JP4132466B2 - クラゲ処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、火力発電所及び原子力発電所において、冷却水として取り入れる海水から取り除いたクラゲを処理するクラゲ処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
火力発電所及び原子力発電所では冷却水として海水を取り入れる際に、取水口に設けた回転式除塵装置で、海水中に漂う木屑等のゴミを取り除いている。したがって、クラゲが大量発生すると、これがクラゲ溜りに大量に取り込まれることになり、このクラゲを廃棄物又は排水として処理する能力が追い付かないと、海水の取り入れ量が不足し、発電所の運転に支障を来すことになる。
【0003】
そこで、クラゲの処理方法として、圧搾脱水法(特公平1−31434)、擬集沈殿法(特公平4−48986)、熱処理法(特公平7−94031)等が提案されている。
【0004】
圧搾脱水法は、クラゲをスラリー状に破砕した後に、圧搾脱水機で、固形物とろ液に分離し、固形物を焼却等によって処分し、ろ液を酸化処理によって浄化後排水するものである。
【0005】
擬集沈殿法は、クラゲをインペラを有するミキサーで懸濁水になるまで破砕し、この懸濁水に凝集剤を添加して攪拌し、擬集・沈殿したスラッジを脱水機で脱水し、脱水した後のケーキを焼却又は廃棄するものである。
【0006】
熱処理法は、切片状に切断したクラゲ片を、85℃〜90℃の範囲に加熱された清温水に所定時間浸して攪拌し、清水の浸透圧と熱の相乗効果でクラゲ片の表皮組織を破壊して脱水筋質化する。そして、大幅に減容された、このクラゲ残滓をネットコンベアで分離して廃棄処理を行うものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記圧搾脱水法は処理能力が小さいため、大量に回収されるクラゲの全量を処理するためには巨大な圧搾脱水機が必要となり、コスト面から事実上採用することが不可能である。
【0008】
前記擬集沈殿法は、実験によって検討したが、次のように、実用性に疑問が生じる結果となった。この実験は、海水から分離したクラゲの全量を懸濁液になるまで破砕し、これに各種擬集剤を添加して沈降速度を調べたものである。擬集効果が最も高かったPAC(ポリ塩化アルミニウム)でも、懸濁液に5000mg/l添加して攪拌するとフロックを生じるが、このフロックの沈降性は極めて悪く、約30分放置しても、このフロックを含む部分の全量に対して占める容積は60〜70%であった。したがって、この実験からは、実用性が見出せない。
【0009】
また、前記熱処理法は、実用性があるとして実際の設置例もあるが、回収したクラゲの全量を収容して一定時間加熱するため、大型の耐熱処理槽が必要になると共に、処理に必要な熱量が膨大になり、設備費及びランニングコストが高くなるという問題がある。
【0010】
ここで、クラゲ処理の実情を説明する。処理対象とするクラゲは、ピーク時の発生量が非常に多い反面、要処理期間が非常に短いという特性を有する。クラゲの大量発生は、例えば10年毎に2年連続して1ヶ月程度続き、発生のピークが1週間程度であるからである。したがって、クラゲの処理装置の稼働率は極めて低いものになるため、大掛かりな恒久設備として設置するのは経済性から好ましくない。
【0011】
そこで、本発明は、上記熱処理法の大型の耐熱処理槽のような大型設備を用いる必要がなく、処理能力が高いため小規模な装置として製作でき、必要時だけ現場に設置し、不要時は倉庫に収納しておけるクラゲ処理装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1にかかる発明は、海水から分離したクラゲを、所定の大きさに破砕することにより、COD(化学的酸素要求量)が小さく量が多い液状分と、CODが大きく量が少ない固形分からなるクラゲ破砕物とに分離する破砕器と、前記破砕器に接続されて、前記破砕器にて破砕されたクラゲの液状分と固形分とが上流側へ供給され整流として下流側へ流す流路と、この流路の下流側の下方に設けられ比重の大きい液状分を排出する液状分排出口と、この流路の下流側の上方に設けられ比重の小さい固形分を排出する固形分排出口とを備え、前記流路における液状分と固形分の境界が上記液状分排出口と固形分排出口の間に位置するように、液状分の排出量を調整しながら液状分と固形分を分離する分離器と、前記固形分排出口に接続されて、前記分離器から排出された固形分のCODを所定値以下に低下させる処理を行うエアレーション槽と、前記液状分排出口に接続されて、前記分離器から排出された液状分のCODを所定値以下に低下させる処理を行う加圧浮上分離槽とを備え、エアレーション槽内で処理を行った固形分の廃棄処理を行うとともに、加圧浮上分離槽内で処理を行った液状分の排水処理を行うことを特徴とするクラゲ処理装置である。
