JP4368434B2 - 膨化でんぷんペースト様食品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に製菓製パン分野の食品原料として利用される、特定の性状を有する膨化したでんぷんを含有するペースト様食品に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
パン類、ケーキ類、ビスケット類等のベーカリー製品は、小麦粉またはでんぷん類等に、水、油脂、乳製品、糖類、卵、その他の様々な原料を配合して攪拌し、生地を作製し、それをオーブンで焼成する一連の製造法にて作製される。このとき、オーブン中での加熱により配合される小麦粉に含まれるでんぷんや各種でんぷん類が膨化し、製品のボディが形成される。このでんぷんの膨化の過程は、焼成時の温度、でんぷんの膨化特性、生地の水分量、糖度等に大きく依存する。
このため、一般に水分が少なく糖度の高い製品は、でんぷんが膨化しにくくなるため、保水性が劣り、水々しさやしっとり感に劣る傾向がある。
一方、チョコレートやジャム、マヨネーズ、あるいは各種果汁などの加熱流動性のある風味素材は、それ自身焼成するとオーブン中で溶融滴下したり、水分が沸騰蒸発し組織が分離したりして、通常は焼成することが困難な原料であるだけでなく、その中に小麦粉やでんぷん、あるいは生地を配合した後に焼成しても、その原料中の成分の影響によって、でんぷんの膨化を著しく阻害したり、でんぷん粒同士の骨格の形成を阻害し、ベーカリー製品としてのしっとりとした食感および保型性が得られない等の様々な問題がある。そのため、これらの風味素材をベーカリー製品に利用するときは、ベーカリー生地にその原料の風味を付与するために僅かに配合しているのが現状である。特に、チョコレートやジャムはその糖度によるでんぷんの膨化抑制作用が大きく、また焼成時に溶融滴下する現象が著しいことから、風味付けのために僅かに配合したり、あるいは焼成後にトッピングやコーティングを行うのが主であり、大量のチョコレートやジャムを配合してオーブンで焼成するベーカリー食品はない。
ところで、フラワーペーストに代表される膨化でんぷんペースト様食品は、膨化したでんぷんを主体とするペースト状の食品であり、製菓、製パンのフィリング材やクリーム類として広く利用されている。また、かかるフラワーペーストをベーカリー製品生地に練り込むこともよく行われている。しかしながら、これも前述の諸問題により、そのフラワーペースト自体に風味付けのために僅かのチョコレートやジャム類を配合しているのが現状であり、その風味の元のチョコレートやジャムとはかなり異なるものと言わざるを得ない。
特開平10−84874号公報では、特定の膨潤化/低温易増粘性でんぷんを併用することで、フラワーペーストの耐熱保型性と食感を改良することが提案されているが、このフラワーペーストに加熱流動性風味素材を配合すると、しっとり感や耐熱保型性が著しく低下する。
また、加熱流動性風味素材を配合でき、耐熱性を持つフィリングの製造方法(特開平10−117691号公報)も提案されているが、スポンジ様生地の焼成物に風味素材を吸収させるものであるため、しっとりとした食感を向上させることはなく、さらに元の加熱流動性風味素材の食感と風味から著しく異なったものになる問題がある。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような従来の技術では作製が困難であった系に対し、チョコレート等の加熱流動性風味素材を大量に配合しても水々しくしっとりとした食感を持ち、且つ耐熱保型性に優れるベーカリー製品を提供することを目的とするものである。本発明の最大の特徴は、特定の物性を有するフラワーペーストを作製し、様々な風味原料、特に加熱流動性を持つ風味素材、あるいは既存のベーカリー製品の生地等に配合したのち、焼成して、上記特徴を持つベーカリー製品を得る点にある。
