JP4247553B2 - 化学反応式簡易酸素発生器及びその使用方法 - Google Patents
化学反応式簡易酸素発生器及びその使用方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、容器内に触媒と酸素発生剤と水を入れて密封し、化学反応させて酸素を発生さる化学反応式簡易酸素発生器及びその使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
化学反応式簡易酸素発生器(以下、単に簡易酸素発生器という場合がある。)は、火災、事故、登山やマラソン等の激しい運動、その他の各種原因により心肺機能が劣化した場合に、現場付近で又は救急輸送中などに、密閉された容器内で酸素発生剤と触媒と水を混合することにより、簡単迅速に酸素吸入ができる利点があることから、近年、需要がとみに増えている。
また、最近は、屋外空気の汚染度が進み、酸素不足に伴う健康障害が増加しているため、一般家庭でも簡易酸素発生器の使用が要望される傾向にある。
【0003】
従来の簡易酸素発生器には、図9(a)に示すように、水401が入った容器402に、酸素発生剤と触媒を混合状態で収容した不織布製パック403を浸し、その容器の開口部をノズル404を取付けたキャップ405で密閉した構造のもの(第1先行技術)や、図9(b)に示すように、持ち手501に結合された軸502をノズル503付きキャップ504に昇降自在に貫通して容器505の中まで延長し、軸502の下端部に固着した網材506の上に酸素発生剤507を載せ、その網材506の下側の容器505の底部に触媒508を収容する構造のもの(第2先行技術)や、特開2001−139306号公報に記載されているように、反応用タンクの上端部に洗浄用タンクを分離可能に結合し、その洗浄用タンクの上端部に吸入マスクを設けたキャップを分離可能に結合してなり、反応用タンクは下部タンクと上部タンクとに分割構成し、酸素発生剤と触媒をメッシュ状仕切り材により仕切った状態で収容した網製の収容体を下部タンクと上部タンクの間に、嵌着した構造のもの(第3先行技術)が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記第1先行技術は、構造が簡単であるが、酸素発生剤と触媒がパックの中に遊動不可能な状態で詰められているので、水、酸素発生剤及び触媒の相互間に一様な接触状態が得られないため、安定した化学反応が行われず、長時間一定量の安定した酸素発生が不可能である。そのため、例えば、スターラを容器内に備えて、これを外部から磁気的に回転駆動させる撹拌手段を必要とし、コストアップの原因となった。
また、上記第2先行技術は、上記第1先行技術の欠点を排除するため、持ち手501と軸502と網材506とからなる手動の撹拌手段を備えたのであるが、簡易酸素発生器の使用中に撹拌手段を操作しなければならない繁雑さがあるほか、長時間安定した酸素発生量を確保することは困難である。
さらに、上記第3先行技術は、構成部材数が多いため、製造コストが高くなり、また、収容体内での酸素発生剤と触媒の遊動範囲に制限があるため、水・酸素発生剤及び触媒の接触がまだ満遍なく行われず、さらに、収容体が下部タンク及び上部タンクから分離されるので、酸素発生剤と触媒の交換に手間がかかるほか、収容体の上下の向きを誤って装着されたり、酸素発生剤と触媒の収容位置を誤ったりする恐れがある。従って、常に一定量の酸素発生量が持続されるとは限らないという問題がある。
さらに、携帯型簡易酸素発生器の場合は、水・酸素発生剤及び触媒を収容した状態での総重量が携帯可能な範囲であること、人の呼吸時に無駄な放出を最小限に止めて酸素吸入が可能な酸素発生能力を有すること、そして、酸素発生持続時間が可及的に長いことが要望される。しかし、従来の携帯型簡易酸素発生器には、上記3条件をすべて満足するものがなかった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その第一の課題は、酸素発生剤と触媒と水の接触が長時間満遍なく行われ、酸素発生が安定して長時間持続されるようにした簡易酸素発生器を提供することにある。
