JP4116758B2 - 斜板式ピストンポンプ・モータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、斜板を静圧軸受を介して傾転可能に支持するピストンポンプ・モータに関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来、この種の斜板式ピストンポンプとして、図12〜図14に示すように、斜板7の背面に円柱面状をした支持軸11が形成され、支持軸11に開口するポケット21が形成され、このポケット21に圧力導入通路22を介して図示しないシリンダ内で加圧された作動油が導かれ、支持軸11を回動可能に浮遊支持する静圧軸受を構成するものがある。ポケット21に導かれる油圧をピストン荷重に対抗させるため、軸受の面圧が最も高くなる部位にポケット21が設けられている。
【0003】
なお、支持軸11が回動して斜板7の傾転角を変えることにより、図示しないシリンダブロックに配置した複数のピストンの有効ストロークが変化し、ピストンポンプの場合、1回転当たりのポンプ押しのけ容積が変化する。
【0004】
ところで、図15は、ポケットを備えない軸受12の面圧分布を示すものであるが、この軸受面圧はピストン荷重の作用点を中心に次第に高くなっている。
【0005】
図16は、ポケット21を備える軸受12の面圧分布を示すものであるが、軸受12の面圧が最も高くなる部位の軸受面積がポケット21によって削減されるため、軸受面圧が局部的に高くなり、軸受12の耐摩耗性が低下する可能性がある。
【0006】
また、図17〜図19に示す従来例において、導油溝31は周方向に延びる周溝部32,33と、各周溝部32,33の両端に接続して軸方向に延びる複数の端溝部34,35とを有し、各周溝部32,33と各端溝部34,35とによって圧力導入通路22の開口端を囲む形状をしている。
【0007】
圧力導入通路22の開口端はその一部が周溝部33に開口し、圧力導入通路22から導かれる加圧作動油が周溝部33へと直接流入するようになっている。
【0008】
各周溝部32,33と端溝部34,35はそれぞれの断面形状が、図20、図21に示すように、半円形に形成される。
【0009】
この場合、容積室5で加圧された作動油が圧力導入通路22を介して導油溝31に導かれ、支持軸11を浮遊支持する。導油溝31は周溝部32,33と端溝部34,35との間で圧力導入通路22を囲む形状のため、導油溝31の内側は同圧となり、ピストン荷重に対抗して十分な浮遊支持力を確保できる。
【0010】
図22は、導油溝31を備える軸受12の面圧分布を示すものであるが、導油溝31に導かれる加圧作動油がピストン荷重に対抗して支持軸11を浮遊支持するため、軸受12の面圧を低く抑えられる。
【0011】
支持軸11のピストン荷重の作用点を含む中心領域は周溝部32,33が開口しているが、周方向に延びる周溝部32,33によって軸受面積が大きく削減されることなく、軸受12の面圧を低く抑えられ、軸受12の耐摩耗性を確保できる。
【0012】
軸受12は軸方向に延びる端溝部34,35によって軸受面積が大きく削減されるものの、端溝部34,35が形成される部位はピストン荷重の作用点から離れているため、この部位でも軸受12の面圧を低く抑えられ、軸受12の耐摩耗性を確保できる。
【0013】
しかしながら、端溝部34,35の断面形状を半円形に形成しているため、支持軸11と軸受12の間を周方向に流れる作動油が、図23に矢印で示すように、端溝部35の断面に沿って流れ、軸受面14に対して垂直に近い向きで当たり、樹脂層からなる軸受面14にエロージョンが発生する可能性があった。このエロージョンにより樹脂層が剥離して作動油が洩れ出すと、導油溝31の内側の圧力が低下し、軸受12の面圧上昇を引き起こす。
【0014】
なお、端溝部34,35の断面形状をV字形、U字形に形成した場合も、同様に軸受面14にエロージョンが発生する可能性があった。
