JP4309631B2 - X線コンピュータトモグラフィ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、X線管とマルチスライス型X線検出器とを備えるX線コンピュータトモグラフィ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のX線コンピュータ断層撮影装置に関する重要な課題の一は、画質向上と低被曝化との両立である。被検体に照射するX線の強度を高くすると、画質は向上する。被検体に照射するX線の強度を低くすると、画質は低下する。
【0003】
従来の装置では、ヘリカルスキャン中に照射X線強度は一定値に維持される。しかし、最近では、被検体の部位に応じて変化するX線透過率に従って、X線強度を変化させる提案がなされている。多くの提案では、スキャノグラム上のある一点の値に従って、X線強度を変化させる。スキャノグラムは、周知のとおり、スキャン計画のために収集される透過X線の平面的な強度分布である。
【0004】
スキャノグラムデータを収集するために、図1(a)、図2(a)に示すように、X線管10はある回転角度で固定される。天板2aは一定速度で移動される。この期間、X線検出器11から一定周期で信号が繰り返し読出される。
【0005】
このX線強度制御は、図1(b)に示すシングルスライススキャンでは有効に作用する。しかし、図2(b)に示すように、マルチスライススキャン(ボリュームスキャンともいう)では、X線強度は、十分に最適化されることができない。その最大の理由は、図1(c)、図2(c)に示すように、マルチスライススキャンは、スキャノグラムデータ収集時のスライス幅T1よりも広いスライス幅T2を持つ広範囲のデータを一度に収集することにある。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−262512号公報
【0007】
【特許文献2】
実用新案登録第2605048号公報
【0008】
【特許文献3】
特開平10−295681号公報
【0009】
【特許文献4】
特開平08−206107公報
【0010】
【特許文献5】
特開平09−199292号公報
【0011】
【特許文献6】
特公平06−036793号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、マルチスライススキャンにおいて、X線強度をより最適化することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明のある局面によるX線コンピュータトモグラフィ装置は、被検体に照射するためのX線を発生するX線管と、前記X線管に印加するための高電圧を発生する高電圧発生器と、前記被検体を透過したX線を検出するために複数のX線検出素子列を有するX線検出器と、前記X線検出器の出力に基づいて、スキャノグラムを生成するスキャノグラム生成部と、前記X線検出器の出力に基づいて、画像を再構成する再構成部と、前記スキャノグラムの2次元部分領域内に含まれる複数画素の画素値の最大値又は平均値に基づいて、前記X線管の管電流値を決定する管電流決定部と、前記決定された管電流値に基づいて前記高電圧発生器を制御する制御部とを具備する
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明によるX線コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)の実施例を説明する。なお、X線CT装置には、X線管と放射線検出器とが1体として被検体の周囲を回転する回転/回転(ROTATE/ROTATE)タイプと、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線管のみが被検体の周囲を回転する固定/回転(STATIONARY/ROTATE)タイプ等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本発明を適用可能である。ここでは、現在、主流を占めている回転/回転タイプとして説明する。
【0015】
また、1スライスの断層像データを再構成するには、被検体の周囲1周、約360°分の投影データが、またハーフスキャン法でも180°+ビュー角分の投影データが必要とされる。いずれの再構成方式にも本発明を適用可能である。ここでは、ハーフスキャン法を例に説明する。
【0016】
また、入射X線を電荷に変換するメカニズムは、シンチレータ等の蛍光体でX線を光に変換し更にその光をフォトダイオード等の光電変換素子で電荷に変換する間接変換形と、X線による半導体内の電子正孔対の生成及びその電極への移動すなわち光導電現象を利用した直接変換形とが主流である。X線検出素子としては、それらのいずれの方式を採用してもよいが、ここでは、前者の間接変換形として説明する。
