本発明の第1の骨子は、通信端末装置の受信品質に基づいてこの通信端末装置の伝送レートを設定し、設定された伝送レートの送信信号についての上記通信端末装置における受信信号の特性が所望品質を満たす最小の送信電力値を用いて、上記通信端末装置に対して送信を行うことである。
本発明の第2の骨子は、データチャネル信号の送信先として選択された通信端末装置のうち、データチャネル信号の受信品質が良好な通信端末装置へのデータチャネル信号の送信が、データチャネルにおいて支配的となっているか否かの判定を行い、判定の結果に基づいて設定した送信電力値を用いて、制御チャネル信号および送信先として選択された通信端末装置に対するデータチャネル信号を送信することである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施の形態において、パイロット信号は、制御チャネルを介して基地局装置から通信端末装置に送信され、データ(音声やパケット等)は、データチャネルを介して基地局装置から通信端末装置に送信される。また、制御チャネルおよびデータチャネルを介して通信される信号を、それぞれ、「制御チャネル信号」および「データチャネル信号」とする。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる通信装置を備えた基地局装置の構成を示すブロック図である。図1において、割り当て部101は、後述するDRC信号検出部116により検出されたデータレートコントロール(以下「DRC」という。)信号に基づいて各通信端末装置の通信可能な伝送レートを把握し、各通信端末装置への通信リソースの割り振りを決定し、バッファ102に下り送信データの出力を指示する。ここで、DRC信号とは、通信端末装置が所望の品質で受信可能である伝送レートを示す信号である。このDRC信号の詳細については後述する。
また、割り当て部101は、適応符号化部103に対して下り送信データの符号化方式を指示し、適応変調部104に対して下り送信データの変調方式を指示し、適応拡散部105に対して下り送信データに乗算する拡散符号を指示する。
バッファ102は、下り送信データを保持し、割り当て部101からの指示に従って、所定の通信端末装置に対する下り送信データを適応符号化部103に出力する。適応符号化部103は、割り当て部101の指示に従って、バッファ102からの送信データに符号化を行い、符号化された送信データを適応変調部104に出力する。
適応変調部104は、割り当て部101の指示に従って、適応符号化部103により符号化された送信データを変調し、変調された送信データを適応拡散部105に出力する。適応拡散部105は、割り当て部101の指示に従って、適応変調部104により変調された送信データを拡散し、拡散された送信データを多重部108に出力する。
一方、変調部106は、パイロット信号を変調して拡散部107に出力する。拡散部107は、変調部106により変調されたパイロット信号を拡散して多重部108に出力する。
多重部108は、拡散された下り送信データと拡散されたパイロット信号とを時間多重して送信信号を生成し、生成された送信信号を電力制御部109に出力する。なお、通信開始時には、多重部108から電力制御部109に対してパイロット信号のみが出力される。
電力制御部109は、後述する電力設定部118により設定された送信電力値となるように、多重部108により生成された送信信号を増幅し、増幅された送信信号を送信RF部110に出力する。
送信RF部110は、電力制御部109により増幅された送信信号の周波数を無線周波数に変換して共用器111に出力する。共用器111は、送信RF部110により無線周波数に変換された送信信号をアンテナ112を介して通信端末装置に送信する。また、共用器111は、各通信端末装置により送信され、アンテナ112を介して受信された信号(受信信号)を、受信RF部113に出力する。
受信RF部113は、共用器111からの受信信号の周波数をベースバンドに変換し、ベースバンドに変換された受信信号を逆拡散部114に出力する。逆拡散部114は、ベースバンド信号に変換された受信信号を逆拡散して復調部115に出力する。復調部115は、逆拡散部114により逆拡散された受信信号を復調して復調信号を生成し、生成した復調信号をDRC信号検出部116とパワマージン情報検出部117に出力する。
DRC検出部116は、復調部115により生成された復調信号からDRC信号を検出し、検出されたDRC信号を割り当て部101に出力する。パワマージン情報検出部117は、復調部115により生成された復調信号からパワマージン情報を検出し、検出されたパワマージン情報を電力設定部118に出力する。
電力設定部118は、パワマージン情報検出部117からのパワマージン情報を用いて、各通信端末装置の送信信号の送信電力値を設定し、設定された送信電力値を電力制御部109に出力する。
図2は、本発明の実施の形態1にかかる通信装置を備えた通信端末装置の構成を示すブロック図である。図2において、要求変調方式決定部201は、後述するCIR測定部214により測定されたCIRに基づいて、通信端末装置が所望の品質で受信可能な伝送レートを決定し、決定された伝送レートをマージン算出部202およびDRC信号作成部203に出力する。
また、要求変調方式決定部201は、決定された伝送レートに基づいて、適応逆拡散部210に対して受信信号に乗算する拡散符号を指示し、適応復調部211に対して受信信号の復調方式を指示し、適応復号化部212に対して受信信号の復号化方式を指示する。
マージン算出部202は、後述するCIR測定部214により測定されたCIR、および、要求変調方式決定部201により決定された伝送レートを用いて、パワマージンを算出し、算出したパワマージンに関する情報すなわちパワマージン情報を合成部215に出力する。
DRC信号作成部203は、要求変調方式決定部201により算出された伝送レートを示すDRC信号を作成して合成部215に出力する。
合成部215は、DRC信号作成部203からのDRC信号とマージン算出部202からのパワマージン情報とを合成することにより合成信号を生成し、生成された合成信号を変調部204に出力する。
変調部204は、合成部215からの合成信号を変調して拡散部205に出力する。拡散部205は、変調部204により変調された合成信号を拡散して送信RF部206に出力する。送信RF部206は、拡散部205により拡散された合成信号を無線周波数に周波数変換して共用器207に出力する。
共用器207は、送信RF部206により周波数変換された合成信号を、アンテナ208を介して基地局装置に送信する。また、共用器207は、基地局装置から送信され、アンテナ208に受信された信号(受信信号)を受信RF部209に出力する。
受信RF部209は、共用器207からの受信信号の周波数をベースバンドに変換し、ベースバンドに変換された受信信号を適応逆拡散部210および逆拡散部213に出力する。
適応逆拡散部210は、要求変調方式決定部201の指示に従って、受信RF部209からの受信信号を逆拡散して、受信信号におけるパイロット信号以外の成分(データに対応する成分)を抽出し、抽出された成分を適応復調部211に出力する。適応復調部211は、要求変調方式決定部201の指示に従って、適応逆拡散部210により抽出された成分を復調して復調信号を生成する。適応復号化部212は、要求変調方式決定部201の指示に従って、適応復調部211からの復調信号を復号化することにより、受信データを取り出す。
一方、逆拡散部213は、受信RF部209からの受信信号を逆拡散して、受信信号におけるパイロット信号の成分を抽出し、抽出したパイロット信号の成分をCIR測定部214に出力する。CIR測定部214は、逆拡散部213からのパイロット信号の成分を用いてCIRを測定し、測定したCIRを要求変調方式決定部201およびマージン算出部202に出力する。
次いで、図1に示した基地局装置と図2に示した通信端末装置との間でなされる動作について説明する。
まず、通信開始時に、基地局装置においてパイロット信号が、変調部106により変調され、拡散部107により拡散され、多重部108に出力される。多重部108から電力制御部109に対しては、拡散されたパイロット信号のみが出力される。多重部108からのパイロット信号は、電力制御部109により所定の送信電力値となるように増幅される。増幅されたパイロット信号は、送信RF部110により無線周波数に周波数変換されて、共用器111を介してアンテナ112から各通信端末装置に送信される。このパイロット信号は、制御チャネルを介して各通信端末装置に送信される。
