JP4178990B2 - 生分解性樹脂架橋発泡体シート及び粘着テープ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粘着テープ等のテープ用基材として好適である、扁平な断面形状の気泡を有する生分解性樹脂架橋発泡体シート及び該生分解性樹脂架橋発泡体シートからなる粘着テープに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリオレフィン系樹脂発泡体、ポリウレタン系樹脂発泡体、ポリスチレン系樹脂発泡体等の発泡体が軽量性、断熱性、成形性、緩衝性等に優れていることから、広く工業的に用いられてきた。しかし、これらの発泡体は、軽量ではあるものの廃棄する場合には嵩張り、再利用が困難であった。特に、樹脂を架橋させた架橋発泡体の場合は、リサイクルは事実上不可能であるという欠点があった。また、これらの発泡体は、土中に埋没しても半永久的に残存し、焼却あるいは埋め立てによるゴミ廃棄場所の確保等で地球環境を汚染し、自然の景観を損なう場合も少なくなかった。
【0003】
このため、自然環境中で微生物等により分解される生分解性樹脂が研究、開発され、フィルムや繊維として商品化されはじめてきている。また、生分解性樹脂を用いた押出発泡体についても開発されており、例えば、生分解性樹脂として脂肪族ポリエステル樹脂を用いた無架橋発泡体が知られている(例えば特許文献1参照)。しかし、脂肪族ポリエステル樹脂は、重縮合時に発生する水による加水分解等の副反応により高分子量化が難しいため、押出発泡時に気泡を保持するための十分な溶融粘度が得られず、従って良好な気泡状態及び表面状態を有する発泡体を得るのが困難であった。
【0004】
また、無架橋発泡体を用いた生分解性発泡粘着テープが提案されている(例えば特許文献2参照)。しかし、これらの押出発泡による発泡体を用いた技術では、発泡体の耐熱性が十分でないため、粘着テープの使用用途が農業分野や一般家庭での植物栽培時の支持具等に制限されてしまうとの問題点があった。また、0.4mm以下の厚みの薄い発泡体では緩衝特性、機械強度が十分でなく、その上発泡体の気泡径が扁平な構造を有していないため、複雑な形状を有するものに粘着テープを貼り付けようとしても、型沿いが悪く隙間等が出来てしまう等の問題点があった。
【0005】
さらに上記発泡体の気泡構造は、長手方向の平均径と厚さ方向の平均径がほぼ同一で球形に近く、かかる架橋発泡体においては発泡倍率を大きくして柔軟性を改良しようとすると機械的強度が大きく低下し、反対に強度を向上しようとすると柔軟性が低下し、両者を満足する架橋発泡体は得られる術もなかった。特に、粘着テープ等では厚みの薄い発泡体シートが望まれ、柔軟性が乏しいと凹凸部への型沿いが悪くなり、強度が乏しいと引きちぎれ易くなるという問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−128826号公報
【0007】
【特許文献2】
特開2001−226648号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、柔軟性および強度の向上を両立し、特に厚みの薄い良好な表面状態を有する生分解性樹脂架橋発泡体シートおよびこのシートを用いた粘着テープを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために鋭意検討した結果、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明は、
(1)生分解性脂肪族ポリエステル及び/またはその変性物からなる発泡体シートであって、前記発泡体シートの気泡は、長手方向断面において長手方向の平均径(A)と厚さ方向の平均径(B)との比(A)/(B)が2〜20の範囲の扁平な断面形状を有するものであることを特徴とする生分解性樹脂架橋発泡体シート。
(2)生分解性脂肪族ポリエステル及び/またはその変性物が、生分解性脂肪族・芳香族共重合ポリエステルを含むことを特徴とする(1)に記載の生分解性樹脂架橋発泡体シート。
(3)発泡倍率が1.5〜40倍の範囲であることを特徴とする(1)または(2)記載の生分解性樹脂架橋発泡体シート。
