(本発明の第1の前提例)
以下、本発明の前提例について図面を用いて説明する。図1は、本前提例おける高周波信号受信装置の回路ブロック図である。図1において、20はデジタル信号が変調された高周波信号を受信する不平衡型の入力同調部を有する同調アンテナであり、この入力同調部はインダクタ20aとバリキャップダイオード20bの並列接続により構成されている。インダクタ20aは誘電体上にパターンで形成されている。また、バリキャップダイオード20bは制御端子20cに供給される制御電圧に応じてその容量値が変化し、この制御電圧に応じてアンテナ20の同調周波数を変化させることができるものである。つまり受信希望信号の周波数と、この同調アンテナの同調周波数とを合致させることにより、希望信号のみを取り込んで、希望信号以外の雑音を通過させなくすることができるものである。ただし、このアンテナ20は、その受信感度を大きくするために、受信状態においてはなるべく機器の上方となる位置に設けることが望ましい。
21は、同調アンテナ20から供給される不平衡な高周波信号を平衡な高周波信号へ変換する不平衡・平衡変換回路である。この不平衡・平衡変換回路21は同調アンテナ20に近接して設けている。
なぜならば、同調アンテナ20で希望信号に同調し、不要な信号を除去したにも係わらず、同調アンテナ20と選局部22との距離が離れていると、その間で新たな妨害ノイズ等が入ることとなる。従って、同調アンテナ20と不平衡・平衡変換回路21との距離を近接して配置することにより、妨害に対して強くなり、ノイズ等に対しても誤り率が大きくならない。また、不平衡・平衡変換回路21と選局部22との間は妨害に強い平衡線路としているので、この距離を長くしても外部からのノイズによる誤り率は大きくならない。
22は不平衡・平衡変換回路21の出力に接続された選局部であり、アンテナ20で選択された周波数を周波数変換し、I/Q抽出するものである。この選局部22は入力端子23a,23bと、高周波増幅器24と、局部発振器25、混合器26と、SAWフィルタ27と、局部発振器29および混合器30から構成されたI/Q抽出器28と、局部発振器25にループ接続されたPLL回路31と、このPLL回路31の基準信号として水晶発振子32から構成されている。ここで、入力端子23a,23bは、平衡入力となっている。
高周波増幅器24は同調アンテナ20の出力が供給され、同調アンテナ20で選択された周波数を増幅するものである。なお、この高周波増幅器24は制御端子24aの電圧を変化させることによりその増幅度を変化させることができるものである。
26は高周波増幅器24の出力がその一方の端子に接続されるとともに他方の端子には局部発振器25からの出力が接続された混合器である。この混合器26では、局部発振器25の発振信号と高周波増幅器24の出力信号とを混合し、入力される最大周波数(約900MHz)の約1.5倍の中間周波数信号へ変換する。本前提例においてはこの中間周波数信号の周波数を1.2GHzとしている。従って、テレビ放送信号の2次歪、3次歪等による妨害を受けにくくなる。
27は、混合器26の出力が接続されたSAW(表面弾性波)フィルタである。このSAWフィルタ27は、中間周波数信号の周波数を中心としてテレビ放送信号の帯域である6MHzを通過帯域としているものであり、このSAWフィルタ27は非常に急峻な減衰特性を有するものであるので、必要とされる周波数信号だけを良好に通過させることができる。従って不要な妨害を確実に排除することが可能である。なお、デジタル狭帯域テレビ放送信号の場合は約428kHzの帯域となる。
さらに、本前提例においては中間周波数として1.2GHzという非常に高い周波数を用いているので、SAWフィルタ27を小さくすることができ、高周波信号受信装置の小型化が可能となる。
28は、I/Q抽出器である。このI/Q抽出器28は、SAWフィルタ27の出力がその一方の端子に供給されるとともに他方の端子には局部発振器29から出力される信号が供給される混合器30から構成されている。
そして本前提例における混合器30は、図1には明確に示されていないが、局部発振器29からの信号とSAWフィルタ27からの信号とを混合する第一の混合部と、局部発振器29からの信号を90度位相反転した信号とSAWフィルタ27からの信号とを混合する第二の混合部から形成されており、それぞれの混合部で信号を混合することで直接I信号及びQ信号を抽出している。従って別途検波器等を設ける必要がなく小型の高周波信号受信装置を得ることが可能になる。この場合、局部発振器29の発振周波数としては中間周波数信号の周波数とほぼ同等の周波数とすることにより、直接I信号とQ信号を抽出している。
31はPLL回路である。このPLL回路31は、局部発振器25に接続され、その信号を分周するプログラマブルカウンタ33と、その一方の端子はプログラマブルカウンタ33の出力に接続されるとともに、他方の端子には水晶発振子32の出力を分周するリファレンスカウンタ34の出力を接続し、それらの周波数を比較する比較器35と、この比較器35の出力と局部発振器25との間に挿入され、比較器35の結果に応じて局部発振器25を制御するPLL制御部36とから構成されている。
ここで、プログラマブルカウンタ33には2線式で構成された制御端子33aが設けられており、この制御端子33aにデータを与えることにより、前記プログラマブルカウンタ33の分周比を変化させ、周波数を変化させることができる。すなわち制御端子33aのデータを変更すると、プログラマブルカウンタ33で分周された値とリファレンスカウンタ34の出力との差が生じ、それを比較器35で比較し、その結果に応じてPLL制御部36が局部発振器25の発振周波数を制御するものである。そしてプログラマブルカウンタ33で分周された値とリファレンスカウンタ34の出力が一致するとPLL制御部36の出力端子36aからロック信号を出力するものである。
37は、I/Q抽出器28の出力が供給される復調部である。この復調部37にはOFDM復調する復調部38とこれを制御するレジスタ39とから構成されている。ここで、レジスタ39に設けられた端子39aにデータを入力することにより、復調部38を制御している。
40は誤り訂正部であり、この誤り訂正部40の出力が出力端子41に接続されている。ここで誤り訂正部40は、復調部37の出力に接続されたビタビ訂正器42と、このビタビ訂正器42の一方の出力が接続されたリードソロモン訂正器43とから構成されている。
ここでビタビ訂正器42は、復調されたデジタル信号が予め定められた規則に反していないかどうかを判定し、違反している箇所について信号の訂正、復元を行うものである。さらにリードソロモン訂正器43ではビタビ訂正器42で訂正されたデジタル信号を再度訂正、復元するものである。一般的にこのリードソロモン訂正器43での訂正のためのリードソロモンデータは予め画像信号データに付して送信されて来る。そこで、リードソロモン訂正器43では、そのリードソロモンデータと、送られた画像信号とからデジタル信号を訂正、復元するものである。
なお、各国でそのデジタル信号のビット数や、リードソロモンデータのビット数は異なるが、一般的にはビタビ訂正器42の出力での誤り率が0.0002以下である場合には、リードソロモン訂正器43の出力の誤り率を0とすることができるとされている。
44はマイクロコンピュータ(以下、マイコンと言う)である。このマイコン44は、ビタビ訂正器42の他方の出力に接続された判定部45と、この判定部45の出力に接続された制御部46と、この制御部46の出力に接続されるとともに、制御端子20c,24a,33a,39aへの信号を選択的に切替えるスイッチ49を有している。
なお、このマイコン44では、判定部45でビタビ訂正後における誤り率を監視し、その値が0.0002を超えるとともに、誤り率が安定したと判定した場合に、制御部46が制御端子20c,24a,33a,39aのいずれかを選択し制御信号を送るものである。なお本前提例において、各部は制御部46からの信号によって制御を開始する構成としている。
しかし、判定部45は誤り率のみの判定を行っているので、今各部(同調アンテナ20、高周波増幅器24、PLL回路31、復調部37)が今どのような状態にあるか判定できない。この状態でもし誤り率が0.0002以下であるにも係わらず、制御部46が各部の制御を行うと、誤り率が悪化してしまう方向へ動くこともある。つまり、制御部46は、選択した被制御部(前記各部)に対して一度ある方向へ変化するように制御電圧を変化させ、判定部45がその結果を検知し、誤り率が大きくなったのか小さくなったのかを判定している。
すなわち判定部45は各部が最適な状態で動作しているかどうかの判定はできないので、必ずしも誤り率が良化する方向へ制御電圧が変化されているとは限らない。あるいは、その被制御部の制御電圧が最適点である場合は、当然どちらの方向へ電圧を変化させても誤り率は大きくなるのは当然である。
このように判定部45での誤り率が0.0002以下で新たな制御をすると、この新たな制御によって誤り率が悪化する方向へ動くことも起こることとなる。
