JP4122615B2 - 高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、コモンレール等の畜圧配管に蓄えられ、同配管に接続された燃料噴射弁の駆動を通じて内燃機関に噴射供給される高圧燃料の燃料圧力を制御する高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、上記コモンレール等の畜圧配管を備える内燃機関にあっては、同機関の運転開始に伴ってサプライポンプから圧送される高圧燃料が畜圧配管に一旦蓄圧され、この畜圧された高圧燃料が同配管に接続された燃料噴射弁の開弁駆動に伴って当該機関の各燃焼室に噴射供給されるようになる。このとき、この噴射供給される燃料の噴射圧力と上記畜圧配管に畜圧されている高圧燃料の燃料圧力とは等しい。
【0003】
一方、上記畜圧配管内の燃料圧力、すなわち上記燃料噴射弁による燃料の噴射圧力は、電子制御装置によって、その都度の機関回転数やその都度必要とされる燃料噴射量といった機関の運転状態に適した圧力に制御される。そしてこの制御は通常、蓄圧配管に配設された圧力センサの検出値に基づくフィードバック制御によって行われる。すなわち、上記機関の運転状態に基づき算出される目標燃料圧力に対し、この圧力センサによって検出される燃料圧力が小さいときには上記サプライポンプによる燃料圧送量を多く、逆に同圧力センサによって検出される燃料圧力が上記目標燃料圧力よりも大きいときには同燃料圧送量を少なく、若しくは燃料の圧送自体を停止するといった態様で上記畜圧配管内の燃料圧力が制御される。
【0004】
ただし、車両の急減速から軽負荷走行への移行時等、同車両に搭載される内燃機関が燃料カット状態から通常噴射状態に復帰されるような場合には、上記蓄圧配管内の燃料圧力の、目標燃料圧力に対する追従性の限界に起因する次のような不都合も無視できないものとなっている。
【0005】
すなわち、上記燃料カット状態から通常噴射状態への移行期間には、サプライポンプの運転が一旦停止されて、上記蓄圧配管に対する燃料の圧送が休止されるものの、この期間には併せて、上記蓄圧配管内の燃料が消費されることもない。このため、通常噴射への復帰時には、同蓄圧配管内の燃料圧力が上記算出される目標燃料圧力よりも高くなり、機関に対して過大な圧力での燃料噴射が行われるようになる。そして、機関に対し、こうして過大な圧力での燃料噴射が行われる場合には、燃焼騒音の増大等を招くことともなる。
【0006】
そこで従来は、例えば特開平2−191865号公報にみられるように、上記燃料噴射弁をその無効噴射期間内で駆動することにより蓄圧配管内の燃料圧力の排圧のみを行う、いわゆる無効噴射制御を実行することによって、こうした余剰燃料圧力の低減を図るようにしている。
【0007】
この無効噴射制御では、燃料噴射弁から燃料が噴射されずに、その駆動期間に対応して蓄圧配管内の燃料が燃料タンクに戻されるようになることから、同蓄圧配管内の燃料圧力も速やかに低減されるようになる。そしてこのため、上記通常噴射への復帰時であれ、当該機関に対する過大な圧力での燃料噴射は抑制され、ひいては燃焼騒音の増大等も好適に抑制されるようになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、無効噴射制御は、蓄圧配管内の余剰となった燃料圧力を低減するうえで極めて有効な制御ではあるが、同制御はその性格上、上述した燃料カット状態から通常噴射が復帰されるまでの移行期間等、通常の燃料噴射が行われない期間を利用して実行されるものであるために、その実行に関する自由度は大幅に制限されている。
【0009】
例えば、この無効噴射制御を通じて蓄圧配管内の燃料圧力をより効果的に低減するためにはその実行回数を増やすことが望ましいが、当該機関の運転条件や、通常噴射への復帰時等における他の制御との干渉を考慮すると、その実行のための条件設定は単純ではない。
【0010】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、通常の燃料噴射が行われない限られた期間を利用して確実に余剰燃料圧力の低減を図ることのできる高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
まず、請求項1記載の発明では、畜圧配管に蓄えられ、同配管に接続された燃料噴射弁の駆動を通じて内燃機関に噴射供給される高圧燃料の燃料圧力を制御する高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置として、前記燃料噴射弁をその無効噴射期間内で駆動することにより、前記燃料圧力の排圧のみを行う無効噴射制御手段と、前記燃料噴射弁をその無効噴射期間を超えて駆動することにより、高圧燃料の噴射供給を行う通常噴射制御手段と、前記内燃機関の停止条件成立前に前記通常噴射制御手段による燃料噴射弁の通常の駆動制御が行われていたときには、前記停止条件の成立に応じて、所定の時間に同期して前記無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動制御を開始するとともに、その無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動時期と前記通常噴射制御手段による前記燃料噴射弁の通常の駆動時期とが重ならないように同無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最初の駆動時期を別途に制御する時間同期制御手段を備えて、燃料噴射弁の駆動時期の重なりを防止する調停手段とを備える構成とする。
【0012】
請求項1記載の発明のこうした構成によれば、燃料噴射弁の無効噴射制御手段による駆動制御と無効噴射制御手段によらない通常の駆動制御とがいかなる条件のもとで実行されようとも、それら制御の移行時には、同燃料噴射弁の制御干渉が阻止される。このため、例えば燃料圧力が目標燃料圧力を超える等の条件のもとに、通常の燃料噴射が行われない限られた期間を利用して無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動が行われる場合であれ、その実行を確実ならしめ、ひいては蓄圧配管内の余剰な燃料圧力を確実に低下せしめることが可能となる。
一方、例えば、内燃機関のレーシング(外的負荷が殆どない状態での機関回転数上昇操作)中に始動スイッチオフ操作が行われ、その後直ちに機関再始動操作が行われたような場合、あるいは走行中に機関がストールし、その後直ちに機関再始動操作が行われたりしたような場合にも、前述同様、蓄圧配管内の燃料圧力が機関始動時の目標燃料圧力まで下がらないことに起因する過大な圧力での燃料噴射が行われ、ひいては燃焼騒音が増大するようになる。
この点、請求項1記載の発明の同構成によれば、当該機関の停止条件成立後、その回転数等によらずに確実に上記無効噴射制御モードに移行するようになる。このため、上記態様で内燃機関が再始動される場合であれ、その再始動以前に、蓄圧配管内の余剰な燃料圧力は確実に低下されるようになる。
なお、上記内燃機関の停止条件としては、始動スイッチオフ操作の後、一定の時間が経過したこと、あるいは機関ストールが判定されて且つスタータスイッチがオフ位置にあること、等々がある。
【0013】
また、請求項6記載の発明では、請求項1〜5のいずれかに記載の発明の構成において、前記調停手段は、前記無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動制御と前記無効噴射制御手段によらない燃料噴射弁の通常の駆動制御とのいずれの制御も行われない期間をそれら制御要求の中で設定制御するものであるとする。
【0014】
請求項6記載の発明のこうした構成によれば、燃料噴射弁の上述した制御干渉の阻止がより的確に実現されることとなり、無効噴射制御手段による駆動制御であれ、無効噴射制御手段によらない通常の駆動制御であれ、同燃料噴射弁の制御にかかる信頼性が向上されるようになる。
【0015】
また、請求項7記載の発明では、請求項1〜6のいずれかに記載の発明の構成において、前記調停手段は、前記内燃機関のクランク角を基準として前記無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最初の駆動時期、及び前記無効噴射制御手段によらない同燃料噴射弁の通常の駆動時期を制御するクランク角同期制御手段を備えて構成されるものであるとする。
【0016】
請求項7記載の発明のこうした構成によれば、燃料噴射弁の通常の駆動(燃料噴射)時期はもとより、無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最初の駆動時期も内燃機関のクランク角を基準に制御されることとなる。このため、それら通常の噴射制御モードと無効噴射制御モードとの一元的な管理が可能となり、それら各制御モードでの燃料噴射弁の制御干渉を避けるなど、その調停も容易となる。
【0017】
また、請求項8記載の発明では、上記請求項7記載の発明の構成において、前記クランク角同期制御手段は、前記無効噴射制御手段によらない燃料噴射弁の通常の駆動要求がないことを条件に前記無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最初の駆動を許可するものであるとする。
【0018】
請求項8記載の発明のこうした構成によれば、例えば燃料圧力が目標燃料圧力を超える条件下で上記通常の噴射制御モードから上記無効噴射制御モードに移る場合であれ、燃料噴射弁の通常の駆動要求がないことを条件に無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最初の駆動が許可されるため、それら各制御モードでの燃料噴射弁の制御干渉も確実に回避されるようになる。
【0019】
すなわち、通常の噴射制御モードから無効噴射制御モードに移る際には、無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最初の駆動時期に同燃料噴射弁に対する通常の駆動要求があるか否かが問題となる。そして、この無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最初の駆動時期に同燃料噴射弁に対する通常の駆動要求が重なる場合には、燃料噴射量についての制御精度が悪化する可能性がある。また、通常の燃料噴射にかかる燃料噴射弁の駆動後、極端に短い時間間隔にて無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最初の駆動時期が到来する場合には、同燃料噴射弁の駆動状態の安定性が低下するおそれがある。
【0020】
この点、請求項8記載の発明の同構成によるように、燃料噴射弁の通常の駆動要求がないことを条件に無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最初の駆動が許可されることで、この無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最初の駆動時期に同燃料噴射弁に対する通常の駆動要求が重なるようなことはなくなり、併せて、これら通常の噴射制御モードと無効噴射制御モードとが内燃機関のクランク角を基準に一元的に管理されることで、通常の燃料噴射にかかる燃料噴射弁の駆動後、極端に短い時間間隔にて無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最初の駆動時期が到来するようなこともなくなる。そしてこのため、通常の噴射制御モードから無効噴射制御モードへの移行に伴うエミッションの悪化や機関ダメージ等も好適に回避されるようになる。
【0021】
また、請求項9記載の発明では、同じく請求項7記載の発明の構成において、前記クランク角同期制御手段は、前記無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動制御状態から同無効噴射制御手段によらない燃料噴射弁の通常の駆動制御状態への移行時、該無効噴射制御手段によらない燃料噴射弁の通常の駆動制御を所定期間禁止するものであるとする。
【0022】
先の請求項7記載の発明によれば、燃料噴射弁の通常の駆動(燃料噴射)時期はもとより、無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最初の駆動時期も内燃機関のクランク角を基準に制御されるとはいえ、一旦、無効噴射制御モードに入ってしまうと、通常の噴射制御モードへの復帰時期において、燃料噴射弁の制御条件が曖昧となる。
【0023】
この点、請求項9記載の発明の同構成によれば、こうして無効噴射制御モードから通常の噴射制御モードに復帰する場合であれ、それら制御モードの移行時、無効噴射制御手段によらない燃料噴射弁の通常の駆動が所定期間禁止されるため、このような場合における燃料噴射弁の制御干渉も確実に回避される。
