JP4387885B2 - 超音波治療装置 - Google Patents

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この発明は、MRI装置(磁気共鳴映像装置)で被検体の治療対象を観察しながら集束超音波で被検体の患部を治療する超音波治療装置に関する。特に、超音波治療装置に備えられている超音波トランスデューサの電極パターンに関する。
近年、MRI装置(磁気共鳴映像装置)で被検体の治療対象(患部)の温度を観察しながら、同時に集束強力超音波で焼灼治療を行う超音波治療装置が開発されつつある。超音波治療装置は、圧電セラミックスからなる超音波トランスデューサ(超音波振動子)で構成された超音波アプリケータを備えている。圧電セラミックスの両面に電極が設けられ、その電極で電圧を圧電セラミックスに印加することにより、強力な超音波を被検体に照射し、治療を行う。
集束強力超音波を患部に照射すると、そのエネルギーを吸収して温度が上昇する。温度が65℃以上でタンパク質変性が生じて焼灼が期待できることから、これまでは温度計測の可視化に主眼が置かれて、温度分布を画像化してモニタする方法が一般的であった。
現時点までに知られているMRI装置を用いた温度計測方法として、「信号強度法」、「位相法」、及び「拡散画像」が知られており、これらを利用したHIFU装置(High Intensity Focused Ultrasound)が米国InSightec社等によって開発され、Brigham Women’s Hospital等で臨床実験が行われている。
「信号強度法」は、縦緩和時間の延長と磁場不均一性の低下によるMR信号の低下を利用して温度を計測する方法である。「位相法」は、プロトンケミカルシフトの温度依存性を利用して温度を計測する方法である。「拡散画像」は、拡散係数が温度に依存することを利用して温度を計測する方法である。
しかし、温度上昇は一過性であるため、焼灼直後でないと、患部の集束強力超音波による焼灼が完了していると判定することができない。焼灼直後は、キャビテーションが発生し易く、その微小気泡によってMR信号そのものが収集しづらくなり、正確な温度測定が困難になるという問題があった。さらに、熱拡散により温度が低下するため、焼灼直後のタイミングでしか焼灼領域を正確に確認できないという問題もあった。
一方、焼灼により浮腫が発生した場合、細胞を構成するタンパク質の熱変性は発生し、細胞液が細胞壁の外へ流出する。その結果、細胞間に水分が溜まり、水分子が拡散し易くなる。そこで、細胞壁の外への細胞液の流出状態を描写でき、急性期脳梗塞等の可視化に用いられる「拡散画像」というパルスシーケンスを用いると、焼灼を確認することが可能となる。焼灼直後に測定可能であるため、温度が通常の体温に戻ってから測定することができるため、キャビテーションの影響を受けることなく焼灼を確認することができる。
この「拡散画像」というパルスシーケンスの応用例として、焼灼治療が登場するまでに知られていたものは、「超急性期脳梗塞の早期診断」、「クモ膜嚢胞と類上皮腫の鑑別」、「脳浮腫」、「脳腫瘍」、及び「脱髄変性」しかなかった。HIFU装置による焼灼で人工的に浮腫を発生させているため、当然、「拡散画像」にて焼灼を確認することが可能となる。
「拡散画像」が被検体の動きに対応できないということから、実用化が難しいと考えられていたが、基本シーケンスとしてエコープラナー法(EPI法)を用い、強力な傾斜磁場(Motion Probing Gradient:MPG)を印加することで実用化に至っている。
強力な傾斜磁場を使うパルスシーケンス、例えば、拡散画像撮像法におけるMPGを用いるHIFU装置の場合、強力な傾斜磁場が集束強力超音波を発する超音波トランスデューサの電極を貫くことになり、超音波トランスデューサの電極のパターンが大きい場合、その電極に大きいループに沿った渦電流が発生してしまう。そして、その渦電流とMRI装置の静磁場との相互作用によってローレンツ力が生じ、そのローレンツ力に起因する機械振動が発生する。この場合、時定数(=L/R、ここでLはインダクタンス、Rは抵抗)のLは電極の大きさに比例して増大し、電極の厚みを変えずに寸法が変化する場合、断面積と電流パス長が比例するため、抵抗Rはほぼ一定となり、結果として電極の大きさにほぼ比例して時定数が長くなると考えられる。電極の厚みも比例する場合は、ほぼ2乗に比例して長くなる。
傾斜磁場コイルの大きさは、HIFU装置用の超音波トランスデューサの大きさより十分に大きいため、超音波トランスデューサからみると、傾斜磁場は場所によらずほぼ均一な磁束密度であって、時間変動する磁場が超音波トランスデューサを貫くことになる。
この渦電流の時定数が長い場合、渦電流と静磁場との相互作用によって発生するローレンツ力に起因する機械振動がMRI信号収集タイミングまで続くことになる。そして、機械振動と渦電流とによる変動磁場が複雑に影響しあって本来の傾斜磁場に重畳され、MR信号に影響を与えることになり、画像にアーチファクト等が発生する原因となる。
また、周波数は異なるが、同様のメカニズムで高周波磁場(MRI装置でRFと称される領域の周波数)が印加されているときも電極に渦電流が発生する。機械振動は発生しないが、本来の高周波磁場に重畳することにより、結果的には画像にアーチファクトが発生してしまう。
従来においては、超音波トランスデューサの電極にスリットを設け、MRI装置の傾斜磁場による影響を少なくし、MR画像の劣化を防いでいた(例えば、特許文献1)。例えば、図15乃至図17の超音波トランスデューサの上面図に示すように、超音波トランスデューサの電極70に複数の直線状のスリット71を形成していた。
この方法によると、スリットによって渦電流が流れるループの面積が小さくなるため、インダクタンスLを小さくすることができる。また、電極のパターン幅を狭くすることで、電極の抵抗Rを大きくすることができる。上述したように、時定数はL/Rで表されるため、Lを小さくし、Rを大きくすることにより、時定数を短くすることができる。
特開平6−254111号公報(段落[0050]、図4、図7)
しかしながら、上述した特許文献1においては、単板の圧電セラミックスからなる超音波トランスデューサの場合、スリットを形成する電極が、高周波電圧を印加する側の電極(以下、表電極と称する)なのか、アースに接地される電極(以下、裏電極と称する)なのか、全く開示されておらず、各電極に形成した場合の作用及び効果も不明である。さらに、スリットを片側の電極に形成するのか、両側の電極に形成するのかも開示されておらず、その作用及び効果も不明である。
フェーズドアレイ方式の超音波アプリケータの場合、各振動子エレメントの電極にスリットを形成することは開示されている。しかし、アースに接地する電極(裏電極)は、同一のGND電位に保つため、全ての電極が相互に接続されている必要があるにもかかわらず、その結線パターンが全く開示されていない。各電極を結線した場合に、渦電流にとって大きなループが生じれば、かえって渦電流の時定数が長くなり、スリットを設けたにもかかわらず、MR画像に影響を与えることになってしまう。
この発明は上記の問題点を解決するものであり、単板の圧電セラミックスからなる超音波トランスデューサについては、渦電流が発生しにくいようなパターンのスリットを形成することで、MR画像のアーチファクトを低減することを目的とする。
また、フェーズドアレイ・トランスデューサについては、アースに接地される電極(裏電極)に渦電流が発生しにくいようなパターンの結線を形成することで、全ての電極が接続されても渦電流のループを発生させないことを目的とする。
請求項1に記載の発明は、圧電体と、前記圧電体の一方の面に形成されて電圧が印加される第1の電極と、前記圧電体の他方の面に形成されてアースに接地される第2の電極と、を備えた超音波トランスデューサを有し、前記超音波トランスデューサと寝台に載置された被検体とを磁気共鳴映像装置のガントリ内に進入させ、前記磁気共鳴映像装置からの磁場により撮影された画像を参照して、前記超音波トランスデューサから前記被検体の所定の患部に超音波を照射して治療を行う超音波治療装置であって、前記第1の電極又は前記第2の電極のうち、少なくとも一方の電極にはスリットが形成されて複数の小電極に分割され、前記スリットによって分割された前記複数の小電極は、それぞれ隣接する小電極と樹形図状に接続され、かつ、前記スリットによって分割された前記第1の電極又は前記第2の電極のパターンは、前記超音波トランスデューサの中心点に対して、nを2以上の整数とするときに、略360/n度回転対称になるように形成されていることを特徴とする超音波治療装置である。