即ち、本発明は、でんぷん、糖類及び/又は糖アルコール、油脂及び水を含有する膨化でんぷんペースト様食品であって、該ペースト様食品の温度20℃における針入度(A)が180 以下で、且つ80℃における針入度(B)との比(B/A)が2.0 以下である膨化でんぷんペースト様食品、並びに該ペースト様食品を配合したのち、焼成してなる、上記特徴を持つベーカリー製品である。
【0004】
【発明の実施の形態】
本発明の膨化でんぷんペースト様食品は、でんぷん、糖類及び/又は糖アルコール、油脂及び水を含有し、下記針入度の物性を持つことを特徴とする。
尚、本発明で規定する針入度は、以下の方法によりASTM−D217に基づいて測定した値である。
[ASTM針入度の測定方法]
Annual Book of Standards 1994. Section 5,Volume 05.01 内のD217に記載された針入度の測定方法に準じて行った。即ち、内径5cm、深さ4cmの半円筒状容器にペースト様食品を詰め、表面を平らにする。これを測定温度に1時間放置した後、上記書籍の113頁に記載された102.5 gの円錐形の荷重を装着した針(FIG.A1.2 Optional Penetrometer Cone )を表面に接して静置し、5秒後の進入距離を0.1mm 単位で表示する。
【0005】
ここで、針入度は一般に数値が小さいほど、そのものの触感が硬くなり、本発明の膨化でんぷんペースト様食品は一般のフラワーペースト類とは著しく異なる硬い触感を持つものである。一般のフラワーペースト類は、20℃における針入度は200 〜350 付近を示し、本発明の膨化でんぷんペースト様食品の180 以下(好ましくは160 以下)とは著しく異なる。20℃における針入度が180 より大きいと本発明の特徴である、ベーカリー製品での水々しくしっとりとした食感および耐熱保型性が発現されない。
また、本発明の膨化でんぷんペースト様食品は、20℃における針入度(A)と80℃における針入度(B)との比(B/A)が2.0 以下(好ましくは1.5 以下)であることが、ベーカリー製品での水々しくしっとりとした食感および耐熱保型性を発現するために必要である。
本発明の特性を有する膨化でんぷんペースト様食品は、オーブン中で水が水蒸気として飛びにくい構造を有しているため、本発明所期の効果を奏するものと推測される。
【0006】
本発明の膨化でんぷんペースト様食品は、原料の種類及び配合量を上記本発明の特性を有するように適宜調整することにより得られ、その配合量等は特に限定されるわけではないが、以下に本発明品が得られやすい組成範囲を示す。
本発明の膨化でんぷんペースト様食品において、でんぷんの含有量は10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%である。10重量%未満であるとベーカリー製品に配合後のしっとりとした食感および耐熱保型性が得られにくく、また30重量%を越えると本ペースト様食品の作製がしにくくなる。でんぷんは、後述の物性を持つ加工でんぷんが最も好ましいが、通常の小麦粉、馬鈴薯でんぷん、小麦でんぷん、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカでんぷん等も利用できる。
【0007】
糖類及び糖アルコールとしては、ショ糖、果糖、ブドウ糖、麦芽糖等の転化糖や、ソルビトール、ラクチトールなどの糖アルコール類等を利用できる。これらの含有量は固形分として15〜65重量%、好ましくは20〜50重量%である。15重量%であるとペースト様食品中のでんぷん粒子が膨潤しすぎて系中に溶解し出してび耐熱保型性が低下したり、粘着性を生じて口溶けが悪くなる傾向がある。また65重量%を越えるとペースト様食品中のでんぷん粒子が膨潤しにくくなり、本ペースト様食品が作製しづらくなる。
【0008】
油脂としては、植物性油脂、動物性油脂、またはそれらの硬化脂、エステル交換油脂、分別油脂の他、乳化油脂としてのマーガリン等を利用してもよい。その含有量は5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%である。油脂の含有量が過小であると、膨潤したでんぷん粒子同士が結着性を持ち、その他の原料中に分散しずらくなる。また、過大であると油脂が分離しやすくなる。