また、判定部45が安定状態になったとする判定をしないで制御部46が新た
な制御をすると、前に行った制御による誤り率の改善結果が安定する前に新たな制御が行われることがある。その場合に制御は不安定となり、誤り率を逆に悪化させることとなる。そして、誤り率の増加により発生したブロックノイズの改善に時間が掛かることとなるため、制御部46は判定部45が安定したと判定してから、新たな制御を開始するものである。
従って制御部46は、判定部45において誤り率が0.0002を超え、かつ誤り率が安定したとの判定を下した場合に、制御を開始する。
また、制御部46が制御を行い、誤り率が減少した場合には、更に同方向に制御電圧を変更する。しかし制御を行った結果、誤り率が増大した場合には逆方向へ制御電圧の変更を行う。各部の制御電圧には誤り率の極小点つまり、最適点が存在し、この点を超えてさらに制御電圧を変化させると、逆に誤り率が大きくなる。このようにして、各部における最適な制御点を探し出すことができ、最も良好な状態で受信することとなり、誤り率を小さくすることができる。
次に、判定部45において誤り率が安定したとの判定をどのようにして下すかについて説明する。47は制御部46に接続されたメモリであり、このメモリ47には、ビタビ訂正器42を定期的に監視して格納した誤り率が格納してある。そして判定部45で、前回メモリ47へ格納した誤り率と新たな誤り率との比較を行い、この結果に差の無い場合、判定部45は安定したとの判定を下している。
ただし、判定部45がこの比較のみしか行わないならば、外乱等により誤り率が大きくなった場合においても、この外乱による誤り率が完全に安定するまで新たな制御は行わないこととなるので、安定するまで時間がかかることとなる。
そこで、制御電圧を変更した場合に、各部のそれぞれが安定するまでの安定時間についてもメモリ47に格納し、この安定時間を超えても誤り率が安定していない場合は、安定したものとみなした判定を行い、新たな制御を開始するものである。
すなわち、各部に対して設定された安定時間を超えても誤り率が安定していないのは、制御以外の別の要因、あるいは新たな外乱に起因するものであるとして、新たな制御を開始するように設定するものである。これにより突然の電波状況や受信状態の変化などによる誤り率が大きくなったとしても、素早く直すことができることとなる。
ただし、各部の安定状態になるまでの時間のうち最長なものの時間が経過したら安定状態と判定する場合、各部の条件に合わせた時間の記憶が不要になるので、メモリ47の記憶容量は小さくて良い。従って低価格なメモリを使用することができる。
また、36aは制御部46、PLL制御部36の出力と制御部46とに接続されるとともに、ロック信号が入力される入力端子である。この入力端子36aにロック信号が入力されると制御部46はPLL回路31がロックしたことを認知することができる。
以上のような構成により、制御部46は、同調アンテナ20、高周波増幅器24、PLL回路31ならびに復調部38のうちから適宜選択して制御することができるので、誤り率の改善効果を向上させることができる。
従って受信する高周波信号がデジタルテレビ放送である場合に、受信信号データの誤り率の低下による画像のブロックノイズが発生しにくくなるので、きれいな画質の放送を受信することが可能になる。
ここで、制御部46がどの回路に対して制御をするかの判定については、制御されて誤り率が安定状態になる速度の速いものから順次制御している。つまり、制御された部位自体が安定するまでの時間と、その後段の回路の処理に必要な時間との和が最も短くなるものから制御を開始するものである。これにより早く誤り率の改善をすることができるので、誤り率の低下により発生した画面のブロックノイズを素早く直すことができる。従ってブロックノイズによる画像の欠落時間を短くすることができる。
なお、各部を制御したときの各部自体が安定する時間が各部における処理時間に比べて非常に短い場合は、判定部45に近い復調部37から制御を開始すると判定部45は早く判定することができる。つまり、制御部46が制御した後に判定部45が判定を行うまでの時間は、ほぼ制御した部位での処理時間とその後段の処理時間の総和となる訳であるから、当然判定部45から近い部位から制御してやれば早く誤り率を安定させることができることとなる。
例えば回路的に上流のアンテナ20側から制御すると、信号はアンテナ20からビタビ訂正器42までの各部の回路を通過、処理されるので、制御をしてからその結果を判定部45が判別するまでに時間が掛かってしまう。従って、回路的に下流にあるビタビ訂正器42から制御をすれば、判定部45はその結果を素早く検知し、データの誤り率を早く安定させることができるので、たとえブロックノイズによる画像の欠落が発生しても短時間に修復することができる。その結果、画面の欠落等があったとしても、それを認識できない程度にまで改善することができる。
ただし各部のうち複数の部位を制御したい場合、例えば受信チャンネルを変更するような場合には、逆に安定するまでの時間が長い部位から順に制御信号を発送する。これにより素早く制御を安定させることができる。
さらに本前提例において制御部46は判定部からビット誤り率が0.0002以下である場合には制御しないので、ビット誤り率が0.0002を超えた場合にのみ制御電流が消費され、使用電力を少なくすることができる。これは高周波受信装置を特にバッテリにより駆動される携帯機器に用いる場合に重要となる。
また、本前提例において、高周波増幅器24と、局部発振器25、混合器26と、SAWフィルタ27と、局部発振器29、混合器30およびそれらの間を接続する線路についても全て平衡としている。
これによりたとえ局部発振器25,29の発振信号やその高調波などが混合器26,30やSAWフィルタ27などへ飛び込んだとしても、混合器26とSAWフィルタ27は妨害の排除能力の高い平衡回路で形成されているので、妨害はキャンセルすることができる。
従って、妨害に対して非常に強くなり、回路のS/N比を改善できるので、局部発振器25,29と混合器26,30やSAWフィルタ27などとの距離を小さくすることができる。
また、局部発振器25,29と混合器26,30やSAWフィルタ27間を仕切る金属製の仕切り板や強固なシールド筐体等も不要あるいは簡易なものとすることができるので、高周波信号受信装置を小型化するとともにコストも安くすることができる。
つまり、複雑な仕切り板を有したフレームも必要がなく、外部からの飛び込みやこの高周波信号受信装置から飛び出す高周波漏洩信号のみを遮断する簡単なカバーのみで良いため、安価な高周波信号受信装置を提供することができることとなる。
更にまた、本前提例では高周波増幅器24、混合器26,30、局部発振器25,29、SAWフィルタ27ならびにそれらの間を接続する線路全てを、平衡としているので、これらの回路全体は妨害から強くなる。従って、それぞれの回路間の距離を小さくしても、局部発振器25,29からの発振信号妨害による回路のS/N比が悪化しないので、高周波増幅器24、混合器26,30、局部発振器25,29やPLL回路31を一体のICとすることが可能となり、小型かつ生産性の良好な高周波信号受信装置を提供することが可能となる。
また、受信希望チャンネルの近傍に強入力の信号を有するような場合において、同調アンテナ20の同調周波数を前記強入力信号が除外される方向へアンテナの同調周波数をずらした状態で受信するように制御を行い、前記強入力信号による誤り率の悪化に対して改善することも可能となる。
さらに、同調アンテナ20によって予め受信希望以外のチャンネルの信号を抑圧するので、高周波増幅器24で信号の歪みが発生し難くなる。従ってこの高周波増幅器24は安価なバイポーラ型のトランジスタを用いることもできる。つまりこれによって、この高周波増幅器24と混合器26,30、局部発振器25,29やPLL回路31を、1つのバイポーラ型ICに集積することが可能となり、小型かつ生産性の良好な高周波信号受信装置を提供することができる。
さらに、もしも放送局からの高周波信号の周波数がずれて送られた場合においても、PLL回路31のプログラマブルカウンタ33のデータを変更することで容易に対応することができる。
(本発明の第2の前提例)
以下、本前提例における高周波受信装置について図を用いて説明する。
図2は本前提例における高周波受信装置へ入力される信号の模式図であり、一例を示したものである。