電極が超音波トランスデューサの中心に対して回転対称になるように、電極にスリットを形成する。例えば、180°回転対称、120°回転対称、90°回転対称になるようにスリットを電極に形成する。分割された各電極に局所的な渦電流による機械振動が発生しても、各電極は中心に対して回転対称に配置されているため、各電極にかかるトルクの合計をほぼ「0」にすることができ、中心に対してバランスをとることが可能となる。その結果、圧電体(圧電セラミックス)には電圧印加による並進運動のみが残り、機械振動モードは簡単になり、MR画像にアーチファクトが発生しづらくなる。
請求項2に記載の発明は、圧電体と、前記圧電体の一方の面に形成されて電圧が印加される第1の電極と、前記圧電体の他方の面に形成されてアースに接地される第2の電極と、を備えた超音波トランスデューサを有し、前記超音波トランスデューサと寝台に載置された被検体とを磁気共鳴映像装置のガントリ内に進入させ、前記磁気共鳴映像装置からの磁場により撮影された画像を参照して、前記超音波トランスデューサから前記被検体の所定の患部に超音波を照射して治療を行う超音波治療装置であって、前記第1の電極又は前記第2の電極のうち、少なくとも一方の電極にはスリットが形成されて複数の小電極に分割され、前記スリットによって分割された前記第1の電極又は前記第2の電極のパターンは、前記超音波トランスデューサの中心点に対して、nを2以上の整数とするときに、略360/n度回転対称になるように形成され、前記スリットによって分割された前記複数の小電極は、それぞれ隣接する小電極と樹形図状に接続され、かつ、それぞれ少なくとも1つの接続点により隣接する小電極に接続されていることを特徴とする超音波治療装置である。
スリットによって分割された各小電極を接続する場合、少なくとも1つの接続点によって隣接する電極同士を接続し、全体として大きなループを描くような渦電流の発生を抑制する。この接続点の幅は、分割された各小電極が個別の電極とみなせる程度に十分に狭い必要がある。例えば、トポロジーにおけるいわゆる「樹形図」が成立するように各小電極を接続する。分割された各小電極を「点」とみなし、接続点を「辺」とみなして、それらをトポロジーにおける「樹形図」になるように接続する。このように、接続することで、大きなループを描く渦電流の発生を抑えることができ、MR画像のアーチファクトを低減することができる。また、全体で「樹形図」を構成しなくても、分割された電極の1部分だけで「樹形図」が形成されていても良い。この場合であっても、その「樹形図」が構成している部分においては、ループを形成しないため、渦電流の発生を抑制することができる。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の超音波治療装置であって、前記スリットによって分割された前記小電極の数をmとし、前記接続点の数をnとした場合、=1の関係が成立することを特徴とするものである。
請求項に記載の発明は、請求項1乃至請求項のいずれかに記載の超音波治療装置であって、前記第1の電極及び前記第2の電極には同じパターンのスリットが形成されていることを特徴とするものである。
請求項に記載の発明は、請求項1乃至請求項のいずれかに記載の超音波治療装置であって、前記第1の電極及び前記第2の電極には同じパターンのスリットが形成され、前記第1の電極に形成されたスリットと、前記第2の電極に形成されたスリットとは、前記圧電体を挟んで少なくとも1部分において重なっていることを特徴とするものである。
渦電流の時定数を短くするためにスリットを形成すると、スリットが形成されて電極が存在しない部分の圧電体(圧電セラミックス)は機械振動することはなく、超音波トランスデューサ全体の出力効率が低下してしまう。この発明においては、両電極に同じパターンのスリットを形成し、さらにスリットが重なるように形成することにより、超音波の出力効率を損なうことなく最大限にスリットを増やすことが可能となる。さらに、全部が重なるようにスリットを形成すると、スリットが形成されていない電極によって電圧が印加された場合の超音波の出力に近づけることが可能となり、圧電体(圧電セラミックス)の機械振動にほとんど影響を与えることなく、渦電流の時定数を短くすることができる。
請求項に記載の発明は、請求項1乃至請求項のいずれかに記載の超音波治療装置であって、前記第1の電極及び前記第2の電極は、非磁性材料からなることを特徴とするものである。
非磁性材料として例えば、銀、銅等を用いる。電極に非磁性材料を用いることで、MRI装置の静磁場の影響を受けることはない。その結果、渦電流の発生を抑制することが可能となる。
請求項7に記載の発明は、複数の圧電体と、前記複数の圧電体の各圧電体の一方の面に形成されて電圧が印加される第1の電極と、前記各圧電体の他方の面に形成されてアースに接地される第2の電極と、を備えたフェーズドアレイタイプの超音波トランスデューサを有し、前記超音波トランスデューサと寝台に載置された被検体とを磁気共鳴映像装置のガントリ内に進入させ、前記磁気共鳴映像装置からの磁場により撮影された画像を参照して、前記超音波トランスデューサから前記被検体の所定の患部に超音波を照射して治療を行う超音波治療装置であって、前記第2の電極にはスリットが形成されて複数の小電極に分割され、前記スリットによって分割された前記第2の電極のパターンは、前記超音波トランスデューサの中心点に対して、nを2以上の整数とするときに、略360/n度回転対称になるように形成され、前記スリットによって分割された前記複数の小電極は、それぞれ隣接する小電極と樹形図状に接続され、かつ、それぞれ少なくとも1つの接続点により接続する小電極に接続されていることを特徴とする超音波治療装置である。
フェーズドアレイ・トランスデューサは、複数の独立した圧電体(振動子)で構成され、第1の電極及び第2の電極は圧電体(振動子)ごとに分断されている。アースに接地される第2の電極の各電極において、少なくとも1つの接続点によって隣接する各電極同士を接続し、全体として大きなループを描くような渦電流の発生を抑制する。例えば、トポロジーにおけるいわゆる「樹形図」が成立するように各電極を接続することで、大きなループを描く渦電流の発生を抑えることができ、MR画像のアーチファクトを低減することができる。また、全体で「樹形図」を構成しなくても、分割された電極の1部分だけで「樹形図」が形成されていても良い。この場合であっても、その「樹形図」が構成している部分のいては、ループを形成しないため、渦電流の発生を抑制することができる。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の超音波治療装置であって、前記各圧電体に形成されている第2の電極における前記小電極の数をmとし、前記接続点の数をnとした場合、m−n=1の関係が成立することを特徴とするものである。
第2の電極の各電極は中心に対して回転対称に配置されているため、各電極に作用する力によるトルクの合計はほぼ「0」になり、中心に対してバランスをとることが可能となる。その結果、圧電体の機械振動モードは簡単になり、MR画像にアーチファクトが発生しづらくなる。
請求項に記載の発明は、請求項1乃至請求項のいずれかに記載の超音波治療装置であって、寝台に載置された被検体の治療対象を含む画像を撮像し表示する撮像表示手段を更に備えたことを特徴とするものである。
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の超音波治療装置であって、記撮像表示手段は、前記被検体の治療対象を含む領域に対し複数の傾斜磁場を印加し、その結果得られた核磁気共鳴信号のデータから前記治療対象を含む領域の核磁気共鳴画像を表示する磁気共鳴映像装置であることを特徴とするものである。
請求項に記載の超音波治療装置によると、電極が中心に対して回転対称になるようにスリットを形成することにより、電極全体のトルクを「0」にすることができるため、圧電体の機械振動モードは簡単になり、MR画像にアーチファクトが発生しづらくなる。
請求項2及び請求項3に記載の超音波治療装置によると、スリットによって分割された各電極同士を少なくとも1つの接続点で接続することで、大きなループを描く渦電流の発生を抑制し、MR画像のアーチファクトを低減することが可能となる。また、渦電流の時定数を短くすることができるとともに、超音波トランスデューサにかかる全体のトルクを「0」にすることができるため、MR画像に発生するアーチファクトを更に低減することが可能となる。