【0017】
また、近年では、X線管とX線検出器との複数のペアを回転リングに搭載したいわゆる多管球型のX線CT装置の製品化が進み、その周辺技術の開発が進んでいる。本発明では、従来からの一管球型のX線CT装置であっても、多管球型のX線CT装置であってもいずれにも適用可能である。ここでは、一管球型として説明する。
【0018】
図3に、本実施例に係るX線コンピュータ断層撮影装置の主要部の構成を示している。ガントリ1の内部には、略円筒形状の回転フレーム12が収容されている。回転フレーム12は、ガントリコントローラ33の制御のもとで、スキャン時には、ガントリ駆動装置25により回転され、スキャノグラムデータ収集時には、ガントリ駆動装置25の制動機能により、所定角度、例えば0°の位置に固定される。回転フレーム12には、X線管10とX線検出器11とが取り付けられている。高電圧発生装置21は、高電圧コントローラ31の制御のもとで、X線管10の陰極陽極間に高電圧(管電圧)を印加する。高電圧発生装置21は、高電圧コントローラ31の制御のもとで、陰極のフィラメントにフィラメント電流を供給する。フィラメント電流に応じて陰極陽極間に流れる管電流が決まる。管電流に応じて照射X線の強度が決まる。
【0019】
X線管10のX線放射窓には、X線を四角錐形に絞るコリメータ22が取り付けられる。コリメータ22の開度は可変である。X線検出器11は、寝台2の天板2a上に載置される被検体Pを挟んでX線管10に対向する。X線検出器11は、図4に示すように、スライス方向に沿って並べられた複数、ここではNのX線検出素子列14を有する。各X線検出素子列14は、チャンネル方向に配列された複数、ここではM個のX線検出素子13を有する。寝台2の天板2aは、寝台コントローラ32の制御のもとで、サーボモータ等の寝台駆動装置2bによりスライス方向に沿って移動される。
【0020】
キャビネット3は、システム全体の動作を制御するシステムコントローラ43、スキャンコントローラ30、前処理ユニット34、データストアリングユニット35、再構成ユニット36、表示プロセッサ37、ディスプレイ38及び入力器(コンソール)39とともに、スキャノグラム生成ユニット43、透過率計算部41、管電流値計算部42を備えている。
【0021】
図5は、透過率計算部41の透過率計算手順を示している。まず、スキャノグラムデータが収集される(S1)。スキャノグラムデータは、本来的には、スキャン範囲や撮影条件等のスキャン計画を立てる際に参照するために収集される。このスキャノグラムデータは、透過率計算のための基礎データとしても使用される。図6(a)に示すように、スキャノグラムデータは、通常、中央の素子列14により収集される。スキャノグラムデータを収集するために、回転フレーム12は例えば0°の位置に固定され、天板2aは、定速で移動される。天板2aが定速で移動している間、X線管10から低い強度を有するX線が連続的に曝射される。X線が連続的に曝射されている間、中央の素子列14から一定の周期で信号が読み出される(図6(b)参照)。信号が読み出される周期と天板2aの移動速度とにより、スキャノグラムのスライス方向に関する分解能が決まる。スキャノグラムのチャンネル方向に関する分解能は、チャンネルピッチにより規定される。1チャンネルが1素子に相当すると仮定すると、チャンネルピッチは素子ピッチ、つまり隣り合う検出素子の中心点間距離に等価である。
【0022】
一定周期で読み出された信号は、データ収集装置24、前処理ユニット34を経由してスキャノグラム生成ユニット43へと送られる。スキャノグラム生成ユニット43では、各チャンネルのデータには、チャンネル番号データと位置センサ25で検出された天板2aのスライス方向の位置データとが関連付けられる。それにより、スキャノグラムデータが生成される。生成されたスキャノグラムデータは、データストアリングユニット35に記憶される。
【0023】
このスキャノグラムの各画素値は、透過X線の強度を表しており、透過X線の強度と、既知の照射X線強度とから、スライス方向の各位置のX線透過率を計算することができる。各位置の透過率は、その位置を中心として2次元領域内に含まれる複数の画素の画素値から計算される。当該2次元領域は、マスクと呼ばれる。
【0024】
透過率計算部41は、入力器39を介して入力されたマスクサイズに関するユーザインストラクションに従って、マスクサイズ(n×m)を設定する(S2)。マスクサイズの入力を支援するために、表示プロセッサ37は、データストアリングユニット35から読み出したスキャノグラムデータに従ってスキャノグラムをディスプレイ38に表示させるとともに、このスキャノグラム上に、マスクフレームをスーパーインポーズする。
