JP4360768B2 - アルケンおよびカルボン酸を製造するための酸化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、対応するアルケンおよびカルボン酸を製造するC2〜C4アルカンの酸化方法、並びにアルケンおよびカルボン酸をさらに反応体として使用する一体化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カルボン酸はアルケニルカルボキシレートを製造するための有用な供給原料である。たとえば、一般にエチレンおよび酢酸を酢酸ビニルの生成につき活性な触媒の存在下に分子状酸素と接触させることにより産業的に作成される酢酸ビニルを製造するには酢酸が使用される。好適には触媒はパラジウムとアルカリ金属酢酸塩促進剤と必要に応じ補助促進剤(たとえば金もしくはカドミウム)とを触媒支持体上に含むことができる。
【0003】
酢酸および/または酢酸ビニルを製造するための一体化方法が当業界にて公知である。EP−A−0 877 727号は、酢酸および/または酢酸ビニルを任意の所定かつ可変の比率にてエチレンおよび/またはエタンからなるガス供給原料から製造するための一体化方法を開示している。この一体化方法は、エチレンおよび/またはエタンを第1反応帯域で接触酸化して、酢酸と水とエチレンと必要に応じエタン、一酸化炭素、二酸化炭素および/または窒素とからなる第1生成物流を生成させる第1工程を含む。次いで、この第1反応帯域で生成された酢酸およびエチレンを第2反応帯域にて触媒の存在下に分子状酸素含有ガスと接触させて、酢酸ビニルと水と酢酸と必要に応じエチレンとからなる第2生成物流を生成させる。エタンおよび/またはエチレンの接触酸化からのエチレンと酢酸との生成比の調節については言及されていない。
【0004】
1992年(6月)第338号の研究開示は酢酸を製造するためのエタンおよび/またはエチレンの酸化方法を記載しており、副生物の一酸化炭素を二酸化炭素まで酸化させる。この刊行物によれば、酢酸と未反応エタン(存在する場合)とエチレンとを二酸化炭素および水の除去と共に或いはそれなしに酢酸エチルを製造するのに適する触媒を有する反応器に移送し、或いは酢酸ビニルを製造すべく酸素を添加する。この刊行物は、酸化工程で生成されるエチレンと酢酸との比の調節については記載していない。
【0005】
エチレンおよび酢酸からの酢酸ビニルの製造において、新鮮供給エチレンと酢酸とのモル比は望ましくはユニディーもしくはほぼユニディーである。従って、エタンを酸化反応帯域で酸化させて、酢酸ビニルの製造につき第2反応帯域で使用するためのエチレンおよび酢酸を生成させる一体化方法において、一体化方法の効率および酢酸ビニル生産量を最大化させるには、酸化反応帯域で生成されるエチレンと酢酸とのモル比は望ましくは第2反応帯域における選択率/収率に応じユニティーまたはほぼユニティーである。
【0006】
エタンから酢酸への酸化に際し酢酸の生成に対する水の作用はUS 4250346号に記載されているが、これは生成される各生成物の比に対するエチレンの効果を開示していない。
【0007】
従ってC2〜C4アルカンを酸化して対応アルケンおよびカルボン酸を生成させ、生成されるアルケンとカルボン酸とのモル比を所定値に調整または維持する方法につきニーズが残される。
【0008】
典型的には、たとえばエタンのようなアルカンの酸化においては一酸化炭素および/または二酸化炭素(炭素酸化物)が副生物として生成される。これら炭素酸化物の高レベル(典型的には15モル%より大)の生成は、一般に資本および生産コストが上昇するので望ましくない。炭素酸化物に対する低選択性はコスト高の反応の必要性を減少させると共に、熱除去システムおよび生成物精製のための除去システムは炭素酸化物除去システムのコストを減少させ、運転コストを低下させ、さらに所望カルボン酸およびアルケン生成物への収率増加をもたらす。
【0009】
上記に鑑み、C2〜C4アルカンを酸化して対応のアルケンおよびカルボン酸を生成させる場合は、生成するアルケンとカルボン酸とのモル比を所定値に調整または維持して炭素酸化物、一酸化炭素および/または二酸化炭素への低選択性を達成することが望ましい。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、生成されるアルケンとカルボン酸とのモル比を所定値に調整または維持する対応アルケンおよびカルボン酸を製造するためのC2〜C4アルカンの酸化方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
従って本発明は対応するアルケンおよびカルボン酸を製造するためのC2〜C4アルカンの酸化方法を提供し、この方法は前記アルケンと分子状酸素含有ガスおよび対応するアルケンと必要に応じ水を、アルカンから対応アルケンおよびカルボン酸への酸化につき活性である少なくとも1種の触媒の存在下に酸化反応帯域で接触させてアルケンとカルボン酸と水とからなる生成物流を生成させることからなり、前記酸化反応帯域にて生成されるアルケンとカルボン酸とのモル比を前記酸化反応帯域におけるアルケンと適宜の水との濃度を調節すると共に必要に応じ酸化反応帯域における圧力、温度および滞留時間の1つもしくはそれ以上をも調節することにより所定値に調整もしくは維持することを特徴とする。
【0012】
アルカン、分子状酸素含有ガス、アルケンおよび水のそれぞれは、新鮮供給物および/または循環成分として酸化反応帯域に導入することができる。
【0013】
酸化反応帯域における触媒の少なくとも1種が失活し或いは使用に際しその選択性を変化する場合は、生成されるアルケンとカルボン酸とのモル比を、酸化反応帯域に供給されるアルケンおよび必要に応じ水の濃度を調節すると共に必要に応じ酸化反応帯域の圧力、温度および滞留時間をも調節することにより一定の所定値に維持することができる。
【0014】
さらに本発明は、たとえば下流プロセスにおける需要もしくは要求の変化に呼応して、酸化反応帯域に供給されるアルケンおよび必要に応じ水の濃度を調節すると共に必要に応じ酸化反応帯域の圧力、温度および滞留時間をも調節することにより、生成されるアルケンとカルボン酸とのモル比を調整する方法をも提供する。
【0015】
本発明の方法は、アルケンおよび/またはカルボン酸生成物を少なくとも部分的に一体化下流プロセスで、たとえば(a)カルボン酸をアルケンもしくはアルコールと反応させてエステルを製造すべく或いは(b)分子状酸素含有ガスとカルボン酸およびアルケンとの反応によりアルケニルカルボキシレートを製造すべく使用する際に特に有用である。アルケンおよび/またはカルボン酸は酸化反応帯域の生成物から回収することができ或いは、追加アルケンおよび/またはカルボン酸を下流プロセスにて使用することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の更なる具体例においては、たとえば(a)カルボン酸をアルケンと反応させることによりエステルの製造につき、酸化につき活性な少なくとも1種の触媒の存在下に接触させてアルケンとカルボン酸と水とからなる生成物流を生成させ;または
