以下に、本発明をより詳細に説明する。まず本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物について、説明する。本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物は、疎水性ポリイソシアネート(A)とノニオン性基及びイソシアネート基を含有するビニル系重合体(B)とを含むものである。また、本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物において、該ノニオン性基を含有するビニル系重合体(B)は、該疎水性ポリイソシアネート(A)を水性媒体中に分散する能力を有する。
本発明において疎水性ポリイソシアネート(A)とは、分子中に公知慣用の各種のアニオン性基、カチオン性基及びノニオン性基等の親水性基を有しないポリイソシアネートを指称する。かかる疎水性ポリイソシアネート(A)の代表的なものとしては、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、エチル(2,6−ジイソシアナート)ヘキサノエート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの如き脂肪族ジイソシアネート;1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアナート−4−イソシアナートメチルオクタン、2−イソシアナートエチル(2,6−ジイソシアナート)ヘキサノエートの如き脂肪族トリイソシアネート;
1,3−または1,4−ビス(イソシアナートメチルシクロヘキサン)、1,3−または1,4−ジイソシアナートシクロヘキサン、3,5,5−トリメチル(3−イソシアナートメチル)シクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,5−または2,6−ジイソシアナートメチルノルボルナンの如き脂環族ジイソシアネート;2,5−または2,6−ジイソシアナートメチル−2−イソシネートプロピルノルボルナンの如き脂環族トリイソシアネート;m−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’α’−テトラメチル−m−キシリレンジイソシアネートの如きアラルキレンジイソシアネート;
m−またはp−フェニレンジイソシアネート、トリレン−2,4−または2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナート−3,3’−ジメチルジフェニル、3−メチル−ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネートの如き芳香族ジイソシアネート; トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアナートフェニル)チオホスフェートの如き芳香族トリイソシアネート;
前記した如き各種のジイソシアネートあるいはトリイソシアネートのイソシアネート基どうしを環化二量化して得られるウレトジオン構造を有するジイソシアネートあるいはポリイソシアネート;前記した如き各種のジイソシアネートあるいはトリイソシアネートのイソシアネート基どうしを環化三量化して得られるイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート;前記した如き各種のジイソシアネートあるいはトリイソシアネートを水と反応させることにより得られるビュレット構造を有するポリイソシアネート;前記した如き各種のジイソシアネートあるいはトリイソシアネートを二酸化炭素と反応せしめて得られるオキサダイアジントリオン構造を有するポリイソシアネート;アロファネート構造を有するポリイソシアネート等が挙げられる。
そして、これらの中では、水の中でのイソシアネート基の安定性、水分散性ポリイソシアネート組成物を含有する硬化性組成物を塗料として用いた場合の塗膜の耐候性の点で、脂肪族系あるいは脂環族系のジイソシアネートまたはトリイソシアネート、アラルキレンジイソシアネートあるいは、それらから誘導されるポリイソシアネートが好ましい。これらのポリイソシアネートのうち、耐候性、耐久性に優れた水性硬化性組成物を得るためには、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビュレット構造を有するポリイソシアネート、ウレトジオン構造を有するポリソシアネート、アロファネート構造を有するポリイソシアネート、ジイソシアネートと3価以上の多価アルコールを反応して得られるポリイソシアネート等の3官能以上のポリイソシアネートが好ましい。なお、疎水性ポリイソシアネート(A)に加えて、本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物の水に対する安定性を損なわない範囲内で、親水性基を有するポリソシアネートを併用することができる。
本発明に使用するノニオン性基及びイソシアネート基を含有するビニル系重合体(B)[以下NCO基含有ビニル系重合体(B)という]の代表的なものとしては、アクリル系重合体、フルオロオレフィン系重合体、ビニルエステル系重合体、芳香族ビニル系重合体またはポリオレフィン系重合体の如きからなるものが挙げられる。これらのうち、本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物を硬化剤として使用し、アクリル系重合体をベース樹脂として使用する場合、相溶性の点で、アクリル系重合体、フルオロオレフィン系重合体が好ましい。
NCO基含有ビニル系重合体(B)に導入されるノニオン性基としては、公知慣用の各種のものがあるが、好ましいものとしては、末端がアルコキシ基、置換アルコキシ基、エステル基、もしくはカーバメート基の如き各種の基で封鎖されたポリオキシアルキレン基である。その代表的なものとしては、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基またはポリオキシブチレン基の如き、各種ポリオキシアルキレン基などに加え、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)基の如き、前記したオキシアルキレン部分がランダムに共重合されたもの、あるいはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基の如き、相異なるポリオキシアルキレン基がブロック状に結合したもの、ジオキソラン環の開環重合によって得られるポリオキシアルキレン基、等が挙げられる。そして、これらのポリオキシアルキレン基の中で好ましいものは、オキシエチレン単位を必須の構成単位として含有するものである。
前記した末端封鎖に使用される基の中で好ましいものは、アルコキシ基、または置換アルコキシ基であり、特に好ましいものはアルコキシ基である。アルコキシ基の代表的なものとしては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の如き低級アルコキシ基が挙げられる。
かかるポリオキシアルキレン基の数平均分子量は、ポリイソシアネート組成物の水分散性、および当該組成物を含む水性硬化性組成物の硬化性の点から、約130〜約10,000なる範囲内、好ましくは、150〜6,000なる範囲内、最も好ましくは、200〜2,000なる範囲内であることが好ましい。
NCO基含有ビニル系重合体(B)に導入される好適なノニオン性基の量は、疎水性ポリイソシアネート(A)を容易に水に分散せしめ、且つ、本発明のポリイソシアネート組成物を水に分散して得られる分散液に含有されるイソシアネート基の安定性を損なわない範囲の量でよい。そして、その好ましい量としては、NCO基含有ビニル系重合体(B)重量の8〜80重量%であり、より好ましい量は、12〜65重量%であり、最も好ましい量は、15〜55重量%である。
NCO基含有ビニル系重合体(B)に導入されるイソシアネート基としては、公知慣用の各種のものがあるが、その代表的なものとしては、アルキル基に結合したイソシアネート基、シクロアルキル基に結合したイソシアネート基、アリール基に結合したイソシアネート基、シクロアルキル基が置換したアルキル基に結合したイソシアネート基、アリール基が置換したアルキル基に結合したイソシアネート基等、が挙げられる。
NCO基含有ビニル系重合体(B)に導入される好適なイソシアネート基量は、NCO基含有ビニル系重合体(B)が、活性水素含有基を有する水性樹脂(C)の活性水素あるいは水と反応して架橋に関与することが可能であり、且つ、本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物の安定性を損なわない範囲の量でよい。そして、その好ましい量としては、NCO基含有ビニル系重合体(B)の1000g当たり、0.05〜6モル、好ましくは、0.1〜5.0モル、さらに好ましくは、0.2〜4.0モル、である。
本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物において、NCO基含有ビニル系重合体(B)は疎水性ポリイソシアネート(A)を水に分散する能力を有する。従って、NCO基含有ビニル系重合体(B)は、本発明のポリイソシアネート組成物に優れた水への分散性を付与する機能を有する。また、NCO基含有ビニル系重合体(B)は、当該組成物の水分散液に含有されるイソシアネート基の水に対する安定性を付与する。さらに、NCO基含有ビニル系重合体(B)は、イソシアネート基をも有することから、後記の活性水素含有基を有する水性樹脂(C)あるいは水とポリイソシアネート組成物からなる本発明の水性硬化性組成物は優れた硬化性を有する。そして、当該水性硬化性組成物は優れた性能を有する硬化物を与える。
また、NCO基含有ビニル系重合体(B)に総炭素原子数が4個以上の疎水性基を導入すると、本発明のポリイソシアネート組成物にいっそう優れた水への分散性を付与するとともに、当該組成物の水分散液に含有されるイソシアネート基の水に対する安定性をいっそう向上させることができるという点で、好ましい。
NCO基含有ビニル系重合体(B)に導入される総炭素原子数が4個以上の疎水性基の代表的なものとしては、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基もしくはn−オクタデシル基の如き、炭素原子数が4以上のアルキル基;シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ジシクロペンタニル基、ボルニル基、イソボルニル基の如き、炭素原子数が4以上のシクロアルキル基;
シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、2−シクロペンチルエチル基、2−シクロヘキシルエチル基の如きシクロアルキル基が置換したアルキル基;フェニル基、4−メチルフェニル基もしくは1−ナフチル基の如き、総炭素原子数が6以上のアリール基もしくは置換アリール基;さらにはベンジル基もしくは2−フェニルエチル基の如き、アラルキル基、等が挙げられる。
上掲した如き各種の総炭素原子数が4個以上の疎水性基のなかで、好ましいものは総炭素原子数が4〜22のものである。そして特に好ましいものは総炭素原子数が5〜18のものである。そしてかかる疎水性基の中でも特に好ましいものは、アルキル基、シクロアルキル基もしくはシクロアルキル基が置換したアルキル基である。
