以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
本明細書において「特色」とは、広義には、基本色の記録剤であるイエロー、マゼンタ、シアンの色相とは異なる色のことを指す。また、狭義には、CIE−L*a*b*色空間において、マゼンタ、イエロー、シアンの基本色記録剤のうちの2つの記録剤の組み合わせにより記録媒体上に表現される色再現領域よりも高い明度を表現でき、且つ上記2つの記録剤の組み合わせにより表現される色再現領域内の色相角を示す色のことを指すか、あるいは、CIE−L*a*b*色空間において、マゼンタ、イエロー、シアンの基本色記録剤のうちの2つの記録剤の組み合わせにより記録媒体上に表現される色再現領域よりも高い明度および彩度を表現でき、且つ上記2つの記録剤の組み合わせにより表現される色再現領域内の色相角を示す色のことを指す。
本発明では、上述した狭義の意味の「特色」の記録剤を使用することが好ましいが、広義の意味の「特色」の記録剤を使用することもできる。
<第1の実施形態>
(プリントシステム概要)
図1は、本発明の第1の実施形態にかかるプリントシステムの構成を示すブロック図である。本実施形態のプリンタは、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの基本色インクと、レッド、グリーン、ブルーの特色インクによって印刷を行うものであり、そのためにこれら7色のインクを吐出する記録ヘッドが用いられる。図1に示すように、本実施形態のプリントシステムは、この特色インクを用いる記録装置としてのプリンタとホスト装置もしくは画像処理装置としてのパーソナルコンピュータ(PC)を有して構成されるものである。
ホスト装置のオペレーティングシステムで動作するプログラムとしてアプリケーションやプリンタドライバがある。アプリケーションJ0001はプリンタで印刷する画像データを作成する処理を実行する。この画像データもしくはその編集等がなされる前のデータは種々の媒体を介してPCに取り込むことができる。本実施形態のPCは、先ずディジタルカメラで撮像した例えばJPEG形式の画像データをCFカードによって取り込むことができる。また、スキャナで読み取った例えばTIFF形式の画像データやCD−ROMに格納される画像データをも取り込むことができる。さらには、インターネットを介してウエブ上のデータを取り込むことができる。これらの取り込まれたデータは、PCのモニタに表示されてアプリケーションJ0001を介した編集、加工等がなされ、例えばsRGB規格の画像データR、G、Bが作成される。そして、印刷の指示に応じてこの画像データがプリンタドライバに渡される。
本実施形態のプリンタドライバはその処理として、前段処理J0002、後段処理J0003、γ補正J0004、ハーフトーニングJ0005、および印刷データ作成J0006を有している。前段処理J0002は色域(Gamut)のマッピングを行う。本実施形態の前段処理J0002は、sRGB規格の画像データR、G、Bによって再現される色域を、本プリントシステムのプリンタによって再現される色域内に写像する関係を内容とする3次元LUTを用い、これに補間演算を併用して8ビットの画像データR、G、Bをプリンタの色域内のデータR、G、Bに変換するデータ変換を行う。後段処理J0003は、上記色域のマッピングがなされたデータR、G、Bに基づき、このデータが表す色を再現するインクの組み合わせに対応した色分解データY、M、C、K、R、G、Bを求める処理を行う。本実施形態では、この処理は前段処理と同様3次元LUTに補間演算を併用して行う。γ補正J0004は、後段処理J0003によって求められた色分解データの各色のデータごとにその階調値変換を行う。具体的には、本システムで用いるプリンタの各色インクの階調特性に応じた1次元LUTを用いることにより、上記色分解データがプリンタの階調特性に線形的に対応づけられるような変換を行う。ハーフトーニングJ0005は、8ビットの色分解データY、M、C、K、R、G、Bそれぞれについて4ビットのデータに変換する量子化を行う。本実施形態では、誤差拡散法を用いて8ビットデータを4ビットデータに変換する。この4ビットデータは、記録装置におけるドット配置のパターン化処理における配置パターンを示すためのインデックスとなるデータである。最後に、印刷データ作成処理J0006によって、上記4ビットのインデックスデータを内容とする印刷イメージデータに印刷制御情報を加えた印刷データを作成する。なお、上述したアプリケーションおよびプリンタドライバの処理は、それらのプログラムに従ってCPUにより行われる。その際、プログラムはROMもしくはハードディスクから読み出されて用いられ、また、その処理実行に際してRAMがワークエリアとして用いられる。
記録装置は、データ処理に関してドット配置パターン化処理J0007およびマスクデータ変換処理J0008を行う。ドット配置パターン化処理J0007は、実際の印刷画像に対応する画素ごとに、印刷イメージデータである4ビットのインデックスデータ(階調値情報)に対応したドット配置パターンに従ってドット配置を行う。このように、4ビットデータで表現される各画素に対し、その画素の階調値に対応したドット配置パターンを割当てることで、画素内の複数のエリア各々にドットのオン・オフが定義され、そして1画素内の各エリアごとに「1」または「0」の吐出データが配置される。このようにして得られる1ビットの吐出データはマスクデータ変換処理J0008によってマスク処理がなされる。すなわち、記録ヘッドによる所定幅の走査領域の記録を複数回の走査で完成するための各走査の吐出データを、それぞれの走査に対応したマスクを用いた処理によって生成する。走査ごとの吐出データY、M、C、K、R、G、Bは、適切なタイミングでヘッド駆動回路J0009に送られ、これにより、記録へッドJ0010が駆動されて吐出データに従ってそれぞれのインクが吐出される。なお、記録装置における上述のドット配置パターン化処理やマスクデータ変換処理は、それらに専用のハードウエア回路を用い記録装置の制御部を構成するCPUの制御の下に実行される。なお、これらの処理がプログラムに従ってCPUにより行われてもよく、また、上記処理がPCにおける例えばプリンタドライバによって実行されるものでもよく、本発明を適用する上でこれら処理の形態が問われないことは以下の説明からも明らかである。
以上説明した本実施形態のプリンタは、特色インクとしてレッド、グリーン、ブルーを用いるものであり、これら特色インクは、基本色インクであるイエロー、マゼンタ、シアンのうちの2つの混色で作られる2次色の同じ色相の色よりも高い彩度および明度を表現できるものであることが好ましいが、これには限定されず、少なくとも上記2次色よりも高い明度を表現できるインクであればよい。すなわち、本実施形態において好適に用いることができる「特色」とは、CIE−L*a*b*色空間において、マゼンタ、イエロー、シアンの基本色記録剤のうちの2つの記録剤の組み合わせにより記録媒体上に表現される色再現領域よりも明度が高く、且つ上記2つの記録剤の組み合わせにより表現される色再現領域内の色相角を示す色のことを指す。更に、上記色再現領域よりも高い彩度を表現できる色であれば尚好ましい。
また、本実施形態の特色インクレッドは、例えば、モニタなどのsRGB規格の入力画像データR、G,Bが再現できる色空間より高い彩度および明度を再現することを可能とするものである。なお、本実施形態では、記録剤としてインクを用いるプリンタについて説明するが、トナーなどの他の記録剤を用いるプリンタ、複写機などに対してもインクに固有の説明を除いて妥当なものであることは、以下の説明からも明らかである。
また、本明細書では、記録剤であるインクについてCyan、Magenta、Yellow、Black,Red、Greenなど英語表記またはシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなど片仮名表記で表し、色もしくはそのデータ、また色相をC、M、Y、K、R、Gなど英大文字の1字もしくはそれと英小文字1字との組み合わせで表すものとする。すなわち、Cはシアン色またはそのデータないし色相を、Mはマゼンタ色またはそのデータないし色相を、Yはイエロー色またはそのデータないし色相を、Kはブラック色またはそのデータないし色相を、Rはレッド色またはそのデータないし色相を、Gはグリーン色またはそのデータないし色相を、Bはブルー色またはそのデータないし色相を、それぞれ表すものとする。
さらに、本明細書において「画素」とは、階調表現できる最少単位のことであり、複数ビットの多値データの画像処理(上記前段、後段、γ補正、ハーフトーニングなどの処理)の対象となる最少単位である。ドット配置パターン化処理では、1つの画素は2×4のマスで構成されるパターンに対応し、この1画素内の各マスはエリアと定義する。この「エリア」はドットのオン・オフが定義される最少単位である。これに関連して、上記前段処理、後段処理、γ補正にいう「画像データ」は処理対象である画素の集合を表しており、各画素が本実施形態では8ビットの階調値を内容とするデータであり、ハーフトーニングにいう「画素データ」は処理対象である画素データそのものを表しており、本実施形態のハーフトーニングでは、上記の8ビットの階調値を内容とする画素データが4ビットの諧調値を内容とする画素データ(インデックスデータ)に変換される。
以下、上述した本実施形態のプリントシステムの処理ブロックもしくは要素について詳細に説明する。
(前段処理)
本実施形態の前段処理は、図1にて前述したように、LUTを用いた格子点データの読み出しおよびそれに基づく補間処理によって、sRGB規格の入力データR、G、Bを変換し色域の変換されたデータR、G、Bを生成するものである。この前段処理のLUTはその格子点データとして、以下で説明する写像の最終的な結果である写像色再現域を実現する出力データR、G、Bを格納したものである。すなわち、このLUTが示す変換関係が本実施形態の色域変換方法の実施の内容を表している。しかし、この色域変換方法の実施はこのようなLUTを用いた形態に限られないことはもちろんである。例えば、入力データR、G、Bに対して上記変換関係を表す式に従った演算をその都度行い色域変換後のデータを求める形態であってもよい。
図2は、本実施形態のLUTの格子点データを生成する処理を示すフローチャートである。
この処理は、先ず、図1に示したアプリケーションJ0001で作成されモニタなどに表示される画像データの色再現域について、主に、低彩度領域の明度を圧縮する写像を行い第1中間写像再現域を生成し、次に、この第1中間写像再現域について、主に、高彩度領域で明度を伸張する写像を行い第2中間写像再現域を生成し、最後に、第2中間写像再現域について彩度を調整する写像を行うことにより、最終的な、プリンタ(記録装置)の色再現域に略一致した写像色再現域を生成する処理である。そして、以上の写像によって実現される色域変換は、モニタの色再現域を規定する入力データR、G、Bによって格子点が特定され、その特定される格子点に対応付けられた、上記最終的な写像色再現域を規定する出力データR、G、Bが格子点データとして出力されることにより実施されることになる。また、このLUTの生成では、上記の写像を均等色空間であるCIEL*a*b*において行い、最終的に得られたL*a*b*の値がデータR、G、Bに対応付けられて格子点データを得るものである。
なお、以下の格子点データ生成処理の説明では、本実施形態の特色の記録剤であるRedインクの色相Rsについて図示し上記の各写像を説明する。このRedインクは、上述したように、その色相Rsおよびその近傍の色相で低明度部を除いてモニタの色域よりもプリンタの色域をより広くすることができるものである。なお、他の色相についても、以下で示す処理と同様に写像を行うことにより、格子点データを生成することができることは以下の説明から明らかである。
図2において、まず、ステップS101において、カラーモニタのデータなどアプリケーションJ0001(図1)からのデータR、G、Bによって規定される色再現域情報とプリンタの色再現域情報を取得する。これらの情報は、本LUT生成処理に先立って求められ、所定のメモリに格納されているものである。また、これら情報はCIEL*a*b*空間において規定されたものであり、上記カラーモニタの色再現域情報はそのデータR、G、Bによって規定される格子点ごとのL*a*b*値によって構成されている。次に、ステップS102において、最終的な写像結果たる写像色再現域の境界を生成する。この色再現域境界は、本実施形態ではプリンタの色再現域と略同様のものである。
図3は、色相Rsについて、以上のカラーモニタの色再現域、プリンタの色再現域および最終の写像色再現域をそれぞれ示す図である。同図において、Z401はモニタの色再現域(一点鎖線で囲まれた色域)、Z402は最終的な写像色再現域(実線で囲まれた色域)、Z403はプリンタの色再現域(破線で囲まれた色域)をそれぞれ示す。写像色再現域Z402はプリンタの色再現域Z403に略一致し、また、この色相Rsではプリンタの色再現域Z403が低明度部を除きモニタの色再現域Z401より広いことがわかる。
ステップS103では、モニタ色再現域に対して明度および色相に関する写像を行い第1中間写像再現域を生成する。この写像の詳細は後述するが、その写像の結果を示す図4を参照して簡単に説明する。図4において、Z201は色相Rsにおけるモニタ色再現域(一点鎖線)、Z202は同色相の第1中間写像色再現域(実線)、Z203は同色相におけるプリンタ色再現域(破線)をそれぞれ示している。この写像では、モニタ色再現域内の色に対して明度成分(L*成分)と色度成分(a*、b*成分)を分離し、同図に示すようにモニタ色域の略中間彩度より低い彩度領域で、明度成分を非線型に圧縮する写像をする。また、色度成分については色相の調整を適切に行う。この処理によって、モニタ色再現域Z201が第1中間写像色再現域Z202に写像される。この明度/色相写像を終了すると、ステップS104で、上記で得た写像結果から第1中間写像色再現域を示す情報を生成しそれをメインメモリに格納する。
次に、ステップS105において、第1中間写像色再現域情報が示す色域に対して明度を調整し、第2中間写像色再現域の境界を生成する。図5は、この色再現域境界を示し、同図におけるZ302で示される色域の境界が第2中間写像色再現域の境界を示す。次に、ステップS106において、第1中間写像色再現域から第2中間写像色再現域への写像を行う。この写像は主に、第1中間写像色再現域の略中間彩度より高彩度側で明度を伸張するものであり、その詳細は後述するが写像の結果を示す図5を参照して簡単に説明する。図5において、Z301は特色インクRedの色相Rsにおける第1中間写像色再現域、Z302は同色相における第2中間写像色再現域、Z303は同色相におけるプリンタ色再現域をそれぞれ示している。第1中間写像色再現域内の色に対して明度成分と色度成分を分離し、色度成分を一定としたまま明度成分のみ非線型に伸張する写像を行う。この写像により、第1中間写像色再現域Z301は第2中間写像色再現域Z302に写像され、その写像の結果は、第2中間写像色再現域の情報としてメインメモリに格納される。
最後にステップS107において、第2中間写像色再現域を最終的な色域である写像色再現域への写像を行い、彩度に応じてその圧縮、伸張を行う。この彩度に関する写像処理の詳細は後述するが、図3を参照して簡単に説明する。図3において、Z401は特色インクRedの色相Rsにおける第2中間写像色再現域、Z402は同色相の写像色再現域、Z403は同色相のプリンタ色再現域をそれぞれ示している。本ステップの写像は、第2中間写像色再現域Z401内の色に対して明度成分と色度成分を分離し、明度成分を一定としたまま、色度成分における彩度成分を非線型に写像するものである。この写像により、第2中間写像色再現域Z401は最終的な写像色再現域Z402に写像される。
以下、上述したステップS103、S106およびS107の写像処理の詳細について説明する。
図6は、図3に示したステップS103の明度/色相写像処理の詳細を示すフローチャートである。
図6において、先ず、ステップS501で写像変換の対象となる色Mを指定する。この色Mは、本生成に係わるLUTの一つの格子点に対応した色であり、その格子点を特定するデータR、G、Bに対応したL*a*b*の値で表されるものである。本LUT生成に係る写像処理は格子点(で特定される色)ごとに行われる。
次に、ステップS502では、色相変換に用いる色相入出力関数h(・)を求める。これは予め所定のメモリに格納されている関数情報を読み出して用いるものであり、この色相入出力関数は色(明度、彩度)に依らず一定のものを用いる。この色相入出力関数h(・)は、本実施形態では図7に示すように色相の変換を行うものである。図7に示すように、概略、色相Gあたりの色相から色相Cあたりの色相にかけて(角度π前後)色相角をわずかに小さくし、色相Cあたりの色相から色相Mと色相Rの中間の色相(角度2π)まで色相角をわずかに大きくする変換を行い、他の色相角では色相角は変化しない。従って、特色Redの色と同じ色相Rsでは、その色相角は上記色相入出力関数h(・)による演算によって変化しない写像が行われる。
ステップS503では、上記のように求めた色相入出力関数を用いて、次式のように色相変換を行う。
Hue_m_mapped=h(Hue_m)
ここで、Hue_mは色Mの色相(角)であり、Hue_m_mappedは変換後の色相(角)である。