(b)分子状酸素含有ガスをカルボン酸およびと反応させることによるアルキルカルボキシレートの製造につき一体化された下流プロセスにて使用するのに適するモル比にてアルケンとカルボン酸とを生成することができる。アルケンおよびカルボン酸を反応生成物から回収せず或いは別々に下流プロセスに添加しない場合は酸化反応帯域で生成されるアルケンとカルボン酸とのモル比は好ましくは約1:1,たとえば0.8:1〜14:1である。次いでアルケンおよび適宜の水の濃度を酸化反応帯域への全混合供給物にて調節すると共に、必要に応じ酸化反応帯域の圧力、温度および滞留時間の1つもしくはそれ以上をも調節して、アルケンとカルボン酸とのモル比を調整し、供給物原料入手性の市場要求に合致させることができる。好適には、酸化反応帯域で生成されるアルケンとカルボン酸とのモル比は1:10〜10:1の範囲である。
【0017】
従って本発明は、(a)酸化反応帯域にてC2〜C4アルカンと分子状酸素含有ガスと対応アルケンと必要に応じ水とを、アルカンから対応アルケンおよびカルボン酸への酸化につき活性な少なくとも1種の触媒の存在下に接触させてアルケンとカルボン酸と水とからなる生成物流を生成させ;
(b)第2反応帯域にて、第1反応帯域で生成された前記アルケンおよびカルボン酸のそれぞれの少なくとも1部と分子状酸素含有ガスとをアルケニルカルボキシレートの製造につき活性な少なくとも1種の触媒の存在下に接触させて前記アルケニルカルボキシレートを生成させる工程からなり、前記酸化反応帯域にて生成されるアルケンとカルボン酸とのモル比を、前記酸化反応帯域におけるアルケンおよび適宜の水の濃度を調節すると共に酸化反応帯域の圧力、温度および滞留時間の1つもしくはそれ以上をも調節することにより所定値に調整または維持する
ことを特徴とするアケニルカルボキシレートを製造するための一体化方法を提供する。
【0018】
さらに他の具体例において、本発明は(a)酸化反応帯域にてC2〜C4アルカンと分子状酸素含有ガスと対応アルケンと必要に応じ水とを、アルカンから対応アルケンおよびカルボン酸への酸化につき活性な少なくとも1種の触媒の存在下に接触させて、アルケンとカルボン酸と水とからなる生成物流を生成させ;
(b)第2反応帯域にて、第1反応帯域で生成された前記アルケンおよびカルボン酸のそれぞれの少なくとも1部をアルキルカルボキシレートの製造につき活性な少なくとも1種の触媒の存在下に接触させて前記アルキルカルボキシレートを生成させ、前記酸化反応帯域にて生成されるアルケンとカルボン酸とのモル比を、前記酸化反応帯域におけるアルケンおよび必要に応じ水の濃度を調節すると共に必要に応じ酸化反応帯域の圧力、温度および滞留時間の1つもしくはそれ以上をも調節することにより所定値に調整または維持する
ことを特徴とするアルキルカルボキシレートの一体化製造方法をも提供する。
【0019】
好ましくは酸化反応帯域にて生成されるアルケン:カルボン酸のモル比は、アルキルカルボキシレートもしくはアルケニルカルボキシレートの生成につき第2反応帯域にてその後に使用すべく約1:1、たとえば0.8:1〜1.4:1に維持される。
【0020】
好ましくは酸化反応帯域で生成されるアルケンとカルボン酸とのモル比は、その後にアルキルカルボキシレートもしくはアルケニルカルボキシレートを製造すべく第2反応帯域に使用するため約1:1、たとえば0.8:1〜1.4:1に維持される。
【0021】
本発明において、好ましくはC2〜C4アルカンはエタンであり、対応アルケンはエチレンであり、対応カルボン酸は酢酸である。これら生成物を下流プロセスで反応させて酢酸エチルを生成させることができ、或いは分子状酸素含有ガスと反応させて酢酸ビニルを生成させることができる。
【0022】
典型的には酸化反応は、流体相における固体触媒および各反応体を用いて不均質で行うことができる。
【0023】
アルカンからアルケンおよびカルボン酸への酸化につき活性な触媒は、たとえばUS 459687号、EP−A−0407091号、DE 19620542号、WO 99/20592号、DE 19630832号、WO 98/47850号、WO 99/51339号、EP−A−01043064号、WO 99/13980号、US 5300682号およびUS 5300684号(その内容を参考のためここに引用する)に記載されたようにエタンからエチレンおよび酢酸への酸化につき当業界で公知の任意適する触媒で構成することができる。
【0024】
US 459687号は、そこに規定されたように実験式MoaVbNbcSbdXe(各元素は酸素と組み合わせて存在する)を有する触媒を用いるエタンからエチレンへの低温オキシ脱水素化方法に関するものである。
【0025】
EP−A−0407091号は、モリブデン、レニウムおよびタングステンからなる酸化触媒の存在下にエタンおよび/またはエチレンを酸化することによりエチレンおよび/または酢酸を製造するための方法および触媒に関するものである。
【0026】
DE 19620542号は、エタンおよび/またはエチレンから酢酸を製造するためのモリブデン系、パラジウム系、レニウム系の酸化触媒に関するものである。
【0027】
WO 99/20592号はエタン、エチレンもしくはその混合物と酸素とから高温度にて式MoaPdbXcYd(ここでXはCr、Mn、Nb、Ta、Ti、V、TeおよびWの1種もしくは数種を示し;YはB、Al、Ga、In、Pt、Zn、Cd、Bi、Ce、Co、Rh、Ir、Cu、Ag、Au、Fe、Ru、Os、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Nb、Zr、Hf、Ni、P、Pb、Sb、Si、Sn、TlおよびUの1種もしくは数種を示し、a=1、b=0.0001〜0.01、c=0.4〜1およびd=0.005〜1である)を有する触媒の存在下に酢酸を選択的に製造する方法に関するものである。
【0028】
ドイツ特許出願DE 196 30 832A1号はa=1、b>0、c>0およびd=0〜2である同様な触媒組成物に関するものである。好ましくはa=1、b=0.0001〜0.5、c=0.1〜1.0およびd=0〜1.0である。
【0029】
