JP4424816B2 - 帽体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、防塵性、通気性ならびに強度特性に優れた極めて簡易な形態を有する帽体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来は、防塵帽子として従来から織物、紙等でキャップ状に構成されたものや、不織布を基材としてパーツを縫製して成形してなるものがある。
【0003】
例えば、特開昭62−94180号公報には、単繊維直径0.1〜5μmの極細長繊維ウェブ又はシートを1枚あるいは複数枚積層した繊維集合体の片面又は両面に多孔性シートを接合一体化させてなる通気量1cc/cm2 ・sec 以上の繊維構造物を一部あるいは全部に用いたフードマスク、が開示され、特開平3−249203号公報の防塵帽子には、平均繊維径0.5〜6μmエレクトレット化されたメルトプロー不織布に2〜15mm2 の小穴が1〜20%の開口面積を有する防塵帽子である。又、特開平1−280007号公報の防塵用の帽子には、表面電荷密度1×10-10 クーロン/cm2 で、かつ、通気量10〜1000cc/cm2 ・sec 以上であるエレクトレット材料を用いてなる防塵用の帽子が開示されている。しかしながら、従来帽体の有する全ての特徴を保持しながら、簡単容易に、かつ、安価で、それでいて実用的に優れた帽体について開示または示唆された例は全く存在しなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、防塵性、通気性ならびに強度特性に優れた極めて簡易な形態を有する帽体を提供せんとするものであり、かかる実用的な帽体を再現性よく、簡単、かつ、安定して、しかも安価に製造することができる製造方法を提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を達成するために、次のような手段を採用する。すなわち、本発明における帽体は、裾部と被覆部とからなるメルトブロー不織布の融着縫製帽体であって、該帽体の裾部が、メルトブロー不織布および延伸繊維構造物の積層構造体で構成されているものであり、本発明に係る帽体の製造方法は、メルトブロー不織布を主体とする基材の両端部を、帽体の裾部に相当する幅分だけ折り込み、該折り込み部分の中に、延伸した状態にある弾性体と、補強用の延伸繊維構造物とを挿入した後、該弾性体の延伸状態を維持したまま融着一体化した後、該基材を長さ方向に沿って、プリーツ状に折り畳んで集合させて形成され、折り畳み部分が多数の山で構成され、かつ折り畳み部分の山高さが揃っている帯状体の軸方向に対して直角の方向に、一定間隔で、かつ、5〜20mmの幅の融着帯を設けた後、該融着帯の中間をカットすること、および、メルトブロー不織布を主体とする基材の両端部を、帽体の裾部に相当する幅分だけ折り込み、該折り込み部分の中に、延伸した状態にある弾性体と、補強用の裾部と実質的に同じ幅分の延伸繊維構造物とを裾部の折り込み部分に平坦に挿入できるようにガイドを設けて挿入した後、該弾性体の延伸状態を維持したまま融着一体化した後、該基材を長さ方向に沿って、プリーツ状に折り畳んで集合させて形成され、折り畳み部分が多数の山で構成され、かつ折り畳み部分の山高さが揃っている帯状体の軸方向に対して直角の方向に、一定間隔で、かつ、5〜20mmの幅の融着帯を設けた後、該融着帯の中間をカットすることを特徴とするものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明は、前記課題、つまり防塵性、通気性ならびに強度特性に優れた極めて簡易な形態を有する帽体について、鋭意検討したところ、特定な素材と特定な形態に成形することについて、種々工夫し、メルトブロー不織布を用いて、全体をプリーツ加工して一体化してみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、裾部と被覆部とからなるメルトブロー不織布の融着縫製帽体であって、該裾部をメルトブロー不織布および延伸繊維構造物の積層構造体で構成したものであり、さらに好ましくは該裾部に弾性体が、さらに挿入されてなるメルトブロー不織布融着縫製帽体である。この弾性体を挿入すると伸縮性の裾部を有する帽体を提供することができる。
【0008】