基地局装置により送信されたパイロット信号(制御チャネル信号)は、通信端末装置のアンテナ208に受信される。アンテナ208により受信された信号(受信信号)は、共用器207を介して受信RF部209に出力される。共用器207からの受信信号は、受信RF部209によりベースバンドに周波数変換され、逆拡散部213により逆拡散される。これにより、逆拡散部213では、受信信号におけるパイロット信号が抽出される。抽出されたパイロット信号は、CIR測定部214に出力される。
CIR測定部214では、逆拡散部213により出力されたパイロット信号に基づいてCIRが測定される。測定されたCIRは、要求変調方式決定部201およびマージン算出部202に送られる。
要求変調方式決定部201では、CIR測定部214により測定されたCIRに基づいて、本通信端末装置が所望の品質で受信可能な伝送レートが決定される。要求変調方式決定部201による伝送レートの決定方法について、図3を用いて説明する。図3は、本発明の実施の形態1にかかる通信装置を備えた通信端末装置の要求変調方式決定部201による伝送レートの決定方法を示す模式図である。
要求変調方式決定部201では、CIR測定部214により測定されたCIR(受信品質)に基づいて、本通信端末装置の受信信号の特性(謝り率特性)が所望品質を満たし、かつ、データの伝送効率が最良となるように、基地局装置に要求する伝送レートが決定される。
具体的には、例えば、CIR測定部214により測定されたCIRが、図3に示すような値(受信CIR301)であった場合には、本通信端末装置の受信信号の特性が所望品質(ここでは謝り率が10-3であるとする。)を満たす伝送レートは、QPSKに対応する伝送レート、16QAMに対応する伝送レート、および、64QAMに対応する伝送レートのいずれかとなる。このような伝送レートのうち、データの伝送効率が最良となるような伝送レートは、64QAMに対応する伝送レートとなる。この結果、図3に示すようなCIRが測定された場合には、基地局装置に要求する伝送レートとして、64QAMに対応する伝送レートが決定される。
以上のようにして要求変調方式決定部201により決定された伝送レートは、マージン算出部202およびDRC信号作成部203に出力される。伝送レートが決定された後、要求変調方式決定部201から、適応逆拡散部210、適応復調部211および適応復号化部212に対して、それぞれ、受信信号に乗算する拡散符号を指示する信号、受信信号の復調方式を指示する信号、および、受信信号の復号化方式を指示する信号が出力される。
マージン算出部202では、CIR測定部214により測定されたCIR、および、要求変調方式決定部201により決定された伝送レートを用いて、パワマージンが算出される。すなわち、マージン算出部202では、まず、要求変調方式決定部201により決定された伝送レートが適用され、要求した伝送レートで基地局から送信された場合の受信品質(以下「第1受信品質」という。)と、この場合の受信信号の特性が所望品質を満たすのに最低限必要な受信品質(以下「第2受信品質」という。)との差が算出される。この後、算出された差に対応する電力値として、パワマージンが算出される。このパワマージンとは、本通信端末装置が第1受信品質を得るために必要な基地局装置における送信電力値(通常送信される送信電力)と、本通信端末装置が第2受信品質を得るために必要な基地局装置における送信電力値との差に相当する。
具体的には、図3を参照するに、まず、要求変調方式決定部201により決定された伝送レート(64QAMに対応する伝送レート)のCIR対BER特性を表す曲線に従って、受信信号の特性が所望品質(BER=10-3)を満たすのに最低限必要な第2受信品質(CIR302)が算出される。さらに、第1受信品質(受信CIR301)と第2受信品質(CIR302)との差が算出された後、算出された差に対応する電力値がパワマージン303として算出される。
なお、パワマージンを算出するために、本通信端末装置が第1受信品質を得るために必要な基地局装置における送信電力値、および、本通信端末装置が第2受信品質を得るために必要な基地局装置における送信電力値をそれぞれ算出した後、各送信電力値の差を算出するようにしてもよい。
以上のようにして算出されたパワマージンに関する情報は、パワマージン情報として合成部215に出力される。
DRC信号作成部203では、要求変調方式決定部201により算出された伝送レートを示すDRC信号が作成される。作成されたDRC信号は合成部215に出力される。
合成部215では、DRC信号作成部203からのDRC信号とマージン算出部202からのパワマージン情報とが合成されることにより、合成信号が生成される。生成された合成信号は、変調部204に出力される。
合成信号は、変調部204により変調され、拡散部205により拡散され、送信RF部206により無線周波数に周波数変換され、共用器207を介してアンテナ208により基地局装置に送信される。
通信端末装置により送信された信号は、基地局装置のアンテナ112により受信される。アンテナ112により受信された信号(受信信号)は、共用器111を介して受信RF部113に出力される。共用器111からの受信信号は、受信RF部113によりベースバンドに周波数変換され、逆拡散部114により逆拡散され、復調部115により復調される。この結果、復調部115により復調信号が生成される。生成された復調信号は、DRC信号検出部116およびパワマージン情報検出部117に出力される。
パワマージン情報検出部117では、復調部115からの復調信号からパワマージン情報が検出される。検出されたパワマージン情報は、電力設定部118に出力される。
電力設定部118では、検出されたパワマージン情報により各通信端末装置のパワマージンが認識される。さらに、電力設定部118では、認識された各通信端末装置のパワマージンを考慮して、各通信端末装置の送信信号の送信電力値が設定される。具体的には、従来のHDRを用いた通信においては、各通信端末装置の送信信号の送信電力は常に所定の送信電力値(一定)とされていたが、本実施の形態では、所定の送信電力値から通信端末装置のパワマージンを差し引いた値が、この通信端末装置の送信信号の送信電力値として設定される。このようにして設定された通信端末装置の送信信号の送信電力値は、この通信端末装置により要求された伝送レートを適用した際に、この通信端末装置が第2受信品質を得るために必要な本基地局装置の送信電力値に相当する。
このように電力設定部118により設定された各通信端末装置の送信信号の送信電力値は、電力制御部109に出力される。
一方、DRC信号検出部116では、復調部115により生成された復調信号からDRC信号が検出される。検出されたDRC信号は、割り当て部101に出力される。
割り当て部101では、各通信端末装置により送信されたDRC信号に基づいて、各通信端末装置への通信リソースの割り振りがなされる。基地局装置から通信端末装置に送られる下り送信データは、通信リソースの割り振りがなされるまでバッファ102に蓄えられる。
バッファ102により出力された下り送信データは、適応符号化部103により通信端末装置で受信可能な符号化方式で符号化され、適応変調部104により通信端末装置で受信可能な変調方式で変調され、適応拡散部105により通信端末装置で受信可能な拡散符号で拡散され、多重部108に出力される。多重部108では、拡散された下り送信データに拡散されたパイロット信号が時間多重されることにより、送信信号が生成される。
多重部108により生成された送信信号は、電力制御部109において、電力設定部118により設定された送信電力値となるように増幅される。増幅された送信信号は、送信RF部110により無線周波数に周波数変換され、共用器111を介してアンテナ112により各通信端末装置に送信される。
基地局装置により送信された信号は、通信端末装置のアンテナ208により受信される。アンテナ208により受信された信号(受信信号)は、共用器207を介して受信RF部209に出力される。共用器207からの受信信号は、受信RF部209によりベースバンドに周波数変換され、適応逆拡散部210により逆拡散される。これにより、適応逆拡散部210では、受信信号におけるパイロット信号以外の成分(データに対応する成分)が抽出される。抽出されたパイロット信号以外の成分は、適応復調部211で復調され、適応復号化部212により復号化される。これにより受信データが取り出される。
次いで、本実施の形態にかかる通信装置による効果について、図4を参照して説明する。図4は、本発明の実施の形態1にかかる通信装置を備えた通信端末装置と基地局装置がHDRを用いた通信を行う様子を示す模式図である。
図4において、基地局装置401は図1に示した基地局装置に相当し、通信端末装置402〜404および通信端末装置410〜412は、図2に示した通信端末装置に相当する。基地局装置401は、現在、この基地局装置401がカバーするセルエリア405に存在する通信端末装置402〜404と通信を行っているものとする。なお、通信端末装置410〜412は、セルエリア405の範囲内に存在しているが、基地局装置401以外の基地局装置と通信を行っているものとする。セルエリアは通常オーバーラップするように設計されるため、通信端末装置410〜412は、基地局装置401のセルエリアと基地局装置401以外の基地局のセルエリアとのオーバーラップしたエリアに存在していることになる。
