JP4229252B2 - 光電変換素子および光電気化学電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐久性および電荷輸送能に優れた電解質組成物を用いたために、優れた耐久性および光電変換特性を示す光電変換素子、およびかかる光電変換素子からなる光電気化学電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から電池、キャパシター、センサー、表示素子、記録素子等の電気化学的素子の電解質として液状電解質が用いられてきた。しかし、液状電解質を用いた電気化学的素子は、長期間の使用または保存の間に液漏れが発生することがあり信頼性に欠ける。
【0003】
例えばNature,第353巻,第737〜740頁,1991年、米国特許4927721号等は色素により増感された半導体微粒子を用いた光電変換素子およびこれを用いた光電気化学電池を開示しているが、これらにおいても電荷移動層に液状電解質を用いているため、長期間の使用または保存の間に電解液が漏洩または枯渇し、光電変換効率が著しく低下したり、素子として機能しなくなることが懸念されている。
【0004】
このような状況下で、国際特許93/20565号に固体電解質を用いた光電変換素子が提案された。また日本化学会誌,7,484頁(1997)、特開平7-2881142号、Solid State Ionics,89,263(1986)および特開平9-27352号は、架橋ポリエチレンオキサイド系高分子固体電解質を用いて固体化した光電変換素子を提案した。しかしながら、これらの固体電解質を用いた光電変換素子は光電変換特性、特に短絡電流密度が不十分であり、加えて耐久性も十分でなく、経時による特性劣化が大きい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、耐久性および電荷輸送能に優れた電解質組成物を用いたために、優れた耐久性および光電変換特性を示す光電変換素子、ならびにかかる光電変換素子からなる光電気化学電池を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は下記一般式(1):
【化3】
(ただし、Xは脱離基を表し、Qはアリーレン基またはヘテロ原子を有する2価の連結基を表し、Yはs価の連結基を表し、sは2〜4の整数を表す。)により表される化合物に窒素含有高分子化合物を反応させて得られる架橋重合体を含む電解質組成物は、優れた耐久性および電荷輸送能を示すことを発見し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明の光電変換素子は、導電層、感光層、電荷移動層および対極を有し、前記電荷移動層が下記一般式(5):
(ただし、Xはハロゲン原子、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、またはアリールスルホニルオキシ基を表し、Qは-CO- 、 -COO- 、 -SO- 、 -SO 2 - 、またはフェニレン基を表し、Yは-(CH 2 ) k - ( k は2〜 10 の整数を表す)、 -CH 2 OCH 2 - 、 -(CH 2 CH 2 O) m CH 2 CH 2 - 、 -(C 3 H 6 O) m C 3 H 6 - ( m は1〜 30 の整数を表す)、
または
を表す。)により表される化合物に、下記一般式(6):
(ただし、 R 1 は水素原子またはメチル基を表し、 L は -COO- 、 -OCO- 、 -CONR- または -NRCO- ( R は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。)、あるいはこれらから選ばれる1つ以上の基と、アルキレン基、アリーレン基および -O- から選ばれる1つ以上の基とを組み合わせてなる連結基を表し、 Z はピリジル基またはイミダゾリル基を表し、 E はエチレン性不飽和基を有する化合物から誘導される繰り返し単位を表し、 t は0または1であり、 x および y は繰り返し単位の重量組成比を表し、 x は 5 〜 100 重量%、 y は 0 〜 95 重量%である。)により表される繰り返し単位を有する窒素含有高分子化合物を反応させて得られる架橋重合体を含む電解質組成物を含有することを特徴とする。
【0009】
さらに本発明の光電気化学電池は、上記光電変換素子からなることを特徴とする。
【0010】
下記条件を満たすことにより、一層優れた光電変換特性および耐久性を有する光電変換素子ならびに光電気化学電池が得られる。
(1)感光層は色素によって増感された微粒子半導体を含有するのが好ましい。(2)微粒子半導体は二酸化チタン微粒子半導体であるのが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の光電変換素子および光電気化学電池は、求電子剤と、側鎖に窒素含有複素環基を有するペンダント型窒素含有高分子化合物との反応によって得られる架橋重合体を含む電解質組成物を用いることを特徴とする。これにより、光電変換特性に優れ、かつ特性の経時劣化を防止した光電変換素子および光電気化学電池が得られる。
【0012】
〔1〕電解質組成物
電解質組成物は、(A)求電子剤と(B)窒素含有高分子化合物との反応によって得られる架橋重合体を含むものである。以下これらの化合物および反応条件について詳述する。
【0013】
(A)求電子剤
本発明における求電子剤とは、窒素含有高分子化合物の窒素原子と求電子反応可能な、脱離基を有する化合物であり、特に下記一般式(1):
【化5】
により表される活性の高い化合物である。
【0014】
一般式(1)中、Xは脱離基を表す。その脱離基が脱離して生じるアニオンの共役酸は、pKaが10以下であるのが好ましく、5以下であるのがより好ましい。好ましいXとしては、ハロゲン原子、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、ヨウ素原子、臭素原子および塩素原子が好ましく、ヨウ素原子および臭素原子がより好ましい。
アルキルカルボニルオキシ基としては、アセトキシ基、クロロアセチルオキシ基、トリクロロアセチルオキシ基およびパーフルオロアシルオキシ基(トリフルオロアセチルオキシ基等)が好ましい。
アリールカルボニルオキシ基としては、ベンゾイルオキシ基、クロロベンゾイルオキシ基、フルオロベンゾイルオキシ基およびp-ニトロベンゾイルオキシ基が好ましい。
アルキルスルホニルオキシ基としては、メチルスルホニルオキシ基、クロロメチルスルホニルオキシ基およびパーフルオロアルキルスルホニルオキシ基(トリフルオロメチルスルホニルオキシ基等)が好ましい。
アリールスルホニルオキシ基としては、ベンゼンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基、p-クロロベンゼンスルホニルオキシ基およびp-ニトロベンゼンスルホニルオキシ基が好ましい。
【0015】
Qはアリーレン基またはヘテロ原子を有する2価の連結基を表す。これらの基は置換基を有してもよく、置換基の例としては、アルキル基(メチル基、エチル基等)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、ホルミル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等が挙げられる。
【0016】
Qがアリーレン基である場合、アリーレン基は無置換であるのが好ましく、フェニレン基またはナフチレン基であるのが好ましい。Qがヘテロ原子を有する2価の連結基である場合、電子吸引性の連結基であるのが好ましく、-CO-、-COO-、-SO-または-SO2-であるのがより好ましい。
【0017】
Yはs価の連結基を表し、sは2〜4の整数を表す。sが2のとき、Yはアルキレン基、アリーレン基、またはこれらと-CO-、-SO-、-SO2-、-O-、-NR-(Rは水素原子またはアルキル基)および-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つの連結基とを組み合わせてなる連結基であるのが好ましい。なかでも、-(CH2)k-(kは2〜10の整数を表す)、-CH2OCH2-、-(CH2CH2O)mCH2CH2-、-(C3H6O)mC3H6-(mは1〜30の整数を表す)、
【化6】
【化7】
のいずれかであるのがより好ましい。これらの連結基は置換基を有していてもよく、炭素原子数1〜16であるのが好ましい。
【0018】
連結基Yが有する置換基の例としては、アルキル基(メチル基、エチル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基等)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、アシルアミノ基(アセトアミド基、ベンズアミド基等)、スルホンアミド基、カルバモイル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、ニトロ基、ホルミル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、アリール基等が挙げられる。
【0019】
sが3のとき、Yは下記一般式(3):
【化8】
により表わされるのが好ましい。
【0020】
一般式(3)中、B1は
【化9】
(ただし、R5は水素原子、あるいは炭素原子数1〜8のアルキル基またはアルコキシ基を表す。)のいずれかを表す。
【0021】
一般式(3)中、L1、L2およびL3はそれぞれ独立に2価の連結基を表し、好ましい態様はsが2のときの連結基Yに同じであり、それぞれ同じでも異なっていてもよい。a、bおよびcはそれぞれ独立に0または1である。
【0022】
sが3のとき、Yは
【化10】
あるいは、これらとsが2のときの好ましい2価連結基Yとを組み合わせてなる3価連結基であるのがより好ましい。これらの連結基は置換基を有していてもよく、置換基の例としては上述のsが2のときのYが有してよい置換基が挙げられる。
【0023】
sが4のとき、Yは下記一般式(4):
【化11】
により表されるのが好ましい。
【0024】
一般式(4)中、B2は
【化12】
のいずれかを表し、L4、L5、L6およびL7はそれぞれ独立に2価の連結基を表し、好ましい態様はsが2のときの連結基Yに同じであり、それぞれ同じでも異なっていてもよい。e、f、gおよびhはそれぞれ独立に0または1である。
【0025】
sが4のとき、Yは
【化13】
あるいは、これらとsが2のときの好ましい2価連結基Yとを組み合わせてなる4価連結基であるのがより好ましい。これらの連結基は置換基を有していてもよく、置換基の例としては上述のsが2のときのYが有してよい置換基が挙げられる。
【0026】
一般式(1)中のXおよびQに挟まれる-CH2-基は置換基を有してもよい。置換基の例としては上述のsが2のときのYが有してよい置換基が挙げられる。
【0027】
求電子剤は窒素含有高分子における被反応性窒素原子に対して5〜200モル%用いるのが好ましく、5〜150モル%用いるのがより好ましく、10〜100モル%用いるのが特に好ましい。
【0028】
以下、一般式(1)により表される化合物の具体例1-1〜1-36を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
【化14】
【0030】
【化15】
【0031】
【化16】
【0032】
【化17】
【0033】
【化18】
【0034】
(B)窒素含有高分子化合物
本発明で用いる窒素含有高分子化合物とは、側鎖に窒素含有複素環基を有するペンダント型高分子化合物であり、下記一般式(2):
【化19】
(ただし、R1は水素原子またはアルキル基を表し、Lは2価の連結基を表し、Zは含窒素複素環基を表し、Eはエチレン性不飽和基を有する化合物から誘導される繰り返し単位を表し、tは0または1であり、xおよびyは繰り返し単位の重量組成比を表し、xは5〜100重量%、yは0〜95重量%である。)により表される繰り返し単位を有するのが好ましい。含窒素複素環基Zの窒素原子が、求電子剤によりアルキル化または4級化されて架橋重合体が形成される。