【0024】
そして、こうしてそれら各制御モードでの燃料噴射弁の制御干渉が回避されることで、上述同様、無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動時期に同燃料噴射弁に対する通常の駆動要求が重なるようなことはなくなり、また、無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動後、極端に短い時間間隔にて通常の燃料噴射にかかる燃料噴射弁の駆動時期が到来するようなこともなくなる。
【0025】
なお、無効噴射制御モードから通常の噴射制御モードへの復帰時、燃料噴射弁の通常の駆動を禁止する上記所定期間の設定は任意であるが、無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動周期が、当該機関のクランク角を基準とする同燃料噴射弁の通常の噴射制御にかかる駆動周期よりも十分に短い場合には、この禁止期間を燃料噴射弁の通常の噴射制御にかかる1駆動分(1駆動周期)に対応した期間として設定することで必要十分となる。そしてこの場合には、燃料噴射弁の制御干渉を回避したうえで、無効噴射制御モードから通常の噴射制御モードへの最も円滑な復帰が可能となる。
【0030】
また、請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の発明の構成において、前記時間同期制御手段は、前記内燃機関の停止条件成立に基づき設定する前記無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最初の駆動時期を所定期間遅延するものであるとする。
【0031】
請求項2記載の発明のこうした構成によれば、当該機関の停止条件成立の前、燃料噴射弁の駆動制御が上記通常の噴射制御モードにあった場合であれ、あるいは上記無効噴射制御モードにあった場合であれ、機関停止条件が成立すれば、同条件の成立に伴って無効噴射制御モードに移行する際の無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最初の駆動時期が上記所定期間だけ遅延される。このため、機関の停止条件成立後は、それら制御との干渉を避けて、確実に無効噴射制御モードに移行することができるようになる。
【0032】
ちなみに、当該機関の停止条件成立の前、通常の噴射制御モードにあったときに、同停止条件の成立後、この通常の噴射制御に基づく燃料噴射弁の最後の駆動時期と無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最初の駆動時期とが重なる場合には、機関停止条件が成立しているにも拘わらず、燃料噴射量の制御精度が悪化する可能性がある。また、機関の停止条件成立の前、たとえ無効噴射制御モードにあったとしても、同停止条件の成立に伴う新たな制御の開始に伴い、無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最後の駆動時期と同無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最初の駆動時期とが重なる場合には、燃料噴射弁が無効噴射期間を超えて駆動されてしまうことも懸念される。あるいはまた、同機関の停止条件成立時点での燃料噴射弁の最後の駆動の後、極端に短い時間間隔にて無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最初の駆動時期が到来する場合には、上述のように、同燃料噴射弁の駆動状態の安定性が低下するおそれがある。
【0033】
この点、請求項2記載の発明の同構成によるように、機関停止条件成立の後、無効噴射制御モードに移行する際の無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最初の駆動時期が上記所定期間だけ遅延されることで、こうした不都合も全て解消され、確実に無効噴射制御モードに移行されるようになる。
【0034】
また、請求項3記載の発明では、上記請求項1または2記載の発明の構成において、前記時間同期制御手段は、前記無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動制御の実行期間を併せて設定制御するものであるとする。
【0035】
請求項3記載の発明のこうした構成によれば、上記機関停止条件成立後の無効噴射制御モードにおいて、燃料噴射弁の駆動制御の実行期間も併せて管理されることとなる。このため、機関停止状態での無駄な無効噴射制御の実行等も好適に低減されるようになる。
【0036】
また、請求項4記載の発明では、上記請求項3記載の発明の構成において、前記時間同期制御手段は、前記無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動制御の実行期間を、前記内燃機関の冷却水温度、及び前記蓄圧配管内の目標燃料圧力のいずれかに基づき設定するものであるとする。
【0037】
こうした高圧燃料噴射系を備える内燃機関にあっては通常、機関始動時における蓄圧配管内の目標燃料圧力は、同機関の冷却水温をパラメータとして、該水温が低いほど大きな圧力に設定される。したがって、請求項4記載の発明の同構成によるように、機関停止条件成立後の無効噴射制御モードにおいて、燃料噴射弁の駆動制御の実行期間をこれら冷却水温度、あるいは目標燃料圧力に基づいて設定することとすれば、蓄圧配管内の燃料圧力を機関再始動時における目標圧力近傍に制御することができ、ひいては無駄な無効噴射制御の実行を低減したうえで、この機関再始動時の燃料圧力フィードバック制御にかかる収束性を大幅に高めることができるようになる。
【0038】
また、請求項5記載の発明では、同じく請求項3または上記請求項4記載の発明の構成において、前記時間同期制御手段は、前記無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動制御の実行期間を、前記内燃機関の回転数に基づき設定するものであるとする。
【0039】
内燃機関の運転中であれば上記無効噴射制御モードでの燃料噴射弁の作動音も乗員にとって気になることはないが、同機関の停止条件が成立した後、その運転が停止されるときに同無効噴射制御モードでの燃料噴射弁の作動音が残る場合には、そうした作動音が乗員にとっては違和感となる。この点、請求項5記載の発明の同構成によれば、例えば当該機関の回転数がある回転数以下となることをもって同無効噴射制御モードでのそれ以降の燃料噴射弁の駆動を禁止することができ、ひいてはこうした違和感を排除することができるようになる。
【0040】
また、請求項10記載の発明では、上記請求項1〜9のいずれかに記載の発明の構成において、前記無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動周期を所定の時間に設定する無効噴射周期設定手段をさらに備える構成とする
請求項10記載の発明のこうした構成によれば、例えば燃料圧力が目標燃料圧力を超える条件下での無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動周期が当該機関の運転条件等によらない所定の時間を周期として行われることとなる。このため、蓄圧配管内の余剰な燃料圧力を確実に低下せしめることが可能になるとともに、その圧力低下量の推定も容易となる。ちなみに、蓄圧配管への燃料の圧送制御や当該高圧燃料噴射系の診断等、他の制御や診断等が併せて行われるような環境にあっては、こうした圧力低下量の推定も重要な要素となる。
【0041】
なお、請求項10記載の発明の同構成において、無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動周期となる上記所定の時間は、例えばそのときの燃料圧力や燃料温度等、あるいはその他の要求等に応じた可変の時間として設定してもよい。
【0042】
また、請求項11記載の発明では、上記請求項10記載の発明の構成において、前記無効噴射周期設定手段は、前記無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動周期を一定の時間に設定するものであるとする。
【0043】
請求項11記載の発明のこうした構成によれば、上述した燃料圧力の低下にかかる応答性が基本的には常に一定となり、上記圧力低下量の推定もさらに容易となる。
【0044】
【発明の実施の形態】
図1に、この発明にかかる高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置について、その一実施の形態を示す。
【0045】
なお、この実施の形態の燃料圧力制御装置は、蓄圧配管としてコモンレールを備えるディーゼル機関の高圧燃料噴射系にあって、同コモンレール内の燃料圧力を制御する装置にこの発明を適用したものである。
【0046】
はじめに、図1を参照して、同実施の形態にかかる燃料圧力制御装置の構成について説明する。
同図1に示されるように、この実施の形態の装置は、大きくはディーゼル機関1に対して高圧燃料を噴射供給する高圧燃料噴射系10、該高圧燃料噴射系10の燃料圧力を制御する制御系20、そして各種センサからなって、該制御系20での制御に際しそれらセンサによる各種検出データを制御データの一部として同制御系に出力する検出系30を備えて構成される。
【0047】
ここで、高圧燃料噴射系10は、例えばディーゼル機関1の出力軸に駆動連結されて燃料タンク11に貯留された燃料を供給配管12を介して吸引するとともに、これを高圧燃料として加圧吐出するサプライポンプ13を備えており、このサプライポンプ13によって加圧吐出された高圧燃料を、供給配管14を介して上記蓄圧配管であるコモンレール15に蓄える構成となっている。そして基本的には、このコモンレール15に蓄えられた高圧燃料が供給配管16を介して燃料噴射弁17に供給され、制御系20を構成する電磁弁24の駆動に基づいて燃料噴射弁17からディーゼル機関1の対応気筒に噴射供給される。
【0048】
なおこの実施の形態において、ディーゼル機関1としては4気筒のものを想定しており、コモンレール15以降の、燃料噴射弁を通じたこうした燃料の噴射供給も、実際には同機関1の各気筒毎に行われる。
【0049】
また、上記サプライポンプ13は、供給配管12に接続される吸入ポート13a、供給配管14に接続される吐出ポート13b、そしてリターン配管18aに接続されるリターンポート13cをそれぞれ有するとともに、制御系20を構成する圧力制御弁25によってその燃料吐出量が制御されるものであり、上記吐出ポート13bから吐出されなかった余剰の燃料は、リターンポート13c及びリターン配管18a、18を介して燃料タンク11に戻される。
【0050】
また、上記高圧燃料が蓄えられるコモンレール15は、ディーゼル機関1の各気筒に対応した4つの出力ポート15a〜15dを備えるとともに、プレッシャレギュレータ15eを備え、何らかの原因により必要以上に加圧された燃料は、このプレッシャレギュレータ15e及びリターン配管18b、18を介して燃料タンク11に戻される。
【0051】
また、電磁弁24の駆動に基づいて上記コモンレール15に蓄圧された燃料をディーゼル機関1に噴射供給する燃料噴射弁17は、具体的には図2に例示するような内部構造を有している。この実施の形態にあって、同燃料噴射弁17は、ディーゼル機関1に対する燃料の噴射供給のみならず、電磁弁24の無効噴射期間内での駆動に基づいて上記コモンレール15に蓄圧された燃料の排圧を行う、いわゆる無効噴射制御の可能な構造となっている。以下、図2を併せ参照して、燃料噴射弁17のこうした構造及び動作について説明する。
【0052】
図2(a)に示されるように、この燃料噴射弁17は、そのケーシング71に供給ポート17aが設けられており、コモンレール15に蓄圧された燃料はこの供給ポート17aを通ってケーシング71の下部に形成された下部燃料溜まり室72に導入される。また、上記供給ポート17aは、オリフィス73を介して、上部燃料溜まり室74にも連通されている。そして、下部燃料溜まり室72及び上部燃料溜まり室74には、1本のノズルニードル75が摺動可能に設けられており、ケーシング71の最下部に設けられているノズル孔17bは、このノズルニードル75の上方への移動に基づいて下部燃料溜まり室72と連通する。
【0053】
一方、上記ノズルニードル75は、その下側から順に、弁体となる先端部76、大径部77、小径部78及びピストン部79によって構成されており、大径部77は下部燃料溜まり室72の上側部分を、ピストン部79は上部燃料溜まり室74の下側部分をそれぞれ上下方向に摺動可能となっている。
【0054】
また、小径部78の周囲には、ニードル用スプリング80が設けられており、該スプリング80の付勢力により、ノズルニードル75は、常にはその下方に付勢されている。これにより、ノズルニードル75の先端部76は、常にはノズル孔17b近傍の着座部81に当接した状態となっている。