(4)発泡体の厚みが0.05〜2mmの範囲であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の生分解性樹脂架橋発泡体シート。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の生分解性樹脂架橋発泡体シートの少なくとも片面に、粘着剤を積層してなることを特徴とする粘着テープ。
である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0011】
本発明は、生分解性樹脂架橋発泡体シートにおいて、例えば圧潰される、延伸されるなどして、扁平な断面形状の気泡構造を有することに特徴がある。この気泡構造とすることで柔軟性および強度の向上を両立した生分解性樹脂架橋発泡体シートが得られる。
【0012】
本発明で使用する生分解性脂肪族ポリエステル及び/またはその変性物としては、特には限定されないが、生分解性脂肪族ポリエステルとして、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ−β−プロピオラクトン、ポリ−β−ブチロラクトン、ポリ−γ−ブチロラクトン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリリンゴ酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート等の脂肪族ポリエステル、生分解性脂肪族ポリエステルの変性物として、ポリカーボネート変性物であるポリブチレンサクシネート・カーボネート、ポリエチレンサクシネート・カーボネート等のカーボネート共重合体や、テレフタレート変性物であるポリブチレンサクシネート・テレフタレート共重合体等の脂肪族・芳香族共重合ポリエステルが挙げられる。中でも柔軟性、伸び等の観点から、脂肪族・芳香族共重合ポリエステルが好ましく用いられる。
【0013】
これらの生分解性脂肪族ポリエステル及び/またはその変性物は単独で用いても良いし、2種類以上併用してもよい。
【0014】
本発明の生分解性脂肪族・芳香族共重合ポリエステルとは、脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルの共重合体をいう。本発明で使用する生分解性脂肪族・芳香族共重合ポリエステルとしては、特には限定されないが、ポリエチレンテレフタレート・サクシネート共重合体、ポリエチレンテレフタレート・アジペ−ト共重合体、ポリエチレンテレフタレート・セバケート共重合体、ポリエチレンテレフタレート・ドデカジオネート共重合体、ポリブチレンテレフタレート・サクシネート共重合体、ポリブチレンテレフタレート・アジペ−ト共重合体、ポリブチレンテレフタレート・セバケート共重合体、ポリブチレンテレフタレート・ドデカジオネート共重合体、ポリヘキシレンテレフタレート・サクシネート共重合体、ポリヘキシレンテレフタレート・アジペ−ト共重合体、ポリヘキシレンテレフタレート・セバケート共重合体、ポリヘキシレンテレフタレート・ドデカジオネート共重合体などを挙げることができる。。これらの生分解性脂肪族・芳香族共重合ポリエステルは単独で用いても良いし、2種類以上併用、あるいは、他の脂肪族ポリエステルと併用してもよい。
【0015】
尚、本発明で使用する生分解性脂肪族ポリエステル及び/またはその変性物を構成する脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、アゼライン酸などが使用できる。なお上記の脂肪族ジカルボン酸はそれらのエステルあるいは酸無水物であってもよい。
【0016】
また、脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどを使用できる。なお上記の脂肪族ジヒドロキシ化合物はこれらの誘導体であるエポキシ化合物であっても良い。
【0017】
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、oーベンゼンジカルボン酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸などが使用できる。好ましくはテレフタル酸である。
【0018】
これらの脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジヒドロキシ化合物、芳香族ジカルボン酸は、それぞれ単独であるいは混合物として用いることができ所望の組合せが可能である。
