JP4318955B2 - 車両のリヤゲート構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両のリヤゲート構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、車体後部開口を開閉するリヤゲート1は、図8に示されるように、前後に対向配置されたアウタパネル2及びインナパネル3を備えて構成されている。従来、これらアウタパネル2及びインナパネル3は、それぞれ鋼材を用いて一体成形されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
実開平5−13817号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年にあっては、エンジンパワーの効率化及び燃費向上のため車体ボディ4の軽量化が図られている。そのため、鋼材の代わりに軽量素材、例えばアルミ合金(以下、アルミ材という)を用いてアウタパネル2及びインナパネル3が成形される傾向にある。しかしながら、アルミ材は、鋼材に比較すると成形性が低い軽量難成形材である。そのため、図9(a),(b)に示されるように、外観上、リヤゲート1に段付きを形成したり、アウタパネル面の曲率を高くしようとすると、絞り深さが増すためにアルミ材を用いたアウタパネル2やインナパネル3の一体形成は困難となってしまうという問題があった。
【0005】
そして、リヤゲート1は、アルミ材によるアウタパネル2やインナパネル3の一体成形が困難なため、その外観形状がラウンド感の乏しい平面的なものとなってしまい、リヤゲート1のデザインの自由度の向上を図ることは難しいという問題がある。
【0006】
また、リヤゲート1は、デザインの自由度を向上させるほど、リヤゲートガラス5の下端部が固着される被固着部分6の剛性が低下したり、リヤゲート自体の耐久性が低下してしまう虞がある。
【0007】
そこで、この発明は、上記従来のリヤゲート構造が有している問題点を解決するためになされたものであって、軽量素材を用いて構成されるリヤゲートのデザインの自由度の向上を図ると共にリヤゲートガラスの下端部が固着される被固着部分の剛性を確保し、リヤゲート自体の耐久性を損なうことがない車両のリヤゲート構造を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、上記目的を達成するために、インナパネルとアウタパネルとから構成されたリヤゲートにリヤゲートガラスが装着される車両のリヤゲート構造において、
前記インナパネルは、前記リヤゲートガラスに応じた開口部を有するパネル本体と、該パネル本体の、前記リヤゲートガラスの下端部が固着される被固着部分の左右側に配される一対のインナパネルサイドとを有し、前記パネル本体と前記インナパネルサイドの重合部が、前記リヤゲートを閉じる際の荷重を受けるバッファの取付座面であることを特徴とする。
【0009】
この構成による車両のリヤゲート構造によれば、リヤゲートを閉じる際の荷重を受けるバッファを取り付けるバッファ取付座面が、パネル本体及びインナパネルサイドの2枚重ねによって補剛されると共に、インナパネルサイドの組み付けによってリヤゲートの左右側縁部が補剛される。これにより、リヤゲートの建て付け精度の安定化がさらに向上すると共に、リヤゲートの耐久性が大幅に向上する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の最も好適と思われる実施形態について図1〜6を用いて詳細に説明を行う。図1は、本実施形態に係るリヤゲートを説明するための後方斜視図、図2は、本リヤゲートにおけるアウタパネルの構成を説明するための分解斜視図、図3は、本リヤゲートにおけるインナパネルの構成を説明するための分解斜視図、図4は、図1中のA−A矢視線における断面図、図5は、図1中のB−B矢視線における断面図、図6は、図1中のC−C矢視線における断面図である。
【0011】
図1〜6に示されるように、リヤゲート10は、リヤゲート10の上端部と車体ボディ11との間に介設された一対のヒンジ12,12によって車体後部開口13を開閉するように取り付けられている。このリヤゲート10は、軽量素材としてのアルミ材を用いて分割成形されたリヤゲート本体14と、このリヤゲート本体14に一体的に装着されるリヤゲートガラス15及びガーニッシュ16とを備えて構成されている。
【0012】
リヤゲート本体14について説明する。リヤゲート本体14は、前後方向に対向配置されるアウタパネル17とインナパネル18とを備えて構成されている(図4参照)。これらアウタパネル17とインナパネル18とは、互いの外周縁部同士が接合された状態で内巻きにクリンチ結合されることによって一体化されており、リヤゲート本体14の形成に必要な結合強度が確保されている。