かかる帽体の主体をなす素材としては、メルトブロー不織布が好ましく使用される。かかるメルトブロー不織布は、作業者から発する毛髪、ふけ、ホコリなどを脱落防止する機能に優れている。また、該帽体の好ましい着用方法としては、かかるメルトブロー不織布を直接肌側に使用する態様がよく、かかる帽体を着用することにより、各種用途分野での毛髪、ふけ、埃の混入事故を見事に防止することができるものである。
【0009】
かかるメルトブロー不織布は、上述の防塵性、通気性ならびに強度特性などの機能に加えて、優れた着用感を得る上から、平均繊度が0.01〜0.5デニールの繊維で、目付が10〜100g/m2 、通気量が25cc/cm2 ・sec 以上であるという比較的薄目のものが好ましく使用される。
【0010】
すなわち、かかるメルトブロー不織布の平均繊維径としては、さらに好ましくは0.015〜0.1デニール、特に好ましくは0.02〜0.07デニールの範囲にあるものが使用されるが、0.01デニール未満のものでは、不織布強度が低下すぎて、プリーツ状に折り込む工程で破壊されることがあり、逆に0.5デニールを越えるものでは、ガサツキ感があるものとなり、着用時の風合いや着用感が低下する。
【0011】
次に、かかるメルトブロー不織布の目付としては、さらに好ましくは12〜50g/m2 、特に好ましくは15〜35g/m2 のものが使用される。該目付が、10g/m2 未満となると、不織布強度が低すぎたり、カバーファクターが悪くて、外観上、機能上からも好ましくない。
【0012】
また、かかるメルトブロー不織布の通気量は、多ければ多いほど、着用感は増すものであり、その意味から、好ましくは25cc/cm2 ・sec 以上であるものが使用される。場合により、該不織布に0.1〜1cm2 の穴を付与して、通気性を増大させるのが、蒸れをなくするために好ましい。
【0013】
かかるメルトブロー不織布の防塵性機能を向上させるために、エレクトレット加工を施したものが、発塵に対する吸着効果を格段に高めるので好ましく使用される。
【0014】
かかるメルトブロー不織布の素材としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル単体及びそれらの共重合体のいずれでも使用することができるが、容易にエレクトレット体を提供することができ、また、エレクトレット効果の持続機能、融着機能などの上から、ポリオレフィンが好ましく使用される。かかるポリオレフィンの内でも、ポリプロピレンが好ましく使用される。
【0015】
しかしながら、このメルトブロー不織布単体は、通気性には優れるものの、布帛強力が弱すぎて、破れや易くて実用的な帽体を提供し得ないというデメリットも併せて有するものである。本発明は、かかるメルトブロー不織布の特徴を巧みに活かし、かつ、欠点を補いながら、防塵性、通気性ならびに強度特性に優れた形にまとめたものである。すなわち該帽体において、応力集中し易い部分は、該帽体の被覆部ではなく裾部にあることに着目し、この部分を補強することにより、かかる弱点を見事に克服し、実用的な帽体を提供することに成功したものである。すなわち、該帽体の裾部を、メルトブロー不織布および延伸繊維構造物の積層構造体で構成することにより、実用レベルの布帛強度を達成することができたものである。また、かかる補強を該裾部のみに限定することにより、被覆部の通気性、着用感を犠牲にすることなくメルトブロー不織布の有する特徴を全て満足する帽体を提供し得たものである。
【0016】
かかる積層構造体において使用される延伸繊維構造物としては、スパンボンド不織布、スパンレース不織布および織編物から選ばれた少なくとも1種が好ましく使用される。さらにかかる積層構造体としては、融着一体化したときの該構造体の引っ張り強力として、好ましくは0.8kg以上、さらに好ましくは1.0kg以上であるものが、裾部での応力集中に対抗するために必要な布帛強力である。かかる延伸繊維としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル単体及びそれらの共重合体などいずれの素材であってもよいが、メルトブロー不織布として使用される素材と同じ重合体が融着性の上から好ましく、したがって、実用的にはポリオレフィンが好ましく、この内でも最も汎用的なポリプロピレンが、さらに好ましく使用される。
【0017】