【0055】
また、上部燃料溜まり室74は、オリフィス82を介して電磁弁収容室83に連通されている。
ここで、上記電磁弁24は、弁体24a、ソレノイド24b及び弁体用スプリング24c等によって構成されており、これらは電磁弁収容室83に収容されている。具体的には、弁体24aは、電磁弁収容室83の下部に設けられるとともに、弁体用スプリング24cは、この弁体24a及び電磁弁収容室83の天井部分に当接するようにして設けられており、常には、同弁体24aを下方に付勢している。これにより、常にはこの付勢された弁体24aによってオリフィス82が塞がれており、上部燃料溜まり室74及び電磁弁収容室83間の連通が遮断されている。
【0056】
なお、ソレノイド24bは、制御系20を構成する後述する電子制御装置21(図1)を通じて励磁された際に弁体用スプリング24cの付勢力に抗して弁体24aを上方に引き上げるためのものである。
【0057】
また、弁体24aの上部はフランジ状に形成されており、このフランジ部分には透孔Hが形成されている。
他方、ケーシング71には、上記電磁弁収容室83からの燃料を逃がすためのリターンポート17cが形成されており、以下に説明する所定条件下において、余剰燃料がこのリターンポート17cからリターン配管18c、18を経て燃料タンク11へと戻される(図1)。
【0058】
なお、上記ニードル用スプリング80が設けられている空間と、電磁弁収容室83との間は連通路84によって連通されており、ニードル用スプリング80が設けられている空間に少しずつ洩れ出る燃料は、この連通路84を通って電磁弁収容室83に流れ、さらには上記透孔H及びリターンポート17cを通ってリターン配管18c(図1)の方へと少しずつ流れ出るようになる。
【0059】
次に、同燃料噴射弁17の動作について説明する。
図2(a)は、電磁弁24の上記ソレノイド24bが励磁されていないときにおける同燃料噴射弁17の内部状態を示したものである。この状態にあっては、同図2(a)に示されるように、弁体用スプリング24cの付勢力によって弁体24aが下方に付勢され、上部燃料溜まり室74及び電磁弁収容室83間の連通が遮断される。
【0060】
かかる状況下においては、供給ポート17aから導入される燃料は、下部燃料溜まり室72及び上部燃料溜まり室74に対して均等に供給されることとなり、圧力のバランスが保たれる。このため、ノズルニードル75は、ニードル用スプリング80の付勢力によって下方に付勢され、その先端部76も、ノズル孔17b近傍の着座部81に当接した状態が維持される。すなわちこの場合、ノズル孔17bから燃料が噴射されることはなく、また、上部燃料溜まり室74に溜められた燃料がリターンポート17cを通って早急に流れ出ることもない。
【0061】
一方、ソレノイド24bが励磁された場合、弁体用スプリング24cの付勢力に抗して弁体24aが上方へ移動し、上部燃料溜まり室74と電磁弁収容室83との間が連通される。そして、その後しばらくの間は、同燃料噴射弁17は図2(b)に示すような内部状態となる。
【0062】
すなわちこの場合、上部燃料溜まり室74内に溜められた燃料は、電磁弁収容室83及び上記透孔Hを通って、リターンポート17cへと流れ出る。ただし、上部燃料溜まり室74から電磁弁収容室83への燃料の流出は、上記オリフィス82を介して行われるため、上記ソレノイド24bが励磁された後、しばらくの間は、下部燃料溜まり室72の燃料圧力と上部燃料溜まり室74の燃料圧力との差圧も、ニードル用スプリング80の付勢力より小さい状態に維持される。そして、こうしてニードル用スプリング80の付勢力が上記差圧よりも勝っている期間は、ノズルニードル75も移動することなく、その先端部76が着座部81に当接した状態に維持される。すなわち、燃料噴射弁17のこうした状態においては、ノズル孔17bから燃料が噴射されることなく、上記上部燃料溜まり室67に溜められた燃料のみが、リターンポート17cを通ってリターン配管18c(図1)に速やかに流れ出るようになる。そしてこの期間が、コモンレール15に蓄圧された燃料の排圧のみが行われる無効噴射期間となる。
【0063】
また、こうしてソレノイド24bの励磁が維持されている状態において、上部燃料溜まり室74内の燃料がある程度抜け、やがて下部燃料溜まり室72の燃料圧力と上部燃料溜まり室74の燃料圧力との差圧がニードル用スプリング80の付勢力よりも大きくなると、下部燃料溜まり室72内の燃料圧力によってノズルニードル75が上動し、同燃料噴射弁17は図2(c)に示すような内部状態に移行する。
【0064】
すなわちこの状態においては、ノズルニードル75の先端部76が着座部81から離間することによって下部燃料溜まり室72とノズル孔17bとが連通し、該ノズル孔17bからディーゼル機関1(図1)の対応気筒に対して高圧燃料が噴射供給されるようになる。
【0065】
そして、図2(b)に示される状態であれ、あるいは図2(c)に示される状態であれ、その後ソレノイド24bの励磁が解除されることにより、同燃料噴射弁17は再度、図2(a)に示される内部状態となって、上述した燃料の排圧、あるいは燃料の噴射を終了する。
【0066】
このように、図1に例示する実施の形態の装置にあって、高圧燃料噴射系10を構成する燃料噴射弁17は、電磁弁24(ソレノイド24b)の駆動の有無、及びその駆動期間に応じて、
(a)ディーゼル機関1に対する燃料噴射も、コモンレール15に蓄圧された燃料の排圧も行わない状態(図2(a))。
【0067】
(b)コモンレール15に蓄圧された燃料の排圧のみ(無効噴射)を行う状態(図2(b))。
(c)上記無効噴射の後、ディーゼル機関1に対する燃料噴射(通常噴射)を行う状態(図2(c))。
といった3種の状態をとるようになる。そして、この燃料噴射弁17の上記通常噴射にかかる燃料噴射量は、上記無効噴射期間を超える電磁弁24の駆動期間に応じて設定制御される。
【0068】
他方、同図1に例示するこの実施の形態の装置にあって、制御系20は、電子制御装置21をはじめ、この電子制御装置21を通じて駆動制御される上記電磁弁24、及び圧力制御弁25を基本的に備えて構成される。
【0069】
ここで、電子制御装置21は、図示しないプログラムメモリに格納された各種制御プログラムに基づき後述するクランク角同期制御や時間同期制御を実行し、もって、コモンレール15に蓄えられる高圧燃料の燃料圧力を制御するマイクロコンピュータ22、そして該マイクロコンピュータ22による制御のもとに上記電磁弁24を駆動するドライバ23を主に備える構成となっている。
【0070】
また、この制御系20において、電子制御装置21は、IG(始動)スイッチ26のオン操作に基づく車載バッテリBからの給電を受けてその制御動作が実行可能な状態となる。
【0071】
ちなみに、上記IGスイッチ26がオン操作されると、これを受けたマイクロコンピュータ22は、リレー27の内部接点をオンとして、同車載バッテリBの電力を電子制御装置21の内部に供給する。
【0072】
また、IGスイッチ26がオフ操作された場合、マイクロコンピュータ22は所定の後処理を終えた後、上記リレー27の内部接点をオフとする。すなわち、IGスイッチ26がオフ操作された後、マイクロコンピュータ22による所定の後処理を経て、車載バッテリBから電子制御装置21への給電が遮断される。
【0073】
また、この実施の形態の装置にあって、検出系30は、同図1に示されるように、アクセルセンサ31、水温センサ32、回転数センサ33、気筒判別センサ34、及び燃料圧力センサ35をそれぞれ備えて構成される。
【0074】
ここで、アクセルセンサ31は、図示しないアクセルペダルの近傍に設けられてその開度(踏み込み量)を検出するセンサであり、また、水温センサ32は、ディーゼル機関1のウォータジャケットに設けられてその冷却水温の温度を検出するセンサである。これらセンサ31及び32による検出信号はいずれも、適宜にA/D(アナログ/ディジタル)変換された信号としてマイクロコンピュータ22に取り込まれる。
【0075】
また、回転数センサ33は、例えば、ディーゼル機関1のクランクシャフトに装着されたロータ33aと、その近傍に配設されて同ロータ33aの外周に所定間隔で設けられた突起の通過を検出する電磁ピックアップ33bとを備えて構成される。この電磁ピックアップ33bの出力は通常、波形整形され、図3に例示するようなクランクシャフトの回転数(回転位相)に対応したパルス信号(NEパルス)としてマイクロコンピュータ22に取り込まれる。
【0076】
なお、この実施の形態においては、図3(a)及び(b)に示されるように、ディーゼル機関1の各気筒毎に0〜17の18パルスのNEパルスが出力されるものとし、後述するクランク角同期制御では、このNEパルスのそれぞれ「3」パルス、及び「7」パルスに同期して上記燃料噴射弁17の駆動態様を制御する処理が実行される。
【0077】
また、同じく検出系30を構成する気筒判別センサ34は、例えばディーゼル機関1のカムシャフトに装着されたロータ34aと、その近傍に配設されて同ロータ34aの外周に当該機関1の気筒判別用に設けられた突起の通過を検出する電磁ピックアップ34bとを備えて構成される。この電磁ピックアップ34bの出力も通常、波形整形された適宜のパルス信号としてマイクロコンピュータ22に取り込まれる。
【0078】
そして、同検出系30の燃料圧力センサ35は、例えば上記コモンレール15に設けられて、その内部に蓄えられている高圧燃料の燃料圧力を検出するセンサである。該燃料圧力センサ35による検出信号も、適宜にA/D変換された信号としてマイクロコンピュータ22に取り込まれる。
【0079】
さて、この実施の形態の燃料圧力制御装置は、以上のような構成に基づいて、ディーゼル機関1に対する筒内噴射要求がなく、且つコモンレール15内の燃料圧力が過大となっている期間に上記燃料噴射弁17を無効噴射制御し、もって同コモンレール15内の燃料圧力を低減するとともに、これを適正ならしめるものである。
【0080】
そして、この無効噴射制御に際しては、上記燃料噴射弁17の無効噴射期間での駆動周期を、ディーゼル機関1の運転条件等によらない所定の時間に設定することによって、その燃料圧力低減効果を確実なものとする。
【0081】
また、この無効噴射制御は、車両の急減速から軽負荷走行への移行時等、一時的な燃料カット期間に限らず、当該機関1の停止条件が満たされた場合にも実行する。これは、当該機関1のレーシング中にIGスイッチ26のオフ操作(IGオフ操作)が行われ、その後直ちに機関再始動操作が行われたような場合、あるいは走行中に当該機関1がストールし、その後直ちに機関再始動操作が行われたりしたような場合にも、コモンレール15内の燃料圧力が機関始動時の目標燃料圧力まで下がらないことに起因する過大な圧力での燃料噴射が行われる可能性があるためである。
【0082】
ただし、上記所定の時間を基準に実行される燃料噴射弁17の無効噴射制御と当該機関1のクランク角(NEパルス)を基準に実行される同燃料噴射弁17の通常の噴射制御とでは、また同じく所定の時間を基準に実行されるとはいえ、上記燃料カット期間に実行される無効噴射制御と機関停止条件が満たされたときに実行される無効噴射制御とでは、燃料噴射弁17に対する制御干渉が生じる懸念がある。
【0083】
例えば、通常の噴射制御から無効噴射制御に移る際には、無効噴射制御による燃料噴射弁17の最初の駆動時期に同燃料噴射弁17に対する通常の駆動要求があるか否かが問題となる。そして、無効噴射制御による燃料噴射弁17の最初の駆動時期に同燃料噴射弁17に対する通常の駆動要求が重なるような場合には、燃料噴射量の制御精度が悪化する可能性がある。このことは、無効噴射制御から通常の噴射制御に移る場合であっても同様である。
【0084】
また、通常の燃料噴射にかかる燃料噴射弁17の駆動後、極端に短い時間間隔にて無効噴射制御による燃料噴射弁17の最初の駆動時期が到来する場合には、同燃料噴射弁17の駆動状態の安定性が低下するおそれがある。そしてこのことも、無効噴射制御から通常の噴射制御に移る場合であれ同様である。
【0085】
一方、当該機関1の停止条件成立の前、通常の噴射制御状態にあったときに、同停止条件の成立後、この通常の噴射制御に基づく燃料噴射弁17の最後の駆動時期と無効噴射制御による同燃料噴射弁17の最初の駆動時期とが重なる場合にも、機関停止条件が成立しているにも拘わらず、燃料噴射量の制御精度が悪化する可能性がある。
【0086】
また、同機関1の停止条件成立の前、たとえ無効噴射制御状態にあったとしても、同停止条件の成立に伴う新たな制御の開始に伴い、無効噴射制御による燃料噴射弁17の最後の駆動時期と同無効噴射制御による燃料噴射弁17の最初の駆動時期とが重なる場合には、燃料噴射弁17が無効噴射期間を超えて駆動されてしまう可能性がある。
【0087】
