JP4339528B2 - 炭酸カルシウムの製造方法 - Google Patents
炭酸カルシウムの製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4339528B2 JP4339528B2 JP2001092343A JP2001092343A JP4339528B2 JP 4339528 B2 JP4339528 B2 JP 4339528B2 JP 2001092343 A JP2001092343 A JP 2001092343A JP 2001092343 A JP2001092343 A JP 2001092343A JP 4339528 B2 JP4339528 B2 JP 4339528B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- reaction
- calcium carbonate
- stirring
- causticizing
- lime
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Compounds Of Alkaline-Earth Elements, Aluminum Or Rare-Earth Metals (AREA)
- Paper (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程の苛性化工程において製紙用填料及び、製紙用塗工顔料として有用な性能を与えるアラゴナイト系炭酸カルシウムを製造する方法に関するものであって、更に詳しくは苛性化反応槽に据え付けられている攪拌機の翼径と反応槽の径との比、及び石灰乳調製時と苛性化反応時のP/V値を所定の範囲内に制御することによって達成される、製紙用填料、及び製紙用塗工顔料として有用な性能を与えるアラゴナイト系炭酸カルシウムを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
印刷あるいは筆記用に使用される紙には、通常、白色度、不透明度、平滑性、筆記性、手触り、印刷適性等の改良を目的として填料が内添される。この抄紙方法として、填料にタルク、クレー、酸化チタン等を使用し、pH 4.5付近で紙を抄く、いわゆる酸性抄紙と、pH 7〜8.5の中性〜弱アルカリ性域で紙を抄く、いわゆる中性抄紙がある。中性抄紙では、輸入品で高価なタルク、クレーに変わって、国産の炭酸カルシウムを填料として使用することが可能となる。近年、紙の保存性等の問題から中性抄紙によって得られる中性紙が着目されるようになり、またこのほかにも紙質、コスト、環境対策等の面でもメリットが多いことから、中性抄紙への移行が進んできており、今後ともその普及が拡大する情勢にある。
【0003】
安価で軽量な中性紙への要求が高まってくるなかで、填料としての炭酸カルシウムの位置づけは非常に重要である。この中性抄紙で填料として用いられる炭酸カルシウムには、天然石灰石を乾式あるいは湿式で機械粉砕して得られる重質炭酸カルシウムと、化学的方法によって得られる沈降性炭酸カルシウム(合成炭酸カルシウム)がある。
【0004】
ところが、天然石灰石をボールミル等の粉砕機を使用して得られた重質炭酸カルシウムは、内添填料として使用した場合、抄紙の際に激しくプラスチックワイヤを摩耗させてしまう。更にこの填料を使用して上質紙あるいは塗工紙を製造した場合、紙の不透明度、白色度、嵩高性、等において品質が不十分であった。
【0005】
一方、化学的方法によって製造される沈降性炭酸カルシウム(合成炭酸カルシウム)のうち代表的な製造方法である「炭酸ガス法」は、反応系が比較的簡単(水、消石灰、炭酸ガス)であることから、これまでに炭酸カルシウムの形状コントロール技術に関して数多くの報告がなされている。またそれらの技術を応用して製紙工場のオンサイトにて実際に製造される例もいくつか見られる。しかしながらこの方法は、炭酸カルシウムが唯一の産物であることから製造コストが高く、安価な紙製品への使用が制限されてきた。
【0006】
そこで考えられるのが、クラフトパルプ製造工程の蒸解薬品の回収・再生を行う苛性化工程で副生する炭酸カルシウムを製紙用原料として使用する方法である。この工程で得られる炭酸カルシウムは副産物であるため製造コストが低く、製紙用填料や塗工用顔料として利用した場合、紙製品の製造コストダウンにもつながる。
