JP4233014B2 - 光ファイバーコーティング用樹脂組成物及び光ファイバー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、構成単位として2−エチル−2−アルキル−1,3−プロパンジオールを含有するポリエステル系ジオールとポリイソシアネートとヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基含有化合物からなる活性エネルギー線硬化型の光ファイバーコーティング用の樹脂組成物に関し、該組成物は光ファイバー用のコーティング材に使われ、ガラスに対する密着性および硬化性が良好であり、その硬化物は耐湿熱性、低吸湿性に優れる。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバーに用いられているガラスファイバーは、一般的には石英系の母材が使用され、脆く損傷しやすいので保護が必要である。このような光ファイバー用のコーティング材料としては、特に一次被覆材料には、硬化後において、常温および低温における弾性率が低いこと、耐加水分解性が高いこと、さらに塗布性およびガラスに対する密着性が良好であることが求められている。光ファイバーの被覆工程は、光ファイバーを熱溶融させたガラスファイバー母材から線引きにより製造した直後に連続的に設けられるので、光ファイバー製造速度を高めて生産性を向上させるため被覆材料にも硬化性速いことが求められる。従来、光ファイバーコーティング用樹脂として熱硬化型のシリコーン樹脂が用いられてきた。この樹脂の硬化物は、常温から低温までの弾性率が小さいため、伝送損失特性は幅広い温度範囲で優れる特徴を有しているが、硬化速度が遅い欠点を有している。これを改良するために、最近は硬化速度が速い紫外線硬化型樹脂が用いられている。ポリブタジエンアクリレート(特開昭58−7103号公報)、およびポリエーテルジオールを有するウレタンアクリレート(特開昭58−223638号公報)やポリカプロラクトンポリオールを用いたウレタン(メタ)アクリレート樹脂(特開昭61−31330号公報)や数平均分子量3000から30000のウレタンアクリレート樹脂(特開平11−60657号公報)が提案されているが、両樹脂とも、低い弾性率、硬化性、耐加水分解性のすべてを満足するには、至っていない。
また、二次被覆材料にも、種々の特性が要求される。特に、湿度、水から保護という点から耐湿熱性、低吸湿水性であることが要求される。さらに加工時のファイバーの線引き速度を速めて生産性を上げるために、硬化性の速いこと、機械的強度、適度の弾性率と伸びが要求され、検討がなされている(特公平6−23225号公報)が、すべてを満足するには、至っていない。従来は、一次被覆用、二次被覆用樹脂としては、異なるメイン樹脂が使われていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来の光ファイバーコーティング用材料は、ガラスに対する密着性、硬化速度、硬化後における耐湿熱性、低吸湿性の要求特性がバランスよく満足されていないという問題点がある。
本発明の目的は、ガラスに対する密着性および高い硬化性を有し、硬化物が光ファイバーコーティング用として適切な耐湿熱性、低吸湿性を有する活性エネルギー線硬化型光ファイバーコーティング用樹脂組成物を提供することである。この組成物は、一次被覆、二次被覆用として用いることができる。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上記問題を解決するため、鋭意検討した結果、構成単位として2−エチル−2−アルキル−1,3−プロパンジオールを含有するポリエステル系ジオールとポリイソシアネートとヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型光ファイバーコーティング用樹脂組成物が、ガラスに対する密着性および高い硬化性を有し、硬化物が光ファイバーコーティング用として適切な耐湿熱性、低吸湿性を有することができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の第1は、構成単位として2−エチル−2−アルキル−1,3−プロパンジオール(以下、EAPGと略称することもある。)を含有する数平均分子量1000〜3000のポリエステル系ジオール(a)と、該ポリエステル系ジオール(a)1モルに対して1〜20モルの分子量300以下の低分子量ポリオール(a’)と、ポリイソシアネート(b)と、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(c)とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)、及び(メタ)アクリロイル基含有化合物(B)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型光ファイバーコーティング用樹脂組成物を提供する。
