形状やサイズの異なった複数のキャビティ内に溶融樹脂を満遍なく充填する従来の射出成形方法は、上記の特公平6−15188号に示された例では、樹脂の種類、温度、圧力が変わったとき、同時に充填完了させるための射出条件の調整設定に多くの工数と時間がかかり、射出後の樹脂圧力保持時間がどのキャビティについても一定であるため、成形品の形状、サイズが変わると成形品の保圧条件が合わないので、ひけやバリ等の成形不良が発生するという問題がある。
また、特開2001−205656に示された例は、各キャビティ毎に射出、保圧の工程の繰り返しを行っているので、全体の成形サイクルが長くなるという問題点がある。
本発明は、形状やサイズの異なった複数のキャビティを有しても、個々のキャビティ
に適切な射出充填工程と圧力保持工程が行え、成形サイクルを短くできる射出成形機の金型装置および射出成形方法を提供することを課題とするものである。
本発明は、上記の課題を解決するためになされ、下記の(1)から(7)の手段を提供するものであり、以下、特許請求の範囲に記載の順に説明する。
(1)その第1の手段として、複数のキャビティと同キャビティ毎に樹脂入口を有する金型と、射出ユニットに接合する樹脂供給通路および同樹脂供給通路から分岐し前記キャビティのそれぞれの樹脂入口に連通する複数の出口通路を有するホットランナと、同ホットランナの各出口通路毎に設けられ、同出口通路を開閉し開いたとき前記各キャビティへの樹脂供給を行う開閉手段および閉じた後各出口通路において前記キャビティ内の溶融樹脂を加圧保持する保圧手段ならびに開閉位置を検出するゲートバルブ閉位置センサを備えた複数のゲートバルブと、前記キャビティ毎に設置された充填完了検出手段と、同充填完了検出手段により射出充填していた1の前記キャビティの充填完了を検出すると同1のキャビティは加圧保持し他の1の前記キャビティの射出充填を行うように前記ゲートバルブの開閉動作と前記射出ユニットの射出スクリュの前進停止を制御する制御装置とを備え、且つ、前記開閉手段および前記保圧手段が、前記出口通路に抜き差し可能に配置されると共に前記出口通路に嵌入された状態にて前記出口通路内を前後進できる共通のプランジャにより構成されることを特徴とする射出成形機の金型装置を提供する。
(2)第2の手段としては、第1の手段の射出成形機の金型装置において、前記ゲートバルブは、前記出口通路に出没可能に嵌入する前記プランジャと、前記金型の支持台に固定され前記プランジャに直結して同プランジャ前後進させて前記ゲートバルブを開閉、保圧駆動する油圧シリンダのラムと、前記プランジャの先端部が前記出口通路に出没するときの位置を前記開閉位置として検出するゲートバルブ閉位置センサとを有し、前記プランジャの先端部が前記開閉位置から前記プランジャが一定距離抜き出された位置を全開位置、同開閉位置から同プランジャが前記出口通路内に一定距離嵌入した位置を全閉位置とし、同開閉位置と全開位置との間で前記キャビティへの樹脂供給を行い、同開閉位置と全閉位置との間で樹脂供給を断った後、前記プランジャを溶融樹脂の圧縮代および冷却縮小の分だけ前記全閉位置側にさらに押し込み停止し、前記キャビティ内の溶融樹脂を加圧保持するように、前記開閉手段と保圧手段を構成してなることを特徴とする射出成形機の金型装置を提供する。
(3)また、第3の手段として、第1の手段または第2の手段の射出成形機の金型装置において、前記射出スクリュの射出駆動手段が油圧シリンダであって、前記充填完了検出手段は、前記射出ユニットに設置された前記射出スクリュの位置検出スケールの射出ストローク信号が、前記制御装置において予め設定された各キャビティの充填量に見合う射出ストロークに到達した時充填完了とするように構成したもの、前記射出駆動手段の油圧シリンダの作動油圧が予め設定された各キャビティにおける射出充填の末期に上昇する射出圧値を超えた時充填完了とするように構成したもの、あるいは、キャビティ内樹脂圧センサの検出値が予め設定された各キャビティにおける射出充填の末期に上昇する樹脂圧値を超えた時充填完了とするように構成したもののうちのいずれか1つ以上を備えることを特徴とする射出成形機の金型装置を提供する。
(4)第4の手段として、第1の手段または第2の手段の射出成形機の金型装置において、前記射出スクリュの射出駆動手段がボールねじ軸とボールねじナットとサーボモータとを使用した電動直線移動機構であって、前記充填完了検出手段は、前記ボールねじ軸の回転数が、前記制御装置において予め設定された各キャビティの充填量に見合う前記射出スクリュの射出ストロークをボールねじ軸の回転数に換算した回転数に到達した時充填完了とするように構成したもの、あるいは、ボールねじ軸とボールねじ軸を支持するフレームとの間に荷重センサを介装し、同荷重センサの射出荷重が、前記制御装置において予め設定された射出充填の末期の射出荷重値に到達した時充填完了とするように構成したもののうちのいずれか1つ以上を備えることを特徴とする射出成形機の金型装置。
(5)第5の手段として、第1の手段ないし第4の手段のいずれかの射出成形機の金型装置において、前記複数のキャビティは互いに形状やサイズの異なったものを含むことを特徴とする射出成形機の金型装置。
