JP4338504B2 - 拘束土構造物の施工方法 - Google Patents
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Description
この種の盛土構造物にあっては、盛土層の間に介在させる補強シートの一端を、各盛土層の一方(前面)に積み上げたコンクリート製または網製の各壁面材の裏面に接続することで、擁壁マットに作用する土圧を補強シートの摩擦抵抗を利用して支持し、また盛土構造物内の滑りを補強シートにより抑制している。なお、盛土構造物の背面側は裏込土砂を充填して空隙処理を行っている。
また支持地盤が軟弱な場合は、コンクリート製の基礎床版を構築した後に、この基礎床版上に盛土構造物を構築することも知られている。
<1>各盛土層の上下面は補強シートでサンイドイッチ状に挟み込まれるが、盛土層の背面部(後部)は開放されたままである。
そのため、補強領域における盛土を十分に締め固めることができない。
殊に、盛土層に大きな鉛直荷重や地震時の水平力が加わると、盛土層の背面部(後部)から土砂が側方移動して盛土構造物の不等沈下を誘発する。
<2>地形が急峻で、盛土構造物の背面側スペースが足りない現場では、地山を切り込む必要があり、掘削量が増加して工期と工費の負担が増す。
<3>コンクリート製の基礎床版を構築する場合、軟弱地盤を掘り下げてからコンクリートを打設することから、施工に長時間を要するうえにコストが嵩む問題がある。
本発明は工期と工費を大幅に改善することにある。
本発明はコンクリー製の基礎床版の代替や補強盛土、或いは護岸構造物に適用できるようにすることにある。
本発明は上記した何れかひとつの拘束土構造物およびその施工方法を提供することを目的とする。
<1>拘束土構造物を構成する複数の圧拘束土単体が、補強シートを介した上載荷重を利用して中詰材を増強できるので、背面土圧や地震などの外力に対して安定性の高い拘束土構造物を得ることができる。
<2>補強シートにより擁壁マットと共に中詰材を包み込んだ範囲が補強領域となるので、拘束土構造物の断面幅を過剰に広く設計したり、地山を切り込んだりする必要がない。
<3>補強シートを強制的に緊張することで、補強シートの弛みをなくし、中詰材の拘束効果が高まる。
<4>転圧の際、仮設の型枠を使用することで中詰材の背面部の孕み出しを阻止して確実に締め固めをすることができる。
<5>補強シートで包み込んだ中詰材を再度転圧することで、中詰材の背面部を側方へ強制的に変形させて補強シートを緊張することができる。
そのため、中詰材の拘束効果がさらに高まり、拘束土構造物の安定性が格段に向上する。
<6>本発明は補強盛土としてだけでなく、コンクリー製の基礎床版の代替や護岸構造物に適用することができて汎用性に富む。
コンクリー製の基礎床版の代替として使用した場合は、軟弱地盤を掘削する手間をなくして直接構築して施工性と経済性を大幅に改善できる。
<1>拘束土構造物の概要
図1は完成した拘束土構造物のモデル図を示す。
拘束土構造物は法面側に多段的に積み上げた擁壁マット10と、補強シート30で擁壁マット10を含めて中詰材20を袋状に包み込み、補強シート30を緊張した後、中詰材20を転圧して構築した複数の拘束土単体50の積層体により構成する。
以降に主要な使用資材について説明する。
擁壁マット10は、拘束土構造物の擁壁面を構成する重量式の柱状部材である。
擁壁マット10は例えば図2に示す構造体を採用可能である。
図2の(a)に示す形態は、樹脂製ネット又は繊維製ネットを箱状に形成した函体11内に砕石等の骨材12を詰め込んで封入した可撓性を有する蛇篭である場合を示し、同図の(b)は金網等の金属製ネット箱状に形成した収容体11内に砕石等の骨材12を投入した蛇篭である場合を示し、同図の(c)は樹脂製又は繊維製シートを筒状又は箱状に形成した可撓性を有する収容体11内に土砂13を詰め込んで封入した細長(その全長が断面長の数倍の長さを有する)のマット構造体である場合を示す。擁壁マット10に何れの形態のものを採用するかは、施工現場の状況や施工高さ等を考慮して適宜選択する。