【0019】
また、本発明の目的を損なわない範囲でヒドロキシカルボン酸化合物、分子内に水酸基を3個以上含有する多価アルコール、不飽和結合を1つ以上含有する多価アルコール、分子内にカルボキシル基を3個以上含有する多価カルボン酸化合物、分子内に水酸基を1個以上含有する多価カルボン酸化合物等を共重合することができる。
【0020】
本発明に用いられる生分解性脂肪族ポリエステル及び/またはその変性物は、本発明の目的を損なわない範囲で他の生分解性樹脂を混合してもよい。他の生分解性樹脂としては、合成及び/又は天然高分子が使用される。合成高分子としては、酢酸セルロース、セルロースブチレート、セルロースプロピオネート、硝酸セルロース、硫酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、硝酸酢酸セルロース等の生分解性セルロースエステル等、また、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリロイシン等のポリペプチドや、ポリビニルアルコール等が挙げられる。また、天然高分子としては、例えば、澱粉として、トウモロコシ澱粉、コムギ澱粉、コメ澱粉などの生澱粉、酢酸エステル化澱粉、メチルエーテル化澱粉、アミロース等の加工澱粉等が挙げられる。また、セルロース、カラギーナン、キチン・キトサン質、ポリヒドロキシブチレート・バリレート等の天然直鎖状ポリエステル系樹脂等の天然高分子等が例示できる。また、これらの生分解性樹脂を構成する成分の共重合体であっても良い。これらの生分解性樹脂は単独で用いても良いし、2種類以上併用しても良い。
【0021】
更に生分解性樹脂以外の樹脂成分として、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリブテン等を本発明の効果を妨げない範囲で添加しても良い。
【0022】
本発明で使用される発泡剤としては、無機発泡剤、揮発性発泡剤、熱分解型発泡剤などが用いられるが、熱分解型発泡剤が好ましく使用される。
【0023】
熱分解型発泡剤とは熱分解温度を有する発泡剤であれば特に限定されないが、例えば、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、炭酸水素ナトリウム等の重炭酸塩等を挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、併用しても良く、樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.1〜40重量部の割合で使用され、より好ましくは1〜20重量部である。それぞれの種類や発泡倍率によって任意に混合量を変えることができる。熱分解型発泡剤の添加量は、少なすぎると樹脂組成物の発泡性が低下し、多すぎると得られる発泡体の強度、並びに耐熱性が低下する傾向がある。
【0024】
尚、上記発泡剤に分解温度を調節するため、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、尿素等の分解温度調節剤が含有されているものも好ましく用いることができる。
【0025】
本発明の生分解性樹脂架橋発泡体シートを得るには、生分解性樹脂と発泡剤だけで構成されていても良いが、良好な架橋発泡体を得るためにはさらに架橋助剤を含有していることが好ましい。架橋助剤は特に限定されず、従来公知の多官能性モノマー、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート等のアクリレート系又はメタクリレート系化合物;トリメリット酸トリアリルエステル、ピロメリット酸トリアリルエステル、シュウ酸ジアリル等のカルボン酸のアリルエステル;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のシアヌール酸又はイソシアヌール酸のアリルエステル;N−フェニルマレイミド、N,N'−m−フェニレンビスマレイミド等のマレイミド系化合物;フタル酸ジプロパギル、マレイン酸ジプロパギル等の2個以上の三重結合を有する化合物;ジビニルベンゼンなどの多官能性モノマーを使用することができ、取り扱いやすさと汎用性等の点から、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート等のエステル系の多官能性モノマーが好ましく用いられる。