第二の課題は、第一の課題を解決する簡易酸素発生器を、携帯に適合する総重量の範囲で、人の呼吸時に無駄な放出を最小限に止めて酸素吸入が可能な理想的な酸素発生能力を発揮し、しかも、酸素発生時間が可及的に延長されるように使用する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、触媒の元で酸素発生剤と水とを反応させて酸素を発生させる反応用タンクと、発生した酸素を洗浄液に通過させて浄化する洗浄用タンクと、浄化された酸素を外部に吐出するノズルを備えたキャップとを結合してなる簡易酸素発生器において、(a)前記反応用タンクは、上端部に開口する反応室を有する有底筒状に形成され、その内側中間部において前記反応室を上下に仕切り、かつ、酸素発生剤を載置するための載置面を備えた網部材を有し、前記載置面の下側に触媒を遊隙をもって収容し得る触媒収容部を有するものであり、(b)前記網部材は、酸素発生剤載置面に、化学反応の進行とともに前記酸素発生剤の前記触媒収容部に流下する量及び残留する量を時間当たりの酸素発生量が安定した所望値となるように設定した大きさ及び数の孔を有し、(c)前記洗浄用タンクは、前記反応用タンクの上端部に分離可能に結合され、分離状態では前記反応用タンクの反応室の開口を開放し、結合状態では前記反応室の開口を密閉すること、を特徴としている。
上記構成により、反応用タンクの触媒収容部に触媒を収容し、反応用タンクの中に所要量の水を、すなわち、後に投入される酸素発生剤が浸る高さまで注入し、網部材の酸素発生剤載置面に酸素発生剤を投入して載置した後、キャップ付き洗浄タンクを反応用タンクに結合して密封することができる。反応用タンクの中では、酸素発4生剤の投入よりも先に触媒が注入された水に程よく溶解しているため、そこに投入される酸素発生剤は網部材に堆積し、酸素発生剤の触媒収容部に流下する量が当初は抑制されて比較的少ないが、触媒が程よく溶解しているので、酸素発生剤の化学反応が活発に行われ、効率的に酸素が発生する。すなわち、酸素発生剤よりも先に水を注入して、先に触媒を程よく溶解させておくことにより、反応速度がコントロールされる。そして、その酸素が網部材の孔を通過して反応室内を上昇する際に、酸素発生剤と水を撹拌するため、すべての酸素発生剤及び触媒が水と満遍なく接触し、化学反応が均一にかつ安定して行われる。また、網部材の孔は酸素発生剤の触媒収容部へ流下する量と載置面上に残留する量をコントロールするので、酸素発生が安定して長時間持続される。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、反応用タンクは、中に触媒を収容するための下部タンクと、底部に網部材を一体に有する有底筒状に形成されて、前記上部タンクの上端部に分離可能に結合される上部タンクとから構成され、前記下部タンクと前記上部タンクを結合した状態で、前記反応用タンクの反応室の中に前記網部材に載置された酸素発生剤が浸る高さまで水を収容可能なものであることを特徴としている。
上記構成により、使用時は、下部タンクに触媒を投入し、その下部タンクに上部タンクを結合して、その中に適量の水を注入する。続いて、適量の酸素発生剤を投入して網部材に載せる。その後、反応用タンクにキャップ付き洗浄用タンクを結合すると、請求項1の簡易酸素発生器の場合と同様に、網部材の孔の大きさ及び数により、酸素発生剤の触媒収容部への流下量及び残留量が適度に制御されて、反応速度がコントロールされる。また、撹拌作用により長時間に渡ってすべての酸素発生剤と水と触媒が満遍なく接触するため、化学反応が均一にかつ安定して行われ、安定した酸素発生量が長時間持続される。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1の発明に係る簡易酸素発生器において、反応用タンクは一つの有底筒状に形成され、網部材を反応室に挿入した時にこれを係止して、その網部材の酸素発生剤載置面の下側に触媒収容部に所定の容量を確保する係止手段を有し、前記網部材は、多数の孔を有する酸素発生剤載置部の周囲に、触媒収容部に発生した酸素が反応室の上方に流通する通路が形成されていることを特徴としている。
