JP4164658B2 - 燃料ガスの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機性廃棄物から調製した液状有機混合物を可溶化処理した後、湿式メタン化処理することにより、燃料ガスを製造する方法に関する。
【0002】
本発明において、「液状有機混合物」は、広く「水に液状および/または固形状の有機物が溶解および/または分散して存在している液状混合物」を意味する。この様な液状有機混合物としては、特に限定されるものではないが、生活廃水、産業廃水、汚泥などの液状ないし含水有機性廃棄物:厨芥類、廃木材、紙、プラスチック類などの固形有機物と有機性廃液とを適宜混合粉砕することにより得られる混合物などが揚げられる。
【0003】
【従来技術とその問題点】
従来、固形有機性廃棄物(好気性処理汚泥、嫌気性処理汚泥、下水汚泥などの汚泥類;厨芥、紙、プラスチック、木片、竹片、草片、藁、繊維、野菜片、ゴム、皮、食品加工廃棄物、畜産廃棄物、森林間伐材/倒木、枝打ちなどの廃棄物、農林廃棄物、水産物廃棄物など)と液状有機性廃棄物(生活廃水、食品加工工場などからの廃水、畜舎/養鶏場などからの廃水、生物学的処理が困難な成分を含む産業廃水などの廃水;アルコール類、カルボン酸類、アルデヒド類などを含む廃水など)とは、それぞれの特性に応じた個別の技術により処理されている。
【0004】
わが国では、一般廃棄物だけでその発生量は、約5000万トン/年にも達しており、その約75%は多くの焼却処理場で焼却処分されている。しかしながら、これらの焼却場において、電力回収により、廃棄物を有効利用しているのは、僅か約150カ所に過ぎない。特に近年各種廃棄物の焼却に際しては、ダイオキシンの発生が大きな問題となっており、新規焼却施設の建設のみならず、既存設備の一部での操業の継続すらも困難な状況となりつつある。
【0005】
より具体的には、例えば、汚泥類は、脱水後焼却処理され、或いは埋め立て処理されている。有機物含有廃水は、一般に活性汚泥処理された後、生成する汚泥は、上記の様に焼却或いは埋め立て処理されている。また、有機物を含む含水性の廃棄物は、そのまま乾燥した後、焼却されている。
【0006】
また、近年生活水準の向上に伴って、家庭から発生する厨芥類、紙類、プラスチック類(本明細書においては、これらを「家庭廃棄物」と総称することがある。また、厨芥類以外の家庭廃棄物を「紙・プラスチック類」ということがある)などの廃棄量も著しく増加している。現在これらの家庭廃棄物は、資源としての再利用を念頭に置いて、一般に分別回収されている。しかしながら、この様にして回収された各分別物がそれぞれ適切に処理あるいは再利用されているとはいい難い。
【0007】
例えば、厨芥類は、いわゆる生ゴミとして回収され、埋め立てないし焼却処分されている。しかるに、厨芥類は、水分含有量が極めて高いという特徴を有しているので、その処理は種々の問題を生じている。例えば、家庭、集合住宅、ビルなどでの保管に際して環境汚染問題を引きおこす;搬出が煩雑である;埋め立て地での腐敗により悪臭発生源となる;蝿などの衛生害虫の発生源となる;焼却のために大量のエネルギーを必要とする;或いは焼却炉の燃焼温度を低下させて、ダイオキシン発生の誘因となることがあるなどの多くの問題点がある。生ゴミをコンポスト化する試みもなされているが、季節的な質的変動が大きい(例えば、夏期には、含水量の極めて高いスイカ皮が集中的に廃棄される)、堆肥としての市場性が不安定である、などの問題点があり、広く普及するには至っていない。
【0008】
厨芥類の処理方法としては、欧米で行われている様に、ディスポーザーにより破砕して、家庭排水とともに下水道に排出し、下水として処理する方法も存在する。しかしながら、我が国では、既存排水処理設備に対する負荷の増大、水質保全などの観点から、この様な処理方法は、むしろ制約されている。
【0009】
紙およびプラスチック類の分別回収は、急速に進行しつつあるが、その資源としての再利用技術が十分に確立され、円滑に処理されているとはいい難いので、各地において“在庫過剰”ともいうべき重大な事態が発生しており、保管スペースの確保が困難となりつつある。