【0013】
リヤゲート本体14の外殻をなすアウタパネル17は、図2に示されるように、リヤゲートガラス15の下端部が固着される被固着部分19で上下に分割成形されているものであって、上方側に配置されるアウタパネルアッパ20と、下方側に配置されるアウタパネルロア21とを備えて構成されている。なお、これらアウタパネルアッパ20及びアウタパネルロア21は、上述したように、それぞれアルミ材を用いて一体成形されている。
【0014】
アウタパネルアッパ20は、その中央部にリヤゲートガラス15の装着に応じた開口部22が開口形成された枠体状部材である。この開口部22の下端側に位置する被固着部分19、つまりアウタパネルアッパ20の下端縁部20aには、図4,5に示されるように、接合面部23が一体的に折曲形成されている。さらに、このアウタパネルアッパ20の下端縁部20aにおける左右側方には、図5に示されるように、車体斜め上方に向かった接合面部24が一体的に折曲形成されている(右側は図示せず)。
【0015】
アウタパネルロア21は、図2に示されるように、その中央部にライセンスプレート装着用の凹所25が一体的に凹み形成されている。この凹所25の左右斜め上方には、ガーニッシュ16の裏面側から張り出されたコンビネーションランプユニットが挿入されるための開口部26,26が開口形成されている。
【0016】
さらに、このアウタパネルロア21の上端側に位置する被固着部分19、つまりアウタパネルロア21の上端縁部21aには、図4,5に示されるように、アウタパネルアッパ20の接合面部23に接合されるための接合面部27が一体的に折曲形成されている。
【0017】
そして、図4,5に示されるように、アウタパネルアッパ20の下端縁部20aの後方側にアウタパネルロア21の上端縁部21aの前面側が重ね合わされた状態で、アウタパネルアッパ20の接合面部23とアウタパネルロア21の接合面部27とがスポット溶接により結合固定されることによって一体化されている。これにより、アウタパネル17における被固着部分19が2重に構成される。
【0018】
さらに、アウタパネルアッパ20の接合面部24の下面側には、図5に示されるように、後述するインナパネルセンタ28の上端縁部28a(図3参照)に形成された接合面部29の上面側が接合された状態でスポット溶接により結合固定されることによって一体化されている。
【0019】
このように、アウタパネル17における被固着部分19は、アウタパネルアッパ20の下端縁部20aとアウタパネルロア21の上端縁部21aとが重ね合わされることによって構成されている。さらに、アウタパネル17は、アウタパネルアッパ20の接合面部23とアウタパネルロア21の接合面部24とが結合固定されること、及び、アウタパネルアッパ20の接合面部25とインナパネルセンタ28の接合面部27とが結合固定されることによって、アウタパネルアッパ20とアウタパネルロア21との結合強度、及び、アウタパネルアッパ20とインナパネルセンタ28、すなわち、アウタパネル17とインナパネル18との結合強度が確保されている。
【0020】
従って、アウタパネル17における被固着部分19廻りの剛性が増大されると共に、上下に分割成形したアウタパネル17自体の剛性が損なわれることが防止される。そして、それらにより、リヤゲートガラス15を開口部22に装着する際の建て付け精度が安定化される。また、被固着部分19廻りの剛性の増大により、被固着部分19がより低く構成される。
【0021】
さらにまた、アウタパネル17をアウタパネルアッパ20及びアウタパネルロア21とに分割成形することによって成形性が向上されると共に、デザインの自由度も向上される。そして、このような成形性の向上により、アウタパネル17を1枚パネルで一体成形するもの、或いは、パネルを1枚で成形したものにリンホースを付設するものよりも成形性が良好とされるので、生産性が向上される。
【0022】
そして、図5に示されるように、アウタパネルアッパ20と一体化されたアウタパネルロア21には後方側からガーニッシュ16が装着され、さらに、アウタパネルアッパ20の開口部22には、リヤゲートガラス15の周縁部が接着剤30によって結合固定されることによって、リヤゲート本体14のアウタパネル17が構成される。なお、図5中の符号31は、リヤゲートガラス15の周縁部に設けられたモールディングを示している。
【0023】
次に、インナパネル18について説明する。リヤゲート本体14の車室内側に配設されるインナパネル18は、図3に示されるように、インナパネル18の被固着部分19で上下に分割されたパネル本体32及びインナパネルセンタ28、パネル本体32の左右側部で分割されたインナパネルサイド33,33、パネル本体32の左右側部に集成されるサイドリンホース34,34、及びパネル本体32に集成されるラッチリンホース35とを備えて構成されている。なお、これらパネル本体32、インナパネルセンタ28等は、上述したように、それぞれアルミ材を用いて一体成形されている。