次に、ステップS504において、明度成分の変換を行う。この変換は、色度に依らない1つの入出力関数l(・)を用いて、Lmapped=l(Lin)と演算される。この入出力関数l(・)は、本実施形態では図8に示す関数である。この図からわかるように、この関数は、比較的明度の低い部分および高い部分で明度を圧縮する(低くする)変換を行う。
最後に、ステップS505で、以上説明した明度/色相写像処理がLUTの総ての格子点について行われたか否かを確認し、総ての格子点について写像処理が終了するまでステップS501〜S504を繰り返す。以上の処理により、図4に示すように、モニタ色再現域Z201は第1中間写像色再現域Z202へと写像される。
図9は、図2に示したステップS106の明度調整色域写像処理の詳細を示すフローチャートである。
図9において、先ず、ステップS801で、写像変換の対象となる色Mを指定する。この対象となる色Mは第1中間写像色再現域における色であって、図6のステップS501で指定した、モニタ色再現域における色を指すものではない。すなわち、モニタ色再現域において指定される色Mは格子点に直接対応しており、本ステップで指定する色Mは、そのモニタ色再現域上の色Mが第1中間写像再現域に写像された色として指定されるものである。
次に、ステップS802では、図10に示すように、ステップS801で指定した色Mと同一の色度における第1中間写像色再現域Z301(実線)の上部境界Buと下部境界Blを計算する。そして、ステップS803では、指定された色Mと同一の色度における第2中間写像色再現域Z302(一点鎖線)の上部境界Bu_mappedと下部境界Bl_mappedとを算出する。なお、図10において、破線により示される色再現域はプリンタ色再現域Z303である。
続いて、ステップS804において、以上求めたパラメータから明度調整の写像を行う入出力関数p(・)を算出する。本実施形態では、入出力関数p(・)を下記の条件を満たす関数として算出する。ここで、LBlを下部境界Blの明度、LBlmをBl_mappedの明度、LBuをBuの明度、LBumをBu_mappedの明度とするとき、その条件は、
p(・)の台は[LBl、LBu]
p(LBl) = LBlm
p(LBu) = LBum
である。入出力関数p(・)は上記条件を満たすよう算出されるとともに、図11に示すように、台の中間部(概略L*が64〜69)において明度がほぼ保たれる一方、低明度部(概略64以下)では圧縮され、高明度部(概略69以上)では伸張される。因みに、LBl=59、LBlm=62、LBu=75、LBum=80である。
ステップS805では、ステップS804にて上記のように求めた入出力関数p(・)を用いて、色Mについてその写像前の明度Lmに基づき写像後の明度Lm_mappedを、Lm_mapped= p(Lm)のように求めて明度調整の写像を行う。
以上のような入出力関数p(・)を用いた写像を行い、続いて図2のステップS107によって彩度を変換する写像を行うことにより、最終的に得られる写像色再現域では、特に、色相Rsの高彩度領域において変化率が1以上の関数を用いて写像が行われる(図11の高明度部)。これにより、モニタ色再現域の高彩度部の明度変化がより大きな明度変化となるように色域の変換が行われることになる。
最後に、ステップS806で、以上説明した明度調整色域写像が生成に係るLUTの総ての色(格子点)について行われたか否か確認し、総ての格子点について処理が終了するまでステップS802〜S805を繰り返す。以上の処理により、図5に示すように、第1中間写像色再現域Z301は第2中間写像色再現域Z302へと写像される。
最後に、図12は、図2のステップS107の彩度写像処理の詳細を示すフローチャートである。
図12において、最初に、ステップS1101で写像対象となる色Mを指定する。この色Mは第2中間写像色再現域における色であり、図9のステップS801にて前述したように、本LUT生成処理に係る格子点に対応して取得されるものである。次に、ステップS1102にて、指定された色Mに対する彩度調整値Chを、予め定められた彩度調整値算出関数ChTune(・)を用いて次のように算出する。ここで、Hue_mは色Mの色相であり、彩度調整値算出関数ChTune(・)は、本実施形態では図13のような関数となる。
Ch=ChTune(Hue_m)
次に、ステップS1103で、図14に示すように、指定された色Mと同一の明度/同一の色相(同図は特色インクの色と同じ色相Rs)における写像色再現域Z402(破線)の境界Bpを計算し、次に、ステップS1104で、同様に、色Mと同一の明度/同一の色相における第2中間写像色再現域401(実線)の境界Biを計算する。
続いてステップS1105では、以上のステップにおいて算出した色Bp、色Biに基づいて彩度変換を行う入出力関数q(・)を算出する。ここで、入出力関数q(・)は、色Bpの彩度をcp、色Biの彩度をciとしたとき、本実施形態では下記の条件を満たすものである。
q(・)の台は[0、ci]
q(0)=0
q(ci)=cp
q’(0)=Ch
q’(ci)=γ、γ:γ>0、
q’(x)≠0、x:0≦x≦ci
なお、γは最大彩度付近における彩度変換の拡大率/圧縮率を制御する値であり予め定められている。また、q‘はqの微分関数を表す。
図15は、この入出力関数のうち、特色インクRedと同じ色相Rsの高明度部における入出力関数q(・)を示す図である。同図に示すように、彩度調整値Ch(=q’)が1.0であるため、低〜中彩度部では彩度を保持するように変換されるとともに高彩度部で伸張される。この場合、この色相では、肌色など比較的彩度が低い色はその色が保持されて変換が行われるとともに、高彩度部の夕焼けの赤をより鮮やかに再現する変換が行われる。
続いてステップS1106において、ステップS1105で求めた入出力関数q(・)を用いて、色Mの彩度を変換する。ここで色Mの彩度をCorg、変換後の彩度をCmodと表記すると、Cmod=q(Corg)となる。
最後に、ステップS1107において、以上の彩度写像処理がLUTの総ての格子点(色M)について行われたか否か確認し、総ての格子点について彩度写像処理が終了するまでステップS1102〜S1106を繰り返す。以上説明した処理により、図3に示すように、第2中間色再現域Z401は写像色再現域Z402へと写像される。
以上説明したように、本実施形態の前段処理にかかるLUT生成処理によれば、特に、特色インクRedと同じ色相Rsおよびその近傍の色相では、図16に示すような、モニタ色再現域Z201(一点鎖線)から最終的な写像色再現域Z401(実線)ヘの変換関係を得ることができる。すなわち、赤やオレンジなど、特色インクRedの色相やその近傍の色相の色域については、モニタの色域を超えた色域を得る。その結果、これらの色相では、図16に示すようにsRGB規格のデータR、G、Bによるモニタの色再現域の最大彩度部の明度より高明度側で彩度を強調した変換、例えば、高彩度部の夕焼けの赤をより鮮やかに再現する変換が可能になる。これとともに、この高彩度部では、図11にて前述したように、高い明度ほど明度変化を大きくする変換を行い、特色インクにより実現される色域を有効に利用した色域変換が可能となる。
なお、上述した前段処理の説明では、特色インクRedを用いることによってプリンタの色域がモニタの色域より大きくなる場合において、特に、Redインクと同じ色相およびその近傍の色相では、高彩度部においてその彩度を伸張するとともに高い明度ほど明度変化を大きくする色域変換を行うことについて説明したが、他の特色記録剤を用いることにより、同様にプリンタの色域がモニタの色域より大きくなる色域の色相では、同様の色域変換を行うことが可能である。
(後段処理)
本実施形態の後段処理は、図1にて前述したように、LUTを用いた格子点データの読み出しおよびそれに基づく補間処理によって、入力データR'、G'、B'を変換し色分解データC、M、Y、K、R、G、Bを生成する。図17にその概念が示されるLUTはその格子点データとして、以下で説明する階調値ないし色域を実現するべく色分解データを格納したものである。すなわち、このLUTが示す変換関係が本実施形態の色分解データの生成方法の実施の内容を表している。しかし、この色分解データ生成方法の実施はこのようなLUTを用いた形態に限られないことはもちろんである。例えば、入力データR'、G'、B'に対して上記変換関係を表す式に従った演算をその都度行い色分解データを求める形態でもよい。
図18は、本実施形態の色分解データの全体によって再現される色域(Gamut)を模式的に示す図であり、CIEL*a*b*空間における1つのa*b*平面を表している。
同図において、実線で示される6角形は、本実施形態で用いるCyan、Yellow、MagentaおよびBlackの基本色各インクによって表現できる色域を示し、また、破線はこれら基本色インクに加えて本実施形態の特色インクRed、GreenおよびBlueを用いたとき表現できる拡大された色域を示している。この色域において、色相Rs、Bs、Gsはそれぞれ特色インクRed、Blue、Greenの色相である。これから明らかなように、本実施形態の特色インクは、その色相Rs、Bs、Gsが、それぞれ色相YとRの間、色相MとBの間、色相GとYの間に存在するように選択されるものである。また、本実施形態で用いる特色インクRed、Green、Blueは、その詳細が後述されるように、それぞれ特色インクを用いない、基本色Yellow、Magenta、Cyan、もしくはこれらにBlackを加えたインクシステムで実現される同じ色相の色と比較して、より高い明度および彩度の色域を実現できるものである。本明細書では、特色記録剤の「彩度が高い」または「明度が高い」とは、特にことわらない限りこの意味で用いる。このように高い彩度および明度によって、上記インクシステムを用いる場合の色域より拡大された色域を再現することができる。以下では、本発明の一実施形態に係わる特色インクRedがどのように用いられ、すなわち、LUTの格子点にRedインクに対応した色分解データRがどのように設定され、その結果、どのように色域が拡大されるかについて、2つの特徴を説明する。
第1の特徴は、特色記録剤であるRedインクを、図18に示す総ての色相の低明度側、詳しくはそれぞれの色相の最大彩度より低明度側(K側)で使用するよう色分解データを生成する点である。このように低明度側で彩度および明度の高い特色Redインクを用いることにより、明度の低下に対する彩度の低下の割合を小さくすることができ、結果として再現できる色域を広げることが可能となる。
図19は、上記低明度側におけるRedインクの用い方の一例を表しており、L*a*b*空間における色相Rの最大彩度点から明度の最も低い色Kの点を通り色相Cの最大彩度点に至る線に沿った格子点の色分解データを示す図である。
同図に示すように、それぞれの低明度領域R−KおよびK−CではYellowおよびMagentaインクとともにRedインクが用いられる。仮に、2次色によって色相Rを構成することができるYellowインクとMagentaインクを用いる場合には、それらが基本的に彩度および明度がRedより低いことおよび2次色であることによって明度の低下に対する彩度の低下が比較的急激となる。これに対し、本実施形態では、YellowおよびMagentaインクとともに彩度および明度の高いRedインクを用いること、およびそれによって用いられるYellowおよびMagentaインクの量が相対的に少なくなることにより、明度の低下に対する彩度の低下の割合を小さくすることができる。その結果、低明度側における色域を彩度および明度の方向に広げることが可能となる。
上記のように総ての色相の低明度側でRedインクを用いることのうち、特に、Redインクの色相Rsの反対の色相およびその近傍の色相であるB−C−GについてRedインクを用いることは、上述した色域の拡大に加え、色のつながりをより滑らかにすることを可能にするものである。以下、この点について説明する。
図17は、色分解データ生成のためのLUTを概念的に示す図である。このLUTの格子点からなる1つの面RK‐YG−WC−MBを例に採り、グラデーションもしくは色のつながりの不連続について説明する。この面は、RK(RとKを結ぶラインの中間点;R,G,B=128,0,0)、YG(YとGを結ぶラインの中間点;R,G,B=128,255,0)、WC(WとCを結ぶラインの中間点;R,G,B=128,255,255)、MB(MとBを結ぶラインの中間点;R,G,B=128,0,255)の各格子点を頂点とする面であり、その辺上および内部の各格子点のデータとして色分解データが格納されている。例えば比較例として、図68について上述した特許文献1に記載の色分解データ生成によれば、上記の面RK‐YG−WC−MBの1つの頂点YGと辺WC−MB上の任意の中間点MPとを結んだ直線YG‐MP上の格子点データの色分解データは、記録剤Redについて図20に示すものとなる。すなわち、記録剤Redは、直線YG‐MPの途中の使用開始点mから用いられる。この結果、開始点の前後で使用する記録剤の組み合わせが大きく変化する。この場合、図21に示すように、格子点YGの(色分解データによって再現される)色から格子点MBおよびWCそれぞれの色にかけて変化する色のグラデーション画像において、グラデーションもしくは色の不連続を生じ、直線YG‐MP上の使用開始点mを連ねた部分で擬似輪郭nを発生することがある。
図20において記録剤Redが使用されない領域は、図68に示すL*a*b*空間におけるRedの色相Rsの反対色相およびその近傍色相の低明度側の領域に対応している。本実施形態では、上述したように、この領域にRedインクを用いる。図22はこの様子を表しており、直線YG‐MPに沿った各格子点の色分解データを示す図である。同図に示すように、この直線に沿って用いられるインクの切り替えが生じないため、この直線に沿ったグラデーションもしくは色の変化が滑らかになり、例えば印刷画像においてグラデーションの不連続に起因した擬似輪郭の発生を未然に防ぐことができる。
Redインクの用い方の第2の特徴は、色相Rsおよびその近傍の色相において特色記録剤であるRedインクを用いることにより、特に高い明度および彩度で色域が拡大するが、それに伴って低明度側で色域が狭くなることを防ぐよう色分解データを生成し、全体として色域を拡大するようにすることである。
図23は、図18に示す色域のうち、色相Rの最大彩度点を含むa*b*平面における色相Y−Rs−R−Mの彩度が最も大きい色についてそれらを再現する階調値(色分解データ)を示す図である。
図23に示すように、本実施形態は、色相Rの最大彩度点で特色インクRedと基本色インクYelowおよびMgentaの3種類のインクを使用するような色分解データとする。これは、上記のとおり全体として色域を拡大するためである。以下、この点について説明する。
図24は、色相Rの最大彩度点を特色インクRedのみで表現する場合に、図23に示す色相と同じ色相Y−Rs−R−Mについて同様の色分解データを示す図である。仮にこのような色分解データとした場合、インクYellowはY−Rs−R間でのみ使用され、色相Rのプライマリ色(本明細書では、その色相の最大彩度を表す色をいう)は上述のように特色インクRedのみで表現される。
しかしながら、この場合には、図18にて前述したように本実施形態の特色インクRedの色相Rsが、特色を用いないC、M、Y、Kシステムの色相Rより色相Yの方向に寄って位置しているため、この特色を用いないシステムで表現できていた色が表現できなくなることがある。その様子を図25を用いて説明する。同図に示す実線で表された色域は、色相R、G、Bそれぞれの表現を特色インクRed、Green、Blueそれぞれ単独で行う場合を示し、破線で表された色域は上記特色を用いないシステムによるものである。この図から明らかなように、色相R等に特色インクのみを用いる場合の色域は、上記特色を用いないシステムの色域を完全にカバーできないことになる(図25の斜線で示す色域)。
そこで、図26に示すように、色相Rのプライマリ色を特色インクRedとMagentaとの2次色で表現することが考えられる。この場合、L*=85近辺の明度を持つ特色インクRedと、これのほぼ半分のL*=40近辺の明度を持つMgentaインクを混色させて表現される色相Rのプライマリ色の明度はL*=70となる。これに対し、上記特色を用いないシステムでは、色相Rのプライマリ色を、L*=90近辺の明度を持つYellowインクとL*=40近辺の明度を持つMgentaインクをほぼ同量ずつ混色させて表現し、それによる色相Rのプライマリ色はL*=60近辺となる。このように色相Rでの明度差はそれほど大きくはないが、この場合には、しかしながら明度の低い部分で上記特色を用いないシステムで再現できていた色域を再現できないことがある。
図27はこの様子を説明する図である。同図は、色相Rにおける色域をL*a*b*空間の明度L*と彩度c*の平面で表したものである。図において、色域oは、図26に示したように色相Rのプライマリ色を特色RedインクとMagentaインクとの2次色で構成する場合の色域を示す。一方、色域pは、色相Rのプライマリ色を、上記特色を用いないインクシステムによって再現した領域であり、具体的にはYとMとの2次色で構成する場合の色域を示している。それぞれの色域では最大彩度の点より下側のより明度の低い部分はその最大彩度の色からブラックKにかけてグラデーションを表現すべく補色(反対色)の記録剤であるCyan、Green、BlueおよびBlackを加えて行く。この場合、図示されるように、明度の高い領域においては、特色Redを使用することにより表現できる色空間が広がっているものの、斜線で示される領域qのように、上記特色を用いないシステムの色域のうち明度の低い領域で再現できない色域を生じる。
