JP4387525B2 - クリーンベンチ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、組織、細胞(例えば受精卵)などの試料を無菌、無塵環境下において、実験や観察などを行なえるように構成したクリーンベンチに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般的な構造を有するクリーンベンチとして、図6に示すようなものがあった。
【0003】
かかる従来のクリーンベンチXは、機枠100に前面開口の作業空間200を形成し、同作業空間200を構成する壁面に殺菌灯400やその他照明灯(図示せず)、さらには、滅菌用のガスバーナ(図示せず)などを設けており、天井壁300からはHEPAフィルタを用いて得た清浄空気を作業空間200内に常時流すようにして、作業空間200内を無菌・無塵環境としている。310は作業面である。
【0004】
細胞などの生物試料を観察するためには、別途、同試料を所定温度に保持するためのヒータ盤500や、顕微鏡600を作業空間200内に持ち込み、これらを作業面310上に載置した後、観察者はクリーンベンチ外から作業空間200内に上体を臨ませて作業していた。
【0005】
また、観察・実験内容を他者に説明したり、説明はせずとも、顕微鏡600の作業者以外の者も試料を観ることができるように、顕微鏡600にCCDカメラ700を取り付けることがある。
【0006】
このような場合は、図示するように、例えば機枠100上などのクリーンベンチX外にモニタ用ディスプレイ800を設置していた。なお、710はCCDカメラ700とディスプレイ800とを接続する接続コードである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記したように、顕微鏡600やヒータ盤500を外部から持ち込むことは面倒であり、特に、試料を収容したシャーレ900などを載置するヒータ盤500を作業面310に載置すると、作業面310とヒータ盤500との間に段差が生じ、誤ってシャーレ900をひっくり返したりするおそれがあり、さらに、CCDカメラ700を使用する場合は、前記接続コード710が作業空間200内からクリーンベンチXの外へ伸延することになり邪魔になっていた。
【0008】
また、作業者がモニタ用ディスプレイ800を見るためには、度々上体を起こして作業空間200の外へ頭を出さなければならないので作業能率を低下させ、しかも、クリーンベンチXの外部と作業空間200内との出入りが頻繁になるほど作業空間200内の無菌・無塵環境が損なわれるおそれがあった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決することのできるクリーンベンチを提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記課題を解決するために、請求項1記載の本発明では、試料観察用の顕微鏡を、当該顕微鏡の対物レンズの下方の作業台がフラット面となるように作業室内に取り付け、前記作業台となる前記作業室内の下壁面にヒータを面一状態に埋設して全面フラットに形成した下壁全体を加温可能とするとともに、前記顕微鏡に画像取込装置を連設して、同画像取込装置と接続したモニタ画面を作業室内の壁面に面一状態に埋設した。
【0011】
したがって、シャーレなどに収容した試料を観察したりする場合は、持ち上げたりすることなく、作業台上をスライドさせるだけで移動可能となるので、誤ってひっくり返したりして大事な試料を無駄にしたりするおそれがない。また、顕微鏡を操作する者はクリーンベンチの作業空間内から出ることなくモニタ画面の調整などを行なえるので作業能率が向上し、さらに、画面を他の複数の者と同時に見ながら説明したりすることができる。また、作業台全体を有効利用することができるとともに、別途ヒータを外部からクリーンベンチ内に持ち込まなくても細胞などの生物試料を作業空間内で所定温度に保持することができる。しかも、作業室内に流入する清浄空気に乱流が生じにくくなり、仮に雑菌や塵などが作業室内に侵入しても、空気流に乗って円滑に流出し、作業室内の無菌・無塵状態を良好に維持することができる。
【0012】
また、請求項2記載の本発明では、作業室内の下壁面に除振台を埋設するとともに、作業室の側壁面には、培養器と、外部との連通開口を設けた。
【0013】
