JP4352493B2 - 往復式電気かみそりの刃 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、往復式電気かみそりの刃に関し、詳しくは、長手軸方向に間隔を隔てて多数のスリット刃孔を形成したスリット外刃とスリット外刃の内面を往復摺動するスリット内刃を有する往復式電気かみそりの刃に関し、更に詳しくは、スリット内刃の刃の形態によって切断負荷を低減しようとする技術に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、往復式電気かみそりの刃においては、ネット刃とスリット刃の2種類から構成されているものがある。ネット刃もスリット刃も基本的な切断原理は同じであり、外刃と内刃の間に髭を挟み込んでシェアー切断(せん断)する機構のものである。ところで、ネット刃とする場合の外刃の厚みは通常0.1mm以下とスリット刃にする場合に比較して薄くすることができて髭を短くカットできるのであり、仕上げ剃り機能を発揮するのである。しかし、比較的長い髭はネット刃とした外刃の刃孔に入りにくいものである。一方、スリット刃とした外刃の厚みがネット刃とした外刃と比べて厚くなり、そのため、髭を短く切断できにくく、仕上げ剃りには不向きだが、スリット刃を外刃として櫛状に形成する場合に、髭をよく導入することができるために短時間で粗剃りができるものである。
【0003】
この場合、外刃、内刃に若干の切り刃角を設けることはあるが、外刃に切り刃角を設けた場合には髭の導入性を劣化させることが容易に推測される。
【0004】
内刃に切り刃角を設ける場合、髭を剃る際に、髭がランダムに外刃のスリット刃孔から導入されると、髭切断による反作用の力が必ず片方の刃に作用するため、摺動時のバランスを損ねるのであり、このため、スリット外刃とスリット内刃の間にすき間が発生し、切れ味を劣化させるのである。
【0005】
このため、スリット外刃に切り刃角を設けることはあまりなく、スリット内刃に切り刃角を設ける場合も摺動バランスを大きく損なわない程度の切り刃角(20°以下)しか設けていないのが一般的である。図4に切り刃角を形成していないスリット内刃3を示す。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、切り刃角を設けた場合、正味の刃先角が小さくなるだけでなく、引き切りになるため髭一本を切断する際の切断抵抗が下がることは明らかである。しかしながら、従来技術において述べた理由により外刃、内刃ともに切り刃角は若干量しか設けられていないものである。
【0007】
また、外刃、内刃ともに通常の櫛状の場合、髭が外刃の上面側から導入されて切断される場合と側面側から導入されて切断される場合を比べると、上面側から導入される場合の方が切断抵抗が大きい場合が多い。
【0008】
理由は、側面側から髭が導入される場合は、スリット外刃、スリット内刃の内側面で髭の姿勢が矯正され、切断面は髭の長手方向と垂直になりやすいためである。
【0009】
また、一般の櫛状の刃、例えば、電気かみそりのスリット刃、トリマー刃、芝刈り機の刃等の場合、刃溝深さが短かすぎる粗剃り時(多量の密な毛束をできるだけ速く切断しようとする場合)に毛束が刃間よりはみ出すため、髭の剃り残しが発生しやすくなるので、ある程度の刃長が必要となる。
【0010】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、スリット内刃の刃の形態によって切断負荷を低減することができる往復式電気かみそりの刃を提供することを課題とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1においては、長手軸方向に間隔を隔てて多数のスリット刃孔1…を形成したスリット外刃2とスリット外刃2の内面を往復摺動するスリット内刃3を有する往復式電気かみそりの刃であって、スリット内刃3が摺動方向に視て断面コ字状に形成されるとともにその刃部がスリット外刃2に対する摺動方向においてジグザグ状に形成され、該ジグザク状刃部5のジグザグ頂部6がスリット内刃3の両側壁7,7に桟部8で連結されていることを特徴とするものである。このような構成によれば、ジグザグ状刃部5において充分に切断に効果がある切り刃角を形成しながら、刃幅を大きくすることなく上面側からの髭の導入率を下げることができ、しかして、従来の問題を解消し、従来のものに比べて切断負荷を低減できる。しかも、請求項1においては、スリット内刃3が断面コ字状に形成されていることにより、摺動する内刃として使用する場合に必要な強度を比較的薄い刃厚で確保できる。更に、刃厚が薄い方が軽量化できるため、往復摺動に要するエネルギーが少なくできて駆動力をより切断に有効に利用できる。