【0025】
図7(a)は、ディスプレイ38に表示されたスキャノグラムと、デフォルトのマスクフレームの例を示している。マスクフレームは、デフォルトでは、四角形状を有し、そのマトリクスサイズは、縦がスキャン幅/スライス方向分解能(=N)で決まる画素数、横が検出器10の各列のチャンネル数(=M)に等価な画素数に設定されている。スキャン幅は、図8に示すように、撮影スライス枚数×スライス厚で定義される。撮影スライス枚数とスライス厚とはスキャン計画時にユーザにより設定される。撮影スライス枚数はマルチスライススキャンでは少なくとも2に設定される。スライス厚は、回転中心軸上での1スライスの厚さで定義され、一つの検出素子列14の有感幅の回転中心軸上での換算長の正の整数倍から選択的に指定される。
【0026】
マスクフレームは、ユーザによる入力器39の操作に従って、図7(b)に示すように、2<n<N、且つ2<m<Mの範囲内で、任意に拡大/縮小されることができる。つまり、マスクフレームには、少なくとも2×2の画素が含まれる。また、マスクフレームは、ユーザによる入力器39の操作に従って、図7(c)に示すように、十字形状を含む任意の多角形状に変形されることができる。また、マスクフレームは、ユーザによる入力器39の操作に従って、図7(d)に示すように、楕円又は円形に変形されることができる。
【0027】
マスクサイズが決まった後、透過率計算部41は、図9(a)に示すように、スキャノグラムに対してマスクを開始位置に配置し(S3)、その位置にあるマスクに含まれる複数の画素の画素値を、データストアリングユニット35から選択的に読み出す(S4)。読み出された複数の画素の画素値から、その平均値が計算される(S5)。平均値に代えて、読み出された複数画素の画素値の中からその最大値(又は最小値)が抽出されるようにしてもよい。平均値を計算するか、最大値を抽出するか、最小値を抽出するかは、ユーザにより選択される。なお、平均値が選択された場合、安定した管電流制御が実現され得る。最大値が選択された場合、被曝低減に効果的な管電流制御が実現され得る。最小値が選択された場合、S/Nの向上に効果的な管電流制御が実現され得る。
【0028】
なお、このマスク内の平均値は、換言すると、スキャノグラムの画素値をチャンネル方向に関して平均し、そのチャンネル方向の平均値を、スライス方向に関して移動平均した値に等価である。
【0029】
次に、透過率計算部41で、2次元領域内での平均値(又は最大値或いは最小値)に基づいて、マスクのスライス方向に関する中心位置zに対応する透過率F(z)が次の式に従って計算される。
【0030】
F(z)=log(I/(I−I))
ただし、I:照射X線強度
:透過X線強度
なお、上記では、2次元領域内でのスキャノグラムデータに基づいて管電流値を決定したが、スキャノグラムデータの生成前の段階にある検出器11の出力(生データ(ロウデータ)と呼ばれる)に関する2次元領域の分布に基づいて管電流値を決定するようにしてもよい。ロウデータ、スキャノグラムデータ、ロウデータから得られる各種インデックスデータをX線データと総称する。
【0031】
次に、図9(b)に示すようにマスクが単位距離だけスライス方向に移動され(S8)、S7でマスクが終端位置に達するまで(図9(c)参照)、S4−S6の処理が繰り返される。それにより図10(a)、図10(b)に示すように、X線透過率F(z)のスライス方向に関する離散分布が生成される。なお、上記単位距離は、スキャノグラムのスライス方向に関する分解能と素子列14の幅とのいずれかに初期的に設定される。単位距離はユーザの指示に従って任意の距離に変更可能である。
【0032】
最後に、X線透過率F(z)のスライス方向に関する離散分布から、補間により、X線透過率F(z)のスライス方向に関する連続的な分布(透過率プロファイルという)が生成される(S9)。この透過率プロファイルは、データストアリングユニット35に記憶される。
【0033】
通常、X線透過率F(z)は、胸部よりも肩部や腹部において低くなる。胸部には肺が存在し、肺内部の空気によりその大部分を占められるためX線透過率が高くなるのに対し、肩部には骨部が存在し、又腹部には臓器が存在するためX線透過率が低くなるのである。
【0034】
ここで注意すべき点は、本実施例では、透過率を、チャンネル方向だけでなく、スライス方向にも広がった2次元領域内の透過X線強度の平均値(又は最大値或いは最小値)にもとづて計算したことにある。このことが、シングルスライススキャンに比べて、スライス方向に視野の格段に広いマルチスライススキャンで、好適な管電流制御を実現する。
【0035】