したがって、高倍率顕微鏡を支障なく使用することができる。また、生物試料の確認、操作、培養などの一連の作業をクリーンベンチ内で行えるとともに、細菌などによる汚染を可及的に防止することができ、さらには、例えば隣室に設けたクリーンルームなどで生物試料を採取すれば、そのまま直接クリーンベンチ内に入れることができ、生物試料の汚染を防止することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本実施形態に係るクリーンベンチは、作業空間を形成した作業室内に清浄空気を流し、無菌、無塵環境下で生物試料の実験や観察などを行なうクリーンベンチにおいて、試料観察用の顕微鏡を、当該顕微鏡の対物レンズの下方の作業台がフラット面となるように室内に取り付けるとともに、同顕微鏡に画像取込装置を連設し、同画像取込装置と接続したモニタ画面を作業室内の壁面に埋設したものである。
【0018】
また、作業台となる作業室内の下壁面にはヒータを埋設し、しかも、モニタ画面及びヒータを壁面に面一状態に埋設し、作業室内の壁面を可及的にフラットに形成している。
【0019】
すなわち、クリーンベンチの作業空間内において、作業台上に画像取込装置を設けた顕微鏡を配設し、奥壁に前記画像取込装置と接続したモニタ画面を面一状態に埋設している。
【0020】
ここでは、顕微鏡を作業台の略中央に着脱自在に取り付け、対物レンズの下方の作業台をフラット面として、同面の下方に照明を埋設するとともに、照明を挟むように、その左右側にヒータパネルを埋設している。
【0021】
したがって、作業台全体を有効利用することができるとともに、シャーレなどに収容した試料は作業台上に載置しておけば所定温度に保持されることになり、さらに、これを観察したりする場合は、持ち上げたりすることなく、作業台上をスライドさせるだけで移動可能となるので、誤ってひっくり返したりして大事な試料を無駄にしたりするおそれがない。
【0022】
また、作業室内の壁面を可及的にフラットに形成したことにより、作業室内に流入する清浄空気に乱流が生じにくくなり、仮に雑菌や塵などが作業室内に侵入しても、空気流に乗って円滑に流出し、作業室内の無菌・無塵状態を良好に維持することができる。
【0023】
さらに、作業者は、除菌・徐塵された作業空間内から上半身を外方へ出すことなくモニタ画面を見ることができるので、顕微鏡を覗かなくてもよく、疲労度合いが小さくて済み、さらに、たとえば他の複数の者に試料説明をする場合など、作業空間内で画面を指差しながら説明することもできるので、作業能率が著しく向上する。
【0024】
また、作業台となる作業室内の下壁面には、除振台を埋設することができる。すなわち、顕微鏡を覗きながら細かな作業を行う場合は、高倍率の顕微鏡を使用するが、その場合に作業の支障となるわずかな振動も防止できるので、高倍率顕微鏡を支障なく使用することができる。
【0025】
また、作業室の側壁面に培養器を設けることもできる。すなわち、生物試料を培養する場合、培養の目的によってクリーンベンチでの作業や顕微鏡下での操作が必要となることがある。このとき、培養器から試料を出し入れする際に試料や培養器自体が汚染されるおそれがあるが、上記構成とすることで、培養器自体を汚染させることなく、生物試料の確認、操作、培養などの一連の作業をクリーンベンチ内で行えるとともに、細菌などによる汚染を可及的に防止することができる。
【0026】
また、作業室の側壁面に、外部との連通開口を設けることことができる。すなわち、例えば隣室に設けたクリーンルームなどで生物試料を採取すれば、クリーンルームから出て汚染区域を通ったりすることなく、連通開口より直接クリーンベンチ内に入れることができるので、生物試料の汚染を防止することができる。
【0027】
さらに、作業室内を、低温から高温まで温度制御可能とすることが望ましい。すなわち、生物試料に最も適した環境下での作業が可能となると同時にクリーンベンチを設置している室内の温度は好みに応じた快適温度にしておくことが可能となる。
【0028】
【実施例】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例を図面を参照しながら具体的に説明する。
【0029】
図1は第1実施例に係るクリーンベンチAの正面図、図2は同側面図、図3は同説明図である。
【0030】
図1〜3に示すように、本実施例に係るクリーンベンチAは、下端部にキャスタ10を取り付けた脚部11を有する機枠1に、作業空間を形成した前面開口の作業室2を設けている。