基地局装置401は、上述したように、通信端末装置402〜404により選択された通信モードに基づいてスケジューリングを行い、通信端末装置毎に伝送レートを設定し、コントロールチャネルを通して通信端末装置402〜404に通信リソースの割り振りを示す信号を報知する。さらに、基地局装置401は、割り振った時間において、該当する通信端末装置に対してのみ、データチャネルを介してデータを送信する。
ここで、一例として、基地局装置401が通信端末装置402に対してデータを送信する時間に着目する。従来方式によれば、基地局装置401は、所定の通信端末装置にデータを送信する際には、セルエリア405に存在するすべての通信端末装置における受信品質が十分に良好となるように、大きなものとする。この場合には、上述したように、通信端末装置410〜412のうち他の基地局装置からデータを受信している通信端末装置は、基地局装置401から通信端末装置402に対して送信された信号により干渉を受けることになる。
ところが、本実施の形態では、基地局装置401は、通信端末装置402に対して、セルエリア405に存在するすべて通信端末装置における受信品質が十分に良好となるような送信電力値を用いてデータを送信しない。すなわち、基地局装置401は、通信端末装置402により要求された伝送レートを適用した場合に、通信端末装置402の受信信号の特性が所望品質を満たすのに最低限必要な送信電力値で、通信端末装置402にデータを送信する。この最低限必要な送信電力値とは、エリア406内に存在する通信端末装置の受信品質が所望品質を満たすのに最低限必要な送信電力値に相当する。
基地局装置401がこのような送信電力値を用いて通信端末装置402にデータを送信すれば、基地局装置401が通信端末装置402に送信した信号による、他の基地局装置からデータを受信する通信端末装置410〜412が受ける干渉は、抑えられる。このとき、通信端末装置402は、所望品質を満たす受信信号を得ることができる。
なお、上述した通信と並行して、基地局装置401と通信端末装置402〜404とは、HDRに用いられた周波数帯域とは別の帯域を用いて、通常のCDMA方式の通信を行っていることは、いうまでもない。
また、本実施の形態では、基地局装置は、同一時刻に1つの通信端末装置のみに対してデータを送信する場合について説明したが、本発明は、基地局装置が、同一時刻に複数の通信端末装置に対してデータを送信する場合にも適用可能である。この場合には、基地局装置から複数の通信端末装置に送信された信号の遅延波が、互いに干渉を及ぼし合う可能性を抑えることができるので、複数の通信端末装置の通信品質を良好に保つことができる。
このように、本実施の形態においては、HDRを用いた通信時に、基地局装置は、この基地局装置がカバーするセル内に存在するすべての通信端末装置の受信品質が十分に良好となるような送信電力値を用いて、通信端末装置にデータを送信するのではなく、通信端末装置の受信信号の特性が所望品質を満たすのに最低限必要な送信電力値を用いて、この通信端末装置にデータを送信する。これにより、通信端末装置における受信信号の品質を所望品質に保持しつつ、基地局装置がカバーするエリアに存在する通信端末装置のうち、他の基地局装置とHDRを用いた通信を行っている通信端末装置に与える干渉を抑えることができる。
なお、本実施の形態では、通信端末装置が、測定した受信品質に基づいて伝送レートおよびパワマージンを決定し、決定した伝送レートおよびパワマージンを基地局装置に報知した後、基地局装置が、報知された伝送レートおよびパワマージンを用いて、この通信端末装置の送信信号の送信電力値を設定する場合を例にとり説明したが、通信端末装置が測定した受信品質を基地局装置に報知し、基地局装置が、報知された受信品質に基づいて決定した伝送レートおよびパワマージンを用いて、この通信端末装置の送信信号の送信電力値を設定するようにしてもよい。これにより、通信端末装置の規模および消費電力を抑えることができる。
また、通信端末装置からパワマージンを送信するのは、最も伝送レートの早いDRCをリクエストしたときのみとしてもよい。これにより、通信端末装置の規模および消費電力を押さえることができる。この場合、高い伝送レートを要求できるということはCIRがよいということになるので、基地局の近くに位置している可能性が高い。よって、基地局の送信パワを大幅に低減できるので、干渉回避の効果が大きい。
(実施の形態2)
本実施の形態では、通信端末装置におけるDRC選択時にあらかじめ送信パワの低減までも考慮する場合について説明する。以下、本実施の形態について説明する。
まず、本実施の形態にかかる通信端末装置の構成について、図5を参照して説明する。図5は、本発明の実施の形態2にかかる通信端末装置の構成を示すブロック図である。なお、図5における実施の形態1(図2)と同様の構成については、図2におけるものと同一の符号を付して、詳しい説明を省略する。
図5において、DRC信号作成部501は、要求変調方式決定部201により決定された伝送レート、および、マージン算出部202からのパワマージン情報を用いて、DRC信号を作成する。また、DRC信号作成部501は、作成したDRC信号を変調部502に出力する。なお、本実施の形態におけるDRC信号の詳細については後述する。
変調部502は、DRC信号作成部501からのDRC信号を変調して拡散部205に出力する。
次に、本実施の形態にかかる基地局装置の構成について、図6を参照して説明する。図6は、本発明の実施の形態2にかかる基地局装置の構成を示すブロック図である。なお、図6における実施の形態1(図1)と同様の構成については、図1におけるものと同一の符号を付して、詳しい説明を省略する。
図6において、電力設定部601は、DRC信号検出部116により検出されたDRC信号を用いて、各通信端末装置の送信信号の送信電力値を設定し、設定された送信電力値を電力制御部602に出力する。
電力制御部602は、電力設定部601により設定された送信電力値となるように、適応拡散部105により拡散された送信データを増幅し、増幅された送信データを多重部604に出力する。
電力制御部603は、拡散部107により拡散されたパイロット信号を、所定(一定)の送信電力値となるように増幅し、増幅されたパイロット信号を多重部604に出力する。
多重部604は、電力制御部602により増幅された送信データと、電力制御部603により増幅されたパイロット信号とを多重することにより、多重信号を生成し、生成された多重信号を送信RF部110に出力する。
次いで、図5に示した通信端末装置と図6に示した基地局装置との間でなされる動作について説明する。なお、本実施の形態における実施の形態1と同様の動作については詳しい説明を省略し、本実施の形態における実施の形態1と相違する動作のみを説明する。
図5において、要求変調方式決定部201では、実施の形態1で説明したように、CIR測定部214により測定されたCIRに基づいて、本通信端末装置が所望の品質で受信可能な伝送レートが決定される。要求変調方式決定部201により決定された伝送レートは、マージン算出部202およびDRC信号作成部501に出力される。
マージン算出部202では、実施の形態1で説明したように、CIR測定部214により測定されたCIR、および、要求変調方式決定部201により決定された伝送レートを用いて、パワマージンが算出される。算出されたパワマージンに関する情報は、パワマージン情報としてDRC信号作成部501に出力される。
DRC信号作成部501では、要求変調方式決定部201により決定された伝送レート、および、マージン算出部202からのパワマージン情報を用いて、DRC信号を作成する。具体的には、DRC信号作成部501では、伝送レートおよびパワマージン情報に対応するDRC信号を示すDRCテーブルがあらかじめ準備されており、要求変調方式決定部201からの伝送レート、および、マージン算出部202からのパワマージン情報に基づいて、DRC信号が一義的に決定される。
ここで、実施の形態1におけるDRC信号は、「通信端末装置が所望の品質で受信可能となる伝送レートを示す」ものであるのに対して、本実施の形態におけるDRC信号は、「(1)通信端末装置が所望の品質で受信可能となる伝送レート、および、(2)この伝送レートが選択された場合におけるパワマージン(このパワマージンは実施の形態1におけるものと同様である)」を示すものである。