NCO基含有ビニル系重合体(B)に総炭素原子数が4個以上の疎水性基を導入する場合、その好適な導入量としては、NCO基含有ビニル系重合体(B)中の、疎水性基の重量割合が1〜45重量%であり、好ましくは、5〜30重量%である。
前記したNCO基含有ビニル系重合体(B)は、分子中にイソシアネート基を有するが、さらにブロックされた活性水素含有基、エポキシ基、加水分解性シリル基等の反応性官能基をNCO基含有ビニル系重合体(B)に導入することが好ましい。これらの反応性官能基は、イソシアネート基とともに架橋反応に関与するので、本発明の水性硬化性組成物の硬化性を向上せしめて、より優れた性能を有する硬化物を与えることができる。
ブロックされた活性水素含有基の代表的なものとしては、ブロックされた水酸基、ブロックされたカルボキシル基、ブロックされたアミノ基、等が挙げられる。かかるブロックされた活性水素含有基のなかで、ブロックされた水酸基の代表的なものとしては、トリメチルシリルエーテル基、トリエチルシリルエーテル基、ジメチルシクロヘキシルシリルエーテル基、ジメチル−tert−ブチルシリルエーテル基の如きトリオルガノシリル基でブロックされた水酸基;水酸基にメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−メトキシプロペン、ジヒドロフラン、ジヒドロピラン、の如きα,β−不飽和エーテル化合物を付加して得られるアセタールあるいはケタールとしてブロックされた水酸基が挙げられる。
ブロックされたカルボキシル基の代表的なものとしては、トリメチルシリルエステル基、トリエチルシリルエステル基、ジメチルシクロヘキシルシリルエステル基、ジメチル−tert−ブチルシリルエステル基の如きトリオルガノシリルエステルとしてブロックされたカルボキシル基;カルボキシル基にメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−メトキシプロペン、ジヒドロフラン、ジヒドロピラン、の如きα,β−不飽和エーテル化合物を付加して得られるヘミアセタールエステルあるいはヘミケタールエステルとしてブロックされたカルボキシル基が挙げられる。
ブロックされたアミノ基の代表的なものとしては、ビス(トリメチルシリル)アミノ基、ビス(トリエチルシリル)アミノ基、ビス(ジメチル−tert−ブチルシリル)アミノ基の如きビス(トリオルガノシリル)アミノ基としてブロックされたアミノ基;アミノ基とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒドの如きアルデヒド化合物を反応させてられるアルジミンとしてブロックしたアミノ基;
アミノ基とアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンの如きケトン化合物とを反応させて得られるケチミンとしてブロックしたアミノ基;アミノ基をアルジミンあるいはケチミンに変換する際に使用されるものとして上掲した如きアルデヒド化合物あるいはケトン化合物を、2−アミノアルコールと反応させて得られるオキサゾリジンとしてブロックしたアミノ基等が挙げられる。
上掲した各種のブロックされた活性水素含有基の中では、トリオルガノシリル基でブロックされた水酸基が特に好ましい。そして、かかるトリオルガノシリル基でブロックされた水酸基は、疎水性を有することから、かかる基をNCO基含有ビニル系重合体(B)に導入することにより、本発明のポリイソシアネート組成物にいっそう優れた水への分散性を付与することができるし、当該ポリイソシアネート組成物の水分散液に含有されるイソシアネート基の安定性をいっそう高めることができる。
エポキシ基の代表的なものとしては、グリシジル基、メチルグリシジル基、エポキシシクロヘキシル基、等が挙げられる。
上記した官能基のうち、加水分解性シリル基とは、加水分解により脱離して珪素原子に結合した水酸基を生じさせる基であるアルコキシ基、置換アルコキシ基、フェノキシ基、イミノオキシ基、アルケニルオキシ基、ハロゲン原子の如き加水分解性基が結合したシリル基を指称するものである。かかるシリル基の中で、特に好ましいものは、加水分解性基としてアルコキシ基あるいは置換アルコキシ基が結合したアルコキシシリル基である。そして、アルコキシシリル基の代表的なものとしては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリn−プロポキシシリル基、トリn−ブトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、トリス(2−メトキシエトキシ)シリル基等が挙げられる。
NCO基含有ビニル系重合体(B)に導入される反応性官能基として上掲したものの中で特に好ましいものは、ブロックされた活性水素含有基およびエポキシ基である。
NCO基含有ビニル系重合体(B)に、上記ブロックされた活性水素含有基、エポキシ基、加水分解性シリル基等の官能基を導入する場合、これらの官能基の導入量としては、本発明のポリイソシアネート組成物の水分散性および本発明の水性硬化性組成物の硬化性の点から、NCO基含有ビニル系重合体(B)の1000g当たり、0.05〜2モル、好ましくは、0.1〜1モル、である。
NCO基含有ビニル系重合体(B)の重量平均分子量は、本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物の水への分散性、当該組成物の水分散液に含有されるイソシアネート基の水に対する安定性、本発明の水性硬化性組成物の硬化性の観点から、5,000〜200,000で、さらに好ましくは8,000〜70,000である。
NCO基含有ビニル系重合体(B)を調製するには、(1)疎水性ポリイソシアネートと、予め調製したノニオン性基及びイソシアネート基と反応する活性水素含有基を含有するビニル系重合体とを反応させる方法[以下方法(1)という]、(2)イソシアネート基を含有するビニル系単量体を共重合する方法[以下方法(2)という]、等の方法を適用できる。
以下、方法(1)について説明する。方法(1)は、疎水性ポリイソシアネートとノニオン性基及びイソシアネート基と反応する活性水素含有基を有するビニル重合体(b)[以下、活性水素基含有ビニル系重合体(b)という]とを、活性水素基含有基に対してイソシアネート基が過剰となるモル比率で反応させることを特徴とするものである。方法(1)において、疎水性ポリイソシアネートとしては前掲した如き疎水性ポリイソシアネート(A)と同様のものを使用することができる。そして、本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物の水に対する安定性を損なわない範囲の量の親水性基を有するポリイソシアネートを併用することもできる。
方法(1)において、イソシアネート基/活性水素含有基なる比率が約1.5〜3程度のモル比となるように、疎水性ポリイソシアネートと活性水素基含有ビニル系重合体(b)を反応させた場合、反応混合物は、主成分としてNCO基含有ビニル系重合体(B)を含有し、少量成分として未反応の疎水性ポリイソシアネートを含有する。このようにして調製される反応混合物と疎水性ポリイソシアネート(A)を混合することにより、本発明の水分散性ポリソシアネートが得られる。
方法(1)において、イソシアネート基/活性水素含有基なる比率が3〜350程度のモル比となるように、疎水性ポリイソシアネートと活性水素基含有ビニル重合体(b)を反応させると、より多くの未反応の疎水性ポリイソシアネートとNCO基含有ビニル系重合体(B)を含有する反応混合物、即ち、本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物、が一段階で調製される。以下に、かかる一段階の反応により本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物を製造する本発明の方法について説明する。
疎水性ポリイソシアネートと活性水素基含有ビニル重合体(b)から、水分散性ポリイソシアネート組成物を調製するに当たり、イソシアネート基/活性水素含有基のモル比は3〜350なる範囲で両成分を反応させる必要がある。そして、このモル比の範囲のうち、得られる水分散性ポリイソシアネート組成物の水分散性と当該組成物を含有する硬化性組成物の硬化性の観点から、5〜300なる範囲が好ましく、10〜250なる範囲がより好ましく、15〜100なる範囲が最も好ましい。
疎水性ポリイソシアネートと活性水素基含有ビニル重合体(b)とを反応させるには、両成分を一括仕込みして反応させる、疎水性ポリイソシアネートに活性水素基含有ビニル重合体(b)の溶液を添加しながら反応させる、活性水素基含有ビニル重合体(b)の溶液に疎水性ポリイソシアネートを添加しながら反応させる、等の各種の方法を適用できる。
そして、これらのうち、ゲル物の生成を抑制する観点から、またはなる方法が好ましい。そして、かかる両成分の反応を行うに当たり、両成分の混合物を、不活性ガス雰囲気下に、約10〜50℃程度の比較的低い温度に長時間放置したり、長時間攪拌してもよいが、50〜130℃程度の温度で0.5〜20時間程度加熱・攪拌せしめるのが好ましい。また、かかる反応を行うに当たって、イソシアネート基と活性水素含有基の反応を促進する公知慣用の各種の触媒を添加してもよい。
また、活性水素基含有ビニル重合体(b)を調製する際に、溶剤の一部あるいは溶剤の全量に代えて疎水性ポリイソシアネートを使用して、活性水素基含有ビニル重合体(b)の調製と、活性水素基含有ビニル重合体(b)と疎水性ポリイソシアネートの反応を並行して進行せしめることにより、本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物を調製することもできる。
上述のようにして調製された水分散性ポリイソシアネート組成物に、更に、疎水性ポリイソシアネート(A)を添加して得られる混合物もまた、本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物として使用することができる
以下に、方法(1)によりNCO基含有ビニル系重合体(B)又は本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物を調製する際に使用される活性水素基含有ビニル重合体(b)について詳しく説明する。
活性水素基含有ビニル重合体(b)に導入されるイソシアネート基と反応する活性水素含有基としては、公知慣用の各種のものが挙げられ、その代表的なものとしては、水酸基、カルボキシル基、燐酸基、亜燐酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、メルカプト基、シラノール基、活性メチレン基、カーバメート基、ウレイド基、カルボン酸アミド基、スルホン酸アミド基等が挙げられる。そして、これらの中で、導入のし易さの点で、水酸基、アミノ基、カルボキシル基および活性メチレン基が好ましく、特に好ましいものは水酸基およびカルボキシル基である。そして、こうした各種の活性水素含有基は、それぞれが単独で導入されていてもよいし、二種類以上が導入されていてもよい。
上掲した活性水素含有基をビニル重合体(b)に導入するには、公知慣用の各種の方法を適用できるが、前記した如き活性水素含有基を有するビニル系単量体を共重合せしめることにより導入するのが簡便である。