【0026】
これらの架橋助剤は、それぞれ単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋助剤の添加量は、少なすぎると良好な架橋発泡体が得られず、多すぎると得られた発泡体の成形性が低下するため、樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.5〜10重量部、より好ましくは1〜8重量部である。
【0027】
本発明の生分解性樹脂架橋発泡体シートを得るには、製造時および使用時における樹脂の劣化を抑えるために、さらにラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤、ラジカル連鎖開始阻害剤から選ばれる安定剤を含有していることが好ましい。ラジカル捕捉剤としては、発生したラジカルを捕捉し、ラジカル連鎖反応の進行を禁止する物質であれば、特に限定はされないが、例えばラクトン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等を使用することができる。過酸化物分解剤としては、生成した過酸化物をラジカルを生成しない形で分解する物質であれば、特に限定はされないが、例えばリン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等を使用することができる。ラジカル連鎖開始阻害剤としては、光、熱、放射線、重金属の接触作用等により開始するラジカル連鎖反応を阻害する物質であれば、特に限定はされないが、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、金属不活性化剤等を使用することができる。これらは単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても構わない。2種類以上を組み合わせて用いる場合、種類の違う安定剤を組み合わせると相乗効果を発揮し、それぞれ単独で用いるより大きな効果が得られることがあり好ましい。安定剤の添加量は、樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部の割合で使用される。0.01重量部未満であると樹脂は劣化し外観良好な発泡体が得られず、10重量部を越えて添加しても安定性の向上は見られず、コストアップにつながり好ましくない。
【0028】
さらに、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤、ラジカル連鎖開始阻害剤以外の他の安定剤を混合しても構わない。他の安定剤としては、樹脂改質剤、加工安定剤、光安定剤、難燃化用安定剤、蛍光増白剤、発泡用安定剤、ペースト用安定剤等が挙げられる。これらの安定剤は単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。
【0029】
本発明に使用する生分解性樹脂組成物中には、本発明の効果を阻害しない範囲において、添加剤を添加しても良い。例えば、添加剤として架橋剤、滑剤、顔料、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、核剤、可塑剤、抗菌剤、生分解促進剤、発泡剤分解促進剤、ブロッキング防止剤、充填剤、防臭剤、増粘剤、発泡助剤、気泡安定剤等を単独、もしくは2種類以上併用して添加しても良い。
【0030】
本発明の生分解性樹脂架橋発泡体の形態はシート状である。シート状にすることにより、生産性が優れるだけでなく、生分解速度を速くすることができる。生分解性樹脂架橋発泡体シートの厚みは、0.05〜2mmの範囲が好ましい。発泡体シートの厚みが0.05mm未満では発泡体の緩衝特性が低下する傾向にある。また、2mmより厚くなると発泡体シートの剛性が高くなり、発泡体シートの屈曲性が低下する傾向が見られる。尚、該発泡体シートの厚みは予め厚いシートを作成し、スライス機等を用いて厚み方向に分割して作成しても良く、特に極薄の発泡体シートを得るには好ましい方法である。
【0031】
本発明において、樹脂組成物を架橋する方法は特に限定されず、例えば、電離性放射線を所定線量照射する方法、過酸化物による架橋、シラン架橋などをあげることができる。