WO 98/47850号エタン、エチレンもしくはその混合物と式WaXbYcZd(ここでXはPd、Pt、AgおよびAuの1種もしくは数種を示し;YはV、Nb、Cr、Mn、Fe、Sn、Sb、Cu、Zn、U、NiもしくはBiの1種もしくは数種を示し;ZはLi、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、Ru、Os、Co、Rh、Ir、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Pb、P、AsおよびTeの1種もしくは数種を示し、a=1、b>0、c>0、d=0〜2である)を有する触媒とを用いる酢酸の製造方法に関するものである。
【0030】
WO 99/51339号はエタンおよび/またはエチレンを酢酸まで選択酸化するための触媒組成物に関するものであり、この組成物は酸素と組み合わせて元素MoaWbAgcIrdXeYf(式中、Xは元素NbおよびVであり;YはCr、Mn、Ta、Ti、B、Al、Ga、In、Pt、Zn、Cd、Bi、Ce、Co、Rh、Cu、Au、Fe、Ru、Os、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Zr、Hf、Ni、P、Pb、Sb、Si、Sn、Tl、U、ReおよびPdよりなる群から選択される1種もしくはそれ以上の元素であり;a、b、c、d、eおよびfは0<a≦1、0≦b<1およびa+b=1;0<(c+d)≦0.1;0<e≦2;および0≦f≦2となるような各元素のグラム原子比を示す)を含む。
【0031】
EP−A−1043064号は、エタンをエチレンおよび/または酢酸まで酸化し或いはエチレンを酢酸まで酸化するための触媒組成物に関するものであり、この触媒は酸素と組み合わせて元素モリブデン、バナジウム、ニオブおよび金を実験式MoaWbAucVdNbeYf(式中、YはCr、Mn、Ta、Ti、B、Al、Ga、In、Pt、Zn、Cd、Bi、Ce、Co、Rh、Ir、Cu、Ag、Fe、Ru、Os、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Zr、Hf、Ni、P、Pb、Sb、Si、Sn、Tl、U、Re、Te、LaおよびPdよりなる群から選択される1種もしくはそれ以上の元素であり;a、b、c、d、eおよびfは0<a≦1、0≦b<1およびa+b=1;10〜5<c<0.02;0<d<2;0<e≦1;および0≦f≦2となるような各元素のグラム原子比を示す)に従うパラジウムの不存在下に含む。
【0032】
WO 99/13980号はエタンから酢酸への選択酸化のための式MoaVbNbcXd(式中、XはP、B、Hf、TeおよびAsよりなる群から選択される少なくとも1種の促進剤元素であり;aは約1〜約5の範囲の数であり;bは1であり;cは約0.01〜約0.5の範囲の数であり;dは0より大きく約0.1の範囲の数である)の触媒に関するものである。
【0033】
US 5300682号はVPaMbOx(式中、MはCo、Cu、Re、Fe、Ni、Nb、Cr、W、U、Ta、Ti、Zr、Hf、Mn、Pt、Pd、Sn、Sb、Bi、Ce、As、AgおよびAuの1種もしくはそれ以上であり、aは0.5〜3であり、bは0.1であり、xは原子価要求を満たす)の実験式を有する酸化触媒の使用に関するものである。
【0034】
US 5300684号は、たとえばMo0.37Re0.25V0.26Nb0.07Sb0.03Ca0.02Oxを用いる流動床酸化反応に関するものである。
【0035】
本発明にて使用するのに適する他の酸化触媒は、酸素と組み合わせてMoaVbNbcXd(式中、X=P、B、Hf、TeもしくはAsである)の相対グラム原子比における各元素を有する触媒の使用に関するWO 99/13980号;酸素と組み合わせてMoaVbNbcXdの相対グラム原子比における各元素を有する触媒の使用に関するUS 6030920号;酸素と組み合わせてMoaVbNbcXdおよび/またはMoaVbLacPddの相対グラム原子比における各元素を有する触媒の使用に関するWO 00/00284号;酸素と組み合わせてMoaVbPdcLadの相対グラム原子比における各元素を有する触媒の使用に関するUS 6087297号;酸素と組み合わせてMoaVbLacPddNbeXf(式中、X=CuもしくはCrであり、eおよびfは0としうる)の相対グラム原子比における各元素を有する触媒の使用に関するWO 00/09260号;酸素と組み合わせてMoaVbGacPddNbeXf(式中、X=La、Te、Ge、Zn、Si、InもしくはWである)の相対グラム原子比における各元素を有する触媒の使用に関するWO 00/29106号およびWO 00/29105号;並びに酸素と組み合わせてMoaVbLacPddNbeXf(式中、X=Al、Ga、GeもしくはSiである)の相対グラム原子比における各元素を有する触媒の使用に関するWO 00/38833号(これらの内容を参考のためここに引用する)に記載されている。
【0036】
C2〜C4アルカンの酸化につき活性な固体触媒は支持もしくは未支持とすることができる。適する支持体の例はシリカ、珪藻土、モンモリロナイト、アルミナ、シリカアルミナ、ジルコニア、チタニア、炭化珪素、活性炭およびその混合物を包含する。
【0037】
C2〜C4アルカンの酸化につき活性な固体触媒は固定床もしくは流動床の形態で使用することができる。
【0038】
酸化触媒は、酸化反応帯域に供給されたアルケンの少なくとも1部をたとえば対応カルボン酸まで酸化すると予想される。
【0039】
酸化反応帯域にて使用する分子状酸素含有ガスは空気または空気よりも分子状酸素の豊富もしくは貧弱なガスとすることができる。適するガスは、たとえば適する希釈剤(たとえば窒素もしくは二酸化炭素)で希釈された酸素とすることができる。好ましくは分子状酸素含有ガスは酸素である。好ましくは分子状酸素含有ガスの少なくとも幾分かを、アルカンおよび適宜のアルケン供給物および任意の循環流とは独立して酸化反応帯域に供給する。
【0040】
本発明の方法による酸化反応帯域に供給されるアルカンおよびアルケンは実質的に純粋とすることができ、或いはたとえば窒素、メタン、二酸化炭素、一酸化炭素、水素および低レベルのC3/C4アルケン/アルカンの1種もしくはそれ以上と混合することもできる。
【0041】
好適にはアルケン(新鮮供給物および循環成分として)の濃度は、酸化反応帯域への循環流を含む全供給物の0モル%より大きく50モル%まで、好ましくは1〜20モル%、より好ましくは1〜15モル%である。
【0042】
好適には水(新鮮供給物および循環成分として)の濃度は、酸化反応帯域への循環流を含む全供給物の0〜50モル%、好ましくは0〜25モル%である。
【0043】
