JP4360571B2 - 自動二輪車用前照灯 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は必要な照射角度を確保し、且つ直接光の対向車等への照射を防止するのに好適な自動二輪車用前照灯に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動二輪車用前照灯としては、例えば、特開平5−85435号公報「自動二輪車用前照灯装置」に記載されたものが知られている。
上記技術では、同公報の図4に示される通り、ケース22及びこのケース22の前部に取付けたレンズ23からなるハウジング19に、バルブ26と反射鏡27とを備える第1ランプと、バルブ28と反射鏡29とを備える第2ランプとを左右に並べて収納し、カウリング16に開けた開口部17を上記レンズ23の前面に臨ませた2灯式の前照灯装置18が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記技術では、バルブ26から車両右前方(図の左下方)に進んだ光と、バルブ28から車両左前方(図の右下方)に進んだ光との広がり、即ち平面視での前照灯装置18の照射角度は、カウリング16の開口部17の右・左縁部位置で決まる。
【0004】
例えば、バルブ26側又はバルブ28側をロービーム専用灯とした場合には、左右に照射角度が必要であるにもかかわらず、照射角度に制限を受けることになる。
また、これとは反対に、ロービーム専用灯では、照射角度が大きくなりすぎると、バルブ26,28からの直接光で対向車を眩惑することがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、必要な照射角度を確保することができ、且つ直接光が対向車等に照射されるのを防止することができる自動二輪車用前照灯を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、車体側のカウリングの開口部に前照灯のレンズの左右端部を嵌合させ、車体中心線上に前照灯のロービーム専用灯を配置した自動二輪車において、平面視で前記ロービーム専用灯のリフレクタに、ロービーム専用灯のフィラメントとレンズの左右端部の前端とを結ぶ仮想線よりも前方に突出する前方突出壁を一体成形し、ロービーム専用灯の両側に左・右のハイビーム専用灯を配置し、ロービーム専用灯のリフレクタと左・右のハイビーム専用灯のリフレクタとを一体成形するとともに、この一体成形リフレクタに前方突出壁を更に一体成形したことを特徴とする。
【0007】
ロービーム専用灯のフィラメントから発した光は、フィラメントと前照灯の左右端部とを結ぶ仮想線より前方に突出する前方突出壁によって決まる照射角度内を進む。
【0008】
この結果、前方突出壁の前方突出量を所定長さに設定することにより、ロービーム専用灯のフィラメントから発した光を前方突出壁で必要な最大照射角度で照射することができるとともに、直接光が対向車等に照射されない照射角度に設定することができて対向車等の眩惑を防止することができる。
【0009】
ロービーム専用灯のリフレクタと左・右のハイビーム専用灯のリフレクタと前方突出壁とを一体成形する。
この結果、各リフレクタ及び前方突出壁をそれぞれ別体にするのに比べて、それぞれの締結部材が必要なく、また、成形が容易になり、前照灯の製造コストを下げることができる。
【0010】
請求項2は、前方突出壁が、平面視でカウリングの開口部よりも後方に位置することを特徴とする。
【0011】
請求項3は、左右端部間のレンズを車両前方に湾曲させて形成するとともに、この湾曲したレンズ面の車幅方向における幅Wと、レンズの左右端部の前端からレンズ面の前端までの距離Cとの関係が、C/W≧0.2に設定されることを特徴とする。
【0012】
請求項4は、左・右のハイビーム専用灯のリフレクタの車幅方向における外側部が、平面視で仮想線の後方に位置するように設けられることを特徴とする。
【0013】
請求項5は、ロービーム専用灯の電球取付部と、左・右のハイビーム専用灯の電球取付部とが、平面視で車幅方向に並んでいることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。また、文中の「左」、「右」は自動二輪車に乗車した運転者を基準とする。
図1は本発明に係る自動二輪車用前照灯の正面図であり、前照灯10は、ハウジング11と、このハウジング11内に取付けたリフレクタ12と、このリフレクタ12に取付けたロービーム専用電球13及びハイビーム専用電球14,15と、ハウジング11の前部に取付けたレンズ16とからなる。
