まず、本発明による「第1の能動素子」と、本発明による「第2の能動素子」とに共通する基本的な構成とその作用・効果を説明する。
本発明による能動素子(第1および第2の能動素子)は、互いの間で放電を発生させるカソード電極およびアノード電極(これらを統括して「一対の放電発生電極」とも呼ぶ。)と、これらの間に流れる放電電流の大きさを制御する放電制御電極とを備えている。
カソード電極とアノード電極とは、ある方向に沿って所定の間隔で配置されている。カソード電極とアノード電極との間に所定の電位差が与えられると、その電位差に応じた電位構造(電気力線や等電位面の分布であらわされる)がこれらの間に形成され、この電位構造に応じて放電の発生の有無および放電電流の大きさが決定される。この電位構造は、放電制御電極の電位によって変化する(乱される)ので、カソード電極とアノード電極とが導通している状態(これらの間に放電電流が流れている状態)と、導通していない状態(これらの間に放電電流が流れていない状態)とを切り替えることができ、また、カソード電極とアノード電極との間に流れる放電電流の大きさを変化させることができる。すなわち、放電制御電極の電位に応じて(より厳密には、カソード電極、アノード電極および放電制御電極間の相対的な電位の高低関係に応じて)、放電電流の大きさを制御することができる。
本発明による能動素子は、例えば、アノード電極を受動素子に電気的に接続されることによって、受動素子への電荷や電流の供給を制御するスイッチング素子として機能する。ここでいう受動素子は、例えば、一対の電極とそれらの間に挟持された液晶層とから構成される液晶容量や、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子である。あるいは、本発明による能動素子は、その近傍に蛍光体層を備えていることによって、プラズマ放電により蛍光体層を発光させる発光素子として機能する。
従来能動素子として用いられてきた薄膜トランジスタは、ゲート電極、ゲート絶縁膜、半導体層、ソース電極およびドレイン電極などの薄膜が多数積層されて構成されている。これに対して、本発明による能動素子は、上述したように簡単で簡素な構成を有しているので、簡便な製造プロセスで製造することができる。
また、薄膜トランジスタが半導体層を流れる電流を制御するのに対して、本発明による能動素子は、放電電流を制御するので、薄膜トランジスタ(TFT)のようにオフ電流が発生することがない。
さらに、カソード電極、アノード電極および放電制御電極が絶縁膜を介して互いに重ならない構成とすることが容易であり、これらが重なった部分に形成される容量に起因する電気信号の遅延やなまりの発生を防止することができる。
本発明による能動素子は、上述したような利点を有しているため、大型の表示装置(例えばフラットディスプレイパネル)に好適に用いることができる。
次に、本発明による「第1の能動素子」に特有の構成を説明する。
本願発明者は、一対の放電発生電極と放電制御電極との相対的な配置関係と、放電の制御の容易さとの関係を詳細に検討した。その結果、放電制御電極を所定の位置、より具体的には、放電の経路の側方で、且つ、放電発生電極間に生成される電位構造に対して放電制御電極の電位が及ぼす影響の強さが放電発生電極の配列方向に略直交する方向に沿って変化するような位置に設けることによって、放電電流の大きさを容易にかつ効果的に制御できることを見出した。本発明による「第1の能動素子」は、上記知見に基づいて想到されたものである。なお、本願明細書において、「放電経路の側方」は、放電経路から、放電電流が流れる方向(カソード電極とアノード電極との電位差に応じて生成される電気力線に平行な方向)に略直交する方向に沿って離れた領域を指すものとする。
本発明による「第1の能動素子」では、放電制御電極が放電経路の側方に設けられ、且つ、カソード電極とアノード電極との電位差に応じて生成される電位構造に対して放電制御電極の電位が及ぼす影響の強さが、カソード電極およびアノード電極の配列方向(「第1方向」と称する。)に略直交する方向(「第2方向」と称する。)に沿って変化する。従って、カソード電極とアノード電極との電位差に応じて生成される電気力線(第1方向に平行であり、第2方向に沿って複数並ぶ)に対して放電制御電極が及ぼす影響の強さが第2方向(電気力線の並ぶ方向)に沿って変化する。そのため、カソード電極とアノード電極との間に生成される電気力線の数(すなわち電界強度)を容易にかつ効果的に制御することができ、その結果、放電電流の大きさを容易にかつ効果的に制御することができる。
「第1の能動素子」は、例えば、カソード電極およびアノード電極が、第2方向に平行に長手方向が規定される形状を有し、放電制御電極が、カソード電極およびアノード電極から第2方向に沿って離れた位置に設けられている構成を採用することによって実現される。
また、「第1の能動素子」は、カソード電極とアノード電極との間の距離d1、カソード電極と放電制御電極との間の距離d2、および、アノード電極と放電制御電極との間の距離d3が、d1<d2かつd1<d3の関係を満足し、カソード電極と放電制御電極との間の距離d2と、アノード電極と放電制御電極との間の距離d3とが略等しい構成を採用することによっても実現される。
続いて、本発明による「第2の能動素子」に特有の構成を説明する。
本願発明者は、さらに詳細な検討を重ねた結果、放電経路の近傍に放電制御電極を設けるとともに、放電経路から比較的離れた位置にさらなる放電制御電極を設けることによって、放電電流の制御を容易かつ効果的に行うことができることを見出した。本発明による「第2の能動素子」は、本願発明者が見出した上記知見に基づいて想到されたものである。
本発明による「第2の能動素子」は、放電制御電極として「第1放電制御電極」と「第2放電制御電極」とを有しており、「第1放電制御電極」は、「第2放電制御電極」よりも放電経路に近い。従って、放電経路に近い第1放電制御電極によって専ら放電電流のオン/オフ制御を行い、放電経路に遠い第2放電制御電極によって放電電流の大きさをなめらかに制御することができる。そのため、放電電流の制御を容易かつ効果的に行うことができる。さらに、放電発生電極間に印加する放電発生電圧として直流定電圧を用い、第1放電制御電極および第2放電制御電極に印加する第1放電制御電圧および第2放電制御電圧として比較的低い電圧を用いた駆動が可能になるので、高電圧をパルス的に印加できる高耐圧ドライバを電源として用いる必要がなく、製造コストを低減することができる。
ここで、本発明による能動素子において制御される放電現象(プラズマ現象)を説明する。「放電」とは、電極間に電圧を印加することによってガスが充満している空間に生ずる絶縁破壊現象であり、放電発生後はこの空間には正イオンと電子とがほぼ等量存在するプラズマ状態が現れる。そして、「放電電流」とは、そのようなプラズマ状態(放電状態)において、正電荷をもつ正イオンおよび負電荷をもつ電子がキャリアとしての役割を果たす電流のことである。
以下、放電現象(プラズマ現象)をより詳しく説明する。
ガスが充満している空間の電界値(通常、電界値/ガス圧力という値が用いられる)が大きくなり、空間に存在する電子が加速されてガス原子(分子)に衝突することによって正イオンと電子とが生じる現象と、空間に存在する正イオンが負電位側の電極(カソード電極)表面に衝突して2次電子が発生する現象とが組合わされることによって、正イオンと電子とが生成され、それぞれの粒子は空間に存在する電界によって互いに逆方向に移動する。粒子の移動(電流のキャリアの移動)の形態としては、このような電界によるドリフト現象の他、粒子の不均一分布に起因する拡散現象も存在する。
上述したような放電電流の流れ方は、同じように空間に電流を流す真空管や電界放出ディスプレイ(FED)とは異なる機構である。真空管では、熱せられたフィラメントから放出された電子が電流のキャリアとなる。また、FEDでは、鋭利なカソード電極から電界放出を利用して引き出された電子が電流のキャリアとなる。
真空管やFEDと比較して、放電(プラズマ)が異なる点は他にもあり、その例として、電流が流れる空間に存在する電気力線や等電位面の分布の様子が挙げられる。真空管やFEDでは、電子流の引き出し用電極近傍を除いてはカソード電極とアノード電極(正電位側の電極)との間を電気力線はほぼ直線状に存在する必要があり、そのような電気力線に沿って電子が移動する。従って、カソード電極およびアノード電極は基本的には互いに対向するように設けられている必要がある。また、等電位面は、カソード電極とアノード電極との間の空間にほぼ等間隔で存在している。
これに対して、放電(プラズマ)の場合は、電気力線はカソード電極とアノード電極との間を結ぶものの、その形状が直線状である必要はなく、例えばアーチ状(後述する図1などを参照)であってもよい。また、等電位面はカソード近傍に偏って多く、すなわち、等電位面の間隔がカソード近傍で短く、その部分で電位勾配が急で電界が強いという放電特有の分布となる。
放電(プラズマ)の場合には、上述したような独特の電位構造が形成されるので、逆に言うと、そのような電位構造が維持できなければ放電は発生しない。このような放電現象の特性を利用すると、外部からの外乱電位の印加によって放電を制御することが可能になる。なお、真空管やFEDでは、電極間の電位構造が多少変化しても電流は依然として流れる。
また、放電(プラズマ)状態では、正電荷をもつ正イオンと負電荷をもつ電子とが等量存在するので、巨視的に見た場合には電気的に中性の状態となっている。つまり、電気的に安定な状態が実現されている。これに対して、真空管やFEDでは、電子のみが存在するので、適切に電子の流れを制御しないと電子同士の負電荷が反発し合って電子流が膨張してしまう。つまり、真空管やFEDでは、電子が流れている状態は、電気的に不安定な状態であり、電流を十分に得るためには、高電圧で電子を加速する必要が生じてしまう。
以下、図面を参照しながら、本発明による実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
(実施形態1)
まず、図1(a)および(b)を参照しながら本発明による実施形態1の能動素子100の構造を説明する。図1(a)は、能動素子100を模式的に示す斜視図であり、図1(b)は、能動素子100を模式的に示す上面図である。
能動素子100は、図1(a)および(b)に示すように、互いの間で放電を発生させるカソード電極1およびアノード電極2と、カソード電極1とアノード電極2との間に流れる放電電流の大きさを制御する放電制御電極3とを備えている。カソード電極1とアノード電極2との間に流れる放電電流の大きさは、後述するように放電制御電極3の電位に応じて制御される。なお、図1(a)において参照符号101は、カソード電極1とアノード電極2との間で放電が発生している様子(放電の経路)を模式的に示している。
カソード電極1とアノード電極2とは、ある方向(第1方向)D1に沿って所定の間隔で設けられている。また、放電制御電極3は、カソード電極1およびアノード電極2から、第1方向D1に略直交する第2方向D2に沿って離れた位置に設けられている。本実施形態では、カソード電極1、アノード電極2および放電制御電極3は、略同一平面上に形成されており、より具体的には、絶縁性表面を有する基板10上に形成されている。
さらに、能動素子100は、少なくともカソード電極1とアノード電極2との間にイオン化可能な放電ガス(不図示)を有している。放電ガスは、例えば、基板10上に形成されたガス封入構造(不図示)の内部に封入されている。
能動素子100は、例えば、以下のようにして製造される。
まず、基板10上に、カソード電極1、アノード電極2および放電制御電極3を形成する。ここでは、基板10として、厚さ3mmのソーダガラスからなるガラス基板を用いる。勿論、基板10の材質や厚さはこれに限定されず、能動素子100の製造プロセスに耐え得る基板であればよい。能動素子100の用途によっては、透明性を有する基板を用いる。例えば、バックライトからの光を表示に用いる透過型液晶表示装置や透過反射両用型液晶表示装置に用いる場合には、透明性を有する基板を用いる。反射型液晶表示装置や有機EL表示装置に用いる場合には、金属や樹脂等の材料からなる不透明性の基板であってもよい。
また、電極の材料としてニッケルを用い、スクリーン印刷法によってカソード電極1、アノード電極2および放電制御電極3を形成する。まず、ニッケル粉末やバインダー材料などを含んで構成されるニッケルペーストを、所定のパターンを有するスクリーン版のメッシュ部を通過させて基板10上に塗布する。次に、基板上に塗布されたニッケルペーストを約300℃で乾燥・固化させる。その後、約600℃で焼成を行うことによって導電性が得られる。