活性水素基含有ビニル重合体(b)を調製する際に使用される、水酸基を含有する単量体の代表的なものとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、エチル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、ブチル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノ(2−ヒドロキシプロピル)−モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルエステル、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、の如き水酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステル類;
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレートの如き水酸基を含有するポリオキシアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレート類;
アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルアリルエーテルの如き水酸基を含有するアリル化合物;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテルの如き水酸基を含有するビニルエーテル化合物;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールクロトン酸アミドの如き水酸基を有する不飽和カルボン酸アミド化合物;リシノール酸等の水酸基含有不飽和脂肪酸類;リシノール酸アルキル等の水酸基含有不飽和脂肪酸エステル類;上述した如き各種の水酸基含有単量体をε−カプロラクトンと付加反応せしめて得られる単量体が挙げられる。そして、これらは単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
活性水素含有基としてカルボキシル基を有する単量体の代表的なものとしては、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチルアクリレート、クロトン酸、ビニル酢酸、アジピン酸モノビニル、セバシン酸モノビニル、イタコン酸モノメチル、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノメチル、コハク酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、フタル酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ヘキサヒドロフタル酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ソルビン酸の如き不飽和モノカルボン酸類;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸の如き不飽和ジカルボン酸等が挙げられる。
活性水素含有基としてアミノ基を有する単量体の代表的なものは、2−(N−メチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(N−エチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(N−n−ブチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(N−tert−ブチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−メチルアミノ)エチルクロトネート、2−(N−エチルアミノ)エチルクロトネート、2−(N−ブチルアミノ)エチルクロトネートの如き、二級アミノ基含有ビニル系単量体が挙げられる。これらは単独もしくは、二種以上用いても良い。
活性水素含有基として活性メチレン基を有する単量体の代表的なものは、ビニルアセトアセテート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレート、4−アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート、2,3−ジ(アセトアセトキシ)プロピルメタクリレートが挙げられる。これらは単独もしくは、二種以上用いても良い。
活性水素基含有ビニル重合体(b)に導入される活性水素含有基は、本発明のポリイソシアネート組成物の水分散性および当該組成物の水分散液に含有されるイソシアネート基の安定性の観点から、活性水素基含有ビニル重合体(b)の1000g当たり、0.01〜5モル、好ましくは、0.05〜3モル、最も好ましくは、0.1〜2モルである。
ノニオン性基を活性水素基含有ビニル重合体(b)に導入するには、末端がアルコキシ基で封鎖されたポリオキシアルキレン基を含有するビニル系単量体を共重合する、予め調製した官能基を含有するビニル系重合体と、当該官能基と反応する官能基を有する末端がアルコキシ基で封鎖されたポリオキシアルキレン化合物を反応させる、等の方法を適用できる。そして、これらのうち前者のなる方法が簡便で好ましい。
そして、なる方法により、活性水素基含有ビニル重合体(b)を調製する際に使用されるポリオキシアルキレン基を含有するビニル系単量体の代表的なものとしては、それぞれ、上掲した如き各種のポリオキシアルキレン基を有する、(メタ)アクリル酸エステル系、クロトン酸エステル系、イタコン酸エステル系、フマル酸エステル系あるいはビニルエーテル系の如き、各種の単量体が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体の代表的なものとしては、モノメトキシ化ポリエチレングリコール、モノメトキシ化ポリプロピレングリコールもしくはオキシエチレン単位と、オキシプロピレン単位とを併有するポリエーテルジオールのモノメトキシ化物の如き、各種のモノアルコキシ化ポリエーテルジオールと(メタ)アクリル酸とのエステルが挙げられる。
活性水素基含有ビニル重合体(b)に導入されるノニオン性基の量は、当該活性水素基含有ビニル重合体(b)と疎水性ポリイソシアネートとを反応させて得られる本発明のポリイソシアネート組成物を容易に水に分散せしめ、かつ当該組成物を水に分散して得られる分散液に含有されるイソシアネート基の安定性を損なわない範囲の量でよい。そして、その好ましい量としては、活性水素基含有ビニル重合体(b)重量の10〜90重量%であり、より好ましい量は、15〜70重量%であり、最も好ましい量は、20〜60重量%である。
活性水素基含有ビニル重合体(b)に、総炭素原子数が4個以上の疎水性基を導入することにより、総炭素原子数が4個以上の疎水性基を有するNCO基含有ビニル系重合体(B)を得ることができ、上記のとおり、本発明のポリイソシアネート組成物に水へのより優れる分散性を付与し、当該組成物の水分散液に含有されるイソシアネート基の水に対する安定性をいっそう向上させることができる。
活性水素基含有ビニル重合体(b)に総炭素原子数が4個以上の疎水性基を導入するには、かかる基を有するビニル系単量体を共重合せしめればよい。前記した如き総炭素原子数が4個以上の疎水性基を有するビニル系単量体の代表的なものとしては、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレートの如き、総炭素原子数が4〜22なるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;
シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートの如き、各種のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;シクロペンチルメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2−シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレートの如きシクロアルキルアルキル(メタ)アクリレート類;ベンジル(メタ)アクリレートもしくは2−フェニルエチル(メタ)アクリレートの如き、各種のアラルキル(メタ)アクリレート類;
スチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンの如き、各種の芳香族ビニル系単量体類;ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニルもしくは安息香酸ビニルの如き、総炭素原子数が5以上のカルボン酸のビニルエステル類;クロトン酸−n−ブチル、クロトン酸−2−エチルヘキシルの如き、炭素原子数が4〜22のアルキル基を有する各種のクロトン酸エステル類;
ジ−n−ブチルマレート、ジ−n−ブチルフマレート、ジ−n−ブチルイタコネートの如き、炭素原子数が4〜22のアルキル基を少なくとも1つ有する各種の不飽和二塩基酸ジエステル類;n−ブチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテルの如き、炭素原子数が4〜22のアルキル基を有する各種のアルキルビニルエーテル類;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルビニルエーテルの如き、各種のシクロアルキルビニルエーテル類、等が挙げられる。
活性水素基含有ビニル重合体(b)に総炭素原子数が4個以上の疎水性基を導入する場合、その好適な導入量は、本発明のポリイシシアネート組成物の水分散性および当該組成物の水分散液に含有されるイソシアネート基の安定性の観点から、ビニル重合体(b)に含有される疎水性基の重量割合として1〜50重量%であり、好ましくは、5〜30重量%である。
活性水素基含有ビニル重合体(b)に、ブロックされた活性水素含有基、エポキシ基、または加水分解性シリル基を導入するには、公知慣用の各種の方法を適用できるが、前記した如き官能基を含有するビニル系単量体を共重合せしめることにより導入するのが簡便である。これらの官能基を活性水素基含有ビニル重合体(b)に導入すると、これらの官能基は、イソシアネート基とともに架橋反応に関与するので、本発明の水性硬化性組成物の硬化性を向上せしめることができる。
トリオルガノシリル基でブロックされた水酸基を有するビニル系単量体の代表的なものとしては、2−トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリメチルシロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−トリメチルシロキシブチル(メタ)アクリレート、2−トリエチルシロキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリブチルシロキシプロピル(メタ)アクリレートまたは3−トリフェニルシロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−トリメチルシロキシエチルビニルエーテル、4−トリメチルシロキシブチルビニルエーテル等が挙げられる。
