JP4302830B2 - ロボットのキャリブレーション方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、産業用の多関節ロボットの絶対精度を向上させることができるキャリブレーション方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
産業用ロボットをNC装置として使用しようとしたとき、ロボットの据付け誤差、ロボット自体の剛性や製作精度に起因する誤差などで絶対精度が低下するため、キャリブレーションにより絶対精度の向上を図ることが行われる。キャリブレーションを行うためにはロボット手先の3次元位置を高精度に実測する必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ロボット手先の3次元位置を計測するために、カメラ、超音波、レーザを用いる方法等が提案されているが、分解能の点で広範囲に計測しようとすれば精度が低下するという問題がある。また、機械式の3次元測定機を用いる方法は、他の方式と比較して精度は保証されるが、自動計測には向かないという問題がある。
従来の機械式の3次元測定機を用いる方法は、計測点に1点ずつ目視で精度良く照準をあわせるのに時間がかかり、かつ、計測の個人差が誤差要因となる。また、これを自動で行う場合、測定機の軸構成や姿勢等により、方向によって動きやすさに差があり、測定機に過大な負荷がかかるなどの問題で、使用範囲(測定範囲)や使用方法に制約が生じることが予想される。
【0004】
本発明は上記の諸点に鑑みなされたもので、本発明の目的は、先端部に力を加えて動かすことにより、該先端部を任意の位置・姿勢に位置決めすることができる、各関節部に位置検出器を設けた6以上の自由度を有する3次元測定機を用意し、この3次元測定機の先端部分と校正したい多関節ロボットの手先を結合して、ロボット先端部の位置・姿勢を計測できる構成とすることにより、高精度、かつ、自動でロボットのキャリブレーションを行うことができる方法及び装置を提供することにある。
また、本発明の目的は、ロボットがキャリブレーションに必要な空間上の複数の教示点間を移動する際に、3次元測定機の動きやすさを考慮し、それに基づきロボットの移動経路を補正することにより、測定機に過大な負荷がかかる等の問題がなくなり、使用範囲(測定範囲)や使用方法に制約が発生しないロボットのキャリブレーション方法及び装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明のロボットのキャリブレーション方法は、アームの先端部に力を加えて動かすことにより、該先端部を任意の位置・姿勢に位置決めすることができるように、6以上の自由度を有するアームを備え、アームの関節部の各軸に位置検出器を設けて、各軸の位置検出器の信号から先端部の位置・姿勢を計測することができる3次元測定機を用い、この3次元測定機の先端部と校正したい多関節ロボットの先端部にある手先を結合して、ロボット先端部の位置・姿勢を計測し、ロボットの位置・姿勢を変えて複数の教示点を計測することによりロボットの機構パラメータを求めてキャリブレーションを行うように構成されている(図1、図2参照)。
【0006】
上記の本発明の方法において、ロボットがキャリブレーションに必要な空間上の複数の教示点間を移動する際に、3次元測定機の動きやすさを評価して、測定機が動きにくい場合に、その教示点から次の動作点までの間に経由点を発生させてロボットの移動経路を補正することが好ましい(図3、図4、図5参照)。
【0007】
本発明のロボットのキャリブレーション装置は、アームの先端部に力を加えて動かすことにより、該先端部を任意の位置・姿勢に位置決めすることができるように、6以上の自由度を有するアームを備え、アームの関節部の各軸に位置検出器を設けて、各軸の位置検出器の信号から先端部の位置・姿勢を計測することができる3次元測定機と、先端部に設けられた手先が3次元測定機の先端部に結合された多関節ロボットと、3次元測定機の各軸の位置検出器からの信号を入力して座標変換を行うことにより、ロボット先端部の位置・姿勢を演算する位置・姿勢演算装置と、ロボットの位置・姿勢を変えて演算した複数の計測値からロボットの機構パラメータを求めてキャリブレーションを行う、ロボット制御装置に接続されたキャリブレーション演算装置と、前記多関節ロボットに連結されたロボット制御装置とを備えたことを特徴としている(図1、図2参照)。