請求項及び請求項に記載の超音波治療装置によると、両電極に同じパターンのスリットを形成し、少なくとも1部分において重ねることにより、超音波出力効率を損なうことなくスリットを増やすことが可能となる。完全にパターンの重なりが一致する場合は、超音波の出力効率を損なうことなくスリットを最大限に増やすことができる。その結果、圧電体の機械振動にほとんど影響を与えることなく、渦電流の時定数を短くすることができる。
請求項に記載の超音波治療装置によると、電極に銀、銅等の非磁性材料を用いることにより、渦電流の発生を抑制することができ、その結果、MR画像のアーチファクトを低減することが可能となる。
請求項及び請求項に記載の超音波治療装置によると、アースに接地される電極を少なくとも1つの接続点で接続することで、大きなループを描く渦電流の発生を低減することができる。その結果、MR画像のアーチファクトを低減することが可能となる。また、渦電流の時定数を短くすることができるとともに、超音波トランスデューサにかかる全体のトルクを「0」にすることができるため、MR画像に発生するアーチファクトを更に低減することが可能となる。
以下、この発明の実施形態に係る超音波治療装置について、図1乃至図14を参照しつつ説明する。
(構成)
この発明の実施形態に係る超音波治療装置の構成について、図1及び図2を参照しつつ説明する。図1は、この発明の実施形態に係る超音波治療装置の主要部の構成を示すブロック図である。図2は、本実施形態に係る超音波治療装置に用いられる超音波アプリケータの斜視図である。
まず、超音波治療部について説明する。治療台22の下に取り付けられた超音波アプリケータ1は、治療用強力超音波を照射する超音波トランスデューサ2と、強力超音波を患者3まで導くカップリング液4と、そのカップリング液4を貯留する水袋(図示しない)とからなる。
超音波アプリケータ1は、治療台22に固定して取り付けられるものである。図2に示すように、超音波アプリケータ1は円形平板の超音波トランスデューサ2を有し、中央には超音波診断像撮像用の超音波プローブ6が取り付けられている。この超音波プローブ6は、前後方向へのスライドと回転移動が可能に構成され、超音波診断装置10に接続されている。超音波トランスデューサ2は、円形平板の圧電セラミックスとその圧電セラミックスの両面に形成された電極とからなる。この圧電セラミックスには、チタン酸バリウム(PZT)やチタン酸バリウム(BaTiO)等が用いられる。また、この電極に銀や銅等の非磁性材料が用いられる。非磁性材料を用いることにより、MRI装置からの静磁場の影響を低減することが可能となるため、渦電流の発生を抑制することが可能となる。
フェーズドアレイ方式の超音波アプリケータの場合は、図2に示すように、超音波トランスデューサ2は複数に分割されている。例えば、円形平板の超音波トランスデューサ2の場合、径方向及び周方向に分割されている。
この発明においては、圧電セラミックスの表面に形成されている電極のパターンに特徴がある。この超音波トランスデューサ2の形状、及び電極のパターンについては、後で詳しく説明する。
治療する際は、患部を治療孔24に挿入し、焦点7を腫瘍8に一致させてから駆動回路部12で超音波トランスデューサ2を駆動して強力超音波を照射し、焦点7と一致した治療部位を高温に維持して治療する。
フェーズドアレイ方式の超音波アプリケータを用いる場合は、駆動回路部12の駆動タイミングを位相制御回路11によって制御することにより、超音波アプリケータ1を移動させずに焦点位置や音場、加温・加熱領域を操作することができる。駆動回路部12は分割した圧電セラミックスの個数のチャネルに分かれており、制御回路9からの信号により位相制御回路部11で遅延を与えられた独立のタイミング信号により駆動される。これにより超音波の焦点7、7’は3次元的に任意の場所に設定できる。
次に、位置決めと3次元像の撮像部について説明する。患者3を治療台22上にうつ伏せに、患部が治療孔24の場所に合うようにセットする。療箇所の大きさ及び形状によりテーブルの種類を変えることで、この治療孔24の大きさを変えることができる。
次に、超音波アプリケータ1に取り付けられた超音波プローブ6により抽出した超音波診断像で腫瘍8を確認し、超音波診断装置10はこのときの腫瘍8と超音波プローブ6との相対位置のデータを制御回路9に送る。また、このときの超音波プローブ6と超音波振動子2の相対位置は、プローブ位置検出装置26で求められ、制御回路9に送られる。アプリケータ位置検出装置15も、制御回路9に超音波アプリケータ1の全体の位置及び超音波振動子2の位置のデータを送る。制御回路9は、これらの位置のデータにより、腫瘍8と超音波トランスデューサ2との相対位置を計算し、フェーズドアレイ方式の場合は、設定焦点位置7を決定し、これを記憶する。
また、フェーズドアレイ方式の場合は、制御回路9から超音波診断装置10にフェーズドアレイによる設定焦点位置7の情報が送られ、超音波診断装置10は治療中もリアルタイムに治療部位である腫瘍8の状況と焦点7の位置を表示することが可能である。
次に、患者3は、制御回路9に制御された治療台22により、静磁場コイル18と傾斜磁場用コイル19が内蔵されている撮像用のガントリ25内に送り込まれる。このとき、超音波アプリケータ1は患者3から外されることなく、治療台22に取り付けられたまま動くため、ガントリ25から出し入れするたびに位置合わせをする必要がない。また、撮像に必要な送受信用RFコイル20は、最初から治療孔24の周りに取り付けてある。
次に、制御回路9は、傾斜磁場電源13及び送受信回路14をコンソール16により指示した所定のシーケンス(例えばT2強調撮像法)で起動し、患者3の体内の3次元の画像情報をメモリ内(図示しない)に記憶する。
ここで、患者3の体内のMRI画像に基づき、予め治療計画を立てることが可能である。
MRI画像が得られると、患者3をガントリ25内に入れた状態で制御回路9に記憶された焦点7の位置と腫瘍8の位置との一致状態をチェックし、制御回路9が超音波照射の開始を駆動回路部12に指示し、治療が開始される。
患者3をガントリ25から出し入れする必要がなければ、治療と観察の時間ずれや、その間での患者3の動きのリスクを少なくすることができる。
当初の治療計画の中間、又は終了と思われる時点で超音波の照射を停止し、治療の進行状況を観察する。腫瘍8周囲のMRI画像を撮像し、生体の変化を調べる。この間も、超音波アプリケータ1は患者3に付けたままである。ここで、治療前にメモリ上に記憶しておいたT2強度画像のデータと今回のデータをサブトラクションすることにより、熱変位領域が明瞭に確認でき、治療が十分に行われたのか、或いは不十分で再治療が必要かを判断できる。また、当初から治療計画に盛り込んでおいて、所定治療時間おきに自動的に撮像することも可能である。
MRI装置による治療効果判定で十分治療が完了したと判断できる状況になったら、操作者は治療を終了する。このとき、制御回路9は治療条件の履歴をメモリから呼び出し、治療記録をCRT23から出力できる。通常送受用RFコイルとして全身用RFコイルが使われるが、治療領域のみモニタできれば十分なので、局所的に感度を有し、かつ、S/Nの高い表面コイル(体腔内コイルも含まれる)を使用しても良い。
なお、本実施形態においては乳癌の治療について説明したが、皮膚や前立腺等の他の腫瘍についても同様に説明できる。また、超音波アプリケータは本実施形態のような下方アプリケータだけでなく、メカニカルアーム17で移動させることにより、上方アプリケータでも用いることができる。
以上のように、MRI内で高周波磁場が印加された場合、超音波トランスデューサ2の電極内に渦電流が発生し、MR画像にアーチファクトが発生してしまう。この渦電流による影響を低減するための電極のパターンについて、以下、説明する。
以下、本実施形態の特徴である超音波トランスデューサ2の形状、及び電極のパターンについて説明する。本実施形態の電極のパターンを説明する前に、電極のパターンの大きさや形状によって渦電流の時定数等がどのように変化するのか検討する。
(検討1)
まず、電極の大きさによる時定数の変化について図3を参照しつつ検討する。図3は電極の上面図である。この検討においては、膜厚が一定の導電性金属からなる電極に渦電流が流れるとき、その電極のパターンの大きさによって時定数がどのように変化するのか検討する。
図3(a)に示すような、スリットが形成されていない長方形の電極30(縦の長さがa、横の長さがb、膜厚t)に、均一な磁束密度Bの変動磁場が貫く場合の時定数をTとする。また、図3(b)に示すような、電極30の縦横の長さがk倍になった長方形の電極31(縦の長さがka、横の長さがkb、膜厚t)に、均一な磁束密度Bの変動磁場が貫く場合の時定数をTとする。このTとTとの関係式を求めてみる。
