耐荷重性能を向上させることができるリア・アンダーラン・プロテクタを提供することにある。

上記目的を達成するために本発明は、車両の後部に配置され車幅方向に延出されたＲＵＰ本体に取付ブラケットを取り付け、該取付ブラケットにサポートを取り付け、該サポートを車体フレームに取り付けたリア・アンダーラン・プロテクタであって、上記サポートに、上記取付ブラケットに装着される本体取付部を略車幅方向に沿って成形すると共に、上記車体フレームに装着されるフレーム取付部を上記本体取付部に対して上方から見て略直角に成形し、それら本体取付部とフレーム取付部との間に、補強部材を掛け渡して設け、上記フレーム取付部を閉断面形状とし、上記ＲＵＰ本体は、上面部、下面部、正面部及び背面部から、中空の矩形断面に形成され、上記取付ブラケットは、ウェブ部とその上下に設けられた上下のフランジ部とから断面コ字状に形成され、その上下のフランジ部が上記ＲＵＰ本体の上面部と下面部とに取り付けられ、上記ウェブ部が上記ＲＵＰ本体の背面部から離間され、そのウェブ部に上記サポートの上記本体取付部が装着されたものである。

また、上記サポートは、上方から見て略コ字状に折り曲げられ上記本体取付部としての平板が一体成形された屈曲板部と、上記フレーム取付部を構成すべく上記屈曲板部の開口部を蓋して取り付けられた平板状の平板部とを有することが好ましい。

以上説明したように本発明に係るリア・アンダーラン・プロテクタによれば、耐荷重性能を、ブラケットやサポートの板厚を厚くすることなく、軽量・低コストで構造的に向上させることができるという優れた効果を発揮できる。

本発明の一実施形態を添付図面に基いて説明する。

図１に示すように、本実施形態に係るリア・アンダーラン・プロテクタ１は、図５を用いて既述したものと同様に、車両の後部に車幅方向に延出して設けられたＲＵＰ本体２を有する。

ＲＵＰ本体２は、図１に示すように、略長方形状の閉断面形状に成形されており、上面部２ａと背面部２ｂ（車両に取り付けられたときに裏面側に位置するという意味で背面部であり、車両の進行方向に対しては前面部）と下面部２ｃと正面部２ｄ（車両に取り付けられたときに表側に位置するという意味で正面部であり、車両の進行方向に対しては後面部）とを有する。かかるＲＵＰ本体２には、車幅方向に所定間隔を隔てて取付ブラケット４が取り付けられている。

ブラケット４は、断面コ字状に成形され、中央のウェブ部４ａとその上下のフランジ部４ｂ、４ｂとを有する。かかるブラケット４は、ＲＵＰ本体２にその背面部２ｂ側から装着され、上下のフランジ部４ｂ、４ｂがＲＵＰ本体２の上面部２ａと下面部２ｃとに夫々溶接され、ウェブ部４ａが背面部２ｂから略平行に離間されている。かかるウェブ部４ａには、サポート５が取り付けられている。

サポート５は、図１及び図２に示すように、ウェブ部４ａに装着される本体取付部５ａと、車体フレーム６側に装着されるフレーム取付部５ｂとを有する。本体取付部５ａは、略車幅方向に沿って板状に成形され、フレーム取付部５ｂは、本体取付部５ａに対して上方から見て略直角に成形されており閉断面形状となっている。すなわち、フレーム取付部５ｂは、ボックス体からなる。

詳しくは、サポート５は、上方から見て略コ字状に折り曲げられその下部に本体取付部５ａとしての平板が一体成形された屈曲板部８と、屈曲板部８の開口部を蓋して取り付けられた平板状の平板部９とからなる。平板部９と屈曲板部８とは、溶接（線溶接、点溶接等）によって固定される。図２中、１０は溶接部である。屈曲板部８と平板部９とは、略上下方向に沿った閉断面形状のフレーム取付部５ｂを構成する。

サポート５の本体取付部５ａとフレーム取付部５ｂとの間には、補強部材（ガセット）１１ａ、１１ｂが掛け渡して設けられている。補強部材１１ａ、１１ｂは、略三角形状の板材からなり、その頂部に溶接部１０との干渉を回避する欠落部１２を備える。補強部材１１ａ、１１ｂは、本体取付部５ａおよびウェブ部４ａの孔１３に挿通されるボルトとの干渉を避け、同一形状のものが上下方向に所定間隔を隔てて２枚配置され溶接により固定されている。