有利には、本発明の方法はアルケンとカルボン酸とのモル比を所定値に調整または維持することを可能にすると共に酸化反応帯域に供給されるエチレンおよび水の両者の濃度を調節することにより炭素酸化物への低選択性を達成する。たとえば約1:1のアルケン:カルボン酸のモル比を得ることが望ましい場合、この比はアルケンのみ、または水のみを添加して達成することができる。しかしながらアルケン単独の添加は炭素酸化物の高選択性および多量の水(たとえば15モル%より大)の水をもたらし、低酸素炭化物選択性を達成することが要求される。たとえばエチレンのようなアルケンを水と組み合わせて使用することにより1:1のモル比を炭素酸化物への低選択性にて極く少量の水(たとえば10モル%未満)を用いることにより達成することができる。
【0044】
アルケンおよび水の同時供給を用いることにより生成される炭素酸化物のレベルを15モル%未満、たとえば10モル%未満まで減少させることができる。
【0045】
たとえば本発明の好適具体例において、たとえばエチレンのようなアルケンおよび水と酸化反応帯域に同時供給する。
【0046】
好適にはアルケン(たとえばエチレン)と水とを1:0.1〜250の重量比、たとえば1:0.1〜100または1:0.1〜50の重量比、好ましくは1:0.1〜10の重量比にて使用することができる。
【0047】
0.8:1〜14:1の範囲におけるアルケン:カルボン酸のモル比を、たとえばエチレンと酢酸とを生成させるエタンの酸化におけるように得ることが望ましい場合は、好ましくはアルケンと水とを1:0.1〜10重量比、たとえば1:0.1〜1の重量比、または1:0.1〜2の重量比、たとえば1:1の重量比または1:2の重量比にて酸化反応帯域に同時供給する。
【0048】
固体触媒を酸化反応帯域にて使用する場合は、アルカンと適宜のアルケンと分子状酸素含有ガスと任意の循環ガスとを好ましくは500〜10,000hr−1の混合ガス空時速度(GHSV)に対応する滞留時間にて酸化反応帯域に通過させ、ここでGHSVは沈降触媒の嵩容積により割り算した反応器を通過するガスの容積(STPとして計算)として規定される。
【0049】
本発明の酸化反応は好適には100〜400℃の範囲、典型的には140〜350℃の範囲の温度にて行うことができる。
【0050】
本発明の酸化反応は好適には大気圧または80〜400psigの範囲の過圧下で行うことができる。
【0051】
上記したように、炭素酸化物への低選択性はアルケンと水との両者を酸化反応帯域に供給して達成することができる。代案としておよび/または追加的に、炭素酸化物への選択性は、たとえば反応温度を減少させ或いは反応圧力を低下させると共に他の全反応パラメータを一定に保つことにより、15モル%未満まで減少させることができる。
【0052】
望ましくは0.8:1〜1.4:1の範囲のアルケン:カルボン酸のモル比は、反応温度および/または圧力を減少させると共に他の全パラメータを一定にすることにより低炭素酸化物選択性にて達成することができる。
【0053】
典型的には1〜99%の範囲のアルカン変換率が本発明の酸化反応にて達成される。
【0054】
典型的には30〜100%の酸素変換率が本発明の酸化反応にて達成されうる。
【0055】
本発明の酸化反応にて、好適には触媒は触媒1kg当たり毎時10〜10000gのカルボン酸(たとえば酢酸)の範囲の生産性を有する。
【0056】
下流プロセスにて使用する任意の触媒の性質に応じ、たとえば酢酸ビニルのようなアルケニルカルボキシレートの製造につき使用する場合、望ましくは第1ガス生成物流は一酸化炭素副生物の低濃度を持たねばならない。何故なら、これはアルケニルカルボキシレート(たとえば酢酸ビニル)を生成させる或る種の触媒に悪影響を及ぼしうるからである。すなわち、無視しうる一酸化炭素副生物を与える触媒を酸化反応帯域にて使用することが好ましい。酸化反応帯域における追加触媒成分を用いて、一酸化炭素を二酸化炭素まで酸化することができる。これは酸化触媒または第2反応帯域に存在させることができる。
【0057】
エタンを酸化プロセス用の反応体として使用する場合、生成物流は酢酸とエチレンと水とを含むことができ、エタンおよび酸素と、たとえばアルゴンおよび窒素のような不活性ガス成分と、副生物アセトアルデヒド、一酸化炭素および二酸化炭素とを含有する。アセトアルデヒドおよび一酸化炭素は分子状炭素含有ガスにより変換されて、それぞれ酢酸および二酸化炭素を下流プロセスにて或いは酸化反応にて循環後に生成させることができる。エチレンは、エチレンが供給物に存在すれば未変換反応体として或いはエタン反応体の酸化生成物として酸化反応の生成物流に存在する。
【0058】
酸化プロセスからの生成物は1つもしくはそれ以上の分離段階の後に適宜の追加分子状酸素含有ガス、適宜の追加アルケンおよび適宜の追加カルボン酸と一緒に第2反応帯域に直接的もしくは間接的に供給して、たとえば酢酸ビニルのようなアルケニルカルボキシレートを生成することができる。カルボン酸および/またはアルケンは酸化プロセスの生成物から必要に応じ回収することができる。
【0059】
未変換アルカンおよび/またはアルケンは、一緒に或いは下流プロセスからの少なくとも部分的分離の後に、酸化反応帯域まで直接的または間接的に1つもしくはそれ以上の分離段階の後に循環させることができる。
【0060】
アルケニルカルボキシレートの製造につき当業界で公知の触媒を本発明の方法に使用することができる。すなわち本発明の第2反応帯域にて使用しうる酢酸ビニルの製造につき活性な触媒は、たとえばGB 1 559 540号;US 5,185,308号およびEP−A−0672453号(これらの内容を参考のためここに引用する)に記載されたような触媒で構成することができる。
【0061】
GB 1 559 540号はエチレンと酢酸と酸素との反応による酢酸ビニルの製造につき活性な触媒を記載しており、この触媒は実質的に(1)3〜7mmの粒子直径と0.2〜1.5ml/gの気孔容積とを有する触媒支持体、すなわち3.0〜9.0のpHを有する触媒支持体の10重量%水懸濁物、(2)触媒支持体の表面層に分配されたパラジウム/金の合金(表面層は支持体の表面から0.5mm未満にて延び、合金におけるパラジウムは触媒1リットル当たり1.5〜0.0gの量にて存在し、金は触媒1リットル当たり0.5〜2.25gの量にて存在する)、および(3)触媒1リットル当たり5〜60gのアルカリ金属酢酸塩で構成される。
【0062】
US 5,185,308号はエチレンと酢酸と酸素含有ガスとから酢酸ビニルを製造するのに活性なシェル含浸触媒を記載しており、この触媒は実質的に(1)約3〜約7mmの粒子直径および1g当たり0.2〜1.5mlの気孔容積を有する触媒支持体と、(2)触媒支持体粒子の最外1.0mm厚さの相に分配されたパラジウムおよび金と、(3)約3.5〜約9.5重量%の酢酸カリウムとで構成され、ここで前記触媒における金とパラジウムとの重量比は0.6〜1.25の範囲である。