【0012】
ところで、米国特許第2773306号において、ジグザグ状のスリット刃が開示されているが、請求項1の発明のように、断面コ字状ではないものである。米国特許第2773306のものだと刃厚を充分に厚くしないと使用時の強度が弱く、生産時、レーザー、ワイヤーカット、エッチング、研削切り出し加工等、いずれの加工方法で形状を造る場合においても、強度が小さく、大きな変形が懸念されるものである。
【0013】
請求項2においては、ジグザグ頂部6にスリット内刃の摺動方向に対して直交する直交刃部9を形成してあることを特徴とするものである。このような構成によれば、以下のような作用を奏する。
【0014】
切り刃角を大きくすると引き切り(挟み切り)効果により髭を切断するための切断抵抗が減少し、切断負荷が下がるが、特に、スリット外刃の側面から髭が導入される場合、スリット内刃先端で髭を捕らえにくい欠点があるが、請求項2のように、ジグザグ頂部6にスリット内刃の摺動方向に対して直交する直交刃部9(切り刃角の小さい刃として働く)を形成することで、髭をはじき出す力が小さいなるため、髭を確実に捕らえてスリット内刃3とスリット外刃2の刃先で挟んでせん断できる。そのかわり、髭一本を切断するための切断負荷は切り刃角を充分設けた場合と比べて増加するが、ここで言う直交刃部9の長さをジグザグ状刃部5の長さに比べて充分に小さくすれば、トータル負荷(多数の髭を同時に切断するための切断負荷)に対して直交刃部9を設けたために増加する切断負荷は少ないため弊害は抑えられるのである。
【0015】
特に、少量で生えている密度が低いが長い髭(ネット刃には導入されにくいためネット刃では切断する可能性が低い)を粗削りする場合、トータル負荷があまり大きくない場合は切断負荷を下げることによりも髭を逃がしにくく確実に切断できることが重要になるため、有効である。
【0016】
請求項3においては、ジグザグ状刃部5の側端面に刃先が先鋭となるテーパー10を形成していることを特徴とするものである。このような構成によれば、ジグザグ状でなく切り刃角があまりついていないものに刃先鋭角を設けた場合に比べて、正味の刃先角(往復動方向の断面上で得られる刃先角)をより小さくすることができるため、切断負荷を、より一層、下げることができる。
【0017】
請求項4においては、ジグザグ状刃部5の断面形状を台形にしていることを特徴とするものである。このような構成によれば、ジグザグ状刃部5の側端面に刃先が先鋭となるテーパー10を付けたスリット内刃3を製造するに当たって、スリット内刃3をコ字状に曲げ加工をおこなう際に、ジグザグ状刃部5がねじれてスリット外刃2の内面に摺接するスリット内刃3の面に凹凸が生じにくくできる。
【0018】
請求項5においては、曲げ加工されたスリット内刃3の両側壁7,7の長さを等しくしていることを特徴とするものである。このような構成によれば、請求項1乃至3のいずれかのスリット内刃3を製造するに当たって、外形を形取った平板をコ字状に曲げ加工する場合に、スリット内刃3の両端部において曲げ加工をおこなう曲げ代の長さを同じにすることができ、できあがったスリット内刃3全体のねじれ、及びジグザグ状刃部5のねじれを抑制できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1はスリット外刃及びスリット内刃の斜視図であり、図2はスリット内刃の部分拡大斜視図である。
【0020】
往復式電気かみそりの刃Aは、長手軸方向に間隔を隔てて多数のスリット刃孔1…を形成したスリット外刃2とスリット外刃2の内面を往復摺動するスリット内刃3とにより構成されている。スリット内刃3は、断面コ字状に形成されるとともにその刃部がスリット外刃2に対する摺動方向においてジグザグ状に形成されている。該ジグザク状刃部5のジグザグ頂部6がスリット内刃3の両側壁7,7に桟部8で連結されている。
【0021】