(6)第6の手段として、第1の手段または第2の手段の射出成形機の金型装置を用い、前記複数のゲートバルブの内の1を開にして前記1のゲートバルブの出口通路と前記キャビティの1つを連通して他のゲートバルブは閉じ、前記射出スクリュを前進して前記1のキャビティに射出充填し、同キャビティの充填完了検出手段により充填完了を検出すると、同射出スクリュの前進を一旦停止し、前記1のゲートバルブの開閉手段により前記1のゲートバルブの出口通路の閉動作を行い前記保圧手段により前記1のキャビティ内の溶融樹脂を設定圧に加圧保持して冷却工程に入るとともに、前記1のゲートバルブが閉となったら次の1のキャビティのゲートバルブの開動作を行いその出口通路と次の1のキャビティを連通し、前記射出スクリュを再度前進させて前記次の1のキャビティに射出充填する工程を順次行い、それぞれの前記キャビティに対し個別に射出充填、保圧、冷却をすることを特徴とする射出成形方法を提供する。
(7)第7の手段として、第1の手段または第2の手段の射出成形機の金型装置を用い、前記複数のゲートバルブの内の1を開にして前記1のゲートバルブの出口通路と前記キャビティの1つを連通して他のゲートバルブは閉じ、前記射出スクリュを前進して前記1のキャビティに射出充填し、同キャビティの充填完了検出手段により充填完了を検出すると、前記1のゲートバルブの開閉手段により前記1のゲートバルブの出口通路の閉作動を行うと同時に次の1のキャビティのゲートバルブの開動作を行いその出口通路と次の1のキャビティを連通し、前記保圧手段により前記1のキャビティ内の溶融樹脂を設定圧に加圧保持して冷却工程に入るのと並行して、前記次の1のキャビティに射出充填する工程を順次行い、それぞれの前記キャビティに対し個別に射出充填、保圧、冷却をすることを特徴とする射出成形方法を提供する。
(1)特許請求の範囲に記載の請求項1の発明によれば、射出成形機の金型装置を、複数のキャビティと同キャビティ毎に樹脂入口を有する金型と、射出ユニットに接合する樹脂供給通路および同樹脂供給通路から分岐し前記キャビティのそれぞれの樹脂入口に連通する複数の出口通路を有するホットランナと、同ホットランナの各出口通路毎に設けられ、同出口通路を開閉し開いたとき前記各キャビティへの樹脂供給を行う開閉手段および閉じた後各出口通路において前記キャビティ内の溶融樹脂を加圧保持する保圧手段ならびに開閉位置を検出するゲートバルブ閉位置センサを備えた複数のゲートバルブと、前記キャビティ毎に設置された充填完了検出手段と、同充填完了検出手段により射出充填していた1の前記キャビティの充填完了を検出すると同1のキャビティは加圧保持し他の1の前記キャビティの射出充填を行うように前記ゲートバルブの開閉動作と前記射出ユニットの射出スクリュの前進停止を制御する制御装置とを備えてなるように構成したので、キャビティ毎に個別に射出充填と保圧を最適に設定でき、各キャビティにおける成形品の形状、サイズに応じて個別に射出と保圧条件を設定することができるため、ひけ、バリ等の生計不良を防ぎ、成形品の品質を上げることができるほか、射出スクリュは1のキャビティのゲートバルブが閉じた後は射出スクリュで1のキャビティの圧力保持をする必要が無く、直ぐに次の他の1のキャビティのゲートバルブが開になりしだい次の1のキャビティに射出充填が行え、また、各キャビティのゲートバルブが閉じた後は射出圧を保持する必要が無くなるので、直ぐに次の射出に備えた可塑化溶融工程に移行することができ、ペレットの可塑化溶融工程に余裕が取れ、射出工程全体の工程短縮できるという効果がある。
(2)請求項2の発明によれば、請求項1に記載の射出成形機の金型装置において、前記ゲートバルブは、前記出口通路に出没可能に嵌入するプランジャと、前記金型の支持台に固定され前記プランジャに直結して同プランジャ前後進させて前記ゲートバルブを開閉、保圧駆動する油圧シリンダのラムと、前記プランジャの先端部が前記出口通路に出没するときの位置を前記開閉位置として検出するゲートバルブ閉位置センサとを有し、前記プランジャの先端部が前記開閉位置から前記プランジャが一定距離抜き出された位置を全開位置、同開閉位置から同プランジャが前記出口通路内に一定距離嵌入した位置を全閉位置とし、同開閉位置と全開位置との間で前記キャビティへの樹脂供給を行い、同開閉位置と全閉位置との間で樹脂供給を断ち前記キャビティ内の溶融樹脂を加圧保持するように、前記開閉手段と保圧手段を構成したので、ゲートバルブのプランジャの出没により出口通路を開閉して各キャビティへの樹脂供給を行う開閉手段とするとともに、プランジャを開閉位置を越えて出口通路内に押し込むことによりキャビティ内の溶融樹脂を加圧保持する保圧手段とすることができ、それぞれのキャビティに個別の条件で射出充填が行え、各キャビティ内の樹脂圧力を冷却固化するまで保持することができるので、請求項1の発明の作用効果を、簡明な構造で確実に奏することができる。
(3)請求項3の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の射出成形機の金型装置において、前記射出スクリュの射出駆動手段が油圧シリンダであって、前記充填完了検出手段は、前記射出ユニットに設置された前記射出スクリュの位置検出スケールの射出ストローク信号が、前記制御装置において予め設定された各キャビティの充填量に見合う射出ストロークに到達した時充填完了とするように構成したもの、前記射出駆動手段の油圧シリンダの作動油圧が予め設定された各キャビティにおける射出充填の末期に上昇する射出圧値を超えた時充填完了とするように構成したもの、あるいは、キャビティ内樹脂圧センサの検出値が予め設定された各キャビティにおける射出充填の末期に上昇する樹脂圧値を超えた時充填完了とするように構成したもののうちのいずれか1つ以上を備えるように構成したので、射出スクリュの射出駆動手段が油圧シリンダである場合において、各キャビティにおける充填完了を確実に自動的に検出でき、請求項1または請求項2の発明の作用効果をより確実に奏することができる。