図28は、本実施形態に係わる色相Rの色域Aを図27と同様に示す図であり、この色域Aは図23に示した色分解テーブルによって実現されるものである。詳しくは、色相Rの最大彩度点の色は図23に示すように特色Red、YellowおよびMagentaの3次色で表し、この最大彩度点より高明度側の色も同様の3次色で表す。また、最大彩度点より低明度側ではこれらにCyan、Green、BlueおよびBlackを加えて行く色分解データとする。なお、これら低明度側の色分解データを示す本実施形態にかかる図19および図22では、Green、Blueの色分解データについてはそれらの図示は省略されている。
図28に示すように、色域Aの最大彩度の色を上記の3次色で表すことによって、上述したプライマリ色を特色RedインクとMagentaインクとの2次色で構成する場合の色域oの場合の明度はわずかに低いものとなる。すなわち、本実施形態においては、色相Rのプライマリ色を構成する記録剤を特色インクRed、YellowおよびMagentaとするとともに(図23の色相R参照)、低明度側ではこれらにCyan等を加えて行くことにより、明度の高い領域においては、特色Redを使用することにより表現できる色空間を広げることができる。これとともに、この色相の低明度側の色域も全体として広げることができ、上述した領域qをもカバーすることができる。
なお、上述した色相Rの色域の外郭の色分解は、図27において、領域oの最大彩度より高明度側で特色Red+Mgentaの2次色とし、最大彩度およびそれより低明度側を上述した本実施形態と同様のインクの用い方とすることにより、図28に示される領域o、A、p、qを全て含むことは可能であるが、その場合には、最大彩度点から初めてYellowが用いられることによって滑らかな色のつなぎを実現できないおそれがある。
なお、上述した実施形態では特色記録剤であるRedについてそれを用いた色域拡大の2つの特徴を説明したが、このことは、本実施形態で用いるGreen、Blueを含む他の特色記録剤についても同様に適用することができる。すなわち、これらの記録剤が、Yellow、Magenta、Cyanなどの基本色記録剤の2次色によって実現される彩度、明度より高い彩度、明度を有している場合には、上述した説明を同様に適用できることは明らかである。
以上説明した色分解データをLUTの格子点データとして設定する具体的手法は公知の手法を用いることができる。例えば、Y、M、C、K、R、G、Bのいくつかの組み合わせについて、それを印刷データとして本実施形態のプリンタによってパッチを印刷する。そして、図28にて上述した色相Rの色や、色相G、Bなど他の所定の色相の色域について図19や図22に示した色分解の色を目標色とし、その目標色を実現する色分解データY、M、C、K、R、G、Bの組を、上記パッチを測色して得られるL*a*b*空間の測色データを補間することによって求める。このように求めた色分解データY、M、C、K、R、G、Bは、図17に示したLUTにおいて対応する入力データR、G、Bで特定される格子点の格子点データとして設定される。そして、以上のように所定の色相それぞれについて求められた格子点データを補間して他の格子点について格子点データ(色分解データ)を求めることにより、図1で前述した後段処理J0003で用いるLUTを作成することができる。
(ハーフトーン処理部)
以下に、ハーフトーン処理部J0005について説明する。なお、以下の説明においては、複数ビットで表される多値データを処理する画像処理の対象となる最小の構成単位を画素と称し、当該画素に対応するデータを画素データと称することにする。なお、複数ビットで表される多値データの画像処理とは、図1に照らせば、例えば、RGBの8ビットデータをプリンタで用いるインク色に対応したCMYKRGBそれぞれの8ビットデータに変換する処理を行う後段処理や、CMYKRGBの8ビットデータをCMYKRGBの4ビットデータに量子化する処理を行うハーフトーン処理等のことである。また、別の見方をすれば、「画素」とは、階調表現可能な最小単位のことであり、複数ビットの階調値情報を有するものである。
図29は、本発明の実施形態に適用可能なハーフトーン処理部の構成を説明するためのブロック図である。図において、B0001は画素データの入力端子、B0002は累積誤差加算部、B0003は入力画素データを2つ以上の階調数に変換する際の量子化閾値を設定する端子、B0004は量子化部、B0005は量子化誤差を演算する誤差演算部、B0006は量子化誤差を拡散する誤差拡散部、B0007は累積誤差を格納する累積誤差メモリ、およびB0008は一連の処理後に形成された画素データの出力端子である。
ハーフトーン処理部の入力端子B0001には、後述する画像走査部が全画像より選択した画素の、画素データが順次入力される。ハーフトーン処理部は、入力されて来た個々の画素データに対し順番に処理を施し、出力端子B0008より1画素分ずつ出力していく構成となっている。
図31は、画像走査部が行う、処理走査の様子を示した図である。画像走査部は、複数の画素が配列して構成される画像データから、処理を行うべき画素を1画素ずつ選択し、ハーフトーン処理部の入力端子B0001に画素データを入力する。図において、各マス目は個々の画素を示し、B0015は画像の左上端に位置する画素、B0016は画像の右下端に位置する画素をそれぞれ示している。
画像の処理走査は、まず、画像領域の左上端の画素B0015を選択する画素(以下着目画素とも言う)とすることで開始され、続いて、図の矢印の方向に右方向に1画素ずつ着目画素を切り替えながら処理を進めていく。最上端列の右端まで処理が終了すると、次に1段下の画素列の左端画素に着目画素を移す。このような順番で、図の矢印に沿って処理走査を進めて行き、最終画素となる右下端の画素B0016まで処理が到達すると、本画像の処理走査は完了する。
図30は、図29のハーフトーン処理部が行う動作の工程を説明するためのフローチャートである。
処理が開始されると、上記画像走査部により、処理すべき画像データが入力される(ステップB0009)。
次に、累積誤差加算部B0002において、入力された画素データに対し、累積誤差メモリB0007に格納された、画素位置に対応する累積誤差値が加算される(ステップB0010)。
図32は、累積誤差メモリB0007に格納されている、データおよびデータの格納形態を説明するための図である。累積誤差メモリB0007には、1つの記憶領域E0とW個の記憶領域E(x)(x=1〜Wの整数)がある。ここで、Wは処理対象となっている画像データの横方向の画素数を表している。また、それぞれの領域には、注目画素に適用される量子化誤差E(x)が格納されている。なお、量子化誤差の値は、後述する方法によって得られるものであるが、処理開始当初は全ての領域において、初期値0にて初期化されるものとする。
ステップB0010において、累積誤差加算部B0002では、入力された画素データに対し、当該画素の横方向の位置x(0<x≦W)に対応した誤差メモリE(x)の値が加算される。すなわち、入力端子B0001に入力された画素データをI、ステップB0010による累積誤差加算後の画素データをI´とすると、
I´=I+E(x)
となる。
続くステップB0011では、累積誤差加算後の画素データI´と閾値設定端子B0003により入力された閾値とを比較し、量子化処理を行う。本実施形態では、8つの閾値と累積誤差加算後の画素データI´とを比較することにより、量子化後の画像データを9段階に振り分けて、出力端子B0008に送る出力画素データの値を決定するものとする。すなわち、累積誤差加算部B0002から入力された画素データの値が0から255の範囲の整数値とすれば、出力階調値Oは次式により決定される。
O=0 (I´<16) ・・・(式1)
O=32 (16≦I´<48) ・・・(式2)
O=64 (48≦I´<80) ・・・(式3)
O=96 (80≦I´<112) ・・・(式4)
O=128 (112≦I´<144) ・・・(式5)
O=160 (144≦I´<176) ・・・(式6)
O=192 (176≦I´<208) ・・・(式7)
O=224 (208≦I´<240) ・・・(式8)
O=255 (I´≧240) ・・・(式9)
ここで、説明の都合上、各出力階調値Oに対し以下のような名称を与える。すなわち、O=0をレベル0、O=32をレベル1、O=64をレベル2、O=96をレベル3、O=128をレベル4、O=160をレベル5、O=192をレベル6、O=224をレベル7、そしてO=225をレベル8とそれぞれ称することにする。
次に、誤差演算部B0005において、累積誤差加算後の画素データI´と出力画素値Oとの差分、すなわち量子化誤差Eを算出する(ステップB0012)。
E=I´−O ・・・(式10)
更に、ステップB0013では、誤差拡散部B0006において、着目している画素の横方向位置xに応じて、以下のように誤差の拡散処理を行う。すなわち、記憶領域E0およびE(x)に格納すべき量子化誤差を、以下の処理に従って算出し、累積誤差メモリに格納する。
E(x+1)←E(x+1)+E×7/16 (x<W)・・・(式11)
E(x―1)←E(x―1)+E×3/16 (x>1)・・・(式12)
E(x)←E0+E×5/16 (1<x<W)・・・(式13)
E(x)←E0+E×8/16 (x=1)・・・(式14)
E(x)←E0+E×13/16 (x=W)・・・(式15)
E0←E×1/16 (x<W)・・・(式16)
E0←0 (x=W)・・・(式17)
以上で、入力端子B0001に入力された1画素分の誤差拡散処理が完了する。
ステップB0014では、ステップB0009〜ステップB0013の各処理が、画像の全画素に対して施されたか否かを判定する。すなわち、画像走査部が選択した画素が、図31のB0016まで達したか否かを判断し、B0016まで達していない場合には、矢印の方向に着目画素を1つ分進め、再びステップB0009に戻る。
全画素に対して処理が行われたと判断された場合、本実施形態のハーフトーン処理は完了する。
なお、本実施形態では、以上の処理を、インクの色ごとに行うものとする。
図34は、ハーフトーン処理前の所定の階調値を有する画像と、ハーフトーン処理後の量子化された画像の例を示したものである。図において、イエロー(Y)用に作成された画像データB0017に対しハーフトーン処理を施したものをB0019、特色インクであるレッド(R)用に作成された画像データB0018に対しハーフトーン処理を施したものをB0020、としてそれぞれ示している。
B0017では、全画素における画素データが10となっている。これに対しハーフトーン処理を施した後の画像B0019では、O=0(レベル0)であるB0021と、O=32(レベル1)であるB0022との、2つのレベル(濃度)の画素が、一様に分散されて存在している状態となっている。
また、B0018では、全画素における画素データが100となっている。これに対しハーフトーン処理を施した後の画像B0020では、O=96(レベル4)であるB0023と、O=128(レベル5)であるB0024との、2つのレベル(濃度)の画素が、一様に分散されて存在している状態となっている。
いずれも、オリジナルの画像においては、全画素で同一レベルであった画素データの値が、ハーフトーン処理後には複数のレベルの画素が分散されており、画像全体で捉えた場合に入力時のデータ値が保存されている構成となっている。
(印刷データの生成)
以下に、印刷データの生成処理J0006について説明する。
ハーフトーン処理を施した画像データに対しては、次に所定の体裁に整えて、実際に記録装置に入力させるための印刷データを生成する。
図33は、印刷データの構成図を示した図である。図のように、印刷データは、印刷の制御を司る印刷制御情報および印刷イメージ情報(印刷イメージデータともいう)から構成されている。更に印刷制御情報は、その画像を記録する「メディア情報」、印刷の「品位情報」、および給紙方法等のような「その他制御情報」とから構成されている。
メディア情報では、記録の対象となる用紙の種類が記述されており、普通紙、光沢紙、コート紙などのうち、いずれか1種類の用紙が規定されている。品位情報では印刷の品位が記述されており、高速印刷、高品位印刷のいずれかの品位が規定されている。なお、これらの印刷制御情報はホストPCにてユーザが指定した内容に基づいて形成されるものである。更に、印刷イメージ情報(印刷イメージデータ)では前述のハーフトーン処理によって生成された画像データが記述さているものとする。以上、ハーフトーン処理が施され、印刷データの生成がなされた印刷データは、次に、記録装置本体のドット配置パターン化処理へ供給される。
尚、上記ハーフトーン処理および印刷データの生成における説明においては、記録装置本体ではなくホスト装置にインストールされたプリンタドライバによって処理されることを前提に説明してきたが、本実施形態はこれに限定されるものではない。ハーフトーン処理自体が記録装置内部で処理される構成であっても本発明の効果は同等に得られるものである。
(ドット配置パターン化処理)
以下にドット配置パターン化処理J0007について説明する。
上述したハーフトーン処理では、256値の多値濃度情報(8ビットデータ)を9値の階調値情報(4ビットデータ)までにレベル数を下げている。しかし、実際に本実施形態のインクジェット記録装置が記録できる情報は、インクを記録するか否かの2値情報である。ドット配置パターン化処理では、0〜8の多値レベルをドットの有無を決定する2値レベルまで低減する役割を果たす。具体的には、このドット配置パターン化処理J0007では、ハーフトーン処理部からの出力値であるレベル0〜8の4ビットデータで表現される各画素ごとに、その画素の階調値(レベル0〜8)に対応したドット配置パターンを割当て、これにより1画素内の複数のエリア各々にドットのオン・オフを定義し、1画素内の各エリアごとに「1」または「0」の1ビットの吐出データを配置する。
図35は、本実施形態のドット配置パターン化処理で変換する、入力レベル0〜8に対する出力パターンを示している。図の左に示した各レベル値は、ハーフトーン処理部からの出力値であるレベル0〜レベル8に相当している。右側に配列した縦2エリア×横4エリアで構成される各マトリクスの領域は、ハーフトーン処理で出力された1画素の領域に対応するものである。また、1画素内の各エリアは、ドットのオン・オフが定義される最小単位に相当するものである。
図において、丸印を記入したエリアがドットの記録を行うエリアを示しており、レベル数が上がるに従って、記録するドット数も1つずつ増加している。本実施形態においては、最終的にこのような形でオリジナル画像の濃度情報が反映されていることになる。
(4n)〜(4n+3)は、nに1以上の整数を代入することにより、入力画像の左端からの横方向の画素位置を示しており、その下に示した各パターンは、同一の入力レベルにおいても画素位置に応じて互いに異なる複数のパターンが用意されていることを示している。すなわち、同一のレベルが入力された場合にも、記録媒体上では(4n)〜(4n+3)に示した4種類のドット配置パターンが巡回されて割当てられる構成となっているのである。
図35においては、縦方向を記録ヘッドの吐出口が配列する方向、横方向を記録ヘッドの走査方向としている。よって、上述のように同一レベルに対しても様々なドット配列で記録できる構成にしておくことは、ドット配置パターンの上段に位置するノズルと下段に位置するノズルとで吐出回数を分散させたり、記録装置特有の様々なノイズを分散させるという効果が得られる。
以上説明したドット配列パターン化処理を終了した段階で、記録媒体に対するドットの配列パターンが全て決定される。
(マスクデータ変換処理)
以下に、マスクデータ変換処理J0008について説明する。
上述したドット配置パターン化処理により、記録媒体上の各エリアに対するドットの有無は決定されたので、この情報をそのまま記録ヘッドの駆動回路に入力すれば、所望の画像を記録することは可能である。しかし、インクジェット記録装置においては、通常マルチパス記録という記録方法が採用されている。
以下にマルチパス記録方法について簡単に説明する。
図36は、マルチパス記録方法を説明するために、記録ヘッドおよび記録パターンを模式的に示したものである。P0001は記録ヘッドを示し、ここでは簡単のため16個のノズルを有するものとする。ノズルは、図のように第1〜第4の4つのノズル群に分割され、各ノズル群には4つずつのノズルが含まれている。P0002はマスクパターンを示し、各ノズルが記録を行うエリアを黒塗りで示している。各ノズル群が記録するパターンは互いに補完の関係にあり、これらを重ね合わせると4×4のエリアに対応した領域の記録が完成される構成となっている。
P0003〜P0006で示した各パターンは、記録走査を重ねていくことによって画像が完成されていく様子を示したものである。各記録走査が終了するたびに、記録媒体は図の矢印の方向にノズル群の幅分ずつ搬送される。よって、記録媒体の同一領域(各ノズル群の幅に対応する領域)は4回の記録走査によって初めて画像が完成される構成となっている。以上のように、記録媒体の各同一領域が複数回の走査で複数のノズル群によって形成されることは、ノズル特有のばらつきや記録媒体の搬送精度のばらつき等を低減させる効果がある。