本発明の第2は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、ポリエステル系ジオール(a)と低分子量ポリオール(a’)の合計1〜15モル、ポリイソシアネート(b)2〜16モル、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(c)2モルを用いて高分子量化して得られる本発明の第1に記載の活性エネルギー線硬化型光ファイバーコーティング用樹脂組成物を提供する。
本発明の第3は、本発明の第1又は第2に記載の活性エネルギー線硬化型光ファイバーコーティング用樹脂組成物を光ファイバーにコーティングし、活性エネルギー線により硬化してなるコーティングされた光ファイバーを提供する。
以下、本発明を詳しく説明する。
【0005】
ここに上記EAPGにおけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デセニル基などが挙げることができ、さらに長鎖アルキル基を有するものも場合により使用可能である。さらに好ましくは、該アルキル基の炭素数が2〜4のものである。具体的には、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールが該当する。
【0006】
2−エチル−2−アルキル−1,3−プロパンジオールを含有するポリエステル系ジオール(a)について説明する。本発明に用いるポリエステル系ジオール(a)は、EAPGを含有するグリコール成分および二塩基酸成分からなるポリエステルジオールである。グリコール成分中、少なくとも50重量%はEAPGであることが好ましい。50重量%未満の場合には、これを用いたウレタンアクリレートの配合物から形成されるコーティング剤の耐加水分解性を改良する効果が小さい。なお、グリコール成分がEAPGのみであってもよい。
【0007】
ポリエステル系ジオール(a)のグリコール成分中、50重量%未満の範囲であれば、EAPG以外にも以下のような一般にポリエステルのグリコール成分として知られている各種公知のものを併用することができる。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、ジプロピレングリコールなどの飽和および不飽和の各種公知のグリコール類が挙げられる。また、本発明では前記のグリコールの他にn−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテルなどのアルキルグリシジルエーテル類、バーサテイック酸グリシジルエステルなどのモノカルボン酸グリシジルエステル類もグリコール類の一種として使用可能である。
【0008】
さらに、前記全グリコール成分の5モル%までは以下の各種ポリオールに置換することができる。例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエリスリトールなどである。
【0009】
前記各種グリコール成分と共にポリエステル系ジオール(a)を形成する他の構成成分である二塩基酸成分としては、以下のような一般にポリエステルの酸成分として知られている各種公知のものを使用することができる。例えば、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸などの二塩基酸もしくはこれらに対応する酸無水物やダイマー酸などが挙げられる。
前記EAPGを含むグリコール成分と二塩基酸成分からなるポリエステル系ジオール(a)の数平均分子量は、500〜4000、好ましくは800〜3000の範囲内とすることが好ましい。該数平均分子量が500未満であれば耐加水分解性の性能が発揮できない。一方4000を越えると塗膜物性が低下する傾向がある。
【0010】
さらに、本発明の活性エネルギー線硬化型光ファイバーコーティング用樹脂組成物の性能を逸脱しない範囲であれば、後に説明する低分子量ポリオール(a’)以外の成分として、上記のポリエステル系ジオール(a)の他に酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体もしくは共重合体などのポリエーテルポリオール類、二塩基酸とグリコール成分を縮合させてなる上記以外のポリエステルポリオール類、ラクトン化合物のような環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール類、その他、ポリカーボネートポリオール類、ポリブタンジエングリコール類、ビスフェノールAに酸化エチレンもしくは酸化プロピレンを付加して得られたグリコール類などの一般にウレタン(メタ)アクリレートの製造に用いられる各種公知の高分子ポリオールを併用することができる。
【0011】
また、ポリエステル系ジオール(a)は単独使用するか、ポリエステル系ジオール(a)と低分子量ポリオール(a’)との混合物として使用することもできる。その混合割合は、ポリエステル系ジオール(a)1モルに対して、低分子量ポリオール(a’)を1〜20モル、好ましくは3〜10モルである。低分子量ポリオール(a’)を1モル以上用いることにより、本発明の活性エネルギー線硬化型光ファイバーコーティング用樹脂組成物を硬化させて得られる塗膜において、伸度を発揮させる(a’)の添加効果が現れ、20モル超ではウレタン(メタ)アクリレート(A)化したときに粘度が大きくなり取り扱いが困難となる。低分子量ポリオール(a’)としては、分子量が300以下のものであり、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−または1,3−プロピレングリコール、1,3−または1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどが挙げられる。