上記構成により、投入される酸素発生剤は網部材に堆積し、触媒収容部に流下する酸素発生剤の量が当初は抑制されて比較的少ないが、先に触媒が程よく溶解しているので、酸素発生剤の化学反応が活発に行われ、効率的に酸素が発生する。すなわち、酸素発生剤よりも先に水を注入して、先に触媒を程よく溶解させておくことにより、反応速度がコントロールされる効果が得られる。そして、触媒収容部に発生した酸素は、酸素発生剤の堆積により網部材の孔を通過しにくい状態においても、酸素発生剤載置部の周囲に形成されている通路を経て反応室の上方部に円滑に上昇する。従ってまた、酸素発生剤と水の撹拌効果が確実に行われ、すべての酸素発生剤及び触媒が水と満遍なく接触し、化学反応が均一にかつ安定して行われる。網部材の載置面に残留している酸素発生剤は溶解して小さくなるが、網部材の孔から流下する量が過多量にならずに、触媒収容部に発生して上昇しようとする酸素により適度になるように程よく抑制される。従って、一定の酸素発生量が安定して長時間持続される。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載された簡易酸素発生器の使用方法であって、触媒は、直径6.0±10%mm、重量200±10%mgの錠剤状のものを23〜27個、反応用水は350±10%ml、酸素発生剤は顆粒状のものを80〜100g用い、(a)反応用タンクの反応室の底部に前記触媒を投入し、(b)網部材を反応室内の所定位置に係止する前又は係止した後に、(c)前記水を前記反応室に注入し、(d)前記網部材の載置面に前記酸素発生剤を投入して載置し、(e)最後に、キャップを取付けた洗浄用タンクを前記反応用タンクに結合することを特徴としている。
触媒、水、及び酸素発生剤を上記条件のもとで使用する場合は、携帯可能な大きさの簡易酸素発生器から、そのノズルから発生する酸素を吸入する時に、酸素と空気の適度な混合率を有する気体となる量の酸素、すなわち、毎分300〜500mlの安定した一定量の酸素を12〜14分間の長時間連続して発生することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る簡易酸素発生器の中央縦断面図、図2は分解斜視図、図3は使用時の作用説明図、図4は本発明の簡易酸素発生器の性能を比較例と対照的に示すグラフである。
簡易酸素発生器Aは、反応用タンク1と、その反応用タンクの上端部に分離可能に結合されている洗浄用タンク2と、その洗浄用タンクの上端部に結合されているキャップ3とからなっている。以下に、それぞれの詳細を説明する。
【0011】
反応用タンク1は、下部タンク11と上部タンク12とから構成されている。下部タンク11は、有底筒状に形成されていて、底部に触媒収容部11aを有する。上部タンク12は、底部に網部材121を一体に有する有底筒状に形成されていて、網部材121には酸素発生剤を載置することができる。また、その網部材121には、載置された酸素発生剤が化学反応の進行に伴い径が小さくなるつれて徐々に通過量が増えるように、通過量を抑制するための多数の孔が形成されている。
そして、下部タンク11と上部タンク12は、下部タンク11の上端部の外周面に上部タンク12の下端部の内周面を嵌合し、かつ、一方向に回転して係合させ又はねじ合わせるなどして、水密状態に結合して、反応用タンク1を完成することができるとともに、反対方向に回転して係合又はねじ合わせ状態及び嵌合状態を解き、分離することもできる。
触媒収容部11aは、これに触媒が遊隙をもって収容されるように容量が設定されていて、その容量は下部タンク11と上部タンク12を結合したときに、網部材121の酸素発生剤載置部により確保される。
