JP4322707B2 - 等速ジョイント用ブーツ - Google Patents

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Description

本発明は、前輪駆動車のドライブシャフト用ジョイントなどに不可欠な等速ジョイントに被覆され、等速ジョイントのジョイント部への水や埃の侵入を阻止するブーツに関する。
等速ジョイントのジョイント部は従来よりグリースが封入された蛇腹形状のブーツで覆われ、水や埃の侵入を阻止することによって大角度で滑らかな回転が維持されている。この等速ジョイント用ブーツは、ジョイントアウターレースなどに保持される大径の大径筒部と、大径筒部より小径でシャフトに保持される小径筒部と、大径筒部と小径筒部を一体的に連結する略円錐台形状の蛇腹部とから構成されている。そして使用時には、ジョイントアウターレースなどとシャフトのなす角度(ジョイント角)の変化に応じて蛇腹部が変形するため、その角度が大きくなってもブーツによってジョイント部を確実にシールすることができる。
この等速ジョイント用ブーツは、古くはゴムから形成されることが多かったが、ゴムでは耐久性に限界があるため、近年では耐候性や耐疲労性に優れた熱可塑性エラストマが用いられている。一方、等速ジョイント用ブーツには、ジョイント内への水や埃の侵入を確実に防止するというシール機能を付与する必要がある。しかしながら材質が熱可塑性エラストマでは、大径筒部が異形嵌合もしくは非円形嵌合の場合が多く、弾性が高くゴムほど追従性が良くないため、シール性の確保が難しいという問題があった。また等速ジョイント用ブーツの成形方法としては、ブロー成形が便利である。しかしながら相手部材の表面は一般に非円形であり、ブーツもそれに対応する形状とする必要がある。しかしそのようなブーツを製造する場合、ブロー成形では大径筒部の内周表面形状を相手部材とのシール性が高くなるように形成することが困難であり、その面からもシール性の確保が困難となる。
そこで例えば実開平02−087131号には、ブーツ本体をポリエステル系熱可塑性エラストマで形成し、その大径筒部に軟質ゴム製のリング状のグロメットを挿入した等速ジョイント用ブーツが開示されている。この等速ジョイント用ブーツによれば、厚肉部と薄肉部を有し内周面が非円形のグロメットであっても、射出成形などで精度よく製造することができるため、ブーツ本体はさほど形状精度が高くなくてもよくブロー成形で製造することが可能となる。そしてクランプによる締結力が大径筒部を介してグロメットに伝わり、グロメットが弾性変形して相手部材に密着することでシール機能が発現される。つまりブーツ本体で耐久性を確保でき、グロメットで相手部材とのシール性を確保することができる。またグロメットに比べて形状が大きなブーツ本体をブロー成形で製造できるので、工数が低減され安価となる。
このようにブーツ本体とグロメットとからなる等速ジョイント用ブーツは、グロメットを大径筒部に挿入した状態で相手部材に嵌合され、その後クランプで大径筒部の外周から締結される。したがって相手部材への嵌合時には、挿入の位置決めが必要となる。そのため従来は、相手部材の外周表面に凹部を形成するとともにグロメットの内周表面に位置決め突起を形成し、位置決め突起が凹部に係合することで位置決めを行っている。
ところがグロメットは軟質であるものの、その外周に硬質の大径筒部が存在しているために、相手部材への嵌合時に位置決め突起が相手部材の外周表面と摺接する際にグロメットの拡径方向の変形が規制され、嵌合の抵抗となって嵌合の作業性が悪いという問題があった。また大径筒部とグロメットに軸方向のずれが生じる場合もある。さらに嵌合時に位置決め突起が相手部材の凹部に係合しても、グロメットの変形量が僅かであるために嵌合の節度感が得られず、位置決めされたかどうかの確認ができないという不具合があった。
またグロメットには内周にリング状のシール突条が形成され、その位置はクランプの締めしろの範囲にある。また位置決め突起の先端にもシール突条が形成される場合が多い。しかし相手部材への嵌合時には、シール突条が相手部材と摺接するために、シール突条に摩耗や損傷が生じる場合があり、その場合にはシール性に不具合が生じてしまう。
そこで実開平02−071122号には、大径筒部の端面から軸方向に延びるスリットを形成し、そのスリットを避けて位置決め突起を形成した等速ジョイント用ブーツが開示されている。このようにすれば、スリットによって大径筒部の拡径が容易となるため、嵌合時の抵抗を低減できるが、位置決め突起が凹部に係合する際の節度感は得られにくい。ブーツ本体とグロメットとからなる等速ジョイント用ブーツにおいて、この構造を採用することを考え多場合、節度感の問題に加えてさらに、グロメットあるいは大径筒部にスリットを形成することは、シール性の観点からは推奨できることではなく、工数も多大となるという問題がある。
実開平02−087131号 実開平02−071122号
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、シール性を高く維持することができるとともに、相手部材への嵌合時の抵抗を低減でき、しかも嵌合完了時に節度感が得られるようにすることを目的とする。
上記課題を解決する本発明の等速ジョイント用ブーツの特徴は、シャフトに保持される小径筒部と、小径筒部と離間して同軸的に配置され小径筒部より大径の大径筒部と、小径筒部と大径筒部を一体的に連結する略円錐台形状の蛇腹部とからなり大径筒部の外周表面にクランプ溝をもつブーツ本体と、
大径筒部より軟質の材料から形成され厚肉部と薄肉部とが円周方向に交互に形成されて内周断面が非円形で内周表面にシール突条を有し、大径筒部内に挿入された後に相手部材に嵌合されるリング状のグロメットとよりなり、大径筒部の外周表面から締結部材を縮径させることで大径部と小径部とが周方向に交互に形成された相手部材に大径筒部及びグロメットが締結される等速ジョイント用ブーツであって、
シール突条はクランプ溝の幅内にあり、グロメットの薄肉部の内周表面には相手部材の大径部の外周表面に形成された凹部と係合する位置決め突起が突出し、大径筒部に挿入されたグロメットに相手部材を嵌合後の位置決め突起の最小内径部の位置が締結部材の締めしろから外れ大径筒部の端面より外側に位置して凹部と係合していることにある。
グロメットの外周表面には、大径筒部の端面が当接する凸部をもつことが望ましい。
本発明の等速ジョイント用ブーツによれば、位置決め突起の最小内径部の位置が締結部材の締めしろから外れているので、位置決め突起はシール性には影響がない。そして位置決め突起をシール突条より前方(大径筒部の開口側)に形成した場合は、その外周に大径筒部が存在しない構成とすることができるので、相手部材への嵌合時のグロメットの拡径が規制されず嵌合時の抵抗が軽減される。さらに位置決め突起が相手部材の凹部の位置に到達すると、拡径した部分が大きな弾性反力で元の形状に復元するため、良好な節度感が得られ、位置決めを確実に行うことができる。
また位置決め突起をシール突条より後方(蛇腹部側)に形成した場合は、嵌合時の位置決め突起の移動量が小さいので、嵌合時の抵抗が軽減される。さらに相手部材の凹部を相手部材の先端に開口する切欠き状に構成すれば、グロメットをさほど拡径しなくても嵌合することができ、しかも位置決め突起が切欠きの端部に当接することで抵抗が急激に高まるため、嵌合の位置決めを確実に行うことができる。
そしてグロメットの外周表面に大径筒部の端面が当接する凸部を形成しておくことで、嵌合時の大径筒部とグロメットとのずれを防止することができ、凸部を端面で押し戻そうとする荷重が位置決めや突起の相手溝嵌合により解放されることによる、さらなる節度感が得られる。
ブーツ本体は、シャフトに保持される小径筒部と、小径筒部と離間して同軸的に配置され小径筒部より大径の大径筒部と、小径筒部と大径筒部を一体的に連結する略円錐台形状の蛇腹部とからなるものであり、基本的に従来のものと同様のものである。少なくとも大径筒部の外周表面には、クランプなどの締結部材が係合するクランプ溝を形成し、その内周表面には突条を形成して、突条がグロメットの外周表面に係合することでブーツ本体とグロメットとの間のシール性が確保されるように構成することが好ましい。ブーツ本体をブロー成形で製造すれば、クランプ溝に凹溝を形成することて突条を容易に形成することができる。
このブーツ本体は、ポリエステル系あるいはポリオレフィン系などの熱可塑性エラストマから形成することが望ましい。これにより耐久性の高いブーツとすることができる。また成形方法は特に制限されないが、コスト面からブロー成形で形成するのが好ましい。ブロー成形で形成されたブーツ本体では、大径筒部の内周表面の形状を制御することは困難であり、肉厚の寸法精度も低いが、グロメットを用いた等速ジョイント用ブーツでは問題とならない。
グロメットは、内周断面が非円形で内周表面にシール突条を有し、嵌合される相手部材の外周表面の形状に対応する厚肉部と薄肉部をもつリング状のものであり、その内周表面には相手部材の外周表面に形成された凹部と係合する位置決め突起が突出している。位置決め突起の位置は、相手部材を嵌合後に位置決め突起の最小内径部の位置が締結部材の締めしろから外れる位置であればよく、その数は1個以上であればよい。シール突条は、締結部材の締めしろの内周表面に形成される。このシール突条は、1本でもよいが、2本以上形成することが好ましい。またグロメットの外周表面には、大径筒部の端面が当接する凸部をもつことが望ましい。これにより相手部材との嵌合時に、大径筒部とグロメットとの軸方向のずれを防止することができる。
位置決め突起は、グロメットの内周を一周するように形成してもよいし、厚肉部又は薄肉部にのみ形成することもできる。十分な弾性を有する厚肉部でシール性を確保する場合が多いので、薄肉部に位置決め突起を形成して厚肉部と機能を分担することも好ましい。薄肉部に位置決め突起を形成すれば、相手部材の凹部の加工が容易である。また位置決め突起の先端にシール突条を形成してもよい。なお位置決め突起は、嵌合方向に向かう表面になだらかに傾斜する傾斜面をもつ断面形状とすることが望ましい。これにより嵌合時の抵抗をより低減することができる。また傾斜面と反対側の表面を、グロメットの内周表面から鋭角気味に立ち上がる表面とすれば、グロメットが相手部材から抜けるのを確実に防止することができる。
グロメットの材料としては、ブーツ本体より軟質であればよく、安価なポリオレフィン系熱可塑性エラストマ(TPO)あるいはゴムなどを用いることができる。また成形方法には特に制限がなく、圧縮成形、射出成形などで形成することができる。位置決め突起及びシール突条は、グロメットと一体的に形成される。
相手部材としてはジョイントアウターレースが代表的であり、外周表面の位置決め突起が係合する位置に対応する凹部が形成される。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
図1に本実施例の等速ジョイント用ブーツの分解斜視図を、図2に相手部材に嵌合した状態の要部拡大断面図を示す。この等速ジョイント用ブーツは、ブーツ本体1と、ブーツ本体1の大径筒部11内に挿入されたリング状のグロメット2とから構成されている。ブーツ本体1は比較的硬質の熱可塑性エラストマーからブロー成形により形成され、グロメット2はゴム又は比較的軟質の熱可塑性エラストマーから射出成形により形成されている。
ブーツ本体1は、小径筒部10と、小径筒部10より大径の大径筒部11と、小径筒部10と大径筒部11を一体的に連結する略円錐台形状の蛇腹部12とよりなる。大径筒部11の内周表面には、大径筒部11を一周するリング状の突条13が形成されている。突条13は表面が断面円弧状に形成されている。また大径筒部11の外周表面には幅広の略平坦なクランプ溝14が形成され、突条13の裏側に相当する位置のクランプ溝14の表面にはリング状の凹溝15が形成されている。この凹溝15の存在により、ブロー成形で突条13の形成が可能となっている。そして大径筒部11のクランプ溝14の端部に蛇腹部12が連続し、蛇腹部12の端部がクランプ溝14の一端部を構成している。
グロメット2は大径筒部11に挿入され、その状態で相手部材であるジョイントアウターレース3に嵌合される。このグロメット2は、外周は真円形であるが、内周表面はジョイントアウターレース3の外周表面に対応した非円形をなし、厚肉部20と薄肉部21とが円周方向に交互に形成されている。
グロメット2の内周表面には、ジョイントアウターレース3に弾接する二条のリング状のシール突条22が円周方向に延びて全周に互いに平行に形成されている。また薄肉部21の一端面の近傍には、周方向に延びる位置決め突起23が互いに間隔を隔てて3個形成されている。そしてグロメット2の外周表面には、突条13が係合するリング溝24が形成され、位置決め突起23のある端面近傍の外周表面には外周を一周する凸部25が形成されている。
ジョイントアウターレース3は、径の大きな大径部30と、径の小さな小径部31とが周方向に交互に形成され、大径部の表面に周方向に延びる凹部32が形成されている。
上記のように構成された本実施例の等速ジョイント用ブーツでは、先ずブーツ本体1の大径筒部11に、位置決め突起23が形成された端部と反対側の端部からグロメット2が挿入され、大径筒部11の先端面が凸部25に当接することで挿入の位置決めがなされる。この時、突条13がリング溝24に係合し、2本のシール突条22はともにクランプ溝14の幅内に位置し、位置決め突起23は大径筒部11の端面より外側に位置している。
その状態で、グロメット2内にジョイントアウターレース3を嵌合する。位置決め突起23の最小内径はジョイントアウターレース3の最大外径より小さいので、グロメット2には拡径の力が作用する。位置決め突起23は大径筒部11の端面より外側に位置しているため、このときグロメット2の端部は図3に示すように容易に弾性変形し、位置決め突起23による嵌合の抵抗が軽減される。
そしてさらに嵌合が進行し、位置決め突起23が凹部32の位置になると、位置決め突起23は蓄えられていた弾性反力によって急激に凹部32内に入り、その瞬間嵌合の抵抗が急激に低下する。したがって位置決めが完了したことを節度感よく認知することができ、嵌合不良を未然に防止することができる。また大径筒部11の先端面が凸部25に当接することで大径筒部11とグロメット2の軸方向のずれが防止されている。
また嵌合状態では、位置決め突起23はクランプ溝14から外れた位置にあるので、クランプによる締結力は二条のリング状のシール突条22にのみ伝わり、高いシール性が発現される。
参考例1
本参考例の等速ジョイント用ブーツを、ジョイントアウターレース3と嵌合した状態を図4に示す。本参考例では、位置決め突起23がグロメット2の反対側の端部近傍に形成され、凹部32がジョイントアウターレース3の先端近傍に形成されたこと以外は実施例1と同様の構成である。
本参考例の等速ジョイント用ブーツをジョイントアウターレース3に嵌合する場合には、嵌合初期には位置決め突起23がジョイントアウターレース3に当接せず、嵌合末期になって初めて当接する。したがって嵌合時に位置決め突起23による抵抗が発現する期間が短く、比較的容易に嵌合することができる。
そして嵌合状態では、位置決め突起23はクランプ溝14から外れた位置にあるので、クランプによる締結力は二条のリング状のシール突条22にのみ伝わり、高いシール性が発現される。
参考例2
本参考例の等速ジョイント用ブーツを、ジョイントアウターレース3と嵌合した状態を図5に示す。本参考例では、グロメット2の蛇腹部12側の端部に形位置決め突起26が形成され、ジョイントアウターレース3の先端に切欠き状の凹部33が形成されていること以外は実施例1と同様の構成である。
本参考例の等速ジョイント用ブーツをジョイントアウターレース3に嵌合する場合には、嵌合末期に位置決め突起26が切欠き状の凹部33に案内されるだけであるので、嵌合初期から嵌合終了時まで位置決め突起26による抵抗が発現せず、きわめて容易に嵌合することができる。そして位置決め突起26が凹部33の端部に当接することで、それ以上は挿入が困難となり位置決めを確実に行うことができる。
そして嵌合状態では、位置決め突起26はクランプ溝14から外れた位置にあるので、クランプによる締結力は二条のリング状のシール突条22にのみ伝わり、高いシール性が発現される。
本発明の一実施例の等速ジョイント用ブーツを相手部材とともに示す分解斜視図である。 本発明の一実施例の等速ジョイント用ブーツを相手部材に嵌合した状態で示す要部拡大断面図である。 本発明の一実施例の等速ジョイント用ブーツを相手部材に嵌合する途中の状態を示す要部拡大断面図である。 参考例1の等速ジョイント用ブーツを相手部材に嵌合した状態で示す要部拡大断面図である。 参考例2の等速ジョイント用ブーツを相手部材に嵌合した状態で示す要部拡大断面図である。
符号の説明
1:ブーツ本体 2:グロメット 3:ジョイントアウターレース
11:大径筒部 14:クランプ溝 20:厚肉部
21:薄肉部 23:位置決め突起 32:凹部

Claims (2)

  1. シャフトに保持される小径筒部と、該小径筒部と離間して同軸的に配置され該小径筒部より大径の大径筒部と、該小径筒部と該大径筒部を一体的に連結する略円錐台形状の蛇腹部とからなり該大径筒部の外周表面にクランプ溝をもつブーツ本体と、
    該大径筒部より軟質の材料から形成され厚肉部と薄肉部とが円周方向に交互に形成されて内周断面が非円形で内周表面にシール突条を有し、該大径筒部内に挿入された後に相手部材に嵌合されるリング状のグロメットとよりなり、該大径筒部の外周表面から締結部材を縮径させることで大径部と小径部とが周方向に交互に形成された相手部材に該大径筒部及び該グロメットが締結される等速ジョイント用ブーツであって、
    該シール突条は該クランプ溝の幅内にあり、
    該グロメットの該薄肉部の内周表面には該相手部材の該大径部の外周表面に形成された凹部と係合する位置決め突起が突出し、該大径筒部に挿入された該グロメットに該相手部材を嵌合後の該位置決め突起の最小内径部の位置が該締結部材の締めしろから外れ該大径筒部の端面より外側に位置して該凹部と係合していることを特徴とする等速ジョイント用ブーツ。
  2. 前記グロメットの外周表面には、前記大径筒部の端面が当接する凸部をもつ請求項1に記載の等速ジョイント用ブーツ。
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