【0007】
ところで苛性化工程における炭酸カルシウムの生成過程では、水酸化ナトリウムの生成も同時に起こるため、反応が進行するのに伴い系内のpHは14以上の高アルカリ性領域となる。一方炭酸ガス法では反応自体が中和反応であり、そのため反応が進行するのに伴い系内は中性領域に近づく。このように苛性化工程における炭酸化反応と炭酸ガス法による炭酸化反応はその反応機構が根本的に異なっており、炭酸ガス法で確立された形状コントロール技術の知見を苛性化反応に適用することは不可能であった。
【0008】
このことから苛性化工程では炭酸カルシウムの形状コントロールが大変難しく、従来の苛性化反応で得られる炭酸カルシウムは、サイコロ状や六角面体などの種々雑多な形状を有し、粒子径も大きく、何れも不定形あるいは塊状で、従来の重質炭酸カルシウムに近いものであるため、この填料を使用して上質紙あるいは塗工紙を製造した場合、紙の不透明度、白色度、嵩高性、等において品質が不十分であった。また、近年、抄紙機が大型化し、抄紙速度もより高速化する中にあって、プラスチックワイヤの摩耗性とウェットエンドでの歩留まり性にも大きな問題を抱えていた。
【0009】
これに対し本発明者らは、特開平10−226974号公報において、生石灰の消和反応と苛性化反応の条件を特定することで上記問題を解決した製紙用填料及び製紙用塗工顔料として有用なアラゴナイト系針状炭酸カルシウムの製造方法を開示しており、また特開2000-264628号公報では生石灰の消和反応を省略し消石灰を使用すること、及び苛性化反応の条件を特定することで製造可能となるアラゴナイト系イガグリ状炭酸カルシウムの製造方法を開示している。
【0010】
しかしながら、これらの製造方法により得られる炭酸カルシウムは非常に安価で製紙用填料、及び塗工顔料として有用であるものの、反応条件によっては短径が1.0μm以上の針状、又はイガグリ状炭酸カルシウムが得られてしまい、それらを紙の製造に用いた場合には、不透明度等が十分に良好とは言えなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような状況に鑑み、苛性化工程を利用した製紙用填料、及び塗工顔料として有用なアラゴナイト系炭酸カルシウムを製造する方法であって、紙の製造に用いた場合に不透明度等が更に良好となる範囲の短径を有する、針状又はイガグリ状アラゴナイト系炭酸カルシウムを製造する方法の提供を本発明の課題とした。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、石灰乳調製時および苛性化反応時の攪拌力が、得られる炭酸カルシウムの形状、物性及び品質に大きな影響を与えることを突き止めた。すなわち、硫酸塩法又はソーダ法によるパルプ製造工程の苛性化工程において、苛性化反応槽の直径(D)と反応槽に取り付けられた攪拌機の攪拌翼の翼径(d)との比(d/D値)が0.15〜0.7、好ましくは0.3〜0.5であり、石灰乳の調製時において、攪拌液の単位容積当たりの攪拌動力を表すP/V値で0.1kw/m3以上、好ましくは3.0kw/m3以上の攪拌力で攪拌しながら石灰乳を調製し、つづいて該生石灰乳に対して、硫酸塩法又はソーダ法によるパルプ製造工程の苛性化工程から出る緑液を連続的に添加し、その添加速度及び反応温度を制御するとともに、苛性化反応中の攪拌力をP/V値で0.1kw/m3以上、好ましくは0.6kw/m3以上で苛性化反応を行うことによって、平均短径が0.1〜0.5μmの針状又はイガグリ状の形状を有するアラゴナイト系炭酸カルシウムが製造出来ることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。一般的に紙の製造に用いる炭酸カルシウム粒子の短径は、可視光の波長の1/2である0.1〜0.5μmの範囲であると光学的に最も性能が高くなることが知られており、この場合、紙の不透明度や白色度がより高くなる。従って本発明では、石灰乳調製時及び苛性化反応時の攪拌力を制御することによって、高い填料・顔料品質の炭酸カルシウムを製造出来ることになる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の石灰乳の調製において使用する生石灰は、炭酸カルシウムを主成分とする石灰石及び硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造の苛性化工程において炭酸ナトリウムを水酸化ナトリウムに転化する際に生成する炭酸カルシウムを焼成したものであればよい。なお、その際の焼成装置に関しては、ベッケンバッハ炉、メルツ炉、ロータリーキルン、国井式炉、KHD(カーハーディー)炉、コマ式炉、カルマチック炉、流動焼成炉、混合焼き立炉等、炭酸カルシウムを生石灰(酸化カルシウム)に転化する装置であれば特に制限されない。
