JP4333597B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Description
アルミニウム系材料を基板として用いた磁気記録媒体では、基板表面にテクスチャと呼ばれる円周方向の溝を形成して異方性を得ている。一般的には、アルミニウム基板上にNiPメッキを施し、その表面にテクスチャ加工を行うことにより、円周状の溝を形成し、その溝により磁性層の円周方向と半径方向の残留磁化の差を発生させている。テクスチャ加工は、磁気記録媒体上を磁気ヘッドが浮上しシークする時に、磁気記録媒体と磁気ヘッドが接触し磨耗することを防止する役割も併せ持っている。
近年、磁気記録媒体の高密度化が進み、磁気記録媒体に書き込まれるデータの最小単位であるビットサイズはますます小さくなってきている。ガラス系基板を用いた等方性媒体ではビットサイズが小さくなると、アルミニウム系基板のような異方性磁気記録媒体と比較して分解能が低く、また信号対雑音比(SNR)が悪くなるという特性が顕著になってきている。これは等方性磁気記録媒体で異方性磁気記録媒体と同等な特性を得ようとすると円周方向の残留磁化と膜厚の積(Mr・t)を高くする必要があり、磁性層が厚くなる結果、磁性層に起因するノイズが増大するためである。このため、ガラス基板を用いた磁気記録媒体において、磁性層の配向性を向上するための各種の工夫が提案されてきている。例えば、基板上に形成した下地層の表面を酸化処理することにより、磁性層の磁化容易軸の面内配向を向上することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法は特定の下地層材料に対しては効果を有するものの、他の材料においては却って特性を劣化させる結果をもたらす。また、磁性層を構成する結晶粒を基板面に対して傾け、円周方向に向かせることにより、円周方向の保磁力を増大させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この方法においては特殊な成膜装置が必要とされ、またスパッタ成膜時の原材料の使用効率が低下する欠点を有している。これまでに提案されているいずれの方法においても、充分な性能を得るにはいたっていないのが現状である。
テクスチャ加工は、1μm平方あたり25本以上、60本以下の略同心円状の溝であることが好ましく、同心円状の溝の深さは、3nm以上、5nm以下であることがさらに好ましい。
また、第2シード層もしくは第4シード層は、Tiを30原子%以上、50原子%以下含有することが好ましい。
また、第1シード層、第3シード層、第4シード層は非晶質状態になっていることが好ましく、成膜時には、ArガスにN2ガスを略20重量%混合したガスを用いてスパッタ法で成膜することが好ましい。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。 図1は、本発明の磁気記録媒体の構成例を説明するための図で、磁気記録媒体は、ガラス基板1上に、シード層2、下地層3、磁性層4および保護層5が順次積層され、更に、保護層5の上には潤滑層6が形成されて構成されている。シード層2は第1シード層21、第2シード層22、第3シード層23および第4シード層24をこの順に積層して構成されている。
ガラス基板1に用いる材料は、化学強化ガラス、結晶化ガラス等、磁気記録媒体用に用いられる通常のガラス系材料を用いることができる。中心部に円形孔を有する円板状が好ましく、中心部の円形孔の径、基板の外径および基板の板厚等は、所望の用途に応じて適宜設定される。
このようにテクスチャ加工されたガラス基板はよく洗浄し、表面の異物を取り除いたのち、成膜を行う。
シード層2は第1シード層21、第2シード層22、第3シード層23および第4シード層24を積層して構成され、その上に形成される層の結晶配向および結晶粒径等を制御して磁気記録媒体の所望の特性を得るために設ける層である。第1シード層21としてCrNを用い、第2シード層22としてNiTiを用い、第3シード層23に再びCrNを用い、第4シード層24にNiTiNを用いることにより、半径方向残留磁化に対して円周方向残留磁化を著しく増加することが可能であり、OR−Mrtを1.7以上とすることも可能となる。
第2シード層または第4シード層は、Tiを30原子%以上、50原子%以下含有することが好ましい。Tiが30原子%未満、およびTiが50原子%を超えるとOR−Mrtが低下する傾向がある。
これらシード層2を構成する各層はスパッタ法にて成膜することが好ましい。希ガスにN2ガスを混合したスパッタガスを用いてスパッタすることにより、第1、第3および第4シード層に容易にNを添加することができる。さらには、N2ガスの混合量を適切に設定することにより、窒化したシード層の結晶状態を非晶質とすることができる。Arに略20重量%のN2を混合したスパッタガスを用いることが最適である。
磁性層、保護層の成膜時にバイアスを印加して成膜を行うことが好ましいが、ガラス基板は絶縁性であるため、バイアスを印加するためにはガラス基板上の導電性の層にバイアスを印加する電極(バイアス電極)を接触することが必要となる。このため、シード層2の成膜途上で基板を大気中に取り出し、基板を持ち替えることが好ましい。第2シード層と第3シード層の間で大気中に取り出すのが最も磁気特性や記録再生特性の劣化への影響が少ない。基板を保持する基板ホルダがバイアス電極を兼ねることとし、第2シード層成膜後に、基板を大気中に取り出して、基板を支持している位置を変えて、基板と基板ホルダとの導電性を確保することにより、バイアス印加が可能となる。保持位置の変更は、基板ホルダに位置変更の機能を付加する方法で良い。このようにすることで、以降の各層の成膜でもバイアス印加が可能となる。
下地層3は、その上に形成される磁性層の結晶配向および結晶粒径を制御して所望の特性を有する磁気記録媒体を得るために用いられる。下地層の材料としてはCr、CrMo系合金を用いることができる。下地層もスパッタ法により成膜することが好ましく、その厚さは10nm以下が好ましい。
