JP4270661B2 - 多管式のegrガス冷却装置およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの冷却液、カーエアコン用冷媒または冷却風などによってEGRガスを冷却する多管式のEGRガス装置とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
排気ガスの一部を排気系から取り出して、再びエンジンの吸気系に戻し、混合気に加える方法は、EGR(Exhaust Gas Recirculation:排気再循環)と称される。EGRはNOxの発生抑制、ポンプ損失の低減、燃焼ガスの温度低下に伴う冷却液への放熱損失の低減、作動ガス量・組成の変化による比熱比の増大と、これに伴うサイクル効率の向上等、多くの効果があるところから、エンジンの熱効率を改善するには有効な方法とされている。
【0003】
しかしながら、EGRガスの温度が高くなると、その熱作用によりEGRバルブ等の耐久性は劣化し、早期破損を招く場合があったり、その防止のために水冷構造にする必要があるなどが認識されている。
このような事態を避けるため、エンジンの冷却液などによってEGRガスを冷却する装置が提案されている。この装置としては、一般に、多管式の熱交換器が利用される。
【0004】
この場合に利用される多管式の熱交換器は例えば左右の一方もしくは両側にEGRガスの流入口または流出口を備えた端部キャップに仕切り壁を介して区画され、かつ別途冷却媒体流入口を有するヘッド部材(ハブ)には胴管が連接固定され、その胴管内部には多数の伝熱管が前記両側の仕切り壁に設けた組付け孔部において固着配列され、ヘッド部材に設けられた冷却媒体流入口、冷却媒体流出口に螺着されたニップルにはゴムホース等の枝管が接続されており、この枝管より導入され、若しくは排出されるエンジン冷却液などにより、伝熱管内部を流れるEGRガスが冷却される構造となっているものが知られている(実公昭57−309号公報参照)。
【0005】
しかしながら、上記多管式熱交換器はエンジン冷却液などの流れが冷却媒体流入口で急激に曲げられるため大きな流過抵抗を生じる問題があり、また多数の伝熱管を固着するヘッド部材および仕切り壁がともに鋳物製または鍛造製であるため、熱交換器本体の重量が過大になり、その上、枝管接続用のニップルを冷却媒体流出口に螺着させるための接続孔の加工、および多数の伝熱管を仕切り壁に固着配列する作業を必要とするところから、組立工数がかかり、作業性が悪くなるという難点もあり、さらに仕切り壁に多数の伝熱管の接合手段には、ろう付け作業が採用されているため伝熱管と仕切り壁とは肉厚が異なるため熱容量が相違して、ろう付け作業部の強度維持に信頼性が乏しく、ろう付け不良を発生することがあった。
【0006】
本出願人は、上記の難点を解決するため特願平7−267691号を提案した。この装置は、図3に示すように、胴管11両端部において、胴管11の内壁に固着されたチューブシート13に複数の伝熱管12が固着配列され、前記胴管11の端部キャップ14にEGRガス流入口14aおよびEGRガス流出口14bを備えた多管式のEGRガス冷却装置であって、さらに外方へ向けてのバーリング成形によって胴管11自体に冷却媒体流入口6aおよび冷却媒体流出口6bを設け、このバーリング成形によって設けた冷却媒体流入口6a及び冷却媒体流出口6bに、枝管7a、7bを直接ろう付け若しくは溶接により接合した構造のEGRガス冷却装置である。
【0007】
この特願平7−267691号に提案されたEGRガス冷却装置は、上記難点を改善するには効果があったが、EGRガス冷却装置はエンジンや走行中に生じる振動やEGRガス自体の圧力変動に伴う脈動等による振動環境下に置かれるため、伝熱管12とチューブシート3との接合箇所に応力集中し易く、また伝熱管12自体にも上記振動に対する強度を一層配慮する必要性が生じた。
【0008】
一方、液体間の熱交換を目的とする多管式熱交換器の多くは、図4に示すように、胴管11の内壁の長手方向の複数箇所にバッフル板9が配設され、このバッフル板9に穿孔された貫通孔10eには伝熱管12が挿入された構成となっている。
この場合、伝熱管12の外側を流れる冷却液体の流れはバッフル板9により迂回されて、伝熱管12内を流れる液体との熱交換効率をより高めており、このために伝熱管12と該伝熱管が挿通される貫通孔10eとの間には厳密でないにしろある程度のシール性が求められていた。