【0024】
パネル本体32には、その中央部にリヤゲートガラス15の形状よりも下方に向けて拡張された開口部36が開口形成されている。そして、この開口部36の下方側のパネル本体32には、正面視が横長の矩形状に開口されたラッチリンホース取付用開口部37が開口形成されている。
【0025】
開口部36の下端縁部32aには、図4,5に示されるように、略垂直な接合面部38が形成されている。そして、この接合面部38の後方側には、インナパネルセンタ28の下端縁部28bに折曲形成された略垂直な接合面部39が接合された状態でスポット溶接により結合固定されている。
【0026】
このインナパネルセンタ28の上端縁部28aには、略垂直な接合面部40(図4に図示)と斜め上方に向かった接合面部29(図5に図示)とが一体的に折曲形成されている。そして、これらの接合面部29,40の後方側に、アウタパネルアッパ20の下端縁部20aに形成された接合面部23及び24の前面側が接合された状態でスポット溶接により結合固定されている。なお、図5中の符号41は、内装材のトリムを示しているが、図4にあっては、トリム41及びガーニッシュ16は図示省略されている。
【0027】
このように、パネル本体32とインナパネルセンタ28とが結合固定されることによって、インナパネル18における被固着部分19が充分な剛性を確保した状態で構成されると共に、開口部36がリヤゲートガラス15に応じた開口形状を有するようになる。さらに、パネル本体32に一体化されたインナパネルセンタ28とアウタパネルアッパ20との結合強度が確保されることにより、インナパネル18における被固着部分19廻りの剛性が増大される。
【0028】
従って、インナパネル18における被固着部分19廻りの剛性が増強されると共に、被固着部分19で上下に分割成形したインナパネル18自体の剛性が損なわれることが防止される。そして、それらにより、リヤゲートガラス15をリヤゲート10に装着する際の建て付け精度がより安定化される。また、被固着部分19廻りの剛性の増強により、これによっても、被固着部分19がより低く構成される。
【0029】
さらにまた、インナパネル18をインナパネルセンタ28及びパネル本体32とに分割成形することによって成形性が向上される。そして、このような成形性の向上により、インナパネル18を1枚パネルで一体成形する方式、或いは、パネルを1枚で成形したものにリンホースを付設する方式よりも成形性が良好とされるので、生産性が向上される。
【0030】
パネル本体32の左右両側部には、図3に示されるように、左右一対のインナパネルサイド33,33が接合された状態でスポット溶接により結合固定されている。これらインナパネルサイド33,33の外周側縁部は、図6に示されるように、アウタパネルロア21の外周縁部に接合された状態で内巻きのクリンチ結合によって一体化されている。これにより、パネル本体32の左右両側部における成形性が向上されることにより、パネル本体32の左右両側部がアウタパネル17につながる縦壁部であっても、良好な成形性が確保される。
【0031】
さらに、このパネル本体32の左右側部には、図3に示されるように、上端部がヒンジ取付部に到達し、下端部がインナパネルサイド33,33の後方側に重ね合わされるように形成された左右一対のサイドリンホース34,34が接合された状態でスポット溶接により結合固定されている。さらに、このサイドリンホース34,34の板厚は、図6に示されるように、パネル本体32やインナパネルサイド33等の板厚よりも相対的に増大されている。
【0032】
これにより、リヤゲート10を閉じる際の荷重を受けるバッファ42を取り付けるバッファ取付座面43が、パネル本体32、インナパネルサイド33及びサイドリンホース34の3枚重ねによって補剛されると共に、インナパネルサイド33及びサイドリンホース34の組み付けによってリヤゲート10のヒンジ取付部及び左右側縁部が補剛される。そのことにより、リヤゲート10の建て付け精度の安定化がさらに向上すると共に、リヤゲート10の耐久性が大幅に向上される。
【0033】
なお、バッファ42は、バッファ取付座面43にボルト固定されている。また、図6中の符号44は、車体ボディ11側に結合されたバッファ、符号45は、ウエザストリップ、符号46は、リヤコンビネーションランプをそれぞれ示している。
【0034】