DRC信号作成部501により用いられるDRCテーブルの具体例について、図7を参照して説明する。図7は、本発明の実施の形態2にかかる通信端末装置により用いられるDRCテーブルの一例を示す模式図である。
図7に示すDRCテーブルでは、要求変調方式決定部201により決定された伝送レートに対応する変調方式(BPSK、QPSK、16QAM等)、および、マージン算出部202からのパワマージン情報(0、5、10、15[dB]等)に、DRC信号(1〜6)が対応付けられている。
例えば、要求変調方式決定部201により16QAMに対応する伝送レートが選択され、かつ、マージン算出部202によりパワマージン5[dB]が算出された(5[dB]送信パワを下げても所望の品質を満たすことができる)場合には、信号内容が「4」であるDRC信号が決定される。
このようにしてDRC信号作成部501により作成されたDRC信号は、変調部502により変調された後、拡散部205に出力される。
図6において、DRC信号検出部116により検出されたDRC信号は、割り当て部101および電力設定部601に出力される。なお、割り当て部101では、実施の形態1で説明したような処理が行われる。
電力設定部601では、DRC信号検出部116からのDRC信号に基づいて、各通信端末装置の送信信号の送信電力値が設定される。具体的には、電力設定部601では、図5に示した通信端末装置により用いられたDRCテーブルを用いて、DRC信号検出部116からのDRC信号に対応するパワマージンが認識される。さらに、所定の送信電力値からこのパワマージンが差し引かれた値が、この通信端末装置の送信信号の送信電力値として設定される。
例えば、ある通信端末装置のDRC信号が「4」である場合には、電力設定部601において、この通信端末装置により送信電力値を5[dB]下げる旨の要求がされていることが認識されて、この通信端末装置の送信電力値は、所定の送信電力値から5[dB]差し引かれた値に設定される。このように設定された送信電力値は、電力制御部602に出力される。
電力制御部602では、適応拡散部105により拡散された送信データは、電力設定部601により設定された送信電力値となるように増幅される。増幅された送信データは、多重部604に出力される。
電力制御部603では、拡散部107により拡散されたパイロット信号は、常に所定(略一定)の送信電力値となるように増幅される。増幅されたパイロット信号は、多重部604に出力される。
電力制御部602により増幅された送信データと、電力制御部603により増幅されたパイロット信号は、多重部604により多重される。これにより、多重信号が生成される。生成された多重信号は、送信RF部110に出力される。以上が、図5に示した通信端末装置と図6に示した基地局装置との間でなされる動作である。
以上のように、本実施の形態では、通信端末装置が伝送レート(変調方式)を示す情報とパワマージンとを示す情報とを個別に基地局装置に対して送信する(実施の形態1)のではなく、通信端末装置が伝送レート(変調方式)とパワマージンとの組み合わせを示す情報を基地局装置に対して送信する。これにより、通信端末装置が基地局装置に対して送信する情報(伝送レートおよび送信電力値に関する情報)量、すなわち、無線回線における情報量を削減することができる。
例えば、パワマージンの送信に必要な情報量に着目すると、実施の形態1では、扱われるパワマージンが2桁の値(0〜99[dB])であれば、パワマージンだけでも少なくとも7ビットの情報量が必要となるのに対して、実施の形態2では、4ビットの情報量のみで、伝送レートとパワマージンの組み合わせを示す16通りの情報を送信することができる。
また、本実施の形態では、基地局装置は送信電力値を常に略一定としてパイロット信号(通信端末装置において通信品質を測定する際に基準とされる信号:基準信号)を送信することにより、通信端末装置は、正確に通信品質を測定することができるので、正確にDRC選択(変調方式およびパワマージンの選択)を行うことができる。
さらに、基地局装置が送信電力値を常に略一定としてパイロット信号を送信することを、実施の形態1に適用した場合においても、実施の形態2と同様の効果が得られる。
なお、本発明の実施の形態においては、変調方式とパワマージンとの組み合わせがあらかじめ設定されたDRCテーブルを用いた場合について記述したが、このDRCテーブルの内容(例えば、16QAM送信時のパワ低減量が5[dB]、10[dB]である等)は、通信が行われる前に、基地局装置から通信端末装置に対してあらかじめ報知チャネル等により報知されるようにしてもよい。
また、通信中においても、通信品質等の様々な条件に応じて、通信端末装置毎にDRCテーブル内容を適応的に変更することにより、最適なパワ低減量を選択することが可能になる。
さらに、本実施の形態では、通信端末装置が、伝送レートとパワマージンとの組み合わせを示すDRC信号を送信する場合について説明したが、通信端末装置が、パワマージンに基づいて基地局装置における送信電力値を算出し、伝送レートとこの算出された送信電力値との組み合わせを示すDRC信号を送信し、基地局装置が、このDRC信号における送信電力値を用いて送信電力値を設定するようにしてもよい。
(実施の形態3)
本実施の形態では、通信品質が良好な通信端末装置に対する送信データの通信が、基地局装置の下り回線(データチャネル)において支配的となった際に、パイロット信号およびすべての通信端末装置に対する送信データの送信電力を下げる場合について説明する。
通信品質が良好な通信端末装置、すなわち、基地局装置に近い位置に存在する通信端末装置(例えば、図7の4〜6のDRC信号を基地局装置に報告する通信端末装置)に対する送信データの通信が、基地局装置のセル内における下り回線において支配的な場合には、下り回線は、このセルの端に存在する通信端末装置(基地局装置から遠い位置に存在する通信端末装置)に割り当てられることが少ないと考えられる。このような場合でも、従来方式では、基地局装置は、セル内におけるすべての通信端末装置に到達するような一定の電力を用いて、パイロット信号および送信データを送信する。
ところが、上記のような場合には、まず第1に、送信データに着目すると、基地局装置は、自局から遠い位置に存在する通信端末装置には、送信データを送信する可能性が低いのにもかかわらず、この通信端末装置の受信品質が良好となるような一定の電力を用いて、自局に近い位置に存在する通信端末装置に対して送信データを送信する。すなわち、基地局装置は、必要以上の送信電力を用いて、通信端末装置に対して送信データを送信することになる。
この結果、基地局装置は、他の基地局装置がカバーするセルにおける通信端末装置に対して大きな干渉を与える。また、基地局装置が、同時刻に複数の通信端末装置に対してHDR通信を行う場合には、自局がカバーするセルに存在する複数の通信端末装置に対して大きな干渉を与える。
第2に、上記のような場合には、パイロット信号に着目すると、基地局装置は、セルに存在するすべての通信端末装置に到達するような電力を用いて、パイロット信号を送信する。ここで、基地局装置は、自局から遠い位置に存在する通信端末装置には、送信データを送信する可能性が低い。よって、通信品質が良好な通信端末装置に対する送信データの通信が、基地局装置の下り回線において支配的となった状況のみに限定すれば、基地局装置が、自局から遠い位置に存在する通信端末装置に対してパイロット信号を送信する必要性は低い。したがって、基地局装置は、必要以上の送信電力を用いてパイロット信号を送信しているといえる。
さらには、基地局装置が必要以上の送信電力を用いてパイロット信号を送信するということは、他の基地局装置のセルに存在する通信端末装置に対して干渉を与えることに相当する。
そこで、本実施の形態では、上記のような問題を防止するために、通信品質が良好な通信端末装置に対する送信データの通信が、基地局装置の下り回線において支配的となった場合(すなわち、下り回線が過剰品質となった場合)には、基地局装置は、通信品質が良好な通信端末装置に対する送信データの送信電力を下げるだけでなく、他の通信端末装置に対する送信データの送信電力およびパイロット信号の送信電力を、良好な通信端末装置に対する送信データの送信電力と同レベルだけ下げるようにする。
すなわち、基地局装置は、セル半径を小さくする(各通信端末装置はパイロット信号のCIRを用いて通信品質を測定するので、基地局装置がパイロット信号の送信電力を下げることは、基地局装置がセルの大きさを小さくすることと等価である)。換言すれば、基地局装置は、送信データの送信先として選択した通信端末装置のうち自局から近い位置に存在する通信端末装置に対して、通常の送信電力より小さい電力を用いて集中的に送信データを送信し、自局から遠い位置に存在する通信端末装置については、他の基地局装置のセルに収容してもらうか、自局から近い位置に存在する通信端末装置への送信データの送信が終了した後に、送信データの送信を行うようにする。