【0035】
R1は水素原子またはアルキル基を表し、水素原子またはメチル基であるのが好ましい。
【0036】
連結基Lは、炭素原子、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群から選ばれた少なくとも一種の原子を有する2価連結基であれば何でもよいが、-COO-、-OCO-、-CONR-または-NRCO-(Rは水素原子または低級アルキル基を表し、好ましくは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。)、あるいはこれらから選ばれる1つ以上の基と、アルキレン基、アリーレン基および-O-から選ばれる1つ以上の基とを組み合わせてなる連結基であるのが好ましい。ここで、アルキレン基またはアリーレン基は、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシ基、カルバモイル基、スルホン酸基、スルホンアミド基、アシル基(ホルミル基、アセチル基等)、アシルオキシ基、アシルアミノ基(アセトアミド基、ベンズアミド基等)、アルキル基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等)、アコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリール基、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、アリールスルホニル基等の置換基を有してもよい。
【0037】
これらの中でも、連結基Lは-COO-、-COO-(CH2CH2O)n-(nは1〜30の整数)、-COO-(C3H6O)n-(nは1〜30の整数)、-COO-(CH2)n-(nは1〜10の整数)、-COO-(CH2) n-OCO-(nは1〜10の整数)、-COO-(CH2)m-OCO-(CH2) n-(mおよびnは1〜10の整数)、-COO-(CH2CH2O)n-CO-(nは1〜30の整数)、-COO-(CH2CH2O)m-CO-(CH2)n-(mは1〜30の整数、nは1〜10の整数)、-COO-(C3H6O)n-CO-(nは1〜30の整数)、-COO-(C3H6O)m-CO-(CH2)n-(mは1〜30の整数、nは1〜10の整数)、-CONH-、-CON(CH3)-、-CONH-(CH2)n-(nは1〜10の整数)、-CONH-(CH2)3-O-(CH2CH2O)n-(CH2)3-NHCO-(nは1〜30の整数)、-CONH-C3H6-O-(CH2CH2O)n-C3H6-NHCO-(nは1〜30の整数)、-CONH-C3H6-O-(C3H6O)n-C3H6-NHCO-(nは1〜30の整数)、-COO-(CH2)n-O-COO-(nは1〜10の整数)、-COO-(CH2)n-NHCO-(nは1〜10の整数)、-OCO-、-OCO-(CH2)n-(nは1〜10の整数)、-O-COO-(CH2)n-(nは1〜10の整数)、-NHCO-(CH2)n-(nは1〜10の整数)、-NHCO-(CH2)n-CONH-(nは1〜10の整数)、-NHCO-(CH2)m-CONH-(CH2)n-(mおよびnは1〜10の整数)または-NHCO-O-(CH2)n-OCO-(nは1〜10の整数)であるのが特に好ましい。
【0038】
含窒素複素環基Zを構成する含窒素複素環は不飽和環でも飽和環でもよく、窒素原子以外の原子を有していてもよい。不飽和環としては、例えばピリジン環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、トリアゾール環等が挙げられる。また飽和環としては、モルホリン環、ピペリジン環、ピペラジン環等が挙げられる。含窒素複素環は不飽和環であるのが好ましく、ピリジン環またはイミダゾール環であるのがより好ましい。これらは無置換である方が好ましいが、アルキル基(メチル基等)等で置換されていてもよい。
【0039】
Eはエチレン性不飽和基を有する化合物から誘導される繰り返し単位を表し、前記エチレン性不飽和基を有する化合物の好ましい例としては、アクリル酸またはα-アルキルアクリル酸(メタクリル酸等)類から誘導されるエステル類もしくはアミド類(N-イソプロピルアクリルアミド、N-n-ブチルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、アクリルアミド、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-メチル-2-ニトロプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、t-ペンチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-メトキシエトキシエチルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2,2-ジメチルブチルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、3-ペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、セチルアクリレート、ベンジルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、4-メチル-2-プロピルペンチルアクリレート、ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、n-オクタデシルアクリレート、メチルメタクリレート、2-メトキシエトキシエチルメタクリレート、エチレングリコールエチルカーボネートメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、テトラグルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、t-ペンチルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、n-オクタデシルメタクリレート、2-イソボルニルメタクリレート、2-ノルボルニルメチルメタクリレート、5-ノルボルネン-2-イルメチルメタクリレート、3-メチル-2-ノルボニルメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル等)、マレイン酸またはフマル酸から誘導されるエステル類(マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル等)、マレイン酸、フマル酸、p-スチレンスルホン酸のナトリウム塩、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジエン類(ブタジエン、シクロペンタジエン、イソプレン等)、芳香族ビニル化合物(スチレン、p-クロロスチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム等)、N-ビニルホルムアミド、N-ビニル-N-メチルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、ビニリデンフルオライド、ビニリデンクロライド、ビニルアルキルエーテル類(メチルビニルエーテル等)、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、N-フェニルマレイミド等が挙げられる。
【0040】
本発明では、上記以外にリサーチディスクロージャー,No.1995(1980年7月)に記載されているエチレン性不飽和基を有する化合物等も使用できる。
【0041】
xおよびyはそれぞれ独立に含窒素複素環基Zを含有する繰り返し単位およびエチレン性不飽和基を有する化合物から誘導される繰り返し単位Eの重量組成比を表し、xは5〜100重量%、yは0〜95重量%であるのが好ましい。より好ましくはxは10〜95重量%、yは5〜90重量%である。Zを含有する繰り返し単位および繰り返し単位Eはそれぞれ2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
窒素含有高分子化合物の重量平均分子量は、1000〜100万であるのが好ましい。より好ましくは、2000〜10万である。
【0043】
以下に一般式(2)により表わされる窒素含有高分子化合物の好ましい具体例2-1〜2-52を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
【化20】
【0045】
【化21】
【0046】
【化22】
【0047】
【化23】
【0048】
【化24】
【0049】
【化25】
【0050】
【化26】
【0051】
【化27】
【0052】
【化28】
【0053】
【化29】
【0054】
窒素含有高分子化合物は、大津隆行・木下雅悦共著「高分子合成の実験法」(化学同人)や大津隆行「講座重合反応論1ラジカル重合(1)」(化学同人)に記載された一般的な高分子合成法であるラジカル重合によって合成することができる。窒素含有高分子化合物は、加熱、光または電子線によって、あるいは電気化学的にラジカル重合することができるが、特に加熱によってラジカル重合させるのが好ましく、その場合に好ましく使用される重合開始剤は、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジメチル2,2-アゾビスイソブチレート等のアゾ系開始剤、ラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオクトエート等の過酸化物系開始剤等である。
【0055】
(C)架橋反応
電解質組成物に用いる架橋重合体は、窒素含有高分子化合物の窒素原子と求電子剤との架橋反応により得られる。架橋反応は、窒素含有高分子化合物と求電子剤の他に、塩が共存する状態で行うことが好ましい。電解質組成物において、塩は電解質として必須である。架橋後に塩を添加することもできるが、この場合架橋重合体中に塩を均一に分散させるのが困難となるので好ましくない。
【0056】
反応溶液としては、(i)窒素含有高分子化合物、求電子剤および塩を溶媒に溶解したもの、または(ii)窒素含有高分子化合物を構成するモノマー類、重合開始剤、求電子剤、塩を溶媒に溶解したものを用いることができるが、(i)を用いるのが好ましい。
【0057】
塩としては、(a)I2とヨウ化物(LiI、NaI、KI、CsI、CaI2等の金属ヨウ化物、またはテトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物のヨウ素塩等)との組み合わせ、(b)Br2と臭化物(LiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2等の金属臭化物、またはテトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイド等の4級アンモニウム化合物の臭素塩等)との組み合わせ、(c)フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩やフェロセン−フェリシニウムイオン等の金属錯体、(d)ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、(e)ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン等を用いることができる。なかでも、I2とLiIやピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物のヨウ素塩とを組み合わせた電解質が好ましい。上記塩は混合して用いてもよい。
【0058】
またEP718288、WO95/18456、J. Electrochem. Soc., Vol.143, No.10, 3099 (1996)、Inorg. Chem., 35, 1168〜1178 (1996)に記載された室温で溶融状態の塩(以下、室温溶融塩と称する)を使用こともできる。室温溶融塩を電解質として使用する場合、溶媒は使用しなくても構わない。電解質に使用する室温溶融塩としては、例えばWO95/18456号、特開平8-259543号、電気化学,第65巻,11号,923頁(1997)等に記載されているピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾニウム塩等、既知のものを用いることができる。