図3(a)に示す電極30において、電極30の中心Oのまわりに渦電流が流れる場合のループ(矢印A)に沿ったインダクタンスをLとし、抵抗をRとする。同様に、図3(b)に示す電極31において、中心Oのまわりに渦電流が流れる場合のループ(矢印A)に沿ったインダクタンスをLとし、抵抗をRとする。
渦電流が流れるループは電極30と電極31とで相似形になるため、電極のインダクタンスLは、以下の式(1)で表される。
=k・L・・・・・式(1)
また、膜厚が同じtであり、金属の断面積がk倍、ループ長がk倍となるため、抵抗Rは、以下の式(2)で表される。
=R・・・・・式(2)
時定数TはT=L/Rで表されることから、Tは以下の式(3)で表される。
=k・T・・・・・式(3)
以上の検討により、膜厚tが一定で、相似比がk倍の電極における時定数はk倍になることが分かる。なお、便宜的にこの検討結果を結論1とする。
(検討2)
次に、電極にスリットを形成して複数の電極に分割した場合の時定数の変化について、図4を参照しつつ説明する。図4は電極の上面図である。
図4(a)に示すような、スリットが形成されていない長方形の電極32(縦の長さ2c、横の長さ2d、膜厚t)に、均一な磁束密度Bの変動磁場が貫く場合の時定数をTとする。
また、図4(b)に、電極32にスリット33a、33bが形成された電極34を示す。スリット33aは電極32の縦軸に平行で、横幅の中心を通って形成され、スリット33bは横軸に平行で、縦幅の中心を通って形成されている。スリット33aとスリット33bとは、電極32の中心点で交わっている。このように2本のスリット33a、33bを形成することにより、電極32は4分割されることになり、縦の長さc、横の長さd、及び膜厚tの独立した4枚の電極32a、32b、33c、33dが存在することになる。均一な磁束密度Bの変動磁場が電極を貫く場合、4分割された電極32の各電極32a〜32dの時定数をTとする。
また、図4(c)に、電極34を示す。この電極34は、図4(b)に示す電極の中心部分で4枚の電極32a、32b、32c、32dがそれぞれ接続された形状となっている。換言すると、この電極34は、図4(a)に示す電極32の中心付近を除いて、縦幅及び横幅の中心を通って4本のスリット35a〜35dが形成されていることになる。この電極34全体に、均一な磁束密度Bの変動磁場が貫く場合の全体の時定数をTとする。
4分割された各電極32a等の時定数は、上述の結論1から、T=(1/2)・Tが成立する。また、図4(c)に示す電極34の渦電流のパターンは、図4(b)に示す電極32a等の渦電流のパターンが、中心部分のみで繋がっただけの形をなしていると考えられる。従って、電極34の中心部分においては電流の流れがほとんど相殺されて「0」となるため、渦電流パターンそのものの形に影響をほとんど与えないと考えられる。この結果、図4(c)に示す電極34の時定数TはTとほぼ等しくなる。
以上の検討により、例えば、図4(a)に示すような電極32に、中心部分を除いてスリット35a〜35dを形成し、図4(b)に示すような電極34にすると、電極32を4分割した場合の時定数と同じにすることが可能となる。この検討結果を結論2とする。
(検討3)
次に、圧電セラミックスの表面に形成されている電極の形状が超音波トランスデューサの振動モードに与える影響について、図5を参照しつつ説明する。図5は超音波トランスデューサ2の断面図である。
図5に示すように、分極処理された圧電セラミックス5は、一方の面に電極36が形成され、他方の面に電極37が形成され、電極36と電極37とで挟まれている。電極36には高周波電圧が印加され、電極37はアースに接地されている。そして、圧電セラミックス5のうち、電極36と電極37とで挟まれて電場が生じている部分のみに機械振動が発生する。同図に示すように、電極36に形成されたスリット33aの部分には機械振動はほとんど発生しない。そのため、電極36と電極37との両方のパターンが揃っている部分だけで機械振動が生じる。換言すると、電極36と電極37とが重なっている部分だけで機械振動が生じ、片方の電極だけしかない部分では機械振動が発生しない。
例えば、電極36又は電極37のいずれかにスリットが形成されている場合や、両電極にスリットが形成されている場合は、スリット直下の圧電セラミックス5は機械振動を起こすことはない。また、両電極にスリットが形成されている場合で、スリットが重なっている部分では機械振動は発生しない。
電極にスリットを形成することにより、渦電流の時定数を短くすることができるが、圧電セラミックスに電圧を印加するための電極の面積がスリットの分だけ減少することになる。その減少分だけ超音波の出力効率が低下するが、両電極(スリット)のパターンを一致させることで、超音波の発生効率を損なうことなく、スリットを最大限に増やすことができる。つまり、スリットパターンを一致させることで、スリットが形成されていない電極によって圧電セラミックスに電圧が印加された状態に近づけることができる。
上記の検討により、両電極のスリットパターンが重なるようにスリットを形成することにより、超音波トランスデューサ2の機械振動モードにほとんど影響を与えることないため、超音波の出力効率を維持しつつ渦電流の時定数を短くすることができる。この検討結果を結論3とする。
(検討4)
次に、電極にスリットを形成して電極を分割した場合において、電極に発生する渦電流による機械振動モードについて、図6を参照しつつ説明する。図6は超音波トランスデューサの斜視図である。
例えば、図6に示すような、円形状の超音波トランスデューサ2を用いて説明する。この超音波トランスデューサ2の少なくとも一方の電極38(例えば表電極)には、スリット39a、39bが形成されている。但し、両電極にスリットが形成されている場合や裏電極にスリットが形成されている場合もこの検討結果と同じ結果になる。説明を簡潔にするため、片面の電極のみにスリットが形成されているものとして検討する。
このスリットは、図6に示すように、超音波トランスデューサ2の中心軸Oを対称軸として、回転対称とならないように形成されている。具体的に説明すると、円形状の超音波トランスデューサ2の直径に沿って1本のスリット39aが形成されている。このスリットの長さは円の直径と同じである。また、そのスリットの中心点(円の中心点)から円の端部に向かって延びる、そのスリット39aと直交する別のスリット39bが形成されている。このスリットの長さは、円の半径と同じである。
この2本のスリット39a、39bで分割された結果、最も面積が大きい電極38aと、その電極38aの半分の面積の電極38b、38cとからなる。このようなスリットによって分割された電極38a〜38cは、中心軸Oを対称軸とした場合、回転対称となるような形状となっていない。具体的に説明すると、nを2以上の整数とした場合に、略(360/n)°の回転対称となるような形状になっていない。従って、中心軸Oを回転軸として超音波トランスデューサ2を180°回転させても電極のパターンは一致しない。また、例えば、120°回転させても、90°回転させても電極のパターンは一致することはない。
ここで、分割された各電極の重心をそれぞれ、G、G、Gとする。具体的には、電極38aの重心をGとし、電極38bの重心をGとし、電極38cの重心をGとする。電極に作用する力をそれぞれ、F、F、Fとする。具体的には、電極38aに作用する力をFとし、電極38bに作用する力をFとし、電極38cに作用する力をFとする。また、直径に沿って形成されたスリット39aを回転軸Lとする。そして、その回転軸から各電極の重心までの距離を、L、L、Lとする。具体的には、電極38aの重心Gまでの距離をLとし、電極38bの重心Gまでの距離をLとし、電極38cの重心Gまでの距離をLとする。磁束密度が超音波トランスデューサ2の全域にわたってほぼ均一と考えられるため、一般的に全体のトルクTは次式(4)で表されるように、「0」となることはない。
T=F1・L1−F2・L2―F3・L3≠0・・・・・式(4)
このとき、超音波トランスデューサ2には、各電極で発生する渦電流と静磁場との相互作用によるローレンツ力によって「0」になるとは限らないトルクが発生するため、渦電流によって並進運動以外の複雑な機械振動が超音波トランスデューサ2に発生する。この複雑な機械振動が減衰しにくい場合、MR画像にアーチファクトが発生しやすくなる。