【0010】
結論として、固形有機性廃棄物および液状有機性廃棄物の発生量が増大する一方で、廃棄物に対する規制が強化されつつある現状では、上記の様な従来技術により各種の廃棄物を個別的に処理する方法では、次第に対処が困難となってきている。
【0011】
また、現今の大きな技術的課題である「限りある資源の有効利用」という視点からは、これらの廃棄物を「回収資源」としてより一層有効に再利用する技術を確立することも必要である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、固形および液状の有機性廃棄物を燃料ガス、電力、熱エネルギーなどの有用な形態で回収し、再利用するための新たな技術を提供することを主な目的とする。
【0013】
本発明は、さらに、ディスポーザーを使用する厨芥類の処理システムにおける制約を軽減ないし解消し、他の有機性廃棄物とともに処理して、再生資源として有効利用することをも目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の様な技術の現状に鑑みて、固形および液状の有機性廃棄物とを併せて処理する技術について研究を進めた結果、これらの廃棄物を予備処理して液状有機廃液の形態とし、これを特定の条件下に湿式加熱処理した後、湿式メタン化或いは水素化処理する場合には、上記の課題をほぼ達成し得ることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明は、下記の有機性廃棄物を原料として燃料ガスを製造する方法を提供する;
1.有機性廃棄物から燃料ガスを製造する方法において、
▲1▼第一の反応器内において、有機性廃棄物から調製した液状有機混合物を100℃以上の液相または超臨界相を維持する圧力に保ちつつ、加熱/加圧処理する工程、
▲2▼第二の反応器内において、上記工程▲1▼で得られた処理物を、100℃以上の温度に保ちつつ、無機充填体の存在下および/または金属および金属化合物の少なくとも1種を活性成分として担持する触媒の存在下に、分解させてメタンガスおよび/または水素ガスを主成分とするガスを含有する気液混合相を生成させる工程、
▲3▼上記工程▲2▼で得られた気液混合相を脱炭酸処理する工程、
▲4▼上記工程▲3▼で得られた脱炭酸処理後の気液混合相を気液分離して、メタンガスおよび/または水素ガスを主成分とするガスを回収する工程、
▲5▼第三の反応器内において、上記工程▲4▼で分離された残留有機成分およびアンモニア成分を含む液相を、100℃以上の温度に保ちつつ、理論酸素量以上の酸素を含有するガスの存在下に、酸化分解させる工程、および
▲6▼上記工程▲5▼で形成された気液混合相を気液分離する工程
を備えたことを特徴とする燃料ガスの製造方法。
2.上記工程▲2▼における反応器内温度が374℃以上であり、圧力が22MPa・G以上であり、且つ上記工程▲2▼における無機充填体がチタニア、ジルコニア、チタニア-ジルコニア、アルミナ、シリカ、アルミナ-シリカおよび活性炭からなる群から選ばれた少なくとも1種である上記項1に記載の燃料ガスの製造方法。
3.上記工程▲2▼における反応器内温度が374℃以上であり、圧力が22MPa・G以上であり、且つ上記工程▲2▼における担持触媒の触媒活性成分が、Ru、Pd、Rh、Pt、Au、Ir、Os、Fe、Ni、Co、MnおよびCeならびにその水不溶性乃至水難溶性化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種であり、その担体がチタニア、ジルコニア、チタニア-ジルコニア、アルミナ、シリカ、アルミナ-シリカおよび活性炭からなる群から選ばれた少なくとも1種である上記項1に記載の燃料ガスの製造方法。
4.上記工程▲5▼における酸化反応を無機充填体および担持触媒の不存在下に行う上記項1に記載の燃料ガスの製造方法。
5.上記工程▲5▼における酸化反応を無機充填体および/または担持触媒の存在下に行う上記項1に記載の燃料ガスの製造方法。
6.無機充填体が、チタニア、ジルコニア、チタニア-ジルコニア、アルミナ、シリカおよびアルミナ-シリカからなる群から選ばれた少なくとも1種の材料で構成されている上記項5に記載の燃料ガスの製造方法。