【0059】
本発明で用いる室温溶融塩としては、下記一般式(Y-a)、(Y-b)および(Y-c):
【化30】
のいずれかにより表されるもの等が好ましい。
【0060】
一般式(Y-a)中、Qy1は窒素原子とともに5または6員環の芳香族カチオンを形成しうる原子団を表し、Ry1は置換または無置換のアルキル基またはアルケニル基を表す。
【0061】
原子団Qy1の構成原子は、好ましくは炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子より選択される。Qy1により形成される6員環は、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環またはトリアジン環であるのが好ましく、ピリジン環であるのがより好ましい。Qy1により形成される5員環は、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環またはトリアゾール環であるのが好ましく、オキサゾール環、チアゾール環またはイミダゾール環であるのがより好ましく、オキサゾール環またはイミダゾール環であるのが特に好ましい。
【0062】
一般式(Y-b)中、Ay1は窒素原子またはリン原子を表し、Ry2、Ry3、Ry4およびRy5はそれぞれ独立に置換または無置換のアルキル基またはアルケニル基を表す。ただし、Ry2、Ry3、Ry4およびRy5のうち3つ以上が同時にアリール基であることはない。また、Ry2、Ry3、Ry4およびRy5のうち2つ以上が互いに連結してAy1を含む非芳香族環を形成してもよい。
【0063】
一般式(Y-c)中、Ry6、Ry7、Ry8、Ry9、Ry10およびRy11はそれぞれ独立に置換または無置換のアルキル基またはアルケニル基を表し、それらのうち2つ以上が互いに連結して環構造を形成してもよい。
【0064】
一般式(Y-a)、(Y-b)および(Y-c)のいずれかにより表される化合物は、Qy1またはRy1〜Ry11を介して多量体を形成してもよい。
【0065】
一般式(Y-a)、(Y-b)および(Y-c)中のRy1〜Ry11は置換もしくは無置換のアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜24、直鎖状であっても分岐鎖状であっても、また環式であってもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、t-オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、2-ヘキシルデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基)または置換もしくは無置換のアルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜24、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、例えばビニル基、アリル基)を表し、好ましくは炭素原子数3〜18のアルキル基または炭素原子数2〜18のアルケニル基を表し、より好ましくは炭素原子数4〜6のアルキル基を表す。
【0066】
一般式(Y-a)、(Y-b)および(Y-c)中のQy1およびRy1〜Ry11は置換基を有していてもよく、好ましい置換基の例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、シアノ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等)、アリーロキシ基(フェノキシ基等)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基等)、アシル基(アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、スルホニル基(メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基等)、アシルオキシ基(アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、スルホニルオキシ基(メタンスルホニリオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基等)、ホスホニル基(ジエチルホスホニル基等)、アミド基(アセチルアミノ基、ベンゾイルアミド基等)、カルバモイル基(N,N-ジメチルカルバモイル基、N-フェニルカルバモイル基等)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-カルボキシエチル基、ベンジル基等)、アリール基(フェニル基、トルイル基等)、複素環基(ピリジル基、イミダゾリル基、フラニル基等)、アルケニル基(ビニル基、1-プロペニル基等)等が挙げられる。
【0067】
これら室温溶融塩は、単独で使用しても2種以上混合して使用してもよく、またヨウ化物イオンI-を他のアニオンで置き換えた塩と混合して使用することもできる。I-を置き換えるアニオンとして、ハロゲン化物イオン(Cl-、Br-等)、NCS-、BF4 -、PF6 -、ClO4 -、(CF3SO2)2N-、(CF3CF2SO2)2N-、CF3SO3 -、CF3COO-、Ph4B-等が好ましい例として挙げられる。より好ましくは、ハロゲン化物イオン、(CF3SO2)2N-またはBF4 -である。
【0068】
これらの室温溶融塩を電解質組成物に添加する際は、室温溶融塩自身がヨウ素塩か、または室温溶融塩以外に前記のヨウ素塩を添加するのが好ましい。室温溶融塩を添加し、かつ溶媒量が10%以下であるとき、ヨウ素塩の含有量は電解質組成物全体に対して、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは50重量%以上である。
【0069】
また、室温溶融塩を含む電解質組成物にヨウ素を添加する場合の好ましいヨウ素の添加量は0.1〜20重量%であり、より好ましくは0.5〜5重量%である。
【0070】
本発明では、電解質組成物にJ. Am. Ceram. Soc .,80 (12)3157-3171(1997)等に記載されているt-ブチルピリジン、2-ピコリン、2,6-ルチジン等の塩基性化合物を添加してもよい。塩基性化合物を添加する場合の好ましい濃度範囲は0.05〜2Mである。
【0071】
溶媒としては、低粘度でイオン移動度が高いか、高誘電率で有効キャリアー濃度を高めるか、あるいはその両方であるために、優れたイオン伝導性を発現できる化合物を使用するのが望ましい。このような溶媒の例として、例えば下記のものが挙げられる。
【0072】
(a)炭酸エステル類
例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等が好ましい。
【0073】
(b)ラクトン類
例えばγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプリロラクトン、クロトラクトン、γ-カプロラクトン、δ-バレロラクトン等が好ましい。
【0074】
(c)エーテル類
例えばエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、トリメトキシメタン、エチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン等が好ましい。
【0075】
(d)アルコール類
例えばメタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等が好ましい。
【0076】
(e)グリコール類
例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等が好ましい。
【0077】
(f)グリコールエーテル類
例えばエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等が好ましい。
【0078】
(g)テトラヒドロフラン類
例えばテトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等が好ましい。
【0079】
(h)ニトリル類
例えばアセトニトリル、グルタロジニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、ベンゾニトリル等が好ましい。
【0080】
(i)カルボン酸エステル類
例えばギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル等が好ましい。
【0081】
(j)リン酸トリエステル類
例えばリン酸トリメチル、リン酸トリエチル等が好ましい。
【0082】
(k)複素環化合物類
例えばN-メチルピロリドン、4-メチル-1,3-ジオキサン、2-メチル-1,3-ジオキソラン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、1,3-プロパンサルトン、スルホラン等が好ましい。
【0083】
(l)その他
ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ニトロメタン等の非プロトン性有機溶媒、水等が好ましい。
【0084】
これらの中では、炭酸エステル系、ニトリル系、複素環化合物系の溶媒が好ましい。これらの溶媒は必要に応じて二種以上を混合して用いてもよい。
【0085】
反応溶液中の窒素含有高分子化合物の濃度は、〔溶媒+窒素含有高分子化合物+塩〕を100重量%として1〜80重量%であるのが好ましく、3〜70重量%がより好ましい。窒素含有高分子化合物が1重量%未満であると、強度が不充分となり、また80重量%を超えるとキャリアの移動度が低下するので好ましくない。なお窒素含有高分子化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0086】
反応溶液中の求電子剤の濃度は、窒素含有高分子化合物の被反応性窒素原子のモル数に対する求電子部位のモル比が0.02〜2となるように設定するのが好ましく、より好ましくは0.05〜1.5である。なお求電子剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0087】
反応溶液中の塩の濃度は、0.05〜2mol/Lとするのが好ましく、0.1〜1.5mol/Lとするのがより好ましい。また電解質組成物にヨウ素(臭素塩のときは臭素)を添加して酸化還元対を予め生成させておくこともできるが、その場合の好ましいヨウ素または臭素の添加濃度は0.01〜0.3mol/Lである。
【0088】
電解質組成物において架橋重合体の占める割合は2〜80重量%であることが好ましい。
【0089】
電解質組成物からなる電解質層は、キャスト法、塗布法、浸漬法、含浸法、浸透法等により電極上に反応溶液層を形成し、次いで加熱反応により架橋せしめることにより、製造することができる。
【0090】
〔2〕光電変換素子
本発明の光電変換素子は、電荷移動層に上記電解質組成物を有するものである。好ましくは図1に示すように、導電層10、感光層20、電荷移動層30、対極導電層40の順に積層し、前記感光層20を色素22によって増感された半導体微粒子21と当該半導体微粒子21の間の空隙に充填された電解質23とから構成する。電解質23は、電荷移動層30に用いる材料と同じ成分からなる。また光電変換素子に強度を付与するため、導電層10側および/または対極導電層40側に、基板50を設けてもよい。以下本発明では、導電層10および任意で設ける基板50からなる層を「導電性支持体」、対極導電層40および任意で設ける基板50からなる層を「対極」と呼ぶ。この光電変換素子を外部回路に接続して仕事をさせるようにしたものが光電気化学電池である。なお、図1中の導電層10、対極導電層40、基板50は、それぞれ透明導電層10a、透明対極導電層40a、透明基板50aであっても良い。