【0031】
同作業室2は、具体的には、機枠1に設けた天井壁20及び作業台となる下壁21と、奥壁22と、左右側壁23,24 とから構成されており、同左右側壁23,24 をガラス張りとして十分に採光可能としている。
【0032】
また、作業室2の上部に形成した機能部収納ケーシング12には、送風ファン及びHEPAフィルタ(図示せず)を収納しており、天井壁20全面に設けた排気口30と、下壁21の前端側に設けた吸気口31とを、下壁21及び奥壁22内部に形成した通風路を介して連通させ、前記HEPAフィルタを介して除菌・徐塵した清浄空気を循環可能とし、作業空間2内を無菌・無塵状態に保持可能としている。なお、図1及び図2中、13は操作パネル、14はコンセント、15はガスバーナ用のガスホース接続口、16は同ガスバーナ用のガス栓である。
【0033】
上記構成において、本発明の特徴となるのは、試料観察用の顕微鏡4を作業室2内に取り付けるとともに、同顕微鏡4に画像取込装置としてCCDカメラ5を連設し、同カメラ5と接続したモニタ画面6を作業室2内の壁面、すなわち、奥壁22に埋設したことにある。
【0034】
すなわち、作業室2 の下壁21の略中央に、顕微鏡4を着脱自在に支持固定するとともに、奥壁22の左下部に、CCDカメラ5と電気的に接続したモニタ画面6を壁面と面一状態に埋設している。41は顕微鏡4の支持スタンドである。
【0035】
したがって、顕微鏡4を外部から持ち込む手間が要らず、しかも、顕微鏡4を操作する者のみならず、クリーンベンチAの外側にいる者も試料を観察することができるので、作業者は、作業室2内から上体を出すことなくモニタ画面6を他の複数の者と同時に見ながら説明することも可能となる。
【0036】
また、作業者は顕微鏡4の鏡筒をいちいち覗きこむ必要がなく、モニタ画面6の調整なども作業室2内においてできるので作業能率が向上する。
【0037】
また、本発明では、作業台となる作業室2内の下壁21面にヒータ7を埋設するとともに、モニタ画面6及びヒータ7を壁面に対して面一状態に埋設し、作業室2内の壁面全体を可及的にフラットに形成したことにも特徴を有する。
【0038】
すなわち、本実施例では、ヒータ7として、顕微鏡4の直下に位置する下壁21に上面をガラス板8で被覆したベンチウォーマ70を埋設するとともに、その左右側にヒータパネル71を埋設して、全面フラットに形成した下壁21全体を加温可能としている。なお、9はベンチウォーマ70の中央部に埋設した照明である。
【0039】
ところで、前記ヒータ7の温度調整は、機枠1の前面左側に設けたコントローラ17により行うようにしている。
【0040】
かかる構成により、細胞などの試料を収容したシャーレSを下壁21のどこにおいても適温に保持することができ、しかも、作業台がフラットなのでシャーレSの移動は、持ち上げたりする必要がなく、スライドさせるだけで所望位置に移動させることができ、誤ってひっくり返したりするおそれもない。
【0041】
また、作業室2内の内壁面全体を可及的にフラットとしたことにより、作業室2内に流入する清浄空気に乱流が生じにくくなり、排気口30から流出する清浄空気は吸気口31に円滑に吸引される。
【0042】
したがって、仮に雑菌や塵などが作業室2内に侵入しても、空気流に乗って円滑に循環してHEPAフィルタを通ることになり、作業室2内の無菌・無塵状態を良好に維持することができる。
【0043】
(第2実施例)
次に、第2実施例に係るクリーンベンチBについて、図4及び図5を参照しながら説明する。なお、同一構成要素については同一符号で示している。
【0044】
これは、第1実施例で説明したクリーンベンチAと基本的には同様な構成を有するものであるが、作業台となる作業室2内の下壁21面に、除振台18を埋設したこと、作業室2の一側壁面、ここでは左側壁23面に培養器19を設けたこと、作業室2の一側壁面、ここでは奥壁22面に、外部との連通開口となるパスボックス25を設けたこと、作業室2内を、低温から高温まで温度制御可能としたことに特徴がある。
【0045】
前記除振台18は、空気バネ式の既存の製品を用いて構わないが、これを、作業室2の下壁21に面一状態に埋設して、その上に、高倍率顕微鏡40を設置している。すなわち、分離した除振台を作業室2内に配設した場合に比べ、その上に載置する高倍率顕微鏡40の位置が高くなるという不具合もなく、なおかつ、除振台によって作業スペースを狭くすることもない。