図37は、本実施形態で実際に適用するマスクパターンを示したものである。本実施形態で適用する記録ヘッドH1001は768個のノズルを有しており、4つのノズル群にはそれぞれ192個ずつのノズルが属している。マスクパターン大きさは、縦方向がノズル数と同等の768エリア、横方向は256エリアとなっており、4つのノズル群で互いに補完の関係を保つような構成となっている。
ところで、本実施形態で適用するような、多数の小液滴を高周波数で吐出するようなインクジェット記録ヘッドにおいては、記録動作時に記録部近傍に気流が生じ、この気流が特に記録ヘッドの端部に位置するノズルの吐出方向に影響を与えることが確認されている。よって、本実施形態のマスクパターンにおいては、図37からも判るように、各ノズル群また同一のノズル群の中でも、領域によって記録比率の分布に偏りを持たせている。図37で示すように、端部のノズルの記録比率を中央部に対して低減した構成のマスクパターンを適用することにより、端部のノズルが吐出したインク滴の着弾位置ずれによる弊害を目立たなくすることが可能となるのである。
本実施形態においては、図37で示したマスクデータが記録装置本体内のメモリに格納してあり、マスクデータ変換処理においては、当該マスクデータと上述したドット配置パターン化処理の出力信号との間でAND処理をかけることにより、各記録走査で実際に吐出させる記録画素が決定され、出力信号として記録ヘッドH1001の駆動回路J0009に入力される。
次に、本実施形態で適用するインクジェット記録装置の本体構成を説明する。
(機構部の構成)
まず、本実施形態で適用する記録装置における機構部の構成を説明する。本実施形態における記録装置本体は、各機構の役割から、給紙部、用紙搬送部、排紙部、キャリッジ部、クリーニング部および外装部に分類することができる。以下、これらを項目別に概略を説明していく。
(A)給紙部
図38および図39は、本実施形態で適用する記録装置の斜視図であり、図38は記録装置の非使用状態、図39は記録装置M1の使用状態をそれぞれ示している。また、図40、図41および図42は、記録装置本体の内部機構を説明するための図であり、図40は右上部からの斜視図、図41は左上部からの斜視図および図42は記録装置本体の側断面図をそれぞれ示したものである。
上記図38〜図42を参照するに、給紙部は記録媒体を積載する圧板2010、記録媒体を1枚ずつ給紙する給紙ローラM2080、記録媒体を分離する分離ローラM2041、記録媒体を積載位置に戻す為の戻しレバーM2020、等がベースM2000に取り付けられる構成となっている。
ベースM2000または外装には、積載された記録媒体を保持する為の給紙トレイM2060が取り付けられている。給紙トレイM2060は多段式で使用時は回転させて用いるものである。
給紙ローラM2080は、断面円弧の棒状をしている。用紙基準よりに1つの分離ローラゴムが設けられており、これによって記録媒体を給紙する。給紙ローラM2080の駆動力は、給紙部に設けられた専用ASFモータE0105から不図示の駆動伝達ギア、遊星ギアによって伝達される。
圧板M2010には可動サイドガイドM2030が移動可能に設けられて、記録媒体の積載位置を規制している。圧板M2010はベースM2000に結合された回転軸を中心に回転可能で、圧板ばねM2012により給紙ローラM2080に付勢される。給紙ローラM2080と対向する圧板M2010の部位には、枚数が残り少なくなった状態での記録媒体の重送を防止するために、人工皮等の摩擦係数の大きい材質からなる分離シートM2013が設けられている。圧板M2010は、圧板カムによって、給紙ローラM2080に、当接、離間できるように構成されている。
ベースM2000には、記録媒体を一枚ずつ分離するための分離ローラM2041を取り付けた分離ローラホルダM2040が、ベースM2000に設けられた回転軸を中心に回転可能に設置され、不図示の分離ローラバネにより給紙ローラM2080に付勢されている。分離ローラM2041には、不図示のクラッチが取り付けられており、所定以上の負荷がかかると、分離ローラM2041が取り付けられた部分が、回転する構成になっている。分離ローラM2041は、分離ローラリリースシャフトM2044と不図示のコントロールカムによって、給紙ローラM2080に、当接、離間できるように構成されている。これら圧板M2010、戻しレバーM2020、および分離ローラM2041の位置は、オートシートフィードセンサ(以下ASFセンサと言う)E0009によって検知されている。
記録媒体を積載位置に戻す為の戻しレバーM2020は、回転可能にベースM2000に取り付けられており、解除方向に不図示の戻しレバーバネで付勢されている。記録媒体を戻す時は、コントロールカムによって回転するように構成されている。
以上の構成を用いて給紙する状態を以下に説明する。
通常の待機状態において、圧板M2010は圧板カムM2014でリリースされ、分離ローラM2041はコントロールカムM2050でリリースされている。また、戻しレバーM2020は記録媒体を戻し、積載状態の記録媒体が奥に入らないように、積載口を塞ぐような積載位置に設けられている。
給紙を行う際には、まずモータ駆動によって、分離ローラM2041が給紙ローラM2080に当接する。そして、戻しレバーM2020がリリースされて、圧板M2010が給紙ローラM2080に当接する。この状態で、記録媒体の給紙が開始される。記録媒体は、ベースM2000に設けられた不図示の前段分離部M2001で制限され、記録媒体の所定枚数のみが給紙ローラM2080と分離ローラM2041から構成されるニップ部に送られる。送られた記録媒体はニップ部で分離され、最上位の記録媒体のみが搬送される。
記録媒体が、搬送ローラM3060およびピンチローラM3070まで到達すると、圧板M2010は不図示の圧板カムによって、分離ローラM2041はコントロールカムによって、リリースされる。戻しレバーM2020は、コントロールカムによって積載位置に戻る。これにより、給紙ローラM2080と分離ローラM2041とから構成されるニップ部に到達していた記録媒体は積載位置まで戻される。
(B)用紙搬送部
曲げ起こした板金からなるシャーシM1010には、記録媒体を搬送する搬送ローラM3060とペーパエンドセンサ(以下PEセンサと称す)E0007が回動可能に取り付けられている。搬送ローラM3060は、金属軸の表面にセラミックの微小粒がコーティングされた構成となっており、両軸の金属部分を不図示の軸受けが受ける状態で、シャーシM1010に取り付けられている。軸受けM3080と搬送ローラM3060との間には、不図示のローラテンションバネが設けられており、搬送ローラM3060を付勢することにより、回転時に適量の負荷を与えて安定した搬送が行えるようになっている。
搬送ローラM3060には、従動する複数のピンチローラM3070が当接して設けられている。ピンチローラM3070は、ピンチローラホルダM3000に保持されているが、不図示のピンチローラバネによって付勢されることで、搬送ローラM3060に圧接し、ここで記録媒体の搬送力を生み出している。この時、ピンチローラホルダM3000の回転軸は、シャーシM1010の軸受けに取り付けられ、この位置を中心に回転する。
記録媒体が搬送されてくる入口には、記録媒体をガイドするためのペーパガイドフラッパM3030およびプラテンM3040が配設されている。また、ピンチローラホルダM3000には、PEセンサレバーM3021が設けられており、PEセンサレバーM3021は、記録媒体の先端および後端の検出をPEセンサ−E0007に伝える役割を果たす。プラテンM3040は、シャーシM1010に取り付けられ、位置決めされている。ペーパガイドフラッパM3030は、不図示の軸受け部を中心に回転可能で、シャーシM1010に当接することで位置決めされる。また、軸受け部M3031は、搬送ローラM3060と嵌合して摺動する。
搬送ローラM3060の記録媒体搬送方向における下流側には、不図示の記録ヘッドH1001が設けられている。
上記構成における搬送の過程を説明する。用紙搬送部に送られた記録媒体は、ピンチローラーホルダM3000及びペーパガイドフラッパM3030に案内されて、搬送ローラM3060とピンチローラM3070とのローラ対に送られる。この時、PEセンサレバ−M3021が、記録媒体の先端を検知して、これにより記録媒体に対する記録位置が求められている。搬送ローラM3060とピンチローラM3070とからなるローラ対は、LFモータE0002の駆動により回転され、この回転により記録媒体がプラテンM3040上を搬送される。プラテンM3040には、搬送基準面となるリブが形成されており、このリブにより、記録ヘッドH1001と記録媒体表面との間のギャップが管理されている。また同時に、当該リブが、後述する排紙部と合わせて、記録媒体の波打ちを抑制する役割も果たしている。
搬送ローラM3060が回転するための駆動力は、例えばDCモータからなるLFモータE0002の回転力が、不図示のタイミングベルトを介して、搬送ローラM3060の軸上に配設されたプーリM3061に伝達されることによって得られている。また、搬送ローラM306の軸上には、搬送ローラM3060による搬送量を検出する為のコードホイールM3062が設けられており、隣接するシャーシM1010には、コードホイールM3062に形成されたマーキングを読み取るためのエンコードセンサM3090が配設されている。尚、コードホイールM3062に形成されたマーキングは、150〜300lpi(ライン/インチ;参考値)のピッチで形成されているものとする。
(C)排紙部
排紙部は、第1の排紙ローラM3100および第2の排紙ローラM3110、複数の拍車M3120およびギア列などから構成されている。
第1の排紙ローラM3100は、金属軸に複数のゴム部を設けて構成されている。第1の排紙ローラM3100の駆動は、搬送ローラM3060の駆動が、アイドラギアを介して第1の排紙ローラM3100まで伝達されることによって行われている。
第2の排紙ローラM3110は、樹脂の軸にエラストマの弾性体M3111を複数取り付けた構成になっている。第2の排紙ローラM3110の駆動は、第1の排紙ローラM3100の駆動が、アイドラギアを介して伝達すること行われる。
拍車M3120は、周囲に凸形状を複数設けた例えばSUSでなる円形の薄板を樹脂部と一体としたもので、拍車ホルダM3130に複数取り付けられている。この取り付けは、コイルバネを棒状に設けた拍車バネによって行われているが、同時に拍車バネのばね力は、拍車M3120を排紙ローラM3100およびM3110に対し所定圧で当接させている。この構成によって拍車M3120は、2つの排紙ローラM3100およびM3110に従動して回転可能となっている。拍車M3120のいくつかは、第1の排紙ローラM3100のゴム部、あるいは第2の排紙ローラM3110の弾性体M3111の位置に設けられており、主に記録媒体の搬送力を生み出す役割を果たしている。また、その他のいくつかは、ゴム部M3101あるいは弾性体部M3111が無い位置に設けられ、主に記録時の記録媒体の浮き上がりを抑える役割を果たしている。
また、ギア列は、搬送ローラM3060の駆動を排紙ローラM3100およびM3110に伝達する役割を果たしている。
第1の排紙ローラM3100と第2の排紙ローラM3110の間には、不図示の紙端サポートが設けられている。紙端サポートは、記録媒体の両端を持ち上げて、第1の排紙ローラM3100の先で記録媒体を保持することにより、記録媒体に成された記録を、キャリッジの擦過などから守る役割を果たしている。具体的には、先端に不図示のコロが設けられた樹脂部材が、不図示の紙端サポートバネM3152によって付勢されて、所定の圧力でコロM3151を記録媒体に押し付けることで、記録媒体の両端が持ち上げられ、こしを作り、所定の位置に保持できるように構成されている。
以上の構成によって、画像形成された記録媒体は、第1の排紙ローラM3110と拍車M3120とのニップに挟まれ、搬送されて排紙トレイM3160に排出される。排紙トレイM3160は、複数に分割され、後述する下ケースM7080の下部に収納できる構成になっている。使用時は、引出して使用する。また、排紙トレイM3160は、先端に向けて高さが上がり、更にその両端は高い位置に保持されるよう設計されており、排出された記録媒体の積載性を向上し、記録面の擦れなどを防止している(図39)。
(D)キャリッジ部
キャリッジ部は、記録ヘッドH1001を取り付けるためのキャリッジM4000を有しており、キャリッジM4000は、ガイドシャフトM4020およびガイドレールM1011によって支持されている。ガイドシャフトM4020は、シャーシM1010に取り付けられており、記録媒体の搬送方向に対して直角方向にキャリッジM4000を往復走査させるように案内支持している。ガイドレールM1011は、シャーシM1010に一体に形成されており、キャリッジM4000の後端を保持して記録ヘッドH1001と記録媒体との隙間を維持する役割を果たしている。また、ガイドレールM1011のキャリッジM4000との摺動側には、ステンレス等の薄板からなる摺動シートM4030が張設され、記録装置の摺動音の低減化を図っている。
キャリッジM4000は、シャーシM1010に取り付けられたキャリッジモータE0001によりタイミングベルトM4041を介して駆動される。また、タイミングベルトM4041は、アイドルプーリM4042によって張設、支持されている。更に、タイミングベルトM4042は、キャリッジM4000とゴム等からなるキャリッジダンパーを介して結合されており、キャリッジモータE0001等の振動を減衰することで、記録される画像のむら等を低減している。
キャリッジM4000の位置を検出する為のエンコーダスケールE0005が、タイミングベルトM4041と平行に設けられている。エンコーダスケールE0005上には、150〜300lpiのピッチでマーキングが形成されており、当該マーキングを読み取るためのエンコーダセンサE0004(図43について後述)が、キャリッジM4000に搭載されたキャリッジ基板E0013(図43について後述)に設けられている。キャリッジ基板E0013には、記録ヘッドH1001と電気的な接続を行う為のヘッドンタクトE0101も設けられている。また、キャリッジM4000には、電気基板E0014から記録ヘッドH1001へ、駆動信号を伝えるための不図示のフレキシブルケーブルE0012(図43について後述)が接続されている。
記録ヘッドH1001をキャリッジM4000に固定する為の構成として、記録ヘッドH1001をキャリッジM4000に押し付けながら位置決めする為の不図示の突き当て部と、所定の位置に固定する為の不図示の押圧手段が、キャリッジM4000上に設けられている。押圧手段は、ヘッドセットレバーM4010に搭載され、記録ヘッドH1001をセットする際に、ヘッドセットレバーM4010を回転支点中心に回して、記録ヘッドH1001に作用する構成になっている。
さらに、キャリッジM4000には、CD−R等の特殊メディアへ記録を行う際や、記録結果や用紙端部等の位置検出用として、反射型の光センサからなる位置検出センサM4090が取り付けられている。位置検出センサM4090は、発光素子より発光し、その反射光を受光することで、キャリッジM4000の現在位置を検出することができる。
上記構成において記録媒体に画像形成する場合、行位置に対しては、搬送ローラM3060およびピンチローラM3070からなるローラ対が、記録媒体を搬送して位置決めする。また、列位置に対しては、キャリッジモータE0001によりキャリッジM4000を上記搬送方向と垂直な方向に移動させて、記録ヘッドH1001を目的の画像形成位置に配置させる。位置決めされた記録ヘッドH1001は、電気基板E0014からの信号に従って、記録媒体に対しインクを吐出する。記録ヘッドH1001についての詳細な構成および記録システムは後述するが、本実施形態の記録装置においては、記録ヘッドH1001により記録を行いながらキャリッジM4000が列方向に走査する記録主走査と、搬送ローラM3060により記録媒体が行方向に搬送される副走査とを交互に繰り返すことにより、記録媒体上に画像を形成していく構成となっている。
(E)クリ−ニング部
クリーニング部は、記録ヘッドH1001のクリーニングを行うためのポンプM5000、記録ヘッドH1001の乾燥を抑えるためのキャップM5010、記録ヘッドH1001の吐出口形成面をクリーニングするためのブレードM5020、などから構成されている。
クリーニング部には、専用のクリーニングモータE0003が配されている。クリーニングモータE0003には、不図示のワンウェイクラッチが設けられており、一方向の回転でポンプが作動し、もう一方向の回転ではブレードM5020が動作すると同時にキャップM5010の昇降動作が作用するようになっている。
ポンプM5000では、不図示のポンプコロが2本の不図示のチューブをしごくことによって負圧が発生させるように構成されている。またキャップM5010は、不図示の弁などを介してポンプM5000に接続されている。キャップM5010を記録ヘッドH1001のインク吐出口に密着させた状態で、ポンプM5000を作用させると、記録ヘッドH1001から不要なインク等が吸引されるようになっている。更にキャップM5010の内側部分には、吸引後のヘッドM6000のフェイス面に残るインクを削減する為に、キャップ吸収体M5011が設けられている。また、キャップM5010を開けた状態で、キャップM5010に残っているインクを吸引することにより、残インクによる固着およびその後の弊害が起こらないように配慮されている。なお、ポンプM5000で吸引されたインクは廃インクとなり、下ケースM7080に設けられた廃インク吸収体M7090に吸収され、ここに保持される。