【0091】
図1に示す本発明の光電変換素子において、色素22により増感された半導体微粒子21を含む感光層20に入射した光は色素22等を励起し、励起された色素22等中の高エネルギーの電子が半導体微粒子21の伝導帯に渡され、さらに拡散により導電層10に到達する。このとき色素22等の分子は酸化体となっている。光電気化学電池においては、導電層10中の電子が外部回路で仕事をしながら対極導電層40および電荷移動層30を経て色素22等の酸化体に戻り、色素22が再生する。感光層20は負極として働く。それぞれの層の境界(例えば導電層10と感光層20との境界、感光層20と電荷移動層30との境界、電荷移動層30と対極導電層40との境界等)では、各層の構成成分同士が相互に拡散混合していてもよい。以下各層について詳細に説明する。
【0092】
(A)導電性支持体
導電性支持体は、(1)導電層の単層、または(2)導電層および基板の2層からなる。強度や密封性が十分に保たれるような導電層を使用すれば、基板は必ずしも必要でない。
【0093】
(1)の場合、導電層として金属のように十分な強度が得られ、かつ導電性があるものを用いる。
【0094】
(2)の場合、感光層側に導電剤を含む導電層を有する基板を使用することができる。好ましい導電剤としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、炭素、導電性金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)等が挙げられる。導電層の厚さは0.02〜10μm程度が好ましい。
【0095】
導電性支持体は表面抵抗が低い程よい。好ましい表面抵抗の範囲は100Ω/□以下であり、さらに好ましくは40Ω/□以下である。表面抵抗の下限には特に制限はないが、通常0.1Ω/□程度である。
【0096】
導電性支持体側から光を照射する場合には、導電性支持体は実質的に透明であるのが好ましい。実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であるのが好ましく、70%以上が特に好ましい。
【0097】
透明導電性支持体としては、ガラスまたはプラスチック等の透明基板の表面に導電性金属酸化物からなる透明導電層を塗布または蒸着等により形成したものが好ましい。なかでもフッ素をドーピングした二酸化スズからなる導電層を低コストのソーダ石灰フロートガラスでできた透明基板上に堆積した導電性ガラスが好ましい。また低コストでフレキシブルな光電変換素子または太陽電池とするには、透明ポリマーフィルムに導電層を設けたものを用いるのがよい。透明ポリマーフィルムの材料としては、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオクタチックポリステレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ等がある。十分な透明性を確保するために、導電性金属酸化物の塗布量はガラスまたはプラスチックの支持体1m2当たり0.01〜100gとするのが好ましい。
【0098】
透明導電性支持体の抵抗を下げる目的で金属リードを用いるのが好ましい。金属リードの材質はアルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケル等の金属が好ましく、特にアルミニウムおよび銀が好ましい。金属リードは透明基板に蒸着、スパッタリング等で設置し、その上にフッ素をドープした酸化スズ、またはITO膜からなる透明導電層を設けるのが好ましい。また透明導電層を透明基板に設けた後、透明導電層上に金属リードを設置するのも好ましい。金属リード設置による入射光量の低下は好ましくは10%以内、より好ましくは1〜5%とする。
【0099】
(B)感光層
色素により増感された半導体微粒子を含む感光層において、半導体微粒子はいわゆる感光体として作用し、光を吸収して電荷分離を行い、電子と正孔を生ずる。色素増感された半導体微粒子では、光吸収およびこれによる電子および正孔の発生は主として色素において起こり、半導体微粒子はこの電子を受け取り、伝達する役割を担う。
【0100】
(1)半導体微粒子
半導体微粒子としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体半導体、III-V系化合物半導体、金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)、またはペロブスカイト構造を有する化合物(例えばチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等)等を使用することができる。
【0101】
好ましい金属のカルコゲニドとして、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、またはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモンまたはビスマスの硫化物、カドミウムまたは鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素または銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物等が挙げられる。
【0102】
本発明に用いる半導体の好ましい具体例は、Si、TiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO、Nb2O5、CdS、ZnS、PbS、Bi2S3、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe2等であり、より好ましくはTiO2、ZnO、SnO2、Fe2O3、WO3、Nb2O5、CdS、PbS、CdSe、InP、GaAs、CuInS2またはCuInSe2であり、特に好ましくはTiO2またはNb2O5であり、最も好ましくはTiO2である。
【0103】
本発明に用いる半導体は単結晶でも多結晶でもよい。変換効率の観点からは単結晶が好ましいが、製造コスト、原材料確保、エネルギーペイバックタイム等の観点からは多結晶が好ましい。
【0104】
半導体微粒子の粒径は一般にnm〜μmのオーダーであるが、投影面積を円に換算したときの直径から求めた一次粒子の平均粒径は5〜200nmであるのが好ましく、8〜100nmがより好ましい。また分散液中の半導体微粒子(二次粒子)の平均粒径は0.01〜100μmが好ましい。
【0105】
粒径分布の異なる2種類以上の微粒子を混合してもよく、この場合小さい粒子の平均サイズは5nm以下であるのが好ましい。入射光を散乱させて光捕獲率を向上させる目的で、粒径の大きな、例えば300nm程度の半導体粒子を混合してもよい。
【0106】
半導体微粒子の作製法としては、作花済夫の「ゾル−ゲル法の科学」アグネ承風社(1998年)、技術情報協会の「ゾル−ゲル法による薄膜コーティング技術」(1995年)等に記載のゾル−ゲル法、杉本忠夫の「新合成法ゲル−ゾル法による単分散粒子の合成とサイズ形態制御」、まてりあ,第35巻,第9号,1012〜1018頁(1996年)に記載のゲル−ゾル法が好ましい。またDegussa社が開発した塩化物を酸水素塩中で高温加水分解により酸化物を作製する方法も好ましい。
【0107】
半導体微粒子が酸化チタンの場合、上記ゾル-ゲル法、ゲル−ゾル法、塩化物の酸水素塩中での高温加水分解法はいずれも好ましいが、さらに清野学の「酸化チタン 物性と応用技術」技報堂出版(1997年)に記載の硫酸法および塩素法を用いることもできる。さらにゾル-ゲル法として、バーブらのジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソサエティー,第80巻,第12号,3157〜3171頁(1997年)に記載の方法や、バーンサイドらのケミカル・マテリアルズ,第10巻,第9号,2419〜2425頁に記載の方法も好ましい。
【0108】
(2)半導体微粒子層
半導体微粒子を導電性支持体上に塗布するには、半導体微粒子の分散液またはコロイド溶液を導電性支持体上に塗布する方法の他に、前述のゾル-ゲル法等を使用することもできる。光電変換素子の量産化、半導体微粒子液の物性、導電性支持体の融通性等を考慮した場合、湿式の製膜方法が比較的有利である。湿式の製膜方法としては、塗布法、印刷法が代表的である。
【0109】
半導体微粒子の分散液を作製する方法としては、前述のゾル-ゲル法の他に、乳鉢ですり潰す方法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法、あるいは半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法等が挙げられる。
【0110】
分散媒としては、水または各種の有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等)が挙げられる。分散の際、必要に応じてポリマー、界面活性剤、酸、またはキレート剤等を分散助剤として用いてもよい。
【0111】
塗布方法としては、アプリケーション系としてローラ法、ディップ法等、メータリング系としてエアーナイフ法、ブレード法等、またアプリケーションとメータリングを同一部分にできるものとして、特公昭58-4589号に開示されているワイヤーバー法、米国特許2681294号、同2761419号、同2761791号等に記載のスライドホッパ法、エクストルージョン法、カーテン法等が好ましい。また汎用機としてスピン法やスプレー法も好ましい。湿式印刷方法としては、凸版、オフセットおよびグラビアの3大印刷法をはじめ、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等が好ましい。これらの中から、液粘度やウェット厚さに応じて、好ましい製膜方法を選択する。
【0112】
半導体微粒子の分散液の粘度は半導体微粒子の種類や分散性、使用溶媒種、界面活性剤やバインダー等の添加剤により大きく左右される。高粘度液(例えば0.01〜500Poise)ではエクストルージョン法、キャスト法、スクリーン印刷法等が好ましい。また低粘度液(例えば0.1Poise以下)ではスライドホッパー法、ワイヤーバー法またはスピン法が好ましく、均一な膜にすることが可能である。なおある程度の塗布量があれば低粘度液の場合でもエクストルージョン法による塗布は可能である。このように塗布液の粘度、塗布量、支持体、塗布速度等に応じて、適宜湿式製膜方法を選択すればよい。
【0113】
半導体微粒子の層は単層に限らず、粒径の違った半導体微粒子の分散液を多層塗布したり、種類が異なる半導体微粒子(あるいは異なるバインダー、添加剤)を含有する塗布層を多層塗布したりすることもできる。一度の塗布で膜厚が不足の場合にも多層塗布は有効である。多層塗布には、エクストルージョン法またはスライドホッパー法が適している。また多層塗布をする場合は同時に多層を塗布しても良く、数回から十数回順次重ね塗りしてもよい。さらに順次重ね塗りであればスクリーン印刷法も好ましく使用できる。
【0114】
一般に半導体微粒子層の厚さ(感光層の厚さと同じ)が厚くなるほど単位投影面積当たりの担持色素量が増えるため、光の捕獲率が高くなるが、生成した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。したがって、半導体微粒子層の好ましい厚さは0.1〜100μmである。光電気化学電池に用いる場合、半導体微粒子層の厚さは1〜30μmが好ましく、2〜25μmがより好ましい。半導体微粒子の支持体1m2当たり塗布量は0.5〜400gが好ましく、5〜100gがより好ましい。
【0115】
半導体微粒子を導電性支持体上に塗布した後で半導体微粒子同士を電子的に接触させるとともに、塗膜強度の向上や支持体との密着性を向上させるために、加熱処理するのが好ましい。好ましい加熱温度の範囲は40℃以上700℃未満であり、より好ましくは100℃以上600℃以下である。また加熱時間は10分〜10時間程度である。ポリマーフィルムのように融点や軟化点の低い支持体を用いる場合、高温処理は支持体の劣化を招くため、好ましくない。またコストの観点からもできる限り低温であるのが好ましい。低温化は、先に述べた5nm以下の小さい半導体微粒子の併用や鉱酸の存在下での加熱処理等により可能となる。