(4)請求項4の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の射出成形機の金型装置において、前記射出スクリュの射出駆動手段がボールねじ軸とボールねじナットとサーボモータとを使用した電動直線移動機構であって、前記充填完了検出手段は、前記ボールねじ軸の回転数が、前記制御装置において予め設定された各キャビティの充填量に見合う前記射出スクリュの射出ストロークをボールねじ軸の回転数に換算した回転数に到達した時充填完了とするように構成したもの、あるいは、ボールねじ軸とボールねじ軸を支持するフレームとの間に荷重センサを介装し、同荷重センサの射出荷重が、前記制御装置において予め設定された射出充填の末期の射出荷重値に到達した時充填完了とするように構成したもののうちのいずれか1つ以上を備えるように構成したので、射出スクリュの射出駆動手段がボールねじ軸とボールねじナットとサーボモータとを使用した電動直線移動機構である場合において、各キャビティにおける充填完了を確実に自動的に検出でき、また、各キャビティの射出ストロークを油圧駆動の場合より射出スクリュの速度と位置の制御が正確にできるので制御が容易であり、請求項1または請求項2の発明の作用効果をより確実に奏することができる。
(5)請求項5の発明によれば、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の射出成形機の金型装置において、前記複数のキャビティは互いに形状やサイズの異なったものを含むように構成したので、従来各キャビティ毎の成形品質に問題を生じやすかった形状やサイズの異なった複数のキャビティを有する金型の場合においても、請求項1ないし請求項4のいずれかの発明の作用効果を奏することができる。
(6)請求項6の発明によれば、射出成形方法を、請求項1または請求項2に記載の射出成形機の金型装置を用い、前記複数のゲートバルブの内の1を開にして前記1のゲートバルブの出口通路と前記キャビティの1つを連通して他のゲートバルブは閉じ、前記射出スクリュを前進して前記1のキャビティに射出充填し、同キャビティの充填完了検出手段により充填完了を検出すると、同射出スクリュの前進を一旦停止し、前記1のゲートバルブの開閉手段により前記1のゲートバルブの出口通路の閉動作を行い前記保圧手段により前記1のキャビティ内の溶融樹脂を設定圧に加圧保持して冷却工程に入るとともに、前記1のゲートバルブが閉となったら次の1のキャビティのゲートバルブの開動作を行いその出口通路と次の1のキャビティを連通し、前記射出スクリュを再度前進させて前記次の1のキャビティに射出充填する工程を順次行い、それぞれの前記キャビティに対し個別に射出充填、保圧、冷却をするように構成したので、請求項1または請求項2に記載の射出成形機の金型装置の作用効果を奏して、各キャビティにおける成形品の成形不良を防ぎ、成形品の品質を上げることができるほか、射出スクリュは、1のキャビティのゲートバルブが閉じた後は射出スクリュで1のキャビティの圧力保持をする必要が無く、直ぐに次の他の1のキャビティのゲートバルブが開になりしだい次の1のキャビティの射出充填を行ない、また、各キャビティのゲートバルブが閉じた後は射出圧を保持する必要が無く、直ぐに次の射出に備えた可塑化溶融工程に移行することができ、ペレットの可塑化溶融工程に余裕が取れ、射出工程全体の工程を短縮できる。
(7)請求項7の発明によれば、射出成形方法を、請求項1または請求項2に記載の射出成形機の金型装置を用い、前記複数のゲートバルブの内の1を開にして前記1のゲートバルブの出口通路と前記キャビティの1つを連通して他のゲートバルブは閉じ、前記射出スクリュを前進して前記1のキャビティに射出充填し、同キャビティの充填完了検出手段により充填完了を検出すると、前記1のゲートバルブの開閉手段により前記1のゲートバルブの出口通路の閉作動を行うと同時に次の1のキャビティのゲートバルブの開動作を行いその出口通路と次の1のキャビティを連通し、前記保圧手段により前記1のキャビティ内の溶融樹脂を設定圧に加圧保持して冷却工程に入るのと並行して、前記次の1のキャビティに射出充填する工程を順次行い、それぞれの前記キャビティに対し個別に射出充填、保圧、冷却をするように構成したので、請求項1または請求項2に記載の射出成形機の金型装置の作用効果を奏して、各キャビティにおける成形品の成形不良を防ぎ、成形品の品質を上げることができるほか、射出スクリュは、1のキャビティのゲートバルブが閉じた後は射出スクリュで1のキャビティの圧力保持をする必要が無く、しかも1のキャビティの充填完了検出手段により充填完了を検出すると、1のゲートバルブの出口通路の閉作動を行うと同時に次の1のキャビティのゲートバルブの開動作を行いその出口通路と次の1のキャビティを連通し射出充填を行なうため各キャビティへの溶融樹脂の射出を殆ど停滞することなく連続して行うことができ、また、各キャビティのゲートバルブが閉じた後は射出圧を保持する必要が無く、直ぐに次の射出に備えた可塑化溶融工程に移行することができ、ペレットの可塑化溶融工程に余裕が取れ、射出工程全体の工程をより短縮できる。
図1から図6に基づき本発明の実施例1に係る射出成形機の金型装置および射出成形方法を説明する。図1は、本実施例の、射出成形機の複数のキャビティを有する金型装置の構成と油圧射出ユニットの制御系統を示す模式図、図2は図1の金型のゲートバルブおよびその周辺の詳細な構成を示す部分拡大図、図3は図1の金型と射出ユニットを用いた射出成形の工程図、図4は図1の金型のゲートバルブと射出ユニットの射出スクリュの動作を制御する制御回路と機能部品を示すブロック図で、ゲートバルブの切換えタイミングを射出ストロークの指定された位置としたもの、図5は図4のブロック図において、ゲートバルブの切換えタイミングを射出油圧の設定値に換えた場合の制御回路と機能部品の部分ブロック図、図6は図4のブロック図において、ゲートバルブの切換えタイミングを樹脂圧力の設定値に換えた場合の制御回路と機能部品の部分ブロック図である。