【0014】
炭酸カルシウム中の不純物の含量については、例えば紙に用いる場合、特に着色成分(Fe、Mn等)が問題となる場合があるが、製品の用途にあわせて着色成分含量の少ない原料石灰石から得られる生石灰を適宜選択すればよい。
【0015】
また石灰乳の調製において使用する消石灰は前記生石灰を湿式及び乾式で消和されたものでよいが、乾式で消和された消石灰の方が生成する炭酸カルシウムの形状にとってはより好ましい。
【0016】
石灰乳の調製において添加する液としては石灰乳の調製の際に用いる生石灰1 molに対して炭酸イオンが0.25 mol以下になるような中性からアルカリ性の水溶液を利用することが好ましい。ここで使用するアルカリ性水溶液は硫酸塩法、又はソーダ法によるパルプ製造工程の苛性化工程の場合、このアルカリ水溶液は苛性化工程で生成する白液を水で希釈した水溶液、あるいは緑液や白液中の沈殿物(ドレッグス、炭酸カルシウムスラッジ)を洗浄した上澄液である弱液を利用することが好ましい。さらに高品質のアラゴナイト結晶の炭酸カルシウムを得ようとするならば炭酸イオンを含まないアルカリ性水溶液を用いた方がより好ましい。しかし石灰乳の調製において添加する液中の炭酸イオンが生石灰1 molに対して0.25 molより多くなると生成する炭酸カルシウムは米粒状、紡錘状もしくは塊状のカルサイト結晶になる。
【0017】
石灰乳調製時における生石灰及び/又は消石灰と液との混合には、一般的な攪拌羽根式の攪拌機を使用すればよいが、その際、攪拌液の単位容積当たりの攪拌動力を表すP/V値で0.1kw/m3以上、好ましくは3.0kw/m3以上の条件で攪拌混合して石灰乳を調製する。P/V値が0.1kw/m3未満の場合には、生石灰及び/又は消石灰と液が均一に混合されず、その後の苛性化反応が不均一となり、生成する炭酸カルシウムのアラゴナイト結晶含有率が低下するとともに、形状が塊状あるいは不定形となり好ましくない。またP/V値が100kw/m3を超える非常に強力な攪拌でも本発明の目的に叶った効果を得ることが出来るが、大型で高出力のモーターが必要となり経済的な面から好ましくない。ここで攪拌強度の指標として用いたP/V値は、攪拌の対象となる液の単位容積V(m3)当たりに与える攪拌機の攪拌動力P(kw)のことであり、攪拌装置の設計等において攪拌強度を計る指標として一般に使用されているものである(1989年7月15日、株式会社技術情報協会発行「新しい攪拌技術の実際」参照)。本発明の石灰乳調製時のP/V値は、攪拌機の所要動力P(kw)を石灰乳の容積V(m3)で除することによって求めた。
【0018】
攪拌翼の形状は、エッジタービン翼、ラジアルフロータービン翼、アキシャルフロータービン翼、パドル翼、アンカー翼、等の中から、攪拌する液の粘度や性状に合わせて適宜選定して使用すれば良いが、その中でも剪断能力、吐出能力の高い攪拌翼が好ましい(1989年7月15日、株式会社技術情報協会発行「新しい攪拌技術の実際」参照)。
【0019】
苛性化反応槽の直径(D)と攪拌機の攪拌翼径(d)の比を表すd/D値は、0.15〜0.7、好ましくは0.3〜0.5で行う必要がある。0.15よりも小さいと攪拌機の攪拌効果が反応槽の周辺部まで十分に行き渡らないため、反応が不均一になり、生成する炭酸カルシウムのアラゴナイト結晶含有率が低下するとともに、形状が塊状あるいは不定形となり好ましくない。0.7よりも大きいと石灰乳調製時及び苛性化反応時に攪拌機のモーターや駆動装置にかかる負荷が大きくなるため、大型で高出力のモーターが必要となり経済的な面から好ましくない。
【0020】