つまり、電極に形成するスリットのパターンを中心軸に対して回転対称(nを整数とした場合に、(360/n)°の回転対称)に形成すると、全体のトルクTは「0」となり、並進運動の機械振動のみが残り、それ以外の複雑な機械振動が発生することはない。その結果、機械振動モードは簡単になり、MR画像にアーチファクトが発生しづらくなる。この検討結果を結論4とする。
(検討5)
次に、渦電流が発生しづらい電極(スリット)のパターンについて図7及び図8を参照しつつ説明する。図7はトポロジーの樹形図を説明するための図である。図8は、電極の上面図である。
渦電流を発生しづらくするためには、電極に渦電流の大きなループを形成しないようにスリットを形成すれば良い。電極にスリットを形成した場合であっても、そのスリットのパターンによっては電極全体に大きな渦電流が発生してしまい、スリットを形成した効果が薄れてしまう場合がある。従って、大きなループを描く渦電流が発生しにくいスリットを形成する必要がある。このため、グラフ理論におけるトポロジーの考え方を導入する。
ここで、トポロジーのオイラー標数について図7を参照しつつ説明する。トポロジーにおいて、「任意の2つの頂点を結ぶルートが1通りしかないという特徴付けができる図形」(すなわち、ループが全くない図形)として「樹形図」が知られている。例えば、図7(a)はトポロジーにおける「樹形図」であるが、図7(b)は「樹形図」ではない。
図7(a)、(b)には、点40a〜40hと、点同士を接続する辺41a〜41gとが示されている。図7(a)に示す図形においては、例えば、点40aと点40cとは辺41aで接続され、点40bと点40cとは辺41bで接続されている。点40d〜40fも同様に辺41c〜41eで接続されている。
図7(b)に示す図形においては、図7(a)の図形と同様に、点40aと点40cとは辺41aで接続され、点40bと点40cとは辺41bで接続されている。しかし、点40cと点40dの間に、点40gと点40hが設けられ、点40gと点40hとは、2本の辺、辺41fと辺41gで接続されている。従って、点40g、40hと、辺41f、41gとでループを形成している。
トポロジーにおける「樹形図」は、任意の辺を切断すると、必ず2つの部分に分けられるという特徴がある。図7(a)においては、例えば、辺41cを切断すると、点40a〜40cからなる部分と、点40d〜40fからなる部分とに分けられる。また、他の辺を切断しても必ず2つの部分に分けられる。従って、図7(a)に示されている図形は、トポロジーの「樹形図」に該当する。
一方、図7(b)において、例えば、辺41cを切断すると、点40a〜40cからなる部分と、点40d〜40hからなる部分とに分けられるが、辺41f又辺41gを切断しても、点40gと点40hとは辺41f又は辺41gで接続されたままとなり、2つの部分に分けられることはない。従って、図7(b)に示されている図形は、トポロジーの「樹形図」に該当しない。
また、「樹形図」は、オイラー標数が「1」になるという特徴がある。対象とする図7(a)、(b)の図形Pは2次元の平面グラフとみなせるため、オイラー標数χ(P)は次式(5)で定義され、トポロジー不変量であることが知られている。
オイラー標数χ(P)=(頂点の数)−(辺の数)・・・・・式(5)
例えば、図7(a)の図形の頂点40a〜40fの数は「6」であり、辺41a〜41eの数は「5」であるため、オイラー標数χ(P)は「1」となる。一方、図7(b)の図形の頂点40a〜40hの数は「8」であり、辺41a〜41gの数は「8」であるため、オイラー標数χ(P)は「0」となる。
このトポロジーにおける「樹形図」の考え方を、超音波トランスデューサ2の電極のスリットパターンに応用する。スリットを形成することにより分割された各電極を上記「樹形図」の「点」で表す。そして、隣接する電極同士を接続した場合、その接続点を上記「樹形図」の「辺」で表す。なお、接続点はスリットにより分割された各電極の大きさに対して十分に小さく狭い間隔となっている。つまり、各電極をスリットによって完全に分割するのではなく、僅かな間隔によって接続することで、隣接する電極同士を接続する。
以上の検討により、スリットによって分割された各電極を「点」とみなし、それらをトポロジーの「樹形図」(必要条件がオイラー標数=1)となるように接続すれば、各電極をつないでも大きなループが生じず、渦電流を低減することが可能となる。この検討結果を結論5とする。
この「樹形図」の考え方をスリット形成に応用した例について、図8を参照しつつ説明する。図8は、超音波トランスデューサの表面に形成された電極の上面図である。
例えば、図8(a)に示すように、円形状の電極にスリット42a〜42dを形成することで、9個の電極43a〜43iに分割されているものとする。この分割された電極43a〜43iがこの発明の「小電極」に相当する。そして、各電極43a〜43iを「点」で表し、各電極間の接続点を「辺」で表し、図8(b)に示す「樹形図」になるように、各「点」を「辺」で接続する。
図8(b)に示されている図形は、「樹形図」となるための必要条件である「オイラー標数=1」の条件を満たしている。この例においては、点43aと点43d、点43dと点43gを接続し、点43bと点43e、点43eと点43hを接続し、点43cと点43f、点43fと点43iを接続し、さらに、点43gと点43h、点43hと点43iを接続している。
この「樹形図」に基づいて各電極を接続すると、図8(c)に示す電極になる。図8(c)に示されている電極は、電極43aと電極43dとがスリット42dに形成された僅かな隙間によって接続されている。その他の電極についても同様に、スリットに僅かな隙間が形成されて接続されている。このスリットに形成された僅かな隙間がこの発明の「接続点」に相当する。
この図8(c)に示されている電極においては、仮に分割された各電極内で渦電流が発生しても、電極全体として大きなループを描くような渦電流が発生することはない。つまり、分割された各電極はその面積が小さいため、その中で渦電流が発生しても全体に与える影響は小さくて済み、全体として大きなループを描く渦電流が発生しづらくなるため、渦電流の影響を低減することが可能となる。
また、電極の中心軸に対して回転対称となるようにスリットを設けても良い。例えば、図8(d)に示す図形のように、点44eを中心として放射状に辺を延ばして各点を接続する。この「樹形図」においては、点44eを回転の中心とした、90°回転対称になっている。この「樹形図」に基づいて電極を接続すると、図8(e)に示すような電極となる。
図8(e)に示すように、電極44b、44d、44f、44hを囲むようにスリット45a〜45dが形成されている。さらに、僅かな隙間(接続点)でスリット45a〜45dを分断し、電極44b、44d、44f、44hはそれぞれ電極44eと接続されている。
また、電極44a、44c、44g、44iも電極44eに接続されている。各電極間の接続点の幅は、各電極の辺の長さよりも十分に狭くすることで、各電極は個別の電極として扱うことができる。例えば、電極44aと電極44eとは接続されているが、その2つの電極が接続しながらも個別の電極とみなせるためには、その接続点の幅が十分に狭いことが必要である。例えば、各電極の1辺の長さの数分の1程度の幅である必要がある。同様に、電極44bと電極44eとは接続されているが、個別の電極とみなせるためには、スリットに形成された接続点の幅が十分に狭いことが必要である。他の電極同士の接続についても同様に、各電極が個別の電極とみなせるように、接続点の幅が十分に狭いことが必要である。
この電極は、中心軸Oを回転軸とした90°回転対称になっている。このように回転対称となるようにスリットが形成されて各電極が配置されると、各電極に作用するトルクTの大きさが全体で相殺され「0」となり、並進運動以外の複雑な機械振動の発生を抑えることが可能となる。
以上のように、5つの事項について検討を行った。この検討結果を踏まえて、以下にこの発明の実施形態に係る超音波トランスデューサの電極パターンについて、図8乃至図14を参照しつつ説明する。
[第1の実施の形態]
この発明の第1の実施形態に係る超音波トランスデューサについて説明する。第1の実施形態においては、単板の圧電セラミックスからなる超音波トランスデューサについて説明する。この超音波トランスデューサ2の一方の面に形成されている電極(例えば、高周波電圧が印加される表電極)が、図8(c)に示されている電極のパターンを有する場合、反対の面に形成されている電極(アースに接地される裏電極)のパターンも図8(c)に示されているパターンにする。