【0032】
電離性放射線としては、例えば、α線、β線、γ線、電子線等を挙げることができる。電離性放射線の照射線量、照射回数、電子線による照射においては、加速電圧等は、目的とする架橋度、被照射物の厚み等によって異なるが、照射線量は通常5〜300kGy、好ましくは10〜150kGyである。照射線量が少なすぎると発泡成形時に気泡を保持するために十分な溶融粘度が得られず、多すぎると得られる発泡体の成形加工性が低下する。
【0033】
また、照射回数は通常4回以下である。照射回数が4回を超えると樹脂の劣化が進行し、発泡時に均一な気泡を有する発泡体が得られないことがある。
【0034】
また、表層部と内層部の架橋度を均一にする方法としては、例えば、電離性放射線を該シートの両面から照射する、すなわち2回照射する方法などを用いるとよい。
【0035】
さらに、電子線による照射においては、電子の加速電圧を制御することで様々な厚みの被照射物に対して効率よく樹脂を架橋させることが出来、好ましい。ここで、加速電圧は通常200〜1500kVであり、好ましくは650〜1000kVである。加速電圧が200kVを下回ると電子線が内部まで届きにくく、発泡時に内部の気泡が粗大になることがあり、1500kVを超えると樹脂の劣化が進行することがある。これは、架橋助剤として多官能性モノマーを添加した場合でも同様である。
【0036】
本発明において、発泡は、架橋した樹脂組成物を熱分解型発泡剤の熱分解温度以上に加熱することで通常行われる。
【0037】
本発明の生分解性樹脂架橋発泡体シートの発泡倍率は、1.5〜40倍の範囲であることが好ましい。発泡倍率が1.5倍を下回ると軽量性、柔軟性が低下傾向となり、また、発泡倍率が40倍を上回ると機械的特性および成形加工性が低下傾向となる。
【0038】
本発明でいう発泡倍率とは、JIS−K−6767に規定される見掛け密度を測定し、次式に従って算出した値である。
発泡倍率=発泡前シートの見掛け密度/架橋発泡体シートの見掛け密度
本発明の生分解性樹脂架橋発泡体シートのゲル分率は10%以上であることが好ましい。ゲル分率が10%未満では圧縮回復性の良好な柔軟な発泡体シートが得られない。
【0039】
本発明でいうゲル分率とは、以下の方法にて算出した値のことである。すなわち、生分解性樹脂架橋発泡体を約50mg精密に秤量し、25℃のクロロホルム25mlに3時間浸漬した後、200メッシュのステンレス製金網で濾過して、金網状の不溶解分を真空乾燥する。次いで、この不溶解分の重量を精密に秤量し、以下の式に従ってゲル分率を百分率で算出した。
ゲル分率(%)={不溶解分の重量(mg)/秤量した生分解性樹脂架橋発泡体の重量(mg)}×100
本発明は発泡体シートの気泡構造に特徴がある。気泡は、発泡体シートの長手方向断面において長手方向の平均径(A)と厚さ方向の平均径(B)との比(A)/(B)が2〜20の範囲の扁平な断面形状を有する。この比が2を下回ると柔軟性および強度の向上を両立できない。また、20を上回ると発泡体の緩衝特性が低下する。
【0040】
本発明でいう長手方向の平均径(A)とは、以下の方法にて算出した値のことである。すなわち、発泡体シートを長手方向に切断し、電子顕微鏡にて長手方向の気泡断面を50倍で写真撮影する。次にこの写真において一定長さ(L)の線を発泡体シートが厚み方向に等分割されるように(n)本ひく。Lは5cm以上である。各線上に存在する気泡数(N)を数え、以下の式に従い平均径(D)を算出する。
平均径(D)=一定長さ(L)/気泡数(N)
長手方向の平均径(A)は、各線毎に算出した平均径(D)を合計し、これを線の本数(n)で割ることで求める。
【0041】
また、厚み方向の平均径(B)の値は上記写真を用いて、一定長さ(L)の線上に存在する気泡数(N)として数えた該気泡それぞれの厚さ方向の最大径を計測し、この平均値を求める。次いで、同様に厚み方向に等分割したそれぞれ(n)本の線毎に求めた上記厚み方向の平均値を合計し、これを総本数(n)で割り厚み方向の平均径(B)とすることで求める。
【0042】
尚、厚み方向に分割する線の本数(n)は、発泡体シートの厚みにより異なるが、1mm未満では2〜5本、1mm以上では5〜10本とすることが好ましい。
【0043】
本発明の粘着テープは、上記の生分解性樹脂架橋発泡体シートの少なくとも1面に粘着剤を積層することで得られる。