7.担持触媒が、Ru、Pd、Rh、Pt、Au、Ir、Os、Fe、Ni、Co、MnおよびCeならびにその水不溶性乃至水難溶性化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種を触媒活性成分とし、チタニア、ジルコニア、チタニア-ジルコニア、アルミナ、シリカおよびアルミナ-シリカからなる群から選ばれた少なくとも1種を担体とする上記項5に記載の燃料ガスの製造方法。
8.上記工程▲5▼における反応器内温度が374℃以上であり、圧力が22MPa以上である上記項1に記載の燃料ガスの製造方法。
9.上記工程▲5▼における反応器内温度150℃以上であり、圧力が液相を維持しうる圧力以上であり、かつ上記工程▲5▼における担持触媒の触媒活性成分がRu、Pd、Rh、Pt、Au、Ir、Os、Fe、Ni、Co、MnおよびCeならびにその水不溶性乃至水難溶性化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種であり、その担体がチタニア、ジルコニア、チタニア-ジルコニア、アルミナ、シリカおよびアルミナ-シリカからなる群から選ばれた少なくとも1種である上記項1に記載の燃料ガスの製造方法。
10.上記工程▲4▼において、気液混合相を減温させて、二酸化炭素を液相側に移行させることにより、脱炭酸を行う上記項1に記載の燃料ガスの製造方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明が処理対象とする有機性廃棄物は、固形および液状の有機性廃棄物であり、具体的には、厨芥類、紙類、プラスチック類、植物起源の廃棄物、汚泥類などの固形有機性廃棄物および生活廃水、産業廃水などの液状有機性廃棄物である。
【0017】
本発明においては、固形有機性廃棄物である厨芥類、紙類、プラスチック類、汚泥類などをそれぞれ単独で粉砕しても良く、あるいは複数種の固形有機性廃棄物を混合状態で粉砕しても良い。単独粉砕物は、その1種または2種以上を後述する液状有機性廃棄物と混合しても良く、あるいは2種以上の固形有機性廃棄物を混合状態で粉砕した後、混合粉砕物を液状有機性廃棄物と混合しても良い。従って、分別回収された固形有機性廃棄物および混合回収された固形有機性廃棄物のいずれをも処理対象とすることができる。粉砕物の大きさは、固形有機性廃棄物の種類、後述する各種の処理方法における条件などにより異なるが、通常5mm以下であり、1mm以下であることがより好ましい。
【0018】
本発明においては、上記の様にして形成された固形有機性廃棄物の粉砕物と液状有機性廃棄物の少なくとも1種とを混合して、液状有機廃液を形成させる。液状有機性廃棄物としては、生活廃水および/または産業廃水の少なくとも1種を使用する。
【0019】
液状有機性廃棄物としては、生活廃水(し尿、家庭下水など);有機化合物(アルコール類、カルボン酸類、アルデヒド類など)を含む廃水、メッキ廃水、食品工場廃水、製紙工場廃水、製薬工場廃水、写真廃水、印刷廃水、農薬関連廃水、染色廃水、半導体製造工場廃水、石炭の液化或いはガス化に伴い発生する廃水、都市ゴミの熱分解に伴い発生する廃水などの産業廃水が例示される。
【0020】
上記の固形有機性廃棄物および液状有機性廃棄物は、通常Mg、Al、Si、P、Ca、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cdなどの金属成分の1種または2種以上を含んでいる。本発明方法は、被処理物がこの様な金属成分を含んでいても、実施可能である。
【0021】
本発明において、処理原料としての液状有機廃液は、固形有機性廃棄物粉砕物および液状有機性廃棄物に、必要ならばさらに水などの液体を加え、攪拌することにより、形成することができる。液状有機廃液中の固形分濃度は、有機性廃棄物粉砕物の種類および粒径、液状有機性廃棄物の種類および組成などにより異なり、それ自体が液体としての流動性を示す程度であれば特に限定されないが、通常水に分散している有機物としての濃度(炭素換算)が、30〜50重量%程度であり、より好ましくは20〜40重量%程度である。