電極にスリットを形成すること自体で渦電流の時定数を短くすることができる(結論1、及び結論2)。また、任意にスリットを形成するのではなく、図8(c)に示す「樹形図」のパターンを有することにより、大きなループを描く渦電流の発生を抑制することが可能となる(結論5)。
さらに、超音波トランスデューサ2の両面の電極にこのパターンを採用することにより、両面の電極で渦電流の時定数を小さくし、渦電流の発生を更に抑制することが可能となる。単板の超音波トランスデューサの場合、表電極又は裏電極の片方だけにスリットを設けたのでは、その片方の電極に大きなループを描く時定数が長い渦電流が発生してしまう。従って、片方だけでなく両電極に図8(c)に示すパターンを採用することにより、片方だけに採用した場合よりも、さらに渦電流の発生を抑制することが可能となる。
また、図8(c)に示すパターンを両面の電極に採用することで、同じパターンの電極で圧電セラミックスを挟むことになる。電極(スリット)のパターンが両電極で完全に一致する場合、超音波の発生効率を損なうことなく、スリットを最大限に増やすことが可能となる(結論3)。つまり、スリットを形成することで渦電流の発生を抑制することができるが、圧電セラミックスに電圧を印加するための電極の面積がスリットの分だけ減少することになる。元々その減少分だけ超音波の出力効率が低下するが、電極(スリット)のパターンを一致させることで、超音波の発生効率を損なうことなく、スリットを最大限に増やすことが可能となる。全部が重なるようにスリットを形成すると、スリットが形成されていない電極によって電圧が印加された場合の超音波の出力に近づけることが可能となる。従って、スリットのパターンの1部分又は全部が重なるように形成することで、圧電セラミックスの機械振動の発生状態にほとんど影響を与えることなく、渦電流の時定数を短くすることができる。
また、両電極でスリットのパターンが完全に一致しなくても、時定数を十分小さくして渦電流の影響を減少させることができる。例えば、一方の電極(例えば裏電極)のパターンが図9に示すように、分割された電極43aと電極43bとが接続し、電極43bと電極43cとが接続しているものであっても構わない。この場合、電極43gと電極43h、電極43hと電極43iは完全に分離している。この電極パターンと図8(c)に示されている電極パターンとは一致しないが、両電極ともオイラー標数は「1」となっているため、渦電流の発生を低減することができる。
[第2の実施の形態]
次に、この発明の第2の実施形態に係る超音波トランスデューサについて説明する。第2の実施形態においても、単板の圧電セラミックスからなる超音波トランスデューサについて説明する。この超音波トランスデューサ2の一方の面に形成されている電極(例えば表電極)が、図8(e)に示されている電極のパターンを有する場合、反対の面に形成されている電極(例えば裏電極)のパターンも図8(e)に示されているパターンにする。
第1の実施形態と同様に、スリットを形成すること自体で渦電流の時定数を短くすることができる(結論1、及び結論2)。また、任意にスリットを形成するのではなく、図8(e)に示す「樹形図」のパターンを有することにより、大きなループを描く渦電流の発生を抑制することが可能となる(結論5)。さらに、超音波トランスデューサ2の両面の電極にこのパターンを採用することにより、両面の電極で渦電流の時定数を小さくし、渦電流の発生を抑制することが可能となる。また、図8(e)に示すパターンを両面の電極に採用することで、同じパターンの電極で圧電セラミックスを挟むことになる。スリットのパターンが両電極で完全に一致する場合、超音波の発生効率を損なうことなく、最大限にスリットを増やすことが可能となる。(結論3)。
また、第1の実施形態と同様に、両電極でスリットのパターンが完全に一致しなくても、時定数を十分小さくして渦電流の影響を減少させることができる。両電極のスリットのパターンが一致しなくても、両電極のオイラー標数が「1」であれば、渦電流の発生を低減することが可能となる。
さらに本実施形態においては、電極のパターンが中心軸Oを回転軸として、90°回転対称になっている。従って、上述した結論4により、全体のトルクTは「0」となり、並進運動の機械振動のみが残り、それ以外の複雑な機械振動が発生することはない。その結果、画像にアーチファクトが発生しづらくなる。
[第3の実施の形態]
次に、この発明の第3の実施形態に係る超音波トランスデューサについて、図10を参照しつつ説明する。第3の実施形態おいては、複数の振動子が配置されたフェーズドアレイ・トランスデューサについて説明する。図10は、フェーズドアレイ・トランスデューサの上面図である。
複数の振動子が配置されているフェーズドアレイ・トランスデューサの場合、高周波電圧が印加される電極(表電極)とアースに接地される電極(裏電極)は、振動子ごとに分断されている。表電極には複数の独立した高周波電圧が個別に振動子に印加される。また、アースに接地されている電極(裏電極)は、同一の電位に保つために各電極が相互に接続されている必要がある。上述した結論5を適用すれば、大きなループを描く渦電流が発生しないように各電極を接続することができ、渦電流による画像のアーチファクトを低減できる。
図10(a)に示すように、中心軸Oを回転軸として、各振動子46が180°回転対称に配置されているフェーズドアレイ・トランスデューサについて説明する。このトランスデューサは、全体として長方形の形状を有し、各振動子46も長方形の形状を有している。各振動子46は、隣接する振動子同士で接続することなく、独立して配置されている。
この各振動子46に対する裏電極について説明する。上述したように、スリットにより分割された各電極を「点」で表し、接続点を「辺」で表し、結論4と結論5を適用すると、図10(b)に示す「樹形図」が考えられる。
図10(b)に示すパターンは、中心軸Oを回転軸として、180°回転対称になるように、各点が辺によって接続されている。また、中心軸Oを通過する辺により、点47aと、その点47aと180°回転対称の位置に配置されている点47dとが接続されている。この図形は、「樹形図」となるための必要条件である「オイラー標数=1」の条件を満たしている。
この「樹形図」に基づいて各電極を接続すると、図10(c)に示す電極になる。図10(c)に示されている電極は、電極47aと、電極47dとが中心軸Oを挟んで接続されている。なお、各電極はスリットによって分割されつつ、僅かな隙間(接続点)が形成されて隣接する電極と接続されている。この図10(c)に示されている電極においては、仮に分割された各電極内で渦電流が発生しても、電極全体として大きなループを描くような渦電流が発生することはない。つまり、分割された各電極はその面積が小さいため、その中で渦電流が発生しても全体に与える影響は小さく、全体として大きなループを描く渦電流が発生しづらくなるため、渦電流の影響を低減することが可能となる。
また、中心軸Oを回転軸として180°回転対称に配置及び接続されているため、全体のトルクTは「0」となり、並進運動の機械振動のみが残り、それ以外の複雑な機械振動が発生することはない。その結果、画像にアーチファクトが発生しづらくなる。
本実施形態においては、各振動子が180°回転対称に配置されている場合について説明した。これと同様に、90°回転対称に配置されている場合について説明する。図11(a)に示すように、本実施形態に係るフェーズドアレイ・トランスデューサは複数の振動子48が規則的に配置されている。本実施形態においては、中心軸Oを対称軸として、90°回転対称になるように、各振動子48が配置されている。
この各振動子48に対する裏電極について説明する。上述したように、各電極を「点」で表し、接続点を「辺」で表し、結論4と結論5を適用すると、図11(b)に示す「樹形図」が考えられる。
図11(b)に示すパターンは、中心軸Oを回転軸として、90°回転対称になるように、各点が辺によって接続されている。この図形は、「樹形図」となるための必要条件である「オイラー標数=1」の条件を満たしている。
この「樹形図」に基づいて各電極を接続すると、図11(c)に示す電極になる。図11(c)に示されている電極は、例えば、電極49bと電極49fとが、スリット50に形成された僅かな隙間によって接続されている。また、電極49aと電極49fとが、僅かな隙間(接続点)によって接続されている。その他の電極についても同様に、スリットに僅かな隙間(接続点)が形成されて接続されている。この電極において、仮に分割された各電極内で渦電流が発生しても、電極全体として大きなループを描くような渦電流が発生することはない。つまり、分割された各電極はその面積が小さいため、その中で渦電流が発生しても全体に与える影響は小さく、全体として大きなループを描く渦電流が発生しづらくなるため、渦電流の影響を低減することが可能となる。
