JP4392576B2 - トンネル施工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ECL工法と称されるトンネル施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、ECL工法(Extruded Concrete Lining Method)は、シールド掘削機の後方で坑内面に沿わせて内型枠を組み立て、現場にてコンクリートをほぼ連続的に打設することにより覆工壁を形成しつつ掘進していくトンネル施工法である。
【0003】
図7に従来一般のECL工法の一例を示す。図中符号1はシールド掘削機であり、これはスキンプレート2の前部にカッター3を備え、覆工壁4を形成するための一連の内型枠5から反力を取ってシールド掘削機1全体を掘進させるための推進ジャッキ6を備えているものである。
【0004】
上記の内型枠5は施工するべきトンネルの断面形状に対応して湾曲しかつシールド掘削機1の掘進ストロークに対応する長さの円筒分割体であって、これらを周方向および軸方向に多数連結して全体として円筒状に組み立て、その最前部に妻型枠7を取り付けることで覆工壁4を施工するための環状のコンクリート打設空間を形成するものである。
【0005】
符号8は妻型枠を兼ねる加圧ピストンであり、これは加圧シリンダ9により打設空間に向けて押圧されるようになっているとともに、この加圧ピストン8にはコンクリート打設管10が接続される打設口が設けられていて、加圧ピストン8により加圧状態を維持しつつコンクリート打設を行い得るようになっている。
【0006】
上記のシールド掘削機1によるECL工法では、シールド掘削機1の後方で1リング分の内型枠5を組み立て、打設管10を通して加圧ピストン8から打設空間にコンクリートを打設し、加圧ピストン8によりコンクリートを加圧して打設圧を地下水圧よりも高く維持することで、止水性に優れた覆工壁4を形成することができる。そして、打設したコンクリートが硬化する以前に、一連の内型枠5から反力を取って推進ジャッキ6によりシールド掘削機1を掘進させ、その後方に新たな1リング分の内型枠5を組み立て、直ちに次のコンクリート打設を行うことで、前後のコンクリート全体が加圧ピストン8により一様に加圧されて確実に一体化し、これにより覆工壁4全体を実質的に連続的に形成することが可能であって打継面(コールドジョイント)が生じることがない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、トンネルの側面に開口部を設けるような場合には、上記のような単なる現場打ちコンクリートによる覆工壁4では十分な強度が確保できない場合もあるので、そのような場合には上記の覆工壁4を一次覆工としてさらに二次覆工を設けることで対処するようにしている。しかし、部分的にでも二次覆工を設けるようなことは施工が著しく煩雑となるし工期やコストの点でも好ましくなく、そのような場合に適用し得る有効は施工方法が望まれている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記事情に鑑み、請求項1の発明は、シールド掘削機の後方で坑内面に沿わせて内型枠を組み立て、その内型枠内にコンクリートを打設することにより坑内面に覆工壁を形成しつつ掘進していくトンネル施工方法において、前記内型枠を組み立てる際にその内側に鋼製セグメントを組み立ててその鋼製セグメントを覆工壁中に埋設せしめ、前記鋼製セグメントを組み立てるに際しては、その鋼製セグメントを既に組み立てられている最前部の内型枠に対して支持せしめることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明のトンネル施工方法において、前記鋼製セグメントには、内型枠内に打設したコンクリートが通過し得る開口部を形成しておくことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1〜図6を参照して本発明の実施形態を説明する。本実施形態のトンネル施工方法は図7に示した従来のシールド掘削機1をそのまま使用する従来のECL工法を基本とするものであるが、覆工壁4の要所(たとえば開口部の設置位置等)に鋼製セグメント11を埋設することでそこでの強度を高めるようにしたものである。
【0012】
図3〜図5は本実施形態において採用する2種の鋼製セグメント11(11a、11b)を示す。図3は鋼製セグメント11a、11bの双方の外観図、図4は鋼製セグメント11aの断面図、図5は鋼製セグメント11bの断面図であり、図4および図5における(a),(b)はそれぞれ図3におけるa−a矢視図、b−b矢視図である。これら鋼製セグメント11は通常のシールド工法において採用されている汎用のセグメントと同様の円筒分割体の形態のもので、いずれも円弧状の周面12の周囲に軸方向端面13および周方向端面14を一体に設けた中空箱状をなし、内部には補強横リブ15および補強縦リブ16が設けられ、軸方向端面13および周方向端面14にはボルト連結孔17が形成されてその内側にナット部材18が固定され、各部にはコンクリートが通過し得るの多数の開口部19が設けられているものである。以上の構成は鋼製セグメント11a、11bに共通であるが、それに加えて、鋼製セグメント11aにはこれを内型枠5に対して連結するための連結片20を有し、それにはボルト連結孔21が長孔として形成されている。
【0013】
これら鋼製セグメント11は、図6に示すように最前部の内型枠5に対して鋼製セグメント11aが連結されてリング状に組み立てられ、それら鋼製セグメント11aに対して鋼製セグメント11bが連結されてリング状に組み立てられることにより、内型枠5の内側において坑内面に沿うような円筒体に組み立てられるものである。そして、内型枠5内にコンクリートが打設されて覆工壁4が形成されると、それら鋼製セグメント11はその覆工壁4中に埋設されてそれを補強する補強部材として機能するものとなっている。