ここでは、カソード電極1、アノード電極2および放電制御電極3を、直方体状(基板10法線方向から見て長方形状)に以下の寸法で形成する。なお、ここで例示する寸法は、20インチ以上で60インチ程度までの表示装置が画素ごとに備えるスイッチング素子として好適な寸法であるが、勿論これに限定されるものではない。
カソード電極1:幅W150μm×長さL180μm、厚さ15μm
アノード電極2:幅W250μm×長さL280μm、厚さ15μm
放電制御電極3:幅W350μm×長さL3150μm、厚さ15μm
カソード電極1とアノード電極2とは、図1に示すように、互いに長辺が対向するように設けられている。そして、放電制御電極3は、カソード電極1とアノード電極2との間に位置しないように設けられており、その長辺がカソード電極1およびアノード電極2の短辺に対向するように設けられている。また、カソード電極1、アノード電極2および放電制御電極3は、以下のような間隔をあけて形成されている。
カソード電極1とアノード電極2との間の距離d1=50μm
カソード電極1と放電制御電極3との間の距離d2=150μm
アノード電極2と放電制御電極3との間の距離d3=150μm
カソード電極1とアノード電極2との間の最長距離d1’=150μm
なお、本願明細書において、2つの部材間の「距離」は、特にことわらない限り、2つの部材の近接する端部間の距離である「最短距離」を指すものとする。また、部材間の「最長距離」は、2つの部材の離隔した端部間の距離を指す。
上述の電極の材料としては、ニッケルに限定されず、導電性があり、適当な2次電子放出係数をもつ金属を用いることができ、銀やアルミニウムなどを用いてもよい。また、電極の形成方法もスクリーン印刷法に限定されず、サンドブラスト法や感光性ペースト法などを用いて厚さ1μm以上の厚膜として形成してもよい。さらに、スパッタ法や電子ビーム蒸着法を用いて厚さ1μm以下の薄膜を形成し、ドライエッチングまたはウエットエッチングプロセスによって所定の電極パターン(形状)に形成してもよい。本実施形態のようにスクリーン印刷法を用いると、簡便に電極の形成を実行することができ、基板上に多数のスイッチング素子が形成された装置の大型化が容易に実現される。
さらに、上述のようにして形成された電極の表面に、六ホウ化ランタンや六ホウ化ガドリニウムあるいは酸化マグネシウムなどの、2次電子放出係数が高く、高い耐スパッタ性を有する材料からなる被覆膜を形成してもよい。このような被覆膜は、例えば、電着法やスパッタ法あるいは電子ビーム蒸着法などを用いて形成することができる。
次に、上述のようにして電極が形成された基板10上に、ガス封入構造を形成する。まず、カソード電極1、アノード電極2および放電制御電極3を取り囲むように、ガラスを主成分とするフリット材を塗布する。続いて、ガス封入構造の高さを規定するスペーサ(高さ約200μm)と封止用ガラス板とを所定の位置に配置し、約600℃で焼成することによって、電極が形成された基板とガラス板とがフリット材によって接着されたガス封入構造が形成される。その後、ガス封入構造の内部を真空引きし、放電ガスとしてキセノンが5%混入されたネオンを15kPaの圧力で封入・封止する。基板10上に能動素子100を複数個形成する場合には、それらを取り囲むようにガス封入構造を形成すればよい。
なお、放電ガスとしては、ここで例示したものに限定されず、電極が腐食されたり、電極に付着したりすることがないガスであればよい。ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノンなどの希ガスや、これらの混合物を用いると、比較的低い電圧で放電を発生させることができる。また、放電ガスとして、大気を大気圧で用いると、ガス封入構造とその作製工程を省略することができるので、より簡易な構成が実現され、製造プロセスを簡略化することができる。
以下、上述のようにして形成された本実施形態の能動素子100の特性と動作原理を説明する。
能動素子100は、例えば、受動素子を駆動するスイッチング素子として機能する。能動素子100を用いて受動素子(被駆動部)を駆動する場合、例えば、図1(a)に示すように、放電発生電圧(ここではゲート電圧Vg)を供給する電源6とカソード電極1とを電気的に接続し、放電制御電圧(ここではデータ電圧Vd)を供給する電源7と放電制御電極3とを電気的に接続し、アノード電極2と被駆動部(受動素子)4とを電気的に接続する。被駆動部4が等価的に容量である場合、例えば、一対の電極(画素電極および対向電極)とこれらの間に挟持された液晶層とからなる液晶容量である場合には、能動素子100がオンとされると、被駆動部4に電荷が蓄積される。また、被駆動部4が等価的に抵抗である場合、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子である場合には、能動素子100がオンとされると、被駆動部4に電流が流れる。
また、能動素子100は、その近傍に蛍光体層を備えていることによって、プラズマ放電により蛍光体層を発光させる発光素子として機能する。放電電流の大きさ(量)とプラズマ中の励起ガス(例えばキセノン)からの紫外線放射が単調増加の関係にあれば、能動素子100から発生する紫外線量を放電制御電極3の電位に応じて制御することができるので、フォトルミネッセンス効果による発光の輝度を制御することができる。
本実施形態の能動素子100の特性を図2(a)および(b)を参照しながら説明する。図2(a)および(b)は、カソード電極1に印加する放電発生電圧Vgおよび放電制御電極3に印加する放電制御電圧Vdの一方を一定とし、他方を変化させたときの、被駆動部4に供給される(すなわちカソード電極1とアノード電極2との間を流れる)電流Iの変化を示すグラフである。
図2(a)に示すように、カソード電極1に印加する放電発生電圧Vgを一定(Vg=−250V)とし、放電制御電極3に印加する放電制御電圧Vdを変化させると、被駆動部4に供給される電流Iの大きさがゼロから所定の大きさまでなめらかに線形的に変化する。
また、図2(b)に示すように、放電制御電極3に印加する放電制御電圧Vdを一定(Vd=0VまたはVd=+30V)とし、カソード電極1に印加する放電発生電圧Vgを変化させると、被駆動部4に供給される電流Iの大きさがゼロから所定の大きさまでなめらかに線形的に変化する。
このように、本発明による能動素子100においては、被駆動部4に供給される電流Iの大きさを制御することができる。これは、カソード電極1、アノード電極2および放電制御電極3のそれぞれの電位の相対的な高低関係によって、カソード電極1とアノード電極2との間に流れる放電電流の大きさが変化するためである。以下、図3(a)〜(c)を参照しながらさらに詳しく説明する。図3(a)〜(c)は、電極間の電位差に応じて発生する電気力線Eを模式的に示す図である。
まず、放電制御電極3の電位V3が、カソード電極1の電位V1とアノード電極2の電位V2との間にあってアノード電極2の電位V2よりも低いとき(V2>V3>V1であるとき)には、カソード電極1とアノード電極2との間の電位差(V2−V1)が、カソード電極1と放電制御電極3との間の電位差(V3−V1)よりも大きい。従って、図3(a)に示すように、電気力線Eは、カソード電極1とアノード電極2との間に主に存在する。そのため、このような電位になるようにそれぞれの電極に電圧を印加したときには、カソード電極1とアノード電極2との間で放電が発生し、これらの間に放電電流が流れる。
また、放電制御電極3の電位V3が、カソード電極1の電位V1とアノード電極2の電位V2との間になくアノード電極2の電位V2よりも高いとき(V3>V2>V1であるとき)には、カソード電極1と放電制御電極3との間の電位差(V3−V1)が、カソード電極1とアノード電極2との間の電位差(V2−V1)よりも大きくなる。従って、電気力線Eは、図3(b)に示すように、カソード電極とアノード電極2との間だけでなく、カソード電極1と放電制御電極3との間にも存在する。そのため、このような電位になるようにそれぞれの電極に電圧を印加したとき、カソード電極1とアノード電極2との間に発生する放電は、図3(a)に示した場合に比べて弱く、これらの間に流れる放電電流の大きさは図3(a)に示した場合に比べて小さい。
そして、放電制御電極3の電位V3が、カソード電極1の電位V1とアノード電極2の電位V2との間になくアノード電極2の電位V2よりも十分に高いときには、カソード電極1と放電制御電極3との間の電位差(V3−V1)が、カソード電極1とアノード電極2との間の電位差(V2−V1)よりも十分に大きくなる。従って、電気力線Eは、図3(c)に示すように、カソード電極1と放電制御電極3との間に主に存在し、カソード電極1とアノード電極2との間にはほとんど存在しない。従って、このような電位になるようにそれぞれの電極に電圧を印加したとき、カソード電極1とアノード電極2との間には、放電はほとんど発生せず、これらの間には放電電流がほとんど流れない。
このように、放電制御電極3は、カソード電極1とアノード電極2との間に生成される電気力線Eを選択的に放電制御電極3に導き、それによってカソード電極1とアノード電極2との間の電気力線Eの数(すなわち電界強度)を減らす機能を奏する。従って、本発明による能動素子100においては、カソード電極1とアノード電極2との間に印加される放電発生電圧と、放電制御電極3に印加される放電制御電圧とを調整することによって、カソード電極1とアノード電極2との間に流れる放電電流の大きさを変化させることができ、そのことによって、被駆動部4に供給される電流Iの大きさを制御することができる。すなわち、本発明による能動素子100は、プラズマ放電部をチャネルとした3端子能動素子(トランジスタ)であるとも言える。ただし、薄膜トランジスタとは異なり、本発明による能動素子100は、半導体層やゲート絶縁層を備える必要がなく、これらと同等の効果を放電(プラズマ放電)およびその発生特性により実現しているので、その製造に際して半導体層やゲート絶縁膜を作製するための高価な真空装置を必要としない。そのため、設備投資の額を少なくすることができるし、素子自体の製造コストを低くすることができる。
上述したように、能動素子100が備える放電制御電極3は、カソード電極1とアノード電極2との間の電位差に応じて放電空間内に生成される電位構造に影響を及ぼし、そのことによって放電電流の大きさを制御する。放電制御電極3が放電空間内のある場所(点)の電位構造に及ぼす影響の強さは、放電制御電極3とその場所(点)との距離に応じて変化し、近いほど強く、遠いほど弱い。能動素子100では、図1(a)および(b)に示したように、放電制御電極3は、放電経路101の側方、より具体的には、カソード電極1およびアノード電極2から第2方向D2に沿って離れた位置に設けられている。従って、カソード電極1とアノード電極2との電位差に応じて生成される電位構造に対して放電制御電極3の電位が及ぼす影響の強さが、第2方向D2に沿って変化する。すなわち、カソード電極1とアノード電極2との電位差に応じて生成される電気力線E(第1方向に平行であり、第2方向に沿って複数並ぶ)に対して放電制御電極3の電位が及ぼす影響の強さが第2方向D2(電気力線の並ぶ方向)に沿って変化する。そのため、カソード電極1とアノード電極2との間(放電空間内)に生成される電気力線を選択的に放電制御電極3に導いて電界強度を調整することが容易となり、その結果、放電電流の大きさを容易にかつ効果的に制御することができる。
また、本実施形態では、カソード電極1およびアノード電極2が、配列方向である第1方向D1に略直交する第2方向に平行に長手方向が規定される形状を有しているので、放電電流の大きさをより効果的に制御することができる。この理由は以下の通りである。放電空間内に発生する電気力線の数を効果的に制御するためには、放電制御電極3の電位が放電空間内の電位構造に与える影響の強さが、放電空間内で大きく変化することが好ましい。カソード電極1およびアノード電極2の長手方向が第2方向D2に平行であるということは、放電制御電極3がカソード電極1およびアノード電極2から長手方向に沿って離れているということなので、放電空間と放電制御電極3との最短距離と、放電空間と放電制御電極3との最長距離との差を大きく確保することができる。従って、放電制御電極3が放電空間内の電位構造に与える影響の強さを放電空間内で大きく変化させることができる。そのため、電気力線Eを選択的に放電制御電極3に導いて放電電流を制御することがより容易となる。
また、放電制御電極3が長手方向を有する形状である場合には、その長手方向が第1方向D1に平行であると、放電空間内に生成される電位構造に対して放電制御電極3が効果的に影響を及ぼすことができる。
ここまでは、カソード電極1およびアノード電極2の配列方向と、カソード電極1およびアノード電極2に対して放電制御電極3が位置する方向との関係という観点から本発明を説明したが、ここで、各電極間の間隔(距離)という観点から本発明を説明する。