また、中心軸Oを回転軸として90°回転対称に配置及び接続されているため、全体のトルクTは「0」となり、並進運動の機械振動のみが残り、それ以外の複雑な機械振動が発生することはない。その結果、画像にアーチファクトが発生しづらくなる。
[第4の実施の形態]
次に、この発明の第4の実施形態に係る超音波トランスデューサについて、図12を参照しつつ説明する。第4の実施形態においても、複数の振動子が配置されたフェーズドアレイ・トランスデューサについて説明する。図12は、フェーズドアレイ・トランスデューサの上面図である。
図12(a)に示すように、中心軸Oを回転軸として、各振動子51が放射状にかつ回転対称に配置されている。このフェーズドアレイ・トランスデューサは、8個の扇型の振動子51からなり、全体として円形状の形状を有している。このフェーズドアレイ・トランスデューサの各振動子51は、中心軸Oを回転軸として45°回転対称に配置されている。
この振動子に対して、アースに接地されている裏電極は、同一の電位に保つために各電極が相互に接続されている必要がある。結論5を適用すれば、大きなループを描く渦電流が発生しないように各電極を接続することができ、渦電流による画像のアーチファクトを低減できる。上述したように、各電極を「点」で表し、接続点を「辺」で表し、結論4と結論5を適用すると、図12(b)に示す「樹形図」が考えられる。
図12(b)に示すパターンは、例えば、点52aと点52bとが接続され、点52bは中心軸Oに接続されている。点52c、52d等についても同様に接続されている。この「樹形図」は、中心軸Oを回転軸として、90°回転対称になるように、各点が辺によって接続されている。この図形は、「樹形図」となるための必要条件である「オイラー標数=1」の条件を満たしている。
この「樹形図」に基づいて各電極を接続すると、図12(c)に示す電極になる。この電極は、中心軸O付近から放射状に形成されたスリット53によって8個に分割されているが、スリット53に形成された僅かな隙間(接続点)によって接続さている。例えば、電極52aと電極52bとがスリット53に形成された僅かな隙間(接続点)によって接続されている。また、電極52aと電極52eとはスリット53により分断され、電極52bと電極52cとはスリット53によって分断されている。他の電極についても同様に互いに接続及び分断されている。また、電極52a〜52hは、トランスデューサの中心において相互に接続されている。
この図12(c)に示されている電極においては、仮に分割された各電極で渦電流が発生しても、電極全体としては大きなループを描くような渦電流が発生することはない。つまり、分割された電極はその面積が小さいため、その中で渦電流が発生しても全体に与える影響は小さく、全体として大きなループを描く渦電流が発生しづらくなるため、渦電流の影響を低減することが可能となる。
また、中心軸Oを回転軸として45°回転対称に配置されているため、全体のトルクTは「0」となり、並進運動の機械振動のみが残り、それ以外の複雑な機械振動が発生することはない。その結果、画像にアーチファクトが発生しづらくなる。
[第5の実施の形態]
次に、この発明の第5の実施形態に係る超音波トランスデューサについて、図13を参照しつつ説明する。第5の実施形態においても、複数の振動子が配置されたフェーズドアレイ・トランスデューサについて説明する。図13は、フェーズドアレイ・トランスデューサの上面図である。
図13(a)に示すように、複数の振動子54a〜54dが同心円で構成され、中心軸Oを中心に同心円状に配置されている。このフェーズドアレイ・トランスデューサは全体として円形状の形状を有している。円形状の各振動子54a〜54dは、スリット55によって分けられている。このように、各振動子が同心円状に形成されて配置されている場合、各振動子自体がループを形成しているため、渦電流の発生を低減することが困難となる。そこで、直径に沿ってスリット56を形成して同心円状の振動子54a〜54dを分割する。
例えば、図13(b)に示すように、中心に配置されている振動子54aから径方向にスリット56を形成し、各振動子54a〜54dの同心円状の形状を分割する。このように振動子54a〜54dを分割することで、円形状のループを形成することがなく、さらに、中心軸Oを回転軸として180°回転対称に各振動子を配置することができる。
このように配置された振動子に対して、アースに接地されている電極は、同一の電位に保つために各電極が相互に接続されている必要がある。結論5を適用すれば、大きなループを描く渦電流が発生しないように各電極を接続することができ、渦電流による画像のアーチファクトを低減できる。上述したように、各電極を「点」で表し、接続点を「辺」で表し、結論4と結論5とを適用すると、図13(c)に示す「樹形図」が考えられる。
図13(c)に示すパターンは、点57a〜57gが辺で一直線上に接続されている。この図形は、「樹形図」となるための必要条件である「オイラー標数=1」の条件を満たしている。
この「樹形図」に基づいて各電極を接続すると、図13(d)に示す電極になる。この電極は、同心円状に形成されたスリット58によって同心円の複数の電極に分割されている。さらに、中心に配置された電極57aから径方向に2本のスリット59が形成されることで同心円の電極は半円の形状に分割されている。さらに、2本のスリット59に直交する方向に、僅かな隙間が形成され、隣接する電極同士が接続されている。例えば、中心に配置された電極57aと、スリット58によって分けられた電極57bとは僅かな隙間(接続点)で接続され、また、電極57bと、スリット58によって分けられた電極57cとは僅かな隙間(接続点)によって接続されている。その他の電極についても同様にスリット58によって分割されているが、僅かな隙間(接続点)によって接続されている。
この図13(d)に示されている電極においては、仮に分割された各電極で渦電流が発生しても、電極全体としては大きなループを描くような渦電流が発生することはない。つまり、分割された電極はその面積が小さいため、その中で渦電流が発生しても全体に与える影響は小さく、全体として大きなループを描く渦電流が発生しづらくなるため、渦電流の影響を低減することが可能となる。
また、中心軸Oを回転軸として180°回転対称に配置されているため、全体のトルクTは「0」となり、並進運動の機械振動のみが残り、それ以外の複雑な機械振動が発生することはない。その結果、画像にアーチファクトが発生しづらくなる。
なお、回転対称性がない電極パターンであっても構わない。例えば、図13(e)に示すように、中心に配置された電極57aから径方向に2本のスリット59が形成されることで、同心円の電極は半円の形状に分割される。スリット59によって分割する一方で、例えば、電極57aには、スリット59が形成されている部分の近傍に、電極57b、57eと接続するための接続点を形成し、電極57aと電極57b、57eとを接続する。同様に、電極57b(57e)には、スリット59が形成されている部分の近傍に、電極57c(57f)と接続するための接続点を形成している。さらに、電極57c(57f)には、スリット59が形成されている部分の近傍に、電極57d(57g)と接続するための接続点を形成している。この電極は厳密には回転対称にはならないが、全体として大きなループを描くような渦電流が発生することはない。
また、回転対称性がない電極の例として図14を参照しつつ説明する。図14(a)に示すように、複数の振動子60が同心円に構成され、中心軸Oを中心に同心円状に配置されている。さらに、中心に配置された振動子60aから径方向に1本のスリット61が形成され、各振動子61a〜61dの同心円状の形状を分割する。このように振動子61a〜61dを分割することで、円形状のループを形成することがない。
そのように配置された振動子に対して、アースに接地されている電極は、同一の電位を保つために各電極が相互に接続されている必要がある。結論5を適用すれば、大きなループを描く渦電流が発生しないように各電極を接続することができ、渦電流による画像のアーチファクトを低減できる。上述したように、各電極を「点」で表し、接続点を「辺」で表し、結論5を適用すると、図14(b)に示す「樹形図」が考えられる。