【0022】
以下図面を参照しつつ、本願発明について詳細に説明する。
【0023】
図1は、本願発明方法の概要を示すフローシートである。
【0024】
まず、原料となる固形有機性廃棄物を破砕機において、所定の寸法に粉砕する。固形有機性廃棄物に、金属、ガラスなどの無機成分が混入している場合(例えば混合回収を行った場合など)には、無機成分を出来るだけ分離除去するために、粉砕前にその分離処理(図示せず)を行っておくことが好ましい。
【0025】
次いで、所定の寸法に粉砕された固形有機性廃棄物破砕物に生活廃水および/または産業廃水とを混合して液状有機廃液を調製した後(液状有機廃液の調製は図示せず)、これをポンプ、第1熱交換器および第2熱交換器を経て、100℃以上に加熱した状態で、第1反応器(以下「可溶化塔」という)に供給する。液状有機廃液には、可溶化促進のために、必要に応じて、酸素含有ガスを混合してもよい。可溶化促進のための酸素含有ガスは、ポンプと可溶化塔との間の任意の箇所で液状有機廃液に添加混合することができる。
【0026】
第1熱交換器の熱源としては、後述の第3反応器(以下「酸化反応塔」という)からの高温の処理済み液を循環させて使用しても良く、或いは他の加熱手段を使用しても良く、あるいはこれらの両者を併用しても良い。冬季などにおいて可溶化反応時に所定の反応温度を維持できない場合或いは所定の温度までの昇温を必要とする場合などには、さらに加熱器(図示せず)により加熱したり、或いは蒸気発生器(図示せず)から可溶化塔に蒸気を供給することもできる。また、スタートアップに際して可溶化塔内温度を所定温度とするためにも、可溶化塔内に直接蒸気を送入して昇温したり、或いは第1熱交換器と可溶化塔との間に加熱器(図示せず)を設けて昇温することもできる。
【0027】
第2熱交換器の熱源としては、後述の第2反応器(以下「メタン化反応塔」という)からの高温の処理液を循環させて使用することができる。さらに必要ならば、第1熱交換器および可溶化塔に関連して述べたと同様にして、他の加熱手段を併用することもできる。
【0028】
可溶化塔での反応(可溶化反応)における温度は、液状有機廃液中の固形有機物の可溶化を良好に進行させるために、通常100℃程度以上、より好ましくは150℃以上である。可溶化反応時の温度が高い程、有機物などの低分子化による可溶化率が高まり、また可溶化塔内での被処理液(液状有機廃液)の滞留時間も短縮されるが、反面において設備費が増大するので、可溶化反応温度は、被処理液中の汚濁物質濃度、運転費、建設費などを総合的に考慮して、定めれば良い。反応時の圧力は、所定温度において被処理液の少なくとも一部が液相を保持し得る圧力以上であれば良い。
【0029】
本発明においては、可溶化反応を超臨界条件下に行うことも可能である。この場合には、可溶化塔内の温度を374℃以上、圧力を22MPa・G以上、液線速度(送入液量/反応塔断面積)を0.01〜1.0cm/sec程度とすることが好ましい。超臨界条件下に可溶化反応を行う場合には、固形有機物の可溶化をより一層促進することができる。
【0030】
被処理液に添加されるガス量は、有機物の低分子化による可溶化に必要な最低の量で良い。酸素含有ガスを使用する場合には、以下に定義する理論酸素量の0.5倍量以下(より好ましくは0.3倍量以下)の酸素を含有するガスを使用する。酸素量が多すぎる場合には、最終的に燃料成分となるべき液状有機物中の有機物などが二酸化炭素、水などにまで過度に分解されてしまうことがあり、燃料ガスの収率が低下する。ガス中の酸素含有量は、理論酸素量の0.1〜0.3倍量程度がより好ましい。
【0031】
なお、例えば、バイオマス系の有機物を起源とする液状有機物の中には、酸素の不存在下においても、有機成分の可溶化が良好に進行するものがある。従って、本発明において、「理論酸素量の0.5倍量以下の酸素を含有する」反応状況は、酸素を供給しない場合をも、包含する。
【0032】
酸素源としては、特に限定されず、空気、酸素富化空気、高純度酸素、高濃度酸素、過酸化水素、酸素含有廃ガスなどが例示される。これらの酸素源ガスは、必要に応じて2種以上を併用することができる。
