JP4170163B2 - フェノールフォーム用原料組成物並びにそれを用いたフェノールフォーム及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェノールフォーム用原料組成物並びにそれを用いたフェノールフォーム及びその製造方法に係り、特に、発泡剤として水を利用した酸硬化型の水発泡フェノールフォーム用原料組成物、並びにかかる原料組成物を加熱発泡硬化せしめることによって得られる水発泡フェノールフォーム、及びそのフェノールフォームの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、酸硬化型フェノールフォームは、レゾール型フェノール樹脂、酸硬化剤(硬化触媒)及び発泡剤を原料とし、それらを混合して、発泡硬化せしめることにより、製造されている(例えば、非特許文献1,2参照。)。また、この酸硬化型フェノールフォームの製造に使用される酸硬化剤としては、スルホン酸やカルボン酸、無機酸等、各種のものが、採用されてきている。
【0003】
ところが、それらの酸硬化剤は、形成されるフェノールフォームに対して、望ましくない吸水性を付与したり、製品としてのフェノールフォームの周りに設置される金属板等に腐食を引き起こしたりする原因ともなっている。より具体的には、フェノールフォームを壁材として、金属サイディングの用途等に用いる場合において、フェノールフォームに含まれる酸硬化剤が水を引き寄せ易く、そして吸収された水が凍結や蒸発することによって、壁材に変形が生じたり、また酸硬化剤の溶出によって、金属板とフェノールフォームとの界面に、腐食が生じ易くなっているのである。
【0004】
かかる状況下、そのような酸硬化剤による問題の発生を解消するために、酸硬化剤の使用量を低減したり、酸硬化剤として比較的に弱い酸を用いたりする手法が、考えられるのであるが、単に、酸硬化剤の使用量を低減したり、或いは弱酸を用いたりすると、酸硬化剤による触媒作用が低減されるところから、硬化速度が遅くなり、その結果、レゾール型フェノールフォームの硬化反応と発泡剤による発泡のバランスが崩れて、目的とする気泡構造のフェノールフォームが得られなくなる等の問題があった。
【0005】
また、良好な硬化速度乃至は硬化挙動を確保しつつ、腐食等を誘引する酸硬化剤の使用量を可及的に低減するために、フェノールフォーム製造時に、予めその主原料たるレゾール型フェノール樹脂の温度を上げて、フェノールフォームの硬化反応の反応速度を高める手法も考えられるのであるが、従来より発泡剤として、ペンタン等の炭化水素、フロン、塩化メチレン等のハロゲン系炭化水素等の低沸点溶剤が用いられているところから、発泡剤の沸点以上又は沸点付近の温度まで加熱することが難しく、加熱温度を有効に上げることは出来なかった。
【0006】
より具体的には、上述せる如き発泡剤は、通常、レゾール型フェノール樹脂に対して添加された後、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤との混合によって発生する反応熱によって気化して発泡が進行するのであるが、常圧下において発泡剤の沸点以上又は沸点付近の温度までレゾール型フェノール樹脂を加熱すると、酸硬化剤を混合する前から発泡剤の気化が極めて激しくなって、発泡剤がフォーム形成に寄与することなく原料組成物中から抜け出てしまって、所望とする密度のフェノールフォームを得ることが出来なくなるといった問題を生じる恐れがあり、そのために、加熱温度が必然的に制約されていたのである。
【0007】
さらに、低沸点発泡剤等の汎用の発泡剤を含む系では、上述せるように、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを混合すると、内部発熱によって発泡剤が急激に気化して発泡が進行するところから、それらの成分を混合して得られるフェノールフォーム用原料組成物に、更に、無機材料及び/又は有機材料からなる各種の添加剤を混合することは、極めて困難であった。特に、ホウ酸粉末や硼砂粉末等は、難燃剤として期待されているのであるが、かかるホウ酸粉末や硼砂粉末等をレゾール型フェノール樹脂に添加すると、レゾール型フェノール樹脂が直ぐに増粘してしまうところから、その混合が著しく困難であったのである。
【0008】
加えて、上述せる如き炭化水素やハロゲン系炭化水素等の汎用の発泡剤は、オゾン層破壊や変異原生が危惧されたり、危険物であるところから、その取扱いには細心の注意を払わなければならないといった問題も内在している。
【0009】
【非特許文献1】
アンドレ・クノップ/ルイス・エー・ピラト(Andre Knop / Louis A. Pilato)著、「フェノール樹脂−化学的基礎、応用分野と実用性能/将来展望−」、第2版、(株)プラスチックス・エージ、1987年7月10日、p.185−187
【非特許文献2】
「発泡プラスチック技術総覧」、株式会社情報開発、平成元年7月30日、p.179−181
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、フェノールフォームの吸水を抑制すると共に、フェノールフォームが起因となる腐食を効果的に抑制する技術を提供することにある。また、別の課題とするところは、取扱性が向上せしめられると共に、無機材料や有機材料からなる各種添加剤を容易に混合せしめることが可能なフェノールフォーム用原料組成物及びフェノールフォームの製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そして、本発明者は、そのような課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ペンタン等の炭化水素や、フロン、塩化メチレン等のハロゲン系炭化水素等の汎用の発泡剤に代えて、水を発泡剤として用いれば、取扱性の悪化を有利に抑制しつつ、原料組成物の液温を上げることが可能となり、換言すれば、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを、従来に比して高い温度下において混合せしめることが可能となり、その結果、レゾール型フェノール樹脂の硬化速度を高めて、酸硬化剤の使用量を減らすことが可能となって、フェノールフォームの低吸水化及びフェノールフォームが引き起こす腐食の防止を、極めて効果的に図ることが出来ることを見出したのである。また、従来、レゾール型フェノール樹脂と混合すると増粘するために取り扱いが困難であった、ホウ酸を始めとする無機材料や有機材料からなる各種添加剤を、容易に配合せしめることも可能となって、添加剤による各種機能が付与されたフェノールフォームを有利に製造し得ることも見出したのである。