磁性層4は、Coを主とする磁性材料により形成される。例えば、CoCr合金、CoCrTa合金、CoCrPt合金、CoCrPtB合金、CoCrPtBCu合金等を用いることができる。磁性層の成膜方法は、スパッタ法が好ましく、その膜厚は5〜20nmが好ましい。
また、磁性層4は2層以上の複層の構成にすることができる。例えば第1の磁性層をCoCrTa合金、第2の磁性層をCoCrPtB合金、第3の磁性層をCoCrPtBCu合金等とすると記録密度の向上に効果がある。また、例えばRu層等の非磁性層を中間に挟むことも可能である。磁性層を複層とする場合の膜厚は、磁性層全体の膜厚を20nm以下にすることが好ましい。
以上の下地層3、磁性層4、保護層5の成膜においては、基板に対して直流またはRFのバイアスを印加することが好ましい。
潤滑層6は、磁気記録媒体と磁気ヘッドが接触した場合の摩擦の低減等を目的として形成されるもので、通常の磁気記録媒体で使用されるパーフロロポリエーテル等の液体潤滑剤を用いることができる。潤滑層は液体潤滑剤をスピンコート、浸漬塗布等の方法で形成することができ、その厚さは1〜2nmが好ましい。
引続き、ガラス基板を良く洗浄した後、成膜装置に導入した。始めに、ガラス基板上に第1シード層21であるCrN膜をDCマグネトロンスパッタ法により形成した。Crのスパッタターゲットを用い、スパッタガスとして20重量%のN2をArに添加した混合ガス(以下、Ar+20%N2ガスとも表す。)を用い、ガス圧力は1Paにて、膜厚2.5nmの第1シード層を形成した。第1シード層中のN量は9.8原子%であった。続いて、第2シード層22であるNiTi膜をDCマグネトロンスパッタ法により形成した。Ni50Ti(ここで、数字は原子%を表し、Tiが50原子%、残余がNiであることを表す。以下、同様である。)のスパッタターゲットを用い、スパッタガスはArガスを用いて、ガス圧力は1Paにて、膜厚12nmの第2シード層を形成した。
引続いて磁性層4を形成した。磁性層4は4層構成とし、CoCrTa膜、Ru膜、CoCrPtBCu膜、組成の異なるCoCrPtBCu膜の順に形成した。各膜のいずれもスパッタガスとしてArガスを用い、ガス圧力は1Paにて、DCマグネトロンスパッタ法を用いて形成した。CoCrTa膜はCo17Cr5Taのスパッタターゲットを用いて、膜厚3nmにて形成した。Ru膜は、Ruのスパッタターゲットを用いて、膜厚0.8nmにて形成した。次に、ヒータにより基板を270℃に再度加熱した後、CoCrPtBCu膜を形成した。Co24Cr14Pt8B4Cuのターゲットを用いて、基板にDCバイアスを−350V印加しながら、膜厚10nmにて形成した。続いて、CoCrPtBCu膜を形成した。Co13Cr11Pt10B4Cuのターゲットを用いて基板にDCバイアスを−350V印加しながら、膜厚8nmにて形成した。
引続き、パーフロロポリエーテルからなる潤滑剤を1.6nm塗布して磁気記録媒体を得て、実施例1とした。
(比較例1)
第1シード層のスパッタターゲットをCr、第2シード層のスパッタターゲットをNi50Tiとして、スパッタガスを第1シード層および第2シード層ともにAr+20%N2とし、第2シード層成膜後、基板を取り出し、基板を持ち替えた後、第3シード層、第4シード層なしで直接、下地層以降を成膜したこと以外は実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製し、比較例1とした。
(比較例2)
第2、第4シード層のターゲットをNi50Nbにしたこと以外は実施例1と同様にして比較例2とした。
(比較例3)
第4シード層成膜時のスパッタガスを純Arガスとしたこと以外は実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製し、比較例3とした。
表3に実施例1および2と比較例1の磁気記録媒体の保磁力(Hcr)、信号対雑音比(SNR)を示す。実施例においては、更に保磁力が大きく向上していることが分かる。
2 シード層
21 第1シード層
22 第2シード層
23 第3シード層
24 第4シード層
3 下地層
4 磁性層
5 保護層
6 潤滑層
Claims (7)
- ガラス基板、シード層および磁性層を備えた磁気記録媒体において、
前記ガラス基板は、テクスチャ加工が施され、
前記シード層は、CrとNからなる第1シード層、NiとTiからなる第2シード層、CrとNからなる第3シード層、Ni、TiおよびNからなる第4シード層を順次積層したことを特徴とする磁気記録媒体。 - 前記テクスチャ加工は、1μm平方あたり25本以上、60本以下の略同心円状の溝であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
- 前記略同心円状の溝の深さは、3nm以上、5nm以下であることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体。
- 前記第2シード層は、Tiを30原子%以上、50原子%以下含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 前記第4シード層は、Tiを30原子%以上、50原子%以下含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 前記第1シード層、第3シード層、第4シード層は非晶質状態になっていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 前記第1シード層、第3シード層、第4シード層はArガスにN2ガスを略20重量%混合したガスを用いてスパッタ法で成膜したことを特徴とする請求項6に記載の磁気記録媒体。
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