あるいはまた、同機関1の停止条件成立時点での燃料噴射弁17の最後の駆動の後、極端に短い時間間隔にて無効噴射制御による燃料噴射弁17の最初の駆動時期が到来する場合にも、同燃料噴射弁17の駆動状態の安定性が低下するおそれがある。
【0088】
そこで、この実施の形態の装置では、
(イ)燃料噴射弁17の通常の噴射制御から無効噴射制御に移行する場合。
あるいは
(ロ)燃料噴射弁17の無効噴射制御から通常の噴射制御に復帰する場合。
には、同燃料噴射弁17の駆動時期が重ならないようにこれを調停し、また、
(ハ)燃料噴射弁17の通常の噴射制御から機関停止時の無効噴射制御に移行する場合。
あるいは
(ニ)燃料噴射弁17の無効噴射制御から機関停止時の無効噴射制御に移行する場合。
には、同じく調停として、上記機関停止時の無効噴射制御の実行を所定期間遅延することによって、こうした各種状況下での制御干渉を回避し、ひいては限られた期間で確実に余剰燃料圧力の低減が図られるようにしている。
【0089】
図4は、この実施の形態において実行するこうした遅延(ディレイ)処理をも含む調停が、ディーゼル機関1及びIGスイッチ26のどのような状態のもとでどのように行われるか、それら状態の遷移を一覧するものであり、それら個々の処理についての具体的な手順の説明に先立ち、まず図4を参照して、その概要を説明する。
【0090】
この図4において、状態ブロックC1は、ディーゼル機関1の通常運転時での燃料噴射弁17の制御態様を示している。
この状態ブロックC1においては、車両の急減速から軽負荷走行への移行時等、通常の噴射制御が行われている状態(通常の噴射制御モード)から燃料カット状態に移行し、しかもそのとき、コモンレール15内の燃料圧力が当該運転状態に基づき算出される目標燃料圧力を上回っているなど、無効噴射制御実行のための所定の条件が成立している場合には、通常の噴射制御モードから無効噴射制御が行われる状態(無効噴射制御モード)に移行されることを示している。そしてこの実施の形態の装置にあっては、こうした通常の噴射制御モードから無効噴射制御モードへの移行に際して、燃料噴射弁17の駆動時期が重ならないように、その駆動タイミングが調停される。
【0091】
また、同状態ブロックC1では、無効噴射制御モードにあるときに噴射要求が復帰されるなど、無効噴射制御実行のための条件が不成立となる場合には、通常の噴射制御モードに復帰されることをことを示している。そしてこの実施の形態の装置にあっては、こうした無効噴射制御モードから通常の噴射制御モードへの移行に際しても、燃料噴射弁17の駆動時期が重ならないように、その駆動タイミングが調停される。
【0092】
一方、状態ブロックC1のこれらの状態にあるときにIGスイッチ26がオフ操作された場合には、同図4の状態ブロックC2に遷移する。この状態ブロックC2は、IGスイッチ26がオフ状態にあるときの燃料噴射弁17の制御態様を示している。
【0093】
この状態ブロックC2においては、IGスイッチ26がオフ操作された後、所定の時間T1(例えば0.2秒程度)が経過するまでは上記状態ブロックC1での制御態様が引き継がれ、該所定の時間T1の経過に伴って状態ブロックC21遷移する。
【0094】
そして、この状態ブロックC21においては、IGスイッチ26がオフ操作された後、上記所定の時間T1が経過したことをもって、ディーゼル機関1の停止条件が成立した旨を判断する。そしてこの実施の形態の装置にあっては、通常の噴射制御モードにあった場合であれ、あるいは無効噴射制御モードにあった場合であれ、調停として、該停止条件の成立に伴って燃料噴射弁17の駆動を一旦停止し、所定の時間だけ遅延(ディレイ)処理を行った後、後述する機関停止時の無効噴射制御実行条件が成立していれば無効噴射制御を実行する。また、このディレイ処理の後、同無効噴射制御の実行条件が成立していなければ、燃料噴射弁17の駆動はそのまま停止される。
【0095】
また一方、状態ブロックC1での制御状態にあるときに、IGスイッチ26がオン状態にあるにも拘わらずディーゼル機関1がストールした場合には、同図4の状態ブロックC3に遷移する。この状態ブロックC3は、IGスイッチ26がオン状態にあって且つ機関1がストールしたときの燃料噴射弁17の制御態様を示している。
【0096】
この状態ブロックC3においては、上記状態ブロックC21と同様、機関1の停止条件の成立に伴って燃料噴射弁17の駆動を一旦停止し、所定時間のディレイ処理を行った後、後述する機関停止時の無効噴射制御実行条件が成立していれば無効噴射制御を実行し、同無効噴射制御の実行条件が成立していなければ燃料噴射弁17の駆動をそのまま停止する。
【0097】
そして、この状態ブロックC3での制御状態においてIGスイッチ26がオフ操作された場合、あるいは上記状態ブロックC2若しくは状態ブロックC21での制御状態において機関1がストールに至った場合には、同図4の状態ブロックC4に遷移する。この状態ブロックC4は、IGスイッチ26がオフ状態にあって且つ機関1がストールしたときの燃料噴射弁17の制御態様を示している。
【0098】
この状態ブロックC4においても、基本的には上記状態ブロックC21と同様、機関1の停止条件の成立に伴って燃料噴射弁17の駆動を一旦停止し、所定時間のディレイ処理を行った後、後述する機関停止時の無効噴射制御実行条件が成立していれば無効噴射制御を実行し、同無効噴射制御の実行条件が成立していなければ燃料噴射弁17の駆動をそのまま停止する。もっとも、この状態ブロックC4においては、同図4に示されるように、上記状態ブロックC2、C21、あるいは状態ブロックC3から遷移されたときの制御状態がそのまま引き継がれるため、例えば上記機関停止条件の成立に伴うディレイ処理(調停)も、実際には一度しか行われない。
【0099】
そしてその後、同状態ブロックC4において燃料噴射弁17の駆動停止が確認された後、マイクロコンピュータ22は前記リレー27をオフとして、当該電子制御装置21に対する給電を停止する。
【0100】
同図4に例示するこうした状態遷移に対応して、電子制御装置21(マイクロコンピュータ22)側からみたこの実施の形態の装置としての制御全体の流れをまとめると、図5及び図6に示すものとなる。
【0101】
すなわち、図5のステップS1として示すIGスイッチ26のオン操作の確認のもとに、電子制御装置21は通常の噴射制御モードにて燃料噴射弁17の駆動制御を開始する(図5ステップS10)。そして、その状態で機関1のストールやIGスイッチ26のオフ操作がなく、且つ上記無効噴射制御の実行条件が成立していなければ、同通常の噴射制御モードでの燃料噴射弁17の駆動制御を維持する(図5ステップS11〜S13)。
【0102】
一方、同状態で機関1のストールやIGスイッチ26のオフ操作は確認されないものの、上述のように、燃料カット状態に移行され、しかもそのとき、コモンレール15内の燃料圧力が当該運転状態に基づき算出される目標燃料圧力を上回っているなど、上記無効噴射制御の実行条件成立が確認される場合には、通常の噴射制御モードから無効噴射制御モードに移行する(図5ステップS13及びS20)。そして電子制御装置21は、この移行により、無効噴射制御モードにて燃料噴射弁17の駆動制御を開始する。なおこのとき、通常の噴射制御モードでの燃料噴射弁17の最後の駆動期間と無効噴射制御モードでの同燃料噴射弁17の最初の駆動期間とが重ならないようにその駆動タイミングが調停されることは上述の通りである。そしてこの場合も、同状態で機関1のストールやIGスイッチ26のオフ操作がなく、且つ通常噴射への復帰条件が成立していなければ、すなわち無効噴射制御の実行条件が不成立となっていなければ、電子制御装置21はこの無効噴射制御モードでの燃料噴射弁17の駆動制御を維持する(図5ステップS21〜S23)。
【0103】
またその後、同状態で機関1のストールやIGスイッチ26のオフ操作は確認されないものの、噴射要求が復帰されるなど、上記通常噴射への復帰条件の成立(無効噴射制御実行条件の不成立)が確認される場合には、この無効噴射制御モードから再び上記通常の噴射制御モードに移行する(図5ステップS23及びS10)。そして、このときにも上述のように、無効噴射制御モードでの燃料噴射弁17の最後の駆動期間と通常の噴射制御モードでの同燃料噴射弁17の最初の駆動期間とが重ならないようにその駆動タイミングが調停される。
【0104】
他方、上記通常の噴射制御モードにおいて、あるいは上記無効噴射制御モードにおいて、機関1のストールが確認された場合には、同機関1の停止条件が成立したものとして、その際の調停として上記ディレイ処理を行った後、機関停止時の無効噴射制御実行条件の成立の有無を判断する(図5ステップS11またはS21、図6ステップS30及びS31)。
【0105】
また、同じく上記通常の噴射制御モードにおいて、あるいは上記無効噴射制御モードにおいて、IGスイッチ26のオフ操作が確認された場合には、それぞれ上記所定の時間T1の経過をもって当該機関1の停止条件の成立を判断し、同じくディレイ処理を行った後、機関停止時の無効噴射制御実行条件の成立の有無を判断する(図5ステップS12→S14またはS22→S24、図6ステップS30及びS31)。
【0106】
そして、上記いずれの場合であれ、機関停止時の無効噴射制御実行条件の成立が確認された場合には、機関停止時の無効噴射制御を実行したうえでリレー27をオフとし(図6ステップS31、S32及びS33)、同実行条件の不成立が確認された場合には、該無効噴射制御を実行することなくリレー27をオフとする(図6ステップS31及びS33)。
【0107】
図7〜図14は、この実施の形態の装置による燃料噴射弁17の無効噴射制御に基づく上記燃料圧力の具体的な制御手順、並びに制御態様を示したものであり、次に、これら図7〜図14を併せ参照して、同実施の形態の装置の上記調停や遅延(ディレイ)処理を含めた燃料圧力制御の詳細について説明する。
【0108】
この実施の形態の装置では、上記通常の噴射制御モードでの燃料噴射弁17の駆動制御をはじめ、上記無効噴射制御モードでの同燃料噴射弁17の最初の駆動時期については、ディーゼル機関1のクランク角を基準としてそのタイミングを管理するクランク角同期制御に基づいて行う。
【0109】
そして上述のように、無効噴射制御に移行して後、燃料噴射弁17の上記無効噴射期間での駆動周期についてはこれを当該機関1の運転条件等によらない所定の時間に設定するとともに、この所定の時間に基づく燃料噴射弁17の無効噴射期間での繰り返しの駆動についてはこれを、無効噴射パルスのパルスオフ割込みによって実現する。
【0110】
一方、同実施の形態の装置において、当該機関1の停止条件の成立確認、並びに、この停止条件の成立に基づく機関停止時の無効噴射制御モードでの燃料噴射弁17の最初の駆動時期については、所定の時間を基準としてそのタイミングを管理する時間同期制御に基づいて行う。
【0111】
そしてこの場合も、無効噴射制御に移行して後は、燃料噴射弁17の上記無効噴射期間での駆動周期を所定の時間に設定するとともに、該所定の時間に基づく燃料噴射弁17の無効噴射期間での繰り返しの駆動についてはこれを、無効噴射パルスのパルスオフ割込みによって実現する。
【0112】
また、この実施の形態の装置において、特に上記機関停止時の無効噴射制御については、その実行期間(能動期間)も併せて管理する。
以下、この実施の形態の装置が実行するこれら各種の制御について、その具体的な制御手順、並びに制御態様を順に詳述する。
【0113】
まず、上記クランク角同期制御について、図7及び図9に基づき、その詳細を説明する。
このクランク角同期制御では、先に図3を参照して説明したように、当該機関1のクランクシャフトの回転角度に対応して出力される前記NEパルスのそれぞれ「3」パルス、及び「7」パルスに同期して燃料噴射弁17の駆動態様を制御する処理が実行される。
【0114】
すなわち具体的には、電子制御装置21を構成するマイクロコンピュータ22は、回転数センサ33及び気筒判別センサ34の出力に基づき、図3に例示した態様でNEパルスを繰り返し計数し、同NEパルスの「3」パルス、及び「7」パルスが確認される都度、それぞれ図7に示す「NE=3同期処理」及び図9に示す「NE=7同期処理」を繰り返し実行する。
【0115】
そして、このうちの「NE=3同期処理」では、図7に示されるように、そのステップS101の処理として、ディーゼル機関1のその都度の運転状態において要求される燃料噴射期間Tqを算出する。この噴射期間Tqは、アクセルセンサ31や回転数センサ33等の出力に基づき算出される基本噴射量を適宜に補正した量を燃料噴射弁17の駆動期間に換算した値として算出される。なお、ここで算出されるのは、この燃料噴射期間Tq、すなわち燃料噴射弁17の駆動期間のみであり、燃料噴射時期、すなわち同燃料噴射弁17の駆動開始時期は、予め別途の処理を通じて求められている。通常、この燃料噴射時期が、「NEパルスの何パルス目から何m(ミリ)あるいは何μ(マイクロ)秒後」といったかたちで求められることはよく知られている。