【0009】
しかしながら、多管式のEGRガス冷却装置は、本質的に、伝熱管内を流れるEGRガスを伝熱管外部を流れる冷却液等と熱交換することにより冷却する装置であり、液体と液体間の熱交換を行う通常の熱交換器と異なり伝熱管の外面に接する液体が、伝熱管内部を流れるガス体に及ぼす冷却効果は極めて低いものでしかない。したがって、外部流体の流れを迂回させるバッフル板9を設ける必要性や伝熱管とバッフル板の貫通孔との間のシール性を配慮する必要性はほとんどないことが本発明者の実験により確認された。
【0010】
また、液体間の熱交換を目的とする多管式熱交換器と同様にして、EGRガス冷却装置にバッフル板9を配設した場合は、図5に示すようなバッフル板9に穿設した単なる貫通孔10eあるいは図6に示すようなバーリング成形によって形成された貫通孔10eに伝熱管12が挿入された構成では上記した振動環境下では、かえって必要外の衝撃を受けて伝熱管12の寿命が低下してしまう可能性があった。
【0011】
そこで本発明者は、上記の難点を改善するとともに、バッフル板を支持板とすることにより、重量を極力軽減し、しかも耐久性を充分に確保し、かつ必要に応じ実施するろう付け作業が容易となったEGRガス冷却装置を先に提案した(特開平9−310995号公報参照)
このEGRガス冷却装置は、胴管と、チューブシートと、複数の伝熱管と、支持板と、端部キャップとにより構成されるとともに、端部キャップにはEGRガスの流入口と流出口が設けられ、胴管には冷却媒体流入口および冷却媒体流出口が設けられたEGRガス冷却装置の前記支持板を、胴管の内径を超える直径を有する金属板の外周部に弯曲した舌状片と、貫通孔の周縁部に弯曲した舌状片を有し、かつ夫々の舌状片を摺動可能として胴管内の所定位置に組込み、この支持板を摩擦抵抗により、好ましくはろう付けすることにより固着してなることを特徴とするものであり、装置を軽量化できるとともに、耐久性を確保できるのみならず、前記支持板を舌状片による摩擦抵抗に基づき容易に固定でき、かつ必要に応じろう付けする際にはその作業を容易にし、かつ振動環境下における制振効果を高めて耐久性や弾性効果を向上できるなどの効果を得たものである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者が先に提案した上記の多管式EGRガス冷却装置の場合、胴管内部に伝熱管と支持板とを組付ける際、支持板の貫通孔の周縁部に形成した湾曲した舌状片と外周部に形成した湾曲した舌状片はそれぞれ伝熱管の外周面および胴管の内壁に圧接して摺動するため、その支持板を摺動させて位置決めするのに摩擦抵抗力などを利用することにより多大な労力を必要とし、装置の組立て、製造に多くの時間を要するという問題があった。
【0013】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、前記多管式のEGRガス冷却装置において、外周部に弯曲した舌状片と貫通孔の周縁部に弯曲した舌状片を有する支持板を形状記憶合金製とすることによって、組付け作業の簡易迅速化と振動耐久性の大幅な向上がはかられるEGRガス冷却装置を提供しようとするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るEGRガス冷却装置は、胴管内壁の両端部附近に固定されたチューブシートに複数の伝熱管が固着配列され、かつ前記伝熱管は胴管内部に設けられた少なくとも1枚の支持板の貫通孔に貫通支持され、前記胴管の両端部の外側には端部キャップが固着され、該端部キャップにはEGRガスの流入口と流出口が設けられ、前記胴管には冷却媒体流入口および冷却媒体流出口が設けられたEGRガス冷却装置において、前記支持板は形状記憶合金製であって、その貫通孔周縁に前記伝熱管の外径より僅かに大径で弯曲した複数の舌状片を有し、かつその外周部に胴管の内径より僅かに小径で弯曲した複数の舌状片を有し、ろう付け時の加熱により前記貫通孔周縁および外周部に設けた舌状片がそれぞれ変形して伝熱管表面および胴管内壁に接触した状態でろう付けされて固着されてなることを特徴とするものである。