デジタル放送に利用される周波数は、90MHzから約900MHzであり、既存のアナログ放送の周波数帯域が用いられる。そして、この放送帯域内には既存のアナログ放送120,121と、このアナログ放送120,121の使用していない隙間の周波数122を利用して放送されるデジタル放送123とが混在して放送されている。このように、既存のアナログ放送120,121の隙間にデジタル放送123が散在して放送されるので、デジタル放送123の信号レベル124はアナログ放送120,121の信号レベル125よりも低くしてある。なぜならば、従来のアナログ放送120,121では隣接には放送信号がないように周波数を利用していた。つまり最低12MHz離れた周波数間隔で設定されていたので、隣接チャンネルの排除能力は高くなくても良かった。しかし、デジタル放送が混入されて放送されることで、隣接のチャンネル(6MHz離れたチャンネル)にも放送信号が存在することとなるので、隣接妨害に対する排除能力の高くない既存のアナログ放送の受信機を使用しているユーザにとっては、このデジタル放送の信号レベル124を大きくすると、そのデジタル放送信号123が妨害となってしまうこととなる。そこで、既存のアナログ放送の受信機にデジタル放送信号123による妨害の影響が出ないようにデジタル放送123の信号レベル124はアナログ放送120,121の信号レベル125よりも小さなレベルで放送されている。
従って、デジタル放送信号の受信機には、この低いレベルの信号を精度良く受信する能力が要求されることとなる。さらに、受信希望チャンネルの信号自体のレベルは低いので、その近隣に(例えば隣接)レベルの大きなアナログ放送信号がある場合に、その大きなレベルの信号による妨害を排除できる構成が必要となってくる。
そこで、本前提例における高周波受信装置は、アナログ放送信号が妨害となり発生するビット誤り率を小さくするものである。以下、本前提例について図を用いて説明する。図3は本前提例における高周波受信装置のブロック図である。なお、図3において図1と同じものについては同じ番号を付し、その説明は簡略化する。
図3において1はアンテナであり、上記周波数帯域のアナログ放送とデジタル放送とが混在した放送信号が入力される。このアンテナ1に入力された信号は、RFフィルタ130へ供給される。このRFフィルタ130は、前記受信帯域周波数以外の不要な周波数を除去するものである。
そしてこの入力フィルタ130の出力が供給される不平衡・平衡変換回路21へ接続され、この不平衡・平衡変換回路21によって不平衡回路から平衡回路へと変換している。この不平衡・平衡変換回路21の平衡出力は、その制御端子131aへの制御電圧に応じて利得を可変できる高周波増幅器131へ供給される。なお、この高周波増幅器131は、その雑音指数(以後はNFと言う)は良くなくとも、利得の制御範囲を大きくするとともに広帯域な周波数の増幅が可能なようにMOSトランジスタ等を用い、妨害排除能力を高くするために平衡型の増幅回路としている。
26は、高周波増幅器131の平衡出力が、その一方の入力に接続されるとともに他方の入力には局部発振器25の平衡出力が接続された混合器である。この混合器26では、希望チャンネルの信号を1.2GHzの第一の中間周波数信号へ変換している。なお、この混合器26ならびに局部発振器25とそれらの接続についても妨害排除能力が高い平衡回路としている。
134は、混合器26の平衡出力が供給されるとともに、その制御端子134aに供給される電圧に応じてその利得を可変できる中間周波増幅器である。この中間周波増幅器134では中間周波数信号が増幅されれば良く、一般的にそのNFは良い。従って本来は全ての増幅をこの中間周波増幅器134のみで行えればよいのだが、この中間周波増幅器134の利得の可変範囲だけでは制御範囲が狭いので、高周波増幅器131と中間周波増幅器134とによって増幅を行っている。なお、この中間周波増幅器134も平衡型の増幅器とし、妨害に対して強くしている。
そして本前提例においては、混合器26、局部発振器25と、この局部発振器25にループ接続されるPLL回路31および、中間周波増幅器134とはすべてをバイポーラ型トランジスタを用いた集積回路(IC)に収納している。そして135は、平衡・不平衡変換回路である。この平衡・不平衡変換回路135によって中間周波増幅器134の平衡出力を不平衡へ変換する。
136は、平衡・不平衡変換回路135に接続されたSAWフィルタ(狭帯域フィルタの一例として用いた)である。このSAWフィルタ136の通過帯域の中心の周波数は、中間周波数である略1.2GHzであり、その通過帯域幅は1チャンネルの周波数帯域である略6MHzとしてある。そして、このSAWフィルタ136によって受信希望チャンネルの信号以外の不要な信号は除去される。
137はその一方の入力にSAWフィルタ136が接続されるとともに他方の入力には第2の局部発振器138が接続された第2の混合器である。この第2の混合器137では、第一の中間周波数をこの第一の中間周波数より低い第2の中間周波信号へ変換するものである。
そして、第2の混合器137に接続された復調部37によって、中間周波信号を復調し、この復調部37に接続されて復調された信号は、誤り訂正部40によって信号の誤りが訂正され、この誤り訂正部40によって訂正された信号が出力端子41から出力されることとなる。
140は、SAWフィルタ136の出力が接続されるとともに、受信希望チャンネル信号の電力レベルを検出するレベル検出器である。141は、復調部37で復調するために最適なSAWフィルタ136の出力信号のレベルと、高周波増幅器131が飽和する限界レベル値とを基準値として記憶するメモリである。また142は、その一方の入力にはレベル検出器140の出力が接続されるとともに、他方の入力にはメモリ141が接続された演算器である。そして該演算器142は、レベル検出器140で検出された受信希望チャンネル信号のレベルと、メモリ141に記憶された復調部37で復調するために最適なSAWフィルタ136の出力信号のレベルの基準値とを比較し、そのレベル差を出力する。
次に、143はバンドパスフィルタであり、希望チャンネルを受信時に妨害となる中間周波数に近接した周波数の信号のみを選択的に通過させる。本前提例においては受信チャンネルの前後それぞれ2チャンネル分の信号が通過できる帯域(30MHz)を有したフィルタとしている。
144は、バンドパスフィルタ143の出力が供給され、その信号のピーク電力を検出するピーク電力検出器であり、このピーク電力検出器144には受信希望チャンネルを略中心として上下に片側15MHzの帯域の周波数が入力され、これらの信号の中で最も高いレベルの信号を検出することができることとなる。
次に、第2の演算器145は、その一方の入力にピーク電力検出器144の出力が供給されるとともに、他方の入力にはメモリ141が接続される。そして、ピーク電力検出器144で検出された信号のレベルと、メモリ141に記憶された高周波増幅器131が飽和する限界レベル値との差を算出し、その算出レベル誤差を出力するものである。もしピーク電力検出器144の出力とメモリ141の基準値が同じである場合、そのレベル誤差は0であり、この第2の演算器145の出力は0となる。これは受信チャンネルの近傍にレベルの高い信号が存在しないことを示すものである。この構成によって、希望チャンネルの信号よりも高いレベルの信号が希望チャンネルの近傍に存在するかどうかを検知できることとなる。ただし、ピーク電力検出器144で検出された信号のレベルがメモリ141に記憶された値より小さい場合もレベル差として0が出力される。
146は、その一方の入力に演算器142が算出した誤差が供給されるとともに他方の入力には第2の演算器145が算出したレベル誤差が供給されるレベル判定器である。このレベル判定器146では、第2の演算器145から出力されたレベル差が0である場合には、演算器142の出力を利得制御器147へ出力する。一方第2の演算器145から出力されたレベル差の出力が0でない場合、判定器46はこの演算器145の出力を利得制御器147へ出力するものである。
なお、利得制御器147では第3の演算器146からの出力信号を積分し、雑音成分を除去して高周波増幅器131と中間周波増幅器134への制御信号を生成している。そしてこの利得制御器147が高周波増幅器131と中間周波増幅器134への制御信号を生成し、それぞれの制御端子131a,134aへ供給することによって利得を最適に制御する。また、局部発振器25と第2の局部発振器138には、それぞれにループ接続されたPLL回路が接続されている。
次に、以上のように構成された高周波受信装置において、高周波増幅器131、中間周波増幅器134の利得を制御する動作について説明する。まず、希望チャンネル123の近傍に妨害となるアナログ信号120(あるいはアナログ信号121)がない場合について説明する。この場合、利得制御器147へは演算器142の誤差信号が供給される。つまり、利得制御器147はレベル検出器140で検出された受信希望チャンネル信号のレベルとメモリ141に記憶された基準値との誤差が入力されるので、この誤差に応じて制御電圧を変化させて、希望チャンネルの信号レベルを基準値に合わせることができる。
次に、希望チャンネル123の近傍に妨害となるアナログ信号120(あるいはアナログ信号121)が存在する場合について説明する。この場合図2に示されるように、このアナログ信号120(あるいはアナログ信号121)の信号レベル125と希望チャンネル123の信号レベル124とのレベル差126が利得制御器147へ供給されることとなる。従って、利得制御器147がこのレベル差126に応じて制御電圧を変化させるものである。