苛性化反応槽の内壁に取り付ける邪魔板は、反応槽直径の0.05〜0.1倍の幅を有するものを2〜4枚、攪拌翼の高さよりも上部に等間隔に設置する。邪魔板の幅が反応槽直径の0.05倍よりも小さいと邪魔板の効果が小さくなり好ましくないし、0.1倍より大きくした場合はそれに見合った効果が期待出来ない。また邪魔板の枚数は、5枚以上にしてもそれに見合った効果が期待出来ない。反応槽内壁に取り付けられた邪魔板は、攪拌により発生する円周方向の液の流れ(回転流)を軸方向及び半径方向の流れ(循環流)に変換する役目を持ち、その結果、反応槽内の攪拌効果をより高めることが出来る(1989年7月15日、株式会社技術情報協会発行「新しい攪拌技術の実際」参照)。
【0021】
石灰乳の調製時の石灰乳濃度は生石灰換算で10〜40重量%、好ましくは20〜35重量%の条件で行う。ここで石灰乳濃度が40重量%を超えると石灰乳粘度が高すぎて、一般的な攪拌羽根式の攪拌機では現実的に攪拌が困難となり、一方、石灰乳濃度が10重量%未満では生産性が劣り好ましくない。
【0022】
生石灰乳及び/又は消石灰乳を調製する際の温度は、後で添加する緑液の温度にあわせて適宜設定する。また前期石灰乳の調製時間は、均一混合できる時間が取れれば良い。
【0023】
苛性化反応に用いる緑液は、一般的な硫酸塩法又はソーダ法の苛性化工程から発生するものを使用し、その濃度はトータルアルカリで80〜160 g/L{その内Na2CO3が65〜130 g/L(Na2O換算、以下同じ)}、好ましくはトータルアルカリ100〜150 g/L(その内Na2CO3が85〜130 g/L)である。
【0024】
前記石灰乳と緑液の混合方法は、石灰乳に対する緑液の添加速度を0.02〜0.4 ml(緑液)/min/g(生石灰、又は消石灰の生石灰換算値)、好ましくは0.05〜0.25 ml/min/gの添加速度で所定量添加しで行う。0.02 ml/min/gより小さい添加速度では、生産性が劣り現実的でなく、また一方0.4 ml/min/gより大きい添加速度では、生成する炭酸カルシウムのアラゴナイト結晶含有率が低下するとともに、形状が塊状あるいは不定形となり好ましくない。
【0025】
苛性化反応温度については、反応温度が30〜105℃、好ましくは40〜90℃で行う必要がある。105℃以上より高くする場合には、大気圧下での沸騰点を超えるため、加圧型の苛性化装置等を必要とするため不経済である。一方、30℃より低い場合には、生成する炭酸カルシウムのアラゴナイト結晶含有率が低下するとともに、形状が塊状あるいは不定形となり好ましくない。また冷却装置等の費用がかさみ不経済である。
【0026】
苛性化反応時の攪拌は、石灰乳調製時と同様、一般的な攪拌羽根式の攪拌機を使用すれば良いが、反応開始から反応終了までを通して、P/V値で0.1kw/m3以上、好ましくは0.6kw/m3以上の条件で攪拌混合して苛性化反応を行わせる。P/V値が0.1kw/m3未満の場合には、石灰乳と緑液が均一に混合されず、反応が不均一となり、生成する炭酸カルシウムのアラゴナイト結晶含有率が低下するとともに、形状が塊状あるいは不定形となり好ましくない。
【0027】
以上のような条件下において、平均短径が0.1〜0.5μmの針状又はイガグリ状の形状を有するアラゴナイト系炭酸カルシウムが調製可能となる。
本発明によって得られるアラゴナイト系炭酸カルシウムの製造方法は、従来のクラフトパルプ製造工程の蒸解薬品回収を行う苛性化工程で得られたアラゴナイト系炭酸カルシウムの製造方法に比べて、粒子の短径を光学的特性に優れる範囲内に制御することができ、この方法で得られた炭酸カルシウムを内添填料や塗工顔料に用いることで、紙の不透明度や白色度等に更に優れた品質を与えることが出来る。
【0028】
【実施例】
以下に本発明を実施例および比較例をあげてより詳細に説明するが、当然ながら、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0029】
[試験法]
▲1▼ アルカリの測定: TAPPI 624hm-85、あるいはこれに準じて測定した。
▲2▼ 炭酸カルシウムの平均粒子径: 生成物を水洗濾過し、水で希釈後、レーザー回折式粒度分布計(シーラス社製モデル715)で平均粒子径を測定した。
▲3▼ 形態観察: 生成物を水洗濾過し、乾燥後走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製JSM-5300)で形態観察した。またここで得られた電子顕微鏡写真から粒子の短径を測定した。