【0012】
従って、本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであって、その要旨とするところは、発泡剤として、水を含有し、炭化水素及びハロゲン系炭化水素は含まないフェノールフォーム用原料組成物であって、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを必須成分として含有することを特徴とするフェノールフォーム用原料組成物にある。
【0013】
すなわち、このような本発明に従うフェノールフォーム用原料組成物にあっては、発泡剤として、従来の炭化水素やハロゲン系炭化水素に代えて、水が採用されているところから、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを、従来に比して高い温度下において混合せしめることが可能となる。つまり、加熱下において、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを混合して、原料組成物の液温を有利に上げることが出来るのである。そして、この加熱により、反応速度を効果的に向上せしめることが可能となるところから、使用する酸硬化剤(硬化触媒)の量を減らすことが可能となり、以て、酸硬化剤の親水性に起因するフェノールフォームの吸水を有利に低減し得るようになると共に、フェノールフォーム中に含まれる酸硬化剤による腐食の発生を極めて効果的に抑制し得るようになっているのである。
【0014】
また、上述せる如きフェノールフォーム用原料組成物を用いれば、その取扱性が良好となるところから、従来では困難であった、無機材料や有機材料からなる各種の添加剤の混合を容易に行なうことが出来るようにもなる。
【0015】
加えて、発泡剤として、炭化水素やハロゲン系炭化水素が使用されることがないところから、作業環境の改善が効果的に実現され得ると共に、オゾン層破壊、地球温暖化等の問題も回避され得て、地球環境の保護も有利に図られ得ることとなる。
【0016】
なお、本発明に従うフェノールフォーム用原料組成物の好ましい態様の一つによれば、前記水の含有量は、45重量%以下となるように調整されていることが望ましい。このようにすれば、目的するフェノールフォームをより一層有利に得ることが出来る。
【0017】
また、かかる本発明に従うフェノールフォーム用原料組成物には、難燃剤が、更に、配合せしめられても良い。上述せるように、本発明に従うフェノールフォーム用原料組成物にあっては、従来では困難であった各種添加剤の混合を容易に行なうことが出来るところから、難燃剤も有利に配合せしめられることとなるのである。
【0018】
さらに、本発明は、上述せる如きフェノールフォーム用原料組成物を発泡硬化せしめることによって、形成されていることを特徴とするフェノールフォームをも、その要旨としている。
【0019】
このように、上記したフェノールフォーム用原料組成物を発泡硬化することにより形成されるフェノールフォームにあっては、酸硬化剤の使用量が有利に低減されるところから、低吸水化が有利に実現され得ていると共に、腐食を発生せしめるようなことも、効果的に抑制され得ているのである。
【0020】
さらに、本発明においては、発泡剤として、炭化水素及びハロゲン系炭化水素を含まず、且つ、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを必須成分として含有する原料組成物を用いて、フェノールフォームを製造する方法にして、発泡剤として、水を含有せしめると共に、前記レゾール型フェノール樹脂と前記酸硬化剤とを混合するに先立って、該レゾール型フェノール樹脂の温度を40〜100℃に調節する一方、該温度下において、該レゾール型フェノール樹脂と該酸硬化剤との混合を行なって、前記原料組成物を調製した後、かかる原料組成物の発泡硬化操作を行なうことを特徴とするフェノールフォームの製造方法をも、また、その要旨とするものである。
【0021】
このような本発明に従うフェノールフォームの製造方法にあっては、発泡剤として、従来の炭化水素やハロゲン系炭化水素に代えて、水が採用されていると共に、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤との混合を、40〜100℃の加熱温度下において行ない、その後、発泡硬化操作を実施するようにしているところから、使用する酸硬化剤の量を減らしても、所望とする硬化挙動(硬化速度)を確保することが可能となるのである。このため、本発明に従ってフェノールフォームを製造すれば、酸硬化剤に起因するフェノールフォームの吸水や、腐食の発生を極めて効果的に抑制し得るのである。
【0022】
また、発泡剤である水は、従来の発泡剤に比して、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤を混合した後の内部発熱によって、気化し難いところから、原料組成物の取り扱いが容易になる。更に、レゾール型フェノール樹脂の液温が、酸硬化剤との混合に先立って、予め、40〜100℃となるように調節されているところから、原料組成物の粘度も有利に低減せしめられ、これによっても、原料組成物の取扱性が改善される。このため、従来では困難であった、無機材料や有機材料からなる各種の添加剤の混合を、極めて容易に行なうことも可能となる。