【0012】
反応用タンク1の中には、下部タンク1と上部タンク2を結合した状態で、水をその水面が網部材121に載置されている酸素発生剤が十分浸る高さまで注入することができる。最適な水量の目安として、上部タンク12の内周壁面に水位線122が設けられている。この水位線は、上部タンク12内に収容される酸素発生剤の量と、下部タンク11に収容される触媒の量に対して、最適酸素発生量が得られるための化学反応に必要な量の水を反応用タンク1の中に注入した時の水面の高さに設けられる。反応用タンク1の中には、水位線122よりも上方部分に発生した酸素を集合するための空間が残されている。
【0013】
洗浄用タンク2は、有底筒状に形成され、その底部21に上下方向に貫通する通気孔22が設けられ、その通気孔にエアストーンなどの多孔質材料で作られた気液分離材23が備えられている。洗浄用タンク2の中には、その上部開口面から水などの洗浄液を注入して収容することができる。そして、洗浄用タンク2は、その下端部にスカート状の嵌合周縁24を有し、その嵌合周縁24を反応用タンク1の上端部、すなわち、上部タンク12の上端部の外周面に嵌合し、一方向に回転して係合させ又はねじ合わせるなどして結合可能であるとともに、反対方向に回転して係合又はねじ合わせ状態及び嵌合状態を解いて、分離可能である。さらに、好ましくは、洗浄用タンク2は、洗浄液の中を上昇する酸素を透視できるように、少なくとも筒状の中間部が透明材料で作られている。
【0014】
キャップ3は、その上面に斜め上方に突出するノズル31を有し、また、その下端部にスカート状の嵌合周縁32を有して、その嵌合周縁32を洗浄用タンク2の上端部の外周面に嵌合し、一方向に回転して係合させ又はねじ合わせるなどして結合可能であるとともに、反対方向に回転して係合又はねじ合わせ状態及び嵌合状態を解いて、分離可能である。ノズル31の中にも、エアストーンなどの多孔質材料で作られた気液分離材33が備えられている。
【0015】
図1は、下部タンク11と上部タンク12の分離可能に結合するためのの構造、上部タンクに対する洗浄タンクの分離可能に結合するためのの構造、及び洗浄タンクに対するキヤップの分離可能に結合するためのの構造の単なる一例に過ぎず、既知の他の構造でもよいことはいうまでもない。また、洗浄用タンク2に注水・排水用弁等を設ける場合は、キャップ3は洗浄用タンク2に接着などして結合しても良い。
【0016】
上記結合又は分離のため各タンクを回転する際に、手が空回りするのを防止するために、一例として、下部タンク11と洗浄用タンク2とキャップ3の外周面に縦長の突条11a,2a,3aが円周方向に間隔を持って設けられている。
【0017】
上記構成を有する簡易酸素発生器Aを使用するときは、図3に示すように、まず、未結合状態の下部タンク11内に適量の触媒Bを投入した後、下部タンク11に上部タンク12を結合して反応用タンク1を構成し、その反応用タンク内に水Dを水位線122まで注入する。続いて、反応用タンク1内に酸素発生剤Cを適量投入する。最後に、洗浄液Eを収容した洗浄用タンク2を反応用タンク1に結合する。洗浄用タンク2には、予めノズル付きキャップ3を結合して置くことが良い。以上により、簡易酸素発生器Aは、酸素発生条件が満たされる。
【0018】
簡易酸素発生器Aは、過炭酸ソーダに水を加えると、化学反応により炭酸ナトリウムと過酸化水素水とに解離し、触媒の存在下で過酸化水素水が水と酸素に分解して酸素が得られる酸素発生メカニズムを用いるものであり、上記触媒Bには、カタラーゼ、又は例えば、アルミナ、シリカ、活性炭、黒煙などの担体にパラジウム、プラチナ、ルビジウム、イリジウムなどの貴金属を担持させた顆粒状又は錠剤状のものであり、既知のものを用いることができる。また、酸素発生剤Cには、過炭酸ソーダ、過酸化カルシウム、などの過酸化物粒子に水溶性皮膜を施してマイクロカプセル化したものや、過酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、燐酸二水素カルシウムを所定配合率で混合した物を加圧して顆粒状に成形したものなど、既知のものを用いることができる。