▲4▼ 結晶系: Rigaku製 X線回折RAD-2Cにより測定した。
▲5▼ アラゴナイト結晶含有率 (%): 硝酸カルシウムと尿素よりアラゴナイト結晶を製造{Gypsum&Lime No.245(P234参照、Rigaku製 X線回折RAD-2Cの測定ではカルサイトピークなし}し、試薬のカルサイト結晶含有率99.9%との混合比率を変えて、X線回折RAD-2Cで測定する。この時のX線回折ピークの2θ=26.2°(アラゴナイト結晶)と2θ=29.4°(カルサイト結晶)の強度から次の計算式{26.2°の強度÷(26.2°の強度+29.4°の強度)}より強度比を求めて、混合割合と強度比の検量線を作成した。この検量線を使用し、アラゴナイト含有率を求めた。
【0030】
[実施例1]
4枚の邪魔板(幅0.3m、高さ2.5m)が等間隔に付けられた25m3容の苛性化反応槽(直径:3.4m、高さ3.1m)に、消石灰2tと水3tを用い、消石灰濃度が生石灰換算値で30.3重量%になるように、攪拌翼としてアキシャルフローファンタービン翼(翼径:1.2m)を取り付けた攪拌機(新菱製作所製1200-EA-2、実施例2についても同じ攪拌機使用)で、攪拌翼の周速が8.8m/s、石灰乳の単位容積に対する攪拌動力を表すP/V値が7.1kw/m3となる攪拌力で攪拌混合して石灰乳を調製した。つづいて緑液添加速度0.12ml/min/g、添加時間120分、温度50℃、反応終了時のP/V値が1.3 kw/m3となる条件で苛性化反応を行わせた。この時の反応生成物の平均粒子径測定および形態観察を行った結果、平均粒子径が5.8μmで、その構成一次粒子の短径が0.15μmであるアラゴナイト系イガグリ状炭酸カルシウムが認められた。実験条件および結果を表1に示す。
【0031】
[実施例2]
石灰乳の調製に白液(組成:Na2CO3=25g/L、Na2S=31g/L、NaOH=80g/L、いずれもNa2O換算値)0.75tと水2.25tの混合液を用い、つづいて緑液添加速度0.16ml/min/g、添加時間90分、温度75℃で苛性化反応を行わせた以外は、実施例1と同様に行った。この時の反応生成物は、平均粒子径が6.1μmで、その構成一次粒子の短径が0.4μmであるアラゴナイト系針状炭酸カルシウムが認められた。実験条件および結果を表1に示す。
【0032】
[実施例3]
4枚の邪魔板をはずした実施例1と同じ苛性化反応槽に、消石灰2tと水4.7tを用い、消石灰濃度が生石灰換算値で22.7重量%になるように、攪拌翼としてラジアルフローディスクタービン翼(翼径:0.75m)を取り付けた攪拌機(山陽国策機工製BV-210)で、攪拌翼の周速が4.7m/s、P/V値が1.3kw/m3となる攪拌力で攪拌混合して石灰乳を調製した。つづいて緑液添加速度0.12ml/min/g、添加時間120分、温度50℃、反応終了時のP/V値が0.3 kw/m3となる条件で苛性化反応を行わせた。この時の反応生成物の平均粒子径測定および形態観察を行った結果、平均粒子径が7.7μmで、その構成一次粒子の短径が0.2μmであるアラゴナイト系イガグリ状炭酸カルシウムが認められた。実験条件および結果を表1に示す。
【0033】
[実施例4]
2枚の邪魔板(幅0.06m、高さ0.59m)が等間隔に付けられた250L容の反応槽(直径:0.65m、高さ:0.8m)に、消石灰15kgと水35kgを用い、消石灰濃度が生石灰換算値で22.7重量%になるように、攪拌翼としてエッジタービン翼(翼径:0.2m)を取り付けた攪拌機(株式会社島崎製作所製 RB5Z使用)で、攪拌翼の周速が7.9m/s、P/V値が8.9kw/m3となる攪拌力で攪拌混合して石灰乳を調製した。つづいて緑液添加速度0.23ml/min/g、添加時間60分、温度50℃、反応終了時のP/V値が1.9kw/m3となる条件で苛性化反応を行わせた。この時の反応生成物の平均粒子径測定および形態観察を行った結果、平均粒子径が4.3μmで、その構成一次粒子の短径が0.2μmであるアラゴナイト系イガグリ状炭酸カルシウムが認められた。実験条件および結果を表1に示す。
【0034】
[実施例5]