図11には、ヘリカルスキャンにおいて、透過率プロファイルを使った管電流制御の手順を示している。スキャンコントローラ30の制御のもとで、ヘリカルスキャンが開始される(S11)。ヘリカルスキャンでは、天板2aが一定速度で移動され、X線管10が検出器11と共に連続的に回転される。その間、X線が連続的に曝射され、検出器11から一定周期で信号が読み出される。
【0036】
天板2aの位置データが位置センサ25からスキャンコントローラ30に一定周期で次々と供給される(S12)。説明の便宜上、天板2aの位置は、撮影中心位置に等価であると仮定する。撮影中心位置とは、天板2aの移動座標系において、スライス方向(Z軸方向)に広がったX線の中心軸のZ位置である。システムコントローラ43の制御のもとで、位置データと共に透過率読み出し要求がデータストアリングユニット35に出される。データストアリングユニット35から管電流値計算部42に、当該位置に対応するX線透過率データが読み出される(S13)。管電流値計算部42は、読み出されたX線透過率に基づいて、管電流値を計算する(S14)。
【0037】
図12(a)に、一般的なX線透過率F(z)と管電流(Itube)との関係図を示している。同図に示すように、X線透過率F(z)と管電流値(Itube)の関係は、比例関係にあることがある。このような関係図を用いることにより、X線透過率F(z)の値から一義的に管電流(Itube)の値を特定することができる。実際には、X線透過率F(z)と管電流(Itube)との関係を規定する関数式に従って、読み出されたX線透過率F(z)から管電流値(Itube)が計算される。しかし、X線透過率F(z)と管電流値(Itube)との関係を事前に計算し、その計算結果をテーブルとして保持していても良い。その場合、管電流値計算部42は、入力されるX線透過率F(z)に対して、対応する管電流値(Itube)を出力するよう組まれたROMとして構成される。
【0038】
X線透過率F(z)と管電流値(Itube)の関係は、図12(a)に示した比例関係に限定されない。図12(b)に示す指数関係を用いても良い。実際、X線は被検体Pを透過する際、指数関数的に減衰していくので、X線透過率F(z)と管電流(Itube)の関係として、指数曲線(Itube=expFx(z))を用いることにより、より現実に即した形となり、より適切な管電流値(Itube)を求めることができる。図12(c)及び図12(d)に示すように、管電流値(Itube)に、上限値(Itube,max)と下限値(Itube,min)を設定してもよい。それにより、常にX線管の容量の範囲内でX線照射を行うことができることになり、X線管の放電を防止することができる。
【0039】
図11に戻る。スキャンコントローラ30は、決定された管電流値でX線管10の陰極陽極間に電流が流れるように、フィラメント電流を制御する(S15)。S12−S15の処理は、S16でヘリカルスキャンが終了するまで繰り返される。ヘリカルスキャンは、天板位置が、計画されたスキャン範囲の終端位置に達したときに終了される(S17)。
【0040】
図13に示すように、スライス方向に関する透過率F(z)のプロファイルに基づいて管電流Itubeを制御することにより、天板2aの移動に伴って動的に管電流Itubeが変化される。透過率F(z)は、チャンネル方向だけでなく、スライス方向にも広がった2次元領域内の透過X線強度の平均値(又は最大値或いは最小値)に基づいて計算され、その透過率に基づいて管電流を制御している。それにより、シングルスライススキャンに比べて、スライス方向に視野の広いマルチスライススキャンであっても、好適な管電流制御を実現することができる。
【0041】
ここで、管電流(Itube)の制御に、透過X線強度の2次元領域内での平均値を用いた場合と、最大値(又は最小値)を用いた場合の効果の違いについて簡単に述べる。平均値を用いた場合、被検体のX線透過率の突然の変化にも対応することができ、また、極端に酷い画像ノイズやアーチファクト等が発生することがなくなり、該画像ノイズやアーチファクト等を常に均一(ある程度の範囲内)に抑えることができる。一方、最大値(又は最小値)を用いた場合、画像ノイズやアーチファクト等を、より低く抑えることができる。
【0042】
上述では、一方向に対応する1つの透過率プロファイルを使って天板2aのスライス方向移動に応じて動的に管電流を制御することを説明した。スライス方向移動とともに、X線管10の回転角度の変化にも応じて、より精細に管電流を制御するようにしてもよい。そのためには、少なくとも二方向に対応する2つの透過率プロファイルが必要とされる。
【0043】