本実施形態では、カソード電極1とアノード電極2との間の距離d1(=50μm)よりも、カソード電極1と放電制御電極3との間の距離d2(=150μm)およびアノード電極2と放電制御電極3との間の距離d3(=150μm)が大きく、また、カソード電極1と放電制御電極3との間の距離d2と、アノード電極2と放電制御電極3との間の距離d3とが等しい。
放電電流の大きさを効果的に制御するためには、既に述べたように、放電制御電極3が電位構造に対して及ぼす影響の強さが、第2方向D2に沿って変化することが好ましい。そのため、放電制御電極3は、カソード電極1とアノード電極2との間に位置しないことが好ましい。放電制御電極3がカソード電極1とアノード電極2との間に位置すると、放電制御電極3の影響の強さを第2方向D2に沿って変化させることが難しいからである。また、同様の理由から、放電制御電極3が放電経路の前方や後方、すなわち、カソード電極1およびアノード電極2からこれらの配列方向(第1方向D1)に沿って離れた位置に設けられていないことが好ましい。
カソード電極1とアノード電極2との間の距離d1よりも、カソード電極1と放電制御電極3との間の距離d2およびアノード電極2と放電制御電極3との間の距離d3が大きいと、カソード電極1とアノード電極2との間に放電制御電極3が位置することがない。また、カソード電極1と放電制御電極3との間の距離d2と、アノード電極2と放電制御電極3との間の距離d3とが略等しいと、放電経路の前方や後方、つまり、カソード電極1およびアノード電極2からこれらの配列方向(第1方向D1)に沿って離れた位置に放電制御電極3が位置することがない。
従って、カソード電極1とアノード電極2との間の距離d1、カソード電極1と放電制御電極3との間の距離d2、および、アノード電極2と放電制御電極3との間の距離d3が、d1<d2かつd1<d3の関係を満足し、カソード電極1と放電制御電極3との間の距離d2と、アノード電極2と放電制御電極3との間の距離d3とが略等しい構成を採用することによって、放電電流の制御を容易にかつ効果的に行うことができる構造を容易に実現することが可能になる。
次に、カソード電極1、アノード電極2および放電制御電極3の好ましい配置を説明する。
本実施形態のように、カソード電極1とアノード電極2と放電制御電極3とが略同一平面上に設けられていると、同一の基板上に同一のプロセスでこれらの電極を形成することができる。従って、これらの電極を同一のマスクや同一のスクリーン板を用いて同時に形成することができ、能動素子100の製造を簡略化することができる。
また、本実施形態のように、カソード電極1と放電制御電極3との間の距離d2と、カソード電極1とアノード電極2との間の最長距離d1’とが、d2≧d1’の関係を満足することが好ましい。カソード電極1とアノード電極2との間で放電が発生する際には、近接する端部間だけではなく、離隔した端部間でも放電が発生する。カソード電極1と放電制御電極3との間の距離d2が、カソード電極1とアノード電極2との間の最長距離d1’以上であることで、カソード電極1と放電制御電極3との間の電界強度が相対的に弱くなり、カソード電極1と放電制御電極3間での放電が発生しにくくなる。そのため、カソード電極1と放電制御電極3との間に放電電流が流れることを抑制でき、カソード電極1とアノード電極2との間での放電を制御するために消費する電力をほとんどゼロとすることができる。その結果、高入力インピーダンス状態が実現され、消費電力を低減することができる。
また、放電ガスの圧力は、カソード電極1とアノード電極2との間における放電開始電圧よりも、カソード電極1と放電制御電極3との間における放電開始電圧が高くなるように設定されていることが好ましい。この理由を図4を参照しながら説明する。図4は、能動素子100における放電開始電圧の圧力依存性を示す図であり、図中の実線103はカソード電極1とアノード電極2との間(電極間距離は約50μm)における放電開始電圧を示し、実線104はカソード電極1と放電制御電極3との間(電極間距離は約150μm)における放電開始電圧を示している。なお、放電開始電圧とは、所定の条件下において放電が発生する電圧の最小値である。
放電ガスの圧力が、実線104が実線103よりも高電圧側に位置している領域に設定されていると、すなわち、カソード電極1とアノード電極2との間における放電開始電圧よりも、カソード電極1と放電制御電極3との間における放電開始電圧が高くなる領域(例えば、図4に示す破線で囲まれた領域102)に設定されていると、カソード電極1とアノード電極2との間では放電が発生しやすいのに対して、カソード電極1と放電制御電極3との間では放電が発生しにくい。従って、カソード電極1と放電制御電極3との間に放電電流が流れることを抑制でき、カソード電極1とアノード電極2との間での放電を制御するために消費する電力をほとんどゼロとすることができる。そのため、放電ガスの圧力が上述のように設定された能動素子100は、低消費電力性に優れている。
なお、本実施形態においては、放電ガスとしてヘリウムを備えている能動素子100について説明したが、放電ガスとして大気(窒素および酸素)を大気圧で用いてもよい。大気を大気圧で利用する場合には、ガス封入構造を形成する工程および放電ガスを封入する工程を省略することができ、製造コストを下げることができる。
また、カソード電極1、アノード電極2および放電制御電極3は、同一の平面上に設けられていなくてもよいし、それぞれが別々の支持体(例えば基板)上に設けられていてもよい。例えば、図5および図6に示すように、誘電体材料からなる隔壁8を介して基板10に対向する対向基板11が設けられている場合、放電制御電極3は、図5に示したように隔壁8内に(例えば厚さT=50μm、基板10との間隔s1=20μmで)作り込まれてもよいし、図6に示したように対向基板11上に(例えば基板10との間隔s2=150μmとなるように)配置されてもよい。
能動素子100は、表示装置の画素ごとに設けられたスイッチング素子として好適に用いられるが、勿論、他の用途にも用いることができる。例えば、増幅素子としても用いることができる。具体的には、テレビジョンの表示画素ごとに能動素子100をスイッチング素子として設けるとともに、表示部の周辺にアンプの音声増幅素子として能動素子100を設けることができ、このような構成とすることで表示部とアンプ部とを同時に(同一工程で)形成することが可能になる。また、能動素子100は、後述するように、その近傍に蛍光体層を設けることによって、発光素子としても用いられる。
(実施形態2)
図7を参照しながら、本実施形態の発光素子200の構造を説明する。
発光素子200は、実施形態1の能動素子100と、能動素子100の近傍に配置された蛍光体層5とを備えている。以下、より具体的な構造を説明する。
基板(例えばガラス基板)10上に能動素子100が形成されており、誘電体材料からなる隔壁8を介して基板10に対向するように対向基板(例えばガラス基板)11が設けられている。本実施形態では、隔壁8の高さは200μmである。そして、対向基板11の基板10側(能動素子100側)の表面に、紫外線を吸収して可視光を放射する蛍光体層5が設けられている。なお、ここでは、アノード電極2は接地されている。
また、図中では省略したが、能動素子100の外周にフリット材を環状に塗布した後に基板10と対向基板11とを貼り合わせることによって能動素子100の周囲に閉空間が形成されており、この閉空間内に放電ガスが封入(例えばキセノンが5%混合されたネオンが圧力15kPaで封入)されている。放電ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、ネオンなどの希ガスやこれらの混合ガスと、キセノンとを混合したガスを好適に用いることができる。キセノンを含むガスを放電ガスとして用いる場合には、キセノンの真空紫外領域(波長が140〜180nm)の放射を蛍光体層5の励起に用いる。勿論、キセノン以外のガスを混合してもよく、紫外線を放射する他のガス(例えば水銀ガス等)を用いてもよい。
発光素子200では、能動素子100のカソード電極1とアノード電極2との間に放電(プラズマ放電)が発生すると、放電ガスに含まれるキセノンが励起される。そして、励起されたキセノンから放射される紫外線が蛍光体層5に吸収され、蛍光体層5が発光する。
能動素子100を図2(a)および(b)に示したように駆動したところ、放電電流の大きさ(放電電流量)と、蛍光体層5の発光輝度とがほぼ比例関係にあることが確認された。蛍光体層5の発光輝度をこのように制御できるのは、放電電流の大きさとキセノンからの紫外線放射量とが単調増加の関係にあり、紫外線103の放射量を放電制御電極3の電位によって制御することができるからである。上述したように、蛍光体層5を能動素子100の近傍に配置することによって、フォトルミネッセンス効果で発生する光の量をアナログ的に制御できる。
(実施形態3)
発光素子200を備えた表示装置300を図8(a)および(b)と、図9(a)〜(c)を参照しながら説明する。図8(a)は、表示装置300を模式的に示す上面図であり、図8(b)は、表示装置300の1つの画素に対応する領域を拡大して示す上面図である。また、図9(a)〜(c)は、図8(b)中の9A−9A’線、9B−9B’線、9C−9C’線に沿った断面図である。
表示装置300は、図8(a)に示すように、行および列を有するマトリクス状に配列された複数の画素Pを有し、複数の画素Pごとに、図7に示した発光素子200を有している。なお、図8(a)は模式図であり、表示装置300の実際の画素数はここでは640×480個である。また、1つの画素Pのサイズは960μm×320μmである。それぞれの画素Pに設けられた発光素子200は、図7にも示したように、能動素子100を備えており、表示装置300はアクティブマトリクス駆動される。能動素子100のカソード電極1、アソード電極2および放電制御電極3は、図9(a)〜(c)に示すように、基板(例えばガラス基板)10上に形成された誘電体層(典型的には厚膜誘電体層)24上に配置されている。
また、表示装置300は、カソード電極1に電気的に接続された走査配線(ゲート信号線)21と、放電制御電極3に電気的に接続された信号配線(データ信号線)22とを有しており、さらに、アノード電極2に電気的に接続された接地配線23を有している。なお、図8および図9では、わかりやすさのために、信号配線22を一点鎖線、接地配線23を破線で示している。
走査配線21および信号配線22は、それぞれ行ごとおよび列ごとに設けられている。走査配線21は、表示領域外に設けられたゲートドライバに電気的に接続され、ゲートドライバから走査電圧(ゲート電圧)を供給される。また、信号配線22は、表示領域外に設けられたデータドライバに電気的に接続され、データドライバから信号電圧(データ電圧)を供給される。さらに、接地配線23は、表示領域外において接地されている。
本実施形態では、走査配線21および接地配線23は、それぞれ図9(b)、図9(c)に示したように誘電体層24下でガラス基板10上に形成されており、誘電体層24に設けられた開口部(スルーホール)24aを介してカソード電極1、アノード電極2に電気的に接続されている。また、信号配線22は、図9(a)〜(c)に示したように誘電体層24上に形成されている。
表示装置300が有する能動素子100、発光素子200は、既に述べたようにして製造することができ、フォトリソグラフィ法やスクリーン印刷法などの公知の手法を用いて製造することができる。また、誘電体層24、走査配線21、信号配線22および接地配線23も、公知の材料を用いて公知の手法により製造することができる。スクリーン印刷法などの厚膜形成法を用いると、高価な真空装置を用いる必要がないので、コスト的な利点が大きい。走査配線21に走査電圧を供給するゲートドライバや、信号配線22に信号電圧を供給するデータドライバとしては、一般的なアクティブマトリクス駆動の液晶表示装置に用いられるものを用いることができる。ただし、ゲートドライバとしては、放電を発生させるのに必要な電圧に耐え得るように、耐圧の大きなもの(例えば耐圧300Vのもの)を用いることが好ましい。図8および図9に例示した構造においては、カソード電極1、アソード電極2、放電制御電極3および信号配線22をスクリーン印刷法によって同時に形成することができるし、また、走査配線21と接地配線23とを同時に形成することもできる。そのため、能動素子としてTFTを備える従来の表示装置を製造する場合に比べて、マスク枚数、フォトリソグラフィ工程などを大幅に削減されることができ、製造コストを低減することができる。
図10(a)、(b)および(c)を参照しながら、表示装置300の駆動方法を説明する。図10(a)に模式的に示すように、表示装置300は、マトリクス状に配列された複数の画素を有する。図10(a)においては、n行目m列目の画素をnmと表記している。