生石灰15kgと水35kgを用い、生石灰濃度が30.0重量%になるように、攪拌翼の周速が17.8m/s、P/V値が88.9kw/m3の条件で攪拌混合して石灰乳を調製し、つづいて温度90℃、反応終了時のP/V値が18.5kw/m3となる条件で苛性化反応を行わせた以外は、実施例4と同様に行った。この時の反応生成物は、平均粒子径が5.4μmで、その構成一次粒子の短径が0.5μmであるアラゴナイト系針状炭酸カルシウムが認められた。実験条件および結果を表1に示す。
【0035】
[比較例1]
石灰乳調製時の攪拌条件を攪拌翼先端速度が1.9m/s、P/V値が0.07kw/m3であり、苛性化反応終了時のP/V値が0.01kw/m3になるように制御した以外は、実施例1と同様に行った。この時の反応生成物は、平均粒子径が11.2μmで、その構成一次粒子が不定形あるいは塊状であるカルサイト系炭酸カルシウムが認められた。実験条件および結果を表2に示す。
【0036】
[比較例2]
攪拌機に取り付けた攪拌翼の翼径が0.1mである以外は、実施例4と同様に行った。この時の反応生成物は、平均粒子径が10.1μmで、その構成一次粒子が不定形あるいは塊状であるカルサイト系炭酸カルシウムが認められた。実験条件および結果を表2に示す。
【0037】
[比較例3]
石灰乳調製時の消石灰濃度が生石灰換算で5.0重量%にした以外は、実施例1と同様に行った。この時の反応生成物は、平均粒子径が8.6μmで、その構成一次粒子が不定形あるいは塊状であるカルサイト系炭酸カルシウムが認められた。実験条件および結果を表2に示す。
【0038】
[比較例4]
苛性化反応時の緑液添加速度を0.70ml/min/g(生石灰換算値)、添加時間20分にした以外は、実施例1と同様に行った。この時の反応生成物は、平均粒子径が9.3μmで、その構成一次粒子が不定形あるいは塊状であるカルサイト系炭酸カルシウムが認められた。実験条件および結果を表2に示す。
【0039】
[比較例5]
苛性化反応時の反応温度を15℃にした以外は、実施例1と同様に行った。この時の反応生成物は、平均粒子径が8.9μmで、その構成一次粒子が不定形あるいは塊状であるカルサイト系炭酸カルシウムが認められた。実験条件および結果を表2に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【発明の効果】
実施例1〜5に示す如く、本発明による炭酸カルシウムは、短径が0.1〜0.5μmの針状又はイガグリ状の形状を有するアラゴナイト系炭酸カルシウムであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得られたアラゴナイト系イガグリ状炭酸カルシウムの結晶粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】 実施例1で得られた生成物についてのX線回折の結果を示す図である。
【図3】 実施例5で得られたアラゴナイト系針状炭酸カルシウムの結晶粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】 比較例3で得られたカルサイト系炭酸カルシウムの結晶粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】 比較例3で得られた生成物についてのX線回折の結果を示す図である。
Claims (6)
- 硫酸塩法又はソーダ法によるパルプ製造工程の苛性化工程において、平均短径が0.1〜0.5μmの針状又はイガグリ状の形状を有するアラゴナイト系炭酸カルシウムを製造する方法であって、
苛性化反応槽の直径(D)と反応槽に取り付けられた攪拌機の攪拌翼の翼径(d)との比(d/D値)が0.15〜0.7である苛性化反応槽において、生石灰及び消石灰からなる群から選択される物質に、生石灰換算で1molに対して0.25mol以下の炭酸イオンを含む中性からアルカリ性の水溶液を添加して濃度が生石灰換算で10〜40重量%になるように石灰乳を調製する際に、攪拌液の単位容積当たりの攪拌動力を表すP/V値で0.1kw/m3以上の攪拌力で攪拌しながら石灰乳を調製し、つづいて該石灰乳に対して、苛性化工程で発生し白液を製造するのに必要な緑液を0.02〜0.4ml(緑液)/min/g(生石灰、又は、消石灰の生石灰換算値)の添加速度で所定量添加し、反応温度30〜105℃にて苛性化反応を行うにあたって、該苛性化反応中の攪拌力が反応開始から反応終了までを通して、P/V値で0.1kw/m3以上の条件で苛性化反応を行わせる、上記方法。 - 前記苛性化反応を行わせるに当たり、緑液添加開始から反応に必要な緑液量の1/2量を添加するまでの間の攪拌力がP/V値で0.5kw/m3以上であり、つづいて緑液添加終了までの攪拌力がP/V値で0.1kw/m3以上となるように反応過程の攪拌条件を制御して苛性化反応を行うこと特徴とする、請求項1記載のアラゴナイト系炭酸カルシウムの製造方法。