次に、本前提例の高周波受信装置における高周波増幅器131と中間周波増幅器134の動作について図を用いて説明する。図4は本前提例における高周波増幅器の特性図であり、高周波増幅器131への入力信号レベルとその出力信号レベルとの関係を示している。また、図5は同、中間周波増幅器の特性図であり、高周波増幅器131への入力信号レベルに対する中間周波増幅器の利得を示している。
図4(a)はアナログ放送受信時の高周波増幅器131の入力信号レベルと出力信号レベルとの関係を示している。150は高周波増幅器131への入力信号のレベルであり、151は高周波増幅器131の出力信号レベルであり、152は高周波増幅器131の入力信号のレベルに対する出力信号のカーブを示している。この場合高周波増幅器131は、アナログ放送信号のレベル125に対してもレベル125’に対しても出力レベル153を出力するように制御される。
一方図4(b)はデジタル放送受信時の高周波増幅器131の入力信号レベルと出力信号レベルとの関係を示している。154は高周波増幅器131の入力信号のレベルに対する出力信号のカーブを示している。なおここでデジタル放送に対しては、誤り訂正処理を行うのでアナログに比してN/Fは悪くても良い。また、その信号内に多くの信号を有しているのでそのエネルギー量は大きいので、デジタル放送受信時の高周波増幅器131からの出力信号レベル154はアナログ放送の場合の出力レベル155に比べて小さくなるように設定している。
ここでこの高周波増幅器131は、飽和レベル156以上のレベルの信号が入力されても利得限界157以上には増幅しない。従ってこの飽和レベル156以上のレベルの信号が、この高周波増幅器131へ入力されると、この高周波増幅器131では歪みを生じ、妨害信号等が発生することとなる。つまりデジタル放送受信時に、希望信号のみのレベルだけで利得制御すると、レベルの大きなアナログ放送信号によって高周波増幅器131が歪む場合がある。また高周波増幅器131のピーク電圧のレベルだけで利得を制御すると、レベルの大きなアナログ放送信号のレベル125に対し出力レベル155が出力されるように制御される場合がある。このときには、本来受信したいデジタル信号の出力レベルは小さくなるので受信できなくなってしまう場合がある。
そこで、以上の構成によって、デジタル放送を受信時に受信チャンネルの近傍には前記飽和レベル156よりも大きい妨害信号が存在しないと判定された場合には、受信チャンネルのレベル124によって高周波増幅器131の利得を制御し、前記飽和レベル156よりも大きい妨害信号(アナログ放送信号)が存在すると判定された場合には、そのレベル差126の大きさに応じ、高周波増幅器131の利得カーブ154を利得カーブ157へと変化させるものである。これにより高周波増幅器131への入力信号レベルの飽和は、飽和点158となり、アナログ信号121の信号レベル125に対する出力はレベル159となり、高周波増幅器131は飽和しないので、高周波増幅器131の出力信号の歪みを小さくすることができる。
しかしながら、混合器26で第1の中間周波数へ周波数変換されたデジタル放送の受信チャンネル123の信号レベルは減少量160だけ小さくなる。そこで図5に示されるように、中間周波増幅器134でその減少量160を補うようにその利得161を利得162へと変化させ、中間周波増幅器134からの出力信号レベルを略一定値となるようにするものである。なお、この図5は高周波増幅器131への入力信号レベルと中間周波増幅器134の利得との関係を示し、横軸は高周波増幅器131への入力信号レベル150であり、縦軸は中間周波増幅器134の利得163である。
ここで、本前提例におけるこの誤り訂正部40は、第1前提例におけるものと同じものを用いており、この誤り訂正部40のビタビ訂正器42の出力が判定部45へ接続されている。この判定部45では、ビタビ訂正後の信号のビット誤り率が0.0002以上であるとの旨の信号を制御部46へ送信する。そしてこの信号を受け取った制御部46は、利得制御器147に対して高周波増幅器131と、中間周波増幅器134の利得の制御を行うように指示を与えるものである。
以上の構成によって、利得制御器147は、受信希望チャンネルのデジタル放送信号の近傍にあるレベルの高い放送信号によってビタビ訂正器42のビット誤り率が0.0002以上に悪化した場合に、高周波増幅器131と中間周波増幅器134との利得を制御することとなる。従って、出力端子41でのビット誤り率が0ではなくなった時に、高周波増幅器131と中間周波増幅器134の利得の制御が行われることとなるので、ビット誤り率が安定した高周波受信装置を得ることができる。
また演算器145では、メモリ141に記憶された高周波増幅器に歪みが生じる限界値と比較し、高周波増幅器131の利得を制御するので、受信希望チャンネルのデジタル放送信号の近傍にレベルの高い放送信号があっても、高周波増幅器131は飽和状態とならない。従って受信希望チャンネルのレベルを最適となるように制御することができ、高周波増幅器131での信号の歪みを小さくすることができるので、ビット誤り率が小さい高周波受信装置を提供することができる。
また、昨今携帯電話や自動車の車内などの移動状態で、デジタル放送を視聴したいニーズが高まってきた。そこで、本前提例におけるデジタル放送受信装置においては、第1中間周波数を1.2GHzとしているので、900MHz帯、1.5GHz帯の周波数が使用される携帯電話や、1.9GHz帯の周波数が使用されるPHSなどの携帯機器の影響を互いに及ぼすことがないので、本前提例における高周波受信装置を携帯機器内に搭載しても妨害が生じることは少なくなる。
特に、デジタル信号を移動中に受信する場合、放送局との距離や方向などの電波状況が刻々と変化するので、受信希望チャンネルの受信状態において、常にビット誤り率を判定するとともに受信希望チャンネルを略中心として予め定められた周波数帯域内のアナログ放送信号のピーク電力を検出する構成とし、ビット誤り率が悪化した場合に、検出したピーク電力値に応じて即高周波増幅器あるいは、中間周波増幅器の利得を制御することができる。これにより、移動によって刻々と変化する信号レベルの変化に対し即応できることとなり、ビット誤り率を素早く改善することができる。
さらに、本前提例においてはレベル判定器146によってピーク電力検出器144の出力による誤差と、レベル検出器140の出力との誤差とによって演算をしているが、これは単なる比較器としても良い。この場合、ピーク電力検出器144の出力とレベル検出器140の出力とを比較し、ピーク電力検出器144の出力の方が大きい場合には、利得制御器147に対して信号を伝達する。そして、この信号が入力された利得制御器147が、高周波増幅器131の利得を小さくする方向に制御電圧を微小量変化させる。一方中間周波増幅器134に対しては、高周波増幅器131の利得を小さくすることにより混合器26の出力信号レベルの減少を補うように、中間周波増幅器134の利得を大きくする方向へ中間周波増幅器134の制御電圧を微小量変化させることとなる。
この構成においてはこの演算自体も不要であり、第3の演算器が不要となるので、利得を制御する場合にその応答速度は速くなる。従って、隣接チャンネル信号のレベルが変動したことによるビット誤り率の悪化等を素早く改善することができる。このことは、その信号レベルが刻々と変化するような携帯電話や自動車に高周波信号受信装置を搭載するような場合には重要な点である。
さらにまた、本前提例においてはレベル検出器140で希望チャンネルの信号レベルを検出しているが、これはピーク電力検出器144で検出しても良い。その場合、ピーク電力検出器144で希望チャンネルの信号のレベルも読み取る構成とし、演算器142へ出力すればよい。
なお、本前提例においては、受信チャンネルの信号レベルを検出するために、SAWフィルタ136の出力によって希望チャンネルの信号レベルを検出しているが、これはレベル検出器140によって希望チャンネルの周波数レベルを読み取る構成とすれば、レベル検出器140へピーク電力検出器144の入力を分割して入力しても良い。この場合、SAWフィルタ136によるロス分だけ信号レベルが小さくならないので、精度の良い検出ができる。
なお、本前提例においてはレベル検出器140、演算器142、ピーク電力検出器144、第2の演算器145やレベル判定器146は回路によって構成しているが、これらの各動作をプログラムにおける各手順としてマイコンで実行しても良い。この場合レベル検出器140、演算器142、ピーク電力検出器144、第2の演算器145やレベル判定器146等の回路を簡素化することができるので、高周波受信装置を小型化かつ安価に実現することができる。
(本発明の第3前提例)
以下、前提例における高周波受信装置について図を用いて説明する。図6は本前提例における高周波受信装置のブロック図である。図6において、図1や図3と同じものについては同じ番号を付し、その説明は簡略化する。図6において、20は同調アンテナであり、この制御端子20cに与えられる信号に応じて同調周波数を変化させることができるものである。