【0116】
加熱処理後半導体微粒子の表面積を増大させたり、半導体微粒子近傍の純度を高め、色素から半導体粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
【0117】
半導体微粒子は多くの色素を吸着することができるように表面積の大きいものが好ましい。このため半導体微粒子の層を支持体上に塗布した状態での表面積は、投影面積に対して10倍以上であるのが好ましく、さらに100倍以上であるのが好ましい。この上限は特に制限はないが、通常1000倍程度である。
【0118】
(3)色素
感光層に使用する色素は金属錯体色素、フタロシアニン系の色素またはメチン色素が好ましい。光電変換の波長域をできるだけ広くし、かつ変換効率を上げるため、二種類以上の色素を混合することができる。また目的とする光源の波長域と強度分布に合わせるように、混合する色素とその割合を選ぶことができる。
【0119】
こうした色素は半導体微粒子の表面に対する適当な結合基(interlocking group)を有しているのが好ましい。好ましい結合基としては、COOH基、SO3H基、シアノ基、-P(O)(OH)2基、-OP(O)(OH)2基、またはオキシム、ジオキシム、ヒドロキシキノリン、サリチレートおよびα-ケトエノレートのようなπ伝導性を有するキレート化基が挙げられる。なかでもCOOH基、-P(O)(OH)2基、-OP(O)(OH)2基が特に好ましい。これらの基はアルカリ金属等と塩を形成していてもよく、また分子内塩を形成していてもよい。またポリメチン色素の場合、メチン鎖がスクアリリウム環やクロコニウム環を形成する場合のように酸性基を含有するなら、この部分を結合基としてもよい。
【0120】
以下、感光層に用いる好ましい色素を具体的に説明する。
【0121】
(a)金属錯体色素
色素が金属錯体色素である場合、金属原子はルテニウムRuであるのが好ましい。ルテニウム錯体色素としては、例えば米国特許4927721号、同4684537号、同5084365号、同5350644号、同5463057号、同5525440号、特開平7-249790号等に記載の錯体色素が挙げられる。
【0122】
さらに本発明で用いるルテニウム錯体色素は下記一般式(I):
(A1)pRu(B-a)(B-b)(B-c) ・・・(I)
により表されるのが好ましい。一般式(I)中、A1はCl、SCN、H2O、Br、I、CN、NCOおよびSeCNからなる群から選ばれた配位子を表し、pは0〜2の整数であり、好ましくは2である。B-a、B-bおよびB-cはそれぞれ独立に下記式B-1〜B-8:
【化31】
(ただし、R11は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜12の置換または無置換のアルキル基、炭素原子数7〜12の置換または無置換のアラルキル基、あるいは炭素原子数6〜12の置換または無置換のアリール基を表し、アルキル基およびアラルキル基のアルキル部分は直鎖状でも分岐状でもよく、またアリール基およびアラルキル基のアリール部分は単環でも多環(縮合環、環集合)でもよい。)により表される化合物から選ばれた有機配位子を表す。B-a、B-bおよびB-cは同一でも異なっていても良い。
【0123】
金属錯体色素の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0124】
【化32】
【0125】
【化33】
【0126】
【化34】
【0127】
(b)メチン色素
本発明で感光層に使用するメチン色素としては、下記一般式(II)、(III)、(IV)または(V)により表される色素が好ましい。
【0128】
1.一般式(II)により表される色素
【化35】
一般式(II)中、R21およびR25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基または複素環基を表し、R22〜R24はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R21〜R25は互いに結合して環を形成してもよく、L11およびL12はそれぞれ独立に窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはテルル原子を表し、n1およびn3はそれぞれ独立に0〜2の整数を表し、n2は1〜6の整数を表す。この色素は分子全体の電荷に応じて対イオンを有してもよい。
【0129】
上記アルキル基、アリール基および複素環基は置換基を有していてもよい。アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、またアリール基および複素環基は、単環でも、多環(縮合環、環集合)でもよい。またR21〜R25により形成される環は置換基を有していてもよく、また単環でも縮合環でもよい。
【0130】
2.一般式(III)により表される色素
【化36】
一般式(III)中、Zaは含窒素複素環を形成するために必要な非金属原子群を表し、R31はアルキル基またはアリール基を表す。Qaは一般式(III)で表される化合物がメチン色素として機能するために必要なメチン基またはポリメチン基を表し、Qaを介して多量体を形成してもよい。X3は対イオンを表し、n4は0〜10の整数である。
【0131】
上記Zaで形成される含窒素複素環は置換基を有していてもよく、単環であっても縮合環であってもよい。またアルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよく、アルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよく、またアリール基は単環でも多環(縮合環、環集合)でもよい。
【0132】
一般式(III)により表される色素のうち、下記一般式(III-a)〜(III-d):
【化37】
(ただし、R41〜R45、R51〜R54、R61〜R63、およびR71〜R73はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基または複素環基を表し、L21、L22、L31、L32、L41〜L45およびL51〜L56はそれぞれ独立に酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、-CRR'-または-NR-(RおよびR'は水素原子、アルキル基、アリール基または複素環基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)を表し、L33はO-、S-、Se-、Te-または-N-Rを表す。Y11、Y12、Y21、Y22、Y31およびY41はそれぞれ独立に置換基を表し、n5、n6およびn7はそれぞれ独立に1〜6の整数を表す。)により表される色素がより好ましい。
【0133】
一般式(III-a)〜(III-d)により表される化合物は、分子全体の電荷に応じて対イオンを有していてもよく、上記アルキル基、アリール基および複素環基は置換基を有していてもよく、またアルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよく、さらにアリール基および複素環基は単環でも多環(縮合環、環集合)でもよい。
【0134】
以上のようなポリメチン色素の具体例は、M.Okawara,T. Kitao,T.Hirasima, M.Matuoka著のOrganic Colorants(Elsevier)等に詳しく記載されている。
【0135】
3.一般式(IV)により表される色素
【化38】
一般式(IV)中、Qbは5または6員の含窒素ヘテロ環を形成するために必要な原子団を表し、Zbは3〜9員環のいずれかを形成するために必要な原子団を表し、L61、L62、L63、L64およびL65はそれぞれ独立に任意に置換基を有するメチン基を表し、n8は0〜4の整数であり、n9は0または1であり、R81は置換基を表し、X4は電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。
【0136】
Qbにより形成される環は縮環していてもよく、また置換基を有していてもよい。含窒素ヘテロ環の好ましい例としては、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾセレナゾール環、ベンゾテルラゾール環、2-キノリン環、4-キノリン環、ベンゾイミダゾール環、チアゾリン環、インドレニン環、オキサジアゾール環、チアゾール環、イミダゾール環が挙げられる、さらに好ましくはベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾセレナゾール環、2-キノリン環、4-キノリン環、インドレニン環であり、特に好ましくはベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、2-キノリン環、4-キノリン環、インドレニン環である。
【0137】
含窒素ヘテロ環上の置換基の例としては、カルボキシル基、ホスホニル基、スルホニル基、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I等)、シアノ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等)、アリーロキシ基(フェノキシ基等)、アルキル基(メチル基、エチル基、シクロプロピル基、シクロへキシル基、トリフルオロメチル基、メトキシエチル基、アリル基、ベンジル等)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基等)、アルケニル基(ビニル基、1-プロペニル基等)、アリール基、複素環基(フェニル基、チエニル基、トルイル基、クロロフェニル基等)等が挙げられる。
【0138】
Zbは炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子および水素原子から選ばれる原子により構成される。Zbにより形成される環は、好ましくは4〜6個の炭素により骨格が形成される環であり、より好ましくは以下(ア)〜(オ):
【化39】
のいずれかであり、最も好ましくは(ア)である。
【0139】
L61、L62、L63、L64およびL65がそれぞれ独立に任意に有する置換基としては、置換または無置換のアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜12、さらに好ましくは炭素原子数1〜7であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-カルボキシエチル基、ベンジル基等)、置換または無置換のアリール基(好ましくは炭素原子数6、8ないし10、より好ましくは炭素原子数6ないし8のものであり、例えばフェニル基、トルイル基、クロロフェニル基、o-カルボキシフェニル基等)、複素環基(例えばピリジル基、チエニル基、フラニル基、バルビツール酸等)、ハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等)、アミノ基(好ましくは炭素原子数1〜12、より好ましくは炭素原子数6〜12のものであり、例えばジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、4-アセチルピペラジン-1-イル基等)、オキソ基等が挙げられる。これらの置換基は互いに連結してシクロペンテン環、シクロヘキセン環、スクアリリウム環等の環を形成してもよく、助色団と環を形成してもよい。なおn8は0〜4の整数であり、好ましくは0〜3である。またn9は0または1である。
【0140】
置換基R81は好ましくは芳香族基(置換基を有してもよい)または脂肪族基(置換基を有してもよい)である。芳香族基の炭素原子数は好ましくは1〜16、より好ましくは5〜6である。脂肪族基の炭素原子数は好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6である。無置換の脂肪族基および芳香族基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0141】