図14(b)に示すパターンは、点62a〜62dが辺で一直線上に接続されている。この「樹形図」に基づいて各電極を接続すると、図14(c)に示す電極になる。この電極は、同心円状に形成されたスリット63によって同心円の複数の電極62a〜62dに分割されている。さらに、中心に配置された電極62aから径方向に1本のスリット64が形成されている。さらに、そのスリット64の反対側において、径方向に沿って、電極62aと電極62bとが僅かな隙間(接続点)で接続されている。同様に、電極62bと電極62cと、電極62cと電極62dとが接続されている。
この図14(c)に示されている電極においては、仮に分割された各電極で渦電流が発生しても、電極全体としては大きなループを描くような渦電流が発生することはない。つまり、分割された電極はその面積が小さいため、その中で渦電流が発生しても全体に与える影響は小さく、全体として大きなループを描く渦電流が発生しづらくなるため、渦電流の影響を低減することが可能となる。
上述した実施形態はこの発明の一例であり、電極のパターンが「樹形図」になるように形成されていれば、この発明の効果を得ることができる。また、電極の1部分だけ「オイラー標数=1」が成立し、その部分だけ「樹形図」になるように形成され、他の部分においては「樹形図」になるように形成されていない場合であっても、この発明の効果を奏することが可能である。例えば、電極の大部分で「樹形図」が成立し、わずかに1部分だけがループを形成するように電極が形成されている場合であっても、全体として大きなループを描くような渦電流の発生を抑制することが可能である。局所的に小さなループを形成するように分割された小電極が接続されていても、全体として大きなループを描く渦電流の発生を抑制することができ、この発明の目的を達成することができる。
この発明の実施形態に係る超音波治療装置の構成を示すブロック図である。 この発明の実施形態に係る超音波治療装置に用いられる超音波アプリケータの概略構成を示す斜視図である。 電極の大きさによる時定数の変化を説明するための電極の上面図である。 電極にスリットを形成して複数に分割した場合の時定数の変化を説明するための電極の上面図である。 超音波トランスデューサの断面図である。 超音波トランスデューサの斜視図である。 トポロジーの樹形図を説明するための図である。 超音波トランスデューサの表面に形成された電極の上面図である。 超音波トランスデューサの表面に形成された電極の上面図である。 フェーズドアレイ・トランスデューサの上面図である。 フェーズドアレイ・トランスデューサの上面図である。 フェーズドアレイ・トランスデューサの上面図である。 フェーズドアレイ・トランスデューサの上面図である。 フェーズドアレイ・トランスデューサの上面図である。 従来技術に係る電極の上面図である。 従来技術に係る電極の上面図である。 従来技術に係る電極の上面図である。
符号の説明
1 超音波アプリケータ
2 超音波トランスデューサ
3 患者
4 カップリング液
5 圧電セラミックス
6 超音波プローブ
7 焦点
8 腫瘍
9 制御回路
10 超音波診断装置
11 位相制御回路
12 駆動回路部
13 傾斜磁場電源
14 送受信回路
15 アプリケータ位置検出装置
16 コンソール
17 メカニカルアーム
18 静磁場コイル
19 傾斜磁場用コイル
20 送受信用RFコイル
22 治療台
23 CRT
24 治療孔
25 ガントリ
30、31、32、34 電極
33a、33b、35a〜35d スリット

Claims (10)

  1. 圧電体と、前記圧電体の一方の面に形成されて電圧が印加される第1の電極と、前記圧電体の他方の面に形成されてアースに接地される第2の電極と、を備えた超音波トランスデューサを有し、前記超音波トランスデューサと寝台に載置された被検体とを磁気共鳴映像装置のガントリ内に進入させ、前記磁気共鳴映像装置からの磁場により撮影された画像を参照して、前記超音波トランスデューサから前記被検体の所定の患部に超音波を照射して治療を行う超音波治療装置であって、
    前記第1の電極又は前記第2の電極のうち、少なくとも一方の電極にはスリットが形成されて複数の小電極に分割され、
    前記スリットによって分割された前記複数の小電極は、それぞれ隣接する小電極と樹形図状に接続され、かつ、前記スリットによって分割された前記第1の電極又は前記第2の電極のパターンは、前記超音波トランスデューサの中心点に対して、nを2以上の整数とするときに、略360/n度回転対称になるように形成されていることを特徴とする超音波治療装置。
  2. 圧電体と、前記圧電体の一方の面に形成されて電圧が印加される第1の電極と、前記圧電体の他方の面に形成されてアースに接地される第2の電極と、を備えた超音波トランスデューサを有し、前記超音波トランスデューサと寝台に載置された被検体とを磁気共鳴映像装置のガントリ内に進入させ、前記磁気共鳴映像装置からの磁場により撮影された画像を参照して、前記超音波トランスデューサから前記被検体の所定の患部に超音波を照射して治療を行う超音波治療装置であって、
    前記第1の電極又は前記第2の電極のうち、少なくとも一方の電極にはスリットが形成されて複数の小電極に分割され、
    前記スリットによって分割された前記第1の電極又は前記第2の電極のパターンは、前記超音波トランスデューサの中心点に対して、nを2以上の整数とするときに、略360/n度回転対称になるように形成され、
    前記スリットによって分割された前記複数の小電極は、それぞれ隣接する小電極と樹形図状に接続され、かつ、それぞれ少なくとも1つの接続点により隣接する小電極に接続されていることを特徴とする超音波治療装置。
  3. 前記スリットによって分割された前記小電極の数をmとし、前記接続点の数をnとした場合、m−n=1の関係が成立することを特徴とする請求項2に記載の超音波治療装置。
  4. 前記第1の電極及び前記第2の電極には同じパターンのスリットが形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の超音波治療装置。
  5. 前記第1の電極及び前記第2の電極には同じパターンのスリットが形成され、
    前記第1の電極に形成されたスリットと、前記第2の電極に形成されたスリットとは、前記圧電体を挟んで少なくとも1部分において重なっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の超音波治療装置。
  6. 前記第1の電極及び前記第2の電極は、非磁性材料からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の超音波治療装置。
  7. 複数の圧電体と、前記複数の圧電体の各圧電体の一方の面に形成されて電圧が印加される第1の電極と、前記各圧電体の他方の面に形成されてアースに接地される第2の電極と、を備えたフェーズドアレイタイプの超音波トランスデューサを有し、前記超音波トランスデューサと寝台に載置された被検体とを磁気共鳴映像装置のガントリ内に進入させ、前記磁気共鳴映像装置からの磁場により撮影された画像を参照して、前記超音波トランスデューサから前記被検体の所定の患部に超音波を照射して治療を行う超音波治療装置であって、
    前記第2の電極にはスリットが形成されて複数の小電極に分割され、
    前記スリットによって分割された前記第2の電極のパターンは、前記超音波トランスデューサの中心点に対して、nを2以上の整数とするときに、略360/n度回転対称になるように形成され、
    前記スリットによって分割された前記複数の小電極は、それぞれ隣接する小電極と樹形図状に接続され、かつ、それぞれ少なくとも1つの接続点により接続する小電極に接続されていることを特徴とする超音波治療装置。
  8. 前記各圧電体に形成されている第2の電極における前記小電極の数をmとし、前記接続点の数をnとした場合、m−n=1の関係が成立することを特徴とする請求項7に記載の超音波治療装置。
  9. 前記寝台に載置された前記被検体の治療対象を含む画像を撮像し表示する撮像表示手段を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の超音波治療装置。
  10. 前記撮像表示手段は、前記被検体の治療対象を含む領域に対し複数の傾斜磁場を印加し、その結果得られた核磁気共鳴信号のデータから前記治療対象を含む領域の核磁気共鳴画像を表示する磁気共鳴映像装置であることを特徴とする請求項9に記載の超音波治療装置。
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