172は、同調アンテナ20の出力に接続されるとともにその利得を可変制御することができる高周波増幅器である。173はその一方の入力には高周波増幅器172の出力が接続されるとともに、他方の入力には局部発振器174の出力が接続された混合器であり、この混合器173によって、入力信号を第1の中間周波数へ周波数変換する。そしてSAWフィルタ136によって中間周波増幅器175の出力信号から不要な信号を除去し、中間周波数のみの信号を得ている。
175は、SAWフィルタ136の出力が接続されるとともにその利得を可変制御することができる中間周波増幅器であり、SAWフィルタ136の出力が増幅される。そして、第2の混合器137によって第2の中間周波数へ変換され、この中間周波信号を復調部37で復調している。40は復調部37の出力に接続された誤り訂正部であり、この誤り訂正部40の出力が出力端子41に接続されている。ここで誤り訂正部40は、復調部37の出力に接続されたビタビ訂正器42と、このビタビ訂正器42の一方の出力が接続されたリードソロモン訂正器43とから構成されている。ビタビ訂正器42の他方の出力には判定部45が接続され、この判定部45の出力には制御部46が接続されている。そしてこれら判定部45や制御部46はマイコン44内に収められている。
ここで第2の演算器145は、その一方の入力にフィルタ143を介して供給されたピーク電力検出器144の出力が供給され、他方の入力にはレベル検出器140の出力が接続される。一方演算器142はレベル検出器140の出力とメモリ141の出力が接続される。そしてこれら演算器142と第2の演算器145の出力がレベル判定器146に接続される。そして利得制御器179の入力にはレベル判定器146の出力とピーク電力検出器の出力と制御部46の出力とが接続され、この利得制御器179の出力はアンテナ20の同調周波数を変更する制御端子20cへの接続された構成としている。
以上のような構成によって、まず第2の演算器145はSAWフィルタの上流から取り出した大きな妨害信号を含んだ信号とSAWフィルタの下流から取り出した妨害信号が抑圧された信号のレベル差を算出し、その算出レベル誤差を出力するものである。一方演算器142ではレベル検出器140とメモリ141の規定値とを比較しその誤差を出力する。
そしてレベル判定器146で、演算器142と第2の演算器145との誤差信号を比較し、それらの差が利得制御器179へ出力される。そして利得制御器179は、ピーク電力検出器144の出力と高周波増幅器172が飽和する信号レベルの値を比較する。そして、利得制御器179は、ピーク電力検出器144からの信号の出力レベルの方が大きい場合、高周波増幅器で信号に歪みが生じると判定し、レベル判定器146の信号のレベルに応じて高周波増幅器172や中間周波増幅器175の利得を制御するものである。なお、本前提例においては、利得制御器179がアンテナ20の同調周波数の制御も行っている。
ここで、もしピーク電力検出器144の出力とレベル検出器140の出力が同じである場合、そのレベル誤差は0であり、この第2の演算器145の出力は0となる。これは受信チャンネルの近傍にレベルの高い信号が存在しないことを示すこととなる。従ってこの構成によって、希望チャンネルの信号よりも高いレベルの信号が希望チャンネルの近傍に存在するかどうかを検知できることとなる。
なお、本前提例における誤り訂正部40や判定部45は、第2前提例におけるものと同じものを用いており、判定部45では、ビタビ訂正による信号のビット誤り率が0.0002以上である場合に、制御部46に対しビット誤り率が0.0002を超えた旨の信号を伝送し、そしてこの信号を受け取った制御部46は、前記利得制御器179に対して高周波増幅器172や中間周波増幅器175の制御を行う旨の信号を伝送する。
すなわち、判定部45は、ビット誤り率が0.0002以上に悪化した場合にのみ、利得制御器179に対して高周波増幅器172と中間周波増幅器175の利得を制御するように指示することとなる。従って、出力端子41でのビット誤り率が0ではなくなった時に、高周波増幅器172と中間周波増幅器175の利得の制御が行われることとなるので、ビット誤り率が安定した高周波受信装置を得ることができる。
また、第2前提例と同様に、受信希望チャンネルの受信状態において、常にビット誤り率を判定するとともに受信希望チャンネルを略中心として予め定められた周波数帯域内のアナログ放送信号のピーク電力を検出するので、移動によって刻々と変化する信号レベルの変化に対し即応できることとなり、ビット誤り率を素早く改善することができる。
さらに本前提例においては、利得制御器179が同調アンテナ20の同調周波数の制御も行っているので、利得制御器179はレベル判定器より誤差信号を受け取ると、この同調アンテナ20の同調周波数を希望チャンネルの周波数より微小量だけ変化させ、隣接チャンネルの信号を減衰させる制御を行っている。つまり、これによって希望チャンネルの近傍にある妨害アナログ信号の減衰量を大きくすることができる。しかしながら、同調アンテナ20の同調周波数を希望チャンネルの周波数から変化させると、希望チャンネル信号に対してもロスが大きくなってしまう。
そこで、本前提例においては第2の演算器145の出力が0でない場合、つまり希望チャンネル123の近傍にアナログ放送信号120あるいはアナログ放送信号121が存在する場合に、制御部46は同調アンテナ20の同調周波数を希望チャンネルの周波数より微小量だけ変化させるとともに、それによる信号のロスを補うために、高周波増幅器172あるいは中間周波増幅器175の利得が大きくなる方向へ制御を行う。これにより高周波増幅器172へ隣接チャンネルの妨害信号が供給され難くなり、高周波増幅器172の歪みは小さくなるので、ビット誤り率を小さくすることができる。
なお、高周波増幅器172、混合器173、局部発振器174とについては不平衡回路としているが、第2前提例と同様に平衡回路としても良い。
(本発明の第4の前提例)
以下、前提例における高周波受信装置について図を用いて説明する。図7は本前提例における高周波受信装置のブロック図である。図7において、図1あるいは図3と同じものについては同じ番号を付し、その説明は簡略化する。
図7において、アンテナ20は同調アンテナであり、その制御電圧に応じて同調周波数を変化させている。この同調アンテナ20の出力には高周波増幅器172が接続されている。173は、高周波増幅器172の出力がその一方の入力に接続されると共に他方の入力には局部発振器174の出力が接続された混合器であり、この混合器173の出力には中間周波増幅器175が接続されている。なおこの中間周波増幅器175と高周波増幅器172とにはその制御端子へ供給する電圧に応じて利得を制御できるようになっている。そして中間周波増幅器175の出力がSAWフィルタ136に接続される。
182は、SAWフィルタ136の出力がその一方の入力に接続されるとともに局部発振器181の出力が接続された混合器であり、180は、SAWフィルタ136の出力がその一方の入力に接続されるとともに局部発振器181の出力が90度位相器183を介して接続された混合器である。
この局部発振器181は第1の中間周波数と略同じ発振周波数の信号を発信し、混合器180,182によって局部発振器181の発信信号と第1の中間周波数信号とを混合し、それぞれ位相が90度異なったI,Q信号を直接取り出している。従って別途I,Q検波器等を設ける必要がないので、安価かつ小型な高周波受信装置を実現することができる。
そして、混合器180,182の出力のI,Q信号は復調器187へ供給され、復調される。そして、その復調器187は、レベル検出器184、演算器185、レベル判定器189と利得制御器190と同じ1つのマイコンの内に収納されている。従って小型な高周波受信装置を実現することができる。なお、レベル検出器184は、復調器187の信号のレベルとメモリ186に記憶された規定値との誤差を算出するものである。この規定値は、復調器187によって復調される信号が予め定められた信号レベルとなる場合の信号のレベルとしている。
次に、191はその一方の入力にフィルタ143の出力が接続されるとともに、他方の入力にはメモリ192が接続されたピークレベル検出器である。なお、このピークレベル検出器191の出力は、判定器189に接続されている。また、このメモリ192内にはアナログ放送として判定するレベルの電力値が収納されており、本前提例においては、デジタル放送信号の強電界下におけるデジタル放送信号の信号レベルを基準値として記憶している。
そして、このピークレベル検出器191で、受信チャンネルを除いた隣接の数チャンネル分の帯域のピーク電力を検出し、その検出レベルとメモリ192の基準値との差が予め定められた値以上である場合は、歪みを生じる高いレベルのチャンネルが存在するとして、妨害チャンネルが存在する旨の信号をレベル判定器189へ伝送する。
レベル判定器189はピークレベル検出器191から妨害チャンネルがある旨の信号が伝送されない場合には、演算器185の誤差出力の有無を示す情報を利得制御器190へ伝送する。そしてこの利得制御器190では、誤差がある旨の信号を受けた場合には予め定められた電圧分だけ、高周波増幅器172と中間周波増幅器175の利得を制御する。