【0015】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、斜板式ピストンポンプ・モータにおいて、軸受の耐久性を改善することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、軸と一体に回転する複数のシリンダと、各シリンダに挿入されるピストンと、ピストンの先端側が追従する斜板と、斜板の支持軸を回動可能に支持する軸受と、支持軸と軸受の少なくとも一方に開口する導油溝と、加圧流体を導油溝に導く圧力導入通路とを備え、導油溝は周方向に延びる複数の周溝部と、各周溝部の両端に接続して軸方向に延びる複数の端溝部とを有し、各周溝部と各端溝部とによって圧力導入通路の開口端を囲む斜板式ピストンポンプ・モータに適用する。
【0017】
そして、端溝部は周溝部の開口端から離れるのにしたがってその断面が次第に小さくなる緩衝用空間を画成するものとした。
【0018】
第2の発明は、第1の発明において、緩衝用空間はクサビ状の断面形状を持つものとした。
【0019】
第3の発明は、第2の発明において、端溝部はクサビ状の緩衝用空間を画成する平面状の溝側面を有し、溝側面を斜板の摺接面に対して略平行に形成するものとした。
【0020】
第4の発明は、第2または第3の発明において、端溝部はクサビ状の緩衝用空間を画成する平面状の溝側面を有し、溝側面の開口端側に延びる延長線が斜板の摺接面の延長面に交差するように形成するものとした。
【0021】
第5の発明は、第1から第4のいずれか一つの発明において、圧力導入通路をピストンおよび斜板を貫通して形成するものとした。
【0022】
第6の発明は、第1から第5のいずれか一つの発明において、軸受の軸受面を樹脂によって形成するものとした。
【0023】
【発明の作用および効果】
第1の発明において、端溝部は周端溝から離れるのにしたがってその断面が次第に小さくなる緩衝用空間を画成するため、支持軸と軸受の間を周方向に流れる作動流体が端溝部を介して軸受面に衝突する角度を小さくし、軸受面にエロージョンが発生することを防止できる。したがって、樹脂層が剥離して作動流体が洩れ出すことを回避し、導油溝の内側の圧力を維持し、軸受の耐久性を確保できる。
【0024】
第2の発明において、緩衝用空間はクサビ状の断面形状を持つため、その加工が容易になる。
【0025】
第3、第4の発明において、支持軸と軸受の間を周方向に流れる作動流体が、平面状の溝側面に沿って流れることにより、軸受面に対する衝突角を小さくし、エロージョンの防止効果を高められる。
【0026】
第5の発明において、圧力導入通路を形成する加工が少なくて済み、製品のコストダウンがはかれる。
【0027】
第6の発明において、ブッシュの軸受面を樹脂で形成することにより、斜板の振動を抑えられ、耐久性を高められ、かつ、騒音を低減できる。
【0028】
【発明の実施の形態】
まず、図1に本発明が適用可能な斜板式ピストンポンプの一例を示す。
【0029】
これについて説明すると、ピストンポンプ1は図示しない動力源から回転が伝達される主軸2と、主軸2と一体に回転するシリンダブロック3とを備え、シリンダブロック3に複数のシリンダ4が形成され、各シリンダ4にはそれぞれ容積室5を画成するピストン6が挿入される。各シリンダ4は主軸2と平行、かつ主軸2を中心とする略同一円周(P.C.D)上に並んで配置される。
【0030】
各ピストン6の先端側が追従する斜板7を備える。各ピストン6は、各シリンダ4から突出するその先端部が球面座10およびシュー9を介して斜板7の摺接面27に接触し、シリンダブロック3の回転に伴い斜板7の傾転角度に応じたストローク量で往復動する。
【0031】
シリンダブロック3の端面が摺接するバルブプレート8を備える。バルブプレート8は各ピストン6の往復動に伴って各シリンダ4に作動油を出入りさせるポートが形成され、各容積室5に対する作動油の吐出と吸込を制御する。
【0032】
斜板7はその背面に円柱面状をした一対の支持軸11を有し、各支持軸11が軸受12を介して回動可能に支持される。
【0033】
軸受12には半円筒形のブッシュ13が介装され、支持軸11に摺接する軸受面14がPTFE等の樹脂層によって形成される。軸受面14が樹脂層によって形成されることにより、斜板7の振動を抑えられ、耐久性を高められ、かつ、騒音も低減できる。
【0034】
支持軸11には導油溝31が開口し、この導油溝31には圧力導入通路22を介して各容積室5で加圧された作動油が導かれる。導油溝31はこれに導かれる油圧をピストン荷重に対抗させるため、軸受12の面圧が最も高くなる部位を中心に設けられる。