【0023】
加えて、従来の汎用発泡剤を用いる場合に比して、作業環境が著しく改善せしめられると共に、オゾン層破壊、地球温暖化等の問題も解消され得て、地球環境の保護も具現化され得ることとなる。
【0024】
さらに、本発明における好ましい態様の他の一つによれば、前記水が、前記原料組成物中に、45重量%以下となるように含有せしめられることが望ましく、これにて、目的するフェノールフォームを、より一層有利に製造することが可能となる。
【0025】
加えて、本発明に従うフェノールフォームの製造方法における好ましい態様の別の一つによれば、前記レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを含有する原料組成物に対して、更に、ホウ酸及び/又は硼砂を添加することが望ましい。上述せるように、本発明においては、無機材料や有機材料からなる各種の添加剤の混合を、極めて容易に行なうことが出来るところから、従来においては困難であったホウ酸や硼砂の添加も有利に実現され得るようになり、かかるホウ酸及び/又は硼砂の添加によって、フェノールフォームに対して、より一層優れた難燃性が付与されることとなる。
【0026】
【発明の実施の形態】
ところで、フェノールフォームの製造に用いられる原料組成物としては、レゾール型フェノール樹脂及び酸硬化剤を必須の構成成分として配合してなるものが採用されるのであるが、本発明においては、特に、かかる原料組成物中に水を発泡剤として含有するものが、用いられるのである。
【0027】
そこにおいて、レゾール型フェノール樹脂としては、従来より公知のレゾール型フェノール樹脂であれば、特に制限されるものでなく、例えば、フェノール類とアルデヒド類を、反応触媒(塩基、酸、二価金属塩、又はこれらの組合せ)の存在下において、40℃〜還流温度で、0.5〜48時間反応させた後、必要に応じて、中和や濃縮を行なうことにより、製造される酸硬化性のレゾール型フェノール樹脂や、かかるレゾール型フェノール樹脂の製造時乃至は製造後に、任意の変性剤と混合或いは反応させることにより得られる、変性レゾール型フェノール樹脂、また、これらレゾール型フェノール樹脂と変性レゾール型フェノール樹脂の混合物を、挙げることが出来る。
【0028】
そして、これらのレゾール型フェノール樹脂が適宜に選択されて用いられることとなるのであるが、かかるレゾール型フェノール樹脂の使用量としては、フェノールフォーム用原料組成物中において、樹脂分が、一般に、45〜97重量%程度となる割合が採用される。
【0029】
また、これらのレゾール型フェノール樹脂は、一般に、水に溶解せしめられた状態で、或いは、フェノール類とアルデヒド類との反応で生成される水分を含んだ状態で、適当な水分量(3〜50重量%程度)に調整されて、液状樹脂として使用されることとなるのである。
【0030】
更に、レゾール型フェノール樹脂を使用するに際しては、後述する酸硬化剤との混合に先立って、予め、その液温が、加熱により、40〜100℃、好ましくは50〜80℃となるように調節されることとなる。このように、フェノールフォーム用原料組成物の主原料たるレゾール型フェノール樹脂を所定の温度に加熱して用いれば、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを、従来に比して高い温度下において混合して、原料組成物の液温を高めることが出来るところから、使用する酸硬化剤の量を減らしても、所望とする硬化挙動(硬化速度)を有利に実現することが可能となるのである。また、レゾール型フェノール樹脂が加熱されることにより、液の粘度が低減されて、良好な混合性と取扱性が得られると共に、加熱下における発泡硬化操作をより一層有利に実施することが可能となり、また、発泡硬化操作を行なう際の加熱時間(キュア時間)の短縮化を図ることも可能となる。
【0031】
なお、ここにおいて、上述せる如きレゾール型フェノール樹脂のより詳細な具体例としては、塩基触媒の存在下で反応を行なって得られるレゾール樹脂、酸触媒の存在下でノボラック化反応を行ない、該反応の途中若しくは該反応の後に塩基触媒反応を行なって得られるノボラック型レゾール樹脂、二価金属塩触媒反応を行なって得られるベンジルエーテル型レゾール樹脂、これらレゾール樹脂、ノボラック型レゾール樹脂及びベンジルエーテル型レゾール樹脂の製造過程若しくは製造後に、任意の化合物、例えば、1級アミン又は2級アミンとアルデヒド類を作用させて得られるマンニッヒ化合物、フェノール化合物に1級アミンとアルデヒド類を作用させて得られるベンゾオキサジン化合物、キシレン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、メシチレン樹脂を、混合乃至は反応せしめて得られる変性レゾール樹脂、及びこれらの混合物等を、挙げることが出来る。これらの中でも、レゾール樹脂及びノボラック型レゾール樹脂にあっては、特に、酸硬化性に優れているところから、好適に用いられる。
【0032】
なお、かかるレゾール型フェノール樹脂の主原料の一つであるフェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、キシレノール、ノニルフェノール、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、ナフトール、アントラノール、ビスフェノールF、ビスフェノールA、及びこれらをアセチル化、シリル化したもの等を挙げることが出来る。そして、これらは、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0033】