【0046】
また、培養器19具備させたことにより、培養器19自体を汚染させることなく、生物試料の確認、操作、培養などの一連の作業をクリーンベンチB内で行え、細菌などによる汚染を可及的に防止することができる。19a はスライド扉である。
【0047】
また、パスボックス25は、図5に示すように、隣室に設けられたクリーンルームRと通じており、両開口部には上下スライド扉25a が取付けられている。
【0048】
このパスボックス25により、クリーンルームRで生物試料などを採取すれば、クリーンルームRから出て汚染区域を通ったりすることなく、直接クリーンベンチ内に入れることができ、生物試料の汚染を防止することができる。
【0049】
さらに、作業室2内を、低温から高温まで温度制御可能としたことで、生物試料に最も適した環境下での作業が可能となると同時に、クリーンベンチBを設置した室内の温度は、クリーンベンチBとは別に好みに応じた快適温度にしておくことが可能となり、仕事環境が向上する。
【0050】
以上、第1、第2実施例を通して本発明を説明したが、本発明は上記した各実施例に限定されるものではない。
【0051】
たとえば、機枠1のサイズや構造などは適宜変更することができるし、また、作業室2内に殺菌灯などを配設したり、適宜物置台などを設けるなど、仕様変更も適宜行なえる。
【0052】
【発明の効果】
本発明は上記のような形態で実施されるもので、以下の効果を奏する。
【0053】
(1)請求項1記載の本発明では、シャーレなどに収容した試料を観察したりする場合は、持ち上げたりすることなく、作業台上をスライドさせるだけで移動可能となるので、誤ってひっくり返したりして大事な試料を無駄にしたりするおそれがない。また、顕微鏡を操作する者はクリーンベンチの作業空間内から出ることなくモニタ画面の調整などを行なえるので作業能率が向上し、さらに、画面を他の複数の者と同時に見ながら説明したりすることができる。また、作業台全体を有効利用することができるとともに、別途ヒータを外部からクリーンベンチ内に持ち込まなくても細胞などの生物試料を作業空間内で所定温度に保持することができる。しかも、作業室内に流入する清浄空気に乱流が生じにくくなり、仮に雑菌や塵などが作業室内に侵入しても、空気流に乗って円滑に流出し、作業室内の無菌・無塵状態を良好に維持することができる。
【0054】
(2)請求項2記載の本発明では、除振台を埋設したため、高倍率顕微鏡を支障なく使用することができる。また、作業室の側壁面に、培養器と、外部との連通開口を設けたので、生物試料の確認、操作、培養などの一連の作業をクリーンベンチ内で行えるとともに、細菌などによる汚染を可及的に防止することができ、さらには、例えば隣室に設けたクリーンルームなどで生物試料を採取すれば、そのまま直接クリーンベンチ内に入れることができ、生物試料の汚染を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1 実施例に係るクリーンベンチの正面図である。
【図2】同クリーンベンチの側面図である。
【図3】同クリーンベンチの説明図である。
【図4】第2実施例に係るクリーンベンチの正面図である。
【図5】同クリーンベンチの側面図である。
【図6】従来のクリーンベンチの説明図である。
【符号の説明】
A クリーンベンチ
1 機枠
2 作業室
4 顕微鏡
5 CCDカメラ(画像取込装置)
6 モニタ画面
7 ヒータ
18 除振台
19 培養器
21 下壁
22 奥壁
25 パスボックス(連通開口)
40 高倍率顕微鏡
Claims (2)
- 作業空間を形成した作業室内に清浄空気を流し、無菌、無塵環境下で生物試料の実験や観察などを行なうクリーンベンチにおいて、
試料観察用の顕微鏡を、当該顕微鏡の対物レンズの下方の作業台がフラット面となるように作業室内に取り付け、前記作業台となる前記作業室内の下壁面にヒータを面一状態に埋設して全面フラットに形成した下壁全体を加温可能とするとともに、前記顕微鏡に画像取込装置を連設して、同画像取込装置と接続したモニタ画面を作業室内の壁面に面一状態に埋設したことを特徴とするクリーンベンチ。 - 作業室内の下壁面に除振台を埋設するとともに、作業室の側壁面には、培養器と、外部との連通開口を設けたことを特徴とする請求項1記載のクリーンベンチ。
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