シリルエステル基を含有するビニル系単量体の代表的なものとしては、トリメチルシリル(メタ)アクリレート、ジメチル−tert−ブチルシリル(メタ)アクリレート、ジメチルシクロヘキシルシリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルクロトネート、アジピン酸のモノビニル−モノトリメチルシリルエステル等が挙げられる。
ヘミアセタールエステル基またはヘミケタールエステル基を含有するビニル系単量体の代表的なものとしては、1−メトキシエチル(メタ)アクリレート、1−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロパンもしくは2−(メタ)アクリロイルオキシテトラヒドロフラン等が挙げられる。
エポキシ基を含有するビニル系単量体の代表的なものとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
加水分解性シリル基を有するビニル系単量体の代表的なものとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、3−トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、
3−(メチルジメトキシシリル)プロピルビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリn−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリiso−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシラン等が挙げられる。
活性水素基含有ビニル重合体(b)に、ブロックされた活性水素含有基、エポキシ基、または加水分解性シリル基を導入する場合、これらの官能基の導入量としては、本発明のポリイソシアネート組成物の水分散性および本発明の水性硬化性組成物の硬化性の点から、活性水素基含有ビニル重合体(b)の1000g当たり、0.05〜2モル、好ましくは、0.1〜1モルである。
また、活性水素基含有ビニル重合体(b)の調製に際し、上掲した如き各種の単量体に加えて、これらと共重合可能な他の公知慣用の単量体を併用することができる。その代表的なものとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレートの如き、炭素原子数が3以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;2−メトキシエチル(メタ)アクリレートもしくは4−メトキシブチル(メタ)アクリレートの如き、各種のω−アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルの如き、総炭素原子数が4以下のカルボン酸のビニルエステル類;クロトン酸メチルもしくはクロトン酸エチルの如き、炭素原子数が3以下のアルキル基を有する各種のクロトン酸エステル類;
ジメチルマレート、ジメチルフマレート、ジメチルイタコネートの如き、炭素原子数が3以下のアルキル基を有する各種の不飽和二塩基酸ジエステル類;(メタ)アクリロニトリル、クロトノニトリルの如き、各種のシアノ基含有ビニル系単量体類;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチエレン、ヘキサフルオロプロピレンの如き、各種のフルオロオレフィン類;
塩化ビニルもしくは塩化ビニリデンの如き、各種のクロル化オレフィン類;エチレンもしくはプロピレンの如き、各種のα−オレフィン類;エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテルの如き、炭素原子数が3以下のアルキル基を有する各種のアルキルビニルエーテル類;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルピロリジンもしくはN−ビニルピロリドンの如き、3級アミド基含有ビニル系単量体類、等が挙げられる。
上述の活性水素基含有ビニル重合体(b)を調製する場合の重合方法に制約はなく、公知慣用の種々の重合法を適用できる。それらのうちでも、特に、有機溶剤中での溶液ラジカル重合法が、簡便であり好ましい。
溶液ラジカル重合法を適用する際の重合開始剤としては、公知慣用の種々の化合物が使用できる。代表的なものとしては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルブチロニトリル)もしくは2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)の如き、各種のアゾ化合物類;tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドもしくはジイソプロピルパーオキシカーボネートの如き、各種の過酸化物類、等が挙げられる。
また、有機溶剤としては、イソシアネート基に対して不活性な化合物であれば、いずれをも使用することが出来る。かかる溶媒として使用される化合物の代表的なものとしては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタンの如き、脂肪族系ないしは脂環族系の炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼンの如き、芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートの如き、各種のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、シクロヘキサノンの如き、各種ケトン類;
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルの如き、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンの如き、エーテル類;N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはエチレンカーボネート、等が挙げられる。そして、かかる化合物はそれぞれを単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
上掲した各種の化合物を有機溶剤として使用するに当たって、含水率の高いものを使用すると本発明のポリイソシアネート組成物の安定性等に悪影響を及ぼすので可能な限り含水率の低いものを使用することが好ましい。また、含水率が比較的高いものを使用した場合には、重合終了後に溶剤の一部分を留去する共沸脱水法等により脱水を行って含水率を下げればよい。
上述のようにして調製されるビニル重合体(b)の重量平均分子量は、本発明のポリイソシアネート組成物の水への分散性、当該組成物の水分散液に含有されるイソシアネート基の水に対する安定性、本発明の水性硬化性組成物の硬化性の観点から、3,000〜100,000の範囲であることが好ましく、5,000〜40,000の範囲であることがより好ましい。
次に、上記方法(2)、即ち、イソシアネート基含有ビニル系単量体を共重合することによりNCO基含有ビニル系重合体(B)を調製する方法について説明する。方法(2)により、NCO基含有ビニル系重合体(B)を調製するには、イソシアネート基含有ビニル系単量体及びノニオン性基を含有するビニル系単量体を必須成分として含有するビニル系単量体を重合する、イソシアネート基含有ビニル系単量体を必須成分とするビニル系単量体を重合して得られたイソシアネート基を含有するビニル系重合体と片末端がアルコキシ基の如き基で封鎖されたポリオキシアルキレングリコールを水酸基に対してイソシアネート基が過剰になるモル比率で反応させる、等の方法を適用できる。これらのうち、前者のなる方法が簡便でより好ましい。
方法(2)において使用されるイソシアネート基を含有するビニル系単量体の代表的なものとしては、2−イソシアナートプロペン、2−イソシアナートエチルビニルエーテル、2−イソシアナートエチルメタアクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、ポリイソシアネートと水酸基を有するビニル系単量体との反応生成物等が挙げられる。
方法(2)においてノニオン性基を含有するビニル系単量体としては、上記方法(1)において使用されるものとして上掲した各種の単量体を使用することができる。
方法(2)によりNCO基含有ビニル系重合体(B)を調製するに当たり、イソシアネート基を含有するビニル系単量体及びノニオン性基を含有するビニル系単量体に加えて、これらの単量体と共重合可能な他の単量体を併用することができる。そして、かかる共重合可能な他の単量体の代表的なものとしては、上記方法(1)において共重合可能なビニル系単量体として上掲した各種の単量体が挙げられる。
NCO基含有ビニル系重合体(B)に、総炭素原子数が4個以上の疎水性基を導入するには、上記の方法(1)で掲げた総炭素原子数が4個以上の疎水性基を有するビニル系単量体、を疎水性基の導入量が前記した好ましい重量割合となるように、共重合すればよい。またNCO基含有ビニル系重合体(B)に、ブロックされた活性水素含有基、エポキシ基、加水分解性シリル基等の官能基を導入する場合、上記方法(1)で掲げたビニル系単量体を、かかる官能基の導入量が前記した好ましい量となる様に、共重合すればよい。
上記した各種のビニル系単量体を使用してNCO基含有ビニル系重合体(B)を調製するには、活性水素基含有ビニル重合体(b)を調製する際に使用されるものとして上掲した如き重合開始剤、有機溶剤を使用して溶液ラジカル重合を行えばよい。
NCO基含有ビニル系重合体(B)の調製に際し、有機溶剤の一部またはすべてを疎水性ポリイソシアネート(A)に置き換えて、有機溶剤と疎水性ポリイソシアネート(A)の混合物あるいは疎水性ポリイソシアネート(A)を溶媒として使用することが可能である。
方法(1)により調製される主成分としてNCO基含有ビニル系重合体(B)を含有し少量成分として未反応の疎水性ポリイソシアネートを含有する混合物あるいは上記方法(2)によって調製されるNCO基含有ビニル系重合体(B)を疎水性ポリイソシアネート(A)を混合することにより、本発明の水分散性ポリソシアネート組成物が得られる。NCO基含有ビニル系重合体(B)と疎水性ポリイソシアネート(A)を混合する場合、混合条件としては特に制限はないが、概ね、室温から150℃の範囲、好ましくは室温から100℃なる範囲の温度で混合すればよい。
本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物中の疎水性ポリイソシアネート(A)とNCO基含有ビニル系重合体(B)の比率は、特に制限されないが、本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物の水への分散性、当該組成物の水分散液に含有されるイソシアネート基の水に対する安定性、本発明の水性硬化性組成物の硬化性の観点から、重量比率で、(A)/(B)=30/70〜85/15であることが必要である。50/50〜80/20がより好ましく、60/40〜80/20が最も好ましい。