【0012】
次に、(b)成分であるポリイソシアネートについて説明する。本発明に用いるポリイソシアネート(b)としては、芳香族系、脂肪族系、環式脂肪族系または脂環式ポリイソシアネートまたはその混合物、付加物、変性物、重合物など公知のポリイソシアネート類が使用できる。中でも、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(クルードMDI)、変性ジフェニルメタンジイソシアネート(変性MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添化キシリレンジイソシアネート(H−XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NDI)などのポリイソシアネート或いは上記のイソシアネートの三量体化合物或いは上記のイソシアネートのトリメチロールプロパン或いは上記イソシアネートのビュレット変性品が挙げられる。
【0013】
次に、(c)成分であるヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートについて説明する。
本発明に用いるヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(c)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルキル基に置換基があってもよいヒドロキシアルキル(炭素数2〜12)(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレン(炭素数2〜6)グリコールモノ(メタ)アクリレート;グリセロールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールメタクリレートアクリレート、2−(メタ)アクリロイルエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、或いは上記化合物のラクトン(炭素数4〜8)変性品や、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのアルキレン(炭素数2〜6)オキサイド変性品などが挙げられる。
ラクトン変性品としては、特に、ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート基のヒドロキシ基に、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトンなどのラクトンが0.3〜10モル付加したものが挙げられる。
アルキレンオキサイド変性品としては、特に、ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート基のヒドロキシ基に、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどが0.5〜20モル付加したものが挙げられる。
【0014】
本発明の活性エネルギー線硬化型光ファイバーコーティング用樹脂組成物中の一方の成分であるウレタン(メタ)アクリレート(A)の製造方法としては、上記のポリエステル系ジオール(a)、ポリイソシアネート(b)、及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(c)を反応させる方法であれば、特に限定されず、公知の方法で製造できる。
例えば、(a)、(b)、(c)を一括混合して反応させる方法、(a)および(b)を反応させて、1分子当たり1個以上のイソシアネート基を含有するウレタンイソシアネートプレポリマーを形成した後、該プレポリマーと(c)を反応させる方法、または、(b)および(c)を反応させて、1分子当たり1個以上のイソシアネート基を含有するウレタンイソシアネートプレポリマーを形成した後、該プレポリマーと(a)を反応させる方法などが挙げられる。上記の反応方法において、ポリエステル系ジオール(a)の代りに、(a)と低分子量ポリオール(a’)との混合物を使用する場合にも、同様にすることができる。
【0015】
ポリエステル系ジオール(a)(もしくは(a)と(a’)の混合物)、ポリイソシアネート(b)、及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(c)の反応割合は、(c)2モルに対して(a)(もしくは(a)と(a’)の混合物)が1〜15モル、好ましくは2〜10モルであり、(b)が2〜16モル、好ましくは3〜11モルである。(a)(もしくは(a)と(a’)の混合物)が1モル未満ではウレタン(メタ)アクリレート(A)化したときに伸度が不十分となり、また(b)が2モル未満ではウレタン(メタ)アクリレート(A)化できなくなる。