【0116】
また、同「NE=3同期処理」において、そのステップS102の処理では、通常の噴射制御モードへの復帰条件が成立したか否かが判断される。この通常の噴射制御モードへの復帰条件として、この実施の形態の装置では、
(A1)「NE=3同期処理」の前サイクル(i−1)で算出された燃料噴射期間Tqが0μ秒であること(Tqi-1=0μs)。
【0117】
(A2)「NE=3同期処理」の今回(i)算出された燃料噴射期間Tqが0μ秒よりも大きいこと(Tqi >0μs)。
(A3)後述する通常時無効噴射実行フラグXNがオンとなっていること。
の論理積(アンド)条件が適用される。すなわち、同ステップS102の処理では、それまで前記無効噴射制御による燃料噴射弁17の駆動制御が能動となっていて且つ、今回はじめて通常の噴射制御への復帰要求が生じたときにのみ、肯定(YES)判断され、それ以外の状況では否定(NO)判断される。
【0118】
そして、同「NE=3同期処理」においては、上記ステップS102の処理で肯定判断されたときにのみ、次のステップS103の処理として、今回算出された燃料噴射期間Tq(>0μs)が強制的に「0μs」とされ、通常噴射復帰フラグがオンとされて、同ルーチンが一旦終了される。他方、上記ステップS102の処理で否定判断された場合には、そのまま同ルーチンが一旦終了される。
【0119】
このように、「NE=3同期処理」では、燃料噴射期間Tqの算出に併せて、通常の噴射制御モードへの復帰条件の成立の有無が監視され、同復帰条件の成立が確認される場合にのみ、上記算出された燃料噴射期間Tqが強制的に「0μs(噴射無し)」に設定される。
【0120】
一方、NEパルスの「7」パルスの確認に基づいて起動される「NE=7同期処理」では、図9に示されるように、まずそのステップS201の処理として、通常時における無効噴射制御の前提条件が成立しているか否かが判断される。この通常時の無効噴射制御の前提条件として、この実施の形態の装置では、
(B1)IGスイッチ26がオン状態にあること。または、IGスイッチ26がオフ操作された後、前記所定時間T1(図4、図5)未満であること。
【0121】
(B2)時間同期制御の前提フラグがオフであること。
の論理積条件が適用される。すなわち、同ステップS201の処理では、機関1が通常の運転状態にあり、上記機関停止条件の成立に伴う時間同期制御等の実行条件が満たされていなければ、現在は通常時の制御状態にあるものとして肯定判断され、それ以外の状況では否定判断される。
【0122】
そして、同「NE=7同期処理」においては、上記ステップS201の処理で肯定判断された場合に、ステップS202の処理として通常時の無効噴射制御の前提フラグがオンとされ、否定判断された場合には、ステップS203の処理としてこの通常時の無効噴射制御の前提フラグがオフとされる。
【0123】
その後、同「NE=7同期処理」では、ステップS204の処理として、通常時における無効噴射制御の実行条件が成立しているか否かが判断される。この通常時の無効噴射制御の実行条件として、この実施の形態の装置では、
(C1)上記通常時の無効噴射制御の前提フラグがオンとなっていること。
【0124】
(C2)燃料圧力センサ35を通じて検出されるコモンレール15内の燃料圧力の値が、当該機関1のその都度の運転状態に基づき算出される目標燃料圧力に任意の余裕代αを加えた値以上となっていること。
【0125】
(C3)上記通常噴射復帰フラグがオフとなっていること。
(C4)今回(i)の上記「NE=3同期処理」を通じて算出されている燃料噴射期間Tqが「0μs(噴射要求無し)」であること(Tqi =0μs)。
の論理積条件が適用される。すなわち、同ステップS204の処理では、上述した燃料カット状態への移行等、通常時における無効噴射制御の実行条件が満たされているか否かが判断される。
【0126】
そして、同「NE=7同期処理」では、上記ステップS204の処理において肯定判断されるとき、それまでは通常時無効噴射実行フラグXNがオフであったことを条件に同無効噴射実行フラグXNがオンとされ、燃料噴射弁17に対する無効噴射制御用の駆動パルスである無効噴射パルスの第1パルスがセットされた後、当該ルーチンが一旦終了される(図9ステップS205〜S207)。
【0127】
なお、この無効噴射パルスは、それが立上るまでのオフ時間Taと、その立上りから立下りまでのいわゆるパルス幅に相当するオン時間Tbとの2つの時間としてセットされる。また、この無効噴射パルスのセットは、同燃料噴射弁17に対する通常の噴射制御用の駆動パルスと同様、マイクロコンピュータ22自身がその前記ドライバ23に対応する出力ポートに対して行うものであり、ドライバ23では、こうしてその対応する出力ポートに駆動パルスがセットされることにより、このセットされたオフ時間(Ta)の経過の後、同セットされたオン時間(Tb)だけ燃料噴射弁17(電磁弁24)を駆動する。
【0128】
他方、この「NE=7同期処理」では、上記ステップS204の処理において否定判断されるときには、ステップS208及びS209の処理として、それぞれ上記無効噴射実行フラグXN及び上記通常噴射復帰フラグがオフとされたうえで、当該ルーチンが一旦終了される。
【0129】
このように、「NE=7同期処理」では、ディーゼル機関1の通常の運転時における無効噴射制御の前提条件及び実行条件の成立の有無を判断し、それら2つの条件が最初に満たされるときにのみ、通常時無効噴射実行フラグXNをオンとして、無効噴射パルスの第1パルスをセットする。
【0130】
また、上記前提条件及び実行条件のいずれか一方でも満たされなくなった場合には、その時点で上記通常時無効噴射実行フラグXNをオフにするとともに、先の「NE=3同期処理」において通常噴射復帰フラグがオンとされた場合には、この「NE=7同期処理」にて同通常噴射復帰フラグをオフとする。
【0131】
しかもここでは、特に無効噴射制御の実行条件としての上記(C4)の条件、すなわち「今回は噴射要求がない」ことが併せ満たされていることをもってはじめて同無効噴射制御の実行条件が成立している旨が判断される。このため、前記(イ)のように燃料噴射弁17の通常の噴射制御による駆動から無効噴射制御による駆動に移行する場合であれ、同燃料噴射弁17の駆動にかかるそれら制御が干渉することはない。
【0132】
そして、この実施の形態の装置においては、この「NE=7同期処理」を通じて無効噴射パルスの第1パルスがセットされた場合、このセットされた無効噴射パルスのパルスオフ割込みに基づいて、同じく無効噴射パルスの第2パルス以降のパルスが順次セットされる。この無効噴射パルスオフ割込みにかかる処理手順を図8に示す。
【0133】
すなわち、前記マイクロコンピュータ22は、先にセットされている無効噴射パルスがオフとなる毎に、同図8にその手順を示す割込み処理を開始する。そしてこの割込み処理に際し、マイクロコンピュータ22は上記無効噴射実行フラグ(後述する停止時無効噴射実行フラグXTをも含む)の状態を監視して、これがオンとなっていることを条件に無効噴射パルスの第2パルス以降のパルスをその上記ドライバ23に対応する出力ポートにセットする(図8ステップS401及びS402)。そしてその後は、同割込み処理を一旦終了する。
【0134】
このように、この無効噴射パルスオフ割込みは、ドライバ23に対応する出力ポートに対して予め無効噴射パルスがセットされていることを条件に起動され、また起動されたとしても、無効噴射実行フラグ(XN/XT)がオン状態に維持されていることを条件に次の無効噴射パルスをセットする。
【0135】
このため、一旦無効噴射パルスがセットされれば、無効噴射実行フラグ(XN/XT)がオン状態に維持されている限り、上述したオフ時間Taとオン時間Tbとの和を周期とする所定の時間毎に、同無効噴射パルスのセット、ひいては同無効噴射パルスに基づく燃料噴射弁17の駆動が繰り返されるようになる。なお、この無効噴射パルスにあって、上記オフ時間Taとは、上記ドライバ23が燃料噴射弁17を駆動するうえでの必要十分な蓄電が確保される時間であり、また上記オン時間Tbとは、同燃料噴射弁17の前述した無効噴射期間内での任意の時間である。
【0136】
一方、上記条件のもとに無効噴射パルスが一旦セットされると、その後たとえ無効噴射実行フラグ(XN/XT)がオフになったとしても、同パルスに基づく燃料噴射弁17の駆動は実行される。すなわち、無効噴射実行フラグ(XN/XT)がオフになる直前にセットされた無効噴射パルスがある場合には、この無効噴射実行フラグ(XN/XT)のオフ後も、この最後の無効噴射パルスに基づく燃料噴射弁17の駆動が実行される。このため、前記(ロ)のように、燃料噴射弁17の無効噴射制御による駆動から通常の噴射制御による駆動に復帰する際には、無効噴射制御での最後の駆動時期が不明となることも避けきれない。
【0137】
そこで、この実施の形態の装置では、同燃料噴射弁17の無効噴射制御による駆動から通常の噴射制御による駆動に復帰される際、上記「NE=3同期処理」を通じてその最初の燃料噴射期間Tqを強制的に「0μs(噴射無し)」に設定することで、この不明な無効噴射パルスとの干渉を避けるようにしている。
【0138】
図10(a)〜(d)は、前記(イ)の場合、すなわち燃料噴射弁17の通常の噴射制御から無効噴射制御に移行する場合について、この実施の形態の装置のこうしたクランク角同期制御、及び無効噴射パルスオフ割込み処理に基づく通常時無効噴射実行フラグXN、無効噴射パルス、通常噴射復帰フラグ、及び通常の噴射パルスの推移をタイミングチャートとして示したものである。
【0139】
同図10に示されるように、通常の噴射制御モードにあっては、上記「NE=3同期処理」を通じて算出される燃料噴射期間Tq(噴射時期は別途に算出)に基づいて燃料噴射弁17が駆動されている(図10(d))。
【0140】
こうした状態において前記燃料カットが開始され、そのとき「NE=3同期処理」を通じて算出される燃料噴射期間Tqが「0μs(噴射無し)」であることを最低限の条件として、「NE=7同期処理」において先の(B1)〜(B2)及び(C1)〜(C4)の条件の成立が判断されると、タイミングt11をもって上記無効噴射実行フラグXNがオンとなり(図10(a))、且つ、無効噴射パルスの第1パルスがセットされる(図10(b))。
【0141】
そして、その後は、上記(B1)〜(B2)及び(C1)〜(C4)の条件が全て満たされている限り、上記無効噴射パルスオフ割込み処理に基づく無効噴射パルスのセット、及びこのセットされる無効噴射パルスによる燃料噴射弁17の無効噴射制御モードでの駆動が繰り返される。
【0142】
また、図11(a)〜(d)は、前記(ロ)の場合、すなわち燃料噴射弁17の無効噴射制御から通常の噴射制御に復帰する場合について、この実施の形態の装置の同クランク角同期制御、及び無効噴射パルスオフ割込み処理に基づく通常時無効噴射実行フラグXN、無効噴射パルス、通常噴射復帰フラグ、及び通常の噴射パルスの推移をタイミングチャートとして示したものである。
【0143】
図11に示されるように、タイミングt21において上記無効噴射実行フラグXNがオンとなり、以後、無効噴射制御モードでの燃料噴射弁17の駆動が実行されているときに(図11(a)及び(b))、タイミングt22での「NE=3同期処理」をもって噴射要求が復帰されたとする(図11(c))。
【0144】
このときには、上記(A1)〜(A3)の条件が満たされることとなり、同「NE=3同期処理」を通じて通常噴射復帰フラグがオンとされるとともに、その時点で算出されている燃料噴射期間Tq(≠0)が強制的に「0μs」とされる(Tq=0)。すなわち、本来はタイミングt23といった当該噴射要求に対応して予め算出されている燃料噴射時期において通常の噴射制御モードとして駆動されるべき燃料噴射弁17の駆動が禁止される(図11(d))。
【0145】
また、このときには、タイミングt25での「NE=7同期処理」において、少なくとも前記(C3)の条件がくずれ、もって上記無効噴射実行フラグXNがオフとされる(図11(a))。ただし、その直前のタイミングt24において立ち上がった無効噴射パルスのパルスオフに伴い、上記無効噴射パルスオフ割込み処理を通じて既に次の無効噴射パルスがセットされているため、上記無効噴射実行フラグXNがオフとされる当該タイミングt25以後も、その最後の無効噴射パルスPLSrに基づく燃料噴射弁17の駆動は実行される。もっとも、このときには上述のように、通常の噴射制御モードでの燃料噴射弁17の駆動が禁止されているため、同燃料噴射弁17に対するそれら制御の干渉はない。
【0146】
そしてその後は、図11(d)に示される態様で、通常の噴射制御モードによる燃料噴射弁17の駆動が再開される。
なお、同通常の噴射制御モードにおいて再び燃料カットが行われるようなことがあれば、上記(B1)〜(B2)及び(C1)〜(C4)の条件の成立のもとに、再び図10に例示する態様での無効噴射制御が行われるようになる。