上述した如く、予め調製したNCO基含有ビニル系重合体(B)と疎水性ポリイソシアネート(A)を混合する方法、または、活性水素基含有ビニル重合体(b)と疎水性ポリイソシアネートをイソシアネート基/活性水素含有基のモル比が3〜350なる範囲で両成分を反応させる方法で本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物が調製される。これらの方法のうち、得られた水分散性ポリイソシアネート組成物を水に分散した場合にイソシアネート基の安定性がより高い点から、後者の方法が好ましい。
次ぎに、本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物と活性水素含有基を有する水性樹脂(C)とを含む水性硬化性組成物について説明する。本発明に使用される活性水素含有基を有する水性樹脂(C)は、イソシアネート基と反応し得る活性水素含有基を有するものであれば良く、その形態、種類等は制限されない。かかる水性樹脂(C)に含有される活性水素含有基として代表的なものは、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、アセトアセチル基の如き活性メチレン基を含有する基、等が挙げられる。そして、これらのうち特に好ましいものは水酸基およびカルボキシル基である。また、水性樹脂(C)の形態としては水溶液タイプ、コロイダルディスパージョンやエマルジョンの如き水分散液タイプ等の公知慣用の形態のものが挙げられる。
そして、かかる水性樹脂(C)の代表的なものとしては、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、アクリル系樹脂、フルオロオレフィン系樹脂、シリコン変性ビニル系重合体、ポリビニルアルコールの如きビニル系重合体;ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコン系樹脂等のビニル系重合体以外の合成樹脂類;動物性たんぱく質、でんぷん、セルロース誘導体、デキストリン、アラビアゴム等の天然高分子が挙げられる。そして、これらのなかで好ましいものは、ビニル系重合体およびビニル系重合体以外の各種の合成樹脂である。
上掲の如き水性樹脂(C)に含まれる活性水素含有基の量は、本発明の水性硬化性組成物の硬化性および得られる硬化物の耐水性の点から、水性樹脂の固形分1000g当たり、0.1〜6モル、好ましくは0.2〜4モル、最も好ましくは、0.4〜3モルである。また、これらの水性樹脂(C)は、単独使用であってもよいし、2種類以上を併用してもよい。
本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物と水性樹脂(C)との好適な混合比率は、当該硬化性組成物の硬化性ならびに当該組成物から得られる硬化物の性能の点から、(1)ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基のモル数と、(2)水性樹脂(C)に含有される活性水素含有基とNCO基含有ビニル系重合体(B)に含有されるブロックされた活性水素含有基の合計モル数、との比率(1)/(2)が0.1〜5であることが好ましく、0.3〜3が特に好ましく、0.5〜2が最も好ましい。
上述した本発明の水性硬化組成物は、顔料を含まないクリヤーな組成物として使用することができるし、有機系あるいは無機系の公知慣用の各種の顔料を配合して着色組成物として使用することもできる。
こうして調製される水性硬化性組成物は、塗料、接着剤、インキ、防水材、シーリング剤、天然繊維、合繊繊維、ガラス繊維の如き各種繊維や紙の含浸処理剤、天然繊維、合繊繊維、ガラス繊維の如き各種繊維や紙の表面処理剤等の各種の用途に用いることができる。特に水性塗料、水性接着剤として用いるのが好ましい。
水性塗料として用いられる場合、かかる水性塗料は、可使時間が長く、さらに、かかる本発明の水性塗料から透明性、光沢などの外観、耐水性、耐溶剤性等に優れる硬化塗膜が得られる。さらに、水性接着剤として用いられる場合、かかる水性接着剤は、可使時間が長く、接着強度が高いなど優れた性能を有する。
また、かかる組成物には、必要に応じて、各種用途に適した添加剤、例えば、充填剤、レベリング剤、増粘剤、消泡剤、有機溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤または顔料分散剤のような、公知慣用の各種の添加剤類などをも配合することが出来る。
次ぎに、本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物と水とを含む水性硬化性組成物について説明する。本発明の水性硬化性組成物は、水分散性ポリイソシアネート組成物と水を混合せしめることにより得ることができる。かかる水性硬化性組成物を得るには、当該組成物のイソシアネート基の安定性、硬化性、当該組成物から得られる硬化物の性能の点から、当該ポリイソシアネート組成物の100重量部に対して、10〜1000重量部の水、好ましくは50〜500重量部の水を添加して、両者を混合せしめればよい。
かかる水分散性ポリイソシアネート組成物と水を混合せしめて得られる水性硬化組成物は、顔料を含まないクリヤーな組成物として使用することができるし、有機系あるいは無機系の公知慣用の各種の顔料を配合して着色組成物として使用することもできる。また、必要に応じて、ポリイソシアネート組成物と水性樹脂(C)から得られる水性硬化性組成物に添加できるものとして例示した如き各種の添加剤等をも配合して使用することができる。
こうして調製される水性硬化性組成物は、上記の水性硬化性組成物と同様な用途に用いることができるが、特に水性塗料、水性接着剤として用いるのが好ましい。
この水性硬化性組成物を含む塗料は、可使時間が長く、通常の水性塗料では浸透が困難である高密度の無機質基材に浸透して硬化塗膜を形成する。この塗膜は基材を効果的に保護する機能を有するとともに、上塗り塗膜との付着性も良好であるので、この塗料は、高性能の下塗り塗料として使用できる。また、この水性塗料は、下塗り塗料にかぎらず、各種基材の上塗り塗料として使用することもできる。
水性接着剤として用いられる場合は、可使時間が長く、高い接着強度を与えるため、各種用途の水性接着剤として使用することができる。上述した如き本発明の水性塗料が塗装される基材、および、上述した如き本発明の水性接着剤が塗布され被着体となる基材としては、公知慣用の種々のものが使用される。それらのうちでも特に代表的なものとしては、各種の金属基材、無機質基材、プラスチック基材、紙、合成繊維、天然繊維、ガラス繊維等の無機繊維、布、合成皮革、天然皮革、木質系基材等が挙げられる。
かかる各種の基材のうち、金属基材の代表的なものとしては、鉄、ニッケル、アルミニウム、クロム、亜鉛、錫、銅または鉛等の金属;ステンレススチールもしくは真鍮の如き、前掲した各種金属の合金;前掲したような各種の金属あるいは合金であって、メッキや化成処理などが施された各種の表面処理金属が挙げられる。
また、無機質基材とは、珪酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化カルシウムの如きカルシウム化合物から製造される硬化体;アルミナ、シリカ、ジルコニアの如き金属酸化物を焼結して得られるセラミック;各種の粘土鉱物を焼成して得られるタイル類;各種のガラス等が挙げられる。そして、カルシウム化合物から製造される硬化体の代表的なものとしては、コンクリートやモルタルの如きセメント組成物の硬化物、石綿スレート、軽量気泡コンクリート(ALC)硬化体、ドロマイトプラスター硬化体、石膏プラスター硬化体、けい酸カルシウム板等が挙げられる。
プラスチック基材の代表的なものとしては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートもしくはポリエチレンテレフタレートの如き、熱可塑性樹脂の成形品;不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、架橋型ポリウレタン、架橋型のアクリル樹脂もしくは架橋型の飽和ポリエステル樹脂の如き、各種の熱硬化性樹脂の成形品等が挙げられる。
また、前掲したような各種の基材であって、予め被覆が施された基材類、あるいは、当該被覆が施された基材類であって、しかも、その被覆部分の劣化が進んだような基材も使用することが出来る。こうした種々の基材は、用途に応じて、それぞれ、板状、球状、フィルム状、シート状、大型の構築物、複雑なる形状の組立物等の各種の形状で使用されるものであって特に制限はない。
そして、上述した如き本発明の水性塗料を上述した如き基材に、刷毛塗り、ローラー塗装、スプレー塗装、浸漬塗装、フロー・コーター塗装、ロール・コーター塗装の如き公知慣用塗装方法で以て塗装し、次いで、常温に1〜10日間程度放置したり、約40〜約250℃なる温度範囲で以て、約30秒間〜2時間程度、加熱したりすることによって、外観、耐水性等に優れる硬化塗膜を得ることが出来る。
また、上述した如き本発明の水性接着剤を上述した如き基材のうち、同種の基材、あるいは異種の基材の少なくとも一方に、ヘラ、刷毛、スプレー、ロールの如き公知慣用の方法で塗布して、次いで、常温に1〜10日間程度放置したり、約40〜約150℃なる温度範囲で以て、約5秒間〜2時間程度、加熱したり、必要に応じて加圧することによって、優れた接着強度を得ることが出来る。
次に参考例、実施例および比較例により本発明を詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお文中の部、および%は、特に断りのない限り全て重量基準である。まず、実施例および比較例により、水分散性ポリイソシアネート組成物について説明するが、はじめに、実施例および比較例にて使用するポリイソシアネートを説明する。
疎水性ポリイソシアネート(A−1)
ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略称する)系イソシアヌレート型ポリイソシアネートである「バーノックDN−980S」〔大日本インキ化学工業(株)製のイソシアネート基含有率(以下NCO基含有率と略称する)21%、平均NCO官能基数が約3.6、不揮発分 100%〕
疎水性ポリイソシアネート(A−2)
HDIとトリオールとの付加物タイプのポリイソシアネートである「バーノックDN−950」〔大日本インキ化学工業(株)製、酢酸エチル溶液から溶剤を除去したもの。NCO基含有率 17%、平均NCO官能基数が約3.2、不揮発分 100%〕
疎水性ポリイソシアネート(A−3)
トリレンジイソシアネートとトリオールの付加物タイプポリイソシアネートである「バーノックD−750」〔大日本インキ化学工業(株)製、酢酸エチル溶液を脱溶剤したもの。NCO基含有率 17%、平均NCO官能基数が約3.4、不揮発分 100%〕
参考例1〔活性水素基含有ビニル重合体(b)の調製〕