ブレードM5020の動作、キャップM5010の昇降、および弁M5050の開閉など、連続して行われる一連の動作は、軸上に複数のカムを設けた不図示のメインカムによって制御される。それぞれの部位のカムやアームがメインカムに作用され、所定の動作を行うことが可能となっている。メインカムM5030の位置は、フォトインタラプタ等の位置検出センサで検出することができる。キャップM5010の降時には、ブレードM5020がキャリッジM4000の走査方向に垂直に移動し、記録ヘッドH1001のフェイス面をクリーニングする構成となっている。ブレードM5020は、記録ヘッドH1001のノズル近傍をクリーニングするものと、フェイス面全体をクリーニングするものと、複数設けられている。そして、キャリッジM4000が、一番奥に移動した際には、ブレードクリーナーM5060に当接することにより、ブレードM5020自身へ付着したインクなども除去することができる構成になっている。
(F)外装部
(A)〜(E)で説明した各ユニットは、主にシャーシM1010に組み込まれ、記録装置の機構部分を形成している。外装は、その回りを覆うように取り付けられている。外装部は主に、下ケースM7080、上ケースM7040、アクセスカバーM7030、コネクタカバーおよびフロントカバーM7010から構成されている。
下ケースM7080の下部には、不図示の排紙トレイレールが設けられており、分割された排紙トレイM3160が収納可能に構成されている。また、フロントカバーM7010は、非使用時に排紙口を塞ぐ構成になっている。
上ケースM7040には、アクセスカバーM7030が取り付けられており、回動可能に構成されている。上ケースの上面の一部は開口部を有しており、この位置で、インクタンクH1900および記録ヘッドH1001が交換可能な様に構成されている。なお、本実施形態の記録装置においては、1色のインクを吐出可能な記録ヘッドを複数色分一体的に構成した記録ヘッドユニットに対し、インクタンクH1900が色毎に独立に着脱可能なヘッドカートリッジ構成となっている。更に、上ケースには、アクセスカバーの開閉を検知する為の不図示のドアスイッチレバー、LEDの光を伝達・表示するLEDガイドM7060、基板のスイッチ(SW)に作用するキースイッチM7070等が設けられている。また、多段式の給紙トレイM2060が回動可能に取り付けられており、給紙部が使われない時は、給紙トレイM2060を収納すれることにより、給紙部のカバーにもなるように構成されている。
上ケースM7040と下ケースM7080は、弾性を持った勘合爪で取り付けられており、その間のコネクタ部分が設けられている部分を、不図示のコネクタカバーが覆っている。
(電気回路構成)
次に本実施形態における電気的回路の構成を説明する。
図43は、本発明の実施形態における電気的回路の全体構成を概略的に説明するためのブロック図である。
本実施形態で適用する記録装置では、主にキャリッジ基板(CRPCB)E0013、メインPCB(Printed Circuit Board)E0014、電源ユニットE0015、フロントパネルE0106等によって構成されている。
ここで、電源ユニットE0015は、メインPCB E0014と接続され、各種駆動電源を供給するものとなっている。
キャリッジ基板E0013は、キャリッジM4000に搭載されたプリント基板ユニットであり、ヘッドコネクタ E0101を通じて記録ヘッドH1001との信号の授受を行うインタフェースとして機能する。また、キャリッジM4000の移動に伴ってエンコーダセンサE0004から出力されるパルス信号に基づいて、エンコーダスケールE0005とエンコーダセンサE0004との位置関係の変化を検出し、更にその出力信号をフレキシブルフラットケーブル(CRFFC)E0012を通じてメインPCB E0014へと出力する。キャリッジ基板E0013には、周囲温度を検出するためのサーミスタなどの温度センサや所要の光学センサが設けられている(以下、これらのセンサをOnCRセンサE0102として参照する)。OnCRセンサE0102により得られる情報は、記録ヘッドカートリッジH1000からのヘッド温度情報とともに、フレキシブルフラットケーブル(CRFFC)E0012を通じてメインPCB E0014へと出力される。
メインPCB E0014は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の各部の駆動制御を司るプリント基板ユニットであり、その基板上には、紙端検出センサ(PEセンサ)E0007、Automatic Sheet Feeder(ASF)センサE0009、カバーセンサE0022およびホストインタフェース(ホストI/F)E0017を有している。また、キャリッジM4000を主走査させるための駆動源となるキャリッジモータE0001、記録媒体を搬送するための駆動源となるLFモータE0002、記録ヘッドH1001の回復動作の駆動源となるPGモータE0003、記録媒体の給紙動作の駆動源となるASFモータE0105など各種モータと接続されて各機能の駆動を制御している。更に、インクエンプティセンサ、メディア(紙)判別センサ、キャリッジ位置(高さ)センサ、LFエンコーダセンサ、PGセンサのような各種オプションユニットの装着や動作状態を示す様々なセンサ信号E0104を受信するとともに、各種オプションユニットの駆動制御を行うために、オプション制御信号E0108を出力する。また、メインPCB E0014は、CRFFC E0012、電源ユニットE0015およびフロントパネルE0106とそれぞれ接続し、パネル信号E0107によって情報のやり取りを行うための、インタフェースを有している。
フロントパネルE0106は、ユーザ操作の利便性のために、記録装置本体の正面に設けたユニットであり、リジュームキーE0019、LED E0020、電源キーE0018、さらにデジタルカメラ等の周辺デバイスとの接続に用いるデバイスI/F E0100を有している。
図44は、メインPCB E1004の内部構成を示すブロック図である。
図において、E1102はASIC(Application Specific Integrated Circuit)であり、制御バスE1014を通じてROM E1004に接続され、ROM E1004に格納されたプログラムに従って、各種制御を行っている。例えば、メインPCB E0014上の各センサ出力や、センサ信号E0104、CRPCB E0013上のOnCRセンサ信号E1105、エンコーダ信号E1020、フロントパネルE0106上の電源キーE0018、リジュームキーE0019からの出力の状態を検出している。また、ホストI/F E0017、フロントパネル上のデバイスI/FE0100の接続およびデータ入力状態に応じて、各種論理演算や条件判断等を行い、各構成要素を制御し、インクジェット記録装置の駆動制御を司っている。
E1103はドライバ・リセット回路であって、モータ電源(VM)E1040を駆動源とし、ASIC E1102からのモータ制御信号E1106に従って、CRモータ駆動信号E1037、LFモータ駆動信号E1035、PGモータ駆動信号E1034、ASFモータ駆動信号E1104を生成し、各モータを駆動する。さらに、ドライバ・リセット回路E1103は、電源回路を有しており、メインPCB E0014、CRPCB E0013、フロントパネルE0106など各部に必要な電源を供給し、さらには電源電圧の低下を検出して、リセット信号E1015を発生および初期化を行う。
E1010は電源制御回路であり、ASIC E1102からの電源制御信号E1024に従って発光素子を有する各センサ等への電源供給を制御する。
ホストI/F E0017は、ASIC E1102からのホストI/F信号E1028を、外部に接続されるホストI/FケーブルE1029に伝達し、また同ケーブルE1029からの信号をASIC E1102に伝達する。
一方、電源ユニットE0015からは、ヘッド電源(VH)E1039、モータ電源(VM)E1040、およびロジック電源(VDD)E1041が供給される。また、ASIC E1102からのヘッド電源ON信号(VHON)E1022及びモータ電源ON信号(VMOM)E1023が電源ユニットE0015に入力され、それぞれヘッド電源E1039およびモータ電源E1040のON/OFFを制御する。電源ユニットE0015から供給されたロジック電源(VDD)E1041は、必要に応じて電圧変換された上で、メインPCB E0014内外の各部へ供給される。
またヘッド電源信号E1039は、メインPCB E0014上で平滑化された後にCRFFC E0012へと送出され、記録ヘッドカートリッジH1000の駆動に用いられる。
ASIC E1102は1チップの演算処理装置内蔵半導体集積回路であり、前述したモータ制御信号E1106、オプション制御信号E0108、電源制御信号E1024、ヘッド電源ON信号E1022、およびモータ電源ON信号E1023等を出力する。そして、ホストI/F E0017との信号の授受を行うとともに、パネル信号E0107を通じて、フロントパネル上のデバイスI/F E0100との信号の授受を行う。さらに、PEセンサE0007からのPE検出信号(PES)E1025、ASFセンサE0009からのASF検出信号(ASFS)E1026、カバーセンサE0022からのカバー検出信号(COVS)E1042、パネル信号E0107、センサ信号E0104、およびOnCRセンサ信号E1105の状態を検知して、パネル信号E0107の駆動を制御してフロントパネル上のLEDE0020の点滅を行う。
さらにASIC E1102は、エンコーダ信号(ENC)E1020の状態を検知してタイミング信号を生成し、ヘッド制御信号E1021で記録ヘッドカートリッジH1000とのインタフェースをとり記録動作を制御する。ここにおいて、エンコーダ信号(ENC)E1020はCRFFC E0012を通じて入力されるCRエンコーダセンサE0004の出力信号である。また、ヘッド制御信号E1021は、フレキシブルフラットケーブルE0012、キャリッジ基板E0013、およびヘッドコネクタE0101を経て記録ヘッドH1001に供給される。
図45は、ASIC E1102の内部構成例を示すブロック図である。なお、同図において、各ブロック間の接続については、印刷データやモータ制御データ等、ヘッドや各部機構部品の制御にかかわるデータの流れのみを示しており、各ブロックに内蔵されるレジスタの読み書きに係わる制御信号やクロック、DMA制御にかかわる制御信号などは図面上の記載の煩雑化を避けるため省略している。
図中、E2107はクロック制御部であり、図示しないクロック発振回路からのクロック信号(CLK)E2031を入力とし、必要に応じ周波数を変換してASIC E1102内の大部分へと供給するクロック(図示しない)を発生する。
また、E2102はCPUであり、リセット信号E1015、ASIC内各ブロックから出力される割込み信号E2034、制御バスE1014からの制御信号により、以下に説明するような各ブロックに対するレジスタ読み書き等の制御や、一部ブロックへのクロックの供給、割り込み信号の受け付け等(いずれも図示しない)を行う。さらにCPU E2102は、内部にRAMを有し、外部デバイスからデバイスI/FE0100を通じて印刷ファイルを受信し、印刷データに変換する処理も行う。
また、E2005はDRAMであり、記録用のデータバッファとして、受信バッファE2010、ワークバッファE2011、プリントバッファE2014、展開用データバッファE2016などの各領域を有すると共に、モータ制御用としてモータ制御バッファE2023を有する。
また、DRAM E2005は、CPU E2102の動作に必要なワーク領域しても使用されている。すなわち、DRAM制御部E2004による制御の下、制御バスによるCPU E2102からDRAM E2005へのアクセスと、後述するDMA制御部E2003からDRAM E2005へのアクセスとを切り替えて、DRAM E2005への読み書き動作を行っている。
DMA制御部E2003では、各ブロックからのリクエスト信号(図示せず)を受け付けて、アドレス信号や制御信号(図示せず)とともに、書込み動作の場合には書込みデータE2038、E2041、E2042、およびE2044などをDRAM制御部に出力してDRAMアクセスを行う。また読み出しの場合には、DRAM制御部E2004からの読み出しデータE2040、E2043、E2045、E2051などを、リクエスト元のブロックに受け渡す。
E2007はUniversal Serial Bus(USB)デバイスであり、CPU E2102の制御により、ホストI/F E0017を通じて、図示しない外部ホスト機器との双方向通信インタフェースとなる。さらに、記録時にはホストI/F E0017からの受信データ(ホスト受信データE2037)をDMA処理により受信制御部E2008に受け渡す。
E2101はUSBホストであり、CPU E2102の制御により、デバイスI/F E0100を通じて、図示しない外部デバイス機器との双方向通信インタフェースとなる。さらに、記録時にはデバイスI/F E0100からの受信データ(デバイス受信データE2108)をDMA処理により受信制御部E2008に受け渡す。
受信制御部E2008は、USBデバイスE2007もしくはUSBホストE2101のうちの選択されたI/Fからの受信データ(WDIF)E2038)を、受信バッファ制御部E2039の管理する受信バッファ書込みアドレスに、書込む。
E2009は圧縮・伸長DMAコントローラであり、CPU E2102の制御により、受信バッファE2010上に格納された受信データ(ラスタデータ)を、受信バッファ制御部E2039の管理する受信バッファ読み出しアドレスから読み出す。さらに、そのデータ(RDWK)E2040を指定されたモードに従って圧縮・伸長する。得られた各記録コードは、記録ヘッドカートリッジH1000へのデータ転送順序に適するようなワークバッファE2011上のアドレスに並べ替えて転送され、記録コード列WDWK E2041としてワークバッファ領域に書込まれる。
E2013は記録バッファ転送DMAコントローラで、CPU E2102の制御により、ワークバッファE2011上の記録コード(RDWP)E2043を読み出し、プリントバッファE2014に転送(WDWP E2044)する。
E2012はワーククリアDMAコントローラであり、CPU E2102の制御により、記録バッファ転送DMAコントローラ E2013による転送が完了したワークバッファ上の領域に対し、指定したワークフィルデータ(WDWF)E2042を繰返し書込む。
E2015は記録データ(印刷イメージ情報)展開DMAコントローラであり、CPU E2102の制御により、ヘッド制御部E2018からのデータ展開タイミング信号E2050をトリガとして、プリントバッファ上に書込まれた記録コードと展開用データバッファE2016上に書込まれた展開用データ(展開記録データRDHDG E2045)とを読み出す。さらに、読み出したデータをカラムバッファ書込みデータ(WDHDG)E2047としてカラムバッファE2017に書込む。ここで、カラムバッファE2017は、記録ヘッドカートリッジH1000への転送データ(展開記録データ)を一時的に格納するSRAMであり、記録データ展開DMAコントローラE2015とヘッド制御部E2018とのハンドシェーク信号(図示せず)によって、両ブロックに共有管理されている。
E2018はヘッド制御部であり、CPU E2102の制御により、ヘッド制御信号を介して記録ヘッドカートリッジH1000とのインタフェースを行う。また、センサ信号処理部E2022からのヘッド駆動タイミング信号E2049に基づき、記録データ展開DMAコントローラに対してデータ展開タイミング信号E2050の出力を行う。さらに、記録時には、ヘッド駆動タイミング信号E2049に従って、カラムバッファから展開記録データ(RDHD)E2048を読み出し、そのデータをヘッド制御信号E1021として記録ヘッドカートリッジH1000に出力する。
E2022はセンサ信号処理部であり、センサ信号E0104、OnCRセンサ信号E1105、PE検出信号E1025、ASF検出信号E1026、カバー検出信号E1042、を受けて、CPU E2102の制御で定められたモードに従ってこれらのセンサ情報をCPU E2102に伝達する。また、モータ制御部E2103に対してセンサ検出信号E2052を出力する。さらに、エンコーダ信号(ENC)を受けて、CPU E2102の制御で定められたモードに従ってヘッド駆動タイミング信号E2049を出力する他、エンコーダ信号E1020から得られるキャリッジM4001の位置や速度にかかわる情報をレジスタに格納して、CPU E2102に提供する。CPU E2102はこの情報に基づき、CRモータE0001の制御における各種パラメータを決定する。同様に、センサ信号E0104を構成するLFエンコーダセンサ信号を受けて、紙送りの位置や速度にかかわる情報をレジスタに格納して、CPU E2102に提供する。CPU E2102はこの情報に基づき、LFモータE0002の制御における各種パラメータを決定する。