【0013】
上記構成は、破砕の大きさを適当に設定し破砕処理を速やかに行なうと、水分の比率が96%もの値を持つクラゲ細胞の水分を液状分として大量に排出させることができ、かつ、液状分排出後の残滓である固形分に含まれるコラーゲン等の高濃度の有機物が、この液状分に溶出する量を少なくできることに着目したものである。
【0014】
上記破砕は、例えば、回転刃を収容した容器の外周に排出用のメッシュを設けたカッターミキサーを使用して行い、破砕の大きさをメッシュの大きさで決める。分離器は、例えば、クラゲの破砕物を、比重の相違によって液状分と固形分に分離するものを使用する。
【0015】
このように分離された液状分はCODが小さく粘性も低いので、擬集剤による有機物の擬集分離が容易に行なえ短時間で処理が可能であり、小さな設備で大量の処理を行うことができる。一方、CODが大きい固形分は、擬集剤による処理は不可能で、コスト又は時間がかかる圧搾分離やエアーレーションによる生化学的処理等が必要であるが、量が少ないので、小規模の設備で処理が可能である。
【0016】
したがって、この発明の装置は、小規模の設備で大きなクラゲの処理能力を持つことになる。
【0018】
この分離器は、クラゲの破砕物を整流として流すと、比重差によって液状分と固形分(水分排出後の残滓が泡状に集まったもの)が上下に分離することを利用したもので、流路の下流側に上下に設けた液状分排出口と固形分排出口から液状分と固形分を別々に取り出す。この分離器は、フィルタを使用した場合のように、固形分が流路に詰まることがなく、連続処理が可能であるので、効率の良い取り出しが行なえる。
【0019】
本発明の請求項2にかかる発明は、エアレーション槽として、固形分のCODが所定値以下になるまでエアレーションによる生物化学処理を行う曝気槽を用いることを特徴とする。
【0020】
これは、上記分離の結果として得られるクラゲ破砕物の固形分が、エアーレーションによる生化学的処理を行うだけで、全量を排水として放出できる程度にCODを低下させることができることを利用したもので、この処理を行なうと廃棄物が生じない。
【0021】
本発明の請求項3に係る発明は、前記加圧浮上分離槽として、液状分に含まれる有機物を擬集させてフロックを形成させる擬集剤を投入すると共に、このフロックに、加圧によって空気を溶け込ませた水を吹き出すことにより発生する微小な気泡を付着させて浮上させ、浮上したフロックをかき取ることによって、CODを所定値以下に低下させることを特徴とする。
【0022】
この加圧浮上分離槽は、擬集剤の投入によって生じたフロックを加圧浮上させ、これをかき取り除去することによって、CODを基準値以下に下げで、排水処理する。かき取ったフロックは、廃棄物として処理する。
【0023】
この加圧浮上分離槽によって処理される液状分は、CODが小さいので小量の擬集剤によって有機物をフロック化できる。また、粘性が低いので形成されたフロックに微小な気泡を付着させて行う浮上分離の浮上速度を大きくすることができる。したがって処理速度が速くなり、小型の加圧浮上分離槽で大量の処理を行うことができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明のクラゲ処理装置1の一実施態様を図1に示す。同図で、2は異物分離槽、3はクラゲ分離器、4は破砕機、5は液状分と固形分の分離器、6はろ過器、7はエアレーション槽、8は加圧浮上分離槽である。
【0025】
上記構成は、異物分離槽2とクラゲ分離器3で海水から分離したクラゲを、破砕機4で所定の大きさに破砕した後、分離器5とろ過器6で液状分と固形分に分離して取出す。そして、固形分はエアーレーション槽7で、液状分は加圧浮上分離槽8で、夫々、CODが所定値以下になるまで処理して、排水処理する。
【0026】
以下、各構成要素について詳述する。異物分離槽2は、発電所の海水取り入れ口に設けたバケット式の回転式除塵装置で回収した回収物を一時的に蓄積し、クラゲが水面近くに漂うことを利用し、これをバケットコンベア9等で掬い取ることによって、下に沈む魚貝類と区別して取り出す。
【0027】
クラゲ分離器3は、バケットコンベア9等によって、異物分離槽2から海水と共に供給されるクラゲを、海水が流下する孔を持つ傾斜路を滑降させることにより、クラゲのみを傾斜路上に分離するものである。この傾斜路は、図2に示すように、多数の孔3aを持つ傾斜板3bの両側に、傾斜方向に沿ってガイド板3cを立設したものであり、この傾斜板3aの孔3aから流下した海水は、海水受け3dを通って、異物分離槽2に戻される。孔3aを持つ傾斜板3bは、例えば、細い板を滑降方向に、すのこ状に並べたものや、所定ピッチで孔を開けたパンチングメタルが用いられる。さらに、この傾斜板3aには、海水に浮くためクラゲと共に掬い取られるビニール袋や海草を止めるトラップ3eが形成される。このトラップ3eは、例えば傾斜板に垂直に設けた複数本の棒等で構成される。
【0028】
破砕機4は、クラゲ分離器3から供給されたクラゲを所定の大きさに破砕することにより、クラゲ細胞に含まれる水分を液状分として十分に排出させ、かつこの液状分に、排出後の残滓から有機物が極力溶け出さないように速やかな破砕を行うものである。この破砕機は、例えば、カッターミキサーが使用される。図1に示すカッターミキサー4の上蓋を取った状態を図3に示す。これは、回転刃4aを内装した容器4bの上部にクラゲ破砕物の投入口4c(図1参照)を設け、回転刃4aによって破砕されたクラゲが押し付けられる容器の側壁に排出用のメッシュ4dを取り付け、メッシュを通過したクラゲ破砕物を排出口4eから排出させるものである。破砕の大きさは、上記メッシュの穴の大きさ調整によって決めることができる。
【0029】
この穴の大きさは、1.0mmから30mmの範囲で決めることができる。但し、2.0mm未満では、破砕が細か過ぎて液状分に溶け込む有機物の量が多くなり液状分のCODを低下させるための処理時間が長くなる。また、10mmを超えるとクラゲ細胞から水分を十分に排出させることができなくなり、固形分の量が大きくなり過ぎ、固形分の処理時間が長くなってしまう。このメッシュの大きさの設定は、設置された設備の持つ液状分と固形分に対する処理能力をも考慮に入れて決定されるが、設備全体を小型化し処理時間を短縮する観点から、最も好ましい範囲は、3mmから5mmである。
【0030】
図1に示す液状分と固形分の分離器5は、クラゲの破砕物の液状分と固形分の比重差を利用して分離を行なう。この分離器5は、図4(a)(b)に示すように、クラゲ破砕物の流路5aの上流に投入口5b、その下流に固形分排出口5cと液状分排出口5dを設けたもので、投入口5bの直下には、メッシュで形成した篭状のフィルタ5eを設けている。このフィルタ5eは、投入口5bから流下するクラゲ破砕物によって、流路の流れを乱さないようにするもので、このフィルタ5eは液状分を通過させ、固形分を一時的に堰き止め、流れの上層に向けて流す。このフィルタ5eによる整流作用によって、流路5aの長さを短くすることができ、装置を小型化できる。
【0031】
固形分排出口5cは、比重の小さい固形分をオーバーフローさせて取り出すもので、流路5aの下流側の上端縁幅方向一杯に開口して形成し、固形分の詰まりを防止している。この固形分排出口5cの直前には、粘度が高い泡状の固形分が液状分を引き込まないように、固形分排出口5cに向かって高くなる傾斜調整板5fを設けている。また、液状分排出口5dは、流路の下流側の下方に基端を取付けた回転式の排出管によって構成している。この排出管は、基端を中心に回転させることによって、排出端の高さを変えることことができる。これは、前記流路における液状分と固形分の境界が上記液状分排出口5dと固形分排出口5fの間に位置するように、液状分の排出量を調整して、液状分と固形分の確実な分離を行うためのものである。
【0032】
上記分離器5は、所定の大きさに破砕した後、直ちに、短い水路で分離を行うので、泡状の固形分に含まれる有機物が液状分に溶け込む量を最少にすることができる。
【0033】
ろ過器6は、篭状に成形したメッシュで分離器5から排出された固形分を受け、固形分中に残留している液状分を流下させるもので、ろ過器6内に固形分が一定量溜まったとき、これを取り出して、エアレーション槽7に投入する。この投入は機械的又は人為的に行われる。このろ過は、処理に手間がかかる固形分を極力少なくするためのものであり、固形分が少ないか、又は固形分の処理能力が十分にある場合は、図1に二点鎖線で示すように、分離器5からの固形分を、直接にエアレーション槽7に流入させても良い。
【0034】