また一方、レゾール型フェノール樹脂の主原料の他の一つであるアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、ポリオキシメチレン、グリオキザール、フルフラール等を挙げることが出来る。これらのアルデヒド類は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0034】
また、上述せる如きフェノール類とアルデヒド類の使用割合としては、特に制限されるものではないものの、一般に、フェノール類の1モルに対し、アルデヒド類を、0.8〜3.0モル、より好ましくは、1.0〜2.3モルの割合で用いることが望ましい。
【0035】
さらに、上述せる如きレゾール型フェノール樹脂を製造する際に用いられる反応触媒としては、上述せるように、塩基(アルカリ性触媒)、酸(酸性触媒)、二価金属塩を挙げることが出来るが、中でも、アルカリ性触媒としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、トリエチルアミン、アンモニア、アンモニウム塩、ヒドロキシルアンモニウム塩等を挙げることが出来、これらのアルカリ性触媒は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0036】
そして、上記したフェノール類とアルデヒド類を、反応触媒の存在下において、常法に従って反応せしめることにより、一般に、100〜400程度の数平均分子量を有する酸硬化性のレゾール型フェノール樹脂が得られるのである。なお、そのようにして製造されたレゾール型フェノール樹脂は、そのまま用いられることも可能であるが、必要に応じて、中和操作や濃縮操作が施される。
【0037】
一方、本発明において採用される酸硬化剤(硬化触媒)は、上述せる如きレゾール型フェノール樹脂の硬化反応を促進するための成分であって、従来から公知の酸硬化剤が適宜に選択されて用いられることとなる。そして、そのような酸硬化剤としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸;硫酸、ホウフッ化水素酸等の無機酸等が挙げられ、これらは、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。なお、これら例示の酸硬化剤の中でも、フェノールスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸にあっては、フェノールフォームの製造に際して、適度な硬化速度を実現するところから、レゾール型フェノール樹脂の硬化と水(発泡剤)による発泡とのバランスがより一層良好となり、特に好適に用いられるのである。
【0038】
また、かかる酸性硬化剤の使用量としては、用いる酸硬化剤の種類や、前記レゾール型フェノール樹脂との混合時における温度条件等に応じて適宜に設定されるものの、本発明においては、その上限が、レゾール型フェノール樹脂の100重量部に対し、10重量部以下、より好ましくは5重量部以下、更に好ましくは3重量部以下とされることが望ましく、このように、酸硬化剤の使用量を最小限に抑えることで、目的とするフェノールフォームの低吸水化や、腐食の抑制を有利に図ることが出来るようになるのである。また、下限としては、特に制限されるものではないものの、レゾール型フェノール樹脂の100重量部に対し、0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上となる割合が、好適に採用されるのである。何故ならば、酸硬化剤が用いられなかったり、その使用量があまりにも少ない場合には、発泡硬化操作において、レゾール型フェノール樹脂の増粘,硬化に先立って、水(発泡剤)が気化してしまい、このため、水が発泡セルの形成に寄与することなく、原料組成物中から抜け出てしまうようになるところから、所望とする気泡構造のフェノールフォームを製造することが出来なくなるからである。
【0039】
なお、上記で例示した酸硬化剤は、常温で固体及び液体であり、それらを、そのまま、前記したレゾール型フェノール樹脂に対して配合,混合せしめることも可能ではあるものの、一般には、レゾール型フェノール樹脂との混合性を更に高めるべく、水を主体とする媒体に、50〜70重量%濃度となるように溶解せしめられて、水溶液の状態で用いられることとなる。また、かかる酸硬化剤の水溶液は、その使用量が相対的に少ないところから、一般に、加熱されることなく、そのまま、前記したレゾール型フェノール樹脂との混合に供されることとなるが、レゾール型フェノール樹脂と同様に、所定の温度に加熱されて、用いられても良い。
【0040】
ところで、本発明に従うフェノールフォーム用原料組成物には、上述せる如きレゾール型フェノール樹脂及び酸硬化剤と共に、水が、発泡剤として、含有せしめられるのである。なお、かかる水は、発泡剤としての作用を奏するだけでなく、減粘剤や保存安定化剤としても作用する。つまり、水は、発泡硬化操作において気化せしめられて、発泡セルを形成する以外にも、原料組成物の粘度を低下せしめる作用を奏すると共に、レゾール型フェノール樹脂を安定して保存せしめる作用をも奏するのである。
【0041】
そして、本発明において、上述せる如き水は、フェノールフォーム用原料組成物中に、45重量%以下となるように用いられることが望ましい。けだし、かかる水の含有量が45重量%を超えるようになると、発泡剤としての作用を充分に奏し難くなって、発泡が起こらず、レゾール型フェノール樹脂の硬化反応のみが進行することとなるからである。なお、上記した含有量の中でも、発泡セルの微細化の観点から、フェノールフォーム用原料組成物中の水分量は、15重量%以下、より好ましくは8重量%以下であることが望ましい。また、下限としては、特に制限されるものではないものの、発泡が充分に実現され得るように、一般に、0.5重量%以上、より好ましくは2重量%以上であることが、望ましい。
【0042】