- 前記苛性化反応を行わせるに当たり、緑液添加開始から反応に必要な緑液量の1/4量を添加するまでの間の攪拌力がP/V値で0.5kw/m3以上であり、つづいて緑液添加終了までの攪拌力がP/V値で0.1kw/m3以上となるように反応過程の攪拌条件を制御して苛性化反応を行うこと特徴とする、請求項1記載のアラゴナイト系炭酸カルシウムの製造方法。
- 前記石灰乳調製時及び苛性化反応時において、前記攪拌機の攪拌翼の周速が3m/s以上で攪拌を行う、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアラゴナイト系炭酸カルシウムの製造方法。
- 前記苛性化反応槽の内壁に、反応槽直径の0.05〜0.1倍の幅を有する邪魔板を2〜4枚、等間隔に設置した苛性化反応槽で反応を行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアラゴナイト系炭酸カルシウムの製造方法。
- 前記攪拌機の攪拌翼が二段翼である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアラゴナイト系炭酸カルシウムの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001092343A JP4339528B2 (ja) | 2001-03-28 | 2001-03-28 | 炭酸カルシウムの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001092343A JP4339528B2 (ja) | 2001-03-28 | 2001-03-28 | 炭酸カルシウムの製造方法 |
Publications (3)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002284522A JP2002284522A (ja) | 2002-10-03 |
JP2002284522A5 JP2002284522A5 (ja) | 2006-06-22 |
JP4339528B2 true JP4339528B2 (ja) | 2009-10-07 |
Family
ID=18946820
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001092343A Expired - Fee Related JP4339528B2 (ja) | 2001-03-28 | 2001-03-28 | 炭酸カルシウムの製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4339528B2 (ja) |
Families Citing this family (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006063501A (ja) * | 2004-08-30 | 2006-03-09 | Daio Paper Corp | 新聞用紙 |
JP4802465B2 (ja) * | 2004-08-31 | 2011-10-26 | 日本製紙株式会社 | 印刷用塗工紙 |
JP4918749B2 (ja) * | 2004-09-06 | 2012-04-18 | 日本製紙株式会社 | 印刷用塗工紙 |
JP4802471B2 (ja) * | 2004-09-28 | 2011-10-26 | 日本製紙株式会社 | 印刷用塗工紙 |
JP4802474B2 (ja) * | 2004-09-29 | 2011-10-26 | 日本製紙株式会社 | 印刷用塗工紙 |
JP4813075B2 (ja) * | 2005-03-30 | 2011-11-09 | 日本製紙株式会社 | アラゴナイト系針状炭酸カルシウムの製造方法 |
JP4802600B2 (ja) * | 2005-08-16 | 2011-10-26 | 日本製紙株式会社 | 印刷用塗工紙の製造方法 |