【0044】
粘着剤としては自己粘着性を有する素材が用いられる。例えば、天然ゴムラテックス等の天然系、IRラテックス、アクリル共重合ラテックス、アクリル変性ラテックス、酢酸ビニルラテックス、SBRラテックス等の合成系、天然系と合成系をブレンドしたもの等が使用される。好ましくはアクリル系粘着剤である。
【0045】
尚、粘着剤には粘着特性を調整する目的で粘着付与剤、充填剤、顔料、防錆剤等が添加されていても良い。
【0046】
次に、本発明の生分解性樹脂架橋発泡体シートの好ましい製造方法について説明する。製造方法は、樹脂組成物を成形しシートを得る工程、該シートに電離性放射線を照射し該樹脂組成物を架橋させ架橋シートを得る工程、さらに該架橋シートを該熱分解型発泡剤の分解温度以上の温度で熱処理し架橋発泡体シートとする工程、架橋発泡体シートを加熱し圧潰する工程からなる。
【0047】
生分解性樹脂と熱分解型発泡剤を含む樹脂組成物を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、ミキシングロール等の混練装置を用いて、熱分解型発泡剤の分解温度以下で均一に溶融混練し、これをシート状に成形する。これらの樹脂組成物は、溶融混練する前に必要に応じてミキサー等で機械的に混合しておいても良い。このときの溶融混練温度は、発泡剤の分解開始温度よりも10℃以上低い温度であることが好ましい。混練温度が高すぎると混練時に熱分解型発泡剤が分解してしまい、良好な発泡体が得られない。 また、このシートの厚みは0.1mm〜5mmであるのが好ましい。シートの厚みが0.1mm未満であると発泡成形時にシート表面からのガス抜けが多く、均一な発泡体となりにくく、5mmを超えるとシートの剛性が高くなりすぎ、連続生産時の巻き取り性等に支障を生じることがある。
【0048】
次いで、得られたシート状の樹脂組成物に電離性放射線を所定線量照射して樹脂組成物を架橋させ架橋シートを得る。
【0049】
次いで、この架橋シートを熱分解型発泡剤の分解温度以上の温度で熱処理し発泡させる。発泡成形のための熱処理は、従来公知の方法を用いてよく、例えば、縦型及び横型の熱風発泡炉、溶融塩等の薬液浴上などで行うことができる。生分解性樹脂が加水分解を起こしやすい樹脂である場合は、薬液浴上で発泡させるよりも、縦型及び横型熱風発泡炉で発泡を行った方が表面状態の良好な架橋発泡体シートが得られる。また、必要に応じて発泡成形を行う前に予熱を行い、樹脂を軟化させておくと少ない熱量で、安定した架橋発泡体シートを得ることができる。
【0050】
次いで、発泡体シートを、赤外線ヒーターや熱風を熱源とする装置を用いて予め加熱し、ニップロール等を用いて圧潰する。このようにして得られた発泡体シートの気泡は長手方向断面において長手方向の平均径(A)と厚さ方向の平均径(B)との比(A)/(B)が2〜20の範囲の扁平な断面形状を有する。
【0051】
発泡体シートを圧潰する時、延伸倍率1.1倍以上で延伸することが好ましい。圧潰しながら延伸することにより、厚みの薄い発泡体シートを得ることができる。発泡体シートは、スライスすることにより厚みを調節してから圧潰しても構わない。また、得られた架橋発泡体シートはコロナ放電処理や接着剤塗布加工などの後加工を施しても構わない。
【0052】
本発明の粘着テープを得る製造方法としては従来公知の方法を用いてよく、例えば、離型紙に粘着剤を塗布乾燥した後発泡体に転写する方法等が用いられる。
【0053】
このようにして得られた生分解性樹脂架橋発泡体シートの用途は特に限定されず、例えば、緩衝材、断熱材、包装材などに使用することができる。特に、テープ、パッキンの用途に使用すると、本発明の特徴を十分生かすことができ、好ましい。
【0054】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(型沿い性の評価)
得られた発泡体を粘着テープとし、凹凸のある型に貼り、状態を評価した。
○:凹凸の型沿いが良好。
×:凹凸の型に沿わず、隙間が生じる状態。
【0055】
実施例1