色素が陽イオンまたは陰イオンであるか、あるいは正味のイオン電荷を持つかどうかは、その助色団および置換基に依存し、分子全体の電荷は対イオンX4により中和される。対イオンX4として典型的な陽イオンは無機または有機のアンモニウムイオン(テトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン等)およびアルカリ金属イオンであり、一方、陰イオンは無機または有機の陰イオンのいずれであってもよく、ハロゲン化物イオン(フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)、置換アリールスルホン酸イオン(p-トルエンスルホン酸イオン、p-クロロベンゼンスルホン酸イオン等)、アリールジスルホン酸イオン(1,3-ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5-ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6-ナフタレンジスルホン酸イオン等)、アルキル硫酸イオン(メチル硫酸イオン等)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等である。
【0142】
さらに電荷均衡対イオンとして、イオン性ポリマー、あるいは色素と逆電荷を有する他の色素を用いてもよいし、例えばビスベンゼン-1,2-ジチオラトニッケル(III)のような金属錯イオンを使用してもよい。
【0143】
4.一般式(V)により表される色素
【化40】
一般式(V)中、Qcは少なくとも4官能以上の芳香族基を表し、L71およびL72はそれぞれ独立に硫黄原子、セレン原子またはCRR'(ただし、RおよびR'はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基であり、同じでも異なっていてもよい。)を表し、同一でも異なっていも良く、好ましくはそれぞれ独立に硫黄原子またはCRR'であり、より好ましくはCRR'である。またR91およびR92はそれぞれ独立にアルキル基または芳香族基を表し、Y51およびY52はそれぞれ独立にポリメチン色素を形成するのに必要な非金属原子群を表す。X5は対イオンを表す。
【0144】
芳香族基Qcの例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素から誘導されるものや、アントラキノン、カルバゾール、ピリジン、キノリン、チオフェン、フラン、キサンテン、チアントレン等の芳香族へテロ環から誘導されるものが挙げられ、これらは連結部分以外に置換基を有していても良い。Qcは好ましくは芳香族炭化水素の誘導基であり、より好ましくはベンゼンまたはナフタレンの誘導基である。
【0145】
Y51およびY52によりいかなるメチン色素を形成することも可能であるが、好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色素、3核メロシアニン色素、アロポーラー色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素等が挙げられる。シアニン色素には色素を形成するメチン鎖上の置換基がスクアリウム環やクロコニウム環を形成したものも含まれる。これらの色素の詳細については、F.M.Harmer著「Heterocyclic Compounds-Cyanine Dyes and Related Compounds」,John Wiley & Sons社,ニューヨーク,ロンドン,1964年刊、D.M.Sturmer著「Heterocyclic Compounds-Special Topics in Heterocyclic Chemistry」,第18章,第14節,482〜515頁等に記載されている。またシアニン色素、メロシアニン色素およびロダシアニン色素は、米国特許第5,340,694号,第21〜22頁の(XI)、(XII)および(XIII)に示されているものが好ましい。またY51およびY5により形成されるポリメチン色素の少なくともいずれか一方のメチン鎖部分にスクアリリウム環を有するものが好ましく、両方に有するものがさらに好ましい。
【0146】
R91およびR92は芳香族基または脂肪族基であり、これらは置換基を有していてもよい。芳香族基の炭素原子数は好ましくは5〜16、より好ましくは5〜6である。脂肪族基の炭素原子数は好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6である。無置換の脂肪族基、芳香族基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0147】
R91、R92、Y51およびY52のうち少なくとも一つは酸性基を有するのが好ましい。ここで酸性基とは解離性のプロトンを有する置換基であり、例としてはカルボン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、ホウ酸基等が挙げられ、好ましくはカルボン酸基である。またこのような酸性基上のプロトンは解離していても良い。
【0148】
一般式(II)〜(V)により表されるポリメチン色素の具体例(1)〜(43)およびS-1〜S-42を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0149】
【化41】
【0150】
【化42】
【0151】
【化43】
【0152】
【化44】
【0153】
【化45】
【0154】
【化46】
【0155】
【化47】
【0156】
【化48】
【0157】
【化49】
【0158】
【化50】
【0159】
【化51】
【0160】
【化52】
【0161】
【化53】
【0162】
【化54】
【0163】
【化55】
【0164】
【化56】
【0165】
【化57】
【0166】
【化58】
【0167】
【化59】
【0168】
【化60】
【0169】
【化61】
【0170】
一般式(II)、(III)で表される化合物は、F.M.Harmer著「Heterocyclic Compounds-Cyanine Dyes and Related Compounds」,John Wiley & Sons社,ニューヨーク,ロンドン,1964年刊、D.M.Sturmer著「Heterocyclic Compounds-Special Topics in Heterocyclic Chemistry」,第18章,第14節,第482〜515頁,John Wiley & Sons社,ニューヨーク,ロンドン,1977年刊、「Rodd's Chemistry of Carbon Compounds」,2nd.Ed., vol.IV, part B,第15章,第369〜422頁,Elsevier Science Publishing Company Inc.社,ニューヨーク,1977年刊、英国特許第1,077,611号等に記載の方法により合成することができる。
【0171】
一般式(IV)により表される化合物は、Dyes and Pigments,第21巻,227〜234頁等の記載を参考にして合成することができる。また一般式(V)により表される化合物は、Ukrainskii Khimicheskii Zhurnal,第40巻,第3号,第253〜258頁、Dyes and Pigments,第21巻,第227〜234頁およびこれらの文献中に引用された文献の記載を参考にして合成することができる。
【0172】
(4)半導体微粒子への色素の吸着
半導体微粒子に色素を吸着させるには、色素の溶液中に良く乾燥した半導体微粒子層を有する導電性支持体を浸漬するか、色素の溶液を半導体微粒子層に塗布する方法を用いることができる。前者の場合、浸漬法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法等が使用可能である。なお浸漬法の場合、色素の吸着は室温で行ってもよいし、特開平7-249790号に記載されているように加熱還流して行ってもよい。また後者の塗布方法としては、ワイヤーバー法、スライドホッパ法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法等があり、印刷方法としては、凸版、オフセット、グラビア、スクリーン印刷等がある。溶媒は、色素の溶解性に応じて適宜選択できる。例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコール等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、3-メトキシプロピオニトリル等)、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ジメチルスルホキシド、アミド類(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセタミド等)、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、3-メチルオキサゾリジノン、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭酸エステル類(炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等)、ケトン類(アセトン、2-ブタノン、シクロヘキサノン等)、炭化水素(へキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン等)やこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0173】
色素の溶液の粘度についても、半導体微粒子層の形成時と同様に、高粘度液(例えば0.01〜500Poise)ではエクストルージョン法の他に各種印刷法が適当であり、また低粘度液(例えば0.1Poise以下)ではスライドホッパー法、ワイヤーバー法またはスピン法が適当であり、いずれも均一な膜にすることが可能である。
【0174】
このように色素の塗布液の粘度、塗布量、導電性支持体、塗布速度等に応じて、適宜色素の吸着方法を選択すればよい。塗布後の色素吸着に要する時間は、量産化を考えた場合、なるべく短い方がよい。
【0175】
未吸着の色素の存在は素子性能の外乱になるため、吸着後速やかに洗浄により除去するのが好ましい。湿式洗浄槽を使い、アセトニトリル等の極性溶剤、アルコール系溶剤のような有機溶媒で洗浄を行うのが好ましい。また色素の吸着量を増大させるため、吸着前に加熱処理を行うのが好ましい。加熱処理後、半導体微粒子表面に水が吸着するのを避けるため、常温に戻さずに40〜80℃の間で素早く色素を吸着させるのが好ましい。
【0176】
色素の全使用量は、導電性支持体の単位表面積(1m2)当たり0.01〜100mmolが好ましい。また色素の半導体微粒子に対する吸着量は、半導体微粒子1g当たり0.01〜1mmolであるのが好ましい。このような色素の吸着量とすることにより、半導体における増感効果が十分に得られる。これに対し、色素が少なすぎると増感効果が不十分となり、また色素が多すぎると、半導体に付着していない色素が浮遊し、増感効果を低減させる原因となる。
【0177】
光電変換の波長域をできるだけ広くするとともに変換効率を上げるため、二種類以上の色素を混合することもできる。この場合、光源の波長域と強度分布に合わせるように、混合する色素およびその割合を選ぶのが好ましい。
【0178】
会合のような色素同士の相互作用を低減する目的で、無色の化合物を半導体微粒子に共吸着させてもよい。共吸着させる疎水性化合物としてはカルボキシル基を有するステロイド化合物(例えばケノデオキシコール酸)等が挙げられる。また紫外線吸収剤を併用することもできる。
【0179】