【0147】
同実施の形態の装置にあってはこのように、通常の噴射制御モードから無効噴射制御モードへの移行時には、噴射要求が存在しないことを最低限の条件として無効噴射パルスがセットされるといった態様でその調停が行われ、また、無効噴射制御モードから通常の噴射制御モードへの復帰時には、該復帰にかかる最初の燃料噴射が禁止されるといった態様でその調停が行われる。このため、燃料噴射弁17の駆動に関するそれら制御の干渉は好適に回避されるようになる。
【0148】
そして同実施の形態の装置にあっては、機関1の通常運転時、通常の噴射制御にかかる燃料噴射弁17の駆動期間、及び無効噴射制御にかかる燃料噴射弁17の最初の駆動時期を、上記クランク角同期制御を通じて一元的に管理することによって、こうした調停を容易なものとしている。
【0149】
次に、当該機関1の停止条件の成立確認、並びに、該停止条件の成立に基づく機関停止時の無効噴射制御モードでの燃料噴射弁17の駆動を管理する上記時間同期制御について、図12に基づき、その詳細を説明する。
【0150】
この時間同期制御は、電子制御装置21を構成するマイクロコンピュータ22を通じて、例えば16m秒等の所定の時間を周期として繰り返し実行される。
この時間同期制御では、図12に示されるように、まずそのステップS301の処理として、同時間同期制御の前提条件が成立したか否かが判断される。この時間同期制御の前提条件として、この実施の形態の装置では、
(D1)IGスイッチ26のオフ操作後、前記時間T1(図4、図5)が経過したこと。
【0151】
(D2)当該機関1のストールが判定されて且つIGスイッチ26が同機関1のスタータ駆動位置(IGスイッチ26のオン位置以外の第3の位置:図示略)にないこと。
の論理和(オア)条件が適用される。すなわち、このステップS301の処理では、ディーゼル機関1あるいはIGスイッチ26の状態が、図4に例示した状態ブロックC21、状態ブロックC3、及び状態ブロックC4のいずれかの状態にあるか否かが判断され、それらいずれかの状態にあることが確認されるときには肯定判断され、それ以外の状況では否定判断される。
【0152】
そして、このステップS301の処理において肯定判断される場合には、当該時間同期制御の前提フラグがオンされるとともに(図12ステップS302)、通常時無効噴射実行フラグXNがオンになっていればこれがオフとされ(図12ステップS303)、併せて当該時間同期制御プログラムにて内部定義されているディレイカウンタがインクリメントされる(図12ステップS304)。なお、このディレイカウンタとは、先の図4あるいは図6を参照して説明した遅延(ディレイ)処理に用いられるカウンタである。
【0153】
また、同ステップS301の処理において否定判断される場合には、当該時間同期制御の前提フラグがオフとされるとともに(図12ステップS305)、上記ディレイカウンタがクリアされる(図12ステップS306)。
【0154】
その後、この時間同期制御では、ステップS307の処理として、当該時間同期制御の実行条件が成立しているか否かが判断される。この時間同期制御の実行条件として、この実施の形態の装置では、
(E1)ディレイカウンタのカウンタ値が前述したディレイ処理の完了を許容する所定の値DCa以上となっていること(ディレイカウンタ値≧DCa)。
【0155】
(E2)燃料圧力センサ35を通じて検出されるコモンレール15内の燃料圧力の値が無効噴射制御の実行が必要とされる所定の圧力値Pa以上となっていること(検出燃料圧力≧Pa)。
【0156】
(E3)ディレイカウンタと同様、当該時間同期制御プログラムにて内部定義されている時間同期制御実行カウンタのカウンタ値が、機関1の停止時における無効噴射制御の必要以上の実行期間に対応して設定された所定の値ECa以下であること(時間同期制御実行カウンタ値≦ECa)。
の論理積(アンド)条件が適用される。すなわち、同ステップS204の処理では、機関停止時における無効噴射制御の実行条件が満たされているか否かが判断される。
【0157】
なおここで、同実施の形態の装置によるディレイ処理でのディレイ期間に相当する上記(E1)の条件におけるディレイカウンタ値の比較値DCaとしては、例えば「2」程度の値が採用される。すなわち、当該時間同期制御が16m秒を周期として起動される場合には、その2周期分の「32m秒」程度の時間に相当する値として設定される。これは、前記(ハ)の場合、すなわち燃料噴射弁17の通常の噴射制御から機関停止時の無効噴射制御に移行する場合、あるいは前記(ニ)の場合、すなわち燃料噴射弁17の無効噴射制御から機関停止時の無効噴射制御に移行する場合において、同燃料噴射弁17に対するそれら移行時の制御干渉を確実に回避するうえで必要十分な期間である。
【0158】
そして、この時間同期制御では、上記ステップS307の処理において肯定判断されるとき、それまでは停止時無効噴射実行フラグXTがオフであったことを条件に同無効噴射実行フラグXTがオンとされ、上記無効噴射パルスの第1パルスがセットされる(図12ステップS308〜S310)。なお、この無効噴射パルスが、それが立上るまでのオフ時間Taと、その立上りから立下りまでのいわゆるパルス幅に相当するオン時間Tbとの2つの時間としてセットされることは、先の「NE=7同期処理」のステップS207での処理と同様である。また、このステップS310において同無効噴射パルスの第1パルスがセットされることにより、そのパルスオフ時に、図8に例示した無効噴射パルスオフ割込み処理が起動されること、そしてその後、上記無効噴射実行フラグXTがオンに維持されている間は、上記オフ時間Taとオン時間Tbとの和を周期とする所定の時間毎に、同無効噴射パルスのセット、ひいては同パルスに基づく燃料噴射弁17の駆動が繰り返されるようになることも、先の制御の場合と同様である。
【0159】
一方、同時間同期制御において、上記ステップS310の処理として無効噴射パルスの第1パルスがセットされた後は、ステップS311の処理として、上記時間同期制御実行カウンタがインクリメントされた後、当該ルーチンが一旦終了される。なお、このステップS311の処理は、上記ステップS307の処理において肯定判断される都度、繰り返し実行される。
【0160】
他方、上記ステップS307の処理において否定判断されるときには、停止時無効噴射実行フラグXTがオフとされるとともに、上記時間同期制御実行カウンタがクリアされて、同ルーチンが一旦終了される(図12ステップS312及びず313)。
【0161】
このように、時間同期制御では、ディーゼル機関1の停止条件、すなわち上記(D1)または(D2)の条件の論理和条件が満たされることをもって、そのとき通常時無効噴射実行フラグXNがオンとなっていればこれを一旦オフとし、上記ディレイカウンタのカウンタ値をもとに遅延(ディレイ)処理を開始する。
【0162】
そして、この所定のディレイ期間を経た後、機関停止時における無効噴射制御の実行条件が満たされていれば、先のクランク角同期制御の場合と同様に、無効噴射パルスのセットを通じて、燃料噴射弁17の無効噴射制御モードでの駆動を開始する。
【0163】
ただし、この機関停止時における時間同期制御では、上記無効噴射制御の実行期間(能動期間)も上記時間同期制御実行カウンタのカウンタ値をもとに監視しており、たとえ上記(E2)の条件が満たされている場合であれ、同カウンタ値が上記所定の値ECaに達した時点で停止時無効噴射実行フラグXTはオフとされる。
【0164】
図13(a)〜(e)は、前記(ハ)の場合、すなわち燃料噴射弁17の通常の噴射制御から機関停止時の無効噴射制御に移行する場合について、この実施の形態の装置のこうした時間同期制御、及び無効噴射パルスオフ割込み処理に基づく停止時無効噴射実行フラグXT、時間同期制御前提フラグ、ディレイカウンタのカウンタ値、無効噴射/通常噴射パルス、時間同期制御実行カウンタのカウンタ値の推移をタイミングチャートとして示したものである。
【0165】
同図13に示されるように、通常の噴射制御モードにあっては前述同様、上記「NE=3同期処理」を通じて算出される燃料噴射期間Tq(噴射時期は別途に算出)に基づいて燃料噴射弁17が駆動されている(図13(d))。
【0166】
こうした状態において、タイミングt31での時間同期制御を通じて上記機関停止条件(上記(D1)または(D2)の論理和条件)の成立が判断されると、このタイミングt31をもって時間同期制御前提フラグがオンになり(図13(b))、併せて上記ディレイカウンタの計数(インクリメント)動作、すなわちディレイ処理が開始される(図13(c))。
【0167】
そして、時間同期制御の繰り返しの実行を通じて、その後、ディレイカウンタのカウンタ値が上記所定の値DCaに達するまでディレイ処理が継続され、このカウンタ値が所定の値DCaに達したところで(上記(E1)の条件が成立)、同ディレイ処理が終了される。なおこの間、燃料噴射弁17は、少なくとも無効噴射制御モードにて駆動されることはないため、たとえ通常の噴射制御に基づく燃料噴射弁17の最後の駆動が行われたとしても、この燃料噴射弁17に対する制御干渉が生じることはない。
【0168】
一方、こうしたディレイ処理の後、上記(E2)の条件が満たされていれば、タイミングt32での時間同期制御をもって上記無効噴射実行フラグXTがオンとされる(図13(c)及び(a))。また併せて、無効噴射パルスの第1パルスがセットされるとともに(図13(d))、上記時間同期制御実行カウンタの計数(インクリメント)動作が開始される(図13(e))。なおこの時点では、上記(E3)の条件は必ず満たされている。また、こうして無効噴射パルスの第1パルスがセットされることにより、その後は、上記(D1)または(D2)の論理和条件はもとより、上記(E1)〜(E3)の条件が全て満たされている限り、上記無効噴射パルスオフ割込み処理に基づく無効噴射パルスのセット、及びこのセットされる無効噴射パルスによる燃料噴射弁17の無効噴射制御モードでの駆動が繰り返される(図13(d))。
【0169】
そしてその後、たとえ上記(E2)の条件が満たされていても、上記時間同期制御実行カウンタのカウンタ値が上記所定の値ECaに達したことがタイミングt33での時間同期制御において確認された場合には、同タイミングt33にて上記無効噴射実行フラグXTがオフとされて(図13(e)及び(a))、当該無効噴射制御が終了される。なおこの場合も、同無効噴射実行フラグXTがオフとされる直前に立ち上がった無効噴射パルスのパルスオフに伴い、上記無効噴射パルスオフ割込み処理を通じて既に次の無効噴射パルスがセットされているため、該無効噴射実行フラグXTがオフとされる当該タイミングt33以後も、その最後の無効噴射パルスPLSrに基づく燃料噴射弁17の駆動は実行される。しかし、同タイミングt33以降、機関1が再始動されるまでは燃料噴射弁17が再駆動されることもないため、ここにおいて同燃料噴射弁17に対する制御干渉が生じることはない。
【0170】
また、図14(a)〜(e)は、前記(ニ)の場合、すなわち燃料噴射弁17の通常時無効噴射制御から機関停止時の無効噴射制御に移行する場合について、この実施の形態の装置のこうした時間同期制御、及び無効噴射パルスオフ割込み処理に基づく無効噴射実行フラグXN/XT、時間同期制御前提フラグ、ディレイカウンタのカウンタ値、無効噴射/通常噴射パルス、時間同期制御実行カウンタのカウンタ値の推移をタイミングチャートとして示したものである。なお、同図14(a)においては便宜上、通常時無効噴射実行フラグXN及び停止時無効噴射実行フラグXTを1つの時間軸上に一括して図示している。
【0171】
すなわちいま、通常時無効噴射実行フラグXNがオン状態にあることに基づき燃料噴射弁17が無効噴射制御モードにて駆動されているとするときに、タイミングt41での時間同期制御を通じて、上記機関停止条件(上記(D1)または(D2)の論理和条件)の成立が判断されると、このタイミングt41をもって時間同期制御前提フラグがオンになる(図14(b))。
【0172】
そしてこのときには、同タイミングt41をもって上記オン状態にある通常時無効噴射実行フラグXNがオフとされたうえで(図14(a))、上述したディレイカウンタの計数動作を通じたディレイ処理が開始され(図14(c))、その後、ディレイカウンタのカウンタ値が上記所定の値DCaに達したところで同ディレイ処理が終了される。
【0173】
またこのときには、上記無効噴射実行フラグXNがオフとされる直前に立ち上がった無効噴射パルスのパルスオフに伴い、上記無効噴射パルスオフ割込み処理を通じて既に次の無効噴射パルスがセットされている。このため、この無効噴射実行フラグXNがオフとされる当該タイミングt41以後も、その最後の無効噴射パルスPLSrに基づく燃料噴射弁17の駆動が実行される。
【0174】