【0015】
ハウジング11は、後述するカウリングに取付けるための上部取付部21,21及び側部取付部22,22を備える。
リフレクタ12は、ロービーム専用電球13からの光を反射させるために放物面鏡としたリフレクタとしてのロービーム用反射部23と、ハイビーム専用電球14,15からの光を反射させるために放物面鏡としたリフレクタとしての左・右ハイビーム用反射部24,25とからなる一体成形の部材である。
【0016】
図2は図1の2−2線断面図である。
ハウジング11、ロービーム専用電球13、レンズ16及びロービーム用反射部23とでロービーム専用灯26を構成する。
ハウジング11、左ハイビーム専用電球14、レンズ16及び左ハイビーム用反射部24とでハイビーム専用灯としての左ハイビーム専用灯27を構成する。
ハウジング11、右ハイビーム専用電球15、レンズ16及び右ハイビーム用反射部25とでハイビーム専用灯としての右ハイビーム専用灯28を構成する。
【0017】
ここで、13aはロービーム専用電球13のフィラメント、14a,15aはハイビーム専用電球14,15のそれぞれのフィラメント、31…(…は複数個を示す。以下同様。)は、電球13,14,15の取付部から雨水等が浸入しないように密封するラバーキャップである。CL1は、平面視で車体の前後方向に延びる車体中心線であり、前照灯10の中心線であるロービーム専用電球13の基準軸に重ねたものである。
【0018】
レンズ16は、段部32,32を備え、この段部32,32の端部としての側面32a,32aを車体側のカウリング33の窓状の開口部33aに嵌合させる。従って、側面32a,32aの外側では、光がレンズ16を透過した場合でもカウリング33に遮られ、光が前照灯10から外部に照射されない。
【0019】
これらの側面32a,32aの間の湾曲したレンズ面をレンズ有効透過面34とし、レンズ有効透過面34の幅であるレンズ有効幅をW、側面32aの前端からレンズ有効透過面34の頂上までの距離である湾曲高さをCとすると、C/W≧0.2となる。
レンズ16のレンズ有効幅Wと湾曲高さCとの関係を上式のように設定することで、レンズ16の形状は、カウリング33を含め、流線型に近くなる。
【0020】
リフレクタ12は、ロービーム用反射部23の左右端部に、ロービーム専用電球13のフィラメント13aとレンズ16の左右端部である側面32a,32aの前端とを結ぶ仮想線TL1,TL2よりも前方にそれぞれ突出量P1,P2だけ突出する前方突出壁35,36を一体成形したものである。
前方突出壁35,36は、それぞれ両壁面を反射面としたものである。
ここで、仮想線TL1,TL2のなす角度をαとする。
【0021】
以上説明したように、本発明の自動二輪車用前照灯10は、ロービーム専用灯26の両側に左・右のハイビーム専用灯27,28を配置し、ロービーム専用灯26のロービーム用反射部23と左・右のハイビーム専用灯27,28の左・右ハイビーム用反射部24,25とを一体成形するとともに、この一体成形のリフレクタ12に前方突出壁35,36を更に一体成形したことを特徴とする。
上記構成により、各反射部23,24,25及び前方突出壁35,36をそれぞれ別体にする場合に比べて、それぞれの締結部材が必要なく、また、成形が容易になり、前照灯10の製造コストを下げることができる。
【0022】
図3は図1の3−3線断面図である。
ロービーム専用灯26は、ロービーム専用電球13のフィラメント13aから発した光をロービーム用反射部23で反射させて平行に進む光とし、この光をレンズ16で屈折させて所定のロービームの配光にするものである。
【0023】
ロービーム専用電球13から発した光を代表して便宜上L1,L2及びL3とすると、光L1は、ロービーム用反射部23の上半分である上半部23aで反射し、レンズ16に至る。
また、光L2,L3は、ロービーム用反射部23の下半分である下半部23bで反射し、レンズ16に至る。
【0024】
このように、ロービーム専用灯26は、反射鏡の半分で反射した光のみを利用するものに比べて、ロービーム用反射部23で反射した光のほとんど全てを利用するので、ロービーム専用電球13の定格電力を大きくすることなく明るさを大幅に増すことができる。
【0025】
図4は図1の4−4線断面図である。
左ハイビーム専用灯27は、ハイビーム専用電球14のフィラメント14aから発した光を左ハイビーム用反射部24で反射させて平行に進む光とし、この光をレンズ16で屈折させるものである。