E2104はA/Dコンバータであり、センサ信号E0104を構成するメディア判別センサ出力およびインクエンプティセンサ出力、OnCRセンサ信号E1105を構成する環境温度検出サーミスタ出力、反射型センサ出力、ヘッド温度検出出力などのアナログ信号をデジタル値に変換し、CPU E2102の制御で定められたモードに従ってこれらのセンサ検出情報をCPU E2102に伝達する。
モータ制御部E2103は、CPU E2102の制御により、必要に応じてDRAM E2005上のモータ制御バッファE2023からモータ駆動テーブル(RDPM)E2051を読み出してモータ制御信号E1106を出力する。また、動作モードによっては各種センサ検出信号を制御のトリガとして、モータ制御信号E1106を出力する。
E2105はパネルI/F部であり、CPUE2102の制御により、パネル信号E0107を構成するLED制御信号を出力する。また、パネル信号を構成する電源キーおよびリジュームキーの状態出力信号を受けて、CPU E2102に伝達する。
E2029はポート制御部であり、CPU E2102の制御により、ヘッド電源ON信号E1022、モータ電源ON信号E1023、及び電源制御信号E1024を出力する。
(記録ヘッド構成)
以下に本実施形態で適用するヘッドカートリッジH1000の構成について説明する。 本実施形態におけるヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、インクタンクH1900を搭載する手段、およびインクタンクH1900から記録ヘッドにインクを供給するための手段を有しており、キャリッジM4000に対して着脱可能に搭載される。
図46は、本実施形態で適用するヘッドカートリッジH1000に対し、インクタンクH1900を装着する様子を示した図である。本実施形態の記録装置は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、レッド、グリーン、およびブルーの7色のインクによって画像を形成し、従ってインクタンクH1900も7色分が独立に用意されている。そして、図に示すように、それぞれがヘッドカートリッジH1000に対して着脱自在となっている。尚、インクタンクH1900の着脱は、キャリッジM4000にヘッドカートリッジH1000が搭載された状態で行えるようになっている。
図47は、ヘッドカートリッジH1000の分解斜視図を示したものである。図において、ヘッドカートリッジH1000は、第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101、第1のプレートH1200、第2のプレートH1400、電気配線基板H1300、タンクホルダーH1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700、シールゴムH1800などから構成されている。
第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101はSi基板であり、その片面にインクを吐出するための複数の記録素子(ノズル)がフォトリソ技術により形成されている。各記録素子に電力を供給するAI等の電気配線は、成膜技術により形成されており、個々の記録素子に対応した複数のインク流路もまた、フォトリソグラフィ技術により形成されている。さらに、複数のインク流路にインクを供給するためのインク供給口が裏面に開口するように形成されている。
図48は、第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101の構成を説明するための正面拡大図である。H2000〜H2600は、それぞれ異なるインク色に対応する記録素子の列(以下ノズル列ともいう)であり、第1の記録素子基板H1100には、シアンインクの供給されるノズル列H2000、マゼンタインクの供給されるノズル列H2100、およびイエローインクの供給されるノズル列H2200の3色分のノズル列が構成されている。第2の記録素子基板H1101には、ブラックインクの供給されるノズル列H2300、レッドインクの供給されるノズル列H2400、グリーンインクの供給されるノズル列H2500、およびブルーインクの供給されるノズル列H2600の4色分のノズル列が構成されている。
各ノズル列は、記録媒体の搬送方向に1200dpi(dot/inch;参考値)の間隔で並ぶ768個のノズルによって構成され、約2ピコリットルのインク滴を吐出させる。各ノズル吐出口における開口面積は、およそ100平方μm2に設定されている。また、第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101は第1のプレートH1200に接着固定されており、ここには、第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101にインクを供給するためのインク供給口H1201が形成されている。
さらに、第1のプレートH1200には、開口部を有する第2のプレートH1400が接着固定されており、この第2のプレートH1400は、電気配線基板H1300と第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101とが電気的に接続されるように、電気配線基板H1300を保持している。
電気配線基板H1300は、第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101に形成されている各ノズルからインクを吐出するための電気信号を印加するものであり、第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101に対応する電気配線と、この電気配線端部に位置し記録装置本体からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子H1301とを有している。外部信号入力端子H1301は、タンクホルダーH1500の背面側に位置決め固定されている。
一方、インクタンクH1900を保持するタンクホルダーH1500には、流路形成部材H1600が例えば超音波溶着により固定され、インクタンクH1900から第1のプレートH1200に通じるインク流路H1501を形成している。
インクタンクH1900と係合するインク流路H1501のインクタンク側端部には、フィルターH1700が設けられており、外部からの塵埃の侵入を防止し得るようになっている。また、インクタンクH1900との係合部にはシールゴムH1800が装着され、係合部からのインクの蒸発を防止し得るようになっている。
さらに、前述のようにタンクホルダーH1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700及びシールゴムH1800から構成されるタンクホルダー部と、第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101、第1のプレートH1200、電気配線基板H1300及び第2のプレートH1400から構成される記録ヘッド部H1001とを、接着等で結合することにより、ヘッドカートリッジH1000が構成されている。
(記録装置のシーケンス)
以下に本実施形態の記録装置における一連の動作を説明する。
図53は、本実施形態の記録装置における電源ON時のシーケンスを説明するためのフローチャートである。
AC電源に装置本体が接続されると、まず、ステップS0001では装置の第1の初期化処理を行う。この初期化処理では、記録装置のROM E1004やDRAM E2005など、電気回路系のチェックを行い、電気的に記録装置が正常に動作可能であるかを確認する。
ステップS0002では、記録装置本体の上ケースM7040に設けられた電源キーE0018がONされたかどうかの判断を行う。電源キーE0018が押された場合には、次のステップS0003へと移行する。
ステップS0003では、第2の初期化処理を行う。ここでは、記録装置の各種駆動機構及び記録ヘッドH1001のチェックを行う。すなわち、各種モータの初期化やヘッド情報の読み込みを行うに際し、装置が正常に動作可能であるかを確認する。
ステップS0004ではイベント待ちを行う。すなわち、本記録装置に対して、外部I/Fからの指令イベント、ユーザ操作によるパネルキーイベントおよび内部的な制御イベントなどを監視し、これらのイベントが発生すると当該イベントに対応した処理を実行する。
例えば、ステップS0004で外部I/Fからの印刷指令イベントを受信した場合には、ステップS0005へと移行する。また、ユーザ操作による電源キーイベントが発生した場合には、ステップS0010へと移行する。更に、その他のイベントが発生した場合には、ステップS0011へと移行する。
ここで、ステップS0005では、外部I/Fからの印刷データに含まれる印刷制御情報を解析し、指定された記録媒体の種類、用紙のサイズ、記録の品位、給紙方法などを判断し、その判断結果を表すデータを記録装置内のDRAM E2005に記憶し、ステップS0006へと進む。
次いでステップS0006ではステップS0005で指定された給紙方法により給紙を開始し、記録媒体を記録開始位置まで送り、ステップS0007に進む。
ステップS0007では記録動作を行う。この記録動作では、外部I/Fから送出されてきた記録データ(印刷イメージ情報)を、まず一旦受信バッファに格納する。その後受信バッファのデータを読み出して、その読み出しデータに種々の処理を施して、その処理後のデータをプリントバッファE2014に格納する。次いでCRモータE0001を駆動してキャリッジM4000の主走査方向への移動を開始すると共に、プリントバッファE2014に格納されている記録データを記録ヘッドH1001へと供給して1行分の記録を行う。1行分の記録データの記録動作が終了すると、続いてLFモータE0002を駆動し、搬送ローラM3060を回転させて記録媒体を副走査方向へと送る。この後、上記動作を繰り返し実行し、外部I/Fからの1ページ分の記録データの記録が終了すると、ステップS0008へと進む。
ステップS0008では、LFモータE0002を駆動し、排紙ローラM3100およびM3110を駆動し、記録媒体が完全に記録装置から送り出されたと判断されるまで紙搬送を繰返す。排紙が終了した時点で記録媒体は排紙トレイM3160上に排出され、ここで積載される。
ステップS0009では、記録すべき記録データが全て記録されたか否かを判定し、記録すべきページが残存する場合には、ステップS0005へ復帰する。そして、上述したステップS0005〜ステップS0009までの動作を繰り返し、記録すべき全てのデータの記録動作が完了した時点で記録動作は終了する。その後ステップS0004へと移行して、次のイベントを待つ。
一方、ステップS0010ではプリンタ終了処理を行い、記録装置の動作を停止させる。つまり、各種モータや記録ヘッドなどの電源を切断するために、電源を切断可能な状態に移行した後、電源を切断し、ステップS0002に進み、再び電源キーがONされるまで待機する。
また、ステップS0011では、上記以外の他のイベント処理を行う。例えば、記録装置の各種パネルキーや外部I/Fからの回復指令、また内部的に発生する回復イベントなどに対応し、それぞれに見合った処理を行う。なお、処理終了後にはステップS0004に進み、次のイベントを待つ。
図54は、本実施形態における特色インクを使用する場合の印刷データの処理を詳細に説明するためのフローチャートである。
ステップS0101では、ホスト装置などで作成され、外部I/Fから入力される印刷データに、記録媒体の情報(以下メディア情報と称す)があるか否かを判定する。情報がある場合、ステップS0102へ移行し、メディア情報がなければ、ステップS0103へ移行する。
ステップS0102では、メディア情報を受信バッファE2010から取得して、さらにその情報をDRAM E2005に記憶する。
ステップS0103では、外部I/Fから入力される印刷データに、記録の品位情報があるか否かを判定する。品位情報がある場合、ステップS0104へ移行し、品位情報がなければ、ステップS0105へ移行する。
ステップS0104では、品位情報を受信バッファE2010から取得して、さらにその情報をDRAM E2005に記憶する。
ステップS0105では、外部I/Fから入力される印刷データに、メディア情報と品位情報以外のその他の制御情報があるか否かを判定する。その他の制御情報があれば、ステップS0106へ移行し、情報がなければ、ステップS0107へ移行する。
ステップS0106では、その他の情報を受信バッファ E2010から取得して、さらにその情報をDRAM E2005に記憶する。ここで、その他の制御情報が複数ある場合は、それぞれの制御情報について、ステップS0105およびS0106と同様の処理が行なわれる。
ステップS0107では、DRAM E2005に記憶されているメディア情報、品位情報およびその他の制御情報と、ROM E1004に記憶されている制御情報のテーブルから、ワークバッファE2011、プリントバッファE2014、展開用データバッファE2016、図35で示したドット配置パターン、および図37で示したマスクパターンを決定し、これらを記憶する。
ステップS0108では、給紙処理が行なわれる。
続くステップS0109では、1行分の印刷イメージ情報とこれに含まれる色情報を取得する。
更に、ステップS0110では、ステップS0109で取得した印刷イメージ情報(印刷イメージデータ)が、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ、レッド、グリーン、およびブルーの印刷イメージ情報であるか否かを順に判定し、真であれば、ステップS0111に移行する。偽であれば、ステップS0115に移行し、取得した印刷イメージデータを読み捨てた後に、再度ステップS0110に戻る。
図57は、本実施形態の記録装置における色単位のバッファの構成を示した図である。S1001はワークバッファ情報、S1003はプリントバッファ情報、S1005はマスクパターン情報とドット配置パターン情報をそれぞれ示している。
ステップS0111では、図57を参照するに、ステップS109で取得した印刷イメージデータ(本実施形態では、C,M、Y,K、R,G,Bの各色4ビットデータ)に対し、ワークバッファ情報S1001に従って処理を施す。そして、ワークバッファE2011に確保された各色のワークバッファS1002に処理後の印刷イメージデータを出力する。
ステップS0112では、図57を参照するに、ステップS0111の処理で各色のワークバッファS1002に出力された印刷イメージデータ(C,M、Y,K、R,G,Bの各色4ビットデータ)に対し、プリントバッファS1003の情報に従って、処理を施す。そして、プリントバッファE2014内に確保された各色のプリントバッファS1004に処理後の印刷イメージデータを出力する。
ステップS0113では、図57を参照するに、ステップS0112の処理で各色のプリントバッファS1004に出力された印刷イメージデータ(C,M、Y,K、R,G,Bの各色4ビットデータ)に対し、マスクパターン情報およびドット配置パターン情報S1005に従って、処理を施す。そして、カラムバッファE2017内に確保された各色のカラムバッファS1006に処理後の印刷イメージデータ(C,M、Y,K、R,G,Bの各色1ビットデータ)を出力する。
各色のカラムバッファS1006に出力された印刷イメージデータは、記録ヘッドの各ノズルの制御部S1007に出力され、ステップS0114にて、1行分の記録が行なわれる。
ステップS0116では、記録すべき1ページ分のデータの記録が、全て完了したか否かを判断する。完了していない場合には、ステップS0109に戻り、ステップS0109からS0114までの処理を、1ページ分の印刷イメージ情報の記録が終了するまで繰り返す。
ステップS0116で全てのデータの記録が完了したと判断された場合、ステップS0117に進み、排紙処理が行なわれる。
以上で、1ページ分の記録が完了する。
(インク)
本発明の第1実施形態に好ましく適用できる基本色であるイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのインクと、特色であるレッド、グリーンおよびブルーのインクは、必須の構成要件として色材を含む。
第1実施形態において基本色(イエロー、マゼンタおよびシアンの三原色にブラックを加えたもの)のインクに用いる色材としては染料もしくは顔料を用いることができる。中でも、染料は明度の高い色の再現に優れるために好適に用いることができる。同じく特色(レッド、グリーンおよびブルー)のインクに用いる色材としても、染料もしくは顔料を用いることができる。中でも、染料は明度の高い色の再現に優れるために好適に用いることができる。
とりわけ、色材が記録媒体表面に凝集するインク(顔料系のインクはその傾向が強い)よりも、付着したインクが記録媒体に浸透して行くインク(染料系のインクはその傾向が強い)を用いることが強く好ましい。前者では後から付着した最上部のインク層で入射光がほとんど反射されてしまうのに対し、後者では入射光が記録媒体内部に形成される各色インク層で反射されるため、立体感および透明感を訴える効果が期待できるからである。
