JP4306887B2 - 局部延性及び熱処理後の靭性に優れた低合金鋼熱延鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、局部延性及び熱処理後の靭性に優れた低合金鋼熱延鋼板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
C含有量0.1〜0.5重量%の中炭素鋼板は、焼入れ強化が可能なことに加え焼鈍状態である程度の加工性を呈することから、自動車部品,産業機械部品等を始めとして各種機械部品や軸受部品の素材として使用されている。この種の部品の製造に際しては、打抜き加工や曲げ加工が通常採用されており、場合によっては比較的軽度の絞り加工,伸びフランジ成形等が施されることもある。複雑形状の部品にあっては、複数の部材を溶接して製造する方法も採用されている。更に、一般的な焼入れ・焼戻しによる熱処理や電子ビーム照射による局部熱処理等を施し、各種部品に仕上げている。
最近では、部品の製造コストを低減するため、部品の一体成形や部品加工の工程簡略化が進められている。この傾向を素材側からみると、より過酷な加工に耐える特性が要求されることを意味する。すなわち、加工技術の高度化に伴って中炭素鋼板自体にもより高い加工性が要求されるようになってきた。なかでも、打抜き加工だけでなく穴拡げ加工等の高度な伸びフランジ成形にも耐え得る局部延性に優れた鋼板素材にニーズが高まりつつある。
【0003】
製造コストの低減だけでなく、素材コストの低減も検討されている。素材コストの低減では、冷延焼鈍材から熱延焼鈍材、更には熱延材への変更がある。したがって、加工技術の高度化に伴って球状化炭化物組織をもち、比較的加工性に優れた焼鈍材に止まらず、変形能の低いパーライト組織をもつ熱延材に対しても高い加工性が要求されるようになってきている。
しかも、焼入れ・焼戻し処理を施して製品化される自動車部品や産業機械部品を始めとする各種機械部品や軸受部品等では、使用環境によっては良好な衝撃靭性が要求されることが多いことから、加工性に加え、熱処理後の靭性にも優れていることが要求される。
【0004】
中炭素鋼熱延材に関し、これまでにも種々の加工性改善方法が提案されている。たとえば、特開平7−188858号公報の冷間鍛造用鋼では、C含有量0.25〜0.39重量%の鋼材を使用し、熱間圧延終了後の徐冷で熱延材の硬さを低下させ、冷間鍛造性を向上している。特開平8−337843号公報の高炭素熱延鋼板では、C含有量0.30〜0.70重量%の鋼材を使用し、仕上げ温度,仕上げ圧延から巻取り温度までの平均冷却速度及び巻取り温度を規定した熱延条件によって打抜き加工性を向上させている。これらは、冷間鍛造性や打抜き性を改善したものではあるが、局部延性に関連する伸びフランジ性にみられるような高度の加工性を改善するには至っていない。また、熱処理後の靭性に関しても不明である。特開平5−98356号公報,特開平5−345952号公報等では、中炭素鋼の熱処理後靭性を改善する方法を紹介しているものの、局部延性に関連する伸びフランジ性等の高度な加工性の改善を開示していない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、加工性のなかでも伸びフランジ性等の局部延性に優れた中炭素鋼熱延板のニーズが高いにも拘わらず、局部延性の向上に有効な金属組織の如何が十分に解明されていないこと等の理由から、一般的な中炭素鋼熱延鋼板の局部延性を改善する手段は確立されていない。また、加工性に加えて熱処理後に優れた靭性を呈する中炭素鋼板に対するニーズにも十分に応えていない現状である。本発明は、このような要求を満足すべく開発されたものであり、P量及びB量のバランスを図ると共に、熱延鋼板のパーライト組織を微細化することにより伸びフランジ性や精密打抜き性等の局部延性を改善し、熱処理後の靭性にも優れた低合金熱延鋼板を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の低合金鋼熱延鋼板は、その目的を達成するため、C:0.15〜0.50重量%,Si:0.30重量%以下,Mn:0.3〜1.0重量%,P:0.03重量%以下,S:0.01重量%以下,Ti:0.01〜0.15重量%,B:0.0005〜0.0050重量%,N:0.01重量%以下,T.Al:0.02〜0.10重量%,Cr:0〜0.8重量%を含み、残部がFe及び不可避的不純物の組成をもち、[%P]≦6×[%B]+0.005を満足し、JIS5号引張試験片の平行部長手方向中央位置における幅方向両サイドに開き角45度,深さ2mmのVノッチを入れた試験片を用いて引張試験し、平行部長手方向中央部の標点間距離5mmに対する破断後の伸び率として表わされる切欠き引張伸びが35%以上であることを特徴とする。