【0008】
上記の本発明の装置において、ロボットがキャリブレーションに必要な空間上の複数の教示点間を移動する際に、3次元測定機の動きやすさを評価する値を算出し、測定機が動きにくい場合に、その教示点から次の動作点までの間に経由点を発生させる操作性演算装置を設け、この操作性演算装置をロボット制御装置に接続して、3次元測定機の動きやすさを考慮してロボットの移動経路を補正できるような構成とすることが好ましい(図3、図4、図5参照)。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は下記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、適宜変更して実施することが可能なものである。
図1は、本発明の実施の第1形態によるロボットのキャリブレーション装置を示している。図2は、本実施形態でロボットの手先の3次元位置計測に用いる測定機の一例を示している。
図2に示すように、3次元測定機10は、剛性の高い6以上の自由度を有するアーム12と、各関節部に高精度の位置検出器14(例えば、エンコーダ)を有する垂直多関節の測定機であり、先端部16に力を加えて動かすことにより、先端部16を動作範囲内の任意の位置・姿勢に位置決めすることができ、このときの測定機各軸の位置検出器14からの信号を入力し、これに座標変換行列を乗じることにより、先端部16の位置・姿勢を高精度で計測するものである。
【0010】
上記の3次元測定機10の先端部16とキャリブレーションしたい多関節ロボットの手先を既定の位置で結合することにより、図1に示すような、ロボットの手先の3次元位置・姿勢を計測することができる構成とする。こうした機械的に結合された測定機を使う方式は、非接触で三角測量で計測する方式に比べ、直接ロボットの手先の3次元位置を計測するので、精度良く計測することが可能である。
また、図1に示すように、3次元測定機10の先端部16とロボット18の手先20とは、例えば、レーザセンサ22を設けた結合治具24で結合されている。結合治具24のロボット18側にはスポット光のレーザセンサ22が高精度に取り付けられている。3次元測定機10側に予め定められた基準点26をマーキングし、レーザセンサ22のスポット光がこの基準点26に当たるように3次元測定機10の位置を手動で調整した状態で、計測するロボット18と3次元測定機10とを結合治具24で結合固定する。この調整は最初の1回だけでよい。この治具構成では、ロボットと測定機の間隔方向については、レーザセンサの計測値を利用できるので、厳密に調整する必要はない。なお、図1では図示していないが、さらに上記のレーザセンサ22に替えて、ロボット18側にLEDなどの投光器を高精度に取り付け、結合治具24の測定機10側にCCDカメラを取り付けて、LED等の投光器の2次元位置を計測する構成とすれば、最初にLEDやカメラの取付け精度のみを厳密に管理するだけでよく、結合のための調整は全く必要なくなる。
【0011】
つぎに、ロボット手先の3次元位置・姿勢を計測して、ロボットのキャリブレーションを行う手法について説明する。
図1に示すように、3次元測定機10の位置検出器14からの各軸位置データが入力装置28に入力され、これらのデータが位置・姿勢演算装置30で座標変換されてロボット手先の位置・姿勢が演算される。ロボットのある位置・姿勢での基準点のロボット座標系での値をPr、このときの3次元測定機で計測した基準点の測定機座標系での値をPf、測定機座標とロボット座標との変換行列をRとする。これらの値はレーザセンサ等のセンサの計測値、ロボットとセンサの取付け関係、測定機とロボットの設置関係、測定機と結合治具の取付け関係、ロボット及び測定機の関節角度情報があれば、容易に求めることができる。ただし、Pfは高精度で求めることができるが、PrとRには、ロボットの剛性やロボットの据付けに起因する誤差が含まれている。キャリブレーションのアルゴリズム自体は従来の手法が利用できる。すなわち、ロボット18の位置・姿勢を変えて複数の点を計測し、位置・姿勢演算装置30で演算した複数の計測値から、キャリブレーション演算装置32でロボットの機構パラメータが求められる。ロボットの機構モデルに含まれる未知パラメータの同定には、例えば、特異値分解法などの非線形推定手法が用いられる。キャリブレーション演算装置32で求められたロボットの機構モデルを用いて、ロボット18の絶対精度を改善し、さらにその検証を行うようにする。34は、ロボット18を制御するロボット制御装置である。