また、特色のインクは、基本色の組み合わせにより表現される色再現領域よりも明度の高い色を表現できるインクを用いることにより、特色の追加によって色域拡大されたインパクトのある画像を効果的に表現できるため好ましい。
すなわち、例えばイエローのインク、マゼンタのインク、および特色インクを用いて画像を形成する場合において、CIE−L*a*b*色空間上で特色インクで記録媒体上に表現される色が、少なくともイエローのインクとマゼンタのインクとの組み合わせにより記録媒体上に表現される色再現領域よりも明度が高く、かつ、特色インクで被記録媒体上に表現される色の色相角が、前記色再現領域内にあるようなレッドであることである。また、特色インクである当該レッドインクで記録媒体上に表現される色が、色再現領域よりも彩度が高い色であることが好ましい。
図60は、この条件を説明するために特色インクの色である当該レッド、イエローとマゼンタとの混色で形成される色、および、ポジティブフィルムで表現される色の、明度(L*)と彩度(c*;c*=(a*2+b*2)1/2)との関係を模式的に示した図である。このように、明度の高い色を表現できるインクを用いることにより、オレンジないしレッド領域での色の鮮やかさが増し、記録画像の透明感や立体感を表現できるようになる。一方、明度が低い場合には、たとえオレンジないしレッド領域の彩度が広がったとしても、鮮やかさに欠け、コントラストや立体感に欠ける記録画像しか得られず、目標とするポジフィルムに匹敵する画像を出力することは困難となる。上記条件は、イエローのインクおよびシアンのインクとグリーンのインクとの関係、並びにマゼンタのインクおよびシアンのインクとブルーのインクとの関係においても同様である。イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、レッド、グリーンおよびブルーのインクを用いる第1実施形態において、これら基本色インクおよび特色インクの色材の具体例としては以下のものが挙げられ、上記条件に適合するものを選択することができる。
シアン色材
C.I.ダイレクトブルー:1、15、22、25、41、76、77、80、86、90、98、106、108、120、158、163、168、199、226、307
C.I.アシッドブルー:1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、100、102、104、112、117、127、138、158、161、203、204、221、244
イエロー色材
C.I.ダイレクトイエロー:8、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、100、110、132、173
C.I.アシッドイエロー:1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99
マゼンタ色材
C.I.ダイレクトレッド:2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230
C.I.アシッドレッド:6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、42、51、52、80、83、87、89、92、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289
C.I.フードレッド:87、92、94
C.I.ダイレクトバイオレット107
この他に、例えば、特開2002−069348号公報に記載されている構造の化合物等も用いることができる。
ブラック色材
C.I.ダイレクトブラック:17、19、22、31、32、51、62、71、74、112、113、154、168、195
C.I.アシッドブラック:2、48、51、52、110、115、156
C.I.フードブラック1、2
カーボンブラック
この他に、例えば、国際公開WO00/43451号公報に記載されている構造の化合物等も用いることができる。
レッド色材
C.I.アシッドオレンジ7、10、33、56、67、74、88、94、116、142
C.I.アシッドレッド111、114、266、374
C.I.ダイレクトオレンジ26、29、34、39、57、102、118
C.I.フードイエロー3
C.I.リアクティブオレンジ1、4、5、7、12、13、14、15、16、20、29、30、84
C.I.ディスパースオレンジ1、3、11、13、20、25、29、30、31、32、47、55、56
または、上記イエロー色材とマゼンタ色材を適切に混合したもの等も用いることができる。
グリーン色材
C.I.アシッドグリーン5、6、9、12、15、16、19、21、25、28、81、84
C.I.ダイレクトグリーン26、59、67
C.I.フードグリーン3
C.I.リアクティブグリーン5、6、12、19、21
C.I.ディスパースグリーン6、9
または、上記イエロー色材とシアン色材を適切に混合したもの等も用いることができる。
ブルー色材
C.I.アシッドブルー62、80、83、90、104、112、113、142、203、204、221、244
C.I.リアクティブブルー49
C.I.ピグメントブルー15:6
C.I.アシッドバイオレット19、48、49、54、129
C.I.ダイレクトバイオレット9、35、47、51、66、93、95、99
C.I.リアクティブバイオレット1、2、4、5、6、8、9、22、34、36
C.I.ディスパースバイオレット1、4、8、23、26、28、31、33、35、38、48、56
または、上記マゼンタ色材とシアン色材を適切に混合したもの等も用いることができる。
さらに必要に応じて、例えばパーソナルユースのインクジェット記録装置で用いるインクでは、キャリア成分としての水のほか、信頼性の面から乾燥防止のための水溶性有機溶剤や保湿剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤などを含むものとすることができる。
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態は、プリンタにおいてインクが基本色インクCyan、Magenta、Yellowと特色インクRedに加え、Cyan、Magentaの染料濃度が薄い淡Cyan、淡Magentaインクを用いるものに関する。プリントシステムの構成およびその要素は、上述のように用いるインクの種類に応じて第1の実施形態と異なるが、以下では、その相違点を主に説明する。
(後段処理)
本実施形態の後段処理は、上記のとおり、プリンタにおいて用いられるインクが基本色インクCyan、Magenta、Yellowと特色インクRedに加え、Cyan、Magentaの染料濃度が薄い淡Cyan、淡Magentaインクであることに応じて、これら淡インク用の色分解データLc、Lmを含む色分解データを生成する。この場合に用いられる本実施形態の色分解テーブル(LUT)は、上述した第1実施形態の後段処理に加えられるものであり、次のような特徴を有するものである。なお、本実施形態の色分解データは、第1実施形態の後段処理によって得られる色分解データと滑らかにつながるように求められることはもちろんである。
例えば、特開平08−85219号公報に示した従来技術は、図61(a)における斜線で示す低彩度部分を、特色色材のBlueインクを用いないで再現する。この場合、図61(b)に示す斜線部分のように、本来特色色材によって拡大されるべき色域を有効に利用できないという問題を生じる。これに対し、本実施形態では、上記の図61(a)の斜線で示すような、特色色材を用いて表すことができる色相の低彩度部を、その色相の色を再現できる低濃度の色材だけでなく、これに加えて上記特色の色材を用いるような色分解テーブルとし、これにより、特色によって拡大され得る色域を有効に用いることができるともに粒状感の低減をも可能とするものである。
図62は、淡シアンおよび淡マゼンタの色分解データLcおよびLmを含む色分解データを生成するLUTの作成処理を示すフローチャートである。
まず、ステップS201で、所定のメモリに記憶されている濃淡分解前のフレームデータを読み込む。すなわち、淡シアンおよび淡マゼンタの色分解データを含まない色分解データY、M、C、K、Rを生成するLUTが作成されて、その中のフレームデータが読み込まれる。ここでフレームデータとは、LUT全体を図63(a)に示すような立方格子で概念的に表すときに、その立方格子の辺または対角線(フレーム:W→R、W→G、…、Y→K、・・・、W→K等)上に存在する格子点の格子点データ、すなわち色分解データを言う。例えば、フレームW→Bの色分解データは、図63(b)に示すものとなる。なお、フレームデータが読み込まれるLUTは、図63(a)に示す立方格子の内部の格子点を含めた総ての格子点について格子点データが求められている必要はなく、少なくとも所定のフレームについて格子点データが求められていればよいことはもちろんである。
次に、ステップS202では、ステップS201で読み込んだフレームデータにおいて、対応する淡インクが存在せずかつ濃淡分解の対象となる、特色Redインクの色分解データRが存在するかを判断し、存在すればステップS203に、一方、存在しなければステップS204に進む。
ステップS203では、Yellowインクと淡Mgentaインクに加えてRedインクを用いて、上記色分解データRを表現するためのこれらインクの色分解データを求めるためのパッチデータを作成する。具体的には、図64に示すように、特色のRedインクの色分解データはその一部を、このインクの色相Rを挟むそれぞれの色相YおよびLmに対応する淡(低い染料濃度の)インクであるYellowおよび淡Magentaの色分解データに分解し、これらの色分解データとRedインクの色分解データによって表現するパッチデータを作成する。そして、このデータに基づいて印刷出力(ステップS204)されたパッチの側色結果に基づいたステップS205〜S207に示す処理によって、色分解データRを濃淡分解した最終的なYellowおよび淡Magentaインクの色分解データを得る。この色分解データは、図65(a)に示すように、特色Redインクによる色にできるだけ等色するような、2次色淡インクの比率(図65(b))を有したものである。
ステップS204のパッチ出力は、上述のようにステップS203の処理で作成されたパッチデータに基づいている。パッチデータは色分解データRについて上記フレームごとに作成され、また、出力される。図66に示すように、x方向においてRedインクの打ち込み量Rが、y方向に2次色淡インクすなわちYellow+淡Magentaの打ち込み量Lr=Y+Lmが、それぞれ一定の比率で変化するようなクロスパッチデータを生成し、出力する。
次に、ステップS205では、上記クロスパッチを測色するとともに、このクロスパッチの粒状性を、例えばRMS粒状度として測定する。そして、ステップS206では、ステップS205で測色されたクロスパッチ測色情報を用いて、図67(a)に示すように、パッチの等明度ライン(明度が等しいパッチ(のデータ)を連結した線)を算出する。さらに、ステップS207では、図67(b)に示すように、上記で求めた等明度ラインごとに粒状性を算出する。すなわち、図67(b)は、図67(a)に示す明度L*=70の等明度ラインを示しており、これらの等明度ラインごとに粒状性の最も良い(粒状感が少ない)Yellowインクと淡Magentaインク混色比であるそれぞれの色分解データを求める。そして、ステップS208では、それぞれの等明度ラインについて、上記のように求めた粒状性の最も良いインク混色比の色分解データで、等明度ラインに対応する格子点の色分解データを更新する。このような色分解データの求め方により、上記公報における図12の斜線部分で表される色域と同様のRの低彩度部においてもYellowインクおよび淡Magentaインクと特色Redインクを用いることにより、特色インクによる拡大された色域を有効に利用することが可能となる。
ステップS209では、全てのフレームについて濃淡分解処理が終了したか否かを判断し、終了していれば、ステップS210に進み、終了していない場合はステップS201に戻り、未処理のフレームに対して濃淡分解処理を行う。ステップS210では、濃淡分解されたフレームの各格子点データを補間することにより、濃淡分解処理後のLUTを作成する。
以上説明したように、本実施形態によれば、特色インクによる色域の拡大が有効になされるとともに、基本色インクに加えて特色インクを用いる場合に、特色インクに対応する淡インクを用いることなく、ハイライト部の粒状感を低減させるような色分解LUTを作成することができる。また、色域の全体で特色が用いられることにより、上記公報のように、特色インクを用いる部分と用いない部分との境界において用いるインクの組合せに違いによって生じる擬似輪郭の問題を解消することもできる。
(記録ヘッド構成)
以下に本実施形態で適用するヘッドカートリッジH1000の構成について説明する。
本実施形態におけるヘッドカートリッジH1000においても、第1の実施形態と同様に、記録ヘッドH1001と、インクタンクH1900を搭載する手段、およびインクタンクH1900から記録ヘッドにインクを供給するための手段を有しており、キャリッジM4000に対して着脱可能に搭載される構成となっている。
本実施形態においても、ヘッドカートリッジH1000に対し、インクタンクH1900を装着する様子は、既に説明した図46が適用できる。ただし、本実施形態の記録装置は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、レッド、ライトシアンおよびライトマゼンタの7色のインクによって画像を形成するので、インクタンクH1900も、以上の7色分が独立に用意されている。
図49は、本実施形態におけるヘッドカートリッジH1000の分解斜視図を示したものである。本実施形態においては、ヘッドカートリッジH1000の構成においても、ほぼ、第1の実施形態で説明した図47と同様である。よってそれぞれの詳細な説明および組み立て方法はここでは省略する。ただし、本実施形態においては、7色分用意されたインクタンクH1900のインクを、9列のノズル列に分配する構成となっており、各ノズル列が形成されている第1の記録素子基板H3600および第2の記録素子基板H3601などが、第1の実施形態のものとは異なっている。
図50は、本実施形態における、第1の記録素子基板H3600および第2の記録素子基板H3601の構成を説明するための正面拡大図である。H2700〜H3500は、それぞれ異なる、あるいは同色のインク色に対応するノズル列であり、第1の記録素子基板H3600には、ライトシアンの供給されるノズル列H3200、ブラックインクの供給されるノズル列H3300、レッドインクの供給されるノズル列H3400、およびライトマゼンタインクの供給されるノズル列H3500の4色分のノズル列が構成されている。
第2の記録素子基板H3601には、シアンインクの供給される2列のノズル列H2700およびH3100、マゼンタインクの供給される2列のノズル列H2800およびH3000、さらにイエローインクの供給されるノズル列H2900の3色分で5列のノズル列が形成されており、イエローインクのノズル列H2900を中心に、両側に線対称にマゼンタおよびシアンのノズル列が配列した構成となっている。
このようにシアン、マゼンタ、およびイエローのノズル列を、キャリッジM4000の走査方向に対し対称に配置することは、キャリッジM4000の双方向印刷を行った際に、色ムラという画像弊害を低減する効果がある。色むらとは、主に、記録媒体へ着弾するインクの色順が異なることによって生じる発色性の違いが原因となっている。本実施形態のように、イエローインクのノズル列H2900を中心に、マゼンタとシアンのノズル列が2列ずつ対称に構成されていれば、往路と復路で、利用するノズル列を切り替えることにより、記録媒体へ着弾するインクの順番を統一することが出来るのである。よって、本実施形態においては、高品位な画像を双方向で高速に形成可能なことが特徴となっている。
尚、ノズル列の配置は利用する7色すべてにおいて、対称であることが好ましいが、装置の大型化、コストアップ、およびデータ処理の複雑化を招いてしまうことから、本実施形態においては、特に双方向印刷時の色ムラへの寄与が大きい3色、すなわち、シアン、マゼンタ、およびイエローのノズル列のみを対称に配置している。
また、本実施形態のインク流路H1501は、シアンインク用の流路とマゼンタインク用の流路が途中で二股に分岐しており、それぞれ1つのインクタンクから供給されたインクを、2列のノズル列に分配可能な構成となっている。
(記録装置のシーケンス)
以下に本実施形態の記録装置における一連の動作を説明する。本実施形態の記録装置における電源ON時のシーケンスは、図53のフローチャートを用いて説明したものと同様である。
図55は、本実施形態における6色のインクを7列のノズル列を用いて記録する場合の印刷データの処理を説明するためのフローチャートである。なお、ステップS0201〜ステップS0209に関しては、上記第1の実施形態の図54で説明したステップS0101〜S0109と同様であるので、ここでは説明を省略し、ステップS0210以降の処理について説明する。