ハイビーム専用電球14から発した光は、左ハイビーム用反射部24の上半分及び下半分の両方で反射し、レンズ16に至る。
【0026】
図2に示した右ハイビーム専用灯28は、ハイビーム専用電球15のフィラメント15aから発した光を右ハイビーム用反射部25で反射させて平行に進む光とし、この光をレンズ16で屈折させるものである。
ハイビーム専用電球15から発した光は、ハイビーム反射部25の上半分及び下半分の両方で反射し、レンズ16に至る。
【0027】
上記した左・右ハイビーム専用灯27,28の両方においてレンズ16を通った光を所定のハイビームの配光にする。
上記したロービーム、ハイビームの所定の配光は、レンズ16によるものでなくてもよく、リフレクタ12の多反射面化によるものでもよい。
【0028】
このように、ロービーム、ハイビームにそれぞれ専用灯26、専用灯27,28を使用することで、ハイビームとロービームとを一つの電球で兼ねるタイプに比べて、配光のためのチューニング、即ち電球13,14,15やレンズ16のカット、リフレクタ12の形状等の設定が容易になり、前照灯10の製造コストを下げることができる。
【0029】
図5は本発明に係る前照灯を備えた自動二輪車の前部を示す要部側面図であり、自動二輪車40は、車体フレーム41と、この車体フレーム41の前部に設けたヘッドパイプ42と、このヘッドパイプ42に操舵自在に取付けたフロントフォーク43及び前輪44と、フロントフォーク43の上部に取付けたハンドル45と、車体フレーム41に取付けたカウリング33と、このカウリング33に取付けた前照灯10とを備える。なお、47はウインドスクリーン、51はメインスイッチ、52は燃料タンク、53はフロントフェンダである。
【0030】
以上に述べた前照灯10の作用を次に説明する。
図6は本発明に係る前照灯の作用を説明する作用図である。
仮想線TL1,TL2は延長線も含めるものとし、また、フィラメント13aと前方突出壁35,36の先端とをそれぞれ結ぶ仮想線を延長線も含めてTL3,TL4とする。
また、仮想線TL1と仮想線TL3とのなす角度をθ1、仮想線TL2と仮想線TL4とのなす角度をθ2とする。
【0031】
更に、フィラメント13aから発した光をL4,L5,L6とすると、仮想線TL1と仮想線TL3との間のハッチング部分及び仮想線TL2と仮想線TL4との間のハッチング部分が、カウリング33の開口部において、フィラメント13aからの光の照射しない範囲であり、レンズ16に直接入射する直接光である光L4は、仮想線TL3と仮想線TL4との間の範囲を進む。
即ち、光L4の進む範囲は、照射角度でβ=α−θ1−θ2となる。
また、光L5,L6は、前方突出壁35,36の一方の壁面で反射し、レンズ16を通過する。
【0032】
ここで、前方突出壁35,36の突出量P1,P2(図2参照)は、前照灯10の仕様によりP1=P2とすることでθ1=θ2としてもよく、また、P1≠P2とすることで、θ1≠θ2としてもよい。
例えば、θ1≠θ2とすることで、自動二輪車10の仕向地に合わせた仕様としたり、自動二輪車10の形式(ロードタイプ、オフロードタイプ等)に合わせた仕様にすることができる。
【0033】
以上説明したように、本発明の自動二輪車用前照灯10は、図2において、車体中心線CL1上に前照灯10のロービーム専用灯26を配置した自動二輪車10において、ロービーム専用灯26のロービーム用反射部23に、ロービーム専用灯26のフィラメント13aと前照灯10のレンズ16の側面32a,32a前端とを結ぶ仮想線TL1,TL2よりも前方に突出する前方突出壁35,36を一体成形したことを特徴とする。
【0034】
これにより、図6において、ロービーム専用灯26のフィラメント13aから発した光は、前方突出壁35,36の前端位置によって決まる照射角度β内を進む。
【0035】
この結果、前方突出壁35,36の前方への突出を所定の突出量P1,P2(図2参照)に設定することにより、ロービーム専用灯26のフィラメント13aから発した光を、カウリング33の開口部幅に左右されないで前方突出壁35,36による必要な最大照射角度で照射することができるとともに、直接光である光L4が対向車等に照射されない照射角度βに設定することができて対向車等の眩惑を防止することができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1の自動二輪車用前照灯は、平面視でロービーム専用灯のリフレクタに、ロービーム専用灯のフィラメントとレンズの左右端部の前端とを結ぶ仮想線よりも前方に突出する前方突出壁を一体成形したので、前方突出壁の前方突出量を所定長さに設定することにより、ロービーム専用灯のフィラメントから発した光を前方突出壁で必要な最大照射角度で照射することができるとともに、直接光が対向車等に照射されない照射角度に設定することができて対向車等の眩惑を防止することができる。
