JP4335880B2 - 溶接トーチの動作シミュレーション方法および装置 - Google Patents
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例えば、プラント用の圧縮機のインペラ等、複雑な形状の部品等を溶接する場合、溶接線に沿って溶接を行うために溶接トーチを移動させようとすると、圧縮機インペラ自体をはじめ、周囲に様々な干渉物がある。したがって、溶接を行いながら、干渉物を避けるために溶接トーチの姿勢を変化させなければならないことも多い。このように溶接対象物が複雑な形状の場合に上記従来の技術を単純に適用しようとすると、シミュレーション自体が非常に複雑になり、例えば高度な画像処理が要求されることになって、技術的に困難である。さらに、シミュレーションを行えたとしても、コンピュータ装置による処理に多大な負荷がかかり、シミュレーションに要する時間やコストの面で現実的には採用できるものではない。
さらに、確実な溶接を行うには、単に、溶接ができる、というだけでなく、溶接品質確保の観点から、溶接トーチの溶接対象物に対する角度や、溶接トーチの動き等、より理想的な溶接条件に近い状態で溶接が行えるようにするのが好ましい。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、複雑な形状の部品等を溶接する場合においても、溶接トーチの溶接線に沿った動作をシミュレートすることができ、より理想的な条件に近い状態で溶接を行うことが可能となる溶接トーチの動作を見出すことのできる溶接トーチの動作シミュレーション方法および装置を提供することを目的とする。
また、他の目的は、手作業で溶接を行う場合に、その作業の評価を行うことのできる溶接トーチの動作シミュレーション方法および装置を提供することにある。
ここで、候補姿勢は、溶接トーチを、基準姿勢に対して一定角度ずつ変位させることで生成することができる。さらに、候補姿勢は、溶接トーチを、基準姿勢に対し、それぞれの位置における溶接線の接線に対する角度と、溶接すべき二つの部材の中間位置に対する角度を異ならせることで生成できる。もちろん、いずれか一方のみ、あるいは他の方向に候補姿勢を変化させることも可能である。
候補姿勢の基準姿勢との差と、姿勢変化量との累積に基づき、溶接トーチの最適動作情報を生成するには、候補姿勢の基準姿勢との差をノード、姿勢変化量をアークとし、ノードとアークのそれぞれに設定された重み付け係数と、前記のノード、アークとの積の累積に基づいて評価値を算出し、その評価値による評価が最も高いものを溶接トーチの最適動作とすることができる。
このようにして、溶接トーチの最適動作を、コンピュータ装置による評価によって、自動的に求めることが可能となる。
この場合、溶接対象物が、圧縮機インペラ等、三次元状の溶接線を有するものである場合に本発明は特に有効であるが、溶接対象物は、必ずしも三次元状の溶接線を有するものに限らず、直線状の溶接線に沿って溶接を行うような溶接対象物であっても良い。
また、最適動作情報生成手段は、候補姿勢の基準姿勢との差をノードとし、姿勢変化量をアークとし、ノードとアークのそれぞれに設定された重み付け係数と、ノード、アークとの積の累積に基づき、溶接トーチの最適動作情報を生成するのが有効である。
また、手作業で溶接を行う場合に、最適な動作との比較によりその作業の評価を行うことが可能となる。
図1は、本実施の形態における溶接動作シミュレーションシステム10の構成を説明するための図である。
この図1に示すように、溶接動作シミュレーションシステム10は、ハードウェア的にはCADシステムからなり、CADシステムに、溶接動作シミュレーションシステム10としての機能を発現するためのコンピュータプログラムを導入することで構成される。すなわち、溶接動作シミュレーションシステム10は、予めインストールされたコンピュータプログラムに基づいて、CADシステムを構成するコンピュータ装置のCPUやメモリ等が協働して所定の処理を実行することによって機能的に実現されるものである。
なお、本実施の形態において、溶接動作シミュレーションシステム10では、図2に示すように、溶接トーチ20を用い、圧縮機インペラ(溶接対象物)30のブレード31をカバー32やディスク33に溶接する場合における、溶接トーチ20による溶接を行うための溶接トーチ軌道生成を行うものとする。
処理手段12においては、溶接部位に対する溶接トーチ20の挿入可能な範囲内において溶接を行うときの溶接トーチ20の最適な動作を求めるトーチ動作探索処理と、圧縮機インペラ30を保持し、溶接トーチ20に対する圧縮機インペラ30の姿勢を変化させるポジショナ(図示無し)の、溶接時における最適な動作を求めるポジショナ動作探索処理と、を少なくとも行い、溶接時における溶接トーチ20およびポジショナの最適な動作を求める。
この後、求めた最適な動作を、溶接トーチ20を保持するロボットアーム50、ポジショナに実行させるための教示プログラムを生成することもできる。
また、後述するように、求めた最適な動作と、作業者が手作業で溶接を行う際の動作とを比較し、作業者の溶接作業の評価を行うこともできる。
オペレータは、表示手段13に表示された圧縮機インペラ30の三次元モデルを見て、溶接トーチ軌道生成の対象となる溶接線を、入力手段11のマウス等を用いて選択・指定する(ステップS102)。