中詰材20は拘束土構造物の主体を成すもので、擁壁マット10と共に補強シート30で包み込んで外部から拘束して補強するものである。
中詰材20は締め固めが可能な性質であればよく、一般土砂、現地発生土、産廃土砂等、各種骨材、コンクリートガラ等を単種で、または複数種の混合体を使用することが可能である。また土砂については砂質土、粘性土の別を問わず採用が可能である。
補強シート30は単に水平に敷設する部材ではなく、中詰材30の背面部を巻き込むためのシートで、その全長は中詰材30の背面部を含む補強領域を包囲可能な長さに設定する。
補強シート30の素材としては、引張強度が大きい公知の樹脂ネット(ジオテキスタイル、ジオグリッド等)や、ヤシ製ネット等の自然素材のネットや、織布の何れかを単種で、または任意の複数種を積層させて使用することができる。
上記した資材を使用した拘束土構造物の施工方法について説明する。
図3に示すように、支持地盤に所定の長さを有する一段目の補強シート30aを直接敷設し、その一部にピンを打設して固定する。
補強シート30a上の左方には、該シートの交差方向に向けて擁壁マット10aを載置する。擁壁マット10aは重力式であるため、その自重で補強シート30aとの間を固定可能であり、ピン等で両材を連結する必要はない。
擁壁マット10aの左方には補強シート30aが延びている。また擁壁マット10aの左方に延びる補強シート30の途中は軽く巻くり上げ、その外側に型枠40を設置する。
型枠40は内側に湾曲した成形面41を有すると共に、成形面41の外側に支持脚42を設けて形成した仮設型枠で、中詰材20の側方変形を拘束しながら成形面41の形状に合わせて成形するために機能する。
成形面41は図示するような円弧面に限定されず、種々の形状を採用できる。
図4に示すように、補強シート30aの右方を型枠40の外方に払い除けた状態で、擁壁マット10aと型枠40の間の全領域に中詰材20aを撒き出し、その後、公知の締固機を用いて締め固める(一次転圧)
中詰材20aの層厚は擁壁マット10aの高さまでとする。
一次転圧に伴う中詰材20aの側方変形に関し、中詰材20aの前方(法面側)は擁壁マット10aにより支持され、また中詰材20aの後方(背面側)は型枠40により支持されるため、一段目の中詰材20aの前後端を含め全体を均等にかつ確実に締め固めることができる。
また中詰材20aの後方(背面側)を転圧する際、型枠40の成形面41と対向して、補強シート30aの内側に成形面41と対応する形状の型枠(図示せず)を設置して転圧してもよい。内側に型枠を設置する場合、内部の型枠は撤去せずに残存させることなる。
続いて図5に示すように中詰材20aの背面を巻き込みながら、ジャッキ等の緊張治具を用いて補強シート30aを緊張して両端を固定する。
本例では補強シート30aの両端を擁壁マット10aにピンを打設して固定した場合を示すが、補強シート30aの両端の固定位置は中詰材20aの上面の任意の位置であってもよい。またピンを打設せずに、緊張した補強シート30aの両端重合部を連結するようにしてよい。要は一段目の中詰材20aの背面を巻き込んだ一段目の補強シート30aが緩まないように、その端部を固定できればよい。
補強シート30aに張力をかけながら巻き込むのは、補強シート30aの弛みを解消することと、中詰材20aの拘束力を増して、中詰材20aを補強すると共に擁壁マット10aとの一体化を図るためである。
このように補強シート30aによって、擁壁マット10aと一次転圧した中詰材20aの周囲を緊張状態で囲繞する。
つぎに抜き型枠40を撤去し、図6に示すように一段目の中詰材20aの背面部を転圧(二次転圧)して拘束土単体50を得る。
型枠40による支持のない状態で中詰材20aの背面部を二次転圧するのは、中詰材20aを強制的に側方移動させて補強シート30aの緊張力を増し、中詰材20aの増強させた拘束力に伴って中詰材20aの背面部の強度をさらに高めるためである。