【0037】
また、ロービーム専用灯のリフレクタと左・右のハイビーム専用灯のリフレクタとを一体成形するとともに、この一体成形リフレクタに前方突出壁を更に一体成形したので、各リフレクタ及び前方突出部をそれぞれ別体にするのに比べて、それぞれの締結部材が必要なく、また、成形が容易になり、前照灯の製造コストを下げることができる。
【0038】
請求項2の自動二輪車用前照灯は、前方突出壁が、平面視でカウリングの開口部よりも後方に位置する。
【0039】
請求項3の自動二輪車用前照灯は、左右端部間のレンズを車両前方に湾曲させて形成するとともに、この湾曲したレンズ面の車幅方向における幅Wと、レンズの左右端部の前端からレンズ面の前端までの距離Cとの関係が、C/W≧0.2に設定される。
【0040】
請求項4の自動二輪車用前照灯は、左・右のハイビーム専用灯のリフレクタの車幅方向における外側部が、平面視で仮想線の後方に位置するように設けられる。
【0041】
請求項5の自動二輪車用前照灯は、ロービーム専用灯の電球取付部と、左・右のハイビーム専用灯の電球取付部とが、平面視で車幅方向に並んでいる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る自動二輪車用前照灯の正面図
【図2】 図1の2−2線断面図
【図3】 図1の3−3線断面図
【図4】 図1の4−4線断面図
【図5】 本発明に係る前照灯を備えた自動二輪車の前部を示す要部側面図
【図6】 本発明に係る前照灯の作用を説明する作用図
【符号の説明】
10…前照灯、13a…フィラメント、16…レンズ、23,24,25…リフレクタ(ロービーム用反射部、左ハイビーム用反射部、右ハイビーム用反射部)、26…ロービーム専用灯、27,28…ハイビーム専用灯(左ハイビーム専用灯、右ハイビーム専用灯)、32a…端部(側面)、33…カウリング、33a…カウリングの開口部、34…レンズ面(レンズ有効透過面)、35,36…前方突出壁、40…自動二輪車、CL1…車体中心線、TL1,TL2…仮想線、C…レンズの左右端部の前端からレンズ面の前端までの距離(湾曲高さ)、W…レンズ面の車幅方向における幅(レンズ有効幅)。
Claims (5)
- 車体側のカウリングの開口部に前照灯のレンズの左右端部を嵌合させ、車体中心線上に前記前照灯のロービーム専用灯を配置した自動二輪車において、
平面視で前記ロービーム専用灯のリフレクタに、ロービーム専用灯のフィラメントと前記レンズの前記左右端部の前端とを結ぶ仮想線よりも前方に突出する前方突出壁を一体成形し、前記ロービーム専用灯の両側に左・右のハイビーム専用灯を配置し、前記ロービーム専用灯のリフレクタと前記左・右のハイビーム専用灯のリフレクタとを一体成形するとともに、この一体成形リフレクタに前記前方突出壁を更に一体成形したことを特徴とする自動二輪車用前照灯。 - 前記前方突出壁は、平面視で前記カウリングの開口部よりも後方に位置することを特徴とする請求項1記載の自動二輪車用前照灯。
- 前記左右端部間の前記レンズを車両前方に湾曲させて形成するとともに、この湾曲したレンズ面の車幅方向における幅Wと、前記レンズの左右端部の前端から前記レンズ面の前端までの距離Cとの関係が、C/W≧0.2に設定されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自動二輪車用前照灯。
- 前記左・右のハイビーム専用灯のリフレクタの車幅方向における外側部は、平面視で前記仮想線の後方に位置するように設けられることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の自動二輪車用前照灯。
- 前記ロービーム専用灯の電球取付部と、前記左・右のハイビーム専用灯の電球取付部とは、平面視で車幅方向に並んでいることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の自動二輪車用前照灯。
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