これにより、位置P1、P2、…のそれぞれにおいて、姿勢情報(θ1、θ2)が異なる溶接トーチ20の候補姿勢を複数取得する(ステップS104)。
この変化量は、互いに前後する2つの位置、例えば位置P1と位置P2のそれぞれの候補姿勢の数の組み合わせ分だけ算出されることになる。
これには、例えば、以下のような評価式F1を用いることができる。
F1=w1×θ1+w2×θ2+w3×Intersec+w4×σ+w5×δ
ここで、Intersecは溶接トーチ20の干渉の有無の判定結果、σは角速度、δは角加速度であり、w1〜w5は予め設定した重み付け係数。
F=w1×θ1+w3×Intersec+w4×σ+w5×δ
であり、w1=1、W2=200、w3=1、w4=5とした。
すると、候補1は、
F=(1*0 + 100*1)+(1*0 + 5*0)
+(1*0 + 100*1)+(1*20 + 5*0)
+(1*0 + 100*1)+(1*15 + 5*5)
+(1*0 + 100*0)+(1*10 + 5*5)
+(1*0 + 100*0)+(1*15 + 5*5)
=100 + 120 + 140 + 35 + 40 = 435
候補2は、
F=(1*50 + 100*0)+(1*0 + 5*0)
+(1*30 + 100*0)+(1*0 + 5*0)
+(1*15 + 100*0)+(1*0 + 5*0)
+(1*5 + 100*0)+(1*0 + 5*0)
+(1*5 + 100*0)+(1*0 + 5*5)
=50 + 30 + 15 + 5 + 30 = 130
候補3は、
F=(1*40 + 100*0)+(1*0 + 5*0)
+(1*20 + 100*0)+(1*0 + 5*0)
+(1*5 + 100*0)+(1*0 + 5*0)
+(1*0 + 100*0)+(1*5 + 5*5)
+(1*0 + 100*0)+(1*15 + 5*10)
=40 + 20 + 5 + 30 + 65 = 160
その場合、ポジショナによって保持された圧縮機インペラ30の最適な姿勢を求めるため、ポジショナの動作探索処理を行う。
これには、まず、ポジショナの三次元モデル(仮想モデル)をポジショナのCADデータから構築する。そして、位置P1、P2、…のそれぞれにおいてポジショナの三次元モデルを、角度γ、εに対して一定角度ずつ回転させ、このときの角度γ、εに対する角度θ3、θ4を姿勢情報(θ3、θ4)として取得する。
これにより、位置P1、P2、…のそれぞれにおいて、姿勢情報(θ3、θ4)が異なるポジショナの候補姿勢が複数取得されることになる(ステップS202)。
この変化量は、互いに前後する2つの位置(例えば位置P1と位置P2)のそれぞれの候補姿勢の数の組み合わせ分だけ算出されることになる。
これには、例えば、以下のような評価式F2を用いることができる。
F2=w6×θ3+w7×θ4
ここで、w6、w7は予め設定した重み付け係数。
このような評価式F2を用い、全検索、もしくはダイクストラ法等のグラフ理論により、ポジショナを溶接線100に沿って動かしたときのポジショナの姿勢変化を評価し、最適な評価値を有するポジショナの動作を求める(ステップS205)。
これには、例えば、モーションキャプチャー等を用い、作業者が手作業で溶接を行う場合の溶接線100に沿った溶接トーチ20の動作を示す動作情報(データ)を取得する。この動作情報は、後述するように、溶接トーチ20を溶接線100に沿って動作させたときの姿勢情報を取得できるものであれば、いかなる形態のものであっても良い。
この、作業者による溶接トーチ20の動作を示す動作情報を、溶接動作シミュレーションシステム10に、各種記憶媒体やネットワークを介して入力する。
そして、前記のステップS108で得た、位置P1、P2、…における、溶接トーチ20の最適な姿勢情報(θ1、θ2)と、前記の姿勢情報(θ1’、θ2’)との比較から、溶接作業の評価を行う。この評価には、表示手段13等に、位置P1、P2、…における、溶接トーチ20の最適な姿勢と、作業者による溶接トーチ20の姿勢とを、色分け等によって識別可能な状態で表示したり、これをプリンタ等で印刷しても良い。また、位置P1、P2、…における、最適な姿勢情報(θ1、θ2)と、前記の姿勢情報(θ1’、θ2’)との差を算出し、その差を用い、最適な溶接トーチ20の動作に対する実際の作業者による動作を数値化して評価することもできる。数値化のための式には様々な数学的手法を用いることが考えられるので、ここでは具体的な式を開示しない。
これにより、圧縮機インペラ30のように三次元的な溶接線100を溶接トーチ20で溶接する場合であっても、溶接トーチ20が圧縮機インペラ30等に干渉することなく、円滑に、かつ確実な品質で溶接を行うことが可能となる。
また、得られた溶接トーチ20およびポジショナの最適な動作から、溶接トーチ20を保持するロボットアーム50やポジショナの教示プログラムを作成することもでき、これにより教示プログラムの自動作成も可能となる。
この他、得られた溶接トーチ20およびポジショナの最適な動作から、作業者が手作業で溶接を行うときの動作の評価も可能となり、これによって複数の作業者による溶接作業のバラつきを抑えることができ、溶接品質の向上の可能性がある。