上述の融着一体化とは、該積層構造体は、前記したようにポリオレフィンなど熱可塑性樹脂のメルトブロー不織布で構成されているので、これを一体化する手段としては、超音波や加熱による融着が最も好ましく採用され、かかる融着によって積層一体化されたものを意味するものである。かかる融着方法としては、熱エンボス、超音波、高周波などが用いられるが、好ましくは超音波による手段が採用される。かかる融着一体化は、裾部や融着帯に使用されるものである。
【0018】
本発明における帽体は、識別性やファッション性などの点から、少なくともその一部を着色することができる。かかる帽体は、頭、手、足等の各種部位に用いることができるが、最も好ましくは、防塵用として防塵帽子として用いるのがよい。
【0019】
次に、本発明の帽体の製造方法について、以下説明する。すなわち、本発明の帽体は、図1の成形フロー図に示したプロセスで成形される。つまり、まず、頭部を完全に被覆するに十分な幅を有する成形用基材(メルトブロー不織布)を用意し、図5のように、その拡布状基材(成形用基材6)の両端部を、帽体の裾部に相当する幅分だけ折り込み、この折り込み部分の中に、補強用の延伸繊維構造物5を挿入する。このときこの裾部に伸縮性を付与したい場合は、該延伸繊維構造物5に加えて、弾性体4を引き伸ばした状態で挿入し、その状態のまま融着一体化してしまう。これで該拡布状の基材は、両端部が折り込まれて、融着一体化された状態のものとなるが、次に該基材を、図3に示すように長さ方向に沿ってプリーツ状に折り畳んで集合させて、蛇腹状帯状体を形成する。この蛇腹状帯状体においては、図3に示すように、折り畳み部分が多数の山で構成され、かつ折り畳み部分の山高さが揃っている。また、この蛇腹状帯状体の両外側に該裾部3が存在して、それによって、被覆部1を構成する基材が折り畳まれて挟まれた状態にある。また、このとき前記弾性体は、引き伸ばされた状態を維持されたままであり、その状態で、次に、図2のように、該蛇腹状帯状体の軸方向に対して直角の方向に、一定間隔で、かつ、5〜20mm幅(L)の融着帯2を設けて、該蛇腹状帯状体の厚み方向の全部の基材を融着一体化する。この蛇腹状帯状体の厚み方向に、該融着帯の中間でカットすると、1個の帽体ができるのである。この帽体の被覆部1は、図4の広げた状態を示す図から明らかなように、裾部3や融着帯2以外の、つまり残りの全ての基材(メルトブロー不織布)で構成されているものであることがわかる。更に、本発明の製造方法において、前記裾部の折り込み部分に、延伸した状態にある弾性体と、補強用の裾部と実質的に同じ幅分の延伸繊維構造物とを、平坦に挿入できるように図6に示すようなガイド7を設けて挿入して、図6に示すような融着ローラー8を用いて融着一体化することもできる。
【0020】
なお、該裾部3に挿入される弾性体は、着用した場合のずれ防止機能があればよく、ある程度の締め付け力があれば、いかなる素材、形態であってもよく、好ましくは扁平状で広い範囲で締め付けることができる弾性体を用いるのがよい。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の内容を実施例により具体的に説明するが、本発明がこれら実施例により限定されるものではない。実施例で採用した評価方法を以下示す。
【0022】
<平均繊度>
電子顕微鏡(SEM)写真で繊維を拡大撮影したものの、100本の繊維幅を測定し、その平均値で示した。
【0023】
<通気量>
JIS L−1096のフラジール法に基づいて測定した。
【0024】
<目付>
50cm角のサンプ重量を4倍して示した。
【0025】
<強力>
(株)ボールウイン社製テンシロンで測定し、10回の平均で示した。
【0026】
実施例1
平均繊度0.02デニール、目付20g/m2 、通気量90cc/cm2 ・sec のポリプロピレンメルトブロー不織布で、50cm幅のロール巻きを準備した。
【0027】
まず、この不織布の両端部(裾部)を2.5cm折り重ね、3倍に延伸した扁平状弾性体(0.5mm丸ゴム2本を3mm間隔に配置して、ポリエステル加工糸で成形したもの)と、2.5cm幅で、繊度5デニール、目付25g/m2 のテープ状ポリプロピレンスパンボンド不織布とを挿入し、1mm角のピン型の超音波加工機を用いて、折り重ねた両サイドと、扁平状弾性体の中心を超音波で融着一体化して固定して裾部を形成した。
【0028】
次いで、該基材を長さ方向に沿って、2.5cm幅となるように、プリーツ状に折り込んで集合させ蛇腹状帯状体を形成し、さらにそれを密着させて、その蛇腹状帯状体を、その軸方向に対して直角の方向に、50cm間隔で、7mm幅(3mm2列で間を1mm開ける)の幅で超音波で、接合一体化して融着帯を形成した後、該融着帯の中間(3mm2列の間)でカットして、帽体を作成した。