しかして、ジグザグ状刃部5において充分に切断に効果がある切り刃角を形成しているのであり、刃幅を大きくしなくても上面側からの髭の導入率を下げるのであり、切断負荷を低減するのである。スリット内刃3が断面コ字状に形成されていて、摺動するスリット内刃3として必要な強度を比較的薄い刃厚で確保している。刃厚が薄く軽量化できて、往復摺動に要するエネルギーが少なくできて駆動力をより切断に有効に利用するものである。
【0022】
ジグザグ状刃部5のジグザグ頂部6にスリット内刃3の摺動方向に対して直交する直交刃部9を形成している。
【0023】
スリット外刃2の側面から髭が導入される場合、スリット内刃3の先端で髭を捕らえにくいが、ジグザグ頂部6にスリット内刃の摺動方向に対して直交する直交刃部9(切り刃角の小さい刃として働く)を形成することで、髭をはじき出す力が小さいなるため、髭を確実に捕らえてスリット内刃3とスリット外刃2の刃先で挟んでせん断できるのである。そのかわり、髭一本を切断するための切断負荷は切り刃角を充分設けた場合と比べて増加するが、ここで言う直交刃部9の長さをジグザグ状刃部5の長さに比べて充分に小さくすれば、トータル負荷(多数の髭を同時に切断するための切断負荷)に対して直交刃部9を設けたために増加する切断負荷は少ないため弊害は抑えられるのである。
【0024】
特に、少量で生えている密度が低いが長い髭(ネット刃には導入されにくいためネット刃では切断する可能性が低い)を粗削りする場合、トータル負荷があまり大きくない場合は切断負荷を下げることによりも髭を逃がしにくく確実に切断できることが重要になるため、有効である。
【0025】
ところで、ジグザグ状刃部5の側端面に刃先が先鋭となるテーパー10を形成している。ジグザグ状でなく切り刃角があまりついていないものに刃先鋭角を設けた場合に比べて、正味の刃先角(往復動方向の断面上で得られる刃先角)をより小さくすることができるため、切断負荷を、より一層、下げることができる。
【0026】
更に、ジグザグ状刃部5の断面形状を台形にしている。ジグザグ状刃部5の側端面に刃先が先鋭となるテーパー10を付けたスリット内刃3を製造するに当たって、スリット内刃3をコ字状に曲げ加工をおこなう際に、ジグザグ状刃部5がねじれてスリット外刃2の内面に摺接するスリット内刃3の面に凹凸が生じにくくなるのである。
【0027】
しかも、曲げ加工されたスリット内刃3の両側壁7,7の長さを等しくしている。上記のようなスリット内刃3を製造するに当たって、外形を形取った平板をコ字状に曲げ加工する場合に、スリット内刃3の両端部において曲げ加工をおこなう曲げ代の長さを同じにするができるのであり、できあがったスリット内刃3全体のねじれ、及びジグザグ状刃部5のねじれを抑制できるものである。
[実施例]
本発明の実施例の詳細を以下に示す。
【0028】
<母材について>
刃基体材料は従来刃物材として使用されている焼入れ硬化型ステンレス鋼で銀紙6号(13wt%Cr,0.3%wtMo,残部Fe)を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
<加工について>
0.3mmの母材をプレス抜きし、フォトエッチングによりスリット内刃、スリット外刃の外形を形成し、プレスによる曲げ加工、焼入れ焼戻し熱処理をおこない、スリット内刃がスリット外刃の内面を摺動するスリット内刃の面及びスリット外刃のスリット内刃と内接摺動する面の平面研削をおこなう。
【0030】
【発明の効果】
請求項1においては、長手軸方向に間隔を隔てて多数のスリット刃孔を形成したスリット外刃とスリット外刃の内面を往復摺動するスリット内刃を有する往復式電気かみそりの刃であって、スリット内刃が断面コ字状に形成されるとともにその刃部がスリット外刃に対する摺動方向においてジグザグ状に形成され、該ジグザク状刃部のジグザグ頂部がスリット内刃の両側壁に桟部で連結されているから、ジグザグ状刃部において充分に効果がある切り刃角を形成しながら、刃幅を大きくすることなく上面側からの髭の導入率を下げることができ、しかして、従来の問題を解消し、従来より切断負荷を低減できるという利点がある。しかも、請求項1においては、スリット内刃が断面コ字状に形成されていることにより、摺動する内刃として使用する場合に必要な強度を比較的薄い刃厚で確保できるという利点がある。更に、刃厚が薄い方が軽量化できるため、往復摺動に要するエネルギーが少なくできて駆動力をより切断に有効に利用できる。