本実施例は、射出駆動に油圧シリンダを用いた射出ユニットを使用し、形状やサイズの異なった複数のキャビティとキャビティ内の溶融樹脂を加圧保持できる機能を持つゲートバルブとを備えた金型装置、および同装置により射出充填するとき、樹脂通路におけるゲートバルブの切換えタイミングを、射出ストロークの指定された位置、射出油圧の設定値、あるいは樹脂圧力の設定値とした射出成形方法を示す。
図1において、1は射出ユニットの主要な構成部品である射出ユニット本体であり、射出ユニット本体1は、射出シリンダ1aを備えると共に、その内部に挿入された射出スクリュ2を回転駆動するモータ4を支え、軸方向にガイドするガイド部材1bを備え、射出スクリュ2を軸方向に前後進させる油圧シリンダ1cを備えている。射出スクリュ2の後端は油圧シリンダ1c内の油圧ピストン3に結合し、油圧ピストン3を後方に突き通した延長軸はモータ4と直結している。
油圧シリンダ1cは4方向切換弁33を経て油圧ポンプ32からの作動油供給配管につながっている。油圧ポンプ32は回転速度変更、油圧変換が可能なようにサーボモータ31で駆動される(サーボモータの代わりにインバータで回転制御される交流モータを使用してもよい)。5は射出スクリュ2の軸に軸方向を拘束され、回転方向は拘束されないように取付けられたスクリュ位置検出スケールであり、スクリュ位置検出スケール5の検出信号は制御装置25に伝えられる。
7は射出成形機に固定ダイプレート(図示省略)と支持盤9を介して固定された固定金型であり、固定金型7は可動金型8と結合したとき、溶融樹脂を受け入れる複数のキャビティ11A、11B、11Cを形成する(図1では、3つのキャビティを図示しているが、もっと多くの、例えばキャビティ11D、キャビティ11E・・・等が同時に設けられてもよい)。本実施例において複数のキャビティ11A〜11Cは形状やサイズが異なったものとしているが、本発明は同じ形状、サイズの複数のキャビティに対しても同様に適用できる。なお、可動金型8は成形品取り出しのとき固定金型7から離れる方向に移動可能である。
固定金型7にはホットランナ10が取り付けられており、ホットランナ10にはキャビティへ溶融樹脂を供給するための樹脂通路10dと、樹脂通路10dから分岐し各キャビティ11A、キャビティ11B、キャビティ11Cへ連通する出口通路10a、10b、10cとが設けられ、溶融樹脂が固まらぬように常時加温されている。また、各キャビティへの出口通路10a、10b、10cは、それぞれ円筒形のプランジャ14A、14B、14Cが嵌挿摺動可能なように円筒形の貫通孔となっており、それらが後述の油圧シリンダ9A〜9C、ゲートバルブ閉位置センサ17A〜17c等と共に各々ゲートバルブ13A、13B、13Cを構成している。
図2に示すように、ゲートバルブ13Aの円筒形のプランジャ14Aは、その後端側がホットランナ10を貫通して支持盤9に設けられたシリンダ本体22の油圧シリンダ9A内を摺動するラム21に結合されている。シリンダ本体22はシリンダ蓋23と共締めで支持盤9に取付けられている。支持盤9にはゲートバルブ閉位置センサ17Aが取付けられ、その検出部はシリンダ本体22を突通し、先端が油圧シリンダ9Aの円筒内面と同一面になるように仕上げられ、ラム21には、その端面の円周に沿って感知部24が設けられている。
ゲートバルブ閉位置センサ17Aが電磁コイル構造の場合は、感知部24は磁性体、シリンダ本体22とラム21は非磁性体にする必要がある。ゲートバルブ閉位置センサ17Aは射出開始信号と次のゲートバルブ13Bの起動信号を発する。このゲートバルブ13Aおよびその周辺の構造は、ゲートバルブ13B、13Cにおいても同様である。
ラム21が2点鎖線で示したような油圧シリンダ9Aの後端に接する位置(図2の実線位置から距離e移動した右端位置)においてゲートバルブ13Aは樹脂通路全開となる全開位置となっており、逆方向に移動すると、ラム21が実線の位置(プランジャ14aの先端部が出口通路10aに出没する位置:開閉位置)でゲートバルブ13Aの閉が始まり、ラム21が図上でさらに左方向に距離c移動して油圧シリンダ9Aの後端に接するとゲートバルブ13Aのプランジャ14Aは停止し、全閉位置となる。
キャビティ11Aに溶融樹脂が充填した後、ラム21の右側に油圧が作用し、ラム21が全開位置から距離e(開閉位置)を越えてさらに左方向に進みプランジャ14Aの先端が出口通路10aに挿入されると、樹脂に圧力が加えられ、圧力が保持された状態のまま冷却される。この保圧工程においては、プランジャ14Aの先端は出口通路10a内を距離cの範囲を摺動し、キャビティ11Aの樹脂圧力にバランスした位置で樹脂圧を保持する。キャビティ11A内で冷却して固化した成型品は、型開のとき可動金型の方に付着して固定金型から離れ、同時に加圧されたプランジャ14Aがストローク一杯に先端側に移動して出口通路10aに残って固まった成形品のゲートランナを押し出す。以上の操作、作用はゲートバルブ13B、13Cにおいても同様である。
制御装置25は、各キャビティ11A〜11C毎に設置された充填完了検出手段と、射出充填工程のプログラムに従いゲートバルブ13A、13B、13Cを開閉し、射出スクリュ2を油圧シリンダ1cを前進駆動させ、充填完了検出手段の信号により射出スクリュを停止するように制御する。充填完了検出手段は3つの方式があり、どの方式を使用してもよい。