まず、ゲートドライバから、行ごとに設けられた走査配線21に、1行目から順に走査電圧(ゲート電圧)Vgn(Vg1、Vg2、Vg3、・・・)が供給され、カソード電極1に走査配線21を介して放電発生電圧としての走査電圧Vgnが供給される。ゲートドライバは、図10(b)に示すように、振幅(電圧の大きさ)が一定(ここでは−250V)でパルス幅が一定(ここでは10μs)のパルス電圧を発生させる。
これと同期して、データドライバから、列ごとに設けられた信号配線22に所定のタイミングで信号電圧(データ電圧)Vdnm(Vdn1、Vdn2、Vdn3、・・・)が供給され、放電制御電極3に信号配線22を介して放電制御電圧としての信号電圧Vdnmが供給される。データドライバは、図10(c)に示すように、パルス幅が一定で、個々のデータに対応した振幅(電圧の大きさ;Vd11、Vd21、Vd31・・・)のパルス電圧を発生させる。ここでは、データ電圧が0Vのときが白階調表示、50Vのときが黒階調表示に対応し、データ電圧が0Vより大きく50V未満であるときが中間調表示に対応している。勿論、データドライバは、振幅が一定で、パルス幅が個々のデータに対応して変化するようなパルス電圧を発生させてもよい。
各画素は、放電制御電極3に印加された放電制御電圧としての信号電圧Vdnmに応じて、所定の表示状態となる。放電制御電極3に印加された放電制御電圧が、カソード電極1およびアソード電極2間で放電が発生しないような電圧、すなわちオフ電圧である場合には、能動素子100から紫外線が放射されないので、発光素子200は発光しない。また、放電制御電極3に印加された放電制御電圧が、カソード電極1およびアソード電極2間で放電が発生するような電圧、すなわちオン電圧である場合には、能動素子100から紫外線が放射されるので、発光素子200は発光する。このとき、カソード電極1とアノード電極2との間に流れる放電電流の大きさと能動素子100から放射される紫外線の量とは、放電制御電圧に応じて変化するので、発光素子200の発光輝度をアナログ的に変化させることができる。
本発明による表示装置300は、上述したように、蛍光体のフォトルミネッセンス効果を利用した自発光型の表示装置であって、かつ、その発光輝度をアナログ的に制御できる表示装置である。
表示装置300は、表示の1周期について1つのアドレス期間で多階調表示を行うことができるので、表示期間が複数のアドレス期間によって制限されることがない。そのため、輝度の向上が容易であり、明るい表示を実現することができる。また、表示の1周期について1つのアドレス期間で多階調表示を行うことができるので、パルス幅変調法を用いるPDPと比べて駆動回路を単純化できる。そのため、製造コストを低減することができる。
さらに、放電制御電圧に対してほぼ連続的に変化する放電電流の大きさと蛍光体層5の発光輝度とが単調増加の関係にあるので、輝度をアナログ的に変化させることができる。そのため、階調数を多くすることが容易であり、階調数の増加と駆動回路の単純化とがトレードオフの関係となることがない。
また、表示装置300は、半導体層やゲート絶縁膜を形成する際に用いる高価な真空装置を用いることなく、スクリーン印刷などの厚膜形成法を用いて製造することができるので、アクティブマトリクス駆動を行う表示装置であるにも関わらず安価に製造することができる。
なお、能動素子100、発光素子200を備えた表示装置の構成は、ここで例示したものに限定されない。ここでは、図9(b)および(c)に示したように、カソード電極1およびアノード電極2が誘電体層24上に形成されており、これらがスルーホール24aを介して走査配線21、接地配線23に電気的に接続されている場合を説明したが、例えば、図11(a)および(b)と図12(a)〜(c)に示す表示装置300’のように、誘電体層24に設けた開口部24a内の走査配線21上、接地配線23上にカソード電極1、アノード電極2を直接形成してもよい。なお、この場合、図12(b)および(c)に示したように、カソード電極1およびアノード電極2は凹部に位置しているが、能動素子100(発光素子200)が図9(b)および(c)に示した構成と同様の特性を示すことは確認されている。
(実施形態4)
まず、図13(a)および(b)を参照しながら本実施形態の能動素子400の構造を説明する。図13(a)は、能動素子400を模式的に示す斜視図であり、図13(b)は、能動素子400を模式的に示す上面図である。
能動素子400は、図1(a)および(b)に示すように、互いの間で放電を発生させるカソード電極1およびアノード電極2と、カソード電極1とアノード電極2との間に流れる放電電流の大きさを制御する第1放電制御電極3aおよび第2放電制御電極3bとを備えている。カソード電極1とアノード電極2との間に流れる放電電流の大きさは、後述するように第1放電制御電極3aおよび第2放電制御電極3bの電位に応じて制御される。
カソード電極1とアノード電極2とは、ある方向(第1方向)D1に沿って所定の間隔で設けられている。また、第1放電制御電極3aは、放電経路101の近傍に設けられており、第2放電制御電極3bは、放電経路から比較的離れた位置に設けられている。より具体的には、第1放電制御電極3aは、カソード電極1とアノード電極2との間に設けられており、第2放電制御電極3bは、カソード電極1およびアノード電極2から、第1方向D1に略直交する第2方向D2に沿って離れた位置に設けられている。さらに、本実施形態では、カソード電極1、アノード電極2、第1放電制御電極3aおよび第2放電制御電極3bは、略同一平面上に形成されており、より具体的には、絶縁性表面を有する基板10上に形成されている。
また、能動素子400は、少なくともカソード電極1とアノード電極2との間にイオン化可能な放電ガス(不図示)を有している。放電ガスは、例えば、基板10上に形成されたガス封入構造(不図示)の内部に封入されている。
能動素子400は、例えば、以下のようにして製造される。
まず、基板10上に、カソード電極1、アノード電極2、第1放電制御電極3aおよび第2放電制御電極3bを形成する。ここでは、基板10として、厚さ3mmのソーダガラスからなるガラス基板を用いる。勿論、基板10の材質や厚さはこれに限定されず、能動素子400の製造プロセスに耐え得る基板であればよい。能動素子400の用途によっては、透明性を有する基板を用いる。例えば、バックライトからの光を表示に用いる透過型液晶表示装置や透過反射両用型液晶表示装置に用いる場合には、透明性を有する基板を用いる。反射型液晶表示装置や有機EL表示装置に用いる場合には、金属や樹脂等の材料からなる不透明性の基板であってもよい。
また、電極の材料としてニッケルを用い、スクリーン印刷法によってカソード電極1、アノード電極2、第1放電制御電極3aおよび第2放電制御電極3bを形成する。まず、ニッケル粉末やバインダー材料などを含んで構成されるニッケルペーストを、所定のパターンを有するスクリーン版のメッシュ部を通過させて基板10上に塗布する。次に、基板上に塗布されたニッケルペーストを約300℃で乾燥・固化させる。その後、約600℃で焼成を行うことによって導電性が得られる。
ここでは、カソード電極1、アノード電極2、第1放電制御電極3aおよび第2放電制御電極3bを、直方体状(基板10法線方向から見て長方形状)に以下の寸法で形成する。なお、ここで例示する寸法は、20インチ以上で60インチ程度までの表示装置が画素ごとに備えるスイッチング素子として好適な寸法であるが、勿論これに限定されるものではない。
カソード電極1:幅W150μm×長さL180μm、厚さ15μm
アノード電極2:幅W250μm×長さL280μm、厚さ15μm
第1放電制御電極3a:幅W3a50μm×長さL3a80μm、厚さ15μm
第2放電制御電極3b:幅W3b50μm×長さL3b250μm、厚さ15μm
カソード電極1、第1放電制御電極3aおよびアノード電極2は、図1に示すように、この順に所定の間隔で互いに長辺が対向するように設けられている。そして、第2放電制御電極3bは、カソード電極1とアノード電極2との間に位置しないように設けられており、その長辺がカソード電極1およびアノード電極2の短辺に対向するように設けられている。また、カソード電極1、アノード電極2、第1放電制御電極3aおよび第2放電制御電極3bは、以下のような間隔をあけて形成されている。
カソード電極1とアノード電極2との間の距離d4=150μm
カソード電極1と第2放電制御電極3bとの間の距離d5=250μm
アノード電極2と第2放電制御電極3bとの間の距離d6=250μm
カソード電極1とアノード電極2との間の最長距離d4’=250μm
カソード電極1と第1放電制御電極3aとの間の距離d7=50μm
アノード電極2と第1放電制御電極3aとの間の距離d8=50μm
上述の電極の材料としては、ニッケルに限定されず、導電性があり、適当な2次電子放出係数をもつ金属を用いることができ、銀やアルミニウムなどを用いてもよい。また、電極の形成方法もスクリーン印刷法に限定されず、サンドブラスト法や感光性ペースト法などを用いて厚さ1μm以上の厚膜として形成してもよい。さらに、スパッタ法や電子ビーム蒸着法を用いて厚さ1μm以下の薄膜を形成し、ドライエッチングまたはウエットエッチングプロセスによって所定の電極パターン(形状)に形成してもよい。本実施形態のようにスクリーン印刷法を用いると、簡便に電極の形成を実行することができ、基板上に多数のスイッチング素子が形成された装置の大型化が容易に実現される。
さらに、上述のようにして形成された電極の表面に、六ホウ化ランタンや六ホウ化ガドリニウムあるいは酸化マグネシウムなどの、2次電子放出係数が高く、高い耐スパッタ性を有する材料からなる被覆膜を形成してもよい。このような被覆膜は、例えば、電着法やスパッタ法あるいは電子ビーム蒸着法などを用いて形成することができる。
次に、上述のようにして電極が形成された基板10上に、ガス封入構造を形成する。まず、カソード電極1、アノード電極2、第1放電制御電極3aおよび第2放電制御電極3bを取り囲むように、ガラスを主成分とするフリット材を塗布する。続いて、ガス封入構造の高さを規定するスペーサ(高さ約200μm)と封止用ガラス板とを所定の位置に配置し、約600℃で焼成することによって、電極が形成された基板とガラス板とがフリット材によって接着されたガス封入構造が形成される。その後、ガス封入構造の内部を真空引きし、放電ガスとしてキセノンが5%混入されたネオンを15kPaの圧力で封入・封止する。基板10上に能動素子100を複数個形成する場合には、それらを取り囲むようにガス封入構造を形成すればよい。
なお、放電ガスとしては、ここで例示したものに限定されず、電極が腐食されたり、電極に付着したりすることがないガスであればよい。ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノンなどの希ガスや、これらの混合物を用いると、比較的低い電圧で放電を発生させることができる。また、放電ガスとして、大気を大気圧で用いると、ガス封入構造とその作製工程を省略することができるので、より簡易な構成が実現され、製造プロセスを簡略化することができる。
以下、上述のようにして形成された本実施形態の能動素子400の特性と動作原理を説明する。
能動素子400は、例えば、受動素子を駆動するスイッチング素子として機能する。能動素子400を用いて受動素子(被駆動部)を駆動する場合、例えば、図13(a)に示すように、放電発生電圧(ここでは直流定電圧Vp)を供給する電源6とカソード電極1とを電気的に接続し、第1放電制御電圧(ここではゲート電圧Vg)を供給する電源7aと第1放電制御電極3aとを電気的に接続する。また、第2放電制御電圧(ここではデータ電圧Vd)を供給する電源7bと第2放電制御電極3bとを電気的に接続し、アノード電極2と被駆動部(受動素子)4とを電気的に接続する。ここで、放電発生電圧は、第1放電制御電極3aと第2放電制御電極3bとに電圧が印加されていない状態で、カソード電極1とアノード電極2との間に放電を発生させるのに十分な大きさの電圧である。被駆動部4が等価的に容量である場合、例えば、一対の電極(画素電極および対向電極)とこれらの間に挟持された液晶層とからなる液晶容量である場合には、能動素子400がオンとされると、被駆動部4に電荷が蓄積される。また、被駆動部4が等価的に抵抗である場合、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子である場合には、能動素子400がオンとされると、被駆動部4に電流が流れる。
また、能動素子400は、その近傍に蛍光体層を備えていることによって、プラズマ放電により蛍光体層を発光させる発光素子として機能する。放電電流の大きさ(量)とプラズマ中の励起ガス(例えばキセノン)からの紫外線放射が単調増加の関係にあれば、能動素子400から発生する紫外線量を第1放電制御電極3aおよび第2放電制御電極3bの電位に応じて制御することができるので、フォトルミネッセンス効果による発光の輝度を制御することができる。