【0029】
この帽体の裾部の破壊強力は、1.3kgであり、実用上問題のないものであった。
【0030】
この帽体を防塵帽子として、5人の作業員に1週間着用して作業をしてもらったところ、作業部屋内に落ちている髪の毛は、3本と極めて少なく、良好な結果であった。
【0031】
また、この実施例において、帽体1個を生産するに要する時間は、5秒であった。これに対して、自動ミシンを用いて縫製した場合は、25秒であった。
【0032】
実施例2
実施例1において、ポリプロピレンメルトブロー不織布として、35kv/5cm の直流高電圧中で5秒間エレクトレット化処理したものを使用する他は、同様にして帽体を作成した。
【0033】
この帽体について、実施例1と同様に髪の脱落性を評価したところ、作業部屋内に落ちている髪の毛は、0本で非常に効果的であった。この帽体の裾部の破壊強力は、1.3kgであり、実用上問題のないものであった。
【0034】
実施例3
平均繊度0.015デニール、目付15g/m2 のポリプロピレンメルトブロー不織布を基材として用い、補強材として、繊度5デニール、目付15g/m2 のポリプロピレンスパンボンド不織布を用いて、これを図6に示す装置を用い、ガイド7により、裾部に相当する両端部に平坦に挿入して熱エンボスして接着一体化した。この不織布に35kv/5cm の直流高電圧中で5秒間エレクトレット化処理した、
【0035】
後は実施例1と同様に成形して帽体をつくった。この帽体のメルトブロー不織布側を内にして、着用して評価した結果、髪の脱落はなく非常に優れていた。また、メルトブロー不織布側を外にして着用した場合は、良好ではあるが、髪3本の脱落が認められた。この帽体の裾部の破壊強力は、1.4kgであり、実用上問題のないものであった。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、作業者から発する毛髪、ふけ、ホコリなどの混入事故を防止することができ、たとえば食品加工工場やその販売店、飲食店等の食品分野や、医療機関分野あるいはクリーンルームなどの電子分野などで使用するのに有効な帽体を安価に安定して提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この図は、本発明の帽体成形フローを示す。
【図2】この図は、プリーツ状に折り込んだ蛇腹状帯状体の側面図である。
【図3】この図は、図2の蛇腹状帯状体の融着帯部でカットして得られた本発明の成形上がりの帽体の形態を示す。
【図4】この図は、図3の本発明の帽体を広げた形態を示す。
【図5】この図は、本発明の裾部の構造を示す。
【図6】この図は、延伸繊維構造物を基材裾部に挿入する際の装置構成の一例を示す。
【符号の説明】
1:被覆部
2:融着帯
3:裾部
4:弾性体
5:延伸繊維構造物
6:成形用基材
7:ガイド
8:融着ローラー
Claims (2)
- メルトブロー不織布を主体とする基材の両端部を、帽体の裾部に相当する幅分だけ折り込み、該折り込み部分の中に、延伸した状態にある弾性体と、補強用の延伸繊維構造物とを挿入した後、該弾性体の延伸状態を維持したまま融着一体化した後、該基材を長さ方向に沿って、プリーツ状に折り畳んで集合させて形成され、折り畳み部分が多数の山で構成され、かつ折り畳み部分の山高さが揃っている帯状体の軸方向に対して直角の方向に、一定間隔で、かつ、5〜20mmの幅の融着帯を設けた後、該融着帯の中間をカットすることを特徴とする帽体の製造方法。
- メルトブロー不織布を主体とする基材の両端部を、帽体の裾部に相当する幅分だけ折り込み、該折り込み部分の中に、延伸した状態にある弾性体と、補強用の裾部と実質的に同じ幅分の延伸繊維構造物とを裾部の折り込み部分に平坦に挿入できるようにガイドを設けて挿入した後、該弾性体の延伸状態を維持したまま融着一体化した後、該基材を長さ方向に沿って、プリーツ状に折り畳んで集合させて形成され、折り畳み部分が多数の山で構成され、かつ折り畳み部分の山高さが揃っている帯状体の軸方向に対して直角の方向に、一定間隔で、かつ、5〜20mmの幅の融着帯を設けた後、該融着帯の中間をカットすることを特徴とする帽体の製造方法。
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