【0033】
本発明において、理論酸素量とは、「被処理物中の有機性物質、無機性物質、窒素化合物など(被処理成分)をCO2、H2OおよびN2などにまで完全分解することを想定した場合に、その様な完全分解を行うために必要とされる酸素量」を意味する。理論酸素量は、対象とする被処理液中の被処理成分を分析し、それらの分解に必要な理論酸素量を算出することにより、容易に決定しうる。実用的には、経験と若干の実験とに基づいて、いくつかのパラメーターを用いて、高い精度で理論酸素量を近似的に算出できる関係式を見出すことができる。この様な関係式は、例えば、特公昭58-27999号公報に開示されている。
【0034】
可溶化塔内では、有機物が可溶化処理により液状化して、相対的に無機物の濃度が増大して、析出するので、公知の手段(図示せず)により、これをスラッジとして、可溶化塔外に排出することができる。また、可溶化処理を超臨界条件下で行う場合には、金属の溶解度が大幅に減少するので、この段階でスラッジ除去を効率よく行うことが出来、後続のメタン化反応で使用する触媒寿命を延長することができる。
【0035】
可溶化塔で形成された可溶化成分を含む高温/高圧の気液混合相は、次いで、第2反応塔(「メタン化反応塔」)に送られる。
【0036】
メタン化反応に際しても、所定の反応温度を維持できない場合には、加熱器(図示せず)により加熱を行うこともできる。また、スタートアップに際してメタン化反応塔の内部を所定温度とするために、メタン化反応塔に蒸気を直接送入して昇温を行ったり、或いは加熱器(図示せず)により昇温を行うこともできる。
【0037】
メタン化反応塔内には、担体上に触媒活性成分を担持した触媒および/または無機充填体(担体単独)が充填されている。
【0038】
触媒活性成分としては、Ru、Pd、Rh、Pt、Au、Ir、Os、Fe、Ni、Co、MnおよびCeならびにこれら金属の水不溶性乃至水難溶性の化合物が挙げられる。これら金属およびその化合物は、単独で使用しても良く或いは2種以上を併用しても良い。これらの触媒活性成分は、常法に従って、公知の担体に担持した状態で使用される。担体としては、特に限定されず、公知の触媒担体として使用されているものを使用することができる。担体としては、ジルコニア、チタニア、アルミナ、シリカ、これら金属酸化物を含む複合金属酸化物(チタニア-ジルコニア、アルミナ-シリカ、アルミナ-シリカ-ジルコニアなど)、これら金属酸化物または複合金属酸化物を主成分とする金属酸化物系担体、活性炭などが挙げられる。これらの担体中では、耐久性に優れたジルコニア、チタニアおよびチタニア-ジルコニアがより好ましい。また、これらの担体は、触媒活性成分を担持しない状態で、メタン化塔内の無機充填体としてそのまま使用することができる。
【0039】
担持触媒および無機充填体の形状も、特に限定されず、具体的には球状、ペレット状、円柱状、破砕片状、粉末状、ハニカム状などが例示される。この様な担持触媒および/または無機充填体を使用する場合のメタン化反応塔の容積は、固定床の場合には、液の空間速度が0.5〜100hr-1程度、より好ましくは1〜60hr-1程度となる様にするのが良い。固定床で使用する担持触媒および/または無機充填体の大きさは、球状、ペレット状、円柱状、破砕片状、粉末状などの場合には、通常1〜50mm程度、より好ましくは2〜25mm程度である。また、触媒をハニカム状担体に担持して使用する場合のハニカム構造体としては、開口部が四角形、六角形、円形などの任意形状のものが使用される。単位容積当たりの面積、開口率なども特に限定されるものではないが、通常単位容積当りの面積=200〜800m2/m3程度、開口率=40〜80%程度のものを使用する。ハニカム構造体の材質としても、上記と同様の金属酸化物および金属が例示され、耐久性に優れたジルコニア、チタニアおよびチタニア-ジルコニアがより好ましい。
【0040】
メタン化反応塔内で流動床を形成させる場合には、反応塔内で担持触媒が流動床を形成し得る量、即ち通常液相の重量を基準として、0.01〜10%程度、より好ましくは0.1〜3%程度を液相にスラリー状に懸濁させ、使用する。流動床を採用する場合には、担持触媒を液相中にスラリー状に懸濁させた状態でメタン化反応塔に供給し、反応終了後にメタン反応塔外に排出された液相から触媒を沈降、遠心分離などの適当な方法により分離回収し、再使用する。従って、液相からの触媒の分離回収の容易さを考慮すれば、流動床において使用する担持触媒の粒径は、0.15〜0.5mm程度とすることがより好ましい。触媒活性金属の担持量は、特に限定されるものではないが、通常担体重量の0.01〜25%程度、より好ましくは0.1〜3%程度の範囲内にある。可溶化塔において被処理物中に含まれていた硫黄酸化物ならびにスラッジおよび/または金属成分を除去しておく場合には、メタン化反応塔に充填された触媒の活性阻害は、大幅に抑制される。
【0041】
本発明においては、メタン化反応を超臨界条件下に行うことも可能である。この場合には、メタン化反応塔内の温度を374℃以上、圧力を22MPa・G以上、液線速度(送入液量/反応塔断面積)を0.01〜1.0cm/sec程度とすることが好ましい。超臨界条件下にメタン化反応を行う場合には、より高い効率でメタン化を行うことができる。
【0042】
メタン化反応後の気液混合相は、脱炭酸処理に供する。メタン化反応を超臨界条件下に行う場合には、前述の第2熱交換器において気液混合相と被処理液との間で熱交換を行わせて、気液混合相を減温させることにより、脱炭酸処理を容易に行うことができる。これは、二酸化炭素の水への溶解度が、メタンの水への溶解度に比して、数十倍と著しく高いことに基づく。或いは、気液混合相の脱炭酸処理は、後述の第1気液交換器に至る経路において、アルカリ液を添加して行うこともできる。アルカリ液は、この気液混合相に含まれているCO2などの酸性ガスを中和・吸収する。アルカリ液としては、K2CO3、Na2CO3などの水溶液が使用される。
【0043】
次いで、メタン化反応終了後の気液混合相は、第1気液分離器に送られ、メタンリッチおよび/または水素を含有する気相と液相とに分離される。
【0044】
メタンリッチおよび/または水素を含有する高圧の気相は、必要に応じて、膨張タービン(あるいは往復動式動力回収装置)などにより動力回収された後、燃料として回収することができる。
【0045】
第1気液分離器で分離された液相には、被処理液中の有機物成分などによっては、未分解の有機物成分、アンモニア成分などが残存していることがある。この様な液相をそのまま系外に排出する場合には、さらに廃水処理設備を併設する必要がある。従って、本発明においては、第1気液分離器からの液相を第3反応塔(以下「酸化反応塔」という)において、理論空気量以上の酸素の存在下に酸化処理に供する。
【0046】
この第1気液分離器で分離された液相の温度/圧力が亜臨界条件域(温度300℃程度以上、圧力15MPa以上程度)にある場合には、酸化反応塔に上記メタン化塔において使用したものと同様の担持触媒および/または無機充填体を充填した状態で、液相の酸化処理を行う。
【0047】
また、第1気液分離器で分離された液相の温度/圧力が超臨界条件域にある場合には、無充填状態の酸化反応塔(空塔)において、液相の水酸化処理を行う。超臨界条件下での水酸化処理は、酸化反応塔内の温度を374℃以上、圧力を22MPa・G以上、液線速度(送入液量/反応塔断面積)を0.01〜1.0cm/sec程度として、実施することが好ましい。超臨界条件下に液相の水酸化処理を行う場合には、残存する有機成分、アンモニア成分などの酸化分解をより高い効率で行うことができる。
【0048】
酸化反応塔内の温度/圧力条件は、必要に応じて、酸化処理さるべき液相を加熱器により加熱することおよび/または液相に対する酸素含有ガスまたは酸素の供給量をポンプで調整することにより、制御することができる。
【0049】
酸化反応塔で処理された液相は、第1熱交換器において被処理液と熱交換した後、第2気液分離器において、排ガスと排水とに分離される。
【0050】
さらに、必要に応じてあるいは定期的に、本発明方法で使用する配管類、熱交換器、塔槽類などの内表面を酸水溶液(硝酸水溶液、アスコルビン酸水溶液など)および/またはアルカリ水溶液(炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液など)で洗浄したり、あるいは空気洗浄したりすることもできる。