本実施形態の能動素子400の特性を図14(a)および(b)を参照しながら説明する。図14(a)および(b)は、カソード電極1に−250Vの一定の直流電圧Vpを印加した状態で、第1放電制御電極3aに印加する第1放電制御電圧Vgおよび第2放電制御電極3bに印加する第2放電制御電圧Vdの一方を一定とし、他方を変化させたときの、被駆動部4に供給される(すなわちカソード電極1とアノード電極2との間を流れる)電流Iの変化を示すグラフである。
図14(a)に示すように、第1放電制御電極3aに印加する第1放電制御電圧Vgを一定(Vg=−40V)とし、第2放電制御電極3bに印加する第2放電制御電圧Vdを変化させると、被駆動部4に供給される電流Iの大きさがゼロから所定の大きさまでなめらかに線形的に変化する。
このように、能動素子400においては、被駆動部4に供給される電流Iの大きさを制御することができる。これは、カソード電極1、アノード電極2、第1放電制御電極3aおよび第2放電制御電極3bのそれぞれの電位の相対的な高低関係によって、カソード電極1とアノード電極2との間に流れる放電電流の大きさが変化するためである。以下、図15(a)〜(c)を参照しながら、カソード電極1、アノード電極2および第2放電制御電極3bの電位の高低関係と放電電流の大きさとの関係と、第2放電制御電極3bの機能とをさらに詳しく説明する。図15(a)〜(c)は、電極間の電位差に応じて発生する電気力線Eを模式的に示す図である。
まず、第2放電制御電極3bの電位V3bが、カソード電極1の電位V1とアノード電極2の電位V2との間にあってアノード電極2の電位V2よりも低いとき(V2>V3b>V1であるとき)には、カソード電極1とアノード電極2との間の電位差(V2−V1)が、カソード電極1と第2放電制御電極3bとの間の電位差(V3b−V1)よりも大きい。従って、図15(a)に示すように、電気力線Eは、カソード電極1とアノード電極2との間に主に存在する。そのため、このような電位になるようにそれぞれの電極に電圧を印加したときには、カソード電極1とアノード電極2との間で放電が発生し、これらの間に放電電流が流れる。
また、第2放電制御電極3bの電位V3bが、カソード電極1の電位V1とアノード電極2の電位V2との間になくアノード電極2の電位V2よりも高いとき(V3b>V2>V1であるとき)には、カソード電極1と第2放電制御電極3bとの間の電位差(V3−V1)が、カソード電極1とアノード電極2との間の電位差(V2−V1)よりも大きくなる。従って、電気力線Eは、図15(b)に示すように、カソード電極とアノード電極2との間だけでなく、カソード電極1と第2放電制御電極3bとの間にも存在する。従って、このような電位になるようにそれぞれの電極に電圧を印加したとき、カソード電極1とアノード電極2との間に発生する放電は、図15(a)に示した場合に比べて弱く、これらの間に流れる放電電流の大きさは図15(a)に示した場合に比べて小さい。
そして、第2放電制御電極3bの電位V3bが、カソード電極1の電位V1とアノード電極2の電位V2との間になくアノード電極2の電位V2よりも十分に高いときには、カソード電極1と第2放電制御電極3bとの間の電位差(V3b−V1)が、カソード電極1とアノード電極2との間の電位差(V2−V1)よりも十分に大きくなる。従って、電気力線Eは、図15(c)に示すように、カソード電極1と第2放電制御電極3bとの間に主に存在し、カソード電極1とアノード電極2との間にはほとんど存在しない。従って、このような電位になるようにそれぞれの電極に電圧を印加したとき、カソード電極1とアノード電極2との間には、放電はほとんど発生せず、これらの間には放電電流がほとんど流れない。
このように、第2放電制御電極3bは、カソード電極1とアノード電極2との間に生成される電気力線Eを選択的に第2放電制御電極3bに導き、それによってカソード電極1とアノード電極2との間の電気力線Eの数(すなわち電界強度)を減らす機能を奏する。
また、図14(b)に示すように、第2放電制御電極3bに印加する第2放電制御電圧Vdを一定(Vd=0VまたはVd=+30V)とし、第1放電制御電極3aに印加する第1放電制御電圧Vgを変化させると、約−60Vを境として電流Iの大きさがゼロから所定の大きさまで急激に変化し、能動素子400のオン状態とオフ状態とが約−60Vを境に切り替わる。
このように、能動素子400においては、第1放電制御電圧Vgを変化させることによって被駆動部4に供給される電流Iのオン・オフを制御することができる。以下、図16(a)〜(e)を参照しながら、この理由と、第1放電制御電極3aの機能とを説明する。
第1放電制御電極3aが存在しない場合には、プラズマ放電が発生すると、図16(a)に示すように、負電位側の電極(カソード電極1)近傍で等電位面EQが集中した(等電位面の間隔が狭い)強い電界が発生する一方、その他の部分では弱い電界が発生し、放電空間には安定な電位構造が形成される。
一方、第1放電制御電極3aが存在する場合には、第1放電制御電極3aに与えられる電位に応じて、放電空間の電位構造(放電空間の等電位面EQの分布)は図16(b)〜(e)に示すように変化する。
第1放電制御電極3aの電位V3aがアノード電極2の電位V2とほぼ同じである(V3a=V2>>V1)と、図16(b)に示したように、放電空間の電位構造は第1放電制御電極3aの電位V3aによって若干乱され、等電位面EQが主にカソード電極1と第1放電制御電極3aとの間に存在するような電位構造が形成される。そのため、放電電流は流れるものの、その大きさは図16(a)に示した場合に比べて小さい。
第1放電制御電極3aの電位V3aがカソード電極1の電位V1とアノード電極2の電位V2との間にあり、アノード電極2の電位V2よりも少し低い(V2>V3a>>V1)と、図16(c)に示したように、放電空間の電位構造は、図16(a)に示した場合(第1放電制御電極3aが存在しない場合)に近い安定な電位構造であり、放電経路101が太く確保されるので、放電電流がもっとも大きく流れる。
第1放電制御電極3aの電位V3aがカソード電極1の電位V1とアノード電極2の電位V2との間にあり、アノード電極2の電位V2よりも十分低い(V2>>V3a>>V1)と、図16(d)に示したように、放電空間の電位構造は第1放電制御電極3aの電位V3aによって若干乱されるので、放電経路101が第1放電制御電極3aから離れて細くなり放電電流が減少する。第1放電制御電極3aの電位V3aをさらに低くすると、図16(e)に示したように、放電空間の電位構造は第1放電制御電極3aの電位V3aによって著しく乱されるので、放電経路に沿って放電維持に好ましい電位構造が存在せず、そのため、放電電流が流れない。
上述したように、第1放電制御電極3aは、カソード電極1とアノード電極2との間に発生する放電の電位構造を乱す機能、すなわち、カソード電極1とアノード電極2との間に発生する放電に起因した等電位面EQの分布を変化させる機能を有しており、そのことによって、カソード電極1とアノード電極2との間での放電を制御することが可能になる。なお、図16(c)〜(e)に示した状態では、カソード電極1と第1放電制御電極3aとの間の電位差よりも、カソード電極1とアノード電極2との間の電位差の方が大きいので、カソード電極1と第1放電制御電極3aとの間では放電が発生しにくく、カソード電極1とアノード電極2との間では放電が発生しやすい。
放電発生電圧Vp=−250V、第2放電制御電圧Vd=0Vのときの能動素子400の素子特性を図17に示す。図17においては、図16(b)〜(e)の状態に相当する点を参照符号(b)〜(e)を用いて示している。
図17に示したように、能動素子400は、図16(b)、(c)および(d)に示した状態をオン状態、図16(e)に示した状態をオフ状態として機能する。つまり、図16(c)に示した状態(第1放電制御電極3aに印加される電圧が−40V)と、図16(e)に示した状態(第1放電制御電極3aに印加される電圧が−70V)とを切り替えることによって、放電電流をオン/オフ制御することができる。従って、高耐圧のドライバを用いてカソード電極1に高い電圧(例えば−250V)をパルス的に印加する必要はなく、カソード電極1に直流定電圧を印加した状態で第1放電制御電極3aに印加する電圧を比較的低い電圧域で切り替える(例えば−40Vと−70Vとで切り替える)ことによって、放電電流のオン/オフを制御することができる。
上述したように、本発明による能動素子400においては、カソード電極1とアノード電極2との間に放電発生電圧が印加された状態で、第1放電制御電極3aに印加される第1放電制御電圧と、第2放電制御電極3bに印加される第2放電制御電極3bとを調整することによって、カソード電極1とアノード電極2との間に流れる放電電流の大きさを変化させることができ、そのことによって、被駆動部4に供給される電流Iの大きさを制御することができる。すなわち、本発明による能動素子400は、プラズマ放電部をチャネルとした4端子能動素子であるとも言える。ただし、本発明による能動素子400は、既存の能動素子(例えば薄膜トランジスタ)のように、半導体層やゲート絶縁層を備える必要がなく、これらと同等の効果を放電(プラズマ放電)およびその発生特性により実現しているので、その製造に際して半導体層やゲート絶縁膜を作製するための高価な真空装置を必要としない。そのため、設備投資の額を少なくすることができるし、素子自体の製造コストを低くすることができる。
また、本発明による能動素子400は、第1放電制御電極3aと第2放電制御電極3bとを有し、第1放電制御電極3aは第2放電制御電極3bよりも、カソード電極1とアノード電極2との間で発生する放電の経路101に近い。言い換えると、能動素子400は、放電経路101に比較的近い第1放電制御電極3aと、放電経路101に比較的遠い第2放電制御電極3bとを有している。従って、図16(b)〜(e)に示したように放電経路101に近い第1放電制御電極3aによって専ら放電電流のオン/オフ制御を行い、図15(a)〜(c)に示したように放電経路101に遠い第2放電制御電極3bによって放電電流の大きさをなめらかに制御することができる。従って、放電発生電圧として直流電圧を用い、第1放電制御電圧および第2放電制御電圧として比較的低い電圧を用いた駆動が可能になる。そのため、高電圧をパルス的に印加できる高耐圧ドライバを電源として用いる必要がなくなるので、製造コストを低減することができる。
上述したように、本発明による能動素子400では、第1放電制御電極3aと第2放電制御電極3bとが協同的に放電電流の大きさを制御する。以下、第1放電制御電極3aと第2放電制御電極3bの好ましい配置を説明する。
第1放電制御電極3aを、放電経路101にできるだけ近い位置に設けることによって、カソード電極1とのアノード電極2との電位差に応じて生成される電位構造を効果的に(比較的低い電圧の印加により)崩すことができる。例えば、本実施形態のように、第1放電制御電極3aをカソード電極1とアノード電極2との間に設けることによって、放電電流を効果的に(比較的低い電圧の印加により)オン/オフ制御できる。
また、本実施形態のように、第2放電制御電極3bを、放電経路101の側方、より具体的には、カソード電極1およびアノード電極2から第2方向D2に沿って離れた位置に設けることによって、放電電流の大きさを容易にかつ効果的に制御することができる。この理由は以下の通りである。第2放電制御電極3bが放電空間内のある場所(点)の電位構造に及ぼす影響の強さは、第2放電制御電極3bとその場所(点)との距離に応じて変化し、近いほど強く、遠いほど弱い。第2放電制御電極3bが、放電経路101の側方、より具体的には、カソード電極1およびアノード電極2から第2方向D2に沿って離れた位置に設けられていると、カソード電極1とアノード電極2との電位差に応じて生成される電位構造に対して第2放電制御電極3bの電位が及ぼす影響の強さが、第2方向D2に沿って変化する。すなわち、カソード電極1とアノード電極2との電位差に応じて生成される電気力線E(第1方向に平行であり、第2方向に沿って複数並ぶ)に対して第2放電制御電極3bの電位が及ぼす影響の強さが第2方向D2(電気力線の並ぶ方向)に沿って変化する。そのため、カソード電極1とアノード電極2との間(放電空間内)に生成される電気力線を選択的に第2放電制御電極3bに導いて電界強度を調整することが容易となり、その結果、放電電流の大きさを容易にかつ効果的に制御することができる。
さらに、本実施形態のように、カソード電極1およびアノード電極2が、配列方向である第1方向D1に略直交する第2方向D2に平行に長手方向が規定される形状を有していると、放電電流の大きさをより効果的に制御することができる。この理由は以下の通りである。放電空間内に発生する電気力線の数を効果的に制御するためには、第2放電制御電極3bの電位が放電空間内の電位構造に与える影響の強さが、放電空間内で大きく変化することが好ましい。カソード電極1およびアノード電極2の長手方向が第2方向D2に平行であるということは、第2放電制御電極3bがカソード電極1およびアノード電極2から長手方向に沿って離れているということなので、放電空間と第2放電制御電極3bとの最短距離と放電空間と第2放電制御電極3bとの最長距離との差を大きく確保することができる。従って、第2放電制御電極3bが放電空間内の電位構造に与える影響の強さを放電空間内で大きく変化させることができる。そのため、電気力線Eを選択的に第2放電制御電極3bに導いて放電電流を制御することがより容易となる。
また、カソード電極1およびアノード電極2が第2方向D2に平行に長手方向が規定される形状を有している場合には、第1放電制御電極3aが第2方向D2に平行に長手方向が規定される形状を有していると、より効果的に電位構造を崩すことができ、放電電流をより容易にオン/オフ制御することができる。
さらに、第2放電制御電極3bが長手方向を有する形状である場合には、その長手方向が第1方向D1に平行であると、放電空間内に生成される電位構造に対して第2放電制御電極3bがより効果的に影響を及ぼすことができる。
また、本実施形態では、カソード電極1とアノード電極2との間の距離d4(=150μm)よりも、カソード電極1と第2放電制御電極3bとの間の距離d5(=250μm)およびアノード電極2と第2放電制御電極3bとの間の距離d6(=250μm)が大きく、また、カソード電極1と第2放電制御電極3bとの間の距離d5と、アノード電極2と第2放電制御電極3bとの間の距離d6とが等しい。
放電電流の大きさを効果的に制御するためには、既に述べたように、第2放電制御電極3bが電位構造に対して及ぼす影響の強さが、第2方向D2に沿って変化することが好ましい。そのため、第2放電制御電極3bは、カソード電極1とアノード電極2との間に位置しないことが好ましい。第2放電制御電極3bがカソード電極1とアノード電極2との間に位置すると、第2放電制御電極3bの影響の強さを第2方向D2に沿って変化させることが難しいからである。また、同様の理由から、第2放電制御電極3bが放電経路の前方や後方、すなわち、カソード電極1およびアノード電極2からこれらの配列方向(第1方向D1)に沿って離れた位置に設けられていないことが好ましい。
カソード電極1とアノード電極2との間の距離d4よりも、カソード電極1と第2放電制御電極3bとの間の距離d5およびアノード電極2と第2放電制御電極3bとの間の距離d6が大きいと、カソード電極1とアノード電極2との間に第2放電制御電極3bが位置することがない。また、カソード電極1と第2放電制御電極3bとの間の距離d5と、アノード電極2と第2放電制御電極3bとの間の距離d6とが略等しいと、放電経路の前方や後方、つまり、カソード電極1およびアノード電極2からこれらの配列方向(第1方向D1)に沿って離れた位置に第2放電制御電極3bが位置することがない。
従って、カソード電極1とアノード電極2との間の距離d4、カソード電極1と第2放電制御電極3bとの間の距離d5、および、アノード電極2と第2放電制御電極3bとの間の距離d6が、d4<d5かつd4<d6の関係を満足し、カソード電極1と第2放電制御電極3bとの間の距離d5と、アノード電極2と第2放電制御電極3bとの間の距離d6とが略等しい構成を採用することによって、放電電流のなめらかな制御を容易にかつ効果的に行うことができる構造を容易に実現することが可能になる。
引き続き、カソード電極1、アノード電極2、第1放電制御電極3aおよび第2放電制御電極3bの好ましい配置を説明する。
本実施形態のように、カソード電極1とアノード電極2と第1放電制御電極3aと第2放電制御電極3bとが略同一平面上に設けられていると、同一の基板上に同一のプロセスでこれらの電極を形成することができる。従って、これらの電極を同一のマスクや同一のスクリーン板を用いて同時に形成することができ、能動素子400の製造を簡略化することができる。
また、本実施形態のように、カソード電極1と第2放電制御電極3bとの間の距離d5と、カソード電極1とアノード電極2との間の最長距離d4’とが、d5≧d4’の関係を満足することが好ましい。カソード電極1とアノード電極2との間で放電が発生する際には、近接する端部間だけではなく、離隔した端部間でも放電が発生する。カソード電極1と第2放電制御電極3bとの間の距離d5が、カソード電極1とアノード電極2との間の最長距離d4’以上であることで、カソード電極1と第2放電制御電極3bとの間の電界強度が相対的に弱くなり、カソード電極1と第2放電制御電極3b間での放電が発生しにくくなる。そのため、カソード電極1と第2放電制御電極3bとの間に放電電流が流れることを抑制でき、カソード電極1とアノード電極2との間での放電を制御するために消費する電力をほとんどゼロとすることができる。その結果、高入力インピーダンス状態が実現され、消費電力を低減することができる。
また、放電ガスの圧力は、カソード電極1とアノード電極2との間における放電開始電圧よりも、カソード電極1と第2放電制御電極3bとの間における放電開始電圧が高くなるように設定されていることが好ましい。この理由を図18を参照しながら説明する。図18は、能動素子400における放電開始電圧の圧力依存性を示す図であり、図中の実線403はカソード電極1とアノード電極2との間(電極間距離は約150μm)における放電開始電圧を示し、実線404はカソード電極1と第2放電制御電極3bとの間(電極間距離は約250μm)における放電開始電圧を示している。なお、放電開始電圧とは、所定の条件下において放電が発生する電圧の最小値である。
放電ガスの圧力が、実線404が実線403よりも高電圧側に位置している領域に設定されていると、すなわち、カソード電極1とアノード電極2との間における放電開始電圧よりも、カソード電極1と第2放電制御電極3bとの間における放電開始電圧が高くなる領域(例えば、図18に示す破線で囲まれた領域402)に設定されていると、カソード電極1とアノード電極2との間では放電が発生しやすいのに対して、カソード電極1と第2放電制御電極3bとの間では放電が発生しにくい。従って、カソード電極1と第2放電制御電極3bとの間に放電電流が流れることを抑制でき、カソード電極1とアノード電極2との間での放電を制御するために消費する電力をほとんどゼロとすることができる。そのため、放電ガスの圧力が上述のように設定された能動素子400は、低消費電力性に優れている。
なお、本実施形態においては、放電ガスとしてヘリウムを備えている能動素子400について説明したが、放電ガスとして大気(窒素および酸素)を大気圧で用いてもよい。大気を大気圧で利用する場合には、ガス封入構造を形成する工程および放電ガスを封入する工程を省略することができ、製造コストを下げることができる。
また、カソード電極1、アノード電極2、第1放電制御電極3aおよび第2放電制御電極3bは、同一の平面上に設けられていなくてもよいし、それぞれが別々の支持体(例えば基板)上に設けられていてもよい。例えば、図19および図20に示すように、誘電体材料からなる隔壁8を介して基板10に対向する対向基板11が設けられている場合、第2放電制御電極3bは、図19に示したように隔壁8内に(例えば厚さT’=50μm、基板10との間隔s3=50μmで)作り込まれてもよいし、図20に示したように対向基板11上に(例えば基板10との間隔s4=150μmとなるように)配置されてもよい。
能動素子400は、表示装置の画素ごとに設けられたスイッチング素子として好適に用いられるが、勿論、他の用途にも用いることができる。例えば、増幅素子としても用いることができる。具体的には、テレビジョンの表示画素ごとに能動素子400をスイッチング素子として設けるとともに、表示部の周辺にアンプの音声増幅素子として能動素子400を設けることができ、このような構成とすることで表示部とアンプ部とを同時に(同一工程で)形成することが可能になる。また、能動素子400は、後述するように、その近傍に蛍光体層を設けることによって、発光素子としても用いられる。
(実施形態5)
図21を参照しながら、本実施形態の発光素子500の構造を説明する。
発光素子500は、実施形態4の能動素子400と、能動素子400の近傍に配置された蛍光体層5とを備えている。以下、より具体的な構造を説明する。
基板(例えばガラス基板)10上に能動素子400が形成されており、誘電体材料からなる隔壁8を介して基板10に対向するように対向基板(例えばガラス基板)11が設けられている。本実施形態では、隔壁8の高さは200μmである。そして、対向基板11の基板10側(能動素子400側)の表面に、紫外線を吸収して可視光を放射する蛍光体層5が設けられている。なお、ここでは、アノード電極2は接地されている。
また、図中では省略したが、能動素子400の外周にフリット材を環状に塗布した後に基板10と対向基板11とを貼り合わせることによって能動素子400の周囲に閉空間が形成されており、この閉空間内に放電ガスが封入(例えばキセノンが5%混合されたネオンが圧力15kPaで封入)されている。放電ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、ネオンなどの希ガスやこれらの混合ガスと、キセノンとを混合したガスを好適に用いることができる。キセノンを含むガスを放電ガスとして用いる場合には、キセノンの真空紫外領域(波長が140〜180nm)の放射を蛍光体層5の励起に用いる。勿論、キセノン以外のガスを混合してもよく、紫外線を放射する他のガス(例えば水銀ガス等)を用いてもよい。
発光素子500では、能動素子400のカソード電極1とアノード電極2との間に放電(プラズマ放電)が発生すると、放電ガスに含まれるキセノンが励起される。そして、励起されたキセノンから放射される紫外線が蛍光体層5に吸収され、蛍光体層5が発光する。
能動素子400を図14(a)および(b)に示したように駆動したところ、放電電流の大きさ(放電電流量)と、蛍光体層5の発光輝度とがほぼ比例関係にあることが確認された。蛍光体層5の発光輝度をこのように制御できるのは、放電電流の大きさとキセノンからの紫外線放射量とが単調増加の関係にあり、紫外線103の放射量を第2放電制御電極3bの電位によって制御することができるからである。上述したように、蛍光体層5を能動素子400の近傍に配置することによって、フォトルミネッセンス効果で発生する光の量をアナログ的に制御できる。また、第1放電制御電極3aの電位を比較的低い電圧域(例えば−40Vから−70V)で変化させることによって、発光をオン/オフ制御できた。つまり、本発明による発光素子500を駆動するのに、PDPで使用されるような高電圧、高耐圧のドライバを用いる必要はない。
(実施形態6)
発光素子500を備えた表示装置600を図22(a)および(b)と、図23(a)〜(d)とを参照しながら説明する。図22(a)は、表示装置600を模式的に示す上面図であり、図22(b)は、表示装置600の1つの画素に対応する領域を拡大して示す上面図である。また、図23(a)、(b)、(c)および(d)は、図22(b)中の23A−23A’線、23B−23B’線、23C−23C’線、23D−23D’線に沿った断面図である。
表示装置600は、図22(a)に示すように、行および列を有するマトリクス状に配列された複数の画素Pを有し、複数の画素Pごとに、図21に示した発光素子500を有している。なお、図22(a)は模式図であり、表示装置600の実際の画素数はここでは640×480個である。また、1つの画素Pのサイズは960μm×320μmである。それぞれの画素Pに設けられた発光素子500は、図21にも示したように、能動素子400を備えており、表示装置600はアクティブマトリクス駆動される。能動素子400のカソード電極1、アソード電極2、第1放電制御電極3aおよび第2放電制御電極3bは、図23(a)〜(d)に示すように、基板(例えばガラス基板)10上に形成された誘電体層(典型的には厚膜誘電体層)24上に配置されている。
また、表示装置600は、第1放電制御電極3aに電気的に接続された走査配線(ゲート信号線)21と、第2放電制御電極3bに電気的に接続された信号配線(データ信号線)22とを有しており、さらに、アノード電極2に電気的に接続された接地配線23と、カソード電極1に電気的に接続された定電圧配線26とを有している。なお、図22および図23では、わかりやすさのために、走査配線21を一点鎖線、信号配線22を二点鎖線、接地配線23を破線で示している。