また、一連の処理においては、同様の結果を得られるのであれば、詳細な処理方法等は適宜変更することが可能であるのは言うまでもない。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
Claims (10)
- 圧縮機インペラの溶接線に沿って溶接を行うための溶接トーチの動作をコンピュータ装置でシミュレーションする方法であって、
前記溶接線に沿った複数の位置のそれぞれにおける前記溶接トーチの理想的な基準姿勢に対し、前記位置のそれぞれにおける前記溶接トーチの複数の候補姿勢を生成し、前記候補姿勢の前記基準姿勢との差を算出するステップと、
前記溶接線上で互いに前後する前記位置間において、一方の前記位置における複数の前記候補姿勢のそれぞれから、他方の前記位置における複数の前記候補姿勢のそれぞれに姿勢変化するときの姿勢変化量を算出するステップと、
前記候補姿勢の前記基準姿勢との差と、前記姿勢変化量との累積に基づき、前記溶接トーチの最適動作情報を生成するステップと、
を含むことを特徴とする溶接トーチの動作シミュレーション方法。 - 前記候補姿勢は、前記溶接トーチを、前記基準姿勢に対して一定角度ずつ変位させたものであることを特徴とする請求項1に記載の溶接トーチの動作シミュレーション方法。
- 前記候補姿勢は、前記溶接トーチを、前記基準姿勢に対し、それぞれの前記位置における前記溶接線の接線に対する角度と、溶接すべき二つの部材の中間位置に対する角度を異ならせたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の溶接トーチの動作シミュレーション方法。
- 前記圧縮機インペラおよび前記溶接トーチの仮想モデルを構築し、前記候補姿勢のそれぞれにおいて、前記溶接トーチの仮想モデルが前記圧縮機インペラの仮想モデルと干渉するか否かを判定するステップをさらに備え、
前記溶接トーチの最適動作情報を生成するステップでは、前記圧縮機インペラに干渉しない前記溶接トーチの最適動作情報を生成することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の溶接トーチの動作シミュレーション方法。 - 前記溶接トーチと溶接部位が対向するように前記圧縮機インペラを保持し、前記溶接トーチに対する前記圧縮機インペラの姿勢を変化させるポジショナについて、前記溶接線に沿った複数の位置のそれぞれにおける前記溶接トーチの姿勢を基準としたときの前記ポジショナの理想的な基準姿勢を取得した後、前記位置のそれぞれにおける前記ポジショナの複数の候補姿勢を生成し、前記候補姿勢の前記基準姿勢との差を算出するステップと、
前記候補姿勢の前記基準姿勢との差の累積が最小となる前記ポジショナの最適動作情報を生成するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の溶接トーチの動作シミュレーション方法。 - 前記溶接トーチの最適動作情報および前記ポジショナの最適動作情報に基づき、前記溶接トーチを保持して移動させるロボットアームと、前記ポジショナとを制御するための教示プログラムを生成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の溶接トーチの動作シミュレーション方法。
- 作業者が手作業で前記溶接線に沿った溶接作業を行うときの前記溶接トーチの動作情報の外部からの入力を受け付け、前記溶接トーチの最適動作情報との差を算出するステップと、
算出された前記差に基づき、作業者による溶接作業を評価する評価値を生成するステップと、
を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の溶接トーチの動作シミュレーション方法。 - 溶接対象物の溶接線に沿って溶接を行うための溶接トーチの動作をシミュレーションする装置であって、
前記溶接線に沿った複数の位置のそれぞれにおける前記溶接トーチの理想的な基準姿勢に対し、前記位置のそれぞれにおける前記溶接トーチの複数の候補姿勢を生成し、前記候補姿勢の前記基準姿勢との差を算出する基準姿勢算出手段と、
前記溶接線上で互いに前後する前記位置間において、一方の前記位置における複数の前記候補姿勢のそれぞれから、他方の前記位置における複数の前記候補姿勢のそれぞれに姿勢変化するときの姿勢変化量を算出する姿勢変化量算出手段と、
前記候補姿勢の前記基準姿勢との差と、前記姿勢変化量との累積に基づき、前記溶接トーチの最適動作情報を生成する最適動作情報生成手段と、
を含むことを特徴とする溶接トーチの動作シミュレーション装置。 - 前記溶接対象物は、三次元状の溶接線を有するものであることを特徴とする請求項8に記載の溶接トーチの動作シミュレーション装置。
- 前記最適動作情報生成手段は、
前記候補姿勢の前記基準姿勢との差をノードとし、前記姿勢変化量をアークとし、
前記ノードと前記アークのそれぞれに設定された重み付け係数と、前記ノード、前記アークとの積の累積に基づき、前記溶接トーチの最適動作情報を生成することを特徴とする請求項8または9に記載の溶接トーチの動作シミュレーション装置。
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