【0035】
圧力導入通路22は、球面座10を貫通する通孔23と、シュー9を貫通する通孔24と、斜板7を貫通する通孔25およびオリフィス26によって構成される。シュー9が斜板7上を摺動することにより、シュー9の通孔24が斜板7のオリフィス26に連通し、各容積室5で加圧された作動油が導油溝31に間欠的に導かれる。これにより、圧力導入通路22をハウジング側に形成する必要がないため、圧力導入通路22を形成するための加工が少なくて済み、製品のコストダウンがはかれる。
【0036】
斜板7はスプリング15によってその傾転角度を最大とする方向に付勢される。スプリング15に抗して斜板7を動かす油圧ピストン16を備える。油圧ピストン16は通路17を介してピストンポンプ1の吐出圧が導かれる。ピストンポンプ1の吐出圧が上昇するのにしたがって斜板7の傾転角度が減少し、ポンプ押しのけ容積が減少する。
【0037】
図2〜図4は本発明の実施形態を示す斜板7の三面図であるが、導油溝31は周方向に延びる周溝部32,33と、各周溝部32,33の両端に接続して軸方向に延びる複数の端溝部34,35とを有し、各周溝部32,33と各端溝部34,35とによって圧力導入通路22の開口端を囲む形状とする。
【0038】
圧力導入通路22の開口端はその一部が周溝部33に開口し、圧力導入通路22から導かれる加圧作動油が周溝部33へと直接流入するようになっている。
【0039】
各周溝部32,33はそれぞれの断面形状が、図6に示すように、半円形に形成されるが、これに限らずV字形、U字形に形成してもよい。
【0040】
端溝部34,35はそれぞれの断面形状が、図5に示すように、V字形に形成され、周溝部32,33の開口端から離れるのにしたがってその断面が次第に小さくなる緩衝用空間30を画成するものとする。
【0041】
端溝部34は平面状の溝側面36,38を有し、溝側面36が軸受面14との間に断面クサビ状の緩衝用空間30を画成する。同じく、端溝部35は平面状の溝側面37,39を有し、溝側面37が軸受面14との間に断面クサビ状の緩衝用空間30を画成する。
【0042】
本実施の形態では、溝側面36,37が斜板7の摺接面27に対して略平行に形成され、軸受面14との間に鋭角の断面を画成する。
【0043】
圧力導入通路22の開口端はその一部が周溝部33と端溝部34に渡って開口し、圧力導入通路22から導かれる加圧作動油が周溝部33と端溝部34へと直接流入するようになっている。
【0044】
以上のように構成され、図7は、導油溝31を備える軸受12の面圧分布を示すものであるが、導油溝31に導かれる加圧作動油がピストン荷重に対抗して支持軸11を浮遊支持するため、軸受12の面圧を低く抑えられる。
【0045】
支持軸11のピストン荷重の作用点を含む中心領域は周溝部32,33が開口しているが、周方向に延びる周溝部32,33によって軸受面積が大きく削減されることなく、軸受12の面圧を低く抑えられ、軸受12の耐摩耗性を確保できる。
【0046】
軸受12は軸方向に延びる端溝部34,35によって軸受面積が大きく削減されるものの、端溝部34,35が形成される部位はピストン荷重の作用点から離れているため、この部位でも軸受12の面圧を低く抑えられ、軸受12の耐摩耗性を確保できる。
【0047】
そして、端溝部34,35の断面をクサビ状に形成しているため、支持軸11と軸受12の間を周方向に流れる作動油が、図8に矢印で示すように、溝側面37に沿って流れ、軸受面14に対する衝突角を小さくし、樹脂層からなる軸受面14にエロージョンが発生することを防止できる。したがって、樹脂層が剥離して作動油が洩れ出すことを回避し、導油溝31の内側の圧力を維持し、軸受12の耐久性を確保できる。
【0048】
他の実施の形態として、図9に示すように、端溝部34,35の溝側面36,37の開口端側に延びる延長線Gが斜板7の摺接面27の延長面Hに交差するように形成してもよい。
【0049】
この場合も、支持軸11と軸受12の間を周方向に流れる作動油が溝側面37に沿って流れるが、軸受面14に対する衝突角をさらに小さくし、エロージョンの防止効果を高められる。
【0050】
さらに他の実施の形態として、圧力導入通路22を軸受12を貫通して形成してもよい。この場合、圧力導入通路22から加圧作動油が軸受面14へと連続的に導かれ、導油溝31内の圧力変動を抑えられ、耐久性を高められる。