BR112013004263B8 (pt) * | 2010-08-24 | 2019-12-24 | Specialty Minerals Michigan Inc | método para obter produto de carbonato de cálcio particulado |
-
2001
- 2001-03-28 JP JP2001092343A patent/JP4339528B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2002284522A (ja) | 2002-10-03 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3808263B2 (ja) | 炭酸カルシウムの製造方法 | |
CA2686416C (en) | Process for production of pcc | |
CN106430272B (zh) | 一种棒状文石型碳酸钙的制备方法 | |
CN1982537A (zh) | 纸张填料或颜料或矿物质、其制造方法及其组合物与应用 | |
CA2274712C (en) | Processes for preparing calcium carbonate | |
JP4339528B2 (ja) | 炭酸カルシウムの製造方法 | |
US6190633B1 (en) | Process for preparing calcium carbonate | |
JP3874978B2 (ja) | 炭酸カルシウム及び水酸化ナトリウムの製造方法 | |
JP4346248B2 (ja) | アラゴナイト結晶系炭酸カルシウムの製造方法 | |
JP3872611B2 (ja) | 炭酸カルシウムの製造方法 | |
JP2006028003A (ja) | ウィスカー状炭酸カルシウムの製造方法 | |
JP4340019B2 (ja) | 炭酸カルシウムの製造方法 | |
JP3227420B2 (ja) | 炭酸カルシウムの製造方法 | |
JP3227422B2 (ja) | 炭酸カルシウムの製造方法 | |
JP3872610B2 (ja) | 炭酸カルシウムの製造方法 | |
JP3227421B2 (ja) | 炭酸カルシウムの製造方法 | |
JP3874958B2 (ja) | 炭酸カルシウムの製造方法 | |
JP2002235295A (ja) | 炭酸カルシウムウィスカーの製造方法 | |
JP4813075B2 (ja) | アラゴナイト系針状炭酸カルシウムの製造方法 | |
JP2011032628A (ja) | ホタテ貝殻焼成物を用いる苛性化炭酸カルシウムの製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060502 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20060502 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20081216 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20090406 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20090518 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20090603 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20090702 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120710 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120710 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150710 Year of fee payment: 6 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |