JP4106449B2 - 汚泥を用いたセメントの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、汚泥、特に下水処理施設で発生する下水汚泥や糞尿処理施設で発生する糞尿汚泥などの有機質を含有する汚泥のセメント化処理技術に関する。
【0002】
【従来技術、及び発明が解決しようとする課題】
下水汚泥のような汚泥のセメント製造工場内での処理技術として幾つかの提案がされている。
例えば、特開平3−98700号公報では、下水汚泥と生石灰類とを混合して当該下水汚泥の脱水を行う脱水工程と、上記脱水工程で生成する固形分をセメントキルン中に投入して他のセメント原料と共に焼成するセメントクリンカー焼成工程と、上記脱水工程で発生するガスをセメントクリンカー焼成工程に導入するガス処理工程とを含むことを特徴とする下水汚泥の資源化システムが提案されている。
【0003】
又、特開平8−276199号公報では、含水汚泥を、直接、乾式キルンの窯尻部分または仮焼炉に導入して焼却することを特徴とする汚泥処理方法が提案されている。
又、特開平10−192896号公報では、有機汚泥を貯留する貯留タンクと、該貯留タンク内の有機汚泥を、セメント製造プラントの焼成工程にある、セメント原料仮焼用のプレヒーターの下部から上記セメント原料焼成用の乾式セメントキルンの窯尻部までの間に導入する汚泥導入装置とを備えた汚泥処理設備が提案されている。
【0004】
又、特開平10−194800号公報では、プレヒーターにより仮焼されたセメント原料を、乾式セメントキルンで焼成するときに発生する排ガス中のNOx 低減方法において、上記プレヒーターの下部から上記乾式セメントキルンの窯尻部までの間に、アンモニアを含む有機汚泥を導入するセメントキルン排ガスのNOx 低減方法が提案されている。
【0005】
上記特開平3−98700号公報提案の技術は、下水汚泥をセメントキルン中に投入して他のセメント原料と共に焼成するに先立って、下水汚泥に生石灰類を混合して当該下水汚泥の脱水を行うものであるのに対して、特開平8−276199号公報、特開平10−192896号公報、特開平10−194800号公報提案の技術は、下水汚泥を、前処理することなく、そのまま乾式キルンの窯尻部分に投入して処理しようとするものである。
【0006】
前者の技術は、下水汚泥を生石灰類と混合処理することから、下水汚泥の脱水・滅菌・悪臭低減・ハンドリング性改善などの有用な作用が予想されるが、高価な生石灰を用いることから、処理費用が高く付く。又、セメント原料として利用する場合に、なんらかの成分調整を行う必要がある等の弱点も想定される。
又、後者の技術は、下水汚泥を何らの事前処理をせぬまま、乾式キルンの窯尻部等に投入・焼却するので、設備・処理の費用はより安価と考えられるが、既に成分が調整されたセメント原料に追加する形で単独に集中して投入する為、下水汚泥の成分及び水分のバラツキがセメント製造の中間製品であるセメントクリンカ成分のバラツキを助長する恐れがある。これを避ける為には、分散して投入するなどの方法が考えられるが、一般に下水汚泥は粘性が高いので、噴射装置などの特殊な装置が必要になる欠点がある。更には、ハンドリング性が悪いなどの取扱性に問題もある。これらの他にも、窯尻部分に固結が生じ易くなり、キルンの安定運転に支障を来す可能性が高い。
【0007】
従って、本発明が解決しようとする第1の課題は、汚泥を有効活用できるセメント製造工場内での汚泥処理技術を提供することである。
本発明が解決しようとする第2の課題は、汚泥をセメント原料の一部として有効活用した際、得られるセメント製品の品質及びキルンの安定運転に大きな問題を引き起こすことが無い汚泥処理技術を提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとする第3の課題は、汚泥をセメント原料の一部として有効活用する際の取扱性に優れた汚泥処理技術を提供することである。
本発明が解決しようとする第4の課題は、汚泥を処理する際の費用が低廉な汚泥処理技術を提供することである。
本発明が解決しようとする第5の課題は、汚泥を処理する際に発生する各種ガスをも有効活用する汚泥処理技術を提供することである。
【0009】
本発明が解決しようとする第6の課題は、汚泥を処理するに際して周囲に悪臭を撒き散らすことがない汚泥処理技術を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記第1〜第4及び第6の課題は、内部に汚泥を入れた密閉式コンテナをセメント製造工場内に搬入する搬入工程と、
前記搬入された密閉式コンテナに一方が汚泥受入タンクに接続された移送管の他方を接続する接続工程と、
前記接続工程の後、密閉式コンテナ内の汚泥を前記汚泥受入タンク内に前記移送管を介して移送する移送工程と、
セメント原料を加熱して得られる生石灰を含む中間焼成材を、該セメント製造工場におけるセメント焼成系のサスペンションプレヒーターから分取する分取工程と、
前記分取工程を経て分取された中間焼成材を混合機に移送する移送工程と、
前記汚泥受入タンク内の汚泥を前記混合機に移送する移送工程と、
前記混合機に移送された前記汚泥と前記中間焼成材とを混合する混合工程と、
前記混合工程によって混合された混合物を該セメント製造工場におけるセメント焼成系に導入する導入工程
とを有することを特徴とする汚泥を用いたセメントの製造方法によって解決される。
【0011】
特に、内部に汚泥を入れた密閉式コンテナをセメント製造工場内に搬入する搬入工程と、
前記搬入された密閉式コンテナに一方が汚泥受入タンクに接続された移送管の他方を接続する接続工程と、
前記接続工程の後、密閉式コンテナ内の汚泥を前記汚泥受入タンク内に前記移送管を介して移送する移送工程と、
セメント原料を加熱して得られる生石灰を含む中間焼成材を、該セメント製造工場におけるセメント焼成系のサスペンションプレヒーターから分取する分取工程と、
前記分取工程を経て分取された中間焼成材を加熱された混合機に移送する移送工程と、
前記汚泥受入タンク内の汚泥を前記加熱された混合機に移送する移送工程と、
前記加熱された混合機に移送された前記汚泥と前記中間焼成材とを加熱・混合する混合工程と、
前記混合工程によって加熱・混合された混合物を該セメント製造工場におけるセメント焼成系に導入する導入工程
とを有することを特徴とする汚泥を用いたセメントの製造方法によって解決される。
【0012】
前記第5の課題は、上記いずれかの汚泥を用いたセメントの製造方法に、汚泥からの発生ガスをセメントクリンカー焼成工程における温度が700℃以上の部位に導入する工程を加えることによって解決される。
【0013】
又、サスペンションプレヒーター及びキルンを備えたセメントクリンカー焼成装置において、
セメント原料を加熱して得られる生石灰を含む中間焼成材を、前記サスペンションプレヒーターから分取する分取手段と、
混合手段と、
前記分取手段により分取された生石灰を含む前記中間焼成材を前記混合手段に移送する第1の移送手段と、
該セメント製造工場に搬入された密閉式コンテナ内の汚泥をタンクに移送する第2の移送手段と、
前記タンク内の汚泥を前記混合手段に移送する第3の移送手段と、
前記第1の移送手段で移送された前記中間焼成材と前記第3の移送手段で移送された前記汚泥とを前記混合手段で混合した混合物を、セメント焼成系に導入する導入手段
とを備えたことを特徴とするセメントクリンカー焼成装置によって解決される。
【0014】
更には、サスペンションプレヒーター及びキルンを備えたセメントクリンカー焼成装置において、
セメント原料を加熱して得られる生石灰を含む中間焼成材を、前記サスペンションプレヒーターから分取する分取手段と、
加熱手段を有する混合手段と、
前記分取手段により分取された生石灰を含む前記中間焼成材を前記混合手段に移送する第1の移送手段と、
該セメント製造工場に搬入された密閉式コンテナ内の汚泥をタンクに移送する第2の移送手段と、
前記タンク内の汚泥を前記混合手段に移送する第3の移送手段と、
前記第1の移送手段で移送された前記中間焼成材と前記第3の移送手段で移送された前記汚泥とを前記混合手段で混合した混合物を、セメント焼成系に導入する導入手段
とを備えたことを特徴とするセメントクリンカー焼成装置によって解決される。
【0015】
すなわち、例えば下水処理施設で発生する下水汚泥、糞尿処理施設で発生する糞尿汚泥、その他各種の処理施設から発生する有機質含有汚泥と言った汚泥を、そのまま、セメント製造工場におけるキルンに導入するのではなく、汚泥が搬入されたセメント製造工場におけるセメント焼成系のサスペンションプレヒーターから分取されたものであって、セメント原料を加熱して得られる生石灰を含む材(中間焼成材)と混合した粉粒状の混合物を、キルン等のセメント焼成系に導入するようにしたから、汚泥をキルン等に導入する際、ハンドリングの良い処理が可能となり、キルンの安定運転に問題は生じない。
【0016】
特に、セメント原料を加熱して得られる生石灰を含む中間焼成材と混合するから、セメント原料としての均一化を図り易く、セメントクリンカー成分のバラツキへの影響を与え難くなる。
又、汚泥を、そのまま、直接、キルンに投入するのではなく、汚泥を中間焼成材と混合しており、この混合物は粉粒状のものであり、汚泥のような粘稠質なものではない為、キルン内などに投入する場合の取扱性が良い。例えば、キルン等に投入する場合に、汚泥をそのまま投入する場合のような汚泥を分散させる為の噴霧装置を必要としない。
【0017】
しかも、セメント製造工場におけるセメント焼成系のサスペンションプレヒーターから分取されたものであって、セメント原料を加熱して得られる生石灰を含む中間焼成材を用いるから、この中間焼成材は特別なものでは無く、すなわち格別な生石灰を用いるものでは無いから、費用は低廉である。
更には、汚泥を有効活用(処理)しようとする、そのセメント製造工場で中間焼成材は得られるから、わざわざ、格別な生石灰をそのセメント製造工場に移送する必要が無く、この点からも費用は低廉になる。
【0018】
又、汚泥をセメント製造工場内に搬入し、そこで得られる前記中間焼成材と混合するようにしたから、前記中間焼成材を汚泥発生場所に搬送し、汚泥発生場所で汚泥と混合し、この混合物をセメント製造工場に持ち帰る方式に比べても、輸送費用も低廉となる。従って、本発明は、この点からも処理費用が低廉である。更に、汚泥をセメント製造工場内に搬入し、そこで得られる前記中間焼成材と混合する方式の場合、前記中間焼成材を汚泥発生場所に搬送し、汚泥発生場所で汚泥と混合し、この混合物をセメント製造工場に持ち帰る方式に比べて、資材の管理費用も低廉となる。例えば、セメント製造工場Aで得た中間焼成材を汚泥発生場所に搬送し、この汚泥発生場所で汚泥と混合し、この混合物をセメント製造工場Bに持ち帰り、これを投入する場合、セメント製造工場Aの中間焼成材QA とセメント製造工場Bの中間焼成材QB との間に品質の相違がある場合、資材の管理を厳重に行わなければならないが、このような負担が本発明では無い。又、上記混合物を同じセメント製造工場Aに持ち帰ったとしても、その間に時間が長くかかっている場合には、中間焼成材の経時変動などを考慮しなければならないが、本発明ではかかる考慮も不要である。
【0019】
又、有機質汚泥は、一般的に、約3000kcal/kg以上の熱量を持っており、従ってキルンに導入して燃焼させれば、熱量源ともなり、資源エネルギーの節約にもなる。
又、密閉式コンテナ及び密閉式コンテナに接続し、他端が汚泥受入タンクに接続された移送管を用いて汚泥を汚泥受入タンクに搬入するので、汚泥をキルンに投入するまでの系が密閉系となり、周囲に悪臭を撒き散らすことがほぼ皆無である。
【0020】
更に、本発明は、汚泥と中間焼成材との混合物から揮散される悪臭を含むガスを脱硝材として積極的に活用する次のような特長がある。
有機質汚泥は、一般的に、アンモニアやアンモニア態窒素(以下、アンモニア類)を含有する。アンモニア類を含有する汚泥がキルンに導入されると、高温に曝されてアンモニア類が揮発してガス化し、次式にしたがって既にガス中に存在するNOx を還元し、NOx 排出量を低減する効果の有ることが知られている。
【0021】
4NH3 +4NO+O2 →4N2 +6H2 O
8NH3 +6NO2 →7N2 +12H2 O
しかし、単に、汚泥をキルン内に導入すると、揮発するガスの発生場所が一部に限定される為、脱硝反応の効率が低い。
気体−気体間の脱硝反応を効率的に行わせるには、NOx とアンモニア類との接触確率を高める必要があるが、その手段としてアンモニア類を出来るだけ汚泥から抽出分離し、気体状態としてキルン系の最適な場所に導入し、NOx と接触させる方法が有効である。
【0022】
本発明の特徴である汚泥と中間焼成材との混合工程においては、汚泥中の水分と中間焼成材中の生石灰分が反応し、消石灰となる。この水和反応は発熱反応であり、混合物の温度が上昇し、汚泥中に含まれていたアンモニア類がより揮発し易い状態となる。又、必要に応じて加熱装置を付加することにより、アンモニア類の揮発を助長することも出来る。
【0023】
アンモニア類を含む揮発ガスを、配管を通じて、脱硝効率の高いガス温度領域である700℃以上(特に、850℃以上)の部位に直接導入することにより、汚泥に含まれているアンモニア類の脱硝作用を最大限に発揮させることが出来る。
又、上記のような設備構成とすることにより、発生したガス、すなわち悪臭を含むガスはキルン系の高温領域に導入され、アンモニア類はNOx と反応し、アンモニア類以外の悪臭成分も熱分解あるいは酸化され、汚泥に起因する悪臭を系外に排出することは無い。
【0024】
上記特長は、汚泥と中間焼成材との混合割合が、汚泥(固形分)/中間焼成材=0.25〜10(重量比)である場合、より大きな特長が奏される。更に好ましくは、重量比で1以上、更には2.5以上である。又、重量比で6以下、更には5以下である。これは、該混合割合が10を越えるとハンドリング性が悪くなり、0.25未満だと汚泥の処理効率が悪くなる傾向があるからによる。
【0025】
本発明において、混合工程によって混合された混合物の導入部位は、好ましくはキルン、特にその窯尻部である。このキルンの窯尻部は、通常、ドラフトがマイナスであるから、混合物の導入に際して格別な動力は不要である。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の汚泥を用いたセメントの製造方法は、内部に汚泥を入れた密閉式コンテナをセメント製造工場内に搬入する搬入工程と、前記搬入された密閉式コンテナに一方が汚泥受入タンクに接続された移送管の他方を接続する接続工程と、前記接続工程の後、密閉式コンテナ内の汚泥を前記汚泥受入タンク内に前記移送管を介して移送する移送工程と、セメント原料を加熱して得られる生石灰を含む中間焼成材を、該セメント製造工場におけるセメント焼成系のサスペンションプレヒーターから分取する分取工程と、前記分取工程を経て分取された中間焼成材を混合機に移送する移送工程と、前記汚泥受入タンク内の汚泥を前記混合機に移送する移送工程と、前記混合機に移送された前記汚泥と前記中間焼成材とを混合する混合工程と、前記混合工程によって混合された混合物を該セメント製造工場におけるセメント焼成系に導入する導入工程とを有する。そして、上記混合工程における混合機は、特に、加熱されている。特に、汚泥を有効利用することを目的とし、セメントクリンカー焼成工程における燃焼により汚泥の処理がなされるものである。
【0027】
本発明のセメントクリンカー焼成装置は、セメント焼成系のサスペンションプレヒーターから分取されてなり、セメント原料を加熱して得られる生石灰を含む中間焼成材を、該サスペンションプレヒーターが設けられているセメント製造工場に搬入された汚泥に添加、混合し、それをセメント焼成系に導入する為の設備が付設されたものである。より具体的に言うならば、サスペンションプレヒーター及びキルンを備えたセメントクリンカー焼成装置において、セメント原料を加熱して得られる生石灰を含む中間焼成材を、前記サスペンションプレヒーターから分取する分取手段と、前記分取手段で分取された生石灰を含む前記中間焼成材と汚泥とを混合する混合手段と、前記混合手段によって混合された前記中間焼成材と前記汚泥との混合物をセメント焼成系に導入する導入手段とを備えたものである。更に具体的に言うならば、サスペンションプレヒーター及びキルンを備えたセメントクリンカー焼成装置において、セメント原料を加熱して得られる生石灰を含む中間焼成材を、前記サスペンションプレヒーターから分取する分取手段と、前記分取手段により分取された生石灰を含む前記中間焼成材を混合手段に移送する第1の移送手段と、該セメント製造工場に搬入された密閉式コンテナ内の汚泥をタンク内に移送する第2の移送手段と、前記タンク内の汚泥を前記混合手段に移送する第3の移送手段と、前記第1の移送手段で移送された前記中間焼成材と前記第3の移送手段で移送された前記汚泥とを前記混合手段で混合した混合物を、セメント焼成系に導入する導入手段とを備えたものである。
【0028】
汚泥のセメント製造工場内への搬入方法は限定されないが、汚泥を大気に触れさせないような密閉手段を採るのが好ましい。例えば、受入配管に直接接続可能な排出口を有する密閉式コンテナを搭載したダンプカーによる搬入は好ましい。前記中間焼成材をサスペンションプレヒーターから分取する手段も限定されないが、例えば分取ダンパ、サイクロンを介して排気風車の吸引により分取すれば良い。
【0029】
混合工程における汚泥と上記中間焼成材との混合手段は、市販の連続式混合機を用いれば良く、例えばプローシェアミキサー(商品名)が好ましいものとして挙げられる。
搬入汚泥の各汚泥処理装置への移送手段は、圧送ポンプにより移送配管を通じて行えば良い。好ましい圧送ポンプとしては、例えばモーノポンプ(商品名)が挙げられる。
【0030】
混合工程で生成される混合物をキルンに導入する手段は、スクリューコンベア等の機械式移送手段が好ましい。特に、密閉式にしたものが好ましい。
本発明は、更に、汚泥から発生するガス、特に汚泥と中間焼成材とを混合した際に発生するガスを、セメント製造工程における温度が700℃以上(特に、850℃以上)の部位に導入する工程を有する。すなわち、汚泥から発生するガス、特に混合に際して発生するガス(特に、アンモニア類を含有するガス)をセメント製造工程における温度が700℃以上の部位、例えばサスペンションプレヒーター、仮焼炉、或いはキルンにガス導入管を介して導入する。尚、汚泥から発生するアンモニア類を含有するガスの量が調整できるように、例えば混合機等に加熱手段などのアンモニア類を含有するガス発生量調整手段が必要に応じて設けられており、これによってアンモニア等のガス発生量を必要に応じて調整し、必要な箇所に必要量のガスを供給するようにしている。
【0031】
本発明は、汚泥と中間焼成材との混合割合が、汚泥(固形分)/中間焼成材=0.25〜10(特に、1以上、更には2.5以上。6以下、更には5以下。)となるよう調整手段(例えば、汚泥の定量供給手段や中間焼成材の定量供給手段)により調整される。具体的には、例えば前記モーノポンプや前記スクリューコンベアにより移送すれば、移送量を調整しながら定量供給できる。この他、各種フィーダーを介して行っても良い。
【0032】
以下、更に、詳しく説明する。
図1及び図2は、本発明が実施されるセメントクリンカー焼成装置の概略図である。
各図中、1はセメント原料貯蔵場、2は原料乾燥機、3は原料粉砕機、4は原料タンクである。5,6,7,8はサイクロンであり、複数段のサイクロンでセメント焼成系のサスペンションプレヒーターが構成されている。9は仮焼炉である。尚、仮焼炉9が設けられていない場合もある。10はロータリーキルンである。
【0033】
そして、セメント原料(石灰石、粘土、珪石、鉄原料など)Cが原料タンク4から最上段のサイクロン5に投入され、最下段のサイクロン8、そして仮焼炉9を経て、ロータリーキルン10に至る。逆に、ロータリーキルン10の排ガスは、仮焼炉9、サイクロン8,7,6,5に移って行く。そして、セメント原料Cは加熱され、脱炭酸により生石灰が生成する。尚、最下段のサイクロン8における中間焼成材Qの成分の一例を挙げると、SiO2 19.0%,Al2 O3 4.3%,Fe2 O3 2.7%,CaO 60.5%,MgO 1.5%である。
【0034】
上記セメントクリンカー焼成設備、並びに焼成工程は、良く知られているから、これ以上の説明は省略する。
本発明が実施される図2の装置では、セメント原料Cを加熱して得た生石灰を含む材(中間焼成材)Qを、最下段のサイクロン8から分取する為、サイクロン8の下部出口に分取ダンパ20が設けられている。すなわち、分取ダンパ20で中間焼成材Qが分取される。分取された中間焼成材Qは、ブロワ21の力により、同一工場敷地内に設置されている中間焼成材用タンク22に移送される。尚、中間焼成材Qは、分取ダンパ20から中間焼成材用タンク22に直接移送されているが、この間に一時貯溜タンク(図示せず)が設けられていて、分取ダンパ20から一時貯溜タンクを経て中間焼成材用タンク22に移送されるようになっている場合もある。
【0035】
中間焼成材用タンク22には、スクリュー方式、或いはロータリフィーダー方式の定量供給機23が設けられている。そして、定量供給機23によって所定量の中間焼成材Qが混合機24に移送される。尚、ブロワ21によって中間焼成材Qは中間焼成材用タンク22に移送されることから、中間焼成材用タンク22内では中間焼成材Qのうちの小さな微粒子が舞い上がっている。このような微粒子を除塵する為、集塵機25が中間焼成材用タンク22には設けられている。又、脱気チャンバ26が設けられている。
【0036】
一方、該工場敷地内には、汚泥受入タンク27が設けられている。そして、密閉式コンテナ28内に汚泥を積んだトラック29が進入して来た後、汚泥受入タンク27に一端が接続されている汚泥移送用のパイプの他端が密閉式コンテナ28に接続される。そして、ポンプを作動させることによって、密閉式コンテナ28の汚泥Lが汚泥受入タンク27内に移送される。
【0037】
尚、汚泥受入タンク27内に充満したガスは、必要に応じて、サスペンションプレヒーター、仮焼炉、或いはキルンに供給されるようになっている。
汚泥受入タンク27には定量供給機30が設けられており、この定量供給機30の作動によって所定量の汚泥Lが混合機24に移送される。
混合機24は、鋸歯形状のショベル羽根とチョッパーとを具備している。すなわち、鋸歯形状のショベル羽根によって内部に付着した汚泥が掻き取られ、付着・堆積が防止される。又、ショベル羽根とショベル羽根との間に設置された独立駆動型のチョッパーによる3000〜6000rpmの高速回転での剪断作用により、凝集・塊状物の粉砕・混合などが効果的になされる。すなわち、ショベル羽根とチョッパーとの作用により、混合機24内に移送されて来た中間焼成材Qと汚泥Lとの分散・混合が効果的になされる。
【0038】
尚、この中間焼成材Qと汚泥Lとの分散・混合時に発生したガスは、必要に応じてサスペンションプレヒーター、仮焼炉、或いはキルンに供給されるようになっている。又、混合機24内で分散・混合時に発生するガス量を調節できるようにする為、混合機24には加熱手段が設けられている。すなわち、加熱手段によって混合機24内の温度を上昇させると、それに応じてアンモニア系のガス発生量は増大する。従って、サスペンションプレヒーター、仮焼炉、或いはキルンにガス管を介してアンモニア系のガスを多量に供給する場合には、混合機24の加熱手段を作動させ、混合機24内の温度を上昇させれば良い。
【0039】
混合機24により分散・混合された中間焼成材Qと汚泥Lとの混合物Mは、ステンレス製のカバー等で覆われたベルトコンベア等の搬送手段31によりロータリーキルン10の窯尻部11から内部に導入される。すなわち、ロータリーキルン10の窯尻部11にはスクリュー方式の導入手段32が取り付けられており、搬送手段31により導入手段32に搬送された中間焼成材Qと汚泥Lとの混合物Mがロータリーキルン10の窯尻部11から内部に導入される。
【0040】
上記装置を用いてのセメントクリンカー焼成は次のようにして行われる。
図1の装置により、これまでと同様な過程を経てセメントクリンカー焼成が行われる。
ところで、このセメントクリンカー焼成に際して、図2から判る通り、最下段のサイクロン8の下部出口に設けられた分取ダンパ20で中間焼成材Qが分取され、定量供給機23によって所定量の中間焼成材Qが混合機24に移送される。
【0041】
一方、トラック29の密閉式コンテナ28に接続されたパイプを介して密閉式コンテナ28内から汚泥受入タンク27内に汚泥Lが移送されており、この汚泥受入タンク27内の汚泥Lが定量供給機30によって所定量だけ混合機24に移送される。
そして、混合機24において充分な分散・混合がなされ、この中間焼成材Qと汚泥Lとの混合物Mが搬送手段31及び導入手段32等によりロータリーキルン10の窯尻部11から内部に導入され、これが最下段のサイクロン8、仮焼炉9を経て来たセメント原料に追加され、ロータリーキルン10においてこれまでと同様な過程を経てセメントクリンカー焼成が行われる。
【0042】
上記のようにしてセメントクリンカー焼成が行われた場合において、セメントクリンカーの品質安定性について、キルン電流のバラツキで評価した処、有機質汚泥L及び中間焼成材Qが共に導入されることが無い従来方式の場合を基準にした場合、セメントクリンカー生産量100重量部に対して有機質汚泥Lが2重量部(水分80%)と中間焼成材Qが2重量部との混合物Mが導入される本発明の場合は前記従来方式の場合と同程度であった。しかし、セメントクリンカー生産量100重量部に対して有機質汚泥Lのみが2重量部(中間焼成材Qが0重量部)導入された場合には、前記本発明の場合に比べて10%程度揺らいでいた。
【0043】
すなわち、上記した有機質汚泥Lと中間焼成材Qとの混合物をキルンに導入する本発明によれば、品質の安定したセメントが得られる。
又、NOx 発生量を調べた処、上記した有機質汚泥Lと中間焼成材Qとの混合物Mをキルンに導入する本発明は、有機質汚泥L及び中間焼成材Qが共に導入されることが無い従来方式の場合よりもNOx 発生量は25%も少なかった。又、有機質汚泥Lのみが導入された場合に比べても、NOx 発生量は5%程度少なかった。
【0044】
すなわち、上記した有機質汚泥Lと中間焼成材Qとの混合物Mをキルンに導入する本発明は、NOX の発生量を大きく低減できる。
又、中間焼成材Qはセメント製造工場におけるセメント焼成系のサスペンションプレヒーターから分取されたものであるから、このものは低廉であり、本発明の実施費用は安価である。