パネル本体32に形成されたラッチリンホース取付用開口部37には、図3,4に示されるように、後方側からラッチリンホース35の周縁部が接合された状態でスポット溶接により結合固定されている。そして、このラッチリンホース33に取り付けられたラッチ47が、図4に示されるように、リヤゲート10が閉じられると、車体ボディ11の後端部を構成しているスカートリヤインナ48及びスカートリンホース49等によって保持されたストライカ50に嵌合される。なお、ロックされたリヤゲート10のラッチ47と車体ボディ11側のストライカ50とは、リヤゲート本体14に内蔵された図示しないアンロック機構を動作させることによりロック解除される。
【0035】
次に、リヤゲート10の被固着部分19における剛性をさらに増大させる場合について図7を用いて説明する。
【0036】
図7は、リヤゲート10における被固着部分19の断面図である。
【0037】
図7に示されるように、リヤゲート10には、被固着部分19の剛性を増大させる目的で細部の形状が適宜変形されている。すなわち、リヤゲート10における被固着部分19は、アウタパネルアッパ20の下端縁部20aが下方に向けて延設されており、その下端縁部20aが、アウタパネルロア21の上端縁部21aの前面側に接合された状態でスポット溶接により結合固定されている。
【0038】
これにより、アウタパネルアッパ20とアウタパネルロア21との間には、前後方向に対向配置されたアウタパネルアッパ20とアウタパネルロア21とによって閉塞された閉断面Sが形成される。従って、この閉断面Sの形成により、リヤゲート10における被固着部分19の車体幅方向の剛性、つまり横剛性がさらに増大される。
【0039】
なお、この閉断面Sは、アウタパネルアッパ20とアウタパネルロア21との結合固定によって形成されるものに限定されない。すなわち、被固着部分19に形成されるのであれば、アウタパネルアッパ20とインナパネルセンタ28との間、或いは、アウタパネルアッパ20とパネル本体32との間等に閉断面Sが形成されてもよい。
【0040】
さらにまた、この閉断面Sは、被固着部分19の車体幅方向のほぼ全域に渡って形成されるのが好ましい。これによれば、閉断面Sが被固着部分19の車体幅方向の一部に形成される場合よりも、リヤゲート10における被固着部分19の横剛性が増大される。
【0041】
なお、本発明の車両のリヤゲート構造は、上述したアルミ材に限られたものではなく、他の軽量素材にも適用される。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように本発明による車両のリヤゲート構造によれば、リヤゲート10を閉じる際の荷重を受けるバッファ42を取り付けるバッファ取付座面43が、パネル本体32及びインナパネルサイド33、33の2枚重ねによって補剛されると共に、インナパネルサイド33、33の組み付けによってリヤゲート10の左右側縁部が補剛される。これにより、リヤゲート10の建て付け精度の安定化がさらに向上すると共に、リヤゲート10の耐久性が大幅に向上する。
【0043】
それらの結果、軽量素材を用いて構成されるリヤゲート10のデザインの自由度の向上を図ると共に被固着部分19の剛性を確保し、リヤゲート10自体の耐久性を損なうことがない車両のリヤゲート構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施形態に係るリヤゲートを説明するための後方斜視図である。
【図2】 本リヤゲートのアウタパネルの構成を説明するための分解斜視図である。
【図3】 本リヤゲートのインナパネルの構成を説明するための分解斜視図である。
【図4】 図1中のA−A矢視線における断面図である。
【図5】 図1中のB−B矢視線における断面図である。
【図6】 図1中のC−C矢視線における断面図である。
【図7】 リヤゲートの被固着部分における剛性をさらに増大させる場合を説明するための断面図である。
【図8】 従来のリヤゲート構造を説明するための斜視図である。
【図9】 (a)は、段付きが形成されたリヤゲートの斜視図、(b)は、アウタパネル面の曲率を高くしたリヤゲートの斜視図である。
【符号の説明】
10 リヤゲート
15 リヤゲートガラス
17 アウタパネル
18 インナパネル
19 被固着部分
20 アウタパネルアッパ
21 アウタパネルロア
28 インナパネルセンタ
32 パネル本体
33 インナパネルサイド
42 バッファ
43 バッファ取付座面
Claims (1)
- インナパネルとアウタパネルとから構成されたリヤゲートにリヤゲートガラスが装着される車両のリヤゲート構造において、
前記インナパネルは、前記リヤゲートガラスに応じた開口部を有するパネル本体と、該パネル本体の、前記リヤゲートガラスの下端部が固着される被固着部分の左右側に配される一対のインナパネルサイドとを有し、前記パネル本体と前記インナパネルサイドの重合部が、前記リヤゲートを閉じる際の荷重を受けるバッファの取付座面であることを特徴とする車両のリヤゲート構造。
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