そしてレベル判定器189は、ピークレベル検出器191から妨害チャンネルがある旨の信号を受け取った場合には、妨害チャンネルの有無を示す情報を利得制御器190へ伝送する。一方制御部46は、判定部45でのビット誤り率が0.0002を超えたとの判定結果によって、利得制御器190へその旨の信号を送る。すると利得制御器190では、制御部46からの信号に基づき予め定められた電圧だけ高周波増幅器172と中間周波増幅器175との利得制御電圧を変化させ、高周波増幅器172の利得を小さくするとともに、中間周波増幅器175の利得を高周波増幅器172の利得減少分を補うようにその利得を大きくするものである。
また、利得制御器190は、受信希望チャンネルのデジタル放送信号の近傍にあるレベルの高い放送信号によってビタビ訂正器42のビット誤り率が0.0002以上に悪化した場合に、高周波増幅器172と中間周波増幅器175との利得を制御することとなる。従って、出力端子41でのビット誤り率が0ではなくなった時に、高周波増幅器172と中間周波増幅器175との利得の制御が行われることとなるので、ビット誤り率が安定した高周波受信装置を得ることができる。
さらにピークレベル検出器191では、検出されたピークレベルとメモリ192に記憶された限界値との差に応じて、高周波増幅器172の利得を制御するので、受信希望チャンネルのデジタル放送信号の近傍にレベルの高い放送信号があっても、高周波増幅器172は飽和状態とならない。従って受信希望チャンネルのレベルを最適となるように制御することができ、高周波増幅器172での信号の歪みを小さくすることができるので、ビット誤り率が小さい高周波受信装置を提供することができる。
(本発明の第5の前提例)
以下、本前提例における高周波受信装置について図を用いて説明する。本前提例は、シングルコンバージョンチューナである。図8は本前提における高周波受信装置のブロック図である。図8において、図1あるいは図3と同じものについては同じ番号を付し、その説明は簡略化する。図8において、200はアンテナ1に接続されたアンテナフィルタであり、このアンテナフィルタ200は希望チャンネルの周波数がその同調周波数となる単同調型フィルタとしている。そしてこのアンテナフィルタ200の出力が高周波増幅器172に接続されている。
201は、高周波増幅器172での出力が接続されて、増幅された信号が供給される段間フィルタであり、同調回路を2つ有した複同調型フィルタである。なお、複同調型フィルタ201は、同調点が2箇所にあるため、希望チャンネルの周波数がその通過帯域の略中心となるようにそれぞれの同調点を調整している。
202は、段間フィルタ201の出力がその一方の入力に接続されるとともに、他方の入力には周波数可変局部発振器203の出力が接続される混合器である。この混合器202では入力された高周波信号のうちの希望チャンネル信号を、約57MHzの中間周波数へ変換している。
204は混合器202の出力が接続されるSAWフィルタであり、このSAWフィルタ204の通過帯域は約6MHzであり、その中心の周波数は略中間周波数である57MHzとし、隣接信号等6MHz以上離れた信号を確実に減衰させている。
205は、SAWフィルタ204の出力が接続されるとともに、その制御端子205aに供給される電圧に応じてその増幅する利得を可変できる中間周波増幅器である。この中間周波増幅器205では中間周波数信号のみが入力されるので、この中間周波増幅器205が妨害のアナログ放送信号で飽和することはなく、中間周波増幅器205の歪みを小さくすることができる。ただし、アンテナフィルタ200や、段間フィルタ201さらにSAWフィルタ204等によって信号がロスされるので、この中間周波増幅器205はNFが良いトランジスタを用いる必要がある。
206は、中間周波増幅器205の出力が接続されるアナログ・デジタル変換器である。そしてこのデジタルに変換された信号が復調器207へ供給され、この復調器207で復調された信号が誤り訂正部40へ出力される。そしてこの誤り訂正部40の一方の出力は出力端子41へ接続され、他方の出力は判定部45へ接続される。そしてこの判定部45の出力が制御部46へ接続される。
ここで210は、復調器207の出力が接続されて、復調器207の信号のレベルを検出するレベル検出器である。そして、211はその一方の入力にはレベル検出器210の出力が接続されるとともに、他方の入力にはメモリ212が接続された演算器であり、この演算器211は検出された復調器207の信号のレベルとメモリ212の値との誤差を演算している。なお、メモリ212には復調器の最適な信号レベルの値を記憶させておく。つまり、この演算器211によってレベル検出器210で検出された信号レベルが最適値となっているかどうかを判定することができる。
213は、その一方の入力に演算器211の出力が接続されるとともに他方の入力には制御部の出力が接続された利得制御器であり、この利得制御器213の出力は中間周波増幅器205の制御端子205aとに接続されている。従って、この利得制御器213は演算器211からの誤差信号がある場合、この誤差に応じて制御電圧を変化させ、中間周波増幅器205の利得を変化させる。
215は、混合器202の出力が接続されたピーク電力検出器である。216は、ピーク電力検出器215の出力がその一方の入力に接続されるとともに、他方の入力にはメモリ217が接続されたレベル判定器であり、このメモリ217内には高周波増幅器172に歪みを生じる限界値のレベルの電力値が基準値として収納されている。そして判定器216は、ピーク電力検出器215とメモリ217内の基準値とのレベル差を演算する。そして、レベル判定器216の出力と高周波増幅器172の制御端子172aとの間には利得制御器218が挿入されている。なお、利得制御器213の出力はこの利得制御器218へも供給される構造としてある。
以下、本前提例の動作について説明する。アンテナフィルタ200へ入力された信号は、希望チャンネルの周波数がその同調周波数であるので、希望チャンネルの信号以外は減衰される。しかしながら、このアンテナフィルタ200は信号のロスを小さくし、NFを良くするために、単同調回路を用いているので、希望チャンネル周波数より6MHzしか離れていない隣接チャンネルの信号は10dB程度しか減衰しない。一方アナログ放送とデジタル放送では略40dB以上のレベル差があるため、アンテナフィルタ200を通過しても隣接チャンネルの信号の方がそのレベルは大きいままとなっている。
そこで本前提例では、ピーク電力検出器215で、受信チャンネルを除いた隣接数チャンネル分の帯域のピーク電力を検出し、このピーク電力検出器で検出された信号レベルがメモリ217の基準値以上である場合は、高周波増幅器172が歪むと判定し、そのレベル差を利得制御器218へ出力するものである。そして利得制御器218は受け取った誤差に応じて、高周波増幅器172の制御端子の制御電圧を変化させるものである。
一方演算器211は、レベル検出器210で検出された信号レベルと最適値との誤差信号を利得制御器213へ出力し、中間周波増幅器205の利得が制御される。
ここで、利得制御器218はレベル判定器216からの信号に応じて高周波増幅器172の利得を制御する。このとき、妨害信号のレベルが大きすぎるような場合に、利得制御器218は高周波増幅器172の利得が小さくなってしまい、下流の中間周波増幅器205の最大利得でも復調部の電圧が所定の値とならないようなことが発生し、信号のNFが悪化しビット誤り率が悪化する。そこで、本前提例においては、中間周波増幅器205の利得が最大利得(制御電圧が最大電圧)である場合には、利得制御器213は利得制御器218に電圧を増やし、高周波増幅器172の利得を大きくするように指示をする。
以上の構成によって、利得制御器218は、受信希望チャンネルのデジタル放送信号の近傍にあるレベルの高い放送信号によってビタビ訂正器42のビット誤り率が0.0002以上に悪化した場合に、高周波増幅器172と中間周波増幅器205との利得を制御することとなる。従って、出力端子41でのビット誤り率が0ではなくなった時に、高周波増幅器172と中間周波増幅器205の利得の制御が行われることになるので、ビット誤り率が安定した高周波受信装置を得ることができる。
また、ピーク電力検出器215が受信希望チャンネル信号を略中心としてある規定の周波数帯域内に存在するチャンネル信号のレベルを検出し、このレベルが受信希望チャンネルの信号よりも大きい場合、この利得制御器218が高周波増幅器に前記レベルの信号が入力されても飽和しないようにその利得を小さくする方向へ制御する。従って受信希望チャンネルのデジタル放送信号の近傍にアナログ放送信号があっても、高周波増幅器172が飽和状態とならず、受信希望チャンネルのレベルを最適となるように制御することができるので、ビット誤り率が小さい高周波受信装置を提供することができる。