走査配線21および信号配線22は、それぞれ行ごとおよび列ごとに設けられている。走査配線21は、表示領域外に設けられたゲートドライバに電気的に接続され、ゲートドライバから走査電圧(ゲート電圧)を供給される。また、信号配線22は、表示領域外に設けられたデータドライバに電気的に接続され、データドライバから信号電圧(データ電圧)を供給される。さらに、接地配線23は、表示領域外において接地されており、定電圧配線26は、共通の定電圧電源から直流の定電圧(例えば−250V)を供給される。
本実施形態では、定電圧配線26、走査配線21および接地配線23は、それぞれ図9(b)、(c)、(d)に示したように誘電体層24下でガラス基板10上に形成されており、誘電体層24に設けられた開口部(スルーホール)24aを介してカソード電極1、第1放電制御電極3a、アノード電極2に電気的に接続されている。また、信号配線22は、図9(a)〜(d)に示したように誘電体層24上に形成されている。
表示装置600が有する能動素子400、発光素子500は、既に述べたようにして製造することができ、フォトリソグラフィ法やスクリーン印刷法などの公知の手法を用いて製造することができる。また、誘電体層24、走査配線21、信号配線22、接地配線23および定電圧配線26も、公知の材料を用いて公知の手法により製造することができる。スクリーン印刷法などの厚膜形成法を用いると、高価な真空装置を用いる必要がないので、コスト的な利点が大きい。走査配線21に走査電圧を供給するゲートドライバや、信号配線22に信号電圧を供給するデータドライバとしては、一般的なアクティブマトリクス駆動の液晶表示装置に用いられるものを用いることができる。また、定電圧配線26に定電圧を供給する定電圧電源としては、例えば、出力定格電圧が400Vで定格電流が1Aのものを用いることができる。図22および図23に例示した構造においては、カソード電極1、アソード電極2、第1放電制御電極3a、第2放電制御電極3bおよび信号配線22をスクリーン印刷法によって同時に形成することができるし、また、走査配線21と接地配線23と定電圧配線26とを同時に形成することもできる。そのため、能動素子としてTFTを備える従来の表示装置を製造する場合に比べて、マスク枚数、フォトリソグラフィ工程などを大幅に削減されることができ、製造コストを低減することができる。
図24(a)、(b)および(c)を参照しながら、表示装置600の駆動方法を説明する。図24(a)に模式的に示すように、表示装置600は、マトリクス状に配列された複数の画素を有する。図24(a)においては、n行目m列目の画素をnmと表記している。
表示装置600の駆動は、定電圧電源から定電圧配線26を介してカソード電極1に直流定電圧(ここでは−250V)が印加されている状態で行われる。
まず、ゲートドライバ(ここでは耐圧60Vで−70Vに直流バイアスされたもの)から、行ごとに設けられた走査配線21に、1行目から順に走査電圧(ゲート電圧)Vgn(Vg1、Vg2、Vg3、・・・)が供給され、第1放電制御電極3aに走査配線21を介して第1放電制御電圧としての走査電圧Vgnが供給される。ゲートドライバは、図24(b)に示すように、ここでは、バイアス電圧を−70Vとして振幅(電圧の大きさ)が一定(30V)でパルス幅が一定(10μs)のパルス電圧を発生させる。
これと同期して、データドライバから、列ごとに設けられた信号配線22に所定のタイミングで信号電圧(データ電圧)Vdnm(Vdn1、Vdn2、Vdn3、・・・)が供給され、第2放電制御電極3bに信号配線22を介して第2放電制御電圧としての信号電圧Vdnmが供給される。データドライバは、図24(c)に示すように、パルス幅が一定で、個々のデータに対応した振幅(電圧の大きさ;Vd11、Vd21、Vd31・・・)のパルス電圧を発生させる。ここでは、データ電圧が0Vのときが白階調表示、50Vのときが黒階調表示に対応し、データ電圧が0Vより大きく50V未満であるときが中間調表示に対応している。なお、データドライバは、振幅が一定で、パルス幅が個々のデータに対応して変化するようなパルス電圧を発生させてもよい。
各画素は、第2放電制御電極3bに印加された第2放電制御電圧としての信号電圧Vdnmに応じて、所定の表示状態となる。カソード電極1とアノード電極2との間に流れる放電電流の大きさと能動素子400から放射される紫外線の量とは、第2放電制御電圧に応じて変化するので、発光素子500の発光輝度をアナログ的に変化させることができる。
本発明による表示装置600は、上述したように、蛍光体のフォトルミネッセンス効果を利用した自発光型の表示装置であって、かつ、その発光輝度をアナログ的に制御できる表示装置である。
表示装置600は、表示の1周期について1つのアドレス期間で多階調表示を行うことができるので、表示期間が複数のアドレス期間によって制限されることがない。そのため、輝度の向上が容易であり、明るい表示を実現することができる。また、表示の1周期について1つのアドレス期間で多階調表示を行うことができるので、パルス幅変調法を用いるPDPと比べて駆動回路を単純化できる。そのため、製造コストを低減することができる。
さらに、第2放電制御電圧に対してほぼ連続的に変化する放電電流の大きさと蛍光体層5の発光輝度とが単調増加の関係にあるので、輝度をアナログ的に変化させることができる。そのため、階調数を多くすることが容易であり、階調数の増加と駆動回路の単純化とがトレードオフの関係となることがない。
また、放電経路101に近い第1放電制御電極3aと放電経路101に遠い第2放電制御電極3bとが協同的に放電を制御するので、放電発生電圧として直流定電圧を用い、第1放電制御電圧および第2放電制御電圧として比較的低い電圧を用いた駆動が可能になる。そのため、高電圧をパルス的に印加できる高耐圧ドライバを電源として用いる必要がなく、製造コストを低減することができる。具体的には、耐圧60V程度のドライバを問題なく用いることができる。
さらに、表示装置600は、半導体層やゲート絶縁膜を形成する際に用いる高価な真空装置を用いることなく、スクリーン印刷などの厚膜形成法を用いて製造することができるので、アクティブマトリクス駆動を行う表示装置であるにも関わらず安価に製造することができる。
なお、能動素子400、発光素子500を備えた表示装置の構成は、ここで例示したものに限定されない。ここでは、図23(b)〜(d)に示したように、カソード電極1、アノード電極2および第1放電制御電極3aが誘電体層24上に形成されており、これらがスルーホール24aを介して定電圧配線26、走査配線21、接地配線23に電気的に接続されている場合を説明したが、例えば、図25(a)および(b)と図26(a)〜(d)とに示す表示装置600’のように、誘電体層24に設けた開口部24a内の定電圧配線26上、走査配線21上、接地配線23上にカソード電極1、第1放電制御電極3a、アノード電極2を直接形成してもよい。なお、この場合、図26(b)〜(d)に示したように、カソード電極1、第1放電制御電極3aおよびアノード電極2は凹部に位置しているが、能動素子400(発光素子500)が図23(b)〜(d)に示した構成と同様の特性を示すことは確認されている。
(実施形態7)
図27(a)および(b)を参照しながら、本発明による実施形態7の表示装置700を説明する。図27(a)および(b)は、それぞれ表示装置700の1画素に対応する領域を模式的に示す斜視図および断面図である。
表示装置700は、行および列を有するマトリクス状に配列された複数の画素を有し、複数の画素ごとに、有機EL素子30と、有機EL素子30に接続された実施形態1の能動素子100とを有する有機EL表示装置である。
能動素子100が有するカソード電極1、アノード電極2および放電制御電極3は、基板10上に形成されており、基板10と、基板10に対向する対向基板11との間に放電ガスが封入されている。
また、表示装置700は、能動素子100のカソード電極1に電気的に接続された走査配線(ゲート配線)21と、放電制御電極3に電気的に接続された信号配線(データ配線)22とを有しており、アノード電極2に有機EL素子30が接続されている。
走査配線21および信号配線22は、それぞれ行ごとおよび列ごとに設けられている。走査配線21は、表示領域外に設けられたゲートドライバに電気的に接続され、ゲートドライバから走査電圧(ゲート電圧)を供給される。また、信号配線22は、表示領域外に設けられたデータドライバに電気的に接続され、データドライバから信号電圧(データ電圧)を供給される。さらに、表示装置700は、対向電極33に電気的に接続された接地配線(不図示)を有し、この接地配線は、表示領域外において接地されている。
有機EL素子30は、アノード電極2に電気的に接続された画素電極31と、画素電極31に対向する対向電極33と、画素電極31と対向電極33との間に設けられた表示媒体層としての有機EL(エレクトロルミネッセンス)材料層32とを有し、電流を供給されることによって発光する。
表示装置700は、実施形態3の表示装置300とほぼ同様に駆動することができる。例えば図10(b)および(c)に示したものと同様の波形の電圧をカソード電極1および放電制御電極3に印加されることによって駆動される。
各画素は、放電制御電極3に印加された放電制御電圧に応じて、所定の表示状態となる。放電制御電極3に印加された放電制御電圧が、カソード電極1およびアノード電極2間で放電が発生しないような電圧、すなわちオフ電圧である場合には、被駆動部としての有機EL素子30に電流が供給されず、有機EL素子30は発光状態とならない。また、放電制御電極3に印加された放電制御電圧が、カソード電極1およびアノード電極2間で放電が発生するような電圧、すなわちオン電圧である場合には、有機EL素子30に電流が供給され、有機EL素子30が発光状態となる。このとき、有機EL素子30に供給される電流の大きさは、放電制御電圧に応じて変化するので、有機EL素子30の発光輝度を変化させることができ、多階調表示が実現される。
本実施形態の表示装置700は、公知の材料を用いて公知のフォトリソグラフィプロセスやスクリーン印刷法などにより製造することができる。表示装置700は、能動素子として実施形態1の能動素子100を備えているので、画素ごとにTFTを備えた従来の有機EL表示装置よりも製造工程を簡略化でき、また、製造コストも低減することができる。
なお、本実施形態においては、被駆動部として、有機EL素子30を備えている場合について説明したが、これに限定されず、自発光型素子や光変調型素子などを好適に用いることできる。また、被駆動部は、有機EL素子30のような抵抗性の素子であってもよいし、一対の電極に挟持された液晶層のような容量性の素子であってもよい。
図28(a)および(b)に、被駆動部として、画素電極41および対向電極43とこれらに挟持された液晶層42とからなる液晶容量40を備える表示装置700’を示す。
表示装置700’は、液晶容量40を備えている点以外は、表示装置700とほぼ同じ構成を有している。以下の説明においては、表示装置700と異なる点を中心に説明する。
表示装置700’は、被駆動部として液晶容量40を有しており、液晶容量40は、能動素子100を用いて駆動される。表示装置700’が備える被駆動部は、光変調型素子であるので、表示装置700’においては、バックライトからの光を用いて表示を行うか、あるいは周囲光(外光)を反射板(あるいは反射電極)により反射させて表示を行う。
液晶容量40が有する液晶層42は、基板10と、基板10上に設けられた液晶封止壁16と、対向基板11とによって囲まれた領域に封入されている。
基板10の液晶層42側に画素電極41が設けられており、対向基板11の液晶層42側にITOからなる対向電極43が設けられている。また、基板10および対向基板11上には、液晶層42に接するように設けられ、ラビング処理が施された配向層(不図示)が形成されている。典型的には、対向基板11はさらに、液晶層42側とは反対側に偏光制御層およびカラーフィルタ層(いずれも不図示)を有する。
液晶層42に液晶封止壁16を隔てて設けられた空間15に放電ガスが封入されており、この空間15の大きさが放電に適した大きさとなるように、対向基板11はダイシング加工されている。
表示装置700’においても、表示装置700と同様にアクティブマトリクス駆動が実現され、表示装置700と同様の利点が得られる。
(実施形態8)
図29(a)および(b)を参照しながら、本発明による実施形態8の表示装置800を説明する。図29(a)および(b)は、それぞれ表示装置800の1画素に対応する領域を模式的に示す斜視図および断面図である。
表示装置800は、行および列を有するマトリクス状に配列された複数の画素を有し、複数の画素ごとに、有機EL素子30と、有機EL素子30に接続された実施形態4の能動素子400とを有する有機EL表示装置である。
能動素子400が有するカソード電極1、アノード電極2、第1放電制御電極3aおよび第2放電制御電極3bは、基板10上に形成されており、基板10と、基板10に対向する対向基板11との間に放電ガスが封入されている。