二次転圧の完了により、補強シート30の背面部は丸みを帯びた形状に変形する。
図7に示すように一段目の中詰材20aの背面部に、中詰材20aと等しい高さまで裏込材21aを投入して転圧する。
以上の工程を経て一段目の拘束土単体50aの施工を終了する。
尚、複数の拘束土単体50の背面側の勾配は、法面側の勾配に合わす必要はなく、昇段する毎に拘束土単体50の全長(補強領域)を短くする等して背面側に独自の勾配をつけてもよい。
図1に示すように本発明に係る拘束土構造物は、補強シート30で緊張して包囲され、かつ側方移動がほとんどない程度まで転圧して形成した複数の拘束土単体50の積層構造体である。
拘束土構造物に大きな鉛直荷重や地震時の水平力が加わっても、同様に中詰材20の全体の側方移動を確実に防止できる。
本発明の場合、拘束土構造物を構成する複数の拘束土単体50,50……の積層体が一体構造の擬似擁壁構造体を兼ねるので、拘束土構造物に作用する背面土圧に対する耐力も従来の補強盛土と比べて格段に優れている。
また急峻な地形であって、拘束土構造物の背面側に十分なスペースを確保することが困難な現場にあっては、拘束土構造物の断面幅を過剰に広く設計したり、地山を切り込んだりする必要がない。
以降に他の形態について説明するが、その説明に際し、前記した形態と同一の部位は同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
本例のように敷設すれば、補強シート30,30の重合範囲を少なくして、経済的な施工が可能である。
本例にあっては、中詰材20の背面側に追加して設けた擁壁マット10が転圧時の型枠材として機能することになる。
本発明に係る拘束土構造物は、従来のコンクリート製の基礎床版の代替として使用することが可能である。
支持地盤が軟弱であっても、地盤を掘り下げることなく、直接地盤上に拘束土単体を多段的に所定の高さまで積み上げて構築した拘束土構造物は、支持地盤の不陸を解消できるだけでなく、積層体全体としてひとかたまりの硬質土塊(擬似床版)と化して大きな支持力を確保することができる。殊に擁壁側を急勾配に施工することが可能である。
拘束土構造物を従来のコンクリート製の基礎床版の代替として使用する場合、その上部に道路などの構造物を構築したり、或いは公知の補強盛土を重ねて構築したりしても良い。
また本発明に係る拘束土構造物だけを積み上げて従来の補強盛土の代替として使用することも勿論可能である。
本例にあっては、河川などの河床や斜面を保護する護岸構造物として使用することも可能である。
尚、本例の拘束土単体50は、擁壁マット10が法面側のみに配置した形態(図10)と、背面側にも配置した形態(図11)の何れの形態も採用可能である。
20,20a,20b 中詰材
30,30a,30b 補強シート
40 型枠
50 拘束土単体
Claims (2)
- 複数の拘束土単体を多段的に積み上げる拘束土構造物の施工方法であって、
補強領域を超える長さの補強シートを敷設する工程と、
前記補強シート上に、骨材又は土砂を封入した重量構造体である擁壁マットを載置する工程と、
前記補強シート上に補強領域の範囲に亘って中詰材を撒き出す工程と、
補強シートの外方に成形用の型枠を配置して、擁壁マットと型枠の間において、中詰材の転圧を行う工程と、
擁壁マットと中詰材とを包み込むように、前記補強シートを中詰材の上面に巻き込んで端部を固定する工程と、
その後に型枠を撤去し、型枠の支持のない状態で中詰材を二次転圧する工程を経て拘束土単体を形成し、
前記拘束土単体を多段的に積層して構築することを特徴とする、
拘束土構造物の施工方法。
- 請求項1において、
前記補強シートで包み込んだ中詰材を再度転圧することで中詰材を側方へ強制的に変形させて補強シートを再緊張することを特徴とする、
拘束土構造物の施工方法。
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