なお、水は、上記したレゾール型フェノール樹脂や酸硬化剤を溶解するための溶媒として用いられていたり、また、レゾール型フェノール樹脂を製造する際に縮合水として生成せしめられて、レゾール型フェノール樹脂中に含有されているところから、それらレゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを混合するだけで、フェノールフォーム用原料組成物中に、所定量の水を含有せしめることも可能である。一方、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤との混合物に、更に水を単独で配合して、所定の含有量となるように調整することも可能である。
【0043】
そして、上記したレゾール型フェノール樹脂及び酸硬化剤を必須の含有成分とする本発明に従うフェノールフォーム用原料組成物には、更に必要に応じて、各種の添加剤を、適宜に選択し、本発明の効果を阻害しない量的範囲において、配合することも可能である。これによって、その添加剤に応じた各種の機能を有利に付与することが出来るのである。
【0044】
特に、本発明においては、発泡剤として、炭化水素やハロゲン系炭化水素に代えて、水が用いられているところから、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを混合するに先立ち、或いは混合した後においても、以下に示す無機材料や有機材料からなる難燃剤、発泡助剤、充填剤、電磁波吸収剤、変性剤等の添加剤を有利に添加,混合することが出来るようになっている。
【0045】
そして、上記無機材料としては、例えば、難燃剤であるホウ酸、硼砂等のホウ素化合物や、水酸化アルミニウム等の水酸化物;発泡助剤である炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩;充填剤であるシラス、ガラス、タルク等の珪酸塩;電磁波吸収剤であるカーボン、フェライト等の無機化合物が挙げられる。また、有機材料としては、例えば、変性剤であるポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、木粉を始めとする各種有機化合物等が挙げられる。これらの無機材料や有機材料の形状は、粒子状や粉末状に何等限定されるものではなく、例えば、セラミック繊維、ガラス繊維、炭素繊維、フェノール繊維、アラミド繊維等の繊維状;シラスバルーン、ガラスバルーン等のバルーン状;ビーズ状等、各種の形状に成形されたものが、有利に採用され得る。そして、それらの無機材料や有機材料は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。また、使用量にあっても、適宜に設定されるものの、添加による効果を充分に得るためには、レゾール型フェノール樹脂の100重量部に対して、0.5〜80重量部程度、より好ましくは1〜60重量部程度となる範囲で用いられることが、望ましい。
【0046】
なお、上例の無機材料や有機材料は、従来より、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを混合する前に、レゾール型フェノール樹脂或いは酸硬化剤に添加,混合されて用いられているのであるが、そのような無機材料や有機材料を添加,混合すると、原料組成物が著しく増粘し、取り扱いが極めて困難になるといった問題が惹起されていた。これに対し、本発明においては、従来の低沸点発泡剤が何等含有せしめられていないところから、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを混合するに先立って、レゾール型フェノール樹脂を、その液温が所定の温度となるように加熱して、用いることが出来る。このため、液の粘度が有利に低減されて、上記した無機材料や有機材料の配合を、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを混合するに先立ち、或いは混合した後においても、容易に行なうことが出来る。また、特に、ホウ酸や硼砂等のホウ素化合物にあっては、レゾール型フェノール樹脂側に混合すると、レゾール型フェノール樹脂とキレートを形成し、経時的に増粘する一方、酸硬化剤側に混合すると、酸硬化剤側の絶対量が少ないために、充分な量を配合することが出来ないところから、その配合が極めて困難であったのであるが、本発明においては、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを混合した後において、添加,混合することが可能となる。
【0047】
また、本発明に従うフェノールフォーム用原料組成物には、上例の無機・有機材料以外にも、原料成分の混合や、乳化の補助、発生ガスの分散、フォームセル膜の安定化等を図るために、整泡剤が配合されることが望ましい。かかる整泡剤としては、例えば、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、シロキサン・オキシアルキレン共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルフェノールエチレンオキシド付加物、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルフェノールスルホン酸塩等を用いることが出来る。これらの整泡剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。また、整泡剤の使用量としては、特に制限はないが、一般に、レゾール型フェノール樹脂の100重量部に対して、0.1〜30重量部程度となる範囲で、適宜に設定されることとなる。
【0048】
さらに、フェノールフォーム用原料組成物混合後の内部発熱を抑制して、増粘、硬化挙動を穏やかにするためには、吸熱剤が用いられることが好ましい。かかる吸熱剤としては、例えば、尿素、メラミン、尿素樹脂、メラミン樹脂等を挙げることが出来、それらのうちの少なくとも1種以上を適宜に選択して用いることが出来る。また、吸熱剤の使用量にあっても、特に制限はないが、一般に、レゾール型フェノール樹脂の100重量部に対して、0.1〜20重量部程度となる範囲で、適宜に設定されることとなる。