【0012】
図3は、本発明の実施の第2形態によるロボットのキャリブレーション装置を示している。3次元測定機10の先端部16とロボット18の手先20とを既定の位置で結合することにより、図3に示すような、ロボットの手先の3次元位置・姿勢を計測することができる構成とする。なお、図3では、結合治具等の詳細な構成は省略しているが、実施の第1形態と同様の構成が採用される。
図3に示すように、3次元測定機10の位置検出器14からの各軸位置データが入力装置28に入力され、これらのデータが位置・姿勢演算装置30で座標変換されてロボット手先の位置・姿勢が演算される。ロボットのある位置・姿勢での基準点のロボット座標系での値をPr、このときの3次元測定機で計測した基準点の測定機座標系での値をPf、測定機座標とロボット座標との変換行列をRとする。これらの値はレーザセンサ等のセンサの計測値、ロボットとセンサの取付け関係、測定機とロボットの設置関係、測定機と結合治具の取付け関係、ロボット及び測定機の関節角度情報があれば、容易に求めることができる。ただし、Pfは高精度で求めることができるが、PrとRには、ロボットの剛性やロボットの据付けに起因する誤差が含まれている。キャリブレーションのアルゴリズム自体は従来の手法が利用できる。すなわち、ロボット18の位置・姿勢を変えて複数の点を計測し、位置・姿勢演算装置30で演算した複数の計測値から、キャリブレーション演算装置32でロボットの機構パラメータが求められる。
他の構成及び作用は、実施の第1形態の場合と同様である。
【0013】
つぎに、これらの複数の計測点(教示点)間をロボット18が移動する際に、3次元測定機10が機械的に拘束されているために、測定機10の位置・姿勢によっては、測定機10に大きな負荷がかかる動作方向があり、このためにキャリブレーションを行える領域(測定範囲)や使用方法に制約が発生することが考えられる。この要因としては、
(1) 教示点間の移動で測定機の各関節角度を大きく変えないと移動できない点があり、ロボットの動作速度に測定機が追従できない。
(2) 測定機の各関節の摩擦力に大小があり、摩擦力の大きな関節を動かそうとすると、摩擦力の小さい関節の拘束方向に力がかかる。
などが挙げられる。
【0014】
本実施形態では、こうした問題に対応するために、3次元測定機10の先端部16の位置・姿勢に基づき逆変換を行うことにより、測定機10の各関節角度を求め、それに基づき測定機10の動きやすさを評価する操作性演算装置36を設けている。測定機10の動きやすさを考慮し、それに基づきロボット18の移動経路を補正する具体的な手段は、以下の通りである。
(1) キャリブレーションのための教示点をP(i)とする。すべての教示点について逆変換を行い、関節角度θk(i)(k=1,2,…,6)(6自由度の場合)を求める。
(2) 各教示点に対して、次の動作点までの関節角度の変位量を演算し、以下の評価値Hを算出する。
H=(Q1Δθ1+……+Q6Δθ6)
ここに、Qkは各関節の動きにくさを表す重み係数であり、予め測定した摩擦力等を考慮して、動きにくい関節ほど大きい値を持たせる。Hの値を評価することにより、次の動作点まで移動したときの測定機にかかる負荷を判断することができる。
【0015】
(3) Hが予め既定した値H0よりも大きいときは負荷が大きいと予測されるので、次の動作点までの間に経由点を発生させる。このとき、その教示点から経由点までと経由点から次の教示点までのHは既定値H0以下になるようにする。
(4) すべての教示点について(2)、(3)の操作を繰り返す。
以上の操作性演算装置36での処理ステップを示したのが、図4のフローチャートである。また、図5に示すように、例えば、教示点P(1)からP(2)まで測定機を動かそうとするときのHを算出し、HがH0以下であれば経由点を発生させる必要はなく、P(4)からP(5)までのHを算出して、HがH0を超えていたら、測定機が動きやすくなるように経由点を発生させて、ロボットの移動経路を補正する。
なお、ここで述べた測定機の動きやすさに関する評価値は一例であり、他にも例えば、最も動きにくい関節の変位量や、あるいはすべての関節の中での最大変位量で制限をかける方法などを用いることが可能である。