以上の構成からなる本実施形態の作用を述べる。

上記リア・アンダーラン・プロテクタ１に対し、車両衝突時の模擬の一形態として、ＲＵＰ本体２の所定の箇所（車両の最外側より325mm 以下の箇所）に、所定の荷重（車重の12.5％等の荷重）Ｆを加える試験を行う（図５参照）。

すると、図６に示すように、ＲＵＰ本体２が車両の前方に撓み、車幅方向内側への分力ｆ１が発生する。そのため、ＲＵＰ本体２とブラケット４との取付部７においては、車両前方への力ｆ２の他、車幅方向内側への力ｆ１と、取付部７を略中心とした回転（曲げモーメントＭ）とが働くことになる。

ここで、本実施形態にあっては、上記取付部７（サポート５の本体取付部５ａとフレーム取付部５ｂとの接続部）に、図１及び図２に示すように、補強部材１１ａ、１１ｂを掛け渡して設けたので、上記曲げモーメントＭは、補強部材１１ａ、１１ｂの面内荷重として支持される。よって、サポート５の本体取付部５ａとフレーム取付部５ｂとが図８に示すように折れ曲がり難くなる。なお、補強部材１１ａ、１１ｂは、一枚でもよくボックス材でもよい。

また、補強部材１１ａ、１１ｂの面内に伝達された荷重は、サポート５のフレーム取付部５ｂに伝達されるが、フレーム取付部５ｂは、閉断面形状に構成されているため、その剛性が図５のタイプよりも高くなり、補強部材１１ａ、１１ｂの面内から伝達された荷重を高剛性で支持する。よって、サポート５のフレーム取付部５ｂが折れ曲がり難くなる。

すなわち、本実施形態によれば、曲げモーメントＭによる荷重を本体取付部５ａとフレーム取付部５ｂとの間に設けられた補強部材１１ａ、１１ｂの面内で受けることで本体取付部５ａとフレーム取付部５ｂとの接続部の屈曲を防止できるのみならず、補強部材１１ａ、１１ｂを介してフレーム取付部５ｂに伝達された車幅方向の力によるフレーム取付部５ｂの屈曲を、フレーム取付部５ｂ自身を閉断面形状とすることで防止できる。

なお、図２に仮想線で示すように、フレーム取付部５ｂの内部に補強部材１１ａからの荷重を支持するリブ１４を設け、支持剛性を高めてもよい。また、図３に示すように、上側の補強部材１１ａを下側の補強部材１１ｂよりも大型とし、両補強部材１１ａ、１１ｂがともに屈曲板部８の端部にかかるようにし、補強部材１１ａ、１１ｂからの力の支持剛性を高めてもよい。

また、本実施形態によれば、ＲＵＰ本体２に発生する縦方向の力（車両前方への力ｆ２）をこれに直交する本体取付部５ａで受け、横方向の力（車幅方向内側への力ｆ１）をこれに直交するフレーム取付部５ｂで受けることになる。ここで、本体取付部５ａが受ける力ｆ２は、上述した曲げモーメントＭと同様に、補強部材１１ａ、１１ｂおよび閉断面形状のフレーム取付部５ｂによって高剛性で支持され、フレーム取付部５ｂが受ける力ｆ１は、閉断面形状のフレーム取付部５ｂ自身によって高剛性で支持される。

以上説明したように、本実施形態によれば、ブラケット４やサポート５の板厚を厚くすることなく取付部７（サポート５の本体取付部５ａとフレーム取付部５ｂとの接続部）の剛性を高めることができるため、ＲＵＰ本体２を図７(b)に示すように片持梁にモデル化できる。

よって、本実施形態は、図５〜図７を用いて既述したタイプ、即ち図７(a)の回転可能な支点で支持された支持梁にモデル化されるタイプと比べると、同じ荷重Ｆを受けた場合であっても、支持部分（取付部７）が回転しないため、ＲＵＰ本体２の端部２ａの前方への移動量が小さくなり、耐荷重性能が向上する。

よって、ＲＵＰ本体２が有する断面性能を片持梁として効率よく発揮することができ、既述したようにブラケット４やサポート５の板厚を厚くすることは不要であり、軽量化・低コスト化を推進できる。

また、本実施形態においては、図１及び図２に示すように、サポート５を、本体取付部５ａとしての平板が一体成形された屈曲板部９と、フレーム取付部５ｂを構成すべく上記屈曲板部８の開口部を蓋して取り付けられた平板状の平板部９とから構成しているので、プレス等による曲げ加工が必要なのは屈曲板部８のみであり、平板部９は打ち抜き加工のみで製造できるため、低コスト化を推進できる。