これにより、基地局装置は、他セルへの干渉を抑えつつ、通信品質の良好な通信端末装置への送信データの通信を集中的に行うことができる。
通信品質が良好な通信端末装置に対する送信データの通信が少なくなったときには、基地局装置は、送信データの送信電力およびパイロット信号の送信電力を元に戻し(セルの大きさを元に戻し)て、送信データおよびパイロット信号が、セル内におけるすべての通信端末装置に十分な品質で届くようにする。すなわち、このときには、基地局装置は、送信データの送信先として選択した通信端末装置のうちの多くが、自局から遠い位置に存在する通信端末装置であることに着目して、送信データおよびパイロット信号の送信電力を元に戻す。
すべての基地局装置が、上述したような送信電力の制御を行うことにより、他の基地局装置との間における干渉電力を下げることができる。これにより、すべての基地局装置は、消費電力を下げることができるので、より効果的に無線資源を活用することができる。
次いで、上述した基地局装置の構成について、図8を参照して説明する。図8は、本発明の実施の形態3にかかる基地局装置の構成を示すブロック図である。ここでは、図8に示す基地局装置は、一例として、図7に示すDRCテーブルを用いる図5に示す通信端末装置と通信を行う場合を例にとり説明するが、図8に示す基地局装置と通信を行う通信端末装置としては、DRC信号を基地局装置に報告する構成を有するものであれば何でもよい。なお、図8における図1または図6と同様の構成については、図1または図6におけるものと同一の符号を付して、詳しい説明を省略する。
割り当て部101は、実施の形態1と同様に、DRC信号に基づいて各通信端末装置への通信リソースの割り振りを決定する(高いDRC信号を報告してきた通信端末装置に対して、送信データの送信を優先的に割り当てる)。
下り回線品質推定部801は、DRC信号検出部116からのDRC信号を用いて、自局に近い位置に存在する通信端末装置、すなわち、通信品質が良好な通信端末装置(パイロット信号のCIRが所定値より大きい通信端末装置)がどれだけあるかを認識し、認識結果に基づいて送信電力を指示する情報を生成して電力設定部802に出力する。
電力設定部802は、下り回線品質推定部801からの情報に基づいて、パイロット信号および送信データの送信電力値を設定し、設定した送信電力値を電力制御部109に出力する。
次いで、上記構成を有する基地局装置の動作について、図8に加えて図9を参照して説明する。図9は、本発明の実施の形態3にかかる基地局装置の動作を示すフロー図である。なお、本実施の形態における実施の形態1または実施の形態2と同様の動作については省略する。
下り回線品質推定部801において、まず、工程(以下「ST」という。)901に示すように、DRC値6を報告してきた通信端末装置の数、または、自局のセル内で通信を行う全通信端末装置におけるDRC値6を報告してきた通信端末装置の占める割合(以下単に「DRC値6の通信端末装置の数または割合」という。)が、所定値を超えた場合には、ST902に示すように、送信電力値を通常より15[dB]下げる旨を指示する情報が、電力設定部802に出力される。逆に、DRC値6の通信端末装置の数または割合が所定値以下である場合には、処理はST903に移行する。
ST903では、DRC値5以上の通信端末装置の数または割合が所定値を超えた場合には、ST904に示すように、送信電力値を通常より10[dB]下げる旨を指示する情報が、電力設定部802に出力される。逆に、DRC値5以上の通信端末装置の数または割合が所定値以下である場合には、処理はST905に移行する。
ST905では、DRC値4以上の通信端末装置の数または割合が所定値を超えた場合には、ST906に示すように、送信電力値を通常より5[dB]下げる旨を指示する情報が、電力設定部802に出力される。逆に、DRC値4以上の通信端末装置の数または割合が所定値以下である場合には、処理はST907に移行する。
ST907では、通信品質が良好な通信端末装置に対する送信データの通信が、基地局装置の下り回線において支配的になっていない旨が認識されて、送信電力値を通常のものにする旨を示す情報が電力設定部802に出力される。
この後、電力設定部802では、下り回線品質推定部801により指示された情報に基づいて、パイロット信号および送信データの送信電力値が設定される。すなわち、下り回線品質推定部801からの情報に基づいて、通常の送信電力値から、15[dB](ST902)、10[dB](ST904)、5[dB](ST906)および0[dB](ST907)のうちのいずれかが差し引かれることにより、パイロット信号および送信データの送信電力値が設定される。ここでの通常の送信電力値とは、自局のセルに存在するすべての通信端末装置が十分な品質で受信できるような送信電力値に相当することは、いうまでもない。
なお、通常の送信電力値から差し引く値をDRC値の大きさに応じて設定している(図9におけるST902、ST904、ST906およびST907)のは、通信端末装置が報告してきたDRC値の大きさ、すなわち、通信端末装置の自局からの距離によって、この通信端末装置に対する送信電力値の最適値が異なることを考慮しているからである。これにより、送信データを受信する通信端末装置における受信品質を確実に良好に保つことができる。
この後、多重部108により生成された送信信号(パイロット信号および各通信端末装置に対する送信データが多重された信号)は、電力制御部109において、電力設定部802により設定された送信電力値となるように、一律に増幅されて送信RF部110に出力される。
次いで、すべての通信端末装置に対する送信データの送信電力値だけでなく、パイロット信号の送信電力値も下げる理由について説明する。送信データの送信電力値だけ下げて、パイロット信号の送信電力を通常の値にした場合には、ある他の基地局装置のセルに存在する通信端末装置では、パイロット信号を受信する際の受信品質が、送信データを実際に受信する際の受信品質よりも低くなる可能性がある。よって、これらの通信端末装置は、本来所定の受信品質を満たすのに十分な伝送レートよりも低速な伝送レートを基地局装置に対して報告することになる。この結果、上記他の基地局装置における下り回線の総スループット(通信端末装置へ送信した送信データの総量)が低下する。
そこで、本実施の形態では、すべての通信端末装置に対する送信データおよびパイロット信号の送信電力値を同レベルだけ低くする。これにより、他の基地局装置における総スループットの低下を防止することができる。
このように、本実施の形態においては、通信品質が良好な(基地局装置から近い位置に存在する)通信端末装置への送信データの通信が下り回線に占める割合に応じて、すなわち、下り回線に対する通信品質が良好な通信端末装置への送信データへの通信の割合に応じて、基地局装置が、パイロット信号およびすべての通信端末装置に対する送信データの送信電力値を決定することにより、自局のセルおよび他局のセルに存在する通信端末装置に対する干渉を抑えるとともに、下り回線の総スループット(通信端末装置へ送信した送信データの総量)を向上させることができる。
具体的には、通信品質が良好な通信端末装置への送信データの通信が下り回線に占める割合が大きい場合には、上記通信品質が良好な通信端末装置の自局との距離に基づいて、パイロット信号および全通信端末装置に対する送信データの送信電力値を一律に下げることにより、上記通信品質が良好な通信端末装置における受信品質を良好に保ちつつ、自局のセルおよび他局のセルに存在する通信端末装置に対する干渉を抑えることができる。
逆に、通信品質が良好な通信端末装置への送信データの通信が下り回線に占める割合が小さい場合には、パイロット信号および全通信端末装置に対する送信データの送信電力値を下げたままでは、基地局装置から遠い位置に存在する多くの通信端末装置における受信品質が悪くなるために、下り回線の総スループットが下がることになるので、パイロット信号および全通信端末装置に対する送信データの送信電力値を通常の値にする。これにより、下り回線の総スループットを大きくすること、すなわち、伝送効率を向上させることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態3において、下り回線における総スループットの変化に応じて、パイロット信号および送信データの送信電力値を通常の送信電力値に近づける場合について説明する。
上記実施の形態3では、通信品質が良好な通信端末装置への送信データの通信が下り回線に占める割合に応じて、パイロット信号および送信データの送信電力値を下げている。ところが、送信データの送信電力値を下げることにより、通信端末装置において正しく受信されないパケットが多数発生して、下り回線の総スループットが低下する可能性がある。この結果、非効率な伝送がなされることになる。