【0031】
請求項2においては、ジグザグ頂部にスリット内刃の摺動方向に対して直交する直交刃部を形成してあるから、請求項1の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
【0032】
切り刃角を大きくすると引き切り(挟み切り)効果により髭を切断するための切断抵抗が減少し、切断負荷が下がるが、特に、スリット外刃の側面から髭が導入される場合、スリット内刃先端で髭を捕らえにくい欠点があるが、請求項2のように、ジグザグ頂部にスリット内刃の摺動方向に対して直交する直交刃部(切り刃角の小さい刃として働く)を形成することで、髭をはじき出す力が小さいなるため、髭を確実に捕らえてスリット内刃とスリット外刃の刃先で挟んでせん断できる。そのかわり、髭一本を切断するための切断負荷は切り刃角を充分設けた場合と比べて増加するが、ここで言う直交刃部の長さをジグザグ状刃部の長さに比べて充分に小さくすれば、トータル負荷(多数の髭を同時に切断するための切断負荷)に対して直交刃部を設けたために増加する切断負荷は少ないため弊害は抑えられるのである。
【0033】
特に、少量で生えている密度が低いが長い髭(ネット刃には導入されにくいためネット刃では切断する可能性が低い)を粗削りする場合、トータル負荷があまり大きくない場合は切断負荷を下げることによりも髭を逃がしにくく確実に切断できることが重要になるため、有効である。
【0034】
請求項3においては、ジグザグ状刃部の側端面に刃先が先鋭となるテーパーを形成しているから、請求項1の効果に加えて、ジグザグ状でなく切り刃角があまりついていないものに刃先鋭角を設けた場合に比べて、正味の刃先角(往復動方向の断面上で得られる刃先角)をより小さくすることができるため、切断負荷を、より一層、下げることができる。
【0035】
請求項4においては、ジグザグ状刃部の断面形状を台形にしているから、請求項3の効果に加えて、ジグザグ状刃部の側端面に刃先が先鋭となるテーパーを付けたスリット内刃を製造するに当たって、スリット内刃をコ字状に曲げ加工をおこなう際に、ジグザグ状刃部がねじれてスリット外刃の内面に摺接するスリット内刃の面に凹凸が生じにくくできるという利点がある。
【0036】
請求項5においては、曲げ加工されたスリット内刃の両側壁の長さを等しくしているから、請求項1乃至3のいずれかの効果に加えて、請求項1乃至3のいずれかのスリット内刃を製造するに当たって、外形を形取った平板をコ字状に曲げ加工する場合に、スリット内刃の両端部において曲げ加工をおこなう曲げ代の長さを同じにするができ、できあがったスリット内刃全体のねじれ、及びジグザグ状刃部のねじれを抑制できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態のスリット外刃及びスリット内刃の斜視図である。
【図2】同上のスリット内刃の部分拡大斜視図である。
【図3】(a)はスリット内刃の部分拡大斜視図、(b)は断面図である。
【図4】同上の従来例の斜視図である。
【符号の説明】
1 スリット刃孔
2 スリット外刃
3 スリット内刃
5 ジグザグ状刃部
6 ジグザグ頂部
7 側壁
8 桟部
9 直交刃部
10 テーパー
Claims (5)
- 長手軸方向に間隔を隔てて多数のスリット刃孔を形成したスリット外刃とスリット外刃の内面を往復摺動するスリット内刃を有する往復式電気かみそりの刃であって、スリット内刃が摺動方向に視て断面コ字状に形成されるとともにその刃部がスリット外刃に対する摺動方向においてジグザグ状に形成され、該ジグザク状刃部のジグザグ頂部がスリット内刃の両側壁に桟部で連結されて成ることを特徴とする往復式電気かみそりの刃。
- ジグザグ頂部にスリット内刃の摺動方向に対して直交する直交刃部を形成して成ることを特徴とする請求項1記載の往復式電気かみそりの刃。
- ジグザグ状刃部の側端面に刃先が先鋭となるテーパーを形成して成ることを特徴とする請求項1記載の往復式電気かみそりの刃。
- ジグザグ状刃部の断面形状を台形にして成ることを特徴とする請求項3記載の往復式電気かみそりの刃。
- 曲げ加工されたスリット内刃の両側壁の長さを等しくして成ることを特徴とする請求項1乃至3記載のいずれかに記載の往復式電気かみそりの刃。
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