充填完了検出手段(a)は、図3の工程図、図4に示す制御回路と機能部品のブロッ
ク図に示すように、射出スクリュ2が射出前進するとき、各キャビティ11A〜11Cの充填量に見合うキャビティ毎の射出ストロークを予め射出ストローク設定器52に設定し制御装置25に入力するとともに、スクリュ位置検出スケール5が射出スクリュ2のストロークを検出して制御装置25に伝え、各キャビティ11A〜11Cの充填完了位置を検出する方式である。
充填完了検出手段(b)は、図3の工程図、図5に示す制御回路と機能部品のブロッ
ク図に示すように、充填の末期にキャビティ内において上昇する溶融樹脂の圧力に対応して上昇する射出圧をゲートバルブ保圧切換射出圧として各キャビティ11A〜11C毎に予めゲートバルブ保圧切換射出圧設定器55に設定し制御装置25に入力するとともに、各キャビティ11A〜11Cの射出圧を油圧計37で検出して制御装置25に伝え、各キャビティ11A〜11C充填完了位置を検出する方式である。
充填完了検出手段(c)は、図3の工程図、図6に示す制御回路と機能部品のブロック図に示すように、充填の末期にキャビティ11内において上昇する溶融樹脂の圧力をゲートバルブ保圧切換樹脂圧として各キャビティ11A〜11C毎に予めゲートバルブ保圧切換樹脂圧設定器56に設定し制御装置25に入力するとともに、各キャビティ11A〜11Cの樹脂圧を樹脂圧センサ16A〜16Cで検出して制御装置25に伝え、各キャビティ11A〜11C充填完了位置を検出する方式である。
図1に示した金型と射出ユニットの制御系統によって射出成形するときの1サイクルの工程は図3の工程ブロック図で示すとおりである。図3の横軸は時間軸である。最上段は射出ユニットの射出シリンダ1a、射出スクリュ2による溶融樹脂の射出工程を示し、その下段にはキャビティ11Aの射出充填と樹脂圧力の保持(保圧)、冷却をブロックで示し、その下にキャビティ11Bの射出充填と樹脂圧保持、冷却、その下にキャビティ11Cの射出充填と樹脂圧保持、冷却を示している。
その下は射出スクリュ2のストロークとキャビティ11A〜11C毎の射出完了位置を×で示す。その下はキャビティ11A〜11C毎の射出圧(油圧計37)、又は各キャビティ内の樹脂圧力(樹脂圧センサ16A〜16C)を示す。その下は各ゲートバルブ13A〜13Cの保持圧を、その下には順にゲートバルブ13A、ゲートバルブ13B、ゲートバルブ13Cの開閉のタイミングを示す。最下段は型締装置の工程を示している。
図1〜図6により射出スクリュ2の動作とこれに伴う各ゲートバルブ13A〜13Cの動作の制御方法を以下に説明する。
(1)射出充填の準備:制御装置25の射出スクリュ制御回路51からサーボモータ31に指示して適当な射出速度が得られる送油量が出せるような回転速度で油圧ポンプ32を回転駆動し、4方向切換弁33は閉じ位置で圧油を受け、比例圧力弁34は供給油圧を設定圧に制御する。また、ゲートバルブ13を駆動する方の油圧ポンプ42もサーボモータ41で回転駆動され、切換弁46A、46B、46Cはいずれも閉じ位置で圧油を受け、比例圧力弁44は油圧を設定圧に制御する。47は油圧計である。固定金型7と可動金型8が型締された後、射出工程が始まる。
(2)キャビティ11Aへの射出充填:射出スクリュ制御回路51からゲートバルブ作動制御回路53へ、切り換え弁46Aの切換えを指示し、ゲートバルブ13Aのプランジャ14Aが後進して溶融樹脂の通路を開く。キャビティ11Aへの溶融樹脂の射出は、ゲートバルブ13Aが開き始めた時点(開閉位置)から行われる。すなわち、プランジャ14Aの先端面が出口通路10a内からホットランナ10の樹脂通路10dに達した位置(図2において実線の位置、および図3のゲートバルブ13A開閉線図上の○印)で、ゲートバルブ閉位置センサ17Aがゲートバルブ13A開の信号をゲートバルブ作動制御回路53へ送り、ゲートバルブ作動制御回路53から射出スクリュ制御回路51を経て4方向切換弁33に切り換えを指示し、油圧シリンダ1cに作動油を送り、射出スクリュ2が前進し、溶融樹脂をゲートバルブ13A側の出口通路10aからキャビティ11A内に射出充填する。
キャビティ11Aへの溶融樹脂の充填完了信号は上述した3通りの方式、すなわち、(a)射出ストローク設定器52で設定したストローク位置をスクリュ位置検出スケール5が検出したとき(図3で射出ストロークの線図上の×印、)、又は、(b)油圧計37がゲートバルブ保圧切換射出圧設定器55の設定圧力を検出したとき(射出圧の線図上の×印)、又は、(c)樹脂圧センサ16Aがゲートバルブ保圧切換樹脂圧設定器56の設定圧を検出したとき(キャビティ内樹脂圧の線図上の×印)に、射出スクリュ制御回路51から発せられる。
上記3通りの検出信号は単独でも複合して確認するようにしても良い。キャビティ11Aへの溶融樹脂の充填完了信号は射出スクリュ制御回路51から、ゲートバルブ作動制御回路53に伝えられ、ゲートバルブ作動制御回路53は切換弁46Aの切換えを指示し、ゲートバルブ13Aのプランジャ14Aを前進させ、プランジャ14Aが開閉位置で出口通路10aを閉じると射出スクリュ2が停止する。プランジャ14Aはさらに前進してキャビティ11A内の溶融樹脂を油圧シリンダ9Aにより加圧し、溶融樹脂の圧縮代と冷却縮小分だけプランジャ14Aは更に前進して停止し圧力を加えたまま冷却工程に入る。