【0019】
反応タンク1内では、上部タンクの酸素発生材載置部121に載せてある酸素発生剤C(図3では黒の塗り潰しで示されている。)から溶けた成分又は溶けて小さくなった酸素発生剤Cの一部が水Dとともに網部材121の小孔121aを通過して下部タンク12k触媒収容部11a内に流下して、触媒B(図3では黒の塗り潰しで示されている。)と混合し接触するため、酸素O(図3では白丸で示されている。)が発生する。そして、そのマイクロバブル状の酸素は下部タンク11の触媒収容部11a内を上昇し、網部材121の小孔を通過して、さらに上部タンク12内を上昇する。
【0020】
そのため、網部材121に載せてある酸素発生剤Cが水Dの中を躍り上がるように撹拌され、上部タンク内の他の酸素発生剤が水とともに網部材121の小孔を経て流下する。従って、酸素発生剤は水及び触媒と均一に混合し接触し、その状態が反復されるので、すべての酸素発生剤と水と触媒が長時間に渡って効率良く接触し、かつ、その均一な接触率が維持される。その結果、化学反応が促進され、酸素発生量が従来よりも多くなり、かつ、発生時間が長くなる。上部タンク12の上方空間に放散された酸素は、圧力が高められ、気液分離材23を通過して洗浄タンク2内の洗浄液Eの中を上昇する間に純化され、キャップ3の気液分離材33において洗浄液から分離されてノズル31から噴出する。そして、この簡易酸素発生器Aは、反応タンクにおける発生酸素による酸素発生剤と水と触媒の接触率向上に基づいて、ノズル31から一定量の酸素を長時間安定して吹き出すことができる。
【0021】
上記の実施の形態は、その構造により、触媒を下部タンクに投入した後、水を注入し、次いで酸素発生剤を上部タンクに投入するという順序を確保することができる。触媒と水と酸素発生剤の投入順序を上記のようにした場合は、触媒が先に水に程よく溶解した状態のところに、酸素発生剤を投入することにより、化学反応速度がコントロールされ、急激に多量の酸素発生が短時間に終了することが防止され、一定量の酸素発生が安定して長時間持続される効果が得られる。
【0022】
触媒を下部タンクに投入した後、水を注入し、次いで酸素発生剤を上部タンクに投入する本発明に係る簡易酸素発生器Aによる場合の酸素発生能力と、触媒と酸素発生剤をともに上部タンクに投入する比較例による酸素発生能力とを、図4のグラフに示す。
同図から明らかなように、比較例は、化学反応の初めの1〜6分の時間は、酸素発生量が1.0〜0.4リットル/分と比較的多いが、その後は減少率が大きく、持続時間も7分間程度であるのに対し、本発明による簡易酸素発生器Aでは、初めは比較例よりもやや少量であるが、適量範囲である0.4〜0.3リットル/分の時間が長く、全体の持続時間も12分間と伸長されている。この図から、本発明によれば、安定した適量の酸素発生が長時間持続されることが判る。
【0023】
また、本発明の他の利点を挙げると、反応用タンク1は、下部タンク11と上部タンク12に二分され、上部タンク12に網部材121が一体的に結合されているので、簡易酸素発生器Aの使用開始に当たり、触媒と酸素発生剤の投入順序を間違えることが有効に防止される。すなわち、下部タンク11には触媒Bを、上部タンク12には酸素発生剤Cを投入するというように、個々のタンクに対応して収容すべき物を記憶し、その様に収容作業ができるので、混乱が生じない。また、それぞれのタンクに触媒と酸素発生剤を収容した後は、両タンクを結合するだけで反応用タンクが完成し、これに水を水位線122まで注入して、キャップ付き洗浄用タンク2を結合するだけで使用可能となるので、簡易酸素発生器Aは簡単に使用開始可能になる。
また、酸素発生剤の使用量に対応する所定有効時間の経過後は、キャップ3が付いたまま洗浄用タンク2を反応タンク1から分離し、反応タンク1から水と使用済み酸素発生剤を廃棄し、その後、反応用タンク1を上部タンク12と下部タンク11に分離して、触媒Bの補充をし、上部タンク11に新しい酸素発生剤Cを投入し、所定量の水Dを注入し、キャップ付き洗浄用タンク2を結合すれば、再使用が可能となる。