ただし、この実施の形態の装置にあっては上述のように、同タイミングt41以降、少なくとも上記ディレイ処理が終了されるまでは、燃料噴射弁17に対する新たな駆動制御が開始されることはないため、ここにおいても、同燃料噴射弁17に対する制御干渉が生じることはない。
【0175】
そしてその後、タイミングt42での時間同期制御に基づき上記ディレイ処理が終了されたときに、上記(E2)の条件が満たされていれば、このタイミングt42をもって停止時無効噴射実行フラグXTがオンとされるとともに(図14(c)及び(a))、無効噴射パルスの第1パルスがセットされ(図14(d))、併せて上記時間同期制御実行カウンタの計数(インクリメント)動作が開始される(図14(e))。こうして無効噴射パルスの第1パルスがセットされることにより、その後は上述と同様、上記(D1)または(D2)の論理和条件はもとより、上記(E1)〜(E3)の条件が全て満たされている限り、無効噴射パルスオフ割込み処理に基づく無効噴射パルスのセット、及びこのセットされる無効噴射パルスによる燃料噴射弁17の無効噴射制御モードでの駆動が繰り返される(図14(d))。またその後、たとえ上記(E2)の条件が満たされていても、上記時間同期制御実行カウンタのカウンタ値が上記所定の値ECaに達したことがタイミングt43での時間同期制御において確認された場合には、同タイミングt43にて上記無効噴射実行フラグXTがオフとされ(図14(e)及び(a))、当該無効噴射制御が終了されることも、図13例示した制御の場合と同様である。
【0176】
同実施の形態の装置にあってはこのように、通常の噴射制御モードであれ、あるいは無効噴射制御モードであれ、それら制御モードから機関停止時の無効噴射制御モードへの移行時には、時間同期制御による上記ディレイ処理を通じてこの機関停止時の無効噴射制御の実行が所定期間だけ遅延される。このため、同無効噴射制御モードへの移行時であれ、燃料噴射弁17に対する制御干渉を避けて、確実に無効噴射制御による同燃料噴射弁17の駆動を実行することができるようになる。
【0177】
しかも同実施の形態の装置にあっては、この機関停止時における時間同期制御に際し、上記無効噴射制御の実行期間(能動期間)も時間同期制御実行カウンタのカウンタ値をもとに管理されることから、ディーゼル機関1が停止状態にあるときの無駄な無効噴射制御の実行も好適に低減されるようになる。
【0178】
そして、こうして機関停止時の無効噴射制御が終了された後は、あるいは時間同期制御の実行条件(E1)〜(E3)が満たされずに燃料噴射弁17の駆動が停止された後は、前述したように、リレー27がオフとされ、電子制御装置21への給電が停止される。
【0179】
以上説明したように、この実施の形態にかかる燃料圧力制御装置によれば、以下に列記するような多くの優れた効果を得ることができるようになる。
(1)無効噴射制御モードでの燃料噴射弁17の駆動が、ディーゼル機関1の運転条件等によらない所定の時間を周期として行われるため、コモンレール15内の余剰な燃料圧力を確実に低下せしめることが可能になる。なお、こうして同コモンレール15内の余剰な燃料圧力が確実に低下されることで、その圧力低下量の推定も容易となる。ちなみに、コモンレール15への燃料の圧送制御や当該高圧燃料噴射系10の診断等、他の制御や診断等が併せて行われるような環境にあっては、こうした圧力低下量の推定も重要な要素となる。
【0180】
(2)ディーゼル機関1の通常運転時には、そのクランク角を基準とするクランク角同期制御に基づいて、通常の噴射制御モードでの燃料噴射弁17の駆動をはじめ、無効噴射制御モードでの同燃料噴射弁17の最初の駆動時期を制御するようにした。このため、それら通常の噴射制御モードと無効噴射制御モードとの一元的な管理が可能となり、それら各制御モードでの燃料噴射弁17の制御干渉を避けるなど、その調停も容易となる。
【0181】
(3)上記クランク角同期制御にあっては、少なくとも通常の噴射制御モードでの噴射要求がないことを条件に、上記無効噴射制御モードでの燃料噴射弁17の最初の駆動を許可するようにしたことで、それら各制御モードでの燃料噴射弁17の制御干渉も確実に回避されるようになる。そしてこのため、通常の噴射制御モードから無効噴射制御モードへの移行に伴うエミッションの悪化や機関ダメージ等も好適に回避される。またその際、この無効噴射制御モードでの燃料噴射弁17の最初の駆動にかかる無効噴射パルスの上記オフ時間Taとして、ドライバ23が燃料噴射弁17を駆動するうえでの必要十分な蓄電が確保される時間を選んでいることから、少なくともこの無効噴射制御モードでの燃料噴射弁17の最初の駆動を確実なものとすることもできる。
【0182】
(4)同じく上記クランク角同期制御にあっては、燃料噴射弁17の無効噴射制御モードによる駆動から通常の噴射制御モードによる駆動への復帰時、通常の噴射制御モードによる燃料噴射弁17の駆動をその最初の駆動分だけ強制的に禁止するようにした。このため、無効噴射制御モードでの燃料噴射弁17の駆動が無効噴射パルスオフ割込みにて行われる場合であっても、それら各制御モードでの同燃料噴射弁17の制御干渉は確実に回避されるようになる。なお、基本的に上記禁止期間は任意であるが、同実施の形態の装置のように、無効噴射制御モードでの燃料噴射弁17の駆動周期がクランク角を基準とする同燃料噴射弁17の通常の噴射制御での駆動周期よりも十分に短い場合には、この禁止期間を最初の1駆動分だけとすることで、燃料噴射弁17の制御干渉を回避したうえで、無効噴射制御モードから通常の噴射制御モードへの最も円滑な復帰が可能となる。
【0183】
(5)ディーゼル機関1の停止条件の成立確認、並びに、この停止条件の成立に基づく機関停止時の無効噴射制御モードでの燃料噴射弁17の最初の駆動時期については、所定の時間を基準としてそのタイミングを別途に管理する時間同期制御に基づいて行うこととした。このため、同機関1の停止条件成立後は、その回転数等によらずに無効噴射制御モードでの燃料噴射弁17の駆動が確実に実行されるようになる。また、機関停止時にこうして無効噴射制御が実行されることで、機関1のレーシング中にIGスイッチ26のオフ操作が行われ、その後直ちに再始動操作が行われたような場合、あるいは走行中に機関1がストールし、その後直ちに再始動操作が行われたりしたような場合にも、コモンレール15内の燃料圧力を予め適正に低減しておくことが可能となる。なお、機関停止後、十分な時間放置される場合には、コモンレール15内の燃料圧力も十分低下するようにはなるが、このように急速な再始動操作が行われる場合には、前述のように、コモンレール15内の燃料圧力が機関始動時の目標燃料圧力まで下がらないことに起因する過大な圧力での燃料噴射が行われ、ひいては燃焼騒音の増大等を招く可能性が無視できない。
【0184】
(6)上記時間同期制御にあっては、そのディレイ処理を通じて無効噴射制御モードでの燃料噴射弁17の最初の駆動時期を所定期間遅延するようにしたことで、機関1の停止条件成立後は、それ以前に実行されていた制御との干渉を避けて、確実に無効噴射制御モードに移行することができるようになる。
【0185】
(7)同じく上記時間同期制御にあっては、機関停止時の無効噴射制御モードへの移行後、その実行期間(能動期間)も併せて管理し、これが所定の期間に達した場合には同無効噴射制御を停止するようにしたことで、機関1が停止された状態での無駄な無効噴射制御の実行等も好適に抑制されるようになる。
【0186】
なお、この発明にかかる高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置は上記実施の形態に限定されるものではなく、同実施の形態を適宜変更した例えば次のような形態として実現することもできる。
【0187】
・上記実施の形態にあっては、図12に例示した時間同期制御にあって、その無効噴射実行条件の成立の有無を判断するための要素の1つとして、
(E2)燃料圧力センサ35を通じて検出されるコモンレール15内の燃料圧力の値が無効噴射制御の実行が必要とされる所定の圧力値Pa以上となっていること(検出燃料圧力≧Pa)。
を設けたが、この所定の圧力値Paについては、これを前記水温センサ32を通じて検出される冷却水温の関数として可変設定する構成としてもよい。
【0188】
ちなみに、ディーゼル機関1の始動時には、例えば図15に例示する態様で、この冷却水温をパラメータとしてコモンレール15内の目標燃料圧力が算出される。一方、上述のように、当該機関1のレーシング中にIGスイッチ26のオフ操作が行われ、その後直ちに再始動操作が行われるような場合、あるいは走行中に同機関1がストールし、その後直ちに再始動操作が行われるような場合には、通常、それら機関停止時と機関始動時とで、冷却水温の値は同等の値に保持される。このため、機関停止条件が成立したときのコモンレール15内の燃料圧力を上記時間同期制御を通じた無効噴射制御によって制御する際、そのしきい値となる所定の圧力値Paを上記冷却水温の関数として可変設定するようにすれば、当該機関1の再始動時、「目標燃料圧力≒実際の燃料圧力」といった関係で同燃料圧力のフィードバック制御が開始されるようになる。すなわち、無駄な無効噴射制御の実行を低減したうえで、この機関再始動時の燃料圧力フィードバック制御にかかる収束性を大幅に高めることができるようになる。図16に、この所定の圧力値Paと上述した時間同期制御との関係を、先の図13、あるいは図14に対応するタイミングチャートとして参考までに示す。
【0189】
この図16において、図16(f)は、前記燃料圧力センサ35を通じて検出されるコモンレール15内の燃料圧力の推移、及びこの推移に対する上記所定の値Paの関係を示したものである。すなわち、図16(a)に示されるように、タイミングt51での時間同期制御を通じて停止時の無効噴射実行フラグXTがオンとされ、図16(d)に示される態様で、無効噴射制御が実行されるとすると、この間、前記サプライポンプ13を通じた燃料の圧送が行われない限り、同コモンレール15内の燃料圧力は、この無効噴射制御での燃料噴射弁17の駆動に応じて、同図16(f)に例示する態様で低下する。そして、その検出される燃料圧力の値が、タイミングt52での時間同期制御を通じて上記所定の値Paに達したことが判断されれば、たとえそのとき、上記時間同期制御実行カウンタのカウンタ値がその所定の値ECaに達していなくとも、同タイミングt52をもって上記無効噴射実行フラグXTがオフとされる(図16(a))。もっとも、時間同期制御実行カウンタのカウンタ値が所定の値ECaに達するタイミングt53がこのタイミングt52よりも早ければその限りではなく、先の図13、あるいは図14に例示したように、同カウンタ値が所定の値ECaに達したタイミングをもって上記無効噴射実行フラグXTがオフとされる。
【0190】
・また、上記(E2)の条件での所定の圧力値Paについては、これを経験等に基づく所定の目標燃料圧力に対応した値に設定することもできる。この場合にも、機関再始動時にコモンレール15内の燃料圧力が異常に高い状態にあることを好適に防止することができる。
【0191】
・また、上記実施の形態にあっては、同じく図12に例示した時間同期制御での無効噴射実行条件の成立の有無を判断するための要素の1つとして、
(E3)時間同期制御実行カウンタのカウンタ値が、機関1の停止時における無効噴射制御の必要以上の実行期間に対応して設定された所定の値ECa以下であること(時間同期制御実行カウンタ値≦ECa)。
を設けたが、この所定の値ECaについては、これを前記回転数センサ33を通じて検出される機関回転数(NE)のパラメータとして可変設定する構成としてもよい。
【0192】
ちなみに、ディーゼル機関1の運転中であれば、上記無効噴射制御モードでの燃料噴射弁17の作動音も乗員にとって気になることはないが、同機関1の停止条件が成立した後、その運転が停止されるときに同無効噴射制御モードでの燃料噴射弁17の作動音が残る場合には、そうした作動音が乗員にとっては違和感となる。この点、上記所定の値ECaを機関回転数(NE)のパラメータとして可変設定するようにすれば、例えば同機関1の回転数がある回転数以下となることをもって該無効噴射制御モードでのそれ以降の燃料噴射弁17の駆動を禁止することができ、ひいてはこうした違和感を排除することができるようになる。
【0193】
・一方、上記実施の形態にあっては、そのクランク角同期制御としての「NE=7同期処理」を通じて通常時無効噴射実行フラグXNのオンと無効噴射パルスの第1パルスのセットとを同時に行うこととしたが、必ずしもこれら2つの処理を同時に行う必要はない。例えば、同「NE=7同期処理」を通じて通常時無効噴射実行フラグXNをオンとした後、次の「NE=8」等に同期して、無効噴射パルスの第1パルスをセットするようにしてもよい。この場合であっても、無効噴射制御モードへの移行時、燃料噴射弁17の制御干渉を避けて、確実に、その最初の駆動を実行することができる。
【0194】