攪拌機、温度計、冷却管、窒素導入管を装備した、4つ口のフラスコにジエチレングリコールジエチルエーテル(以下EDEと略称する) 429部を仕込み、窒素気流下に110℃に昇温した後、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(1分子当たりオキシエチレン単位を平均9個含有、以下「MPEGMA−1」と略称する)500部、メチルメタクリレート(以下、MMAと略称する)300部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、2−HEMAと略称する) 50部、シクロヘキシルメタクリレート(以下、CHMAと略称する)150部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 45部、t−ブチルパーオキシベンゾエート 5部からなる混合液を5時間かけて滴下した。滴下後、110℃にて9時間反応せしめ、不揮発分が70%なるアクリル系重合体の溶液を得た。以下、これを活性水素基含有ビニル重合体(b−1)と略称する。
参考例2〜6〔同上〕
MPEGMA−1の500部、MMAの300部、CHMAの150部、及び2−HEMAの50部に代えて第1表に示した単量体を使用する以外は、参考例1と同様にして重合を行い、不揮発分が70%なるアクリル系重合体を得た。以下、それらを活性水素基含有ビニル重合体(b−2)〜(b−6)と略称する。
《第1表の脚注》原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、部数であるものとする。
「MPEGMA−2」:〔メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(1分子当たりオキシエチレン単位を平均4個含有)〕
「MPEGMA−3」:〔メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(1分子当たりオキシエチレン単位を平均23個含有)
「MAA」:メタクリル酸「SiHEMA」:2−トリメチルシロキシエチルメタクリレート
「GMA」:グリシジルメタクリレート
「2−EHMA」:2−エチルヘキシルメタクリレート
「4HCHMA」:(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルメタアクリレート
参考例7〔比較例で使用する比較分散剤(Z−1)の調製〕
参考例1と同様の反応器にメトキシポリエチレングリコール(1分子当たりオキシエチレン単位を平均12個含有、以下「MPEG−1」と略称する) 239部とヘキサデカノール 112部を仕込み、窒素気流下に室温にて十分攪拌混合した後、疎水性ポリイソシアネート(A−1)180部を加え、30分間室温にて攪拌した。次いで、70℃に昇温して同温度で、イソシアネート基が消失するまで6時間反応させた。生成物を比較分散剤(Z−1)と略称する。
実施例1〔水分散性ポリイソシアネート組成物(P−1)の調製〕
参考例1と同様の反応器に、疎水性ポリイソシアネート(A−1) 200部と活性水素基含有ビニル重合体(b−1) 100部を仕込み、窒素気流下に90℃に昇温した後、同温度で6時間攪拌下に反応を行って、不揮発分が90%、NCO基含有率が13%なる水分散性ポリイソシアネート組成物を得た。以下、これをポリイソシアネート組成物(P−1)と略称する。得られたポリイソシアネート組成物につき、水への分散性と得られた水分散液に含有されるイソシアネート基の安定性を評価した。これらの評価結果を第2表に示した。
実施例2〜8〔水分散性ポリイソシアネート組成物の調製〕
疎水性ポリイソシアネート(A−1)の200部とビニル重合体(b−1)の100部に代えて、第2表に記載の疎水性ポリイソシアネート(A)と活性水素基含有ビニル重合体(b)を同表に記載の割合で使用し、実施例1と同様に反応を行ってポリイソシアネート組成物を調製した。以下、これらをポリイソシアネート組成物(P−2)〜(P−8)と略称する。得られた各ポリイソシアネート組成物につき、実施例1と同様にして、水への分散性と得られた水分散液に含有されるイソシアネート基の安定性を評価した。これらの評価結果を第2表に示した。
比較例1〔比較例用ポリイソシアネート組成物(RP−1)の調製〕
参考例1と同様の反応器に、EDE 15部、MPEG−1 36部、疎水性ポリイソシアネート(A−1) 100部を仕込み、30分かけて90℃に昇温した後、90℃にて6時間反応させ、不揮発分が90%、NCO基含有率が12%なるメトキシポリエチレングリコールで変性された疎水性でないポリイソシアネートを得た。以下、これをポリイソシアネート組成物(RP−1)と略称する。得られたポリイソシアネート組成物につき、実施例1と同様にして、水への分散性と得られた水分散液に含有されるイソシアネート基の安定性を評価した。これらの評価結果を第2表に示した。
比較例2〔比較用ポリイソシアネート組成物の調製〕
参考例1と同様の反応器に、EDE 33部、疎水性ポリイソシアネート(A−1)200部と比較分散剤(Z−1)100部を仕込み、50℃に昇温し、窒素気流下に3時間攪拌混合を行って、不揮発分が90%、NCO基含有率が12.6%なる比較用のポリイソシアネート組成物を得た。以下、これをポリイソシアネート組成物(RP−2)と略称する。得られたポリイソシアネート組成物につき、実施例1と同様にして、水への分散性と得られた水分散液に含有されるイソシアネート基の安定性を評価した。これらの評価結果を第2表に示した。
比較例3〔比較用ポリイソシアネート組成物の調製〕
参考例1と同様の反応器に、疎水性ポリイソシアネート(A−1)35部、メトキポリエチレングリコール(1分子当たりオキシエチレン単位を平均22個含有)15部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート67部を仕込み、110℃に昇温し、窒素気流下に3時間攪拌混合を行った。 p-トルエンスルフォニルイソシアネート0.5部を添加後、130℃まで昇温し、スチレン5部、MMA5部、n−ブチルアクリレート(以下、BAと略称する)10部、3−イソプロペニル−a,a−ジメチルベンジルイソシアネート15部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(1分子当たりオキシエチレン単位を平均22個含有)15部、a-メチルスチレンダイマー0.25部、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート1.5部からなる混合物を3時間かけて滴下した。
滴下終了後130℃で3時間反応を行いNCO基含有率が6.0%なる比較用のポリイソシアネート組成物を得た。以下、これをポリイソシアネート組成物(RP−3)と略称する。得られたポリイソシアネート組成物につき、実施例1と同様にして、水への分散性と得られた水分散液に含有されるイソシアネート基の安定性を評価した。これらの評価結果を第2表に示した。
《第2表の脚注》原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
「水分散性」:200mlビーカーに、80gの脱イオン水を投入し、そこに、調製したポリイソシアネート組成物の20gを加え、混合物を30℃に保持して、マグネチックスターラーと回転子(全長30mm、直径8mm)を用いて、200rpmなる攪拌速度で撹拌し、その分散挙動を目視で評価したものである。その際の評価基準は次の通りである。
◎:攪拌開始から30秒後には均一に分散
○:攪拌開始から1分後には均一に分散
△:攪拌開始から5分後には均一に分散
×:攪拌開始から10分後には、均一に分散
××:分散しない
「イソシアネート基残存率」:攪拌時間を10分間とする以外は、上述の水分散性の評価と同様に分散を行うことによりポリイソシアネート組成物の水分散液を調製した。ついで得られた水分散液の所定量にイソシアネート基に対して過剰のジブチルアミンを添加した後、塩酸水溶液で残留するジブチルアミンを滴定する逆滴定法により、水分散液におけるイソシアネート基含有量を決定した。上記水分散液を調製した直後と6時間後のイソシアネート基含有量を定量し、下記式により算出されるイソシアネート基の残存率でもって、水分散液に含有されるNCO基の安定性を評価したものである。この値が大きいほど、イソシアネート基の安定性が良好なことを示す。
イソシアネート基残存率[%]=(6時間後のイソシアネート基含有量/分散直後のイソシアネート基含有量)×100
「NCO/活性水素含有基[モル比]]:NCO基のモル数/活性水素含有基のモル数
「(A)/(B)重量比」:[未反応の疎水性ポリイソシアネート(A)の重量]/[ビニル重合体(b)に疎水性ポリイソシアネート(A)が付加して生成したビニル系重合体(B)の重量]
参考例8〔水性樹脂(C−1)の調製〕
参考例1と同様の反応器に「ハイテノールN−08」〔第一工業製薬(株)製のアニオン性乳化剤〕 5部、「エマルゲン931」〔花王(株)製のノニオン性乳化剤〕 5部、脱イオン水 270部を仕込み、窒素気流下に80℃に昇温した後、過硫酸アンモニウム 0.8部を脱イオン水 16部に溶解せしめた水溶液を投入する。さらに、ブチルアクリレート 80部、MMA 99部、 アクリル酸 4部、2−HEMA 17部からなる混合液を、3時間かけて滴下した。滴下後、2時間反応せしめた後、25℃まで冷却し、28%アンモニア水1.5部で中和せしめ、EDE 30部を混合して、不揮発分 40%、固形分水酸基価 35mgKOH/gなる水酸基含有アクリル樹脂エマルジョンを得た。以下この樹脂を水性樹脂(C−1)と略称する
実施例9ポリイソシアネート組成物(P−1)と水性樹脂(C−1)を、イソシアネート基/水性樹脂(C−1)中の水酸基のモル比が1.2/1となるように、ポリイソシアネート組成物(P−1)の50部と水性樹脂(C−1)の500部を混合して水性硬化性組成物を調製した。以下、これを水性硬化性組成物(D−1)と略称する。得られた水性硬化性組成物(D−1)を、調製直後に乾燥塗膜が60μmとなるようにアプリケーターを用いてガラス板およびポリプロピレン板(以下、PP板と略称する)上に塗布し、温度20℃、湿度60%RHの条件で1週間乾燥せしめて、硬化塗膜を作成した。得られた硬化塗膜について、相溶性、ゲル分率、耐水性を評価した。評価結果を第3表に示した。
実施例10〜17これらの実施例においては、水性樹脂(C)として水性樹脂(C−1)に加えて、「ウォーターゾールACD−2000」〔大日本インキ化学工業(株)製の水酸基を含有するアクリル樹脂の水性ディスパージョン、不揮発分 35%、固形分水酸基価 50mgKOH/g、以下、この樹脂を水性樹脂(C−2)と略称する〕を用いた。
第3表に示した如く、ポリイソシアネート組成物(P−1)に代えて、各種のポリイソシアネート組成物を使用した。水性樹脂(C−1)または(C−2)の500部を使用し、且つ、各ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基/水性樹脂中の水酸基のモル比が1.2/1となるように、同表に記載した量のポリイソシアネート組成物を混合して水性硬化性組成物を調製した。以下、このようにして得た組成物を水性硬化性組成物(D−2)〜(D−9)と略称する。こうして得た各水性硬化性組成物を実施例9と同様にして、調製直後にガラス板およびPP板上に塗布し、温度20℃、湿度60%RHの条件で1週間乾燥せしめて、硬化塗膜を作成した。これらにつき、実施例9と同様の評価を行った。評価結果を第3表に示した。
比較例4〜6水性樹脂(C)として(C−1)または(C−2)の500部を使用し、イソシアネート基/水性樹脂(C−1)または(C−2)中の水酸基のモル比が1.2/1となるように、第3表に記載した量の各ポリイソシアネート組成物を混合して比較評価用の硬化性組成物(RD−1)〜(RD−3)を調製した。実施例9と同様にして、調製直後にガラス板およびPP板に塗布乾燥して硬化塗膜を作成した。これらにつき、実施例9と同様の評価を行った。評価結果を第3表に示した。