そこで、本実施の形態では、下り回線の総スループットを維持できているか否かを監視して、送信データの送信電力値を下げた後に下り回線の総スループットが低下した場合には、送信データの送信電力値を通常の値に近づけるようにする。
以下、本実施の形態にかかる基地局装置の構成について、図10を参照して説明する。図10は、本発明の実施の形態4にかかる基地局装置の構成を示すブロック図である。なお、図10における実施の形態3(図8)と同様の構成については、図8におけるものと同一の符号を付して、詳しい説明を省略する。
図10において、割当て部1001は、次の点を除いて、実施の形態3における割当て部101と同様の構成を有するものである。すなわち、割当て部1001は、DRC信号に基づいて決定した各通信端末装置への通信リソースの割り振り結果(どの通信端末装置に対してどのような伝送レートで送信を行うか)を、下り回線品質推定部1002に出力する。
下り回線品質推定部1002は、次の点を除いて、実施の形態3における下り回線品質推定部801と同様の構成を有するものである。すなわち、下り回線品質推定部1002は、割当て部1001からの割り振り結果を用いて、下り回線全体の総スループットの変化を監視し、実施の形態3で説明した認識結果およびこの総スループットの変化に基づいて送信電力を指示する情報を生成して電力設定部802に出力する。
次いで、上記構成を有する基地局装置の動作について、図10に加えて図11を参照して説明する。図11は、本発明の実施の形態4にかかる基地局装置の動作を示すフロー図である。なお、図11における図9と同様の動作については、詳しい説明を省略する。
ST902において送信電力値が通常より15[dB]下げられた後には、ST1101に示すように、下り回線品質推定部1002では、割当て部1001からの割り振り結果に基づいて下り回線の総スループットが監視され、送信電力が下げられる前より総スループットが低下しているか否かが判定される。総スループットが低下していない場合には、処理は上述したST901に移行する。総スループットが低下している場合には、処理は上述したST904に移行する。
同様に、ST904において送信電力値が通常より10[dB]下げられた後には、ST1102に示すように、下り回線品質推定部1002では、送信電力が下げられる前より総スループットが低下しているか否かが判定される。総スループットが低下していない場合には、処理は上述したST901に移行する。総スループットが低下している場合には、処理は上述したST906に移行する。
同様に、ST906において送信電力値が通常より5[dB]下げられた後には、ST1103に示すように、下り回線品質推定部1002では、送信電力が下げられる前より総スループットが低下しているか否かが判定される。総スループットが低下していない場合には、処理は上述したST901に移行する。総スループットが低下している場合には、処理は上述したST907に移行する。
なお、本実施の形態では、送信電力値を下げた後の総スループットを、送信電力値を下げる前における総スループットに維持できないときに、段階的に送信電力を通常の値に近づけていく(段階的に送信電力値を上げていく)場合について説明したが、送信電力値を直接通常の値にまで戻すようにしてもよい。
このように、本実施の形態によれば、下り回線の総スループットの変化に応じて、パイロット信号および送信データの送信電力値を通常の値に近づけることにより、送信データを下げることに起因する下り回線の総スループットの低下を防止することができる。これにより、効率的な送信データの伝送を実現することができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、基地局装置が、所定のDRC信号を報告してきた通信端末装置の数に基づいて、通信品質が良好な通信端末装置(自局から近い位置に存在する通信端末装置)に対する送信データの通信が下り回線において支配的になっているか否か(すなわち、下り回線が過剰品質となっているか否か)を検出し、さらに、検出結果に基づいて、パイロット信号およびすべての通信端末装置に対する送信データの送信電力を変更する場合について説明する。
上記実施の形態3では、通信品質が良好な通信端末装置に対する送信データの通信が、基地局装置のセル内における下り回線において支配的であるか否かを、送信データの送信先となる通信端末装置の総数と、所定のDRC信号を報告してきた通信端末装置の数との割合を用いて、検出している。
ところが、例えば、送信データの送信先となる通信端末装置の総数が少ない場合には、上記割合が閾値を超えたことによりパイロット信号およびすべての通信端末装置に対する送信データの送信電力を下げたときには、総スループットが下がる可能性がある。
そこで、本実施の形態では、所定のDRC信号を報告してきた通信端末装置の数に基づいて、通信品質が良好な通信端末装置への通信が下り回線において支配的となっているか否かを検出し、この検出結果に基づいてパイロット信号および全通信端末装置に対する送信データの送信電力を変化させる。
具体的には、例えば、所定のDRC信号を報告してきた通信端末装置の数が閾値以上である場合には、通信品質が良好な通信端末装置への通信が下り回線において支配的になっていることを認識し、必要以上の送信電力を用いて送信を行うことを防止するために、送信電力を下げる。逆に、所定のDRC信号を報告してきた通信端末装置の数が閾値を下回っている場合には、送信データの送信先となる通信端末装置の多くが自局から遠い位置に存在していることを認識し、送信電力を通常の電力値に戻す。
これにより、自局のセルおよび他局のセルに存在する通信端末装置に対する干渉を抑えるとともに、下り回線の総スループットを向上させることができる。
次いで、本実施の形態にかかる通信端末装置および基地局装置の構成について、図12から図14を用いて説明する。図12は、本発明の実施の形態5にかかる通信端末装置の構成を示すブロック図である。図13は、本発明の実施の形態5にかかる通信端末装置により用いられるDRC信号の一例を示す模式図である。図14は、本発明の実施の形態5にかかる基地局装置の構成を示すブロック図である。
まず、通信端末装置の構成について図12を参照して説明する。なお、図12における図5と同様の構成については、図5におけるものと同一の符号を付して、詳しい説明を省略する。
DRC信号作成部1201は、要求変調方式決定部201により決定された伝送レートを用いてDRC信号を作成する。具体的には、DRC信号作成部1201は、伝送レートに対応するDRC信号を示すDRCテーブル(例えば図13に示すDRCテーブル)を有しており、要求変調方式決定部201により決定された伝送レートに対応するDRC信号を作成する。このDRC信号作成部1201は、作成したDRC信号を変調部502に出力する。
次に、基地局装置の構成について図14を参照して説明する。なお、図14における図8と同様の構成については、図8におけるものと同一の符号を付して、詳しい説明を省略する。
下り回線品質推定部1401は、DRC信号検出部116からのDRC信号を用いて、自局に近い位置に存在する通信端末装置、すなわち、通信品質が良好な通信端末装置(パイロット信号のCIRが所定値より大きい通信端末装置)の数を認識し、さらに、認識された数と閾値との比較を行う。この下り回線品質推定部1401は、比較結果に基づいて送信電力を指示する情報を生成して電力設定部802に出力する。
次いで、上記構成を有する通信端末装置および基地局装置の動作について、さらに図15を参照して説明する。図15は、本発明の実施の形態5にかかる基地局装置の動作を示すフロー図である。なお、本実施の形態における実施の形態1〜実施の形態4と同様の動作については省略する。
図12に示す通信端末装置において、DRC信号作成部1201では、図13に示したDRCテーブルに従って、要求変調方式決定部201により決定された伝送レートに対応するDRC信号が生成される。生成されたDRC信号は、変調部502に出力される。
図14に示す基地局装置における動作は次の通りである。すなわち、下り回線品質推定部1401では、まず、ST1501に示すように、DRC信号検出部116からのDRC信号を用いて、DRC値3を報告してきた通信端末装置の数が認識された後、認識された数と閾値との比較がなされる。
この比較の結果、DRC値3を報告してきた通信端末装置の数が閾値以上である場合には、通信品質の良好な通信端末装置(DRC値3を報告してきた通信端末装置)への送信データの通信が下り回線において支配的になっていることが認識されて、ST1502に示すように、送信電力を例えば1[dB]下げる旨を指示する情報が生成される。逆に、DRC値3を報告してきた通信端末装置の数が閾値を下回っている場合には、送信データの送信先となる通信端末装置の多くが自局から遠い位置に存在している通信端末装置であることが認識されて、処理はST1503に移行する。