この低合金熱延鋼板は、所定組成の鋼材を仕上げ温度750〜900℃及び巻取り温度400〜650℃で熱間圧延することにより製造される。
【0007】
【作用】
本発明者等は、軟質で伸びフランジ性や精密打抜き性に優れ、熱処理後の靭性が良好な低合金熱延鋼板の製造条件について詳細に調査検討した。その結果、加工性に関しては、伸びフランジ性や精密打抜き性は切欠き引張伸び(Elv)と強い相関関係があり、一般的な打抜き加工性や曲げ加工性が向上する場合でも切欠き引張伸び(Elv)が改善されるとは限らないこと、切欠き引張伸び(Elv)は熱延鋼板の金属組織に大きく依存することを知見した。具体的には、熱延鋼板のパーライト組織を微細化することにより切欠き引張伸び(Elv)が改善される。なお、切欠き引張伸び(Elv)は、JIS5号引張試験片の平行部長手方向中央位置における幅方向両サイドに開き角45度,深さ2mmのVノッチを入れた試験片を用いて引張試験し、平行部長手方向中央部の標点間距離5mmに対する破断後の伸び率として表わされる。
【0008】
伸びフランジ成形や精密打抜き加工によって生じる割れや亀裂は、加工変形中に発生する非常に局部的な欠陥を起点とし、加工変形中の応力によって成長伝播するものと考えられる。この点、他の一般的な加工性の改善に伴って切欠き引張伸び(Elv)が必ずしも同様に改善されないことは、他の加工性には影響を及ぼさないようなミクロ的な欠陥が切欠き引張伸び(Elv)に対しては敏感に影響するものと推察される。
中炭素鋼熱延板では、粗大化したパーライトブロックと初析フェライトとの界面におけるミクロボイドの成長,粗大化したパーライト中の炭化物(セメンタイト)を起点として発生したミクロボイドの成長(連結),粗大化した炭化物の破断等が局部的な欠陥の生成原因に挙げられる。したがって、中炭素鋼熱延板の伸びフランジ性や精密打抜き加工性、換言すると切欠き引張伸び(Elv)を改善する上で、加工変形時にミクロボイドの生成・成長を可能な限り抑制できる金属組織に調整することが重要であると考えられる。
【0009】
このような考察に基づいて種々の実験を繰り返した結果、低合金熱延鋼板のパーライト組織を微細化することにより、粗大化したパーライトブロックと初析フェライトとの界面におけるミクロボイドの成長,粗大化したパーライト中の炭化物(セメンタイト)を起点として発生したミクロボイドの成長(連結)及び粗大化した炭化物の破断が抑制され、伸びフランジ性や精密打抜き加工性、すなわち切欠き引張伸び(Elv)が顕著に改善されることを解明した。
【0010】
切欠き引張伸び(Elv)の改善には、C及びMnの含有量を下げることも有効であるが、C及びMn含有量の低下によって焼入れ性,焼入れ硬さの確保等の熱処理性が劣化する虞れがある。このような熱処理性の低下を抑制し、且つ切欠き引張伸び(Elv)を改善するためには、Cr,Ti,Bの適量添加が有効である。これらの成分調整は、焼入れ性向上にも有効に作用する。
以上のように、低合金鋼熱延板の局部延性に関しては、パーライト組織の微細化により切欠き引張伸び(Elv)を向上させることが重要である。そこで、熱延後のパーライト組織に及ぼす熱延条件を種々変化させ、パーライト組織の如何が切欠き引張伸び(Elv)等の加工性に及ぼす影響を調査した。その結果、成分調整された鋼材を使用し、仕上げ温度を750〜900℃,巻取り温度を400〜650℃に制御した熱間圧延を施すことにより、パーライト組織が微細化され、切欠き引張伸び(Elv)が35%以上の優れた局部延性を呈する熱延鋼板が得られることが判った。
【0011】
伸びフランジ性,精密打抜き加工性等の加工性を劣化させることなく、熱処理後の靭性を改善するためには、製造条件を変えることが必要である。