【0051】
前記各実施の形態では作動油を吐出するシリンダ4が並ぶ領域の背後に位置した一方の軸部11にのみ導油溝31を形成しているが、斜板7の傾転角が変わって作動油を吐出するシリンダ4の領域が移る構成の場合は、図10、図11に示すように、両方の軸部11に導油溝31を形成してもよい。
【0052】
前記実施の形態では、緩衝用空間30を画成する溝側面37を平面状に形成したが、これに限らず溝側面37を凹状または凸状に湾曲する曲面に形成してもよい。なお、溝側面37を平面状に形成することにより、加工が容易になる。
【0053】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、ピストンモータにも適用でき、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示すピストンポンプの断面図。
【図2】同じく斜板の正面図。
【図3】同じく斜板の側面図。
【図4】同じく斜板の平面図。
【図5】同じく図4のE−E線に沿う断面図。
【図6】同じく図4のF−F線に沿う断面図。
【図7】同じく軸受の面圧分布状態を示す図。
【図8】同じく端溝部における作動油の流れる様子を示す図。
【図9】他の実施の形態を示す斜板の側面図。
【図10】さらに他の実施の形態を示す斜板の正面図。
【図11】同じく斜板の平面図。
【図12】従来例を示す斜板の正面図。
【図13】同じく斜板の側面図。
【図14】同じく斜板の平面図。
【図15】比較例における軸受の面圧分布状態を示す図。
【図16】同じく軸受の面圧分布状態を示す図。
【図17】従来例を示す斜板の正面図。
【図18】同じく斜板の側面図。
【図19】同じく斜板の平面図。
【図20】同じく図11のE−E線に沿う断面図。
【図21】同じく図11のF−F線に沿う断面図。
【図22】同じく軸受の面圧分布状態を示す図。
【図23】同じく端溝部における作動油の流れる様子を示す図。
【符号の説明】
1 ピストンポンプ
2 主軸
3 シリンダブロック
4 シリンダ
6 ピストン
7 斜板
9 シュー
11 軸部
12 軸受
13 軸受ブッシュ
14 軸受面
22 圧力導入通路
27 摺接面
31 導油溝
30 緩衝用空間
32,33 周溝部
34,35 端溝部
36,37 溝側面
Claims (6)
- 主軸と一体に回転する複数のシリンダと、
前記各シリンダに挿入されるピストンと、
前記ピストンの先端側が追従する斜板と、
前記斜板の支持軸を回動可能に支持する軸受と、
前記支持軸と前記軸受の少なくとも一方に開口する導油溝と、
加圧流体を前記導油溝に導く圧力導入通路とを備え、
前記導油溝は周方向に延びる複数の周溝部と、
前記各周溝部の両端に接続して軸方向に延びる複数の端溝部とを有し、
前記各周溝部と前記各端溝部とによって前記圧力導入通路の開口端を囲む斜板式ピストンポンプ・モータにおいて、
前記端溝部は前記周溝部の開口端から離れるのにしたがってその断面が次第に小さくなる緩衝用空間を画成したことを特徴とする斜板式ピストンポンプ・モータ。 - 前記緩衝用空間はクサビ状の断面形状を持つことを特徴とする請求項1に記載の斜板式ピストンポンプ・モータ。
- 前記端溝部はクサビ状の緩衝用空間を画成する平面状の溝側面を有し、
前記溝側面を前記斜板の摺接面に対して略平行に形成したことを特徴とする請求項2に記載の斜板式ピストンポンプ・モータ。 - 前記端溝部はクサビ状の緩衝用空間を画成する平面状の溝側面を有し、
前記溝側面の開口端側に延びる延長線が前記斜板の摺接面の延長面に交差するように形成したことを特徴とする請求項2または3に記載の斜板式ピストンポンプ・モータ。 - 前記圧力導入通路を前記ピストンおよび前記斜板を貫通して形成したことを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の斜板式ピストンポンプ・モータ。
- 前記軸受の軸受面を樹脂によって形成したことを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の斜板式ピストンポンプ・モータ。
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