(3)キャビティ11Bへの射出充填:ゲートバルブ13Aのプランジャ14Aを前進して出口通路10aを閉じたときの位置(開閉位置:図3のゲートバルブ13A開閉線上の△印)をゲートバルブ閉位置センサ17Aが検出し、その信号がゲートバルブ作動制御回路53に伝えられると、切換弁46Bが切換えられてゲートバルブ13Bのプランジャ14Bが後進を開始して溶融樹脂の出口通路10bを開く。キャビティ11Bへの溶融樹脂の射出は、ゲートバルブ13Bが開き始めた時点(開閉位置)から行われる。
ゲートバルブ13Bが開き始める位置(開閉位置)は上記のゲートバルブ13Aの場合と同様に、プランジャ14Bの先端面が出口通路10b内から樹脂通路10dに達した位置であり、ゲートバルブ閉位置センサ17Bのゲートバルブ13B開の信号がゲートバルブ作動制御回路53、射出スクリュ制御回路51を経て4方向切換弁33に切り換えを指示し、油圧シリンダ1cに駆動されて射出スクリュ2が前進し、溶融樹脂をゲートバルブ13B側の出口通路10bからキャビティ11B内に射出充填する。
キャビティ11Bへの溶融樹脂の充填完了信号は、上記のキャビティ11Aに、(a)射出ストローク設定器52で設定したストローク位置をスクリュ位置検出スケール5が検出したとき(図3で射出ストロークの線図上の2番目の×印、)、又は、(b)油圧計37がゲートバルブ保圧切換射出圧設定器55の設定圧力を検出したとき(射出圧の線図B上の×印)、又は、(c)樹脂圧センサ16Bがゲートバルブ保圧切換樹脂圧設定器56の設定圧を検出したとき(キャビティ内樹脂圧の線図B上の×印)に、射出スクリュ制御回路51から発せられる。
キャビティ11Bへの溶融樹脂の充填完了信号は射出スクリュ制御回路51からゲートバルブ作動制御回路53に伝えられ、切換弁46Bを切換え、プランジャ14Bを前進させ、プランジャ14Bがその開閉位置で出口通路10bの通路を閉じると射出スクリュ2が停止し、プランジャ14Bはさらに前進してキャビティ11B内の溶融樹脂を油圧シリンダ9Bにより加圧し、溶融樹脂の圧縮代と冷却縮小分だけゲートバルブ13Bは更に前進して停止し圧力を加えたまま冷却工程に入る。
(4)キャビティ11Cへの射出充填:ゲートバルブ13Bのプランジャ14Bを前進して出口通路10bを閉じたときの位置(開閉位置:図3のゲートバルブ13B開閉線上の△印)をゲートバルブ閉位置センサ17Bが検出し、その信号がゲートバルブ作動制御回路53に伝えられると、切換弁46Cが切換えられてゲートバルブ13Cのプランジャ14Cが後進を開始して溶融樹脂の出口通路10cを開く。キャビティ11Cへの溶融樹脂の射出は、ゲートバルブ13Cが開き始めた時点(開閉位置)から行われる。
ゲートバルブ13Cが開き始める位置(開閉位置)はプランジャ14Cの先端面が出口通路10c内から樹脂通路10dに達した位置で、位置センサ17Cのゲートバルブ13C開の信号がゲートバルブ作動制御回路53、射出スクリュ制御回路51を経て4方向切換弁33に切り換えを指示し、油圧シリンダ1cに駆動されて射出スクリュ2が前進し、溶融樹脂をゲートバルブ13C側の出口通路10cからキャビティ11C内に射出充填する。
キャビティ11Cへの溶融樹脂の充填完了信号は、(a)スクリュ位置出スケール5のストローク位置信号(図3で射出ストロークの線図上の3番目の×印)、(b)油圧計37で検出した射出圧信号(射出圧の線図C上の×印)、(c)樹脂圧センサ16Cで検出した溶融樹脂の圧力信号、のいずれかにより、射出スクリュ制御回路51から発せられる。
キャビティ11Cへの溶融樹脂の充填完了信号は射出スクリュ制御回路51からゲートバルブ作動制御回路53に伝えられ、切換弁46Cを切換え、プランジャ14Cを前進させ、プランジャ14Cが出口通路10bを閉じると(開閉位置:図3のゲートバルブ13C開閉線上の△印)、射出スクリュ2が停止し、プランジャ14Cはさらに前進してキャビティ11C内の溶融樹脂を油圧シリンダ9Cにより加圧し、溶融樹脂の圧縮代と冷却縮小分だけゲートバルブ13Cは更に前進して停止し圧力を加えたまま冷却工程に入る。キャビティが3つ以上ある場合の射出充填も上述のキャビティ11B、又は、キャビティ11Cにおけると同様の工程で作動される。
(5)射出充填工程の1サイクルの完了:最後のキャビティ11Cへの射出充填後、ゲートバルブ13Cが閉じた後は、射出スクリュ2は射出圧を保持する必要が無くなるので、樹脂圧力を下げ、次の射出に備えて、射出スクリュ2は回転しながら後進し、樹脂材料を溶融可塑化して射出スクリュ2の先端に貯溜する。また、型締装置は、金型キャビティへの溶融樹脂を射出充填、圧力保持冷却の工程中は型締め加圧を継続し、冷却工程を終わった時点で、型開を開始するが、このとき全てのゲートバルブ13A〜13Cのプランジャ14A〜14Cは更にストロークの最後まで前進して成形品と共にゲートランナを押し出す。充分に型開した後、成形品が取出され、型閉して射出充填の工程の1サイクルが完了する。
このように本実施例においては、各キャビティ11A〜11Cは対応するゲートバルブ13A〜13Cにより溶融樹脂の出口通路10a〜10bを個別に遮断し、各ゲートバルブのプランジャ14a〜14cを個別に樹脂通路に押し込むことにより、キャビティ11A〜11Cを個別に圧力保持してキャビティ内の樹脂圧力を冷却固化するまで保持することができるので、射出スクリュ2は、各キャビティ11A〜11Cに対する各ゲートバルブ13A〜13Cが閉じた後は射出圧を保持する必要が無く、直ぐに次の射出に備えた可塑化溶融工程に移行することができ、ペレットの可塑化溶融工程に余裕が取れ、射出工程全体の工程短縮を図ることができる。