また、本発明に係るEGRガス冷却装置の製造方法は、胴管内壁の両端部附近に固定されたチューブシートに複数の伝熱管が固着配列され、かつ前記伝熱管は胴管内部に設けられた少なくとも1枚の支持板の貫通孔に貫通支持され、前記胴管の両端部の外側には端部キャップが固着され、該端部キャップにはEGRガスの流入口と流出口が設けられ、前記胴管には冷却媒体流入口および冷却媒体流出口が設けられたEGRガス冷却装置の製造方法において、前記支持板を形状記憶合金製とし、その貫通孔周縁に前記伝熱管の外径より僅かに大径で弯曲した複数の舌状片を形成し、さらにその外周部に胴管の内径より僅かに小径で弯曲した複数の舌状片を形成して組付けてろう付け炉に装入し、炉内熱により前記貫通孔周縁および外周部に設けた舌状片をそれぞれ変形させて伝熱管表面および胴管内壁に圧接させた後、さらに炉温を昇温して前記貫通孔周縁および外周部に設けた舌状片をそれぞれ伝熱管表面および胴管内壁にろう付けすることを特徴とするものである。そして前記形状記憶合金製支持板の前記伝熱管との接触・ろう付け面には予めろう材をめっきしておくことが好ましい。
【0015】
形状記憶合金としては、Ti−Ni系、Cu系およびFe系に分類されているが、このなかで、記憶特性、機械的強度、繰返し特性、耐腐食性などのいずれにおいてもTi−Ni系が最も優れている。しかしながら、本発明において使用する形状記憶合金はTi−Ni系に限定するものではなく、適当に選択して使用することとする。ただし、Ti−Ni合金は機械的性質がきわめて優れており、熱間加工も冷間加工も可能であり、また適当な加工熱処理によってその特性が著しく改善できるという特徴を有することから、本発明における支持板はTi−Ni合金製が好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に本発明を添付図面を参照しながら以下に詳述すると、図1は本発明の一実施例装置を示す要部縦断面図、図2は同上装置の製造方法における胴管、伝熱管および支持板の組立手順を示す要部縦断面図であり、1は胴管、1−1は胴管内壁、2は伝熱管、3は支持板、3−1は貫通孔、3−2、3−3は弯曲壁、3−4、3−5は舌状片、3−6はスリット、4はろう付けである。
【0017】
すなわち本発明に係る多管式のEGRガス冷却装置は、図1に示すごとく胴管1内部に設けられた伝熱管2を貫通支持する少なくとも1枚の支持板3が形状記憶合金製であって、その貫通孔3−1の周縁に前記伝熱管2の外径より僅かに大径で弯曲した複数の舌状片3−4を有し、さらにその外周部に胴管1の内径より僅かに小径で弯曲した複数の舌状片3−5を有しており、胴管1内において好ましくは予めその弯曲面の外側の面、すなわち伝熱管2との接触・ろう付け面にろう材がめっきされた該支持板3が組付けられ、ろう付け時の加熱により前記貫通孔3−1の周縁および外周部に設けた舌状片3−4、3−5がそれぞれ変形して伝熱管2の外表面および胴管1の内壁に接触した状態でろう付けされて固着されている。
【0018】
つぎに上記多管式のEGRガス冷却装置の製造方法を図2に基づいて説明すると、まず伝熱管2を嵌着する形状記憶合金製の支持板3に伝熱管2が挿通される位置に貫通孔3−1を穿設し、該貫通孔3−1の周縁部をバーリング成形により弯曲した壁3−2に形成し、さらに該支持板3の外周部をバーリング成形により胴管1の内径より僅かに小径の弯曲した壁3−3に形成し、前記弯曲壁3−2、3−3部に軸方向のスリット3−6を設けることにより、弯曲した舌状片3−4、3−5が形成されている。そしてこの支持板3は周縁部に複数の舌状片3−4が形成されている貫通孔3−1が伝熱管2の外径より僅かに大径であり、かつ外周部に形成されている複数の舌状片3−5が胴管1の内径より僅かに小径であるので、胴管1および伝熱管2に対して僅かな間隙を有して非接触あるいは部分接触で伝熱管2に遊嵌可能であって、該伝熱管2を貫通孔3−1に内嵌した後、伝熱管2の所定位置に当該支持板3を配置する。この支持板3の組込み作業は、前記したごとく胴管1および伝熱管2に対して僅かな間隙を有して非接触あるいは部分接触で伝熱管2に遊嵌できるので、労力を要せずに簡易迅速に行うことができる。またこの時、好ましくは該支持板3の弯曲面の外側の面、すなわち伝熱管2との接触・ろう付け面側に予めろう材をめっきして組込んだり、またはろう材ペーストを塗布し、いわゆる置きろうとして組込む。この状態でろう付け炉に装入すると、炉内の熱によりまず支持板3の貫通孔3−1の周縁部に設けた舌状片3−4と外周部に設けた舌状片3−5が平坦に近づくよう変形することにより当該舌状片3−4、3−5がそれぞれ伝熱管2の外面および胴管1の内壁1−1に圧接し、その後ろう材を溶融するためにさらに昇温すると貫通孔3−1の周縁部に設けた舌状片3−4と外周部に設けた舌状片3−5がそれぞれ伝熱管2の外面および胴管1の内壁1−1にろう付け4される。このようにして支持板3は胴管1の内壁1−1に、伝熱管2は支持板3に、それぞれ強固に固着される。