余分な色素の除去を促進する目的で、色素を吸着した後にアミン類を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。好ましいアミン類としてはピリジン、4-t-ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。これらが液体の場合はそのまま用いてもよいし、有機溶媒に溶解して用いてもよい。
【0180】
(C)電荷移動層
電荷移動層は色素の酸化体に電子を補充する機能を有する層である。電荷移動層に前記電解質組成物を用いるが、さらに固体電解質や正孔(ホール)輸送材料を併用することもできる。
【0181】
電荷移動層を形成するには、上記と同様に、キャスト法、塗布法、浸漬法、含浸法等により感光層上に電解質溶液を塗布し、次いで加熱反応により架橋すればよい。好ましい態様によれば、図1に示すように、感光層20中の空隙を完全に埋める量より多い電解質を含有する溶液を塗布するので、得られる電解質層は実質的に導電性支持体の導電層10との境界から対極導電層40との境界までの間に存在すると言える。ここで色素増感半導体を含む感光層20との境界から対極40との境界までの間に存在する電解質層を電荷移動層30とすると、その厚さは0.001〜200μmであるのが好ましく、0.1〜100μmであるのがより好ましく、0.1〜50μmであるのが特に好ましい。電荷移動層30が0.001μmより薄いと感光層中の半導体微粒子21が対極導電層40に接触するおそれがあり、また200μmより厚いと電荷の移動距離が大きくなりすぎ、素子の抵抗が大きくなる。なお感光層20+電荷移動層30の厚さ(実質的に電解質組成物の厚さに等しい)については、0.1〜300μmが好ましく、1〜130μmがより好ましく、2〜75μmが特に好ましい。
【0182】
(D)対極
対極は、光電変換素子を光電気化学電池としたとき、光電気化学電池の正極として作用するものである。対極は前記の導電性支持体と同様に、導電性材料からなる対極導電層の単層構造でもよいし、対極導電層と支持基板から構成されていてもよい。対極導電層に用いる導電材としては、金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、炭素、または導電性金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)が挙げられる。対極の好ましい支持基板の例は、ガラスまたはプラスチックであり、これに上記の導電剤を塗布または蒸着して用いる。対極導電層の厚さは特に制限されないが、3nm〜10μmが好ましい。対極導電層が金属製である場合は、その厚さは好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは5nm〜3μmの範囲である。
【0183】
導電性支持体と対極のいずれか一方または両方から光を照射してよいので、感光層に光が到達するためには、導電性支持体と対極の少なくとも一方が実質的に透明であれば良い。発電効率の向上の観点からは、導電性支持体を透明にして、光を導電性支持体側から入射させるのが好ましい。この場合対極は光を反射する性質を有するのが好ましい。このような対極としては、金属または導電性の酸化物を蒸着したガラスまたはプラスチック、あるいは金属薄膜を使用できる。
【0184】
対極を設ける手順としては、(イ)電荷移動層を形成した後でその上に設ける場合と、(ロ)色素増感半導体微粒子の層の上にスペーサーを介して対極を配置した後でその空隙に電解質溶液を充填する場合の2通りある。(イ)の場合、電荷移動層上に直接導電材を塗布、メッキまたは蒸着(PVD、CVD)するか、導電層を有する基板の導電層側を貼り付ける。また(ロ)の場合、色素増感半導体微粒子層の上にスペーサーを介して対極を組み立てて固定し、得られた組立体の開放端を電解質溶液に浸漬し、毛細管現象または減圧を利用して色素増感半導体微粒子層と対極との空隙に電解質溶液を浸透させる。また、導電性支持体の場合と同様に、特に対極が透明の場合には、対極の抵抗を下げる目的で金属リードを用いるのが好ましい。なお、好ましい金属リードの材質および設置方法、金属リード設置による入射光量の低下等は導電性支持体の場合と同じである。
【0185】
(E)その他の層
電極として作用する導電性支持体および対極の一方または両方に、保護層、反射防止層等の機能性層を設けても良い。このような機能性層を多層に形成する場合、同時多層塗布法や逐次塗布法を利用できるが、生産性の観点からは同時多層塗布法が好ましい。同時多層塗布法では、生産性および塗膜の均一性を考えた場合、スライドホッパー法やエクストルージョン法が適している。これらの機能性層の形成には、その材質に応じて蒸着法や貼り付け法等を用いることができる。
【0186】
(F)光電変換素子の内部構造の具体例
上述のように、光電変換素子の内部構造は目的に合わせ様々な形態が可能である。大きく2つに分ければ、両面から光の入射が可能な構造と、片面からのみ可能な構造が可能である。図2〜図9に本発明に好ましく適用できる光電変換素子の内部構造を例示する。
【0187】
図2は、透明導電層10aと透明対極導電層40aとの間に、感光層20と、電荷移動層30とを介在させたものであり、両面から光が入射する構造となっている。図3は、透明基板50a上に一部金属リード11を設け、さらに透明導電層10aを設け、下塗り層60、感光層20、電荷移動層30および対極導電層40をこの順で設け、さらに支持基板50を配置したものであり、導電層側から光が入射する構造となっている。図4は、支持基板50上にさらに導電層10を有し、下塗り層60を介して感光層20を設け、さらに電荷移動層30と透明対極導電層40aとを設け、一部に金属リード11を設けた透明基板50aを、金属リード11側を内側にして配置したものであり、対極側から光が入射する構造である。図5は、透明基板50a上に一部金属リード11を設け、さらに透明導電層10aを設けたものの間に下塗り層60と感光層20と電荷移動層30とを介在させたものであり、両面から光が入射する構造である。図6は、透明基板50a上に透明導電層10aを有し、下塗り層60を介して感光層20を設け、さらに電荷移動層30および対極導電層40を設け、この上に支持基板50を配置したものであり導電層側から光が入射する構造である。図7は、支持基板50上に導電層10を有し、下塗り層60を介して感光層20を設け、さらに電荷移動層30および透明対極導電層40aを設け、この上に透明基板50aを配置したものであり、対極側から光が入射する構造である。図8は、透明基板50a上に透明導電層10aを有し、下塗り層60を介して感光層20を設け、さらに電荷移動層30および透明対極導電層40aを設け、この上に透明基板50aを配置したものであり、両面から光が入射する構造となっている。図9は、支持基板50上に導電層10を設け、下塗り層60を介して感光層20を設け、さらに固体の電荷移動層30を設け、この上に一部対極導電層40または金属リード11を有するものであり、対極側から光が入射する構造となっている。
【0188】
〔3〕光電気化学電池
本発明の光電気化学電池は、上記光電変換素子に外部回路で仕事をさせるようにしたものである。光電気化学電池は構成物の劣化や内容物の揮散を防止するために、側面をポリマーや接着剤等で密封するのが好ましい。導電性支持体および対極にリードを介して接続される外部回路自体は公知のもので良い。
【0189】
〔4〕色素増感型太陽電池
本発明の光電変換素子をいわゆる太陽電池に適用する場合、そのセル内部の構造は基本的に上述した光電変換素子の構造と同じである。以下、本発明の光電変換素子を用いた太陽電池のモジュール構造について説明する。
【0190】
本発明の色素増感型太陽電池は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様のモジュール構造をとりうる。太陽電池モジュールは、一般的には金属、セラミック等の支持基板の上にセルが構成され、その上を充填樹脂や保護ガラス等で覆い、支持基板の反対側から光を取り込む構造をとるが、支持基板に強化ガラス等の透明材料を用い、その上にセルを構成してその透明の支持基板側から光を取り込む構造とすることも可能である。具体的には、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイプ、ポッティングタイプと呼ばれるモジュール構造、アモルファスシリコン太陽電池などで用いられる基板一体型モジュール構造等が知られている。本発明の色素増感型太陽電池も使用目的や使用場所および環境により、適宜これらのモジュール構造を選択できる。
【0191】
代表的なスーパーストレートタイプあるいはサブストレートタイプのモジュールは、片側または両側が透明で反射防止処理を施された支持基板の間に一定間隔にセルが配置され、隣り合うセル同士が金属リードまたはフレキシブル配線等によって接続され、外縁部に集電電極が配置されており、発生した電力を外部に取り出される構造となっている。基板とセルの間には、セルの保護や集電効率向上のため、目的に応じエチレンビニルアセテート(EVA)等様々な種類のプラスチック材料をフィルムまたは充填樹脂の形で用いてもよい。また、外部からの衝撃が少ないところなど表面を硬い素材で覆う必要のない場所において使用する場合には、表面保護層を透明プラスチックフィルムで構成し、または上記充填樹脂を硬化させることによって保護機能を付与し、片側の支持基板をなくすことが可能である。支持基板の周囲は、内部の密封およびモジュールの剛性を確保するため金属製のフレームでサンドイッチ状に固定し、支持基板とフレームの間は封止材料で密封シールする。また、セルそのものや支持基板、充填材料および封止材料に可撓性の素材を用いれば、曲面の上に太陽電池を構成することもできる。
【0192】
スーパーストレートタイプの太陽電池モジュールは、例えば、基板供給装置から送り出されたフロント基板をベルトコンベヤ等で搬送しながら、その上にセルを封止材料−セル間接続用リード線、背面封止材料等と共に順次積層した後、背面基板または背面カバーを乗せ、外縁部にフレームをセットして作製することができる。
【0193】
一方、サブストレートタイプの場合、基板供給装置から送り出された支持基板をベルトコンベヤ等で搬送しながら、その上にセルをセル間接続用リード線、封止材料等と共に順次積層した後、フロントカバーを乗せ、周縁部にフレームをセットして作製することができる。
【0194】
本発明の光電変換素子を基板一体型モジュール化した構造の一例を図10に示す。図10は、透明な基板50aの一方の面上に透明な導電層10aを有し、この上にさらに色素吸着TiO2を含有した感光層20、電荷移動層30および金属対極導電層40を設けたセルがモジュール化されており、基板50aの他方の面には反射防止層70が設けられている構造を表す。このような構造とする場合、入射光の利用効率を高めるために、感光層20の面積比率(光の入射面である基板50a側から見たときの面積比率)を大きくした方が好ましい。
【0195】
図10に示した構造のモジュールの場合、基板上に透明導電層、感光層、電荷移動層、対極等が立体的かつ一定間隔で配列されるように、選択メッキ、選択エッチング、CVD、PVD等の半導体プロセス技術、あるいはパターン塗布または広幅塗布後のレーザースクライビング、プラズマCVM(Solar Energy Materials and Solar Cells, 48, p373-381等に記載)、研削等の機械的手法等によりパターニングすることで所望のモジュール構造を得ることができる。
【0196】
以下にその他の部材や工程について詳述する。
【0197】
封止材料としては、耐候性付与、電気絶縁性付与、集光効率向上、セル保護性(耐衝撃性)向上等の目的に応じ液状EVA(エチレンビニルアセテート)、フィルム状EVA、フッ化ビニリデン共重合体とアクリル樹脂の混合物等、様々な材料が使用可能である。モジュール外縁と周縁を囲むフレームとの間は、耐候性および防湿性が高い封止材料を用いるのが好ましい。また、透明フィラーを封止材料に混入して強度や光透過率を上げることができる。
【0198】
封止材料をセル上に固定するときは、材料の物性に合った方法を用いる。フィルム状の材料の場合はロール加圧後加熱密着、真空加圧後加熱密着等、液またはペースト状の材料の場合はロールコート、バーコート、スプレーコート、スクリーン印刷等の様々な方法が可能である。