図14に示すように、X線管10が0°の位置に固定されて状態で、スキャノグラムデータが収集される。また、X線管10が90°の位置に固定されて状態で、スキャノグラムデータが収集される。このように2方向からのスキャノグラムデータが収集される。図5の処理により、方向の違う2つのスキャノグラムに基づいて2つの透過率プロファイルFx(z)、Fy(z)が生成される。Fx(z)は、X線管10が0°の位置に対応し、Fy(z)は、X線管10が90°の位置に対応している。図15(a)にはマスク内平均値から求めた透過率プロファイルFx(z)ave、Fy(z)aveを示し、図15(b)にはマスク内最大値から求めた透過率プロファイルFx(z)max、Fy(z)maxを示している。一般に、人体はX方向に関して拉げた形状をしているので、Fy(z)がFx(z)よりも低くなる。いずれを使うかはユーザの選択次第である。
【0044】
上記X線透過率プロファイルFx(z)は、X線管10の回転角度が0°(180°も略等価)に対応し、X線透過率プロファイルFy(z)は、X線管10の回転角度が90°(270°も略等価)に対応している。透過率プロファイルFx(z)は360°の中の最大透過率を表し、逆に透過率プロファイルFy(z)は360°の中の最小透過率を表している。従って、ヘリカルスキャン中の実際の透過率は、X線管10の回転に伴って、2つの透過率プロファイルFx(z)、Fy(z)の間で変化する。X線管10が1回転する間に天板が移動する距離(ヘリカルピッチ)を1周期として、各周期で透過率プロファイルFx(z)、Fy(z)の間を、直線又はサイン波が2回交番するように生成した新たな透過率プロファイルF´(z)を、図15(c)に示している。
【0045】
この透過率プロファイルF´(z)に従って、管電流を制御することにより、天板2aの移動による透過率変化だけでなく、X線管10の回転による透過率変化に対しても、管電流をきめ細かく変化させることができる。
【0046】
上述では、スキャン以前に収集したスキャノグラムデータに基づいて透過率プロファイルを求めておき、その透過率プロファイルに従ってスキャン中に管電流を動的に制御することを説明した。しかし、スキャン中に収集したデータに基づいて透過率を計算し、その透過率に基づいてヘリカルスキャンの進行と共に動的に管電流を制御するようにしてもよい。
【0047】
透過率を計算するための基礎データは、図16(a)、図16(b)に示すように、スキャン幅T2に対応する検出素子列、つまり画像再構成のためのデータを収集するものとして設定された検出素子列より、先行する少なくとも2列の検出素子列(斜線)により収集される。例えば、図16(a)に示す基準位置で基礎データが収集され、ヘリカルスキャンが進行して、図16(b)に示す位置まで進んだとき、その位置での管電流は、図16(a)に示す基準位置で収集した基礎データから計算された透過率に従って決定される。つまり、先行する少なくとも2列の検出素子列で収集した複数チャンネルの透過X線強度の平均値(又は最大値或いは最小値)から透過率を計算し、画像再構成のためのデータを収集するものとして設定された検出素子列の中心が、その透過率データを収集した位置に到達した時、その透過率に従って管電流を制御する。
【0048】
また、透過率を計算するための基礎データは、スキャン幅T2に対応する少なくとも2列の検出素子列、つまり画像再構成のためのデータを収集するものとして設定された少なくとも2列の検出素子列で反回転前、1回転又は数回転前に収集されるようにしてもよい。つまり、図17(a)に示す1回転又は数回転前に少なくとも2列の検出素子列で収集された複数チャンネルの透過X線強度の平均値(又は最大値或いは最小値)から透過率を計算し、その透過率に従って、図17(b)に示す1回転又は数回転後の管電流をヘリカルスキャンの進行と共に動的に制御する。
【0049】
このように、直前に少なくとも2の素子列で収集したデータを基に即時的に管電流を制御することにより、同様の効果を奏することができる。
【0050】
(変形例)
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されてもよい。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、マルチスライススキャンにおいて、X線強度をより最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のシングルスライススキャンを示す図である。
【図2】従来のマルチスライススキャンを示す図である。
【図3】本発明の実施例に係るX線コンピュータトモグラフィ装置の構成を示す図である。
【図4】図3のX線検出器の平面図である。
【図5】図3の透過率計算部による透過率計算処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】図2のX線検出器の中心素子列により収集されたデータプロファイルを示す図である。
【図7】図5のS2でマスク設定用画面例を示す図である。
【図8】図5のS2のスキャン幅の補足説明図である。