実施例18,19、比較例7上記で調製したD−1、D−2、及びRD−1を室温にて6時間放置後(それぞれD−1’、D−2’、及びRD−1’とする)、乾燥塗膜が60μmとなるようにアプリケーターを用いてガラス板上に塗布し、温度20℃、湿度60%RHの条件で1週間乾燥せしめて、硬化塗膜を作成した。これらにつき、実施例9と同様の評価を行った。評価結果を第3表に示した。
《第3表の脚注》原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
「相溶性」:ガラス板上に作成した塗膜の透明性を目視で評価したものである。その際の評価基準は次の通りである。
◎:全く濁りがない
○:ごくわずかに濁りがある
△:かなり濁りがある
×:著しく濁りがある
「ゲル分率」:水性硬化性組成物の硬化性を評価したものである。PP板上に作成した塗膜を、PP板から切り取り、これをアセトン中に25℃で48時間浸漬した後、100℃で90分間乾燥させた。ゲル分率は下記の式にて算出した。
ゲル分率[%]=(アセトン浸漬前の塗膜の重量/アセトン浸漬後の塗膜の重量)×100
「耐水性」:ガラス板上に作成した塗膜を脱イオン水に25℃で96時間浸漬し、塗膜の外観を評価した。その際の評価基準は次の通りである。
塗膜の白化の評価基準
◎:全く変化なし
○:ごくわずかに白化
△:かなり白化
×:著しく白化
塗膜の膨れの判定基準
◎:全く変化なし
○:ごくわずかに膨れが発生
△:かなり膨れが発生
×:著しく膨れが発生
参考例9〔ビニル重合体(b−7)の調製例〕
温度計、撹拌装置、モノマー圧入装置を備えた2リットルのステンレス製オートクレーブ中の空気を窒素ガスで充分置換した後、EDE 430gを仕込み攪拌しながら75℃に昇温した。次いで、同温度で攪拌しながら、ベオバ−9(オランダ国シェル社製のC9なる分岐脂肪酸のビニルエステル)270g、エチルビニルエーテル 40g、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル 40g、ポリオキシエチレン基の数平均分子量が400なるメトキシポリエチレングルコールのモノビニルエーテル 400g、tert−ブチルパーオキシピバレート 20g、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 15gおよびビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル)セバケート 15gからなる混合物と液化採取したクロロトリフルオロエチレン 250gを7時間を要して圧入した。さらに、同温度で10時間重合反応を行って、不揮発分が70%、重量平均分子量が16,000なるノニオン性基を有するフルオロオレフィン系重合体の溶液を得た。以下、この重合体を活性水素基含有ビニル重合体(b−7)と略称する。
実施例20〔水分散性ポリイソシアネート組成物(P−9)の調製〕
参考例1と同様の反応器に、疎水性ポリイソシアネート(A−1) 200部と活性水素基含有ビニル重合体(b−7) 100部を仕込み、窒素気流下に90℃に昇温した後、同温度で6時間攪拌下に反応を行って、不揮発分が90%、NCO基含有率が13%なる水分散性ポリイソシアネート組成物を得た。以下、これをポリイソシアネート組成物(P−9)と略称する。
参考例10〔水性樹脂(C−4)の調製〕
温度計、撹拌装置、モノマー圧入装置を備えた2リットルステンレス製オートクレーブにイオン交換水 690g、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ 15g、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(HLB17) 6g、炭酸水素アンモニウム 3gを仕込み溶解させ、窒素で脱気した。ヒドロキシブチルビニルエーテル 116g、酢酸ビニル 184g、エチルビニルエーテル 200gの混合物、液化捕集した500gのクロロトリフルオロエチレンをそれぞれ耐圧滴下槽に入れた。
エチレンをオートクレーブ内に30気圧になるよう圧入した後、オートクレーブを65℃に昇温し、攪拌しながら、5gの過硫酸アンモニウムを90gのイオン交換水に溶解したものと、耐圧滴下槽に入れた単量体混合物とを2時間にわたって滴下し、更に3時間同温度で保持し反応を完結させた。得られた生成物は、不揮発分が55%、pHが1.6、固形分水酸基価50mgKOH/g を有する水性樹脂(C−4)を得た。
実施例21〜29これらの実施例では、ポリイソシアネート組成物および水性樹脂(C)からなる白色塗料についての実施例を示す。これらの実施例において、水性樹脂(C)としては、参考例10で調製した水性樹脂(C−4)および下記水性樹脂(C−3)を使用した。また、水性樹脂(C−3)および(C−4)とポリイソシアネート組成物から白色塗料を得る際に使用した塗料主剤成分の調製方法を下に示した。
水性樹脂(C−3)
「ボンコートCG−5060」(大日本インキ化学工業(株)製の水酸基を含有するアクリル樹脂エマルジョン、不揮発分 45%、固形分水酸基価 60mgKOH/g)。
塗料主剤成分の調製(E−1の調製)
脱イオン水 72.9部、「オロタンSG−1」(米国ローム&ハース社製の顔料分散剤) 6.7部、トリポリリン酸ソーダの10%水溶液 4.9部、「ノイゲンEA−120」〔第一工業製薬(株)製の湿潤剤〕2.2部、エチレングリコール 18.0部、「ベストサイド1087T」〔大日本インキ化学工業(株)製の防腐剤〕 1.0部、アンモニア水(28%) 0.5部、「チタニックスJR−600A」〔テイカ(株)製の酸化チタン〕 249.2部および「SNディフォーマー121」〔サンノプコ社製の消泡剤〕 0.8部から成る混合物をディスパーで約1時間分散した。これに、水性樹脂(C−3) 607.0部、「テキサノール」〔米国イーストマンケミカル社製の造膜助剤〕 38.2部、「プライマルQR−708」〔ローム&ハース社製の増粘剤〕の10%水溶液 1.2部、「BYK−028」〔BYKケミー社製の消泡剤〕 0.2部を加えて攪拌し、顔料重量濃度が48%、不揮発分が52.5%なる塗料主剤成分(E−1)を得た。
塗料主剤成分の調製(E−2の調製)
イオン交換水 37.2部、25%アンモニア水 0.7部、「ノイゲンEA−120」〔第一工業製薬(株)社製の湿潤剤〕 1.6部、「タモール731」〔米国ローム&ハース社製の顔料分散剤〕 6.4部、エチレングリコール35.4部、タイペークCR−97〔石原産業(株)社製二酸化チタン〕 194.7部、ベストサイドFX〔大日本インキ化学工業(株)製の防腐剤〕 0.9部、「ノプコ8034」〔サンノプコ(株)社製の消泡剤〕 1.4部、「プライマルTT」〔ローム&ハース社製の増粘剤〕の5%水溶液 33.2部、ジエチレングリコールジブチルエーテル 33.2部、(C−4) 655.3部から成る混合物をディスパーで約1時間均一分散し、顔料重量濃度が35%、不揮発分が56%なる塗料主剤成分(E−2)を得た。
水性塗料(F−1)〜(F−9)の調製第4表に記載した通りの比率で、塗料主剤成分(E−1)、(E−2)、各ポリイソシアネート組成物および水を混合して、不揮発分が52%なる各水性塗料を調製した。尚、全ての実施例において、イソシアネート基/水性樹脂(C−3、C−4)中の水酸基なるモル比が1.5/1となるように配合を行った。このようにして調製した白色塗料を、以下、水性塗料(F−1)〜(F−9)と略称する。
かくして得られた水性塗料(F−1)〜(F−9)それぞれを、調製直後に乾燥膜厚が70μmとなるようにエアースプレー法でスレート板上に塗膜を作成した。ついで、温度20℃、湿度60%RHの雰囲気下で1週間乾燥せしめた。得られた各硬化塗膜について、光沢、耐水性を評価した。評価結果を第4表に示した。
比較例8、9第4表に示した各成分を同表に記載した比率で以て混合して比較用の水性塗料を調製した。なお、これらの比較例に於いてもイソシアネート基/水性樹脂(C−3)中の水酸基なるモル比が1.5/1となるように配合を行った。こうして得られた比較用の水性塗料(RF−1)〜(RF−2)を実施例21〜29と同様にして、調製直後にスレート板上に乾燥膜厚が70μmとなるようにスプレー塗装せしめ、同実施例と同様に乾燥せしめて硬化塗膜を調製した。得られた各硬化塗膜について、光沢、耐水性を評価した。評価結果を第4表に示した。
《第4表の脚注》原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
「光沢」:塗膜の60度鏡面反射率[%]なる光沢値で、塗膜の外観を評価したものである。
「耐水性」:各水性塗料を塗装せしめたスレート板を脱イオン水に25℃で96時間浸漬した後の塗膜の光沢保持率と膨れの状態を評価した。塗膜の膨れは実施例9〜19と同様の評価基準でもって目視評価した。光沢保持率は下式により算出した。
光沢保持率[%]=(脱イオン水浸漬後の光沢値/脱イオン水浸漬前の光沢値)×100
実施例30水分散性ポリイソシアネート組成物(P−1)の100部と脱イオン水の100部を混合して、水性硬化組成物を調製した。以下、これを水性硬化性組成物(G−1)と略称する。得られた水性硬化性組成物(G−1)を調製直後に乾燥塗膜が、50μmとなるように、アプリケーターを用いてガラス板およびPP板上に塗布し、温度20℃、湿度60%RHの条件で1週間乾燥せしめて、硬化塗膜を作成した。得られた硬化塗膜について、実施例9〜17と同様の評価方法、評価基準でもってゲル分率と耐水性を評価した。評価結果を第5表に示した。
実施例31〜37および比較例10、11ポリイソシアネート組成物(P−1)の100部に代えて、第5表に示した各種のポリイソシアネート組成物の100部を使用する以外は実施例30と同様にして、水性硬化性組成物を調製した。以下、このようにして得た組成物を水性硬化性組成物(G−2)〜(G−8)、(RG−1)、(RG−2)と略称する。こうして得た各水性硬化性組成物を実施例30と同様にして、調製直後にガラス板およびPP板に塗布乾燥して硬化塗膜を作成した。これらにつき、実施例30と同様の評価を行った。評価結果を第5表に示した。
実施例38水分散性ポリイソシアネート組成物(P−1)の350部、脱イオン水 750部、「BYK−028」(BYKケミー社製の消泡剤) 0.2部を混合して水性塗料を調製した。以下、これを水性塗料(H−1)と略称する。得られた水性塗料(H−1)を調製直後に乾燥膜厚が30μmとなるようにエアースプレー法でケイカル板上に塗膜を作成した。ついで、温度20℃、湿度60%RHの条件で1週間乾燥せしめた。得られた硬化塗膜について、付着性を評価した。
また、水性塗料(H−1)を調製直後に乾燥膜厚が30μmとなるようにエアースプレー法でスレート板上に塗膜を作成し、温度20℃、湿度60%RHの条件で24時間乾燥した後、上塗り塗料として、実施例21の水性塗料(F−1)を調製直後に乾燥膜厚が60μmとなるようにエアースプレー法で塗装せしめた。ついで、温度20℃、湿度60%RHの条件で1週間乾燥せしめた。このようにして得た複層硬化塗膜について、付着性を評価した。これらの評価結果を第6表に示した。