反応混合物中のイソシアネート基のモル比が大になると、得られたウレタン(メタ)アクリレート(A)中にイソシアネート基が残存することになり、安全性の観点から好ましくない。逆に、混合物中のヒドロキシル基のモル比が大になった場合、残存するヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート(c)の種類によっては次に添加される(メタ)アクリロイル基含有化合物(B)とともに硬化成分として寄与するので、問題のない場合が多い。
【0016】
反応には、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジンなどの重合禁止剤存在下で行うことが好ましい。これらの重合禁止剤の量は生成するウレタン(メタ)アクリレート(A)に対して1〜10000ppm(重量基準)、好ましくは、100〜1000ppm、さらに好ましくは、400〜500ppmである。重合禁止剤の量がウレタン(メタ)アクリレート(A)に対して1ppm未満であると十分な重合禁止効果が得られないことがあり、10000ppmを超えると生成物の諸物性に悪影響を及ぼす恐れがある。
同様の理由から、本反応は分子状酸素含有ガス雰囲気下で行うことが好ましい。酸素濃度は安全面を考慮して適宜選択される。
【0017】
本反応において、十分な反応速度を得るために、本反応は触媒を用いて行うことが好ましい。触媒としては、ジブチルスズジラウレート、オクチル酸スズ、塩化スズなどを用いることができるが、反応速度面からジブチルスズジラウレート等が好ましい。
これらの触媒の量はウレタン(メタ)アクリレート(A)に対して、通常、1〜3000ppm(重量基準)、好ましくは50〜1000ppmである。触媒量が1ppmより少ない場合には十分な反応速度が得られないことがあり、3000ppmより多く加えると生成物の諸物性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0018】
反応は温度130℃以下で行うことが好ましく、特に50℃〜130℃であることがより好ましい。50℃より低いと実用上十分な反応速度が得られないことがあり、130℃より高いと熱によるラジカル重合によって二重結合部が架橋し、ゲル化物が生じることがある。反応は、通常、残存イソシアネート基が0.1%以下になるまでガスクロマトグラフィー、滴定法等で分析しながら行なう。
【0019】
本発明の活性エネルギー線硬化型光ファイバーコーティング用樹脂組成物中のもう一方の成分である(メタ)アクリロイル基含有化合物(B)としては特に限定されず、公知の(メタ)アクリロイル基を含有するモノマーや(メタ)アクリロイル基を含有するオリゴマーが使用できる。(メタ)アクリロイル基を含有するモノマーとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、1,6−ヘキサンジオールモノ又はジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの3モルプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの6モルプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン変性物のヘキサ(メタ)アクリレート、これら以外でかつ前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(c)で例示したものなどの一官能ないし多官能モノマーが挙げられ、これらの二種以上の混合物でもよい。
【0020】
(メタ)アクリロイル基を含有するオリゴマーとしては、代表的には、前記(A)成分以外のウレタン(メタ)アクリレート[例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物2モルと1,4−ブタンジオールのようなジオール1モルとから両末端にイソシアネート基を有する化合物を合成し、次いで、この化合物1モルに対して2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを2モル反応させることにより得られるもの、アジピン酸やフタル酸のような多塩基酸とポリオールとから水酸基末端のポリエステルを合成し、次いでヘキサメチレンジイソシアネートのようなポリイソシアネートを反応させて末端イソシアネート基を有するポリエステル樹脂とし、次いで、この末端イソシアネート基にヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて末端を(メタ)アクリロイル基に変換する方法により得られるもの、ジエチレングリコールやテトラメチレングリコールのようなポリエーテル化合物にヘキサメチレンジイソシアネートのようなポリイソシアネートを反応させて末端イソシアネート基を有するポリエーテル化合物とし、次いで、この末端イソシアネート基にヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて末端を(メタ)アクリロイル基に変換する方法等で得られるもの]、エポキシ(メタ)アクリレート[例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させることによって得られるもの、アジピン酸やフタル酸のような多塩基酸またはその無水物とエチレングリコールやトリメチロールプロパンのようなポリオールとからカルボキシル基末端のポリエステル樹脂を合成し、次いで、その末端カルボキシル基にグリシジル(メタ)アクリレートや3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートのようなエポキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させて末端を(メタ)アクリロイル基に変換して得られるもの、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにラクトン化合物(例えば、ε−カプロラクトン)を付加して得られるポリエステル化合物にトリメリット酸のような3価以上の酸無水物を反応させることによりカルボキシル基末端のポリエステル樹脂を合成し、次いで、グリシジル(メタ)アクリレートや3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートのようなエポキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させて末端を(メタ)アクリロイル基に変換する方法により得られるもの]、ポリエステル(メタ)アクリレート[アジピン酸やフタル酸のような多塩基酸と同ポリオールとから水酸基末端のポリエステル樹脂を合成し、次いで、アクリル酸やメタクリル酸のような(メタ)アクリロイル基を有する酸またはそのエステルを反応させてエステル化またはエステル交換反応させることにより、末端を(メタ)アクリロイル基に変換する方法、アジピン酸やフタル酸のような多塩基酸と同ポリオールとからカルボン酸末端のポリエステルを合成しヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させ末端を(メタ)アクリロイル基に変換する方法等で得られるもの]、およびポリエーテル(メタ)アクリレート[例えば、ジエチレングリコールやテトラメチレングリコールのようなポリエーテル化合物にアクリル酸やメタクリル酸のような(メタ)アクリロイル基を有する酸またはそのエステルを反応させてエステル化またはエステル交換反応させることにより末端を(メタ)アクリロイル基に変換する方法等で得られるもの]などが挙げられ、これらの二種以上の混合物でもよい。
(メタ)アクリロイル基含有化合物(B)は、(メタ)アクリロイル基を含有するモノマーと(メタ)アクリロイル基を含有するオリゴマーの混合物でもよい。
【0021】
(メタ)アクリロイル基含有化合物(B)の配合量は前記の(a)、(b)および(c)を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)100重量部に対して1〜1000重量部、好ましくは1〜500重量部、さらに好ましくは1〜100重量部である。1重量部より少ないと溶剤としても添加する意味がなく、1000重量部より多くなると前記のウレタン(メタ)アクリレート(A)を用いることによる特徴が出なくなる上、粘度が高くなり塗布性に影響が出るので好ましくない。
【0022】
本発明の活性エネルギー線硬化型光ファイバーコーティング用樹脂組成物は、上記ウレタン(メタ)アクリレート(A)を硬化性成分として含有するものである。この組成物を電子線照射により硬化させる際には、必ずしも光重合開始剤を用いる必要はないが、紫外線照射により硬化させる時は、光重合開始剤を配合することが好ましい。
光重合開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフインオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、カンファーキノンなどが挙げられる。この光重合開始剤の配合量は、組成物全体に対して1〜10重量%、好ましくは、1〜5重量%、さらに好ましくは、3重量%程度である。1重量%未満では硬化速度が遅く、逆に10重量%を超える量使用しても硬化速度の向上はみられず、硬化物の物性を損なうので好ましくない。
【0023】
また、上記本発明の活性エネルギー線硬化型光ファイバーコーティング用樹脂組成物には、このほかの種々の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、フィラー、染顔料、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤などが挙げられる。これらの添加物の添加量は樹脂組成物に対して0〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部である。
【0024】
上記本発明の活性エネルギー線硬化型光ファイバーコーティング用樹脂組成物は、これを対象物である光ファイバーに適用した後、紫外線または電子線等の活性エネルギー線を照射することにより硬化する。
光ファイバー用のグラスファイバーは通常、熔融した石英ガラス等を線引き速度100〜300m/分、好ましくは、150〜180m/分で、直径が200μm未満、好ましくは100〜150μmになるように紡糸することにより得られる。このようにして得られたグラスファイバーに本発明の活性エネルギー線硬化型光ファイバーコーティング用樹脂組成物を硬化後の直径が400μm未満、好ましくは、300μm未満になるように塗布し、好ましくは、塗布後、引き続いて紫外線照射を行い、塗布された樹脂組成物を硬化させることにより被覆された光ファイバーが得られる。