エアレーション槽7は、ろ過器6によってろ過されたクラゲ破砕物の固形分を蓄積し、この槽内に気泡状の空気を連続して供給し、その酸素によって微生物を繁殖させることによりCODを所定値以下に低下させる。例えば、排水基準を満たすCODにするまでに、一週間ぐらいの処理を行えばよく、この結果として、ろ過して掬い取れるような廃棄物は残らないようにでき、そのまま通常の廃棄処理ができるようになる。
【0035】
なお、このエアレーション処理に代えて、脱水機を使用することも可能である。これは、例えば有底筒状のフェルト製フィルタを内装した、脱水篭を回転させる遠心分離によって行なうもので、分離された液状分は、加圧浮上分離槽8に流入させて処理し、フェルト製フィルタは、定期的に清掃して再利用する。このように脱水器を使用した場合であっても、本発明では、破砕機4と分離器5によって処理しているので、脱水機による固形分の処理量は少なくて済み、小型の脱水機で足りる。
【0036】
加圧浮上分離槽8は、分離槽5及び、ろ過器6から排出された液状分を蓄積し、CODを排出基準値以下に低下させるもので、擬集剤8aを投入して有機物をフロック化する擬集剤添加手段と、水に空気を加圧して溶け込ませるポンプ8bと、空気を飽和させた水を分離槽8の底から噴出させるノズル8cと、この噴出によって生じる微小な気泡が付着することによって浮上したフロックをかき取るかき取り装置8dと、かき取ったフロックを蓄積するフロック回収槽8eを持つ。
【0037】
蓄積した液状分は、CODが排水基準値を満たす値にまで低下した時点で、排水処理し、集めたフロックは焼却又は廃棄処理をする。
【0038】
【発明の効果】
本発明は、クラゲを破砕機で所定の大きさに破砕することにより、クラゲをCODが小さいが量が多い液状分と、CODが大きいが量の少ない固形分に分離し、液状分と固形分を、CODの大きさの相違に応じた処理方法によって個別に処理するので、クラゲの全量を同時に処理する方法に比べると、小型で処理能力が高く、ランニングコストが低い設備を提供することができる。
【0039】
さらに、本発明の装置は小型化されているので、クラゲ発生のピーク時のみ設置し、不要時には倉庫に格納するような使用法が可能であり、専用の設置スペースが不要になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のクラゲ処理装置の一実施形態を示す全体構成図。
【図2】 図1の装置で使用されるクラゲ分離器の構造例を示す斜視図。
【図3】 図1の装置で使用される破砕機の内部構造の一例を示す斜視図。
【図4】 図1の装置で使用される分離器の構造例を示す側面図及び平面図。
【符号の説明】
1 クラゲ処理装置
2 異物分離槽
3 クラゲ分離機
4 破砕機
5 分離器
6 ろ過器
7 エアレーション槽
8 加圧浮上分離槽
Claims (3)
- 海水から分離したクラゲを、所定の大きさに破砕することにより、COD(化学的酸素要求量)が小さく量が多い液状分と、CODが大きく量が少ない固形分からなるクラゲ破砕物とに分離する破砕器と、
前記破砕器に接続されて、前記破砕器にて破砕されたクラゲの液状分と固形分とが上流側へ供給され整流として下流側へ流す流路と、この流路の下流側の下方に設けられ比重の大きい液状分を排出する液状分排出口と、この流路の下流側の上方に設けられ比重の小さい固形分を排出する固形分排出口とを備え、前記流路における液状分と固形分の境界が上記液状分排出口と固形分排出口の間に位置するように、液状分の排出量を調整しながら液状分と固形分を分離する分離器と、
前記固形分排出口に接続されて、前記分離器から排出された固形分のCODを所定値以下に低下させる処理を行うエアレーション槽と、
前記液状分排出口に接続されて、前記分離器から排出された液状分のCODを所定値以下に低下させる処理を行う加圧浮上分離槽とを備え、
エアレーション槽内で処理を行った固形分の廃棄処理を行うとともに、加圧浮上分離槽内で処理を行った液状分の排水処理を行うことを特徴とするクラゲ処理装置。 - 前記エアレーション槽として、固形分のCODが所定値以下になるまでエアレーションによる生物化学処理を行う曝気槽を用いることを特徴とする請求項1に記載したクラゲ処理装置。
- 前記加圧浮上分離槽として、液状分に含まれる有機物を擬集させてフロックを形成させる擬集剤を投入すると共に、このフロックに、加圧によって空気を溶け込ませた水を吹き出すことにより発生する微小な気泡を付着させて浮上させ、浮上したフロックをかき取ることによって、CODを所定値以下に低下させることを特徴とする請求項1又は2に記載したクラゲ処理装置。
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