実施例39〜45および比較例12、13ポリイソシアネート組成物(P−1)の350部に代えて、第6表に示した各種のポリイソシアネート組成物の350部を使用する以外は、実施例38と同様にして、水性塗料を調製した。以下、これらを水性塗料(H−2)〜(H−8)、(RH−1)、(RH−2)と略称する。こうして得た各水性塗料を実施例38と同様にして、各種基材に塗布乾燥後、上塗り塗料として実施例21の水性塗料(F−1)を塗布乾燥せしめて、硬化塗膜を作成した。これらにつき、実施例38と同様の評価を行った。評価結果を第6表に示した。
《第6表の脚注》
「付着性(1)」:ケイカル板上に作成した塗膜に、カッターナイフを用いて2mm角の碁盤目が25個できるように縦横に2mm間隔の切り込みを作成した。ついで、セロハン粘着テープをその碁盤目に密着させてから剥離し、ケイカル板上に残存する塗膜の割合である残存率でもって評価した。残存率は下式により算出した。
塗膜の残存率[%]=(剥離後残存する塗膜の面積/剥離前の碁盤目上の塗膜の面積)×100
「付着性(2)」:スレート板上に作成した複層塗膜について、上述の付着性(1)と同様の操作を行い、スレート板上に残存する塗膜の割合である残存率でもって評価した。この複層塗膜については、上塗り塗膜だけが剥離するケースと下塗り塗膜から剥離するケースの両方があるが、いずれのケースも塗膜が剥離して残存していないものとみなし、残存率を「付着性(1)」の場合と同様に算出した。
水性樹脂(C−5)
「HYDRAN HW−311」(大日本インキ化学工業(株)製のポリエステル系ウレタン樹脂の水分散体、不揮発分 45%)
実施例46水性樹脂(C−5)95部、水分散性ポリイソシアネート組成物(P−1)5部を混合攪拌し、水性接着剤(K−1)を得た。配合直後の水性接着剤(K−1)を2mm厚合板(JASタイプII)にスプレーで80g/m2の割合になるよう塗布し、50℃で5分乾燥させた。これに、厚さ2mmの塩化ビニルシートを張り合わせ50℃、0.01MPaの条件で一分間熱プレスした。ついで、温度20℃、湿度60%RHの条件で1週間乾燥せしめた。このようにして得た合板と塩化ビニルシートとの接合板について、60℃での接着性評価を行った。評価結果を第7表の「接着性評価(I)」の欄に示した。
実施例47〜53、比較例14,15ポリイソシアネート組成物(P−1)5部に代えて、第7表に示した各種のポリイソシアネート組成物を5部使用する以外は実施例46と同様にして、水性接着剤(K−2)〜(K−8)、(RK−1)、(RK−2)を得た。こうして得た各水性接着剤を水性接着剤(K−1)に代えて使用する以外は実施例46と同様にして、合板と塩化ビニルシートとの接合板を作成した。これらについて、60℃での接着性評価を行った。評価結果を第7表の「接着性評価(I)」の欄に示した。
接着剤調製後の接着性の経時変化実施例46〜53、及び比較例14,15で得られた水性接着剤を、温度20℃、湿度60%RHの条件で3時間放置した後、それぞれの接着剤を使用して実施例46と同様に接合板を作成し、60℃での接着性評価を行った。評価結果を第7表の「接着性評価(II)」の欄に示した。実施例46〜53で調製した接着剤を調製後3時間を経過してから使用しても接着強度の低下は極めて小さく本発明の水性接着剤は長い可使時間を有することが判明した。
《第7表の脚注》
「接着性評価(I),(II)」:合板と塩化ビニルシートの接合板を25mm幅に切断して試験片を作成した。60℃の恒温槽中で合板を固定し、塩化ビニルシートに500gの荷重をかけ、15分間放置後、180度の剥離長(mm)を測定した。この値が小さいほど、接着性が良いことを示す。
参考例11〜17の調製〔NCO基含有ビニル系重合体(B)の調製〕
MPEGMA−1の500部、MMAの300部、CHMAの150部、及び2−HEMAの50部に代えて第1表に示した単量体を使用する以外は、参考例1と同様にして重合を行い、不揮発分が70%なるアクリル系重合体を得た。以下、それらをビニル重合体(B−2)〜(B−7)と略称する。
《第8表の脚注》原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
「IEMA」:2−イソシアナートエチルメタアクリレート
「SPMA」:3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート
「EA」:エチルアクリレート
実施例54〔水分散性ポリイソシアネート組成物(P−1)の調製〕
参考例1と同様の反応器に、ポリイソシアネート(A−1) 200部とビニル系重合体(B−1) 100部を仕込み、窒素気流下に50℃に昇温した後、同温度で1時間攪拌混合し、不揮発分が90%、NCO基含有率が14.6%なる水分散性ポリイソシアネート組成物を得た。以下、これをポリイソシアネート組成物(P−10)と略称する。
実施例55〜62〔水分散性ポリイソシアネート組成物の調製〕
ポリイソシアネート(A−1)の200部とビニル系重合体(B−1)の100部に代えて、第9表に記載のポリイソシアネート(A)とビニル系重合体(B)を同表に記載の割合で使用し、且つ、場合によっては、同表に記載の割合でEDEを使用する以外は、実施例54と同様に混合を行ってポリイソシアネート組成物を調製した。以下、これらをポリイソシアネート組成物(P−11)〜(P−18)と略称する。
実施例54〜62で得られた各ポリイソシアネート組成物について、イソシアネート基残存率以外は実施例1〜8(第2表)と同様の評価方法にて評価を行った。イソシアネート基残存率については、実施例1〜8と同様にして当該組成物の水分散液を調製してから3時間後の値にて評価を行った。これらの評価結果を第9表に示した。
《第9表の脚注》
原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
実施例63ポリイソシアネート組成物(P−10)と水性樹脂(C−1)を、イソシアネート基/水性樹脂(C−1)中の水酸基のモル比が1.2/1となるように、ポリイソシアネート組成物(P−10)の43部と水性樹脂(C−1)の500部を混合して水性硬化性組成物を調製した。以下、これを水性硬化性組成物(D−1)と略称する。得られた水性硬化性組成物(D−10)を、調製直後に、乾燥塗膜が60μmとなるようにアプリケーターを用いてガラス板およびポリプロピレン板(以下、PP板と略称する)上に塗布し、温度20℃、湿度60%RHの条件で1週間乾燥せしめて、硬化塗膜を作成した。
実施例64〜7210表に示した如く、ポリイソシアネート組成物(P−10)に代えて、各種のポリイソシアネート組成物を使用した。水性樹脂(C−1)または(C−2)の500部を使用し、且つ、各ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基/水性樹脂中の水酸基のモル比が1.2/1となるように、同表に記載した量のポリイソシアネート組成物を混合して水性硬化性組成物を調製した。以下、このようにして得た組成物を水性硬化性組成物(D−11)〜(D−19)と略称する。こうして得た各水性硬化性組成物を実施例10と同様にして、調製直後に、ガラス板およびPP板上に塗布し、温度20℃、湿度60%RHの条件で1週間乾燥せしめて、硬化塗膜を作成した。
実施例73実施例63で調製した水性硬化性組成物(D−3)を、配合後20℃で3時間静置した後、実施例63と同様にして、ガラス板およびPP板上に塗布し、温度20℃、湿度60%RHの条件で1週間乾燥せしめて、硬化塗膜を作成した。
実施例63〜73で得られた硬化塗膜について、ゲル分率と耐水性の評価を除き、実施例9〜19(第3表)と同様の評価方法、評価基準にて評価を行った。評価結果を第10表に示した。
《第10表の脚注》
原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
「ゲル分率」:塗膜を浸漬する時間を24時間に変更する以外は第3表の脚注に記載の方法と同様にして値を決定した。
「耐水性」:ガラス板上に作成した塗膜を脱イオン水に25℃で48時間浸漬し、塗膜の外観を第3表脚注に示す評価基準にて評価した。
実施例74〜83第11表に記載した通りの比率で、塗料主剤成分(E−1)、(E−2)、各ポリイソシアネート組成物および水を混合して、不揮発分が52%なる各水性塗料を調製した。尚、全ての実施例において、イソシアネート基/水性樹脂(C−3)または(C−4)中の水酸基なるモル比が1.5/1となるように配合を行った。このようにして調製した白色塗料を、以下、水性塗料(F−10)〜(F−19)と略称する。
かくして得られた水性塗料(F−10)〜(F−19)それぞれを、調製直後に、乾燥膜厚が70μmとなるようにエアースプレー法でスレート板上に塗膜を作成した。ついで、温度20℃、湿度60%RHの雰囲気下で1週間乾燥せしめた。得られた各硬化塗膜について、耐水性を除き、実施例21〜29(第4表)と同様の評価方法、評価基準にて評価を行った。評価結果を第11表に示した。
《第11表の脚注》
原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
「耐水性」:各水性塗料を塗装せしめたスレート板を脱イオン水に25℃で48時間浸漬した後の塗膜の膨れの状態と光沢保持率を評価した。塗膜の膨れは第3表の脚注に示した評価基準にて評価した。光沢保持率は実施例21第4表脚注に記載の式より算出した。
実施例84水分散性ポリイソシアネート組成物(P−10)の100部と脱イオン水の100部を混合して、水性硬化組成物を調製した。以下、これを水性硬化性組成物(G−9)と略称する。得られた水性硬化性組成物(G−9)を、調製直後に、乾燥塗膜が50μmとなるようにアプリケーターを用いてガラス板およびPP板上に塗布し、温度20℃、湿度60%RHの条件で1週間乾燥せしめて、硬化塗膜を作成した。得られた硬化塗膜について、実施例63と同様の評価方法、評価基準でもってゲル分率と耐水性を評価した。評価結果を第12表に示した。
実施例85〜92ポリイソシアネート組成物(P−10)の100部に代えて、第12表に示した各種のポリイソシアネート組成物の100部を使用する以外は実施例84と同様にして、水性硬化性組成物を調製した。以下、このようにして得た組成物を水性硬化性組成物(G−2)〜(G−9)と略称する。こうして得た各水性硬化性組成物を実施例84と同様にして、調製直後に、ガラス板およびPP板に塗布乾燥して硬化塗膜作成した。これらにつき、実施例84と同様の評価を行った。評価結果を第12表に示した。
実施例93〜101ポリイソシアネート組成物(P−1)の350部に代えて、第13表に示した各種のポリイソシアネート組成物の350部を使用する以外は、実施例40と同様にして、水性塗料を調製した。以下、これらを水性塗料(H−2)〜(H−9)、(RH−1)、(RH−2)と略称する。こうして得た各水性塗料を実施例40と同様にして、調製直後に、各種基材に塗布乾燥せしめて、硬化塗膜を作成した。これらにつき、実施例38と同様の評価方法、評価基準にて評価を行った。評価結果を第13表に示した。
実施例102〜110ポリイソシアネート組成物(P−1)5部に代えて、第14表に示した各種のポリイソシアネート組成物を5部使用する以外は実施例46と同様にして、水性接着剤(K−9)〜(K−17)を得た。こうして得た各水性接着剤を水性接着剤(K−1)に代えて使用する以外は実施例46と同様にして、合板と塩化ビニルシートとの接合板を作成した。これらについて、実施例46(第7表)と同様の評価方法、評価基準にて評価を行った。評価結果を第14表に示した。