したがって、伝熱管2は支持板3の貫通孔3−1に設けられた舌状片3−4および外周部に設けられた舌状片3−5によりろう付け支持されることから、振動環境下におけるEGRガス冷却装置の制振効果がより高められ、その結果、装置の耐久性と弾性効果がより一層向上することとなる。
【0019】
なお上記した実施例では支持板3について説明したが、バッフル板に本発明を適用できることはいうまでもない。
【0020】
【発明の効果】
本発明は上記のごとく、多管式のEGRガス冷却装置の構成要素としての支持板を形状記憶合金製とし、かつ該支持板の貫通孔周縁部に形成した舌状片を伝熱管の外径より僅かに大径とし、かつ外周部の舌状片を胴管内径より僅かに小径としたことにより、該支持板の胴管内組込み作業を大きな労力を要せずに簡易迅速に行うことができ、装置の組立作業を能率よく行うことができるという効果が得られ、また支持板はろう付け時の加熱により胴管内壁および伝熱管外面に圧接するのでこのままでも該支持板を伝熱管の所定位置に固定できるも、本発明ではさらに貫通孔周縁部に形成した舌状片を胴管内壁に、外周部に形成した舌状片を伝熱管外面にそれぞれろう付けするので、支持板および伝熱管はより強固に固着され、振動環境下に置かれたEGRガス冷却装置の制振効果を高めて耐久性や弾性効果を向上できるという優れた効果を奏する。また、本発明はEGRガス冷却装置に限らず、多管式の熱交換器の全般にわたり適用可能である点でも優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例装置を示す要部縦断面図である。
【図2】同上装置の製造方法における胴管、伝熱管および支持板の組立手順を示す要部縦断面図である。
【図3】従来の多管式熱交換器の一例を示す一部破断平面図である。
【図4】他の従来例の一部破断平面図である。
【図5】従来例の要部断面図である。
【図6】他の従来例の要部断面図である。
【符号の説明】
1 胴管
1−1 胴管内壁
2 伝熱管
3 支持板
3−1 貫通孔
3−2、3−3 弯曲壁
3−4、3−5 舌状片
3−6 スリット
4 ろう付け
Claims (3)
- 胴管内壁の両端部附近に固定されたチューブシートに複数の伝熱管が固着配列され、かつ前記伝熱管は胴管内部に設けられた少なくとも1枚の支持板の貫通孔に貫通支持され、前記胴管の両端部の外側には端部キャップが固着され、該端部キャップにはEGRガスの流入口と流出口が設けられ、前記胴管には冷却媒体流入口および冷却媒体流出口が設けられた多管式のEGRガス冷却装置において、前記支持板は形状記憶合金製であって、その貫通孔周縁に前記伝熱管の外径より僅かに大径で弯曲した複数の舌状片を有し、かつその外周部に胴管の内径より僅かに小径で弯曲した複数の舌状片を有し、ろう付け時の加熱により前記貫通孔周縁および外周部に設けた舌状片がそれぞれ変形して伝熱管表面および胴管内壁に接触した状態でろう付けされて固着されてなることを特徴とする多管式のEGRガス冷却装置。
- 胴管内壁の両端部附近に固定されたチューブシートに複数の伝熱管が固着配列され、かつ前記伝熱管は胴管内部に設けられた少なくとも1枚の支持板の貫通孔に貫通支持され、前記胴管の両端部の外側には端部キャップが固着され、該端部キャップにはEGRガスの流入口と流出口が設けられ、前記胴管には冷却媒体流入口および冷却媒体流出口が設けられた多管式のEGRガス冷却装置の製造方法において、前記支持板を形状記憶合金製とし、その貫通孔周縁に前記伝熱管の外径より僅かに大径で弯曲した複数の舌状片を形成し、さらにその外周部に胴管の内径より僅かに小径で弯曲した複数の舌状片を形成して組付けてろう付け炉に装入し、炉内熱により前記貫通孔周縁および外周部に設けた舌状片をそれぞれ変形させて伝熱管表面および胴管内壁に圧接させた後、さらに炉温を昇温して前記貫通孔周縁および外周部に設けた舌状片をそれぞれ伝熱管表面および胴管内壁にろう付けすることを特徴とする多管式のEGRガス冷却装置の製造方法。
- 前記形状記憶合金製支持板の前記伝熱管との接触・ろう付け面に予めろう材をめっきしておくことを特徴とする請求項2記載の多管式のEGRガス冷却装置の製造方法。
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