【0063】
EP−A−0672453号は、パラジウム含有触媒および流動床酢酸ビニルプロセスのためのその作成につき記載している。
【0064】
パラジウム含有触媒を使用する利点は、第1反応帯域にて生成される一酸化炭素が第2反応帯域における酸素およびパラジウム含有触媒の存在下に消費されることにより、別途の一酸化炭素除去反応器の要求を排除する点である。
【0065】
典型的には、第2反応帯域におけるアルキニルカルボキシレート(たとえば酢酸ビニル)の製造は不均質に行われると共に、各反応体を気相で存在させる。
【0066】
追加アルケン反応体は、カルケニルカルボキシレートの製造のための第2反応帯域に供給しうると共に、アルケンは酸化生成物および/または未消費のアルケン反応体として酸化反応帯域から供給することができる。
【0067】
アルケニルカルボキシレートの製造につき第2反応帯域に導入される追加アルケンは実質的に純粋とすることができ、或いはたとえば窒素、メタン、二酸化炭素、一酸化炭素、水素および低レベルのC3/C4アルケン/アルカンの1種もしくはそれ以上と混合することもできる。
【0068】
アルケニルカボキシレートの製造につき第2反応帯域で使用される分子状酸素含有ガスは、工程(a)からの未反応分子状酸素含有ガスおよび/または追加分子状酸素含有ガスを含むことができる。
【0069】
使用する場合、追加分子状酸素含有ガスは空気または空気よりも分子状酸素の豊富もしくは貧弱なガスとすることができる。適する追加分子状酸素含有ガスはたとえば適する希釈剤(たとえば窒素もしくは二酸化炭素)で希釈された酸素とすることができる。好ましくは追加分子状酸素含有ガスは酸素である。好ましくは分子状酸素含有ガスの少なくとも幾分かをアルケンおよびカルボン酸反応体とは独立して第2反応帯域に供給する。第2反応帯域に供給されるカルボン酸の少なくとも1部は液体とすることができる。
【0070】
第2反応帯域に供給されるカルボン酸の少なくとも1部は液体とすることができる。
【0071】
固体触媒をアルケニルカルボキシレートの製造につき第2反応帯域で使用する場合、好ましくは酸化反応帯域からの生成物と追加アルケンもしくはカルボン酸反応体と循環流と分子状酸素含有ガスとを1000〜10,000hr−1の混合ガス空時速度(GHSV)にて第2反応帯域に通過させる。
【0072】
アルケニルカルボキシレートを製造するための第2反応帯域は好適には140〜200℃の範囲の温度で操作することができる。
【0073】
アルケニルカルボキシレートを製造するための第2反応帯域は好適には50〜300psigの範囲の圧力で操作することができる。
【0074】
アルケニルカルボキシレートの製造につき第2反応帯域は好適には固体床もしくは流動床法のいずれかで操作することができる。
【0075】
5〜80%の範囲のカルボン酸変換率を、アルケニルカルボキシレートの製造につき第2反応帯域にて達成することができる。
【0076】
20〜100%の範囲の酸素変換率をアルケニルカルボキシレートの製造につき第2反応帯域にて達成することができる。
【0077】
5〜100%の範囲のアルケン変換率をアルケニルカルボキシレートの製造につき第2反応帯域にて達成することができる。
【0078】
アルケニルカルボキシレートを製造するための第2反応帯域にて、触媒は好適には触媒1kg当たり毎時10〜10000gのアルケニルカルボキシレートの範囲の生産性を有する。
【0079】
本発明の方法にて使用するアルカンがエタンであれば、アルケニルカルボキシレートを製造する第2反応帯域からの生成物流は酢酸ビニルと水と酢酸と必要に応じさらに未反応エチレンとエタンとアルデビトと窒素とアルゴンと一酸化炭素と二酸化炭素とを含みうる。この種の生成物流は共沸蒸留により、酢酸ビニルと水とからなる頭上フラクションおよび酢酸と水とからなる底部フラクションに分離することができる。底部フラクションはカラムの底部から液体として或いはカラムの底部の上方から1つもしくはそれ以上の段階で蒸気として蒸留カラムより除去することができる。この種の蒸留工程に先立ち、存在すればエチレンとエタンとアルデヒドと一酸化炭素と二酸化炭素とを好適には洗浄カラムから頭上ガスフラクションとして第2生成物流より除去することができ、ここで酢酸ビニルと水と酢酸とからなる液体フラクションを底部から除去する。エチレンおよび/またはエタンは工程(a)および/または工程(b)に循環することができる。
【0080】
酢酸ビニルは好適にはたとえばデカンテーションにより頭上フラクションから回収され。。回収酢酸ビニルは所望に応じ公知方法でさらに精製することができる。
【0081】
酢酸と水とからなるベースフラクションは、さらに精製して或いは好ましくは精製なしに、プロセスの工程(b)に循環させることができる。代案として、酢酸を底部フラクションから回収すると共に所望に応じ公知方法(たとえば蒸留)によりさらに精製することもできる。
【0082】
カルボン酸とアルケンとの反応によるエステルの適する製造方法はEP−A−0926126号(その内容を参考のためここに引用する)に記載されており、これは低級オレフィンと飽和低級脂肪族モノカルボン酸とを付加反応にてヘテロポリ酸触媒の存在下に蒸気相で反応させることからなり、反応を直列で設立された複数の反応器にて行い、第1反応器から流出する未反応ガスおよび生成物からなるガスを第2反応器へ供給ガスとして供給すると共に、第2反応器から流出するものを第3反応器へ供給ガスとして供給し、さらにその後の反応器についても行い、さらに反応体モノカルボン酸の1部を第2およびその後の反応器のそれぞれに対する供給ガスに導入して第2およびその後の反応器のそれぞれに対する供給ガスにおけるオレフィンとモノカルボン酸との比を所定範囲内に維持することを特徴とするエステル化方法に関するものである。
【0083】
以下、本発明を図面を参照して次の実施例により例示の目的で説明する。
【0084】
装置はエタンおよび必要に応じエチレンの供給部(3)と、分子状酸素含有ガスの供給部(4)と、エタンおよび必要に応じエチレンからなる循環ガスの供給部(5)と、第1生成物流のための出口(18)とが設けられた酸化反応帯域(1)を備える。プロセスの規模に応じ、酸化反応帯域(1)は単一反応器または並列もしくは直列の数個の反応器を含むことができる。
【0085】
さらに装置はエチレンを酢酸ビニルまでアセトキシル化するための第2反応帯域(2)をも備え、これには第1反応帯域から第2反応帯域まで生成物の少なくとも1部を搬送するための手段(17)と、分子状酸素含有ガスの供給部(9)と、循環酢酸の供給部(10)と、エチレンおよび/または酢酸の適宜の供給部(8)とが設けられる。プロセスの規模に応じ、第2反応体(3)は単一反応器または並列もしくは直列の数個の反応器を含むことができる。