ST1503では、現時点での送信電力値が通常の送信電力値(最大値)であるか否かの判定がなされる。現時点での送信電力値が通常の送信電力値より小さい場合には、ST1504に示すように、送信電力を例えば1[dB]上げる旨を指示する情報が生成される。逆に、現時点での送信電力値が通常の送信電力値である場合には、送信電力を変更しない旨を指示する情報が生成されて処理はST1501へ移行する。
以上のようにして下り回線品質推定部1401により生成された情報は、電力設定部802に出力される。電力設定部802では、下り回線品質推定部1401により指示された情報に基づいて、パイロット信号および送信データの送信電力値が設定される。
このように、本実施の形態においては、通信品質が良好な(基地局装置から近い位置に存在する)通信端末装置の数に応じて、基地局装置が、パイロット信号およびすべての通信端末装置への送信データの送信電力値を決定することにより、自局のセルおよび他局のセルに存在する通信端末装置に対する干渉を抑えるとともに、下り回線の総スループットを向上させることができる。
具体的には、通信品質が良好な通信端末装置の数が閾値以上である場合には、パイロット信号および全通信端末装置に対する送信データの送信電力値を一律に下げることにより、上記通信品質が良好な通信端末装置における受信品質を良好に保ちつつ、自局のセルおよび他局のセルに存在する通信端末装置に対する干渉を抑えることができる。
逆に、通信品質が良好な通信端末装置の数が閾値を下回る場合には、パイロット信号および全通信端末装置に対する送信データの送信電力値を下げたままでは、基地局装置から遠い位置に存在する多くの通信端末装置における受信品質が悪化するために、下り回線の総スループットが下がることになるので、パイロット信号および全通信端末装置に対する送信データの送信電力値を通常の送信電力値に近づけていく。これにより、下り回線の総スループットを大きくすること、すなわち、伝送効率を向上させることができる。
さらに、本実施の形態によれば、送信データの送信先となる通信端末装置の総数が少ない場合においては、通信品質の良好な通信端末装置の数に基づいて送信電力を変化させるので、実施の形態3に比べて、下り回線の総スループットの低下を抑えることができる。
なお、本実施の形態においては、通信端末装置が変調方式のみを指定するDRC信号を基地局装置に対して報告する場合を例にとり説明したが、本発明は、通信端末装置が、実施の形態1〜実施の形態4で説明したようなDRC信号を報告する場合においても適用可能なものであることはいうまでもない。
また、本実施の形態においては、送信データの送信先となる通信端末装置の総数が少ないことに起因する、下り回線の総スループットの低下を防止するために、通信品質の良好な通信端末装置の数に基づいて、送信電力を変化させる場合について説明したが、実施の形態3と同様に、通信品質の良好な通信端末装置の数と、送信データの送信先となる通信端末装置の総数との割合に基づいて、送信電力を変化させることも可能であることはいうまでもない。
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態5において、下り回線における総スループットの変化に応じて、パイロット信号および送信データの送信電力値を通常の送信電力値に近づける場合について説明する。
上記実施の形態5では、通信品質が良好な通信端末装置の数に応じて、パイロット信号および送信データの送信電力値を下げている。ところが、実施の形態4で述べたように、送信データの送信電力値を下げることにより、通信端末装置において正しく受信されないパケットが多数発生して、下り回線の総スループットが低下する可能性がある。この結果、非効率な伝送がなされることになる。
そこで、本実施の形態では、実施の形態4と同様に、下り回線の総スループットを維持できているかを監視して、送信データの送信電力値を下げた後に下り回線の総スループットが低下した場合には、送信データの送信電力値を通常の値に近づけるようにする。
以下、本実施の形態にかかる基地局装置の構成について、図16を参照して説明する。図16は、本発明の実施の形態6にかかる基地局装置の構成を示すブロック図である。なお、図16における図10および図14と同様の構成については、図10および図14におけるものと同一の符号を付して、詳しい説明を省略する。
図16において、下り回線品質推定部1601は、次の点を除いて、実施の形態5における下り回線品質推定部1401と同様の構成を有するものである。すなわち、下り回線品質推定部1601は、割当て部1001からの割り振り結果を用いて、下り回線全体の総スループットの変化を監視し、実施の形態5で説明した比較結果およびこの総スループットの変化に基づいて送信電力を指示する情報を生成して電力設定部802に出力する。
なお、本実施の形態にかかる通信端末装置の構成については、実施の形態5(図12)と同様であるので、詳しい説明を省略する。
次いで、上記構成を有する基地局装置の動作について、さらに図17を参照して説明する。図17は、本発明の実施の形態6にかかる基地局装置の動作を示すフロー図である。なお、図17における図15と同様の動作については、詳しい説明を省略する。
ST1502において送信電力値が1[dB]下げられた後には、ST1701に示すように、下り回線品質推定部1601では、割当て部1001からの割り振り結果に基づいて下り回線の総スループットが監視され、送信電力が下げられる前より総スループットが低下しているか否かが判定される。総スループットが低下していない場合には、処理は上述したST1501に移行する。総スループットが低下している場合には、処理は上述したST1504に移行する。
なお、本実施の形態では、送信電力値を下げた後の総スループットを、送信電力値を下げる前における総スループットに維持できないときに、段階的に送信電力を通常の値に近づけていく(段階的に送信電力値を上げていく)場合について説明したが、送信電力値を直接通常の値にまで戻すようにしてもよい。
このように、本実施の形態によれば、下り回線の総スループットの変化に応じて、パイロット信号および送信データの送信電力値を通常の値に近づけることにより、送信データを下げることに起因する下り回線の総スループットの低下を防止することができる。これにより、効率的な送信データの伝送を実現することができる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、下り回線(データチャネル)が過剰品質になっているか否かを検出するための指標として、DRCの最高値を報告する通信端末装置の数または割合だけを用いる他に、通信端末装置が報告するDRC値の分布を用いる場合について説明する。
図18(a)は、本発明の実施の形態7にかかる通信端末装置により報告されたDRC値の分布の第1例を概念的に示す模式図である。図18(b)は、本発明の実施の形態7にかかる通信端末装置により報告されたDRC値の分布の第2例を概念的に示す模式図である。図18(a)および図18(b)においては、横軸に示す各DRC値に対して、そのDRC値を報告してきた通信端末装置の数が縦軸に示されている。
図18(a)に示すように、DRC値の分布が高い方(より高速な伝送レートの方)に極端に偏っている場合には、セルの下り回線が過剰品質になっていると推測することができる。すなわち、基地局装置は、必要以上の送信電力を用いて送信を行うので、自局のセルおよび他局のセルに存在する通信端末装置に対して大きな干渉を与えることになる。
そこで、このような場合には、パイロット信号および送信データの送信電力を下げることにより、図18(b)に示すように、DRC値の分布が高い方に極端に偏らないように(すなわち、通信品質の良好な通信端末装置に対する送信データの通信が下り回線において支配的とならないように)する。これにより、自局のセルおよび他局のセルに存在する通信端末装置に対する干渉を抑えることができる。
以下、本実施の形態にかかる基地局装置の構成について説明する。本実施の形態にかかる基地局装置の構成は、下り回線品質推定部が以下のような構成を有する点を除いて、図14に示したものと同様である。
すなわち、下り回線品質推定部は、DRC信号検出部116からのDRC信号を用いてDRC値(換言すれば、各通信端末装置におけるパイロット信号の受信品質)の平均値および分散を算出し、算出結果に基づいてDRC値の分布状態を判定する。この下り回線品質推定部は、分布状態の判定結果に基づいて送信電力を指示する情報を生成して電力設定部802に出力する。
次に、本実施の形態にかかる基地局装置の動作について、さらに図19を参照して説明する。図19は、本発明の実施の形態7にかかる基地局装置の動作を示すフロー図である。なお、本実施の形態における実施の形態5と同様の動作については、説明を省略する。