【0024】
続いて、本発明の他の実施の形態について、図4ないし図8を参照して説明する。図5は他の実施の形態に係る酸素発生器の正面図、図6は同じく縦断面図、図7は反応用タンク内に嵌合される網部材の一例の正面図、図8は同じく平面図である。先の実施の形態と共通の部材には同一の符号を用いる。
この簡易酸素発生器Bは、反応用タンク1Bと、これに分離可能に結合される洗浄用タンク2と、その洗浄用タンクに分離可能に結合されるノズル付きキャップ3とからなるが、反応用タンク1Bは一つの有底筒状に形成されている。そして、反応用タンク1Bにより形成されている反応室の底部よりも上側に、後述される網部材4を挿入した場合に、これを係止して所要の容量を有する触媒収容部を形成するための係止手段の一例として、内壁面に網部材4を嵌合固定するための嵌合段部1aが形成されている。
【0025】
また、網部材4は、反応用タンク1Bから分離して形成され、図7及び図8に示すように、酸素発生剤を載せる載置部41を有し、その載置部の周縁部から上外側に離間された位置に、この網部材を反応用タンクの反応室に挿入した時に前記嵌合段部1aに係合するための段部42が形成されている。
【0026】
酸素発生剤載置部41には多数の孔41aが形成されている。この孔の大きさ及び数は、化学反応の進行とともに、載置部41に載せた顆粒状の酸素発生剤が流下する量と載置部41に残留する量を時間当たりの酸素発生量が安定した所望値となるように設定されている。また、段部42を載置部41の周縁部から上外側に離間された位置に設けることにより、その載置部41の周縁と段部42の間に酸素上昇通路となるスリット41bが形成されている。
【0027】
網部材41には、段部42の周方向に隔てた複数箇所に連結部材43が立設され、その上端部に反応用タンク1Bの開口面に係合される鍔44が設けられている。この鍔には、リング状の弾性パッキン材45が鍔の上下面を被覆するように嵌着されている。
【0028】
反応用タンク1Bの上部外壁面には、互いに反対側において、反応用タンク1Bの上端縁に洗浄用タンク2の下端縁を整合させた状態で操作すると、スナップ形式で両タンクを締め付けて密閉する既知のクランプ5が取付けられている。従って、洗浄用タンク3の下端部の外壁面には、そのクランプを係止する突起2aが形成されている。
こうして、反応用タンクの反応室に網部材4を挿入して、その鍔45を反応用タンク1Bの上端部に載せ、洗浄用タンク3の下端部をその鍔の上に重ねて、クランプ5により反応用タンク1Bと洗浄用タンク3を締め付けて固定すると、鍔45は弾性パッキン材45を介して両タンクの間を密閉し、同時に網部材4の底部の段部42が反応室中間部の嵌合段部1aに嵌合密着するようになっている。反応用タンクに網部材を挿入した場合に、その酸素発生剤載置面が所要の容量を有する、すなわち、遊隙をもって触媒を収容し得る触媒収容部を形成するように網部材を係止する手段は、上記嵌合段部1aと網部材の段部42に限らず、網部材の鍔44を反応用タンク1Bの上端部に係止させることによって代替することができる。
【0029】
上記構成を有する簡易酸素発生器Bは、携帯用とする場合は、触媒、酸素発生剤及び水に関して、次の条件範囲で使用すると、発生量及び持続時間において理想的な酸素発生能力を発揮することが可能である。
すなわち、まず、反応用タンク1Bの反応室を開放し、その中に触媒を投入するが、その触媒は、最適な例として、直径6.0mm、重量200mgの錠剤状のカタラーゼを25錠、総量5g用いる。触媒の投入後は、反応用タンクの反応室内に350mlの水を注入する。この場合の水面は、嵌合段部1aよりも実質的に上方に位置する。注水の前又は後に、取出してある網部材4を反応用タンクの反応室に挿入し、係止手段により所定位置に係止する。注水の後に、顆粒状の酸素発生剤90gを投入し、網部材の載置部に載せる。最後に、洗浄液が収容されているキャップ付き洗浄用タンク2を反応用タンクの上端部に整合させ、クランプ5を締めて両タンク1B,2を結合すると同時に、網部材を鍔44及び段部42において反応用タンクに対して固定する。この場合、網部材の載置部に載せられた酸素発生剤が全部、水の中に浸されることは、先の実施例の場合と同様である。