【0086】
さらに装置は、第1反応生成物のための適宜のスクラバー(6)と;第2反応帯域からの生成物のスクラバー(12)と;第2反応帯域の生成物から酢酸を分離するための手段(13)と;酢酸ビニル精製手段(14)と;適宜の酢酸精製手段(15)と、二酸化炭素を第2反応帯域からの循環ガスより分離すると共に必要に応じエチレン生成物を回収するための1つもしくはそれ以上の分離手段(16)とを備える。
【0087】
使用に際し、酸化反応帯域(1)にはそれぞれエタンを酸化して酢酸およびエチレンを生成させるための活性であるが異なる選択性を有する少なくとも2種の触媒を与える。好適には酸化触媒は固体触媒である。分子状酸素含有ガスは、1つもしくはそれ以上の入口を介し供給部(4)から酸化反応帯域(1)に供給される。エタンと必要に応じエチレンとを含むガス供給原料は供給部(3)から酸化反応帯域(1)に供給される。エタンとエチレンとを含む循環ガスも供給部(5)から酸化反応器に供給される。分子状酸素含有ガスとエタンと循環ガスとは1つもしくはそれ以上の入口を介し別々に或いは部分的もしくは完全に組み合わせて酸化反応帯域に導入される。必要に応じ酸化反応器に供給される流れの少なくとも1種は水をも含む。
【0088】
酸化反応器においてはエチレン(生成物および/または未反応供給物として)と酢酸と水と必要に応じ未消費分子状酸素含有ガスと副生物(たとえば一酸化炭素、二酸化炭素、不活性物質およびアセトアルデヒド)とからなる第1生成物流が生成される。これは、必要に応じガスおよび液体を除去するスクラバー(16)に移送することができる。ガスは、たとえば二酸化炭素のような副生物を分離すると共に必要に応じエチレン生成物を回収した後に、当業界で公知の方法により循環させることができる。酢酸はたとえば蒸留により液体から回収することができる。
【0089】
第1生成物流の少なくとも1部は手段(17)により、アセトキシル化触媒(好適には固体触媒)が与えられた第2反応帯域に供給される。第1生成物流の少なくとも1部は第2反応帯域に直接供給することができる。代案として、第2反応帯域に供給するに先立ち、第1反応生成物流の少なくとも1部は適する分離手段(図示せず)により多数の成分流(たとえばエチレン流および酢酸流)まで分離し、次いでこれを第2反応帯域に供給することができる。
【0090】
分子状酸素含有ガスは供給部(9)から第2反応帯域に供給される。酢酸は循環供給部(10)から第2反応帯域に供給される。必要に応じ、追加エチレンおよび/または酢酸を供給部(8)から第2反応帯域に供給することができる。第1生成物流と分子状酸素含有ガスと循環酢酸と必要に応じエチレンおよび/または酢酸の適宜の追加供給物とを別々に或いは部分もしくは完全組合せにて1つもしくはそれ以上の入口を介し第2反応帯域に供給する。
【0091】
第2反応帯域にてエチレンと酢酸と分子状酸素とが反応して、酢酸ビニルからなる第2生成物流を生成する。
【0092】
第2反応生成物をスクラバー(12)に移送し、そこからガスおよび液体を分離する。二酸化炭素をガスから分離すると共に必要に応じエチレン生成物を当業界で公知の方法により1つもしくはそれ以上の分離段階(16)にて回収する。残留エタンおよび/またはエチレンは第1および/または第2反応器に循環することができる。酢酸はスクラバー液から分離されて第2反応帯域に循環される。必要に応じ、酢酸生成物は手段(15)(たとえば蒸留)により循環流から回収することができる。酢酸ビニル生成物は手段(14)(たとえば蒸留)によりスクラバー液から回収される。
【0093】
使用に際し、酸化反応帯域における少なくとも1種の触媒の選択性がたとえば失活により変化すれば、酸化反応帯域にて生成されるアルケンとカルボン酸とのモル比は、酸化反応帯域に供給されるアルケンおよび水の量を調節すると共に必要に応じさらに酸化反応帯域の圧力、温度および滞留時間の1つもしくはそれ以上をも調節することにより所定値に調整または維持される。
【0094】
好ましくは、酸化反応帯域にて生成されるエチレンと酢酸とのモル比は、その後に酢酸ビニルを製造すべく第2反応帯域にて使用するため約1:1、たとえば0.8:1〜1.4:1に維持される。エチレンおよび/または酢酸が酸化反応生成物から別々に回収され或いは酢酸ビニルを製造すべく第2反応帯域に別々に添加される場合は、異なる比を維持することもできる。次いでエチレンと酢酸とのモル比を酸化反応帯域における少なくとも2種の触媒の相対比率を調節して調整し、たとえばマーケット需要または供給原料入手性の変化に合わせることができる。
【0095】
エタン酸化につき活性な触媒(触媒A)の作成
45.88gのモリブデン酸アンモニウムと12.86gのバナジウム酸アンモニウムと8.10gの塩化ニオブと0.0713gの四塩化アンモニウム金 と6.75gの蓚酸とを、70℃まで撹拌しながら加熱された400mlの水に溶解して溶液を作成した。15分間の後、溶液の水を沸点まで加熱した後、2時間にわたり蒸発乾固させた。得られた触媒ケーキを磨砕すると共に、400℃のオーブン内の静止空気にて5時間にわたり焼成した。触媒の名目実験式は次の通りであった:
Mo1.00V0.423Nb0.115Au0.0008Ox
【0096】
一般的エタン酸化反応方法
典型的には、5mlの粉末触媒A〜Eを直径0.4mmの15mlのガラス球と混合して、20mlの容積における希釈触媒を生成させた。次いで希釈触媒を内径12mmおよび長さ40cmの寸法のハステロイで作成された固定床反応器に充填した。触媒を、触媒床の上方および下方における不活性充填材料と一緒に石英壁部プラグを用いて反応器の中心における所定位置に維持した。次いで装置をヘリウムにより20バールで圧力試験して漏れにつき点検した。次いで触媒Aをヘリウム中で5℃/minにて220℃まで4時間にわたり加熱することにより活性化させて、触媒先駆体の完全分解を確保した。
【0097】
次いでエタンとヘリウム中20%の酸素と水との所要の流れを反応器に導入して、所要の入口組成を確保した。この組成は42%v/vのエタンと、6.7%の酸素と、25%v/vの水と、残部のヘリウムとであった。全供給流量を、2000〜9000/hの供給物GHSVを確保するレベルに維持した。60分間にわたり平衡化させた後、ガス試料を出口流からGCシステム(モデル・ユニカム4400)まで採取して、エタンとエチレンと酸素とヘリウムとを定量した。
【0098】