【0051】
【発明の効果】
本発明方法によれば、固形状の有機性廃棄物(厨芥類、紙類、プラスチック類、バイオマスなど)と液状の有機性廃棄物(生活廃水、産業廃水など)とを高いエネルギー変換効率で有用なメタン系燃料ガスに変換させることができるので、廃棄物処理に際しての諸問題を解消ないし軽減し得るとともに、メタン系燃料ガスの製造コストを著しく低減し得る。
【0052】
また、本発明方法によれば、大量に発生する各種の廃棄物を資源として再利用することにより、燃料製造ソースの多様化に寄与するとともに、化石燃料の使用量を削減することができるので、CO2削減を含む地球環境の保全に大きく貢献することができる。
【0053】
さらに、本発明方法によれば、従来技術による廃棄物処理の最大の問題点であったダイオキシンなどの有害物質の発生を効果的に防止することができるので、大気、土壌などの環境汚染を実質的に解消乃至著しく軽減することができる。
【0054】
さらにまた、本発明方法によれば、従来の焼却処分を主とする廃棄物処理方法に比して、電力、熱エネルギーなどをより効率良くかつ大量に回収することができる。
【0055】
さらに、最終的に分離される気相中には、有害成分の存在は実質的に認められない。また、最終的に分離される液相も、有機成分を実質的に含まない程度にまで、超高度に処理される。
【0056】
本発明方法によれば、簡便な手法により、高度の脱炭酸を行うことができる。
【0057】
【実施例】
以下に実施例および比較例を示し、本発明の特徴とするところをより一層明確にする。
実施例1
図1に示すフローに従って、表1に示す液状有機混合物(固形有機性廃棄物粉砕物と生活排水/産業排水との混合物)を処理した。
【0058】
【表1】
【0059】
この液状有機性混合物を空間速度10hr-1(空塔基準)で可溶化塔(温度=400℃、圧力=25MPa)に供給しつつ、併せて理論酸素量の0.01倍量に相当する酸素(液体酸素由来)を供給して、可溶化処理を行った。その結果、混合物中の有機成分の約2%が分解されて、CO2を含む気相が形成された。この気相からは、ダイオキシンは検出されなかった。
【0060】
次いで、可溶化処理液を空間速度25hr-1(空塔基準)でメタン化反応塔(温度および圧力は、可溶化塔におけるとほぼ同様)に供給し、湿式メタン化処理に供した。なお、メタン化反応塔内には、チタニア担体に担体重量の2%のルテニウムを担持させた球形触媒(直径4〜6mm)を充填した。
【0061】
次いで、メタン化反応塔で得られた気液混合相を第2熱交換器に送り、圧力を維持しつつ、減温させた後、第1気液分離器において、高圧水と接触させることにより、高圧水にCO2を吸収させ、気液分離を行った。
【0062】
気液分離処理前には、液状有機混合物1Lにつき、CH4約44%、CO2約48%およびH2約7.5%のガス約90Lが得られた。また、気液分離処理後には、CH4約96.2%、CO2約2.5%およびH2約1.3%のガス約38Lが回収できた。
【0063】
第1気液分離器で分離された液相中には、約10%の有機成分が残存していたので、この液相を加熱器により400℃まで昇温した後、第3反応器(空塔)に供給して、理論酸素量の1.1倍に相当する酸素(液体酸素由来)の供給下に超臨界水酸化処理を行った。表2に第3反応器入口における水質を示し、表3に第3反応器出口における水質を示す。
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
表2と表3とに示す結果から、メタン化反応終了後の液相中に残存する有機成分は、超臨界水酸化処理により、ほぼ完全に分解されていることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の概要を示すフローシートである。
Claims (10)
- 有機性廃棄物から燃料ガスを製造する方法において、
▲1▼第一の反応器内において、有機性廃棄物から調製した液状有機混合物を100℃以上の液相または超臨界相を維持する圧力に保ちつつ、加熱/加圧処理する工程、