【0030】
図4に、本発明の簡易酸素発生器Bを上記条件の下で使用した場合の酸素発生結果を併せて示す。酸素発生開始から12分間以上は、無駄なく吸入が可能な好適範囲の発生量である毎分0.6〜0.4リットルの安定した酸素発生を継続したことが認められる。
【0031】
触媒、酸素発生剤及び水を上記の形状、使用量、投入順序の条件で用いる場合の作用を以下に説明する。
触媒の収容に続き、先に水を注入し、その後に酸素発生剤を網部材に投入して載置する場合は、投入された酸素発生剤は網部材に堆積し、触媒収容部に流下する酸素発生剤の量が当初は抑制されて比較的少ないが、先に触媒が程よく溶解しているので、酸素発生剤の化学反応が活発に行われ、効率的に酸素が発生する。すなわち、酸素発生剤よりも先に水を注入して、先に触媒を程よく溶解させておくことにより、反応速度がコントロールされる効果が得られる。そして、触媒収容部に発生した酸素は、酸素発生剤の堆積により網部材4の孔41aを通過しにくい状態においても、酸素発生剤載置部41の周囲に形成されている通路41bを経て反応用タンク1Bの上部に円滑に上昇する。従って、酸素発生剤と水の撹拌が確実に行われ、すべての酸素発生剤及び触媒が水と満遍なく接触し、化学反応が均一にかつ安定して行われる。網部材4の載置面41に残留している酸素発生剤は溶解して小さくなるが、網部材の孔41aから流下する量が過多量にならずに、触媒収容部に発生して上昇しようとする酸素により適度になるように程よく抑制される。従って、酸素発生剤の溶解速度がコントロールされるので、触媒収容部に落下した酸素発生剤の量と、網部材上に残留した酸素発生剤の量の配分により、化学反応の一定化が保証される。そのため、一定の酸素発生量が安定して長時間持続される。
【0032】
可及的に長時間、安定した酸素発生量が得られるための、触媒及び酸素発生剤の形状及びそれらと水の使用量の好適条件の範囲は、反応用タンクの容量に依存するが、携帯用酸素発生器の場合は、次の通りである。
水: 300〜400ml程度
触媒:直径4.0〜7.0mm、重量200〜250mgの錠剤状触媒23
〜27個程度。
酸素発生剤:顆粒状の酸素発生剤80〜100g程度
触媒の大きさ及び重量が上記範囲以外の場合は、扱いが困難になり、使用個数が上記範囲以外の場合は、反応速度が遅すぎたり、早すぎたりする。酸素発生剤が顆粒状よりも小さい場合は、化学反応が早すぎて、酸素発生時間が短く、また、顆粒状よりも大きい場合は、水及び触媒との接触率が低く、安定した酸素発生が困難なる。使用量が上記範囲よりも多い場合は、撹拌作用が有効に行われず、長時間安定した酸素発生が困難であり、使用量が上記範囲よりも少ない場合は、酸素発生量及び継続時間が少なくなり、要望に応えることができない。
【0033】
【発明の効果】
上述のように、請求項1の発明によれば、反応室に酸素発生剤と触媒が分離して収容され、網部材により酸素発生剤が触媒収容部に流下する量が抑制され、また、発生した酸素が網部材の孔を通過して上昇する際に酸素発生剤と水とを撹拌するので、流下量が抑制された中で酸素発生剤のすべてと触媒と水の接触が長時間満遍なく行われるため、長時間安定して一定量の酸素を発生する簡易酸素発生器を提供することができる。
【0034】
請求項2の発明によれば、酸素発生剤と触媒の投入順序の誤りを未然に防止でき、酸素発生剤と触媒の補充が簡単にできるという利便性がある。
【0035】
請求項3の発明によれば、載置部の孔とその周辺のスリットにより広い面積において酸素発生剤の触媒収容部への流下量の理想的な抑制が可能となり、長時間の安定した一定量の酸素発生を実現することができる。また、反応タンクが一つの有底筒状に形成され、これに網部材を嵌合して装着するので、触媒、水及び酸素発生剤の取扱が簡単である。