下り回線品質推定部において、まず、各通信端末装置により報告されたDRC値の平均値および分散が算出される。ST1901では、算出された平均値が閾値以上であるか否かの判定がなされ、算出された平均値が、閾値以上である場合には処理はST1902に移行し、閾値未満である場合には処理はST1904に移行する。
ST1902では、算出されたDRC値の分散が閾値以下であるか否かの判定がなされ、算出された分散が、閾値以下である場合には処理はST1903に移行し、閾値より大きい場合には処理はST1904に移行する。
ST1903では、算出された平均値が閾値以上であり、かつ、算出された分散が閾値以下であることにより、DRCの分布が高い方に極端に偏っていることが認識される。このため、送信電力を例えば1[dB]下げる旨を指示する情報が生成される。
一方、ST1904では、算出された平均値が閾値未満であるか、または、算出された分散が閾値より大きい場合には、DRCの分布が高い方に極端に偏っていないことが認識される。さらに、現時点の送信電力値が通常の送信電力値(最大値)であるか否かの判定がなされる。現時点の送信電力値が、通常の送信電力値である場合には処理はST1901に移行し、通常の送信電力値未満である場合には処理はST1905に移行する。ST1905では、送信電力を例えば1[dB]上げる旨を指示する情報が生成される。
ST1903またはST1905において生成された情報は、電力設定部802に出力される。
このように、本実施の形態においては、通信端末装置により報告されたDRC値の分布を用いることにより、下り回線が過剰品質になっているか否か、すなわち、通信品質が良好な通信端末装置への送信データの通信が下り回線において支配的になっているか否か、を確実に検出することができる。
(実施の形態8)
本実施の形態では、実施の形態7において、DRC値の平均値と分散の大きさに応じて送信電力値を制御する場合について説明する。
上記実施の形態7では、DRC値の平均値と分散とを用いてDRC値の分布状態を検出し、検出した分布状態を用いて、DRCの分布が高い方に極端に偏っている場合には送信電力を1[db]下げ、DRCの分布が高い方に極端に偏っていない場合には、送信電力を通常の送信電力値に近づけるように1[dB]だけ上げている。
ところが、DRCの分布が高い方に偏っている状況の中でも、DRCの分布がより高いDRC値に偏っている第1の場合もあれば、DRCの分布が第1の場合よりも小さいDRC値に偏っている第2の場合もある。DRCの分布状態が第1の場合にあるときと第2の場合にあるときとでは、送信電力値の最適な下げ幅は異なる。すなわち、第2の場合における最適な下げ幅は、他セルにおける通信端末装置に対する干渉および総スループットの観点からみれば、第1の場合における最適な下げ幅より小さくした方が好ましい。
同様に、DRCの分布が低い方に偏っている状況の中でも、DRCの分布がより低いDRC値に偏っている第3の場合もあれば、DRCの分布が第3の場合よりも高いDRC値に偏っている第4の場合もある。DRCの分布状態が第3の場合にあるときと第4の場合にあるときとでは、送信電力値の最適な上げ幅は異なる。すなわち、第3の場合における最適な上げ幅は、他セルにおける通信端末装置に対する干渉および総スループットの観点からみれば、第4の場合における上げ幅より大きくした方が好ましい。
そこで、本実施の形態においては、DRC値の平均値および分散を用いて検出されるDRC値の分布状況に基づいて、どのDRC値に極端な偏りが生じているのかを判断した後、判断結果に応じて送信電力値の制御(すなわち、上げ幅または下げ幅の制御)を行う。
以下、本実施の形態にかかる基地局装置の構成について説明する。本実施の形態にかかる基地局装置の構成は、下り回線品質推定部が以下のような構成を有する点を除いて、図14に示したものと同様である。
すなわち、下り回線品質推定部は、DRC信号検出部116からのDRC信号を用いてDRC値(換言すれば、各通信端末装置におけるパイロット信号の受信品質)の平均値および分散を算出し、算出結果に基づいてDRC値の分布状態(具体的には、どのDRC値に偏りが生じているか)を判定する。この下り回線品質推定部は、分布状態の判定結果に基づいて送信電力を指示する情報を生成して電力設定部802に出力する。
次に、本実施の形態にかかる基地局装置の動作について、図20および図21を参照して説明する。図20は、本発明の実施の形態8にかかる基地局装置におけるDRC値の平均値および分散と送信電力値との関係の一例を示す模式図である。図21は、本発明の実施の形態8にかかる基地局装置の動作を示すフロー図である。なお、本実施の形態における実施の形態7と同様の動作については、詳しい説明を省略する。
下り回線品質推定部において、まず、各通信端末装置により報告されたDRC値の平均値および分散が算出される。さらに、算出された平均値および分散を用いて、図20に示す関係に従って、送信電力を指示する情報が生成される。
具体的には、ST2101では、DRC値の平均値および分散が図20に示す領域6にあるか否かの判定がなされる。平均値および分散が領域6にある場合(すなわち、最も高いDRC値に偏りが生じている場合)には、ST2102において送信電力を10[dB]下げる旨の情報が生成された後、処理はST2101に戻る。逆に、平均値および分散が領域6にない場合には、処理はST2103に移行する。
ST2103では、DRC値の平均値および分散が領域5にあるか否かの判定がなされる。平均値および分散が領域5にある場合(すなわち、領域6の場合より低いDRC値に偏りが生じている場合)には、ST2104において送信電力を6[dB]下げる旨の情報が生成された後、処理はST2101に戻る。逆に、平均値および分散が領域5にない場合には、処理はST2105に移行する。
ST2105では、DRC値の平均値および分散が領域4にあるか否かの判定がなされる。平均値および分散が領域4にある場合(すなわち、領域5の場合より低いDRC値に偏りが生じている場合)には、送信電力を3[dB]下げる旨の情報が生成された後、処理はST2101に移行する。逆に、平均値および分散が領域4にない場合には、処理はST2107に移行する。
ST2107では、DRC値の平均値および分散が領域3にあるか否かの判定がなされる。平均値および分散が領域3にある場合(すなわち、いずれのDRC値にも偏りが生じていない最も好ましい場合)には、送信電力を上げるかまたは下げるかを指示する情報は生成されず、処理はST2101に移行する。逆に、平均値および分散が領域3にない場合には、処理はST2108に移行する。
ST2108では、DRC値の平均値および分散が領域2にあるか否かの判定がなされる。平均値および分散が領域2にある場合(すなわち、低いDRC値に偏りが生じている場合)には、ST2109において現時点での送信電力値が通常の送信電力値であるか否かの判定がなされる。現時点での送信電力値が通常の送信電力値である場合には、送信電力を変化させる旨の情報は生成されず、処理はST2101に戻る。現時点での送信電力値が通常の送信電力値でない場合には、ST2110において送信電力を3[dB]上げる旨を指示する情報が生成された後、処理はST2101に戻る。
逆に、ST2108において平均値および分散が領域2にない場合には、処理はST2111に移行する。
ST2111では、DRC値の平均値および分散が領域1にあるか否かの判定がなされる。平均値および分散が領域1にある場合(すなわち、領域2の場合より低いDRC値に偏りが生じている場合)には、ST2112において現時点での送信電力値が通常の送信電力値であるか否かの判定がなされる。現時点での送信電力値が通常の送信電力値である場合には、送信電力を変化させる旨の情報は生成されず、処理はST2101に戻る。現時点の送信電力値が通常の送信電力値でない場合には、ST2113において送信電力値を6[dB]上げる旨を指示する情報が生成された後、処理はST2101に移行する。
このように、本実施の形態においては、DRC値の平均値および分散を用いて、どのDRC値に極端な偏りが生じているかを判断した後、判断結果に基づいて、送信電力の制御を行うことにより、他セルにおける通信端末装置に対する干渉の低減および総スループットの改善を高速かつ高精度に行うことができる。
なお、上記実施の形態1〜上記実施の形態8で説明した制御をすべての基地局装置が行った場合には、各基地局装置のエリアがオーバーラップしている部分を減らすことができるので、送信電力を下げた一瞬はスループットが低下するかもしれないが、長期的にみれば、システム全体のスループットを極大化することができる。
また、上記実施の形態1〜上記実施の形態8で説明した基地局装置および通信端末装置は、それぞれ組み合わせて用いることが可能なものである。