▲2▼第二の反応器内において、上記工程▲1▼で得られた処理物を、100℃以上の温度に保ちつつ、無機充填体の存在下および/または金属および金属化合物の少なくとも1種を活性成分として担持する触媒の存在下に、分解させてメタンガスおよび/または水素ガスを主成分とするガスを含有する気液混合相を生成させる工程、
▲3▼上記工程▲2▼で得られた気液混合相を脱炭酸処理する工程、
▲4▼上記工程▲3▼で得られた脱炭酸処理後の気液混合相を気液分離して、メタンガスおよび/または水素ガスを主成分とするガスを回収する工程、
▲5▼第三の反応器内において、上記工程▲4▼で分離された残留有機成分およびアンモニア成分を含む液相を、100℃以上の温度に保ちつつ、理論酸素量以上の酸素を含有するガスの存在下に、酸化分解させる工程、および
▲6▼上記工程▲5▼で形成された気液混合相を気液分離する工程
を備えたことを特徴とする燃料ガスの製造方法。 - 上記工程▲2▼における反応器内温度が374℃以上であり、圧力が22MPa・G以上であり、且つ上記工程▲2▼における無機充填体がチタニア、ジルコニア、チタニア-ジルコニア、アルミナ、シリカ、アルミナ-シリカおよび活性炭からなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の燃料ガスの製造方法。
- 上記工程▲2▼における反応器内温度が374℃以上であり、圧力が22MPa・G以上であり、且つ上記工程▲2▼における担持触媒の触媒活性成分が、Ru、Pd、Rh、Pt、Au、Ir、Os、Fe、Ni、Co、MnおよびCeならびにその水不溶性乃至水難溶性化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種であり、その担体がチタニア、ジルコニア、チタニア-ジルコニア、アルミナ、シリカ、アルミナ-シリカおよび活性炭からなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の燃料ガスの製造方法。
- 上記工程▲5▼における酸化反応を無機充填体および担持触媒の不存在下に行う請求項1に記載の燃料ガスの製造方法。
- 上記工程▲5▼における酸化反応を無機充填体および/または担持触媒の存在下に行う請求項1に記載の燃料ガスの製造方法。
- 無機充填体が、チタニア、ジルコニア、チタニア-ジルコニア、アルミナ、シリカおよびアルミナ-シリカからなる群から選ばれた少なくとも1種の材料で構成されている請求項5に記載の燃料ガスの製造方法。
- 担持触媒が、Ru、Pd、Rh、Pt、Au、Ir、Os、Fe、Ni、Co、MnおよびCeならびにその水不溶性乃至水難溶性化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種を触媒活性成分とし、チタニア、ジルコニア、チタニア-ジルコニア、アルミナ、シリカおよびアルミナ-シリカからなる群から選ばれた少なくとも1種を担体とする請求項5に記載の燃料ガスの製造方法。
- 上記工程▲5▼における反応器内温度が374℃以上であり、圧力が22MPa以上である請求項1に記載の燃料ガスの製造方法。
- 上記工程▲5▼における反応器内温度が150℃以上であり、圧力が液相を維持しうる圧力以上であり、かつ上記工程▲5▼における担持触媒の触媒活性成分がRu、Pd、Rh、Pt、Au、Ir、Os、Fe、Ni、Co、MnおよびCeならびにその水不溶性乃至水難溶性化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種であり、その担体がチタニア、ジルコニア、チタニア-ジルコニア、アルミナ、シリカおよびアルミナ-シリカからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の燃料ガスの製造方法。
- 上記工程▲4▼において、気液混合相を減温させて、二酸化炭素を液相側に移行させることにより、脱炭酸を行う請求項1に記載の燃料ガスの製造方法。
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