【0009】
水の含有量は20〜50重量%、好ましくは25〜40重量%である。水の含有量が過小であると、でんぷんの膨潤が不十分となりやすく、また、過大であるとでんぷん中に含有されない遊離の水分が過剰になり、ベーカリー製品に配合後のしっとりとした食感および耐熱保型性が低下していく。
【0010】
本発明の膨化でんぷんペースト様食品に用いるのに好ましいでんぷんは、加熱による変化が緩やかで、かつ、機械耐性があり、老化しにくい性質のものである。この特性は前記した常法によるブラベンダーアミログラフによる粘度挙動により判定できる。
すなわち、本発明で用いるのが好ましいでんぷんは、濃度5%の水溶液が、以下のブラベンダーのアミログラフの測定条件にて、ブラベンダー粘度が10BU以上を示さないものであり、常温から高温まで粘度上昇がほとんど見られず、糊化が起こりにくいでんぷんである。ここで、ブラベンダーのアミログラフによる粘度測定は、ブラベンダー社のアミログラフ測定器を用いて行う(澱粉科学ハンドブック、朝倉書店、東京、1977、p226〜228参照)。
[トルク350cmg、回転数75rpm 、50℃から92℃まで1.5 ℃/分にて昇温し、その後92℃にて10分間放置における粘度挙動]
本発明においては、特に、加工でんぷんであるリン酸架橋でんぷん、エーテル化でんぷん、アセチル化でんぷん、ヒドロキシル化でんぷん等を、単独使用または併用することができる。
【0011】
このようなでんぷんを用いて作製した膨化でんぷんペースト様食品を利用することによって、そのベーカリー製品は、一定の膨潤状態で安定し、長期間の保水力に優れ、老化が起こらず、極めて良好なしっとりとした食感を維持できる。また、粘度変化による固化または溶融滴下等の状態変化がなく、高い耐熱保型性を発現する。
本発明の膨化でんぷんペースト様食品は常法により作製できる。即ち、原料をホモジナイザーを用いて混合均質化後、攪拌機付き蒸気釜(加熱型横形ニーダー)等を用いて、攪拌しつつ品温を85〜110 ℃付近まで昇温させて作製する。本発明の膨化でんぷんペースト様食品は通常のフラワーペースト類と比べて著しく粘度が高いため、エクストルーダー、特に2軸のエクストルーダーを用いて作製すると、非常に広範囲の配合系で良好な物性のものを作製できる。
【0012】
本発明の膨化でんぷんペースト様食品を利用したベーカリー製品としては、本ペースト様食品をボディとするペースト状食品に、加熱流動性の風味素材を練り込み、そのまま焼成するか、またはクッキー、ビスケット、ケーキ、パン、パイ、シュー等から選ばれる生地で包餡、ないし生地に充填あるいはトッピングあるいはサンドし、焼成することにより得られる。
上記加熱流動性の風味素材としては、チョコレート、チーズ、マヨネーズ、ジャム、ソース類、ゼリー類、カレー類、ムース類、ヨーグルト類、シチュー類等、通常焼成すると流動して、滴下してしまうものが挙げられる。その他、ベーカリー製品の水々しいしっとりとした食感を発現するために、本発明のペースト様食品を通常のパン類、ケーキ類、ビスケット類等の生地に一部配合して使用することもできる。
本発明を利用したベーカリー製品の配合は、該ペースト状食品が5〜80重量%、その他の原料が95〜20重量%が好ましい。特に、加熱流動性風味素材を練り込む場合、該ペースト状食品が20〜80重量%、加熱流動性風味素材が80〜20重量%が好ましい。
【0013】
本発明に従い、特定の物性を有する膨化でんぷんペースト様食品を配合して焼成したベーカリー製品は、従来にないしっとりとした食感を持つものであり、且つ耐熱保型性に優れ、特に従来そのままでは焼成することが困難であった加熱流動性の風味素材を多量に含むベーカリー製品を提供できる。
【0014】
【実施例】
表1に示す配合の原料を混合後、ホモジナイザー(ゲージ圧 150kg/cm2 )にて均質化させた。その乳化液をジャケット付きのベンチニーダーにて混練しながら品温を95℃まで昇温させ、膨化でんぷんペースト様食品を作製した。