【0049】
加えて、本発明においては、水による発泡の補助を目的として、発泡助剤を用いることも可能である。かかる発泡助剤としては、例えば、酸と反応して炭酸ガスを発生する、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マンガン、炭酸ニッケル、炭酸銅等の炭酸塩;水と反応して炭酸ガスを発生する、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートの多核体、トルエンジイソシアネート、その他ジイソシアネート等のイソシアネート;加熱時に熱分解する、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物、N,N−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等のヒドラジド化合物、ヒドラゾジカルボンアミド等のヒドラゾ化合物、セミカルバジド化合物、アジド化合物、テトラゾール化合物等の熱分解型発泡剤等を挙げることが出来る。なお、これらの使用量としては、水発泡を補助する程度の量であればよく、フェノールフォーム用原料組成物中に含まれる水分量の20重量%以下となる割合が、好適に採用される。
【0050】
この他にも、本発明に従うフェノールフォーム用原料組成物には、例えば、レゾルシン、アルキルレゾルシン、フルフリルアルコール、ヘキサメチレンテトラミン等の硬化促進剤;尿素、メラミン等のホルムアルデヒド捕捉剤;尿素樹脂、メラミン樹脂、含リン系・含ハロゲン系化合物、水酸化アルミニウム等の難燃剤;中和剤;乳化剤;減粘剤;可塑剤;着色剤;消臭剤;抗菌剤等の各種添加剤を、必要に応じて、適宜、添加することが可能である。
【0051】
ところで、本発明に従うフェノールフォーム用原料組成物は、上述せる如きレゾール型フェノール樹脂及び酸硬化剤を必須の構成成分として含有すると共に、その他必要に応じて用いられる各種添加剤を含有するものであって、レゾール型フェノール樹脂と、酸硬化剤と、更に必要に応じて、水、その他の各種添加剤を、高速撹拌混合機や高圧衝突混合機、低圧衝突混合機等の公知の攪拌・混合機を用いて、均質に混合することにより、調製乃至は製造することが出来る。なお、この際、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤は、より均一な混合が有利に実現され得るように、それぞれ、水溶液の状態で用いられることが望ましい。また、各種成分の配合順序は、特に制限されるものではなく、例えば、各種添加剤を、予めレゾール型フェノール樹脂側に配合しても、或いは、酸硬化剤側に配合しても、或いは、両方に配合しても、更には、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを混合した混合液に、配合しても良い。尤も、ホウ酸や硼砂等を原料組成物に配合するに際しては、前述せるように、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを混合した後の混合液に配合することが望ましく、こうすることによって、レゾール型フェノール樹脂とのキレート化に伴う著しい増粘による問題を回避して、従来では困難であったホウ酸や硼砂等の添加を、容易に実施することが出来る。
【0052】
また、レゾール型フェノール樹脂に対して、酸硬化剤を配合,混合するに際しては、前述せるように、予め、レゾール型フェノール樹脂を加熱して、その液温を、40〜100℃、好ましくは50〜80℃となるように調節し、かかる温度に加熱されたレゾール型フェノール樹脂に対して、酸硬化剤を混合する。このようにすれば、原料組成物の液温を有利に向上せしめた状態で、発泡硬化操作を行なうことが出来るところから、レゾール型フェノール樹脂の硬化速度を高めて、酸硬化剤の使用量を減らすことが可能となる。なお、かかる温度が40℃に満たない場合には、所望とする硬化挙動を実現することが困難となって、酸硬化剤の使用量を効果的に低減することが出来なくなる傾向があり、また、100℃を超える場合には、発泡と硬化のバランスが悪くなって、発泡剤である水が、セル形成に寄与することなく、気化して抜け出てしまうこととなる。
【0053】
そして、上述せる如き温度下において調製されたフェノールフォーム用組成物は、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを混合した段階から、徐々に硬化反応(架橋反応)が進行するところから、遅滞なく、加熱条件下で、発泡硬化せしめられ、目的とするフェノールフォームが製造されることとなる。
【0054】
より具体的には、得られたフェノールフォーム用組成物は、例えば、連続発泡法、注入発泡法、スプレー施工法等の公知の工法により、所定の成形型内や空間内に充填されたり、或いは、所定の物体表面に吹き付けられ、そして、高温環境下で、加熱されることにより、水が気化して発泡が行なわれると共に、レゾール型フェノール樹脂が硬化せしめられて、フェノールフォームが形成されるのである。なお、本発明に従うフェノールフォーム用原料組成物にあっては、発泡操作と硬化操作のバランスが有利に確保されるように、そのゲルタイムが、20℃において、15秒以上、より好ましくは30秒以上とされることが、より一層望ましい。
【0055】