・また、上記クランク角同期処理としての「NE=3同期処理」や「NE=7同期処理」等、その処理タイミングの設定も一例にすぎない。要は、適用対象となるディーゼル機関システムのクランク角検出態様に応じて、ピストン上死点(TDC)以前の適宜のタイミングをもとに、それら対応する処理が行われるものであればよい。
【0195】
・他方、上記実施の形態にあっては、燃料噴射弁17の無効噴射制御モードでの駆動に際し、その無効噴射パルスの第1パルスのみをクランク角同期制御、あるいは時間同期制御を通じてセットした後、同無効噴射パルスの第2パルス以降は、図8に例示した無効噴射パルスオフ割込み処理を通じて順次セットすることとしたが、こうした無効噴射パルスの生成態様も、同実施の形態に限られることなく任意である。要は、上記無効噴射実行フラグXNあるいはXTがオンに維持される所定の条件下で、所定の時間を周期として無効噴射期間内だけ立ち上がるパルスが生成されるものであればよく、論理素子を使った周知のパルス生成回路等も適宜採用することができる。
【0196】
・また、それら無効噴射パルスの周期時間が一定である必要もない。同パルスの繰り返し周期となる時間は、例えばそのときの燃料圧力や燃料温度等、あるいはその他の要求等に応じた可変の時間として設定してもよい。もっとも、この周期時間が一定の時間として設定される場合には、上記コモンレール15内の燃料圧力低下にかかる応答性も、基本的には常に一定となり、上述した圧力低下量の推定等もさらに容易となる。
【0197】
・また、上記実施の形態にあっては、調停を行う手段が、クランク角同期制御及び時間同期制御をそれぞれ通じて、
(a)通常の噴射制御モードから無効噴射制御モードへの移行時には、噴射要求が存在しないことを最低限の条件として無効噴射パルスをセットする。
【0198】
(b)無効噴射制御モードから通常の噴射制御モードへの復帰時には、該復帰にかかる最初の燃料噴射を禁止する。
(c)機関停止時の無効噴射制御モードへの移行時には、同停止時の無効噴射制御モードでの最初の無効噴射パルスのセットを所定期間だけ遅延する。
等々の処理を行うものとしたが、その構成も、同実施の形態のものには限定されない。この調停を行う手段として、要は、無効噴射制御による燃料噴射弁17の駆動と無効噴射制御によらない同燃料噴射弁17の通常の駆動とが干渉することのないようこれを調停し得るものであればよい。これにより、通常の燃料噴射が行われない限られた期間を利用して無効噴射制御による燃料噴射弁17の駆動が行われる場合であれ、その実行を確実ならしめ、ひいてはコモンレール15内の余剰な燃料圧力を確実に低下せしめることが可能となる。特に、上記各移行時に無効噴射制御と通常の噴射制御とのいずれの制御も行われない期間をそれら制御要求の中で設定制御するものとして同調停手段を構成することとすれば、こうして無効噴射制御による燃料噴射弁17の駆動が併用される場合であれ、燃料噴射弁17の駆動制御にかかる信頼性は向上される。
【0199】
・また、燃料噴射弁17の無効噴射制御を行うための構造も、図2に例示したものに限られることなく任意である。同燃料噴射弁17として要は、これが無効噴射期間内で駆動されるときには、コモンレール15内の燃料圧力の排圧のみを行う機能、構造を有するものであればよい。
【0200】
・そして、この発明で燃料圧力の制御対象とする高圧燃料噴射系もディーゼル機関システムのコモンレールを中心とする高圧燃料噴射系には限られない。他に例えば、ガソリン機関等であれ、筒内直接噴射方式を採用するなど、畜圧配管に蓄えられた高圧燃料を同配管に接続された燃料噴射弁の駆動を通じて内燃機関に噴射供給する高圧燃料噴射系であれば、上記実施の形態に準じたかたちで、当該燃料圧力制御装置を適用することはできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置の一実施の形態についてその全体の構成を示す略図及びブロック図。
【図2】図1に例示する燃料噴射弁の内部構造を模式的に示す断面図。
【図3】図1に例示する回転数センサの出力態様をクランクシャフトの回転位相との対応のもとに模式的に示すタイムチャート。
【図4】同実施の形態の装置の調停、遅延処理の実行態様を各種状態別に一覧する状態遷移図。
【図5】図4に例示する状態遷移図に対応して同実施の形態の装置が実行する制御の全体の流れを示すフローチャート。
【図6】図4に例示する状態遷移図に対応して同実施の形態の装置が実行する制御の全体の流れを示すフローチャート。
【図7】同実施の形態の装置のクランク角同期制御(「NE=3同期処理」)についてその処理手順を示すフローチャート。
【図8】同実施の形態の装置の無効噴射パルスオフ割込み処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【図9】同実施の形態の装置のクランク角同期制御(「NE=7同期処理」)についてその処理手順を示すフローチャート。
【図10】同実施の形態の装置のクランク角同期制御にかかる制御態様を示すタイミングチャート。
【図11】同実施の形態の装置のクランク角同期制御にかかる制御態様を示すタイミングチャート。
【図12】同実施の形態の装置の時間同期制御についてその処理手順を示すフローチャート。
【図13】同実施の形態の装置の時間同期制御にかかる制御態様を示すタイミングチャート。
【図14】同実施の形態の装置の時間同期制御にかかる制御態様を示すタイミングチャート。
【図15】機関始動時の目標燃料圧力の算出態様の一例を示すグラフ。
【図16】上記時間同期制御の検出燃料圧力に基づく制御態様を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
1…ディーゼル機関、10…高圧燃料噴射系、11…燃料ポンプ、12、14、16…供給配管、13…サプライポンプ、15…コモンレール、17…燃料噴射弁、18、18a、18b、18c…リターン配管、20…制御系、21…電子制御装置、22…マイクロコンピュータ、23…ドライバ、24…電磁弁、25…圧力制御弁、26…IGスイッチ、27…リレー、30…検出系、31…アクセルセンサ、32…水温センサ、33…回転数センサ、34…気筒判別センサ、35…燃料圧力センサ。
Claims (11)
- 畜圧配管に蓄えられ、同配管に接続された燃料噴射弁の駆動を通じて内燃機関に噴射供給される高圧燃料の燃料圧力を制御する高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置であって、
前記燃料噴射弁をその無効噴射期間内で駆動することにより、前記燃料圧力の排圧のみを行う無効噴射制御手段と、
前記燃料噴射弁をその無効噴射期間を超えて駆動することにより、高圧燃料の噴射供給を行う通常噴射制御手段と、
前記内燃機関の停止条件成立前に前記通常噴射制御手段による燃料噴射弁の通常の駆動制御が行われていたときには、前記停止条件の成立に応じて、所定の時間に同期して前記無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動制御を開始するとともに、その無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動時期と前記通常噴射制御手段による前記燃料噴射弁の通常の駆動時期とが重ならないように同無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最初の駆動時期を別途に制御する時間同期制御手段を備えて、燃料噴射弁の駆動時期の重なりを防止する調停手段と、
を備えることを特徴とする高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置。 - 請求項1に記載の高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置において、
前記時間同期制御手段は、前記内燃機関の停止条件成立に基づき設定する前記無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最初の駆動時期を所定期間遅延する
ことを特徴とする高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置。 - 請求項1または2記載の高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置において、
前記時間同期制御手段は、前記無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動制御の実行期間を併せて設定制御する
ことを特徴とする高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置。 - 請求項3記載の高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置において、
前記時間同期制御手段は、前記無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動制御の実行期間を、前記内燃機関の冷却水温度、及び前記蓄圧配管内の目標燃料圧力のいずれかに基づき設定する
ことを特徴とする高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置。 - 請求項3または4記載の高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置において、
前記時間同期制御手段は、前記無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動制御の実行期間を、前記内燃機関の回転数に基づき設定する
ことを特徴とする高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置。 - 前記調停手段は、前記無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動制御と前記無効噴射制御手段によらない燃料噴射弁の通常の駆動制御とのいずれの制御も行われない期間をそれら制御要求の中で設定制御するものである
請求項1〜5のいずれかに記載の高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置。 - 請求項1〜6のいずれかに記載の高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置において、
前記調停手段は、前記内燃機関のクランク角を基準として前記無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最初の駆動時期、及び前記無効噴射制御手段によらない同燃料噴射弁の通常の駆動時期を制御するクランク角同期制御手段を備えて構成される
ことを特徴とする高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置。 - 請求項7記載の高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置において、
前記クランク角同期制御手段は、前記無効噴射制御手段によらない燃料噴射弁の通常の駆動要求がないことを条件に前記無効噴射制御手段による燃料噴射弁の最初の駆動を許可する
ことを特徴とする高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置。 - 請求項7記載の高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置において、
前記クランク角同期制御手段は、前記無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動制御状態から同無効噴射制御手段によらない燃料噴射弁の通常の駆動制御状態への移行時、該無効噴射制御手段によらない燃料噴射弁の通常の駆動制御を所定期間禁止する
ことを特徴とする高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置。 - 請求項1〜9のいずれかに記載の高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置に おいて、
前記無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動周期を所定の時間に設定する無効噴射周期設定手段をさらに備える
ことを特徴とする高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置。 - 前記無効噴射周期設定手段は、前記無効噴射制御手段による燃料噴射弁の駆動周期を一定の時間に設定するものである
請求項10記載の高圧燃料噴射系の燃料圧力制御装置。
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