【図9】図5のS3のマスクの開始位置、マスクの途中位置、マスクの終端位置を示す図である。
【図10】図3の透過率計算部により計算された透過率の離散分布を示す図である。
【図11】図3のスキャンコントローラによるヘリカルスキャンでの管電流制御(X線強度制御)の流れを示すフローチャートである。
【図12】図3のデータストアリングユニットに記憶されているX線透過率と管電流との様々な関係図を示す図である。
【図13】本実施例において、管電流の時間変化を示す図である。
【図14】本実施例の変形例において、直行2方向のスキャノグラムデータの収集を示す図である。
【図15】本実施例の変形例において、管電流の時間変化を示す図である。
【図16】本実施例の他の変形例において、透過率の基礎データをスキャン中に収集する様子を示す図である。
【図17】本実施例のさらに他の変形例において、スキャンの様子を示す図である。
【符号の説明】
1…ガントリ、
2…寝台、
2a…天板、
2b…寝台駆動装置、
3…キャビネット、
10…X線管、
11…X線検出器、
12…回転フレーム、
13…X線検出素子、
14…X線検出素子列、
21…高電圧発生装置、
22…コリメータ、
25…ガントリ駆動装置、
30…スキャンコントローラ、
31…高電圧コントローラ、
32…寝台コントローラ、
33…ガントリコントローラ、
34…前処理ユニット、
35…データストアリングユニット、
36…再構成ユニット、
37…表示プロセッサ、
38…ディスプレイ、
39…入力器(コンソール)、
41…透過率計算部、
42…管電流値計算部、
43…スキャノグラム生成ユニット。

Claims (10)

  1. 被検体に照射するためのX線を発生するX線管と、
    前記X線管に印加するための高電圧を発生する高電圧発生器と、
    前記被検体を透過したX線を検出するために複数のX線検出素子列を有するX線検出器と、
    前記X線検出器の出力に基づいて、スキャノグラムを生成するスキャノグラム生成部と、
    前記X線検出器の出力に基づいて、画像を再構成する再構成部と、
    前記スキャノグラムの2次元部分領域内に含まれる複数画素の画素値の最大値又は平均値に基づいて、前記X線管の管電流値を決定する管電流決定部と、
    前記決定された管電流値に基づいて前記高電圧発生器を制御する制御部とを具備することを特徴とするX線コンピュータトモグラフィ装置。
  2. 前記2次元部分領域は、前記X線管と前記被検体との間に配置されるコリメータのスライス方向開口幅に対応する検出素子列の数と、前記検出素子列各々を構成するチャンネル数とに応じたサイズを有することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータトモグラフィ装置。
  3. 前記平均値に前記管電流値を関連付けたテーブルを記憶する記憶部をさらに備えることを特徴とする請求項記載のX線コンピュータトモグラフィ装置。
  4. 前記管電流決定部は、複数の離散的な位置で複数の管電流値を決定し、前記制御部は、前記決定された複数の管電流値に基づいて前記X線管の管電流を前記被検体の移動に伴って動的に変化させることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータトモグラフィ装置。
  5. 前記管電流決定部は、前記複数の離散的な位置の中間位置に対応する管電流値を前記決定した管電流値から補間により求めることを特徴とする請求項記載のX線コンピュータトモグラフィ装置。
  6. 前記再構成部は、ユーザインストラクションに従って前記複数のX線検出素子列から選択された2以上のX線検出素子列からの出力に基づいて、前記画像を再構成することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータトモグラフィ装置。
  7. 前記2次元部分領域は、前記X線検出素子列各々を構成するチャンネル数と、前記選択されたX線検出素子列の数とに応じたサイズを有することを特徴とする請求項記載のX線コンピュータトモグラフィ装置。
  8. 前記スキャノグラムを、前記2次元部分領域を表すフレームと共に表示する表示部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータトモグラフィ装置。
  9. 前記フレームのサイズを任意に変えるための入力器をさらに備えることを特徴とする請求項記載のX線コンピュータトモグラフィ装置。
  10. 前記フレームの形状を任意に変えるための入力器をさらに備えることを特徴とする請求項記載のX線コンピュータトモグラフィ装置。
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