また、高周波増幅器172の上流に単同調フィルタ200を有しているので、隣接チャンネル等の妨害信号を予め減衰させることができる。従って、高周波増幅器172での歪みはさらに発生し難くなる。
(実施の形態1)
図9は、実施の形態1における高周波信号受信装置のブロック図である。図9において、図1、図3と同じものについては同じ番号を付しその説明は簡略化する。まず実施の形態1における選局部22は、高周波信号が入力される入力端子301と、この入力端子301に入力された信号が供給される高周波増幅器302(AGC回路の一例として用いた)と、この高周波増幅器302の出力が一方の入力に供給されるとともに他方の入力には局部発振回路308の出力信号が供給される混合器307と、この混合器307の出力が供給されるフィルタ309と、混合器307の出力が供給されるAGC制御回路306と、フィルタ309の出力が供給される中間周波増幅器311と、この中間周波増幅器311の出力が一方の入力に供給されるとともに他方の入力には局部発振回路313の出力信号が供給される混合器314と、この混合器314の出力が供給されるフィルタ315とから構成されている。
そしてこの選局部22の出力が接続された復調部37には、フィルタ315の出力が供給される復調部利得制御器316(第2のAGC回路の一例として用いた)と、この復調部利得制御器316の出力が供給されるADコンバータ317と、このADコンバータ317の出力が供給されるデジタルフィルタ318と、このデジタルフィルタ318の出力が供給される復調回路319と、デジタルフィルタ318の出力が供給されるとともに復調部利得制御器316の利得を制御するAGC制御回路321とから構成されている。
なお、ここで305は、AGC制御回路321の出力電圧とAGC制御回路306の出力電圧とが入力に供給されるとともに、その出力電圧が高周波増幅器302の利得制御用端子322に供給される重み付け回路である。
一方310は、AGC制御回路321の出力電圧とAGC制御回路312の出力電圧とが入力に供給されるとともに、その出力電圧が中間周波増幅器311の利得制御用端子323に供給される重み付け回路である。
そして前記復調部37の出力端子320には、前提例1と同様に誤り訂正器40、出力端子41や判定器45が接続され、この判定器45に接続された制御部46の出力は、第1の重み付け回路305と第2の重み付け回路310の入力に接続された重み付け制御回路304の入力端子303へ供給される。
以上のように構成された高周波信号受信装置において、混合器307から出力される第1の中間周波数を入力信号より高い周波数とし、混合器314から出力される第2の中間周波数を入力信号より低い周波数としたものについて、その動作を説明する。
入力端子301に入力される高周波信号レベルは、例えば−70dBm以上になると高周波増幅器302の利得制御が働き、−70dBm以下になると高周波増幅器311の利得制御が働き、さらにそれ以下になると高周波増幅器316の利得制御がそれぞれ働くものとしている。
入力端子301には、例えば90MHzから770MHzの高周波信号が入力される。この高周波信号は、高周波増幅器302で増幅されたあと、局部発振回路308の出力とにより混合器307で混合されて例えば1200MHzの第1の中間周波数に変換されてAGC制御回路306に入力される。また、混合器307の出力はフィルタ309で希望信号以外の信号が抑圧される。
フィルタ309の出力信号は中間周波増幅器311で増幅された後、混合器314で局部発振回路313の出力と混合されて例えば4MHzの第2の中間周波数に変換され、その後フィルタ315で希望信号以外の信号がさらに抑圧され、AGC制御回路312により中間周波増幅器311が利得制御される。
さらに、フィルタ315から出力される4MHzの第2の中間周波数は復調部利得制御器316にて増幅され、この復調部利得制御器316からの出力はADコンバータ317にてデジタル信号に変換された後、デジタルフィルタ318により希望信号以外の信号がさらに抑圧されて復調回路319に入力される。そしてこの復調回路319で復調された出力は、出力端子320から出力される。
また、デジタルフィルタ318からの出力信号はAGC制御回路321に入力され、このAGC制御回路321からの出力電圧が復調部利得制御器316に加えられて復調回路319への信号レベルが一定になるように利得制御される。
さらに、制御部46によってデータ用入力端子303に加えられた制御用データは、重み付け制御回路304を介して、重み付け回路305の重み付け係数および重み付け回路310に供給され、夫々の重み付け回路305,310の重み付け係数をそれぞれ独立に設定することができる。このことにより、隣接チャンネルの妨害信号レベル(AGC制御回路306の出力)と希望信号レベル(AGC制御回路321の出力)に対する重み付けを適宜変えることができ、混合器307および混合器314からの信号レベルを任意に設定することができる。
これにより、希望信号レベルと隣接チャンネルの信号レベルとが入力されるAGC制御回路306からの出力電圧(以降VAGC1と言う)と、フィルタ309とフィルタ315とデジタルフィルタ318により隣接チャンネルの信号レベルが十分に抑圧されて希望信号レベルのみが入力されるAGC制御回路321からの出力電圧(以降VAGC3と言う)とに、それぞれ独立に重み付けをすることにより混合器307からの出力信号レベルに対する希望信号レベルと隣接チャンネルの信号レベルとの寄与率を決定できるものである。
また、希望信号レベルとフィルタ309により抑圧された隣接チャンネルの信号レベルとが入力されるAGC制御回路312からの出力電圧(以降VAGC2と言う)と、フィルタ309とフィルタ315とデジタルフィルタ318により隣接チャンネルの信号レベルが十分に抑圧されて希望信号レベルのみが入力されるAGC制御回路321からの出力電圧(以降VAGC3と言う)とに、それぞれ独立に重み付けをすることにより混合器314からの出力信号レベルに対する希望信号レベルと隣接チャンネルの信号レベルとの寄与率を決定できる。
このとき、AGC制御回路306からのVAGC1とAGC制御回路312からのVAGC2とAGC制御回路321からのVAGC3及び、重み付け回路305の出力電圧(以降VAGC0と言う)と重み付け回路310の出力電圧(以降VAGC0’)とは、すべて3Vで利得最大とし、0Vで利得が最小となるようにしている。また、各重み付け回路305,310における重み付け係数はすべて0から1までの値で、夫々が独立に設定可能としている。
例えば、重み付け回路305の重み付け係数をそれぞれ1とし、重み付け回路310の重み付け係数を任意の値とした場合について説明する。ただしここで、入力端子301に入力される高周波信号レベルは例えば−70dBm以上になると高周波増幅器302の利得制御が、−70dBm以下になると中間周波増幅器311の利得制御が、さらに例えば−90dBm以下より小さいレベルでは復調部利得制御器316の利得制御がそれぞれ働くものとしている。
まず、希望信号レベルに対して例えば隣接チャンネルのような妨害信号のレベルが小さく無視でき、かつ希望信号レベルが−90dBm以下の場合における高周波信号受信装置のC/Nについては、−90dBm以下である希望信号レベルによって利得制御されるので、VAGC1が利得最大になるように3Vとなり、VAGC3は0Vから3Vの間となるが、VAGC0は3V以上にならないので3Vとなる。さらにVAGC2は3Vとなり、VAGC3は0Vから3Vの間となるが、VAGC0’は3V以上にならないので3Vとなる。
次に、希望信号レベルに対して例えば隣接チャンネルのような妨害信号のレベルが小さく、かつ希望信号レベルが−70dBmから−90dBmの場合について説明する。この場合には、−70dBmから−90dBmである希望信号レベルによって利得制御され、VAGC1が利得最大になるように3Vに利得制御され、VAGC3は0Vから3Vの間となるが、VAGC0は3V以上にならないので3Vとなる。さらにVAGC2が0から3Vで利得制御されて、VAGC3は0Vとなるので無視でき、VAGC0’はVAGC2により決定される。
図10は、入力信号レベルに対する高周波信号受信装置の雑音指数を表した図である。図10において、横軸410は信号レベル(dBm)であり、縦軸411は高周波信号受信装置の雑音指数(dB)であり、412は信号レベルが−70dBmの点を示している。図10において、希望信号レベルが−70dBm以下の入力信号レベルの領域401では、高周波増幅器302の利得が最大となって高周波増幅器302の雑音指数が支配的となるため、一定値で低い雑音指数405となる。
図11は、希望信号レベルに対する高周波信号受信装置のC/Nを表した図である。図11において、横軸510は希望信号レベル(dBm)であり、縦軸511は高周波信号受信装置のC/Nであり、512は希望信号レベル−70dBmの点である。図11において、希望信号レベルが−70dBm以下の小さいレベルの領域501では、一定値で低い雑音指数405(図10)に対して希望信号レベルが大きくなるため、希望信号レベルに応じてC/Nが良くなる。この様子を示したものが505で示されている。