生分解性樹脂として脂肪族ポリエステル"ビオノーレ"#3001(昭和高分子(株)製)100kg、発泡剤としてアゾジカルボンアミド5.0kg、架橋助剤として1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート3kg、安定剤として"イルガノックス"1010(チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製)0.5kg、"イルガノックス"PS802(チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製)0.3kgを準備し、これらをヘンシェルミキサーに投入し、200〜400rpmの低速回転で約3分間混合し、ついで800〜1000rpmの高速回転とし、3分間混合して発泡用樹脂組成物とした。この発泡用樹脂組成物を発泡剤の分解しない温度、具体的には120℃に加熱したベント付きの押出し機に導入、Tダイから押出し、厚みが1.5mmの架橋発泡用シートに成型した。このシートに45kGyの電子線を照射し、架橋せしめた後、縦型熱風発泡装置に連続的に導入、240℃で3〜4分加熱発泡して、厚みが2.2mmの架橋発泡体シートとして巻取った。
【0056】
次に得られた架橋発泡体シートをスライスし、厚みを1.1mmとした。スライスした架橋発泡体シートを赤外線と熱風によって加熱し、その表面温度を約100℃とした後、これを350kPaのニップ圧に調節したロールに通して圧潰すると共に1.5倍に延伸し、常温まで冷却して架橋発泡体シートを得た。このようにして得られた発泡体シートは厚み0.6mm、ゲル分率35%、発泡倍率5倍であり、また、スライス面の持つ凹凸はその後加熱したことにより平滑となり、両面共に表面形態がよい外観美麗なものであった。また、気泡形状を観察したところ、長手方向の平均径と厚さ方向の平均径の比が5.0であった。
【0057】
この発泡体シートの片面に粘着剤として天然ゴムラテックスベースの粘着剤に安定剤、粘着付与剤、粘度調整剤、ブロッキング防止剤を添加したものを塗工し、離型紙を設け粘着テープとしたところ、柔軟性、凹凸の型沿いが良好、かつ、十分な強度を有していた。このものを土壌中に埋設した所、1年間経過後には実用性のない強度まで低下し、分解変化が観察された。
実施例2
生分解性樹脂として脂肪族・芳香族共重合ポリエステル"エコフレックス"(BASF(株)製)100kg、発泡剤としてアゾジカルボンアミド5.0kg、架橋助剤として1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート5kgを用い、80kGyの電子線を照射した以外は、実施例1と同様の方法により、厚みが2.0mmの架橋発泡体シートとして巻取った。
【0058】
次に得られた架橋発泡体シートをスライスし、厚みを1.0mmとした。スライスした架橋発泡体シートを用いて、表面温度を約120℃とした以外は実施例1と同様の方法により、圧潰すると共に延伸し、常温まで冷却して架橋発泡体シートを得た。このようにして得られた発泡体シートは厚み0.5mm、ゲル分率37%、発泡倍率4倍であり、また、スライス面の持つ凹凸はその後加熱したことにより平滑となり、両面共に表面形態がよい外観美麗なものであった。また、気泡形状を観察したところ、長手方向の平均径と厚さ方向の平均径の比が5.4であった。
【0059】
この発泡体シートの片面に実施例1と同様の方法で粘着剤、離型紙を設け粘着テープとしたところ、柔軟性に頗る優れており、凹凸の型沿いが良好、かつ、十分な強度を有していた。このものを土壌中に埋設した所、1年間経過後には実用性のない強度まで低下し、分解変化が観察された。
実施例3
実施例2と同様の方法により、厚みが0.8mmの架橋発泡用シートを作成し、1.2mmの架橋発泡体シートを作成した。
【0060】
得られた架橋発泡体シートをスライスし、厚みを0.6mmとした。このシートを用いて延伸倍率を1.7倍とした以外は実施例2と同様の方法により、圧潰すると共に延伸し、厚み0.25mm、ゲル分率28%、発泡倍率4倍の架橋発泡体シートを得た。得られた発泡体シートは両面共に表面形態がよい外観美麗なものであった。また、気泡形状を観察したところ、長手方向の平均径と厚さ方向の平均径の比が6.1であった。
【0061】
この発泡体シートの片面に実施例1と同様の方法で粘着剤、離型紙を設け粘着テープとしたところ、柔軟性に頗る優れており、凹凸の型沿いも頗る良好、かつ、十分な強度を有していた。このものを土壌中に埋設した所、1年間経過後には実用性のない強度まで低下し、分解変化が観察された。
比較例1