ステップS0210では、ステップS0209で取得した印刷イメージ情報(印刷イメージデータ)が、ブラック、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタおよびレッドの印刷イメージ情報であるか否かを順に判定し、真であれば、ステップS0211に移行し、偽であれば、ステップS0215に移行する。
図58は、本実施形態の記録装置における色単位のバッファの構成を示した図である。S1101はワークバッファ情報、S1104はプリントバッファ情報、S1107はマスクパターン情報とドット配置パターン情報をそれぞれ示している。
ステップS0211では、図58を参照するに、ステップS0209の処理で取得した印刷イメージデータに対し、ステップS0207で記憶されたワークバッファ情報S1101に従って、処理を施す。そして、ワークバッファE2011に確保された各色のワークバッファS1102およびS1103に処理後の印刷イメージデータを出力する。
ステップS0212では、図58を参照するに、ステップS0211でワークバッファS1102およびS1103に出力された印刷イメージデータに対し、ステップS0207で記憶されたプリントバッファ情報S1104に従って、処理を施す。そして、プリントバッファE2014内に確保された各色のプリントバッファS1105およびS1106に処理後の印刷イメージデータを出力する。
ステップS0213では、図58を参照するに、ステップS0212でプリントバッファE2014内に確保された各色のプリントバッファS1105およびS1106の印刷イメージデータに対し、ステップS0207で記憶されているマスクパターン情報およびドット配置パターン情報S1007に従って、処理を施す。そして、カラムバッファE2017内に確保された各色のカラムバッファS1108に印刷イメージデータを出力する。
各色のカラムバッファS1108に出力された印刷イメージデータは、記録ヘッドの各ノズルの制御部S1109に出力される。
ステップS0209で取得した印刷イメージデータのうち、シアンおよびマゼンタの情報はステップS0215以降の工程で処理される。
ステップS215では、ステップS0209で取得した情報が、シアンインクの印刷イメージ情報であるか否かを判定し、真であれば、ステップS0216に移行し、偽であれば、ステップS0223に移行する。
ステップS216では、図58を参照するに、ステップS0209で取得したシアンのイメージ情報に対し、ステップS0207で記憶されたワークバッファ情報S1104に従って処理を施す。そして、ワークバッファE2011内に確保されたワークバッファS1103のシアンの領域に、処理後の印刷イメージデータを出力する。
ステップS0217では、図58を参照するに、ステップS0216でワークバッファS1103に出力したシアンのイメージデータに対し、ステップS0207で記憶されているプリントバッファ情報S1104に従って、処理を施す。そして、プリントバッファE2014内に確保されたプリントバッファS1106のシアンの領域に処理後の印刷イメージデータを出力する。
ステップS0218では、次の行を記録するための記録走査(スキャン)が、偶数番目にあたるか奇数番目にあたるかを判断する。偶数番目の場合はステップS0220へ進み、奇数番目の場合はステップS0222へ進む。
ステップS0220では、ステップS0217でプリントバッファS1106のシアン領域に出力された印刷イメージデータに対し、ステップS0207で記憶されているS1107のマスクパターン情報、ドット配置パターン情報に従った処理を施して、カラムバッファE2017内に確保されたカラムバッファS1108のC1の領域に印刷イメージデータを出力する。ここで、C1とは、シアンインク用に用意された2列のノズル列のうちの1列に相当するものである。
ステップS0220にて、カラムバッファS1108内のC1の領域に出力された印刷イメージデータは、記録ヘッドのC1ノズル列の制御部S1109に出力される。
一方、ステップS0222では、ステップS0217でプリントバッファS1106のシアン領域に出力された印刷イメージデータに対し、ステップS0207で記憶されているS1107のマスクパターン情報、ドット配置パターン情報に従った処理を施して、カラムバッファE2017内に確保されたカラムバッファS1108のC2の領域に印刷イメージデータを出力する。ここで、C2とは、シアンインク用に用意された2列のノズル列のうちの、上記C1とは異なるもう1列に相当するものである。
ステップS0222にて、カラムバッファS1108内のC2の領域に出力された印刷イメージデータは、記録ヘッドのC2ノズル列の制御部S1109に出力される。
ステップS0215で偽と判断された場合、ステップS0223に移行し、ステップS0209で取得した情報が、マゼンタインクの印刷イメージ情報であるか否かを判定する。真であれば、ステップS0224に移行する。偽であれば、ステップS0231に移行し、取得したイメージデータを読み捨てた後に、再度ステップS0209に戻る。
ステップS0224では、図58を参照するに、ステップS0209で取得したマゼンタのイメージ情報に対し、ステップS0207で記憶されたワークバッファ情報S1104に従って処理を施す。そして、ワークバッファE2011内に確保されたワークバッファS1103のマゼンタの領域に、処理後の印刷イメージデータを出力する。
ステップS0225では、図58を参照するに、ステップS0224でワークバッファS1103に出力したマゼンタのイメージデータに対し、ステップS0207で記憶されているプリントバッファ情報S1104に従って、処理を施す。そして、プリントバッファE2014内に確保されたプリントバッファS1106のマゼンタの領域に処理後の印刷イメージデータを出力する。
ステップS0226では、次の行を記録するための記録走査(スキャン)が、偶数番目にあたるか奇数番目にあたるかを判断する。偶数番目の場合はステップS0228へ進み、奇数番目の場合はステップS0230へ進む。
ステップS0228では、ステップS0225でプリントバッファS1106のマゼンタ領域に出力された印刷イメージデータに対し、ステップS0207で記憶されているS1107のマスクパターン情報、ドット配置パターン情報に従った処理を施して、カラムバッファE2017内に確保されたカラムバッファS1108のM1の領域に印刷イメージデータを出力する。ここで、M1とは、マゼンタインク用に用意された2列のノズル列のうちの1列に相当するものである。
ステップS0228にて、カラムバッファS1108内のM1の領域に出力された印刷イメージデータは、記録ヘッドのM1ノズル列の制御部S1109に出力される。
一方、ステップS0230では、ステップS0225でプリントバッファS1106のマゼンタ領域に出力された印刷イメージデータに対し、ステップS0207で記憶されているS1107のマスクパターン情報、ドット配置パターン情報に従った処理を施して、カラムバッファE2017内に確保されたカラムバッファS1108のM2の領域に印刷イメージデータを出力する。ここで、M2とは、マゼンタインク用に用意された2列のノズル列のうちの、上記M1とは異なるもう1列に相当するものである。
ステップS0230にて、カラムバッファS1108内のM2の領域に出力された印刷イメージデータは、記録ヘッドのM2ノズル列の制御部S1109に出力される。
記録ヘッドの各ノズルの制御部S1109に出力された印刷イメージデータは、ステップS0214にて、1行分の記録処理が行なわれる。
続くステップS0232では、記録すべき1ページ分のデータの記録が、全て完了したか否かを判断する。完了していない場合には、ステップS0209に戻り、ステップS0209からS0214までの処理を、1ページ分の印刷イメージ情報の記録が終了するまで繰り返す。
ステップS0232で全てのデータの記録が完了したと判断された場合、ステップS0233に進み、排紙処理が行なわれる。
以上で、1ページ分の記録が完了する。
(インク)
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、レッド、ライトマゼンタおよびライトシアンのインクを用いる第2実施形態において、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックおよびレッドの色材の具体例としては第1の実施形態と同様のものを用いることができる。またライトマゼンタおよびライトシアンの色材の具体例としては、上記第1の実施形態に記載のシアン色材及びマゼンタ色材から、上記条件に適合するものを選択することができる。なお、ライトシアンの色材は、シアンの色材と同じものを用いてもよいし、異なるものを用いても良い。また、マゼンタについても同様である。
なお、ライトシアン、ライトマゼンタとは、同時に組み合わせて使用するシアン、マゼンタに対して相対的に色材濃度が低いインクを指すものである。さらに必要に応じて、例えばパーソナルユースのインクジェット記録装置で用いるインクでは、キャリア成分としての水のほか、信頼性の面から乾燥防止のための水溶性有機溶剤や保湿剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤などを含むものとすることができる。
以上は次に述べる第3の実施形態でも同様である。
<第3の実施形態>
本発明の第3実施形態は、上述した第2実施形態と同じインクを用いるが記録へッドにおけるインクごとの吐出口配列など構造が異なるものであり、また、それに応じて記録シーケンスを異ならせたものである。以下、これらの相違点について説明する。
(記録ヘッド構成)
以下に本実施形態で適用するヘッドカートリッジH1000の構成について説明する。
本実施形態におけるヘッドカートリッジH1000においても、上述した実施形態と同様に、記録ヘッドH1001と、インクタンクH1900を搭載する手段、およびインクタンクH1900から記録ヘッドにインクを供給するための手段を有しており、キャリッジM4000に対して着脱可能に搭載される構成となっている。
本実施形態においても、ヘッドカートリッジH1000に対し、インクタンクH1900を装着する様子は、既に説明した図46が適用できる。本実施形態の記録装置においても、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、レッド、ライトシアンおよびライトマゼンタの7色のインクによって画像を形成するので、インクタンクH1900も、以上の7色分が独立に用意されている。
図51は、本実施形態におけるヘッドカートリッジH1000の分解斜視図を示したものである。本実施形態においては、ヘッドカートリッジH1000の構成においても、ほぼ、上述した実施形態で説明した図と同様である。よってそれぞれの詳細な説明および組み立て方法はここでは省略する。ただし、本実施形態においては、各ノズル列が形成されている第1の記録素子基板H4700および第2の記録素子基板H4701などが、上述の実施形態のものとは異なっている。
図52は、本実施形態における、第1の記録素子基板H4700および第2の記録素子基板H4701の構成を説明するための正面拡大図である。H4000〜H4600は、それぞれ異なるインク色に対応するノズル列であり、第1の記録素子基板H4700には、ライトマゼンタの供給されるノズル列H4000、レッドインクの供給されるノズル列H4100、ブラックインクの供給されるノズル列H4200、およびライトシアンインクの供給されるノズル列H4300の4色分のノズル列が構成されている。
第2の記録素子基板H4701には、シアンインクの供給されるノズル列H4400、マゼンタインクの供給されるノズル列H4500、およびイエローインクの供給されるノズル列H4600の3色分のノズル列が形成されている。
(記録装置のシーケンス)
以下に本実施形態の記録装置における一連の動作を説明する。本実施形態の記録装置における電源ON時のシーケンスは、図53のフローチャートを用いて説明したものと同様である。
図56は、本実施形態における印刷データの処理を説明するためのフローチャートである。なお、図56のステップS0301〜ステップS0309に関しては、上記第1の実施形態の図54で説明したステップS0101〜S0109と同様であるので、ここでは説明を省略し、ステップS310以降の処理について説明する。ステップS0310では、ステップS0309で取得したイメージが、ブラック、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタおよびレッドの印刷イメージ情報であるか否かを判定し、真であれば、ステップS0311に移行する。偽であれば、ステップS0315に移行し、取得したイメージデータを読み捨てた後に、再度ステップS0310に戻る。ここでは、C、M、Y、K、R、LC,LMの7色全ての印刷イメージデータが存在したとする仮定する。
図59は、本実施形態の記録装置における色単位のバッファの構成を示した図である。S1201はワークバッファ情報、S1203はプリントバッファ情報、S1205はマスクパターン情報とドット配置パターン情報をそれぞれ示している。
ステップS0311では、図59を参照するに、ステップS0309で取得した印刷イメージデータ(C、M、Y、K、R,LC,LMの各色4ビットデータ)に対し、ステップS0307で記憶されたワークバッファ情報S1001に従って処理を施す。そして、ワークバッファE2011に確保された各色のワークバッファS1202に処理後の印刷イメージデータを出力する。
ステップS0312では、図59を参照するに、ステップS0311の処理で各色のワークバッファS1202に出力された印刷イメージデータに対し、ステップS0307で記憶されたプリントバッファS1203の情報に従って、処理を施す。そして、プリントバッファE2014内に確保された各色のプリントバッファS1204に処理後の印刷イメージデータを出力する。
ステップS0313では、図59を参照するに、ステップS0312の処理で各色のプリントバッファS1204に出力された印刷イメージデータに対し、ステップS0307で記憶されているマスクパターン情報およびドット配置パターン情報S1205に従って、処理を施す。そして、カラムバッファE2017内に確保された各色のカラムバッファS1206に処理後の印刷イメージデータ(C、M、Y、K、R,LC,LMの各色1ビットデータ)を出力する。
各色のカラムバッファS1206に出力された印刷イメージデータは、記録ヘッドの各ノズルの制御部S1207に出力され、ステップS0314にて、1行分の記録が行なわれる。
ステップS0316では、記録すべき1ページ分のデータの記録が、全て完了したか否かを判断する。完了していない場合には、ステップS0309に戻り、ステップS0309からS0314までの処理を、1ページ分の印刷イメージ情報の記録が終了するまで繰り返す。
ステップS0316で全てのデータの記録が完了したと判断された場合、ステップS0317に進み、排紙処理が行なわれる。
以上で、1ページ分の記録が完了する。
<他の実施形態>
本発明は上述のように、複数の機器(たとえばホストコンピュータ、インタフェース機器、リーダ、プリンタ等)から構成されるシステムに適用しても一つの機器(たとえば複写機、ファクシミリ装置)からなる装置に適用してもよい。
また、前述した実施形態の機能を実現するように各種のデバイスを動作させるように該各種デバイスと接続された装置あるいはシステム内のコンピュータに、前記実施形態機能を実現するためのソフトウェアのプログラムコードを供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(CPUあるいはMPU)を格納されたプログラムに従って前記各種デバイスを動作させることによって実施したものも本発明の範疇に含まれる。
またこの場合、図1に示した各処理を実行するソフトウェアのプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、およびそのプログラムコードをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムコードを格納した記憶媒体は本発明を構成する。
かかるプログラムコードを格納する記憶媒体としては例えばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
またコンピュータが供給されたプログラムコードを実行することにより、前述の実施形態の機能が実現されるだけではなく、そのプログラムコードがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)、あるいは他のアプリケーションソフト等と共同して前述の実施形態の機能が実現される場合にもかかるプログラムコードは本発明の実施形態に含まれることは言うまでもない。
さらに供給されたプログラムコードが、コンピュータの機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに格納された後そのプログラムコードの指示に基づいてその機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も本発明に含まれることは言うまでもない。
また、図1に示した各処理を実行する画像処理装置は、前述したようなPCに限られることはなく、例えば、プリンタが上記の各処理を実行すればそれが画像処理装置であるように、本発明の適用に際して上記の各処理を実行する装置または複数の装置からなるシステムは画像処理装置に含まれる。