また、表示装置800は、能動素子400のカソード電極1に電気的に接続された定電圧配線26と、第1放電制御電極3aに電気的に接続された走査配線(ゲート配線)21と、第2放電制御電極3bに電気的に接続された信号配線(データ配線)22とを有しており、アノード電極2に有機EL素子30が接続されている。
走査配線21および信号配線22は、それぞれ行ごとおよび列ごとに設けられている。走査配線21は、表示領域外に設けられたゲートドライバに電気的に接続され、ゲートドライバから走査電圧(ゲート電圧)を供給される。また、信号配線22は、表示領域外に設けられたデータドライバに電気的に接続され、データドライバから信号電圧(データ電圧)を供給される。また、定電圧配線26は、表示領域外に設けられた定電圧電源から直流定電圧を供給される。さらに、表示装置800は、対向電極33に電気的に接続された接地配線(不図示)を有し、この接地配線は、表示領域外において接地されている。
有機EL素子30は、アノード電極2に電気的に接続された画素電極31と、画素電極31に対向する対向電極33と、画素電極31と対向電極33との間に設けられた表示媒体層としての有機EL(エレクトロルミネッセンス)材料層32とを有し、電流を供給されることによって発光する。
表示装置800は、実施形態6の表示装置600とほぼ同様に駆動することができる。例えば図24(b)および(c)に示したものと同様の波形の電圧を第1放電制御電極3aおよび第2放電制御電極3bに印加されることによって駆動される。
各画素は、第2放電制御電極3bに印加された第2放電制御電圧に応じて、所定の表示状態となる。有機EL素子30に供給される電流の大きさは、第2放電制御電圧に応じて変化するので、有機EL素子30の発光輝度を変化させることができ、多階調表示が実現される。
本実施形態の表示装置800は、公知の材料を用いて公知のフォトリソグラフィプロセスやスクリーン印刷法などにより製造することができる。表示装置800は、能動素子として実施形態4の能動素子400を備えているので、画素ごとにTFTを備えた従来の有機EL表示装置よりも製造工程を簡略化でき、また、製造コストも低減することができる。
なお、本実施形態においては、被駆動部として、有機EL素子30を備えている場合について説明したが、これに限定されず、自発光型素子や光変調型素子などを好適に用いることできる。また、被駆動部は、有機EL素子30のような抵抗性の素子であってもよいし、一対の電極に挟持された液晶層のような容量性の素子であってもよい。
図30(a)および(b)に、被駆動部として、画素電極41および対向電極43とこれらに挟持された液晶層42とからなる液晶容量40を備える表示装置800’を示す。
表示装置800’は、液晶容量40を備えている点以外は、表示装置800とほぼ同じ構成を有している。以下の説明においては、表示装置800と異なる点を中心に説明する。
表示装置800’は、被駆動部として液晶容量40を有しており、液晶容量40は、能動素子400を用いて駆動される。表示装置800’が備える被駆動部は、光変調型素子であるので、表示装置800’においては、バックライトからの光を用いて表示を行うか、あるいは周囲光(外光)を反射板(あるいは反射電極)により反射させて表示を行う。
液晶容量40が有する液晶層42は、基板10と、基板10上に設けられた液晶封止壁16と、対向基板11とによって囲まれた領域に封入されている。
基板10の液晶層42側に画素電極41が設けられており、対向基板11の液晶層42側にITOからなる対向電極43が設けられている。また、基板10および対向基板11上には、液晶層42に接するように設けられ、ラビング処理が施された配向層(不図示)が形成されている。典型的には、対向基板11はさらに、液晶層42側とは反対側に偏光制御層およびカラーフィルタ層(いずれも不図示)を有する。
液晶層42に液晶封止壁16を隔てて設けられた空間15に放電ガスが封入されており、この空間15の大きさが放電に適した大きさとなるように、対向基板11はダイシング加工されている。
表示装置800’においても、表示装置800と同様にアクティブマトリクス駆動が実現され、表示装置800と同様の利点が得られる。
(実施形態9)
図31、図32(a)および(b)を参照しながら、本実施形態における表示装置900を説明する。
表示装置900は、マトリクス状に配列された複数の画素Pと、これらの画素Pを駆動するための信号を出力する駆動回路(例えばドライバIC)53とを有している。
複数の画素Pによって規定される表示領域は、例えば、実施形態3、6、7および8において説明した表示装置の表示領域と同様の構造を有している。あるいは、表示装置900の表示領域は、PDP(プラズマディスプレイパネル)やPALC(プラズマアドレス液晶ディスプレイ)の表示領域と同様の構造を有している。なお、PALCの構造は、例えば、伊藤福三郎、外2名,「プラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイ」,シャープ技報,1999年8月,第74号,p.35−40 に開示されており、プラズマアドレスの原理は、例えば特開平1−217396号公報に開示されている。
表示装置900は、さらに、実施形態1において説明した能動素子100を表示領域と駆動回路53との間に有している。能動素子100のカソード電極1は、画素Pに向かって延びる配線55に接続されており、アノード電極2は一定の高電圧を供給する定電圧配線54に接続されており、放電制御電極3は駆動回路53に接続されている。各電極がこのように接続された能動素子100は、図32(b)に示すように、放電制御電極3に入力される電気信号を増幅してカソード電極1から出力することができる。つまり、能動素子100は、駆動回路53から出力される信号を増幅して複数の画素Pに供給する増幅素子として機能し得る。従来の増幅用トランジスタになぞらえると、カソード電極1がコレクタ、アノード電極2がエミッタ、放電制御電極3がベースとしての役割を果たす。なお、図31に例示する構成では、複数の画素Pを有する基板50が絶縁性基板(例えばガラス基板)51とその上に形成された絶縁層52とを備えており、絶縁層32上にカソード電極1、アノード電極2、放電制御電極3および配線55が形成され、絶縁性基板51と絶縁層52との間に定電圧配線54が形成されている。
従来、PDP(プラズマディスプレイパネル)やPALC(プラズマアドレス液晶ディスプレイ)などの放電現象を利用して表示を行う表示装置では、放電を発生させるための高電圧のパルス信号を画素に供給する必要があるので、駆動回路として耐圧の高いドライバICが用いられてきた。しかし、高耐圧のドライバICは高価であるので、高耐圧のドライバを用いることは製造コストの増加を招いてしまう。
これに対し、本実施形態における表示装置900は、増幅素子として機能する能動素子100を有しているので、画素Pの駆動に高電圧の信号が必要であっても、駆動回路53としては耐圧の低い素子(例えばドライバIC)を用いることができる。そのため、製造コストの低減を図ることができる。なお、能動素子100は、実施形態1において説明したように簡素な構成を有しているので、表示装置の製造工程において新たなプロセスをほとんど追加することなく基板上に作り込むことができる。従って、増幅素子としての能動素子100を設けることによる製造コストの増加はほとんどない。特に、表示領域が、PDPやPALC、あるいは実施形態3、6、7および8において説明した表示装置などのように、もともとガス封入構造を備えている場合には、増幅素子としての能動素子100をも取り囲むように(図31中にガス封入構造の一部56を例示している)ガス封入構造を形成することによって、増幅素子としての能動素子100のために別途にガス封入構造を形成したり放電ガスを封入したりする工程を省略できるので、実質的に製造プロセスの増加を伴うことなく能動素子100を設けることができる。
ここで、図33を参照しながら、表示装置900のより具体的な構造を例示して説明する。図33に例示する表示装置900はPDPであり、表示領域が3電極型のPDPと同様の構造を有している。
表示装置900は、マトリクス状に配列された画素Pの行方向または列方向に沿って延びる複数の放電セル90を有している。複数の放電セル90のそれぞれは、一対の基板と、これらの間に設けられ、所定の方向に沿って延びる複数の隔壁のうちの隣接した2つの隔壁とによって規定され、各放電セル90内には放電ガスが封入されている。一方の基板上に、放電セルごとに一対の表示電極91および92が設けられており、他方の基板上に、これら表示電極91および92に交差するようにアドレス電極93が設けられている。なお、図33には、短冊状の表示電極91および92を示したが、これに限定されず、例えば、放電セル90の延びる方向に沿って延びる配線を設け、この配線と一体に形成された矩形の表示電極を画素Pごとに設けてもよい。
各放電セル90の一対の表示電極91および92のうちのカソード電極92は、増幅素子としての能動素子100のカソード電極1に接続され、スキャン電極として機能する。また、アノード電極91は、表示領域外で共通の電位(例えば接地電位)を与えられ、共通電極として機能する。
PDPである表示装置900においては、各放電セル90で放電を発生させるために一対の表示電極91および92間に高電圧を印加する必要があるが、表示装置900は駆動回路53から出力される信号を増幅する(増幅素子として機能する)能動素子100を備えているので、駆動回路53としては耐圧の低いもの(例えば、一般的な液晶表示装置用のドライバIC)を用いることができる。そのため、製造コストの低減を図ることができる。また、増幅素子としての能動素子100は、PDPの製造工程において実質的に新たなプロセスを追加することなく基板上に作り込むことができるため、能動素子100を設けることによる製造コストの増加はほとんどない。
なお、本実施形態では、能動素子100によって増幅された信号がスキャン電極として機能するカソード電極92に供給される構成を示したが、増幅された信号がアドレス電極93に供給される構成としてもよい。ただし、アドレス電極93よりもカソード電極92の方が高い電圧を印加する必要があるので、駆動回路53の耐圧を低くして製造コストの低減を図る観点からは、増幅された信号がカソード電極92に入力されることが好ましい。
また、図31や図33では、駆動回路53から出力された信号が、画素Pに供給される前に能動素子100によって1回増幅される構成を例示したが、本発明はこれに限定されない。図34に示すように、駆動回路53から出力された信号を複数回増幅する構成としてもよい。
図34に示す構成では、駆動回路53から出力される信号を直接増幅する第1の増幅素子100aと、第1の増幅素子100aで増幅された信号をさらに増幅する第2の増幅素子100bとが設けられている。
第1の増幅素子100aおよび第2の増幅素子100bは、それぞれ能動素子100と同じ構造を有しており、第1の増幅素子100aのカソード電極1と、第2の増幅素子100bの放電制御電極3とが電気的に接続されており、第1の増幅素子100aのカソード電極1から出力された信号が第2の増幅素子100bの放電制御電極3に入力される。従って、第1の増幅素子100aで増幅された信号を、第2の増幅素子100bでさらに増幅することが可能になる。もちろん、図34に示すように信号を2段階で増幅する構成に限定されず、さらに多段階で(3回以上)信号を増幅するような構成としてもよい。
増幅素子としての能動素子100は、実施形態1において説明した製造方法によって製造することができる。能動素子100の各電極は、厚さ1μm以下の薄膜であってもよいし、厚さ1μmを超える厚膜であってもよい。また、各電極の材料としては、例えば、ITO、銀、ニッケル、アルミニウムなどを用いることができる。また、各電極は、積層電極(例えばCr層/Cu層/Cr層)であってもよい。各電極の大きさ(面積)は、画素Pで必要とされる電流量などに応じて適宜決定される。また、電極間の距離(電極間隔)は、放電ガスの種類や所望する増幅率などに応じて適宜決定される。
このようにして製造される能動素子による信号増幅の具体的な効果を説明する。例えば、ガス封入構造内にネオンとキセノンの混合ガス(キセノン5%)を約100Torr(約13.3kPa)で封入した構成において、アノード電極2に定電圧配線54から約ー300Vの電圧を印加し、放電制御電極3に駆動回路53からバイアス電圧を含む振幅約―10V、パルス幅40μsのパルス信号を入力すると、カソード電極1から振幅約―50V、パルス幅40μsのパルス信号を出力することができる。このようにして、振幅が約5倍に増幅された信号を出力することが可能になる。また、図34に示す構成を採用し、第1の増幅素子100aで振幅が約―50Vに増幅された信号を、第2の増幅素子100bの放電制御電極3に入力すれば、振幅を約―250Vにまで増幅することが可能になる。