本発明の実施例2に係る射出成形機の金型装置および射出成形方法を、図7に基づき説明する。図7は、図1の金型と射出ユニットを用いた本実施例の射出成形の工程図である。本実施例は実施例1に対して射出開始のタイミングを早めたものであり、図1、図2に示される射出成形機の金型装置の構成と油圧射出ユニットの制御系統、金型のゲートバルブおよびその周辺の詳細な構成、図4〜図6に示す金型のゲートバルブと射出ユニットの射出スクリュの動作を制御する制御回路と機能部品は、本実施例でも同様なので、これらの図も参照する。
(1)射出充填の準備と(2)キャビティ11Aへの射出充填の工程は、実施例1と全く同様であるので記載を省略する。
(3)キャビティ11Bへの射出充填:キャビティ11Aへの溶融樹脂の充填完了は、
前述した3通りの方式で検出される。すなわち、(a)スクリュ位置検出スケール5のストローク位置信号(図7で射出ストロークの線図上の1番目の×印)、(b)油圧計37で検出した射出圧信号(射出圧の線図A上の×印)、(c)樹脂圧センサ16Aで検出した溶融樹脂の圧力信号、のいずれかが、射出スクリュ制御回路51へ伝えられる。これらの信号は単独でも複合して確認するようにしても良い。
キャビティ11Aへの溶融樹脂の充填完了信号は、射出スクリュ制御回路51からゲートバルブ作動制御回路53に伝えられ、ゲートバルブ作動制御回路53は切換弁46Aを切換えを指示し、ゲートバルブ13Aのプランジャ14Aを前進させプランジャ14Aは出口通路10aを閉じる。また、切換弁46Aの切換えと同時に切換弁46Bが切換えられてゲートバルブ13Bのプランジャ14Bが後進を開始して溶融樹脂の出口通路10bを開き、その開閉位置からキャビティ11Bへの溶融樹脂の射出が始まる。切換弁46Aと切換弁46Bの切換えは同時に行われるが、ゲートバルブ13Aが閉じるときのプランジャ14Aの前進移動距離eよりは、ゲートバルブ13Bが開き始めるまでにプランジャ14Bが後進する距離cが長く、ゲートバルブ13Aの閉とゲートバルブ13Bの開との間に僅かな樹脂流れが止まる時間が生じるが、各プランジャ14a、14bの移動時間は作動油配管に(図示略の)流量調整弁を設けることで調整でき、射出スクリュ2は殆ど停止せずに前進することができる。
キャビティ11Bへの溶融樹脂の射出は、ゲートバルブ13Bが開き始めた時点(開閉位置)から行われる。ゲートバルブ13Bが開き始める位置(開閉位置)は、ゲートバルブ13Bのプランジャ14Bの先端面が出口通路10b内から樹脂通路10dに達した位置で、ゲートバルブ閉位置センサ17Bのゲートバルブ13B開の信号がゲートバルブ作動制御回路53、射出スクリュ制御回路51を経て4方向切換弁33に切り換えを指示し、油圧シリンダ1cに駆動されて射出スクリュ2が前進し、溶融樹脂をゲートバルブ13B側の出口通路10bからキャビティ11B内に射出充填する。キャビティ11Bへの溶融樹脂の充填完了から、キャビティ11Bへの溶融樹脂の加圧保持、冷却工程までは実施例1と同様である。
(4)キャビティ11Cへの射出充填:キャビティ11Bへの溶融樹脂の充填完了は上述の3通りの方式で検出され、いずれかの方式により、射出スクリュ制御回路51へ伝えられる。キャビティ11Bの溶融樹脂の充填完了信号は射出スクリュ制御回路51からゲートバルブ作動制御回路53に伝えられ、ゲートバルブ作動制御回路53は切換弁46Bを切換えを指示し、ゲートバルブ13Bのプランジャ14Bを前進させ、ゲートバルブ13Bは出口通路10bを閉じる。切換弁46Bの切換えと同時に、切換弁46Cが切換えられてゲートバルブ13Cのプランジャ14Cが後進を開始して溶融樹脂の出口通路10cを開き、その開閉位置からキャビティ11Cへの溶融樹脂の射出が始まる。切換弁46Bと切換弁46Cの切換えは同時に行われ、プランジャ14Bの前進移動距離eとプランジャ14Cが後進する距離cの違いがあるが、前述のように、射出スクリュ2は殆ど停止せずに前進させることが可能である。
キャビティ11Cへの溶融樹脂の射出は、ゲートバルブ13Cが開き始めた時点(開閉位置)から行われる。ゲートバルブ13Cが開き始める位置(開閉位置)は上記のゲートバルブ13Bの場合と同様に、ゲートバルブ13Cのプランジャ14Cの先端面が樹脂通路10aに達した位置で、ゲートバルブ閉位置センサ17Cのゲートバルブ13C開の信号がゲートバルブ作動制御回路53、射出スクリュ制御回路51を経て4方向切換弁33に切り換えを指示し、油圧シリンダ1cに駆動されて射出スクリュ2が前進し、溶融樹脂をゲートバルブ13C側の出口通路10cからキャビティ11C内に射出充填する。
キャビティ11Cへの溶融樹脂の充填完了から、キャビティ11Cへの溶融樹脂の加圧保持、冷却工程までは実施例1と同様である。
図7の工程図で示すように、本実施例の射出成形方法においては、1つのキャビティのゲートバルブの閉動作と次のキャビティのゲートバルブの開動作とが並行して行われるため、射出スクリュ2から各キャビティ11A〜11Cへの溶融樹脂の射出を殆ど停滞することなく連続して行うことができるので、射出充填のサイクルタイムを短くすることができ、生産能力を向上させることができる。また、実施例1と同様に、各キャビティ11A〜11Cにおける成形品の形状、サイズに応じて個別に射出、保圧の条件を設定することができ、成形品の品質を上げる効果がある。
本発明の実施例3に係る射出成形機の金型装置および射出成形方法を、図8、図9に基づき説明する。図8は、本実施例の射出成形機の複数のキャビティを有する金型装置の構成と油圧射出ユニットの制御系統を示す模式図、図9は図4のブロック図において、ゲートバルブの切換えタイミングを図8のボールねじ荷重センサの荷重設定値に換えた場合の制御回路と機能部品の部分ブロック図である。