【0014】
上記の鋼製セグメント11を用いる本実施形態のトンネル施工方法を図1〜図2に工程順に示す。以下の説明中の(a)〜(j)は図1および図2に付した符号に対応している。
【0015】
(a)通常のECL工法により現場打ちコンクリートからなる覆工壁4を形成した状態を示しており、本実施形態ではその状態から覆工壁4中に鋼製セグメント11を埋設していく。
【0016】
(b)加圧ジャッキ9(図7参照)を作動させて加圧ピストン8を図中左方に前進させ、最前部の内型枠5との間に間隔を確保し、そこに1リング目の鋼製セグメント11aを組み立てる。その際、鋼製セグメント11aの連結片20を最前部の内型枠5に対してボルト締結する。鋼製セグメント11aに形成されているボルト連結孔21は長穴とされているので、内型枠5に対する鋼製セグメント11aの位置合わせを容易にかつ精度良く行い得る。
【0017】
(c)加圧ピストン8を後退させて鋼製セグメント11aに押し当て、新たな内型枠5を組み立てる。
【0018】
(d)加圧ピストン8を通してコンクリートを打設する。打設されたコンクリートは鋼製セグメント11aに多数形成されている開口部19を通過して内型枠5内全体に支障なく充填されていく。
【0019】
(e)打設したコンクリートを加圧ピストン8によって所定圧力で加圧しながら、推進ジャッキを作動させてシールド掘削機1全体を前進させる。以上で1ストローク分の掘進が完了し、覆工壁4中には1リング分の鋼製セグメント11aが埋設される。
【0020】
(f)加圧ジャッキ9を再び作動させて加圧ピストン8を前進させ、最前部の内型枠5との間に間隔を確保する。
【0021】
(g)1リング目の鋼製セグメント11aの前方に2リング目の鋼製セグメント11bを連結してリング状に組み立てる。
【0022】
(h)加圧ピストン8を後退させて鋼製セグメント11bに押し当て、新たな内型枠5を組み立てる。
【0023】
(i)加圧ピストン8を通してコンクリートを打設する。
【0024】
(j)打設したコンクリートを加圧ピストン8によって所定圧力で加圧しながら、推進ジャッキを作動させてシールド掘削機1全体を前進させる。以上で2リング分の鋼製セグメント11a,11bが埋設された覆工壁4が形成される。
【0025】
以降は以上の工程を繰り返していき、鋼製セグメント11が不要になる位置まで掘進したら通常のECL工法に戻り、鋼製セグメント11を用いることなく現場打ちコンクリートのみからなる覆工壁4を形成していく。
【0026】
本実施形態のトンネル施工方法によれば、従来一般のECL工法を基本としてそれに鋼製セグメント11の組立工程を付加するのみで、鋼製セグメント11を内蔵する高強度の覆工壁4を容易にかつ支障なく施工できる。したがって、従来のように現場打ちコンクリートによる覆工壁4を形成した後にあらためて二次覆工を施工するような作業を不要とできるし、シールド掘削機1自体は従来のものをそのまま使用できるので極めて合理的である。
【0027】
特に、1リング目の鋼製セグメント11aを最前部の内型枠5に対して連結してそれに支持せしめるので、その組立工程も何等面倒ではないし、鋼製セグメント11aを支持するための格別の支持手段も不要である。また、鋼製セグメント11にはコンクリートが通過する開口部19を多数形成してあるので、内型枠5内におけるコンクリートの充填性が損なわれる懸念もない。
【0028】
【発明の効果】
請求項1の発明のトンネル施工方法は、内型枠を組み立てる際にその内側に鋼製セグメントを組み立てて鋼製セグメントを覆工壁中に埋設せしめるので、従来一般のECL工法を基本としてそれに鋼製セグメントの組立工程を付加するのみで、鋼製セグメントを内蔵する高強度の覆工壁を容易にかつ支障なく施工でき、したがって従来のように覆工壁を形成した後にあらためて二次覆工を施工するような作業を不要とできるし、シールド掘削機自体は従来のものをそのまま使用できるので極めて合理的である。
【0029】
特に、鋼製セグメントを既に組み立てられている最前部の内型枠に対して支持せしめるので、鋼製セグメントの組立工程は何等面倒ではないし、鋼製セグメントを支持するための格別の支持手段も不要である。
【0030】
請求項2の発明のトンネル施工方法は、鋼製セグメントにコンクリートが通過し得る開口部を形成しておくので、内型枠内におけるコンクリートの充填性が損なわれる懸念がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態であるトンネル施工方法の作業手順を示す図である。
【図2】 同、次の作業手順を示す図である。
【図3】 同、鋼製セグメントの一例を示す斜視図である。
【図4】 同、断面図である。
【図5】 同、他の鋼製セグメントの断面図である。
【図6】 同、鋼製セグメントの組み立て状態を示す図である。
【図7】 ECL工法の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
1 シールド掘削機
2 スキンプレート
4 覆工壁
5 内型枠
8 加圧ピストン
11(11a,11b) 鋼製セグメント
19 開口部
Claims (2)
- シールド掘削機の後方で坑内面に沿わせて内型枠を組み立て、その内型枠内にコンクリートを打設することにより坑内面に覆工壁を形成しつつ掘進していくトンネル施工方法において、前記内型枠を組み立てる際にその内側に鋼製セグメントを組み立ててその鋼製セグメントを覆工壁中に埋設せしめ、
前記鋼製セグメントを組み立てるに際しては、その鋼製セグメントを既に組み立てられている最前部の内型枠に対して支持せしめることを特徴とするトンネル施工方法。 - 請求項1記載のトンネル施工方法において、前記鋼製セグメントには、内型枠内に打設したコンクリートが通過し得る開口部を形成しておくことを特徴とするトンネル施工方法。
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