Ti又はNbの炭窒化物で焼入れ時のオーステナイト粒系を微細化するとき鋼材が高靭性化することは一般に知られている。しかし、Ti又はNbの添加は、熱処理前の素材強度を上昇させ、加工性に悪影響を及ぼす。P,S含有量の調整,Bの微量添加等で靭性を改善する方法も知られている。すなわち、粒界に偏析して脆化を促進させるP及びSを低減することにより、靭性が向上する。Bは、粒界偏析によって粒界を強化し、靭性を向上させる。P,Sの低減及びBの添加は、熱処理前の素材の加工性を向上させ、或いは少なくとも加工性を劣化させない点では有効である。しかし、P,Sの低減は、製鋼段階で経済的に不利になる。そこで、本発明者等は、P,S,Bの含有量を種々変化させた鋼板について常温シャルピー衝撃試験でP量及びS量のバランスを詳細に検討した。その結果、個々の成分の含有量を調整又は添加することに加え、[%P]≦6×[%B]+0.005の関係をP,B含有量の間に成立させるとき、プレスによる精密打抜き加工性、すなわち切欠き引張伸び(Elv)に悪影響を及ぼすことなく、熱処理後の低合金鋼熱延板を高靭性化できることが判った。
【0012】
【実施の形態】
以下、本発明で使用する低合金鋼熱延鋼板の合金成分,含有量,製造条件等を説明する。
C:0.15〜0.50重量%
本発明では、C:0.15〜0.50重量%を含む中炭素鋼を対象にしている。Cは、炭素鋼で最も基本となる合金成分であり、含有量の如何によって焼入れ硬さ及び炭化物量が大きく変動する。C含有量が0.15重量%未満では、十分な焼入れ硬さが得られない。逆に、0.50重量%を超えるC含有量では、熱延後の靭性が低下し、鋼帯の製造性や取扱い性が悪化するばかりでなく、十分な切欠き引張伸び(Elv)が得られない。また、C含有量が低くなるほど、切欠き引張伸び(Elv)が一層改善される。このようなことから、本発明ではC含有量を0.15〜0.50重量%の範囲に設定した。
【0013】
Si:0.30重量%以下
穴拡げ性,精密打抜き加工性等の局部的延性の指標である切欠き引張伸び(Elv)に大きな影響を及ぼす合金成分の一つである。しかし、0.30重量%を超える過剰量のSiを添加すると、固溶強化作用によってフェライトが硬化し、成形加工時に割れ発生の原因となる。更に、Si含有量の増加は、製造過程で鋼板表面にスケール疵が発生する傾向を助長し、表面品質の低下を招く。
Mn:0.3〜1.0重量%
鋼板の焼入れ性を高め、強靭化にも有効な合金成分である。十分な焼入れ性を確保するためには、0.3重量%以上のMnが必要である。しかし、1.0重量%を超える過剰量のMnを含有させると、フェライトが硬化し、加工性の劣化を招く。
【0014】
P:0.03重量%以下
B量とのバランス調整によって、ある程度までの含有量が許容できる。しかし、0.03重量%を超える過剰量を含有する鋼材では、B量とバランス調整しても靭性や延性に及ぼすPの悪影響が顕著になる。
S:0.01重量%以下
MnS系介在物を形成する成分であり、MnS系介在物が多くなるほど精密打抜き加工性や切欠き引張伸び(Elv)が劣化するので、鋼中のS含有量は可能な限り低くすることが好ましい。しかし、本発明で規定する熱間圧延条件により熱延板のパーライト組織を微細化するとき、S含有量を特別に低減していない一般的な市販鋼に対しても精密打抜き加工性や切欠き引張伸び(Elv)の改善効果が得られる。ただし、C含有量が0.50重量%近くまで高くなった場合でも高切欠き引張伸び(Elv)を安定して確保するため、0.01重量%以下にS含有量を規制する。また、S含有量を0.005重量%以下に低減するとき、切欠き引張伸び(Elv)が一層高くなり、非常に優れた切欠き引張伸び(Elv)をもつ鋼板素材が安定して製造される。
【0015】
Ti:0.01〜0.15重量%
溶鋼の脱酸調整に添加される成分であり、脱窒作用も呈する。また、鋼板に固溶しているNを窒化物として固定し、焼入れ性改善に働く有効B量を高くする。更に、炭窒化物となって焼入れ時の結晶粒粗大化防止にも働く。これらの作用を安定して得るためには、少なくとも0.01重量%以上のTiが必要である。しかし、0.15重量%を超える過剰量のTiが含まれると、経済的に不利になるばかりでなく、精密打抜き加工性や切欠き引張伸び(Elv)を劣化させる原因ともなる。
B:0.0005〜0.0050重量%
極く微量の添加で鋼材の焼入れ性を大幅に向上させる作用を呈し、焼入れ硬さを安定して確保するために必要な合金成分であり、P量との関係でバランス調整した量のBを添加するとき熱処理後の靭性も向上する。このようなBの効果は、0.0005重量%以上の含有量で顕著になるが、0.0050重量%で飽和する。0.0050重量%を超える量のB添加は、却って靭性を劣化させる原因になる。