また、本発明において、フェノールフォーム用原料組成物が成形される際の温度、即ち、発泡硬化操作を行なう加熱温度(キュア温度)としては、70℃〜200℃、より好ましくは80〜140℃の温度領域の範囲で、適宜に設定されることが望ましい。何故なら、加熱温度が低過ぎる場合には、水の気化が良好に進行せず、発泡が起こり難くなる一方で、レゾール型フェノール樹脂が徐々に硬化してしまうところから、所望とする気泡構造のフェノールフォームを得ることが出来なくなったり、また、酸硬化剤の使用量を減じた際に、成形体の収縮が起き易くなるからである。一方、高過ぎる場合には、レゾール型フェノール樹脂の熱硬化が急激に進むため、低密度のフェノールフォームを得ることが難しく、更には、得られるフェノールフォームが酸化して、赤く焼けてしまうからである。
【0056】
また、発泡硬化操作を行なう際の加熱時間(キュア時間)にあっては、原料組成物の組成や加熱温度、成形体のサイズ等に応じて適宜に設定されるものの、一般に、20分以下、より好ましくは、5分以下とされることが、望ましく、そのような加熱時間が採用されることによって、フェノールフォームの製造時間の短縮化を有利に実現することが出来るようになる。
【0057】
このように、本発明にあっては、発泡剤として、従来の炭化水素やハロゲン系炭化水素に代えて、所定量の水が採用され、また、所定の温度下において、フェノールフォームが製造されるようになっているところから、良好な発泡硬化が実現され得ることとなる。また、使用する酸硬化剤の量も有利に低減せしめられ、酸硬化剤に起因するフェノールフォームの吸水や、腐食の発生も極めて効果的に抑制され得ることとなる。
【0058】
そして、本発明に従って製造されたフェノールフォームは、金属サイディングや、壁、屋根、天井、床等の下地材等の用途に有利に用いられるのである。
【0059】
【実施例】
以下に、幾つかの実施例を用いて、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明は、そのような実施例の記載によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。
【0060】
先ず、フェノールフォーム用原料組成物における必須成分の一つであるレゾール型フェノール樹脂を、以下の製造方法にて製造することにより、準備した。また、酸硬化剤としては、フェノールスルホン酸を準備した。更に、水又は塩化メチレンを発泡剤として準備した。また、整泡剤としては、ヒマシ油系非イオン性界面活性剤(D225K:竹本油脂製)を準備すると共に、難燃剤として、ホウ酸粉末を用意した。
【0061】
−レゾール型フェノール樹脂の製造−
先ず、温度計、攪拌機及び還流冷却器を備えた三つ口フラスコに、フェノールの2500gと、92重量%パラホルムアルデヒドの1329gと、50%水酸化カリウム水溶液の45gとを仕込み、攪拌しながら、80℃に昇温した後、180分間反応させた。そして、かかる反応液を冷却した後、適量の20%フェノールスルホン酸水溶液にて、pHメータによる測定値が7となるまで中和を行なった。その後、減圧下で、含水率が4.3重量%となるまで、脱水濃縮を行なって、液状のレゾール型フェノール樹脂を得た。なお、かかる含水率は、カールフィッシャー法により求めた水分量から算出した。また、得られたレゾール型フェノール樹脂の数平均分子量を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定したところ、234であった。更に、レゾール型フェノール樹脂の粘度は、25℃において、54Pa・sであった。
【0062】
実施例 1
下記表1に示される配合組成となるように、500ml容器に、上記で得られた液状のレゾール型フェノール樹脂を、樹脂分が100gとなるように収容した。次いで、前記整泡剤の水溶液を、整泡剤分が1.1gとなるように加えると共に、水を1.9g加えて、レゾール型フェノール樹脂溶液を調製した。そして、このレゾール型フェノール樹脂溶液を加熱して、液温:50℃に調節した。一方、フェノールスルホン酸の62%酸硬化剤水溶液(触媒溶液、CA645A:第一工業製薬製)を、20℃に温度調節した。そして、この20℃に温度調節された触媒溶液を、酸硬化剤分が2.1gとなるように、上記の50℃に温度調節されたレゾール型フェノール樹脂溶液に添加し、ホモディスパー(特殊機化工業製)を用いて、回転数:3200回/分にて、15秒間混合し、実施例1に係るフェノールフォーム用原料組成物を調製した。次いで、得られた原料組成物を、75℃に調整した雰囲気下で、金型上に塗布して、2分間加熱することにより、厚さ:25mmの板状のサイドフリーパネル(150mm×200mm)を作製した。なお、得られたサイドフリーパネル(フェノールフォーム)にあっては、湿気を帯びた感じはなく、からっとしており、微細なセル(特に、オープン型のセル)が形成されていた。
【0063】
実施例 2
原料組成物の加熱温度(キュア温度)を、92℃とした以外は、実施例1と同様にして、サイドフリーパネルを作製した。
【0064】
実施例 3
原料組成物の加熱温度(キュア温度)を、200℃とした以外は、実施例1と同様にして、サイドフリーパネルを作製した。
【0065】
実施例 4
レゾール型フェノール樹脂溶液を80℃に温度調節した以外は、実施例3と同様にして、サイドフリーパネルを作製した。
【0066】
実施例 5
フェノールフォーム用原料組成物をホモディスパー(特殊機化工業製)を用いて調製した後、更に、難燃剤であるホウ酸粉末を20g加えて混合し、そして、その難燃剤が含有せしめられた原料組成物を、92℃に調整した雰囲気下で、加熱した以外は、実施例1と同様にして、サイドフリーパネルを作製した。
【0067】
比較例 1
水:1.9gに代えて、等モル量の塩化メチレン:9gを用いてレゾール型フェノール溶液を調製し、この溶液の温度を30℃に調節すると共に、触媒溶液を、酸硬化剤分が9.5gとなるように用いた以外は、実施例2と同様にして、サイドフリーパネルを作製した。
【0068】
比較例 2
実施例1において、水:1.9gに代えて、等モル量の塩化メチレン:9gを用いてレゾール型フェノール溶液を調製した。そして、この溶液の温度を、実施例1と同様に、50℃にしたところ、発泡剤が激しく発泡した。このため、触媒溶液を安定した配合で加えることが出来なかった。