【0199】
支持基板としてPET、PEN等の可撓性素材を用いる場合は、ロール状の支持体を繰り出してその上にセルを構成した後、上記の方法で連続して封止層を積層することができ、生産性が高い。
【0200】
発電効率を上げるために、モジュールの光取り込み側の基板(一般的には強化ガラス)の表面には反射防止処理が施される。反射防止処理方法としては、反射防止膜をラミネートする方法、反射防止層をコーティングする方法がある。
【0201】
また、セルの表面をグルービングまたはテクスチャリング等の方法で処理することによって、入射した光の利用効率を高めることが可能である。
【0202】
発電効率を上げるためには、光を損失なくモジュール内に取り込むことが最重要であるが、光電変換層を透過してその内側まで到達した光を反射させて光電変換層側に効率良く戻すことも重要である。光の反射率を高める方法としては、支持基板面を鏡面研磨した後、AgやAl等を蒸着またはメッキする方法、セルの最下層にAl−MgまたはAl−Tiなどの合金層を反射層として設ける方法、アニール処理によって最下層にテクスチャー構造を作る方法等がある。
【0203】
また、発電効率を上げるためにはセル間接続抵抗を小さくすることが、内部電圧降下を抑える意味で重要である。セル同士を接続する方法としては、ワイヤーボンディング、導電性フレキシブルシートによる接続が一般的であるが、導電性粘着テープや導電性接着剤を用いてセルを固定すると同時に電気的に接続する方法、導電性ホットメルトを所望の位置にパターン塗布する方法等もある。
【0204】
ポリマーフィルム等のフレキシブル支持体を用いた太陽電池の場合、ロール状の支持体を送り出しながら前述の方法によって順次セルを形成し、所望のサイズに切断した後、周縁部をフレキシブルで防湿性のある素材でシールすることにより電池本体を作製できる。また、Solar Energy Materials and Solar Cells, 48, p383-391記載の「SCAF」とよばれるモジュール構造とすることもできる。更に、フレキシブル支持体を用いた太陽電池は曲面ガラス等に接着固定して使用することもできる。
【0205】
以上詳述したように、使用目的や使用環境に合わせて様々な形状・機能を持つ太陽電池を製作することができる。
【0206】
【実施例】
本発明を以下の実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0207】
1.二酸化チタン分散液の調製
内側をテフロンコーティングした内容積200mlのステンレス製容器に二酸化チタン微粒子(日本アエロジル(株)製、Degussa P-25)15g、水45g、分散剤(アルドリッチ社製、Triton X-100)1g、直径0.5mmのジルコニアビーズ(ニッカトー社製)30gを入れ、サンドグラインダーミル(アイメックス社製)を用いて1500rpmで2時間分散処理した。得られた分散液からジルコニアビーズをろ過により除去した。得られた分散液中の二酸化チタン微粒子の平均粒径は2.5μmであった。なお粒径はMALVERN社製のマスターサイザーにて測定した。
【0208】
2.色素を吸着したTiO2電極の作成
フッ素をドープした酸化スズ層を有する導電性ガラス(旭硝子(株)製TCOガラス-Uを20mm×20mmの大きさに切断加工したもの、表面抵抗約30Ω/□)の導電面側にガラス棒を用いて上記分散液を塗布した。半導体微粒子の塗布量は20g/m2とした。その際、導電面側の一部(端から3mm)に粘着テープを張ってスペーサーとし、粘着テープが両端に来るようにガラスを並べて一度に8枚ずつ塗布した。塗布後、粘着テープを剥離し、室温で1日間風乾した。次にこのガラスを電気炉(ヤマト科学(株)製マッフル炉FP-32型)に入れ、450℃にて30分間焼成し、TiO2電極を得た。この電極を取り出し冷却した後、色素のエタノール溶液(3×10-4mol/l)に3時間浸漬した。色素の染着したTiO2電極を4-t-ブチルピリジンに15分間浸漬した後、エタノールで洗浄し自然乾燥した。得られた感光層の厚さは10μmであった。色素の塗布量は、色素の種類に応じ、適宜0.1〜10mモル/m2の範囲から選択した。
【0209】
3-a.溶媒系電解質を用いる光電気化学電池の作製
表1に記載の溶媒を用いて濃度0.5mol/lの電解質塩および濃度0.05mol/lのヨウ素を含んだ溶液を調製した。この溶液に表1に記載の重量組成比(溶媒+窒素含有高分子+塩を100重量%とした場合の重量組成比)で窒素含有高分子化合物(2-4)を加え、さらに該高分子化合物に対して表1に記載のモル比(窒素含有高分子化合物の反応性窒素原子に対する求電子部位のモル比)で求電子剤(1-2)を混合し均一溶液とした。この溶液を、作製した色素増感TiO2電極基板(20mm×20mm)と、これと同じ大きさの白金蒸着ガラスを重ね合わせた隙間に毛細管現象を利用して染み込ませ、TiO2電極中に導入した。この後、25℃にて12時間放置し架橋反応を行い、図1に示す、導電性ガラスからなる導電性支持体層(ガラスの透明基板50a上に透明導電層10aが設層されたもの)、色素増感TiO2の感光層20、電荷移動層30、白金からなる対極導電層40およびガラスの透明基板50aを順に積層しエポキシ系封止剤で封止した光電気化学電池を作製した。上述の工程を色素と電解質組成物の組み合わせを表1に記載したように変更して行い、実施例1〜18の光電気化学電池を作製した。各光電気化学電池に用いた電解質組成物の詳細および用いた色素をあわせて表1に示す。なお、表1中のNMOは3-メチル-2-オキサゾリジノンを表し、PCはプロピレンカーボネートを表し、ANはアセトニトリルを表し、MHImは1-メチル-3-ヘキシルイミダゾリウムのヨウ素塩を表し、MBImは1-メチル-3-ブチルイミダゾリウムのヨウ素塩を表す。
【0210】
【表1】
【0211】
3-b.室温溶融塩電解質を用いる光電気化学電池の作製
表2に記載した重量組成で、下記溶融塩:
【化62】
とヨウ素を混合し、さらに表2に記載の重量組成比で窒素含有高分子化合物(2-4)と該高分子化合物に対して表2に記載のモル比(窒素含有高分子化合物の反応性窒素原子に対する求電子部位のモル比)で求電子剤(1-2)を混合し均一の液体とした。この電解質5μlを、作製した色素増感TiO2電極基板上に塗布した。次に電解質を塗布したTiO2電極基板を減圧下にて30分間放置することにより電解質をTiO2多孔質層内に浸透させた後、このTiO2電極基板と同じ大きさの白金蒸着ガラスを重ね合わせ、さらに50℃にて10時間放置して架橋反応を行い、光電気化学電池を得た。上述の工程を色素と電解質組成物の組み合わせを表2に記載されているように変更して行い、実施例19〜22の光電気化学電池を得た。
【0212】
3-c.溶融塩電解質比較用光電気化学電池
窒素含有高分子と求電子剤を用いない以外は3-b.と同様の方法により、表2に記載されている色素と電解質組成を組み合わせた、比較例1および2の光電気化学電池を作製した。
【0213】
上記実施例19〜22、ならびに比較例1および2の各光電気化学電池に用いた電解質組成物の詳細および用いた色素をあわせて表2に示す。
【0214】
【表2】
【0215】
3-d.比較用光電気化学電池の作製(比較例3:溶液系電解質)
電解液に、アセトニトリルと3-メチル-2-オキサゾリジノンの混合物(体積比90/10)を溶媒として用いた、ヨウ素(濃度0.05mol/l)およびヨウ化リチウム(濃度0.5mol/l)の溶液を用いる以外は3-a.と同様の方法により比較例3の光電気化学電池を作製した。
【0216】
3-e.比較用光電気化学電池(比較例4:日本化学会誌,7,484頁(1997)記載の電解質)
作製した色素増感TiO2電極基板上に、ヘキサエチレングリコールメタクリル酸エステル(日本油脂化学社製ブレンマーPE-350)500mgと、1gのプロピレンカーボネートと、2mgの重合開始剤AIBNを含有した混合液に、500mgのヨウ化リチウムを溶解し、10分間真空脱気し、塗布した。次に、前記混合溶液を塗布したTiO2電極を減圧下に置くことで、TiO2多孔質層内の気泡を除きモノマーの浸透を促した後、60℃で1時間加熱し重合させた。重合後電極を取り出し、室温でヨウ素雰囲気下に30分間曝して高分子化合物中にヨウ素を拡散させた後、白金を蒸着した対向電極と重ね合せて比較例4の光電気化学電池を得た。
【0217】
4.光電変換効率の測定
500Wのキセノンランプ(ウシオ電気(株)製)の光をAM1.5フィルター(Oriel社製)およびシャープカットフィルター(Kenko L-42)を通すことにより紫外線を含まない模擬太陽光を発生させた。この光の強度は86mW/cm2であった。この模擬太陽光を、45℃にて作製した実施例および比較例の各光電気化学電池に照射し、発生した電気を電流電圧測定装置(ケースレーSMU238型)にて測定した。これにより求められた各光電気化学電池の開放電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、形状因子(FF)、変換効率(η)および360時間連続照射後の短絡電流密度の低下率を一括して表3に記載した。
【0218】
【表3】
【0219】
比較例3の光電気化学電池と比べ本発明の光電気化学電池では光電変換特性の劣化が少ないことがわかる。また、比較例4の光電気化学電池と比べ本発明の光電気化学電池では短絡電流密度が大きく、光電変換特性に優れていることが明らかである。特に室温溶融塩を使用した光電気化学電池では、短絡電流密度はやや下がるものの劣化が著しく少ない。
【0220】
【発明の効果】
耐久性および電荷輸送能に優れた電解質組成物を用いることにより、光電変換特性に優れ、経時での特性劣化が少ない光電変換素子および光電気化学電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図2】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図3】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図4】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図5】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図6】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図7】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図8】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図9】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図10】 本発明の光電変換素子を用いた基板一体型太陽電池モジュールの構造の一例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
10・・・導電層
10a・・・透明導電層
11・・・金属リード
20・・・感光層
21・・・半導体微粒子
22・・・色素
23・・・電解質
30・・・電荷移動層
40・・・対極導電層
40a・・・透明対極導電層
50・・・基板
50a・・・透明基板
60・・・下塗り層
70・・・反射防止層
Claims (4)
- 導電層、感光層、電荷移動層および対極を有する光電変換素子において、前記電荷移動層は下記一般式(5):
または
を表す。)により表される化合物に、下記一般式(6):
- 請求項1に記載の光電変換素子において、前記感光層は色素によって増感された微粒子半導体を含有することを特徴とする光電変換素子。
- 請求項2に記載の光電変換素子において、前記微粒子半導体は二酸化チタン微粒子半導体であることを特徴とする光電変換素子。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の光電変換素子からなることを特徴とする光電気化学電池。
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