【0016】
N:0.01重量%以下
Tiと結合してTiNを生成し、焼入れ時の結晶粒微細化に有効な合金成分である。しかし、0.01重量%を超えるN含有量では、延性が低下する。また、過剰量のNは、鋼中のBと結合し、焼入れ性の改善に必要な有効B量を消費する。
T.Al:0.02〜0.10重量%
溶鋼の脱酸剤として使用される成分であり、Nを固定する作用も呈する。このような作用は、0.02重量%以上のAl含有量で顕著になる。しかし、鋼中のAl量が0.10重量%を超えると、鋼材の清浄度が損われ、鋼板表面に疵が発生し易くなる。そこで、本発明においては、酸化物形態等も含めたT.Alを0.02〜0.10重量%の範囲に設定する。
Cr:0〜0.8重量%
必要に応じ添加される合金成分であり、焼入れ性の改善及び焼戻し軟化抵抗の上昇に有効に作用する。しかし、0.8重量%を超える過剰量のCrが含まれると、切欠き引張伸び(Elv)は勿論、一般的な加工性も劣化する傾向を示す。
【0017】
熱間圧延:仕上げ温度750〜900℃,巻取り温度400〜650℃
熱間圧延では、オーステナイト相の再結晶を極力抑制し、パーライト変態を加速させて微細なパーライト組織となるように熱延条件が設定される。すなわち、35%以上の切欠き引張伸び(Elv)を確保するため、仕上げ温度を900℃以下に設定する。しかし、仕上げ温度が下がり過ぎると変形抵抗が増大するため、750℃以上に仕上げ温度の下限を設定する。同様に、パーライト組織を微細化して35%以上の切欠き引張伸び(Elv)を確保するため、巻取り温度の上限を650℃に設定する。650℃を超える巻取り温度では、パーライト組織の粗大化及びパーライトラメラ間隔が増大し、切欠き引張伸び(Elv)が低下する傾向を示す。巻取り温度が低いほどパーライト組織の微細化が進行し、局部延性の向上には有効である。しかし、400℃を下回る低い巻取り温度では、マルテンサイトの生成に起因して製造性が劣化する虞れがある。
【0018】
【実施例】
表1の組成をもつ各種鋼材を溶製した。表1中、A〜Dが本発明鋼材,E〜Kが比較鋼である。鋼EはC含有量が0.10重量%と低い点で、鋼FはC含有量が0.35重量%のJIS鋼種S35Cに相当しTi,Bが添加されていない点で、鋼GはC含有量0.24重量%でTi及びBを添加しているもののP含有量が0.33重量%と高く[%P]≦6×[%B]+0.005を満足してない点で、鋼HはC含有量0.46重量%でTi及びBを添加しているものの[%P]≦6×[%B]+0.005を満足してない点で、鋼IはC含有量が0.34重量%であるがTi,Bが添加されておらずCr含有量が0.88重量%と高い点で、鋼JはJIS鋼種S45Cに相当しTi,Bが添加されていない点で、鋼KはC含有量が0.63重量%,Mn含有量が1.23重量%と高く且つTi,Bが添加されていない点で本発明で規定した範囲を外れる。
【0019】
【0020】
各鋼材を連続鋳造して得た鋼塊を熱間圧延し、板厚2.0mmの熱延板を製造した。熱間圧延では、仕上げ温度及び巻取り温度を種々変更し、熱延組織に及ぼす影響を調査した。
熱延板から切り出した試験片を切欠き引張試験に供し、加工性を評価した。切欠き引張試験では,JIS5号引張試験片の平行部長手方向中央位置における幅方向両サイドに開き角45度,深さ2mmのVノッチをつけた試験片を用いて引張試験した。そして、Vノッチを含む標点間距離5mmに対する伸び率を破断後に測定し、測定値を切欠き引張伸び(Elv)として表示した。
更に、熱延板を870℃で均熱15分保持し、60℃の油中に焼入れ処理した後、種々の温度で均熱30分の焼戻しを施し、硬さを40HRCに調節した。そして、焼入れ・焼戻しされた材料から切り出された試験片を常温シャルピー衝撃試験に供し、熱処理後の靭性を調査した。
【0021】
表2の調査結果にみられるように、本発明で規定した条件下で本発明鋼A〜Dを熱間圧延した試験番号1〜8では、何れも35%以上の切欠き引張伸び(Elv)が得られ、局部的延性に優れてい他。熱処理後の靭性も70〜130J/cm2の範囲にあり、十分な靭性をもっていることが判る。
これに対し、本発明鋼A〜Dを使用した場合でも、仕上げ温度や巻取り温度が本発明で規定した範囲を外れる試験番号9〜12では、熱処理後の靭性が試験番号1〜8と同様に十分な値を示すものの、切欠き引張伸び(Elv)が本発明例1〜8に比較して低い値であった。