【0015】
【表1】
【0016】
でんぷんA…タピオカリン酸架橋でんぷん(ナショナルスターチアンドケミカル(株)製、ピュリティ87)
でんぷんB…タピオカでんぷん
でんぷんC…コーンワキシースターチ
上記3種類のでんぷんについて、前記の測定条件にてアミログラフによる糊化の挙動を測定した結果を図1に示す。
焼成チョコレートの調製
また、表2に示す配合のチョコレートを常法により作製した。
【0017】
【表2】
【0018】
実施例1
ペースト▲1▼ 100重量部と40℃にて融解した上記チョコレート 100重量部を混合し、直径3cmのボール状に成形し、 200℃で10分間焼成して、焼成チョコレートを作製した。
実施例2〜3、比較例1〜2
ペーストとして、それぞれペースト▲2▼〜▲5▼を用いて実施例1と同様に焼成を行い、実施例2〜3、比較例1〜2の焼成チョコレートを作製した。
これらの焼成チョコレートについて、その耐熱保型性(焼成時の型の保型性)と食感の官能評価を、5(極めて良い)〜1(極めて悪い)の5段階で評価した。結果を表3に示す。
【0019】
【表3】
【0020】
焼成ジャムの調製
ペースト▲1▼ 100重量部といちごジャム 100重量部を混合し、 200℃で10分間焼成して、焼成ジャムを作製した。この焼成ジャムは水々しいいちご風味を維持し、且つオーブン中でも液ダレを起こさず、焼いた香ばしさを併せ持つ焼成ジャムであった。
【0021】
焼成チーズの調製
ペースト▲1▼ 100重量部とカマンベールチーズ 100重量部を混合し、 200℃で10分間焼成して、焼成チーズを作製した。この焼成チーズは水々しいチーズ風味を維持し、且つオーブン中でも液ダレを起こさず、焼いた香ばしさを併せ持つ焼成チーズであった。
【0022】
チョコレートケーキの調製
小麦粉 100重量部、ペースト▲1▼50重量部、チョコレート50重量部、鶏卵150 重量部、砂糖100 重量部、バター15重量部の配合にて、常法に従い、チョコレート味のスポンジケーキを作製した。このチョコレートケーキは、従来のチョコレートケーキと著しく異なるチョコレート風味の強さと水々しさを兼ね備えた食感を持つケーキであった。
【0023】
パン(バターロール)の調製
強力粉 100重量部、ペースト▲1▼50重量部、生イースト1重量部、ドライイースト1重量部、食塩1.5 重量部、無塩バター3重量部、卵黄15重量部、牛乳18重量部、水30重量部の配合にて、常法に従い、バターロールを作製した。このバターロールは、従来のバターロールと著しく異なる弾力と水々しさを兼ね備えた食感を持つバターロールであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例で使用した各種でんぷんの粘度挙動を示すグラフである。
Claims (4)
- 膨化でんぷんペースト様食品の製造方法であって、該ペースト様食品の温度20℃における針入度(A)が180以下で、且つ80℃における針入度(B)との比(B/A)が2.0以下となるように、リン酸架橋でんぷん、エーテル化でんぷん、アセチル化でんぷん及びヒドロキシル化でんぷんから選択される1種又は2種以上の加工でんぷん15〜25重量%、糖類及び/又は糖アルコール20〜50重量%、油脂10〜20重量%、水20〜50重量%を配合することを特徴とする膨化でんぷんペースト様食品の製造方法。
- でんぷんとして、濃度5%水溶液が、ブラベンダーのアミログラフの測定条件にて、ブラベンダー粘度が10BU以上を示さないでんぷんを用いる請求項1記載の膨化でんぷんペースト様食品の製造方法。
- 請求項1又は2記載の方法で製造された膨化でんぷんペースト様食品をボディとするペースト状食品に加熱流動性の風味素材を練り込み、焼成してなるベーカリー食品の製造方法。
- 加熱流動性の風味素材が、チョコレート、ジャム、フルーツソース、チーズ、マヨネーズから選ばれる1種又は2種以上である請求項3記載のベーカリー食品の製造方法。
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