次に、希望信号レベルに対して例えば隣接チャンネルのような妨害信号のレベルが小さく、かつ希望信号レベルが−70dBm以上の場合における高周波信号受信装置のC/Nについて説明する。この場合、−70dBm以上である希望信号レベルによって利得制御されるので、VAGC1が利得最大から利得最小になるように例えば0Vから3Vの間となり、VAGC2は利得最小である0Vになるので無視できる。従って、VAGC0はVAGC1のみによって決定され、高周波増幅器302の利得が制御される。一方中間周波増幅器311に対しては、VAGC2が利得最小になるように0Vに利得制御され、VAGC2は利得最小である0Vに利得制御されるので、VAGC0’はVAGC1のみによって利得制御されることとなる。
つまり、図10において入力信号が−70dBm以上の大きいレベルの領域402では、高周波増幅器302の利得が小さくなるように利得制御されるので混合器307の雑音指数やフィルタ309を含めた以降の雑音指数が無視できなくなり、高周波信号受信装置の雑音指数は403に示すように徐々に大きくなる。
従って、図11において希望信号レベルが−70dBm以上の大きい領域502では、希望信号レベルは大きくなるが高周波信号受信装置の雑音指数は図11の領域502に示すようにほぼ同じ量だけ悪くなるので、結果として一定のC/N値503を示すことになる。
次に、希望信号レベルが例えば−70dBmと一定で、隣接チャンネルの信号レベルが−70dBm以下の場合での高周波信号受信装置のC/Nについて説明する。この場合には、−70dBmである希望信号レベルによって利得制御されるので、希望信号レベルが−70dBmのときは、VAGC1が利得最大になるように3Vで利得制御されるが、VAGC3は利得最小である0Vに利得制御されるので無視でき、高周波増幅器302の制御電圧はVAGC1となり利得が制御される。また中間周波増幅器311に対しては、VAGC2は利得最小になるように0Vで利得制御されるが、VAGC3は利得最小である0Vに利得制御されるので、VAGC0’は0Vとなる。
つまり、高周波信号受信装置の雑音指数は図10の404で示すように低い雑音指数を示し、高周波信号受信装置のC/Nは図11の504で示すように良好な値を示すことになる。
図12は、希望信号レベルが−70dBm時の隣接チャンネルの信号レベルに対する高周波信号受信装置のC/Nを表す。図12において、横軸610は隣接チャンネルの信号レベル(dBm)であり、縦軸611は高周波信号受信装置の雑音指数(dB)であり、612は隣接チャンネルの信号レベルが−70dBmの点である。図12において、隣接チャンネルの信号レベルが−70dBmより小さい領域601では−70dBmである希望信号レベルによる利得制御が支配的となるので高周波信号受信装置のC/Nは604で示すように良好な値を示すことになる。つまり、希望信号レベルより隣接チャンネルの信号レベルが低いために従来例と同じく受信状態に悪い影響を与えないのである。
次に、希望信号レベルが例えば−70dBmと一定で、隣接チャンネルの信号レベルが−70dBm以上の場合での高周波信号受信装置のC/Nについて説明する。この場合には、VAGC1は希望信号レベルより大きい隣接チャンネルの信号レベルに応じて利得最大から利得最小になるように例えば3Vから0Vの間で高周波増幅器302が利得制御されるので、高周波増幅器302からは利得制御された隣接チャンネルの信号レベルと小さな希望信号レベルとが出力される。この高周波増幅器302からの出力信号のうち隣接チャンネルの信号はフィルタ309およびフィルタ315および抑圧効果の優れたデジタルフィルタ318でほとんど除去されるため、小さな希望信号レベルのみがAGC制御回路321で検出されることになり、VAGC3は小さな希望信号レベルに対して利得最大である3V側の電圧が出力される。
以上のように、VAGC1は最小利得側である0Vに近い電圧となるが、VAGC3は利得最大である3Vに近い電圧が出力されるので、VAGC0は、夫々の重み付け係数を適宜設定することにより利得最大側への補正が可能となる。
これらの動作によって、利得最大側に補正されたVAGC0により利得制御された高周波増幅器302からは隣接チャンネルの信号と小さな希望信号とが出力され、混合器307およびフィルタ309を介して中間周波増幅器311に入力されて隣接チャンネルの信号のみフィルタ309で少し抑圧される。
また、VAGC2は、希望信号レベルより大きい隣接チャンネルの信号レベルに応じて利得最大から利得最小になるように例えば3Vから0Vの間で利得制御されるので、中間周波増幅器311からは利得制御された隣接チャンネルの信号レベルと小さな希望信号レベルとが出力される。
さらに、中間周波増幅器311からの出力信号のうち隣接チャンネルの信号はフィルタ315および抑圧効果の優れたデジタルフィルタ318でほとんど除去されるため、隣接チャンネルの信号レベルの大きさに応じた小さな希望信号レベルのみがAGC制御回路321で検出されることになり、AGC制御回路321の出力電圧VAGC3は小さな希望信号レベルに対して利得最大である3V側の電圧が出力されることとなる。
従って、VAGC2は隣接チャンネルの信号レベルの大きさに応じた0Vから3Vの間となり、VAGC3は利得最大である3Vに近い電圧が出力されるので、VAGC0’はVAGC2に対する重み付け回路310とVAGC3に対する重み付け回路310の重み付け係数を適宜設定することにより利得最大側への補正が可能となる。
ここで、VAGC1に対する重み付け回路305の重み付け係数に対してVAGC3に対する重み付け回路310の重み付け係数を大きくし過ぎると、VAGC0が大きくなり過ぎて高周波増幅器302の利得が上がり過ぎることになる。従って、夫々の重み付け係数の値は、混合器307でのIM3等による妨害の影響が発生しないような値とすることが重要である。
また、重み付け回路310に関して、VAGC2に対する重み付け回路の重み付け係数に対してVAGC3に対する重み付け係数を大きくし過ぎると、重み付け回路310からの出力電圧VAGC0’が大きくなり、中間周波増幅器311の利得が大きくなり過ぎることとなる。従って、夫々の重み付け係数の値は、混合器314でのIM3等による妨害の影響が発生しないような値とすることが重要である。
以上により、希望信号レベルに対して隣接チャンネルの信号レベルが大きい場合でも、高周波増幅器302の利得は利得最大の方に補正され高周波増幅器302の雑音指数が小さくなるので、高周波信号受信装置の雑音指数は改善され、図10において入力信号レベルが−70dBm以上の領域402では、雑音指数は406となって従来例403に比べて改善される。また、この雑音指数が改善された分だけ高周波信号受信装置のC/Nは改善される。これによりC/Nは改善され、図12に示されるように従来のC/Nである603から605へ改善している。
さらに、中間周波増幅器311の利得は利得最大の方に補正されるので、高周波信号受信装置の雑音指数は改善され、図10において入力信号レベルが−70dBm以上の領域402では雑音指数は407とでき、従来の雑音指数406に比べてさらに改善できる。つまり、この雑音指数がさらに改善された分だけ高周波信号受信装置のC/Nは改善されることとなる。このC/Nの改善される様子を図12の606で示し、重み付け回路305のみである場合のC/N605に比べてさらに改善できる。
また、データ端子303には制御部46の出力が接続されており、データ用入力端子303に加えられた制御用データを受けて重み付け制御回路304を設けることができるので、重み付け回路305の重み付け係数を独立に制御部46から容易に設定することができる。
以上のように、希望信号に対して大きな隣接チャンネルの妨害信号があっても、制御部46からのデータに基づいて、希望信号レベルと隣接チャンネルの信号レベルに重み付け係数を乗じたものとした重み付け回路305からの出力電圧VAGC0によって高周波増幅器302を利得制御することにより、高周波信号受信装置のC/Nを改善でき安定した受信状態の高周波信号受信装置が提供できるものである。
また、本実施の形態1においては、上記利得制御に加え、ビット誤り率の信号を検出し、マイコン等により高周波増幅器302の利得制御用の電圧を変化させて隣接チャンネルの妨害信号に対する改善を行っている。これによりさらに高周波増幅器302に対して最適な利得制御を行うことができ、隣接チャンネルの妨害信号に対する改善ができるので、刻々と変化する移動中においても安定した受信状態を提供できるものである。なお、本実施の形態1においてはビット誤り率の信号を検出したが、これは復調回路319からのC/Nでも良い。
また、本実施の形態1では、混合器307から出力される周波数が入力信号の周波数より高い周波数の場合を説明したが、入力信号の周波数より低い周波数の場合でも全く同じである。さらに、混合器314のかわりにダイレクトコンバージョン方式を用いても改善効果は同じである。