【0022】
C含有量が低い比較鋼13を本発明で規定した条件下で熱間圧延した場合(試験番号13)、切欠き引張伸び(Elv)は良好であるものの、熱処理によって硬さ40HRCが得られなかった。そのため、熱処理後の靭性評価を省略した。
Ti及びBを含まない比較鋼F,Jを本発明で規定した条件下で熱間圧延した場合(試験番号14,18)、本発明例に比較して熱処理後の靭性及び切欠き引張伸び(Elv)共に低くなっていた。
比較鋼Gを本発明で規定した条件下で熱間圧延した場合(試験番号15)、[%P]≦6×[%B]+0.005の関係を満足しないこと及び過剰量のPを含んでいることから、本発明例に比較して熱処理後の靭性が劣っていた。
【0023】
比較鋼Hを本発明で規定した条件下で熱間圧延した場合(試験番号16)、Ti,Bを含んでいることから切欠き引張伸び(Elv)は優れているものの、[%P]≦6×[%B]+0.005の関係を満足しないため本発明例に比較して熱処理後の靭性に劣っていた。
比較鋼Iを本発明で規定した条件下で熱間圧延した場合(試験番号17)、Cr含有量が高くTi,Bを含んでいないため、本発明例に比較して熱処理後の靭性及び切欠き引張伸び(Elv)共に劣っていた。
比較鋼Kを本発明で規定した条件下で熱間圧延した場合(試験番号19)、C含有量及びMn含有量が高いため、本発明例に比較して熱処理後の靭性及び切欠き引張伸び(Elv)共に劣っていた。
【0024】
【0025】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の低合金鋼熱延板は、P量及びB量のバランス化等を含めて成分・組成を調整すると共に、熱延板のパーライト組織を微細化することにより、伸びフランジ性や精密打抜き加工性等の局部延性を改善し、且つ熱処理後の靭性も向上させている。この低合金鋼熱延板は、その優れた長所を活用し簡略化された加工工程で製品形状に成形でき、素材コスト及び製造コストも低減されていることから、自動車部品,産業機械部品等の各種機械部品や軸受部品等として広範な分野で使用される。
Claims (3)
- C:0.15〜0.50重量%,Si:0.30重量%以下,Mn:0.3〜1.0重量%,P:0.03重量%以下,S:0.01重量%以下,Ti:0.01〜0.15重量%,B:0.0005〜0.0050重量%,N:0.01重量%以下,T.Al:0.02〜0.10重量%,Cr:0〜0.8重量%を含み、残部がFe及び不可避的不純物の組成をもち、[%P]≦6×[%B]+0.005を満足し、JIS5号引張試験片の平行部長手方向中央位置における幅方向両サイドに開き角45度,深さ2mmのVノッチを入れた試験片を用いて引張試験し、平行部長手方向中央部の標点間距離5mmに対する破断後の伸び率として表わされる切欠き引張伸びが35%以上であることを特徴とする局部延性及び熱処理後の靭性に優れた低合金鋼熱延鋼板。
- C:0.15〜0.50重量%,Si:0.30重量%以下,Mn:0.3〜1.0重量%,P:0.03重量%以下,S:0.01重量%以下,Ti:0.01〜0.15重量%,B:0.0005〜0.0050重量%,N:0.01重量%以下,T.Al:0.02〜0.10重量%,Cr:0〜0.8重量%を含み、残部がFe及び不可避的不純物の組成をもち、[%P]≦6×[%B]+0.005を満足する鋼材を仕上げ温度750〜900℃及び巻取り温度400〜650℃で熱間圧延することを特徴とする局部延性及び熱処理後の靭性に優れた低合金鋼熱延鋼板の製造方法。
- C:0.15〜0.50重量%,Si:0.30重量%以下,Mn:0.33〜0.83重量%,P:0.03重量%以下,S:0.01重量%以下,Ti:0.01〜0.15重量%,B:0.0005〜0.0050重量%,N:0.01重量%以下,T.Al:0.02〜0.10重量%,Cr:0〜0.8重量%を含み、残部がFe及び不可避的不純物の組成をもち、[%P]≦6×[%B]+0.005を満足する鋼材を仕上げ温度750〜900℃及び巻取り温度400〜650℃で熱間圧延することを特徴とする局部延性及び熱処理後の靭性に優れた低合金鋼熱延鋼板の製造方法。
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