反応器の設定温度を、出口流における酸素の計算レベルで示される50〜75%酸素変換率が達成されるまで上昇させた。さらに60分間の平衡時間の後、触媒を定常状態の条件下で典型的には4〜5時間にわたり評価した。出口ガス容積を水/ガスメータにより試験時間にわたり測定した。液体生成物を集め、試験時間の後に秤量した。ガスおよび液体生成物の組成をGC分析(TCDおよびFID検出器がそれぞれ取り付けられたユニカム4400および4200)を用いて測定した。
【0099】
供給物および生成物の流量および組成の分析から、次のパラメータが計算された:
エタン変換率=(入口モルエタン−出口モルエタン)/入口モルエタン*100酸素変換率=(入口モル酸素−出口モル酸素)/入口モル酸素*100
酢酸への選択率(C−モル%)=(出口モル酢酸*2)/(変換モルエタン*2)*100
エチレンへの選択率(C−モル%)=((出口モルエチレン−入口モルエチレン)*2)/(変換モルエタン*2)*100
COへの選択率(C−モル%)=(出口モルCO)/(変換モルエタン*2)*100
CO2への選択率(C−モル%)=(出口モルCO2)/(変換モルエタン*2)*100
エチレン/酢酸の比=(出口モルエチレン−入口エチレンモル)/(モル酢酸)*100
STY(空時収率)%=(g酢酸)/kg触媒床/hr
典型的には、反応のための質量バランスおよび炭素バランスは100+/−5%であると判明した。
【0100】
以下の各実験において、使用した各触媒は上記手順に従い作成したが、各触媒は必ずしも全て同じバッチのものとしなかった。
【0101】
例1
この例においては、変化する濃度のエチレンを上記一般的反応方法で供給原料として用いた。水は使用しなかった。その結果を下表Iに示す。
【0102】
【表1】
上記表Iから見られるように、反応混合物における15モル%エチレンのレベルにてエチレンと酢酸とのモル比はユニティーである。
【0103】
例2(比較)
この実験においては、変化する濃度の水を上記一般的反応方法ににて用いた。これは、エチレンを供給物中に使用しなかったのて本発明による例でない。その結果を下表2に示す。
【0104】
【表2】
表2から見られるように、ほぼユニティーのエチレンと酢酸とのモル比を達成するには、25モル%の水を供給物流にて使用せねばならない。さらに、反応器に供給される水の量が増加するにつれ炭素酸化物への選択率が減少することも見られる。
【0105】
例3〜5
これら例においては、エチレンと水とを一般的反応方法にて同時供給した。用いた処理条件を表3に示す。その結果を表4に示す。
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
表4は、エチレンと酢酸とのモル比が例3〜5のそれぞれににて約1:1であることを示す。
【0109】
表3および4の検査から見られるように、少量の水と組み合わせたエチレンの使用は低レベルの炭素酸化物の生成をもたらす。さらに例3および5から見られるように、炭素酸化物への選択率は例3の低反応温度にてずっと低い。
【0110】
上記例1〜5の結果は、第1反応帯域にて生成されるエチレンと酢酸とのモル比を、種々異なる反応条件下に酸化反応帯域に供給されるエチレンおよび水の濃度を調節して所定値に調整または維持しうること、特にほぼユニティーのモル比を達成しうることを示す。さらに、ほぼユニティーのモル比は低炭素酸化物選択率にて達成することができる。
【0111】
例6〜14
異なる温度および圧力にて更なる反応を行い、エチレン:酢酸のモル比に対するこれらパラメータの効果を示す。その結果を下表5に示す。得られた結果は触媒Aの性能に対する圧力および温度の変化の作用を示す。すなわち例6、9および12のエチレン:酢酸のモル比の比較は、減少する圧力がエチレン:酢酸のモル比を増大させることを示す。一般に例7、10および13,並びに例8、11および14の種々異なる温度においても同様な傾向が見られる。例6、7および8の比較は、22baraにて温度を減少させればモル比エチレン:酢酸を増大させるが、エチレン:酢酸のモル比を9baraにて減少させることを示す。これら結果はエチレンと酢酸とのモル比を反応の温度および/または圧力の調節により調整しうることを示す。約1:1の比が例6〜11にて達成される。
【0112】
さらに表5からも見られるように、22baraから9baraまで所定温度にて圧力を低下させれば、生成される炭素酸化物の量の減少をもたらす。さらに、所定圧力にて一般に温度の低下も炭素酸化物生成を一層低下させる。
【0113】
【表5】
【0114】
エタン酸化につき活性な触媒(触媒B)の作成
43.2gのモリブデン酸アンモニウムを撹拌しながら70℃まで加熱された100mlの蒸留水に溶解して溶液「A」を作成した。11.4gのバニジウム酸アンモニウムを撹拌しながら70℃まで加熱された120mlの蒸留水に溶解して溶液「B」を作成した。16.18gの蓚酸アンモニウムニオブおよび2.5gの蓚酸を撹拌しながら70℃まで加熱された100mlの蒸留水に溶解して溶液「C」を作成した。溶液A、BおよびCのそれぞれを15分間静置させて、各反応成分の最大溶解を可能にした。次いで溶液Cを70℃にて撹拌しながら溶液Bに迅速に添加した。溶液B/Cを70℃にて15分間撹拌し、次いで溶液Aをこれに急速添加した。15分間の後、溶液「D」(20mlの水に溶解された2.57gの燐酸アンモニウム)を撹拌しながら添加した。溶液A/B/C/Dを次いで沸点まで加熱した後、1.5時間かけて蒸発乾固させた。得られた触媒をペースト120℃にて16時間にわたりオーブン乾燥させた。乾燥の後、得られた触媒ケーキを磨砕し、0.2mmメッシュの篩で篩分し、次いでオーブン内の静止空気中で350℃にて4時間にわたり焼成した。触媒の名目組成式は次の通りであった:
Mo1.000V0.400Nb0.128P0.080Ox
【0115】
例15〜19
これら例においては、上記で作成された触媒Bを一般的反応方法に使用した。反応を種々異なる温度で行って、エチレンと酢酸とのモル比に対する温度の効果を示した。その結果を表6に示す。
【0116】
表6の検査から見られるように、温度を調節することによりエチレンと酢酸とのモル比を調整することができる。さらに表6は、操作温度を低下させることにより約ユニティーの所望のエチレン:酢酸のモル比を達成し得るだけでなく、このモル比を低炭素酸化物選択率にて達成しうることを示す。
【0117】
【表6】
【0118】
例20〜22
これら例においては、触媒Bを一般的反応方法に用いた。種々異なる濃度のエチレンを反応に同時供給した。用いた処理条件および達成された結果を表7に示す。
【0119】
表7に示した結果は、エチレン:酢酸のモル比を酸化反応帯域に同時供給されるエチレンの濃度を調節することにより所定レベルに調整もしくは維持しうることを示す。例22から見られるように、ほぼユニティーのモル比を達成することができる。
【0120】