【0069】
そして、上述せる如くして得られた実施例1〜5及び比較例1に係るパネルの特性、即ち、フォーム密度、フォーム吸水量及び抽出水pHを、それぞれ、以下のようにして求め、得られた結果を、下記表1に併せ示した。
【0070】
(フォーム密度の測定)
JIS−K−7222に準拠して、測定を行った。
【0071】
(フォーム吸水量の測定)
JIS−A−9511に準拠して、測定を行った。
【0072】
(抽出水pHの測定)
200ml容器に、粉砕したパネル(フェノールフォーム)の0.5gを、蒸留水の100gに懸濁させ、1時間攪拌を行なった。その後、かかる懸濁液を濾過して、フェノールフォームを取り除いた後、ろ液のpHを、pHメーターにて測定することにより、抽出水のpHを求めた。なお、pHが低いということは、金属板とフェノールフォームとの界面に腐食が生じ易いことを意味する。
【0073】
また、所定の温度に調節した各レゾール型フェノール樹脂溶液の粘度、及び、各フェノールフォーム用原料組成物のゲルタイムを、それぞれ、測定して、得られた結果を、下記表1に示した。なお、ゲルタイムは、フェノールフォーム用原料組成物の硬化速度を示す指標であり、以下のようにして測定を行なった。
【0074】
(フェノールフォーム用原料組成物のゲルタイムの測定)
200ml容器に、下記表1に示される配合割合のレゾール型フェノール樹脂溶液(但し、樹脂分が50g)を入れ、所定温度に調整した。これに、所定温度に調整した触媒溶液を、同様の配合組成となるように添加し、ホモディスパー(特殊機化工業製)を用いて、回転数:3200回/分にて、15秒間混合して、実施例1〜5及び比較例1,2に係るフェノールフォーム用原料組成物を、それぞれ、調製した。そして、20℃環境下で、得られたフェノールフォーム用原料組成物のゲルタイムを測定した。なお、ゲルタイムとは、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤の混合開始時から原料組成物の表面が糸引き可能な粘着状態に至るまでの時間をいう。
【0075】
【表1】
【0076】
上記表1の結果からも明らかなように、発泡剤として水を含み且つ炭化水素及びハロゲン系炭化水素を含まない実施例1〜4と、塩化メチレンが発泡剤として含有された比較例1とを比較すると、硬化速度やフォーム密度は略同様であるものの、実施例1〜4の方が、吸水量が少なくなっていると共に、抽出水pHも高い値となっている。このため、実施例1〜4にあっては、良好な硬化挙動や気泡構造が有利に確保されつつ、低吸水化及び腐食の抑制が効果的に図られていることが、認められるのである。
【0077】
また、実施例5においては、レゾール型フェノール樹脂溶液と触媒溶液とを混合した混合液に、更に、ホウ酸粉末を容易に配合することが出来、取扱いが困難であったホウ酸を始めとする各種無機材料や有機材料との複合化が有利に図られ得ることを、確認した。
【0078】
【発明の効果】
以上の説明より明らかな如く、本発明によれば、ヘキサン等の炭化水素や、フロン、塩化メチレン等のハロゲン系炭化水素に代えて、水を発泡剤として用いているところから、原料組成物の液温を有利に高めることが出来、以て、酸硬化剤の使用量を減らしても、所望とする硬化挙動が確保され得て、発泡硬化操作が有利に行なわれ得るようになっている。このため、低吸水性、耐腐食性に優れたフェノールフォームを得ることが出来る。
【0079】
また、従来の発泡剤に比して、沸点の高い水が用いられているところから、従来では困難であった、無機材料や有機材料からなる各種の添加剤の混合を、容易に行なうことが出来るようにもなる。
【0080】
さらに、炭化水素やハロゲン系炭化水素が用いられないところから、作業環境の改善が効果的に実現され得ると共に、オゾン層破壊、地球温暖化等の問題も回避され得て、地球環境の保護にも有効である。
Claims (7)
- 発泡剤として、水を含有し、炭化水素及びハロゲン系炭化水素は含まないフェノールフォーム用原料組成物であって、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを必須成分として含有することを特徴とするフェノールフォーム用原料組成物。
- 前記水の含有量が、45重量%以下となるように調整されている請求項1に記載のフェノールフォーム用原料組成物。
- 難燃剤が、更に、含有せしめられている請求項1又は請求項2に記載のフェノールフォーム用原料組成物。
- 請求項1乃至請求項3の何れかに記載のフェノールフォーム用原料組成物を発泡硬化せしめることによって、形成されていることを特徴とするフェノールフォーム。
- 発泡剤として、炭化水素及びハロゲン系炭化水素を含まず、且つ、レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを必須成分として含有する原料組成物を用いて、フェノールフォームを製造する方法にして、
発泡剤として、水を含有せしめると共に、前記レゾール型フェノール樹脂と前記酸硬化剤とを混合するに先立って、該レゾール型フェノール樹脂の温度を40〜100℃に調節する一方、該温度下において、該レゾール型フェノール樹脂と該酸硬化剤との混合を行なって、前記原料組成物を調製した後、かかる原料組成物の発泡硬化操作を行なうことを特徴とするフェノールフォームの製造方法。 - 前記水が、前記原料組成物中に、45重量%以下となるように含有せしめられる請求項5に記載のフェノールフォームの製造方法。
- 前記レゾール型フェノール樹脂と酸硬化剤とを含有する原料組成物に対して、更に、ホウ酸及び/又は硼砂を添加することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のフェノールフォームの製造方法。
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