本実施例は、射出駆動にボールねじ機構を用いた射出ユニットを使用し、形状やサイズの異なった複数のキャビティと金型キャビティ内の溶融樹脂を加圧保持できる機能を持つゲートバルブとを備えた金型装置、および同装置により射出充填するとき、樹脂通路におけるゲートバルブの切換えタイミングを、射出ストロークの指定された位置とする、またはボールねじの負荷荷重の設定値とする射出成形方法を示す。
本実施例において、実施例1、実施例2と異なる装置構成は、射出スクリュ2の射出駆動手段が、油圧シリンダ1cを用いた油圧駆動でなく、ボールねじ軸64とボールねじナット62とサーボモータ65とを使用した電動直線移動機構であること、また、各キャビティ11A〜11Cの充填完了検出手段が、各キャビティ11A〜11Cの充填量に見合う射出ストロークをボールねじ軸64の回転数に換算して充填完了位置を判定するか、または、ボールねじ軸64の軸受とボールねじ軸支持フレームとの間に設けたボールねじ荷重センサ(ロードセル)68の荷重の設定値により判定する点であり、図1における、ホットランナ10にゲートバルブ13A〜13Cを備えた金型装置の構造、ゲートバルブ13A〜13Cの駆動用油圧制御系統、および、ゲートバルブ13A〜13Cの制御方法、図2に示すゲートバルブの構造については実施例1、実施例2のものと同様なので説明を省略する。
図8において、射出シリンダ61aを一体に備えた射出ユニット本体61は図示しない射出成形機の基盤に固定設置され、射出ユニット本体61には射出シリンダ61aの中心軸に対称にボールねじナット62、62が固設されている。図示しない射出成形機の基盤上には射出シリンダ61aの軸方向に摺動可能な移動フレーム63が設置され、移動フレーム63には、図示しない軸受により、射出スクリュ2が軸方向を拘束し、回転自在に取付けられ、射出スクリュ2は移動フレーム63に固設されたモータ4により回転駆動される。
また、移動フレーム63には射出スクリュ2に軸対称にボールねじ軸64、64が、図示しない軸受により軸方向を拘束し、回転自在に取付けられており、同じ移動フレーム63に固設されたサーボモータ65、65により回転を同調して駆動される。サーボモータ65、65は図9に示す制御装置66の射出スクリュ制御回路67において回転数、回転速度、始動、停止を同調制御される。移動フレーム63と片側のサーボモータ65の取付面との間にボールねじ軸64の引張力を測定検出するボールねじ荷重センサ(ロードセル)68が介装され、ボールねじ軸64を支持するフレームである移動フレーム63とボールねじ軸64との間の荷重センサとして働く。ボールねじ荷重センサ68の検出した引張力を2倍にして射出スクリュ2の射出押出力を得ることができる。
制御装置66は射出スクリュ制御回路67とゲートバルブ作動制御回路53とを内蔵している。射出スクリュ2の射出工程は、射出スクリュ制御回路67に組込まれた作動プログラムに従ってサーボモータ65、65が回転し、射出スクリュ2がキャビティ毎の射出充填の前進をする。
各キャビティ11A〜11Cへの充填完了は、(a)そのキャビティ11A〜11Cの充填量に見合う射出ストロークをボールねじ軸64、64の回転数に換算して充填完了位置とし、その回転数に達したとき充填完了とするか、又は、(b)ボールねじ軸64の負荷を検出するボールねじ荷重センサ(ロードセル)68の検出値をキャビティ毎のゲートバルブ保圧切換ボールねじ荷重設定器69の設定荷重と比較し、キャビティ11への射出充填の末期にボールねじ荷重センサ68の検出射出荷重が設定されたゲートバルブ保圧切換ボールねじ荷重値を超えたときに充填完了とする。
また射出スクリュ制御回路67が充填完了を検知した後は、(1)実施例1のように、ボールねじ軸64、64の回転を止め、射出スクリュ2を停止し、ゲートバルブ作動回路53に伝えて保圧以降の工程に移行するか、(2)実施例2のように、充填完了信号をゲートバルブ作動回路53に伝えて保圧以降の工程に移行するとき、同時に次のゲートバルブのプランジャを後退させて次のキャビティへの射出充填に入る。いずれも、以降の工程、方法は実施例1、実施例2と同様であるので、説明を省く。
本実施例の電動駆動射出ユニットは各キャビティ11A〜11Cの射出ストロークを油圧駆動射出ユニットの場合より正確に位置制御することができるので、射出充填のサイクルタイムを短くでき、生産能力を向上させ、各キャビティにおける成形品の形状、サイズに応じて個別に射出と保圧の条件を設定することができ、成形品の品質を上げる効果については、実施例1、実施例2の成形方法と同様である。
また、上記の全ての実施例の射出成形方法において、予め設定された各キャビティ11A〜11C内の樹脂圧力の多段パターンをゲートバルブ押込み面積と油圧シリンダ面積より油圧パターンを算出し、制御回路が比例圧力弁44に指示して、個別にゲートバルブ13A、13B、13Cの付加圧力を多段パターン制御する射出成形方法も可能である。
以上、本発明を図示の各実施例について説明したが、本発明は上記の実施例に限定されず、本発明の範囲内でその具体的構成、構造に種々の変更を加えてよいことはいうまでもない。
なお、本発明は、実施例に示したように、複数のキャビティが形状やサイズの異なったものでも、個々のキャビティに適切な射出充填工程と圧力保持工程が行え、成形サイクルを短くできる射出成形機の金型装置および射出成形方法を提供することを課題としたが、同じ形状、サイズの複数のキャビティに対しても有効に適用でき、個々のキャビティに適切な射出充填工程と圧力保持工程が行え、成形サイクルを短くできる射出成形機の金型装置および射出成形方法となることは勿論である。