【0025】
さらに、類似の条件で必要に応じて二次被覆を行う。
一次被覆のための樹脂組成物と二次被覆のための樹脂組成物とは(B)成分の種類や(A)成分と(B)成分との混合比を適宜選んで行う。例えば、一次被覆のための樹脂組成物においては、ガラスとの密着性がよい点で(B)成分としてフェノキシエチルアクリレートやt−ブチルシクロヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等を使用するのが好ましい。また、グラスファイバーへの塗布性の点で(B)成分をやや多めに使用するのが好ましい。二次被覆のための樹脂組成物においては、一次被覆のために使用した樹脂組成物の硬化物との密着性の点で(B)成分としてイソボニルアクリレートやジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、アクリルモルフォリン、ビスフェノールA型ジアクリレート等を使用するのが好ましい。
【0026】
紫外線照射を行う時の光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯などが用いられる。照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、その他の条件により異なるが、長くとも数十秒であり、通常は数秒である。紫外線照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の完全を図ることもできる。電子線照射の場合は、50〜1,000KeVの範囲のエネルギーを持つ電子線を用い、2〜5Mradの照射量とすることが好ましい。通常、ランプ出力80〜300W/cm程度の照射源が用いられる。被覆材の厚さは通常、20〜200μm程度である。
【0027】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(合成例1)
攪拌機、温度計、分水器および窒素ガス導入管を備えた丸底フラスコに、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール1000重量部とアジピン酸650重量部を仕込み、窒素気流下、200℃で縮合水を除去しながらエステル化を24時間行った。ポリエステルの酸価が2以下になったのを確認後、真空ポンプにより徐々に真空度を上げて反応を完結させた。こうして水酸基価113KOHmg/g、酸価0.9KOHmg/g、数平均分子量1000のポリエステル系ジオール(a)を得た。
(合成例2)
攪拌機、温度計およびコンデンサーを備えた2Lのフラスコにイソホロンジイソシアネート444g(2モル)を仕込み、内温70℃にした後、ポリエステル系ジオール(a)1000g(1モル)を加え、反応させ残存イソシアネート基が5.7%となった時点で2−ヒドロキシエチルアクリレート232g(2モル)、ジブチルスズラウリレート0.25g(150ppm、得られるウレタンアクリレートに対する添加量)およびハイドロキノンモノメチルエーテル0.84g(500ppm、得られるウレタンアクリレートに対する添加量)を加え残存イソシアネート基が0.1%以下になるまで反応を行い、本発明における(A)成分であるウレタンアクリレート(1)を得た。
(合成例3)
主原料として、トリレジンジイソシアネート:348g(2モル)、ポリエステル系ジオール(a):1000g(1モル)、2−ヒドロキシエチルアクリレート:232g(2モル)を用いた以外は、合成例2と同様に行って、本発明における(A)成分であるウレタンアクリレート(2)を得た。
(合成例4)
主原料として、トリレジンジイソシアネート:696g(4モル)、ポリエステル系ジオール(a):3000g(3モル)、2−ヒドロキシエチルアクリレート:232g(2モル)を用いた以外は、合成例2と同様に行って、本発明における(A)成分であるウレタンアクリレート(3)を得た。
(合成例5)
主原料として、トリレジンジイソシアネート:696g(4モル)ポリエステル系ジオール(a):1000g(1モル)、1,4−ブタンジオール(a’)180g(2モル)、2−ヒドロキシエチルアクリレート:232g(2モル)を用いた以外は、合成例2と同様に行って、本発明における(A)成分であるウレタンアクリレート(4)を得た。
(比較合成例1)
主原料として、トリレジンジイソシアネート:348g(2モル)、ポリオキシテトラメチレングリコール(数平均分子量1000):1000g(1モル)、2−ヒドロキシエチルアクリレート:232g(2モル)を用いた以外は、合成例2と同様に行って、比較のためのポリエーテル系ウレタンアクリレート(5)を得た。
(比較合成例2)
主原料として、トリレジンジイソシアネート:348g(2モル)、ポリカプロラクトンポリオール(数平均分子量1000):1000g(1モル)、2−ヒドロキシエチルアクリレート:232g(2モル)を用いた以外は、合成例2と同様に行って、比較のためのポリカプロラクトン系ウレタンアクリレート(6)を得た。