但し、図４に示すように、サポート５を共に屈曲成形された第１屈曲板部１５と第２屈曲板部１６とから構成してもよいことは勿論である。なお、この場合も、仮想線で示すようにリブ１４を設けてもよく、図３に示すように上側の補強部材１１ａを下側の補強部材１１ｂよりも大型として、両補強部材１１ａ、１１ｂがともに第２屈曲板部１６の端部にかかるようにしてもよい。

また、本実施形態においては、ブラケット４の各フランジ部４ｂ、４ｂがＲＵＰ本体２の上面部２ａと下面部２ｃとに重ねて溶接されているため、荷重Ｆに対するブラケット４の支持反力が、ＲＵＰ本体２の上面部２ａと下面部２ｃとの板厚の面内に沿ってそれらを座屈させる方向に伝達される。よって、ＲＵＰ本体２の屈曲性能が向上する。

すなわち、仮に、ブラケット４をＲＵＰ本体２の背面部２ｂに装着したとすると、荷重Ｆに対するブラケット４の支持反力が背面部２ｂの板を折り曲げる方向に生じることになるため、その装着部を起点としてＲＵＰ本体２に曲がり（折れ）が生じ易くなるが、本実施形態によれば、ブラケット４を上下面部２ａ、２ｃに装着しているので、荷重Ｆに対するブラケット４の支持反力が上面部２ａ及び下面部２ｃの板を座屈させる方向に生じることになり、板材を変形させる際の耐座屈応力は耐曲げ応力より大きいという事実を鑑みれば、ＲＵＰ本体２が曲がり（折れ）難くなる。

また、フレーム取付部５ｂは、上部が車体フレーム６に取り付けられ下部にＲＵＰ本体２のブラケット４が取り付けられているため、上記横力ｆ１や曲げモーメントＭを受けたとき上下軸廻りに捩れようとするが、閉断面形状（ボックス形状）となっているため、その捩れが防止される。

本発明の一実施形態に係るリア・アンダーラン・プロテクタの要部を示す斜視図である。 図１のII−II線断面図である。 別の実施形態を示す断面図である。 別の実施形態を示す断面図である。 リア・アンダーラン・プロテクタの全体斜視図である。 リア・アンダーラン・プロテクタが荷重Ｆを受けた際の変形の様子を示す平面図である。 図７(a)はＲＵＰ本体を回転可能な支点で支持された支持梁にモデル化したときの模式図であり、図７(b)はＲＵＰ本体を片持梁にモデル化したときの模式図である。 荷重Ｆによるサポートの折れの様子を示す平面図である。 荷重Ｆによるブラケットの凹みの様子を示す平面図である。

符号の説明

１ リア・アンダーラン・プロテクタ
２ ＲＵＰ本体
５ サポート
５ａ 本体取付部
５ｂ フレーム取付部
６ 車体フレーム
８ 屈曲板部
９ 平板部
１１ 補強部材

Claims (2)

1. 車両の後部に配置され車幅方向に延出されたＲＵＰ本体に取付ブラケットを取り付け、該取付ブラケットにサポートを取り付け、該サポートを車体フレームに取り付けたリア・アンダーラン・プロテクタであって、
   上記サポートに、上記取付ブラケットに装着される本体取付部を略車幅方向に沿って成形すると共に、上記車体フレームに装着されるフレーム取付部を上記本体取付部に対して上方から見て略直角に成形し、
   それら本体取付部とフレーム取付部との間に、補強部材を掛け渡して設け、
   上記フレーム取付部を閉断面形状とし、
   上記ＲＵＰ本体は、上面部、下面部、正面部及び背面部から、中空の矩形断面に形成され、
   上記取付ブラケットは、ウェブ部とその上下に設けられた上下のフランジ部とから断面コ字状に形成され、その上下のフランジ部が上記ＲＵＰ本体の上面部と下面部とに取り付けられ、上記ウェブ部が上記ＲＵＰ本体の背面部から離間され、
   そのウェブ部に上記サポートの上記本体取付部が装着された
   ことを特徴とするリア・アンダーラン・プロテクタ。
2. 上記サポートは、上方から見て略コ字状に折り曲げられ上記本体取付部としての平板が一体成形された屈曲板部と、上記フレーム取付部を構成すべく上記屈曲板部の開口部を蓋して取り付けられた平板状の平板部とを有する請求項１記載のリア・アンダーラン・プロテクタ。
   

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