【表7】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法に使用するのに適する装置の略ブロック図である。
【符号の説明】
1 酸化反応帯域
2 第2反応帯域
3 エチレン
4 分子状酸素含有ガス
5 エチレン
9 分子状酸素含有ガス
Claims (23)
- 酸化反応帯域にてアルカンと分子状酸素含有ガスと対応アルケンと必要に応じ水とをアルカンから対応アルケンおよびカルボン酸への酸化につき活性な少なくとも1種の触媒の存在下に接触させてアルケンとカルボン酸と水とからなる生成物を生成させる対応アルケンおよびカルボン酸を生成させるためのC2〜C4アルカンの酸化方法において、前記酸化反応帯域で生成されるアルケンとカルボン酸とのモル比を、前記酸化反応帯域に供給されたアルケンおよび必要に応じ水の濃度を調節すると共に必要に応じ酸化反応帯域の圧力、温度および滞留時間の1つもしくはそれ以上をも調節することにより所定値に調整または維持することを特徴とするC2〜C4アルカンの酸化方法。
- (a)酸化反応帯域にてC2〜C4アルカンと分子状酸素含有ガスと対応アルケンと必要に応じ水とを、アルカンから対応アルケンおよびカルボン酸への酸化につき活性な少なくとも1種の触媒の存在下に接触させて、アルケンとカルボン酸と水とからなる生成物流を生成させ;
(b)第2反応帯域にて、第1反応帯域で生成された前記アルケンおよびカルボン酸のそれぞれの少なくとも1部をアルキルカルボキシレートの製造につき活性な少なくとも1種の触媒の存在下に接触させて前記アルキルカルボキシレートを生成させ、前記酸化反応帯域にて生成されるアルケンとカルボン酸とのモル比を、前記酸化反応帯域に供給されたアルケンおよび必要に応じ水の濃度を調節すると共に必要に応じ酸化反応帯域の圧力、温度および滞留時間の1つもしくはそれ以上をも調節することにより所定値に調整または維持する
ことを特徴とするアルキルカルボキシレートの一体化製造方法。 - (a)酸化反応帯域にてC2〜C4アルカンと分子状酸素含有ガスと対応アルケンと必要に応じ水とをアルカンから対応アルケンおよびカルボン酸への酸化につき活性な少なくとも1種の触媒の存在下に接触させてアルケンとカルボン酸と水とからなる生成物流を生成させ;
(b)第2反応帯域にて、第1反応帯域で生成された前記アルケンおよびカルボン酸のそれぞれの少なくとも1部と分子状酸素含有ガスとをアルケニルカルボキシレートの製造につき活性な少なくとも1種の触媒の存在下に接触させて前記アルケニルカルボキシレートを生成させる工程からなり、前記酸化反応帯域にて生成されるアルケンとカルボン酸とのモル比を、前記酸化反応帯域に供給されたアルケンおよび適宜の水の濃度を調節すると共に酸化反応帯域の圧力、温度および滞留時間の1つもしくはそれ以上をも調節することにより所定値に調整または維持する
ことを特徴とするアケニルカルボキシレートの一体化製造方法。 - 酸化反応帯域にて生成されるアルケンとカルボン酸とのモル比が10:1〜1:10の範囲である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 酸化反応帯域にて生成されるアルケンとカルボン酸とのモル比が0.8:1〜1.4:1の範囲である請求項4に記載の方法。
- アルケンおよび/またはカルボン酸を酸化反応生成物から別々に回収し、または第2反応帯域へ別々に添加する請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
- アルカンがエタンであり、対応アルケンがエチレンであり、対応カルボン酸が酢酸である請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
- アルキルカルボキシレートが酢酸エチルである請求項2に記載の方法。
- アルケニルカルボキシレートが酢酸ビニルである請求項3に記載の方法。
- 酸化反応帯域にて生成されるアルケンとカルボン酸とのモル比が0.8:1〜1.4:1の範囲である請求項8または9に記載の方法。
- 酸化反応帯域に供給されるアルケンの濃度が、循環物を含め全供給物の0モル%より大きく50モル%までである請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
- 酸化反応帯域に供給される水の濃度が、循環物を含め全供給物の0〜50モル%である請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
- アルケンおよび水を酸化反応帯域に供給する請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
- アルケンおよび水を酸化反応帯域に1対0.1〜250のアルケン:水の重量比にて供給する請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
- アルケン:水の比が重量で1対0.1〜10である請求14に記載の方法。
- アルケン:カルボン酸のモル比が0.8:1〜1.4:1の範囲である請求項15に記載の方法。
- 酸化反応帯域における少なくとも1種の触媒がモリブデンからなる請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
- 第2反応帯域における少なくとも1種の触媒がパラジウムからなる請求項3〜17のいずれか一項に記載の方法。
- 酸化反応を100〜400℃の範囲の温度にて行う請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
- 酸化反応を大気圧または過圧下で行う請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
- 酸化反応を500〜10,000hr−1のGHSVにて行う請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
- 酸化反応帯域からの生成物流が15モル%未満の量にて炭素酸化物をさらに含む請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
- アルカンがエタンであり、対応アルケンがエチレンであり、対応カルボン酸が酢酸であり、エチレンおよび水を酸化反応帯域に1対0.1〜10の重量比にて供給し、生成されるエチレンと酢酸とのモル比が0.8:1〜1.4:1の範囲であると共に、酸化反応帯域からの生成物流が15モル%未満の量にて炭素酸化物をも含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
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