上記合成例2〜5および比較合成例1〜2で得られたウレタンアクリレート[ウレタンアクリレート(1)〜(4)は本発明における(A)成分]、(B)成分である(メタ)アクリロイル基含有化合物および硬化触媒を混合して活性エネルギー線硬化型光ファイバーコーティング用樹脂組成物を調製して下記の要領で各項目を測定した。
【0028】
<評価>
硬化速度
樹脂組成物の塗膜に80W/cmの高圧水銀灯を用いて照射量を変えて紫外線を照射し、厚さ100ミクロンのフィルムを数種類作成し、次いでこのフィルムをトルエンを用いてソックスレー抽出し、抽出残率を測定し、抽出残率が一定値になる必要な最小紫外線照射量(mJ/cm2)を求めた。
耐湿熱性
樹脂組成物の塗膜に80W/cmの高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2の紫外線を照射し、厚さ100ミクロンのフィルムを作成し、温度70℃湿度95%の環境下に30日間置いて、試験前後の硬化フィルムの外観変化、弾性率変化を比較した。
外観変化については、目視で観察した。
弾性率変化は、試験前後の弾性率を測定し、次式を用いて計算し、以下の評価基準で評価した。
弾性率変化(%)=(試験後の弾性率)/(試験前の弾性率)×100
○:弾性率変化 100〜95%、△:弾性率変化94〜90%、×:弾性率変化 90%未満
吸湿性
樹脂組成物の塗膜に80W/cmの高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2の紫外線を照射し、厚さ100ミクロンのフィルムを作成し、温度23℃、湿度95%の環境下に24時間放置した後の重量(W1)と温度23℃、湿度50%の環境下に24時間放置した後の重量(W2)を測定し、次式を用いて吸湿率を計算し、吸湿性評価とした。
吸湿率(%)=(W1−W2)/W2×100
ガラス板に対する密着性
一次被覆用の樹脂に関してJIS K5400で規定された碁盤目テストにより比較し、95/100以上のものを○、50/100未満のものを×とした。
【0029】
一次被覆用の実施例1〜4及び比較例1〜2の結果は表−1に示し、二次被覆用の実施例5〜8および比較例3〜4の結果を表−2に示した。なお、表中の配合量は重量部を表す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
なお、樹脂組成物の塗布性と得られた光ファイバーにおける光の伝送能力を調べるために、各実施例で得られた樹脂組成物を満たした槽内に、線引き速度150m/分で紡糸した直径125μmの光ファイバーを通し、光ファイバーに塗布した。さらに、連続する次の工程で長さ20cm、出力50w/cmの高圧水銀ランプにより紫外線照射を行い、樹脂組成物を硬化させてドラムに巻き取った。得られた光ファイバーの被覆外径は290μmで均一であり、−60℃までの伝送能力の低下は認められなかった。
一方、比較例で得られた樹脂組成物を実施例で使用したものと同じグラスファイバーに塗布し、紫外線を照射して硬化後に得られた光ファイバーにおける被覆外径は不規則で部分的に塗布状態の悪い部分が観察され、−60℃までの伝送能力の低下が認められた。
【0033】
【発明の効果】
本発明の活性エネルギー線硬化型光ファイバーコーティング用樹脂組成物はガラスに対する密着性および硬化性に優れ、これを光ファイバーにコーティングし、次いで、活性エネルギー線硬化させて得られた光ファイバーは耐湿熱性及び耐吸湿性に優れる。
Claims (3)
- 2−エチル−2−アルキル−1,3−プロパンジオールを含有する数平均分子量1000〜3000のポリエステル系ジオール(a)と、該ポリエステル系ジオール(a)1モルに対して1〜20モルの分子量300以下の低分子量ポリオール(a’)と、ポリイソシアネート(b)と、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(c)とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)、及び(メタ)アクリロイル基含有化合物(B)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型光ファイバーコーティング用樹脂組成物。
- ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、ポリエステル系ジオール(a)と低分子量ポリオール(a’)の合計1〜15モル、ポリイソシアネート(b)2〜16モル、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(c)2モルを用いて高分子量化して得られる請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型光ファイバーコーティング用樹脂組成物。
- 請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化型光ファイバーコーティング用樹脂組成物を光ファイバーにコーティングし、活性エネルギー線により硬化してなるコーティングされた光ファイバー。
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