【0036】
請求項4の発明によれば、請求項3の携帯に適する大きさの簡易酸素発生器を用いて、無駄なく酸素吸入が可能な理想的な一定量の酸素発生を長時間持続することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る酸素発生器の中央縦断面図。
【図2】同じく分解斜視図。
【図3】使用状態における作用を説明する断面図。
【図4】本発明に係る簡易酸素発生器による酸素発生性能と、比較例による酸素発生性能とを示すグラフ。
【図5】本発明の他の実施の形態に係る酸素発生器の正面図。
【図6】同じく縦断面図。
【図7】反応用タンク内に嵌合される網部材の正面図。
【図8】同じく平面図。
【図9】従来技術を示す断面図。
【符号の説明】
図1〜図3において
A 簡易酸素発生器
1 反応用タンク
11 下部タンク
12 上部タンク
121 網部材
2 洗浄用タンク
21 底部
22 通気孔
3 キャップ
31 ノズル
B 触媒
C 酸素発生剤
D 水
E 洗浄液
図5〜図8において
B 簡易酸素発生器
1B 反応用タンク
1a 嵌合段部
4 網部材
41 載置部
41a 孔
41b スリット
42 段部
Claims (4)
- 触媒の元で酸素発生剤と水とを反応させて酸素を発生させる反応用タンクと、発生した酸素を洗浄液に通過させて浄化する洗浄用タンクと、浄化された酸素を外部に吐出するノズルを備えたキャップとを結合してなる化学反応式簡易酸素発生器において、
(a)前記反応用タンクは、上端部に開口する反応室を有する有底筒状に形成され、その内側中間部において前記反応室を上下に仕切り、かつ、酸素発生剤を載置するための載置面を備えた網部材を有し、前記載置面の下側に触媒を遊隙をもって収容し得る触媒収容部を有するものであり、
(b)前記網部材は、前記載置面に、化学反応の進行とともに前記酸素発生剤の前記触媒収容部に流下する量及び前記載置面の上に残留する量を時間当たりの酸素発生量が安定した所望値となるように設定した大きさ及び数の孔を有し、
(c)前記洗浄用タンクは、前記反応用タンクの上端部に分離可能に結合され、分離状態では前記反応用タンクの反応室の開口を開放し、結合状態では前記反応室の開口を密閉すること、
を特徴とする化学反応式簡易酸素発生器。 - 反応用タンクは、中に触媒を収容するための下部タンクと、底部に網部材を一体に有する有底筒状に形成されて、前記上部タンクの上端部に分離可能に結合される上部タンクとから構成され、前記下部タンクと前記上部タンクを結合した状態で、前記反応用タンクの反応室の中に前記網部材に載置された酸素発生剤が浸る高さまで水を収容可能なものであることを特徴とする請求項1に記載された化学反応式簡易酸素発生器。
- 反応用タンクは一つの有底筒状に形成され、網部材を反応室に挿入した時にこれを係止して、その網部材の酸素発生剤載置面の下側に触媒収容部に所定の容量を確保する係止手段を有し、前記網部材は、多数の孔を有する酸素発生剤載置部の周囲に、触媒収容部に発生した酸素が前記反応室の上方に流通する通路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載された化学反応式簡易酸素発生器。
- 触媒は、直径6.0±10%mm、重量200±10%mgの錠剤状のものを23〜27個、反応用水は350±10%ml、酸素発生剤は顆粒状のものを80〜100g用い、
反応用タンクの反応室の底部に前記触媒を投入し、
網部材を反応室内の所定位置に係止する前又は係止した後に、
前記水を前記反応室に注入し、
前記網部材の載置面に前記酸素発生剤を投入して載置し、
最後に、キャップを取付けた洗浄用タンクを前記反応用タンクに結合することを特徴とする請求項3に記載された化学反応式簡易酸素発生器の使用方法。
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