【0016】
【発明の効果】
本発明は上記のように構成されているので、つぎのような効果を奏する。
(1) 本発明における機械式の3次元測定機を用い、この3次元測定機の先端部分と校正したい多関節ロボットの手先を結合して、ロボット先端部の位置・姿勢を計測できる構成とすることにより、高精度、かつ、自動でロボットのキャリブレーションを行うことができる。
(2) ロボットがキャリブレーションに必要な空間上の複数の教示点間を移動する際に、3次元測定機の動きやすさを考慮し、それに基づきロボットの移動経路を補正する場合は、測定機に過大な負荷がかかる等の問題がなくなり、キャリブレーションを行える領域(測定範囲)や使用方法に制約が生じない。
(3) 産業用ロボットの絶対精度向上による適用分野の拡大を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の第1形態によるロボットのキャリブレーション装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施の第1形態における3次元測定機の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の実施の第2形態によるロボットのキャリブレーション装置を示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施の第2形態における測定機の動きやすさを評価してロボットの移動経路を補正する装置の処理ステップを示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の第2形態における経由点の発生例を示す模式図である。
【符号の説明】
10 3次元測定機
12 アーム
14 位置検出器
16 先端部
18 ロボット
20 ロボットの手先
22 レーザセンサ
24 結合治具
26 基準点
28 入力装置
30 位置・姿勢演算装置
32 キャリブレーション演算装置
34 ロボット制御装置
36 操作性演算装置
Claims (2)
- アームの先端部に力を加えて動かすことにより、該先端部を任意の位置・姿勢に位置決めすることができるように、6以上の自由度を有するアームを備え、アームの関節部の各軸に位置検出器を設けて、各軸の位置検出器の信号から先端部の位置・姿勢を計測することができる3次元測定機を用い、この3次元測定機の先端部と校正したい多関節ロボットの先端部にある手先を結合して、ロボット先端部の位置・姿勢を計測し、ロボットの位置・姿勢を変えて複数の教示点を計測することによりロボットの機構パラメータを求めてキャリブレーションを行い、ロボットがキャリブレーションに必要な空間上の複数の教示点間を移動する際に、前記3次元測定機の動きやすさを評価して、前記測定機が動きにくい場合に、その教示点から次の動作点までの間に経由点を発生させてロボットの移動経路を補正することを特徴とするロボットのキャリブレーション方法。
- アームの先端部に力を加えて動かすことにより、該先端部を任意の位置・姿勢に位置決めすることができるように、6以上の自由度を有するアームを備え、アームの関節部の各軸に位置検出器を設けて、各軸の位置検出器の信号から先端部の位置・姿勢を計測することができる3次元測定機と、
先端部に設けられた手先が3次元測定機の先端部に結合された多関節ロボットと、
3次元測定機の各軸の位置検出器からの信号を入力して座標変換を行うことにより、ロボット先端部の位置・姿勢を演算する位置・姿勢演算装置と、
ロボットの位置・姿勢を変えて演算した複数の計測値からロボットの機構パラメータを求めてキャリブレーションを行う、ロボット制御装置に接続されたキャリブレーション演算装置と、
前記多関節ロボットに連結されたロボット制御装置と、
を備え、
ロボットがキャリブレーションに必要な空間上の複数の教示点間を移動する際に、前記3次元測定機の動きやすさを評価する値を算出し、前記測定機が動きにくい場合に、その教示点から次の動作点までの間に経由点を発生させる操作性演算装置を設け、この操作性演算装置を前記ロボット制御装置に接続して、前記3次元測定機の動きやすさを考慮してロボットの移動経路を補正できるようにしたことを特徴とするロボットのキャリブレーション装置。
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