生分解性樹脂として脂肪族ポリエステル"ビオノーレ"#3001(昭和高分子(株)製)100kg、発泡剤としてアゾジカルボンアミド5.0kg、架橋助剤として1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート3kg、安定剤として"イルガノックス"1010(チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製)0.5kg、"イルガノックス"PS802(チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製)0.3kgを準備し、これらをヘンシェルミキサーに投入し、200〜400rpmの低速回転で約3分間混合し、ついで800〜1000rpmの高速回転とし、3分間混合して発泡用樹脂組成物とした。この発泡用樹脂組成物を発泡剤の分解しない温度、具体的には120℃に加熱したベント付きの押出し機に導入、Tダイから押出し、厚みが1.5mmの架橋発泡用シートに成型した。このシートに45kGyの電子線を照射し、架橋せしめた後、縦型熱風発泡装置に連続的に導入、240℃で3〜4分加熱発泡して、架橋発泡体シートとして巻取った。このようにして得られた発泡体シートは厚み2.2mm、ゲル分率35%、発泡倍率8倍であり、両面共に表面形態がよく外観美麗なものであった。また、気泡形状を観察したところ、長手方向の平均径と厚さ方向の平均径の比が1.5であった。
【0062】
この発泡体シートの片面に実施例1と同様の方法で粘着剤、離型紙を設け粘着テープとしたところ、十分な強度を有するものの凹凸の型に沿わず、隙間が生じた。このものを土壌中に埋設した所、1年間経過後には実用性のない強度まで低下し、分解変化が観察された。
比較例2
生分解性樹脂として、脂肪族ポリエステル”ビオノーレ”#3001(昭和高分子株製)を150℃に設定した押出機に導入し、途中より炭酸ガスを約2.5wt%注入し、リップ幅0.4mmに設定したサーキュラーダイより押し出し、圧力を解放することで発泡体を得た。
【0063】
このようにして得られた発泡体の厚みは1.1mm、ゲル分率は0%、発泡倍率は5倍、発泡体の外観は良好であった。また、気泡形状を観測したところ、長手方向の平均径と厚さ方向の平均径の比が1.8であり、発泡体内部の気泡は不均一で、厚み方向に座屈感のある発泡体であった。
【0064】
扁平な気泡形状を有する発泡体シートを得るために、この発泡体シートを実施例1と同様の方法で圧潰しながら延伸しようと試みたが、耐熱性が不足しているため加熱、延伸したところ溶断してしまい、扁平な気泡形状を有する発泡体を得ることは不可能であった。
【0065】
そのため、作成した発泡体シートの片面に実施例1と同様の方法で粘着剤、離型紙を設け粘着テープとしたところ、凹凸の型には沿わず、隙間が生じた。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、柔軟性および強度の向上を両立し、特に厚みの薄い良好な表面状態を有する生分解性樹脂架橋発泡体シートおよびこのシートを用いた粘着テープが得られる。
Claims (5)
- 生分解性脂肪族ポリエステル及び/またはその変性物からなる発泡体シートであって、前記発泡体シートの気泡は、長手方向断面において長手方向の平均径(A)と厚さ方向の平均径(B)との比(A)/(B)が2〜20の範囲の扁平な断面形状を有するものであることを特徴とする生分解性樹脂架橋発泡体シート。
- 生分解性脂肪族ポリエステル及び/またはその変性物が、生分解性樹脂脂肪族・芳香族共重合ポリエステルを含むことを特徴とする請求項1に記載の生分解性樹脂架橋発泡体シート。
- 発泡倍率が1.5〜40倍の範囲であることを特徴とする請求項1または2記載の生分解性樹脂架橋発泡体シート。
- 発泡体の厚みが0.05〜2mmの範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の生分解性樹脂架橋発泡体シート。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性樹脂架橋発泡体シートの少なくとも片面に、粘着剤を積層してなることを特徴とする粘着テープ。
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