【0045】
又、わざわざ、格別な生石灰をセメント製造工場に輸送する必要が無く、この点からも費用は低廉になる。
又、汚泥をセメント製造工場内に搬入し、そこで得られる中間焼成材Qと混合するようにしたから、中間焼成材Qを汚泥発生場所に搬送し、汚泥発生場所で汚泥と混合し、この混合物をセメント製造工場に持ち帰る方式に比べて、輸送費用も低廉となる。
【0046】
更に、汚泥をセメント製造工場内に搬入し、そこで得られる中間焼成材Qと混合する方式の場合、中間焼成材Qを汚泥発生場所に搬送し、汚泥発生場所で汚泥と混合し、この混合物をセメント製造工場に持ち帰る方式に比べて、管理費用も低廉である。
かつ、汚泥と中間焼成材との混合物をキルンに投入するようにしたから、汚泥のみの場合のような噴霧装置を必要とせず、かつ、投入のハンドリング性にも優れており、取扱い易い。
【0047】
又、有機質汚泥をキルンに導入して燃焼させれば、熱量源ともなり、資源エネルギーの節約にもなる。
又、汚泥をキルンで焼却するまでの系はほぼ閉鎖系であり、周囲に悪臭を撒き散らすことが無い。
【0048】
【発明の効果のまとめ】
▲1▼ 汚泥が有効に処理される。
▲2▼ 汚泥を用いたにもかかわらず、品質の安定したセメントが得られる。
▲3▼ 取扱性に優れている。
▲4▼ NOx 発生の低減効果が大きい。
▲5▼ 費用が低廉である。
▲6▼ 煩瑣な管理が不要である。
▲7▼ 資源エネルギーの節約にもなる。
▲8▼ 周囲に悪臭を撒き散らすことが無い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が実施されるセメント製造装置の全体概略図
【図2】本発明が実施されるセメント製造装置の要部概略図
【符号の説明】
8 サイクロン(セメント焼成系のサスペンションプレヒーター)
9 仮焼炉
10 ロータリーキルン
11 窯尻部
20 分取ダンパ
22 中間焼成材用タンク
23 定量供給機
24 混合機
27 汚泥受入タンク
28 密閉式コンテナ
29 トラック(ダンプカー)
30 定量供給機
31 搬送手段
32 導入手段
Claims (4)
- 内部に汚泥を入れた密閉式コンテナをセメント製造工場内に搬入する搬入工程と、
前記搬入された密閉式コンテナに一方が汚泥受入タンクに接続された移送管の他方を接続する接続工程と、
前記接続工程の後、密閉式コンテナ内の汚泥を前記汚泥受入タンク内に前記移送管を介して移送する移送工程と、
セメント原料を加熱して得られる生石灰を含む中間焼成材を、該セメント製造工場におけるセメント焼成系のサスペンションプレヒーターから分取する分取工程と、
前記分取工程を経て分取された中間焼成材を混合機に移送する移送工程と、
前記汚泥受入タンク内の汚泥を前記混合機に移送する移送工程と、
前記混合機に移送された前記汚泥と前記中間焼成材とを、汚泥(固形分)/中間焼成材=2.5〜10(重量比)の混合割合で、混合する混合工程と、
前記混合工程で発生したガスを、セメントクリンカー焼成工程における温度が700℃以上の部位に導入する工程と、
前記混合工程によって混合された混合物を該セメント製造工場におけるセメント焼成系に導入する導入工程
とを有することを特徴とする汚泥を用いたセメントの製造方法。 - 内部に汚泥を入れた密閉式コンテナをセメント製造工場内に搬入する搬入工程と、
前記搬入された密閉式コンテナに一方が汚泥受入タンクに接続された移送管の他方を接続する接続工程と、
前記接続工程の後、密閉式コンテナ内の汚泥を前記汚泥受入タンク内に前記移送管を介して移送する移送工程と、
セメント原料を加熱して得られる生石灰を含む中間焼成材を、該セメント製造工場におけるセメント焼成系のサスペンションプレヒーターから分取する分取工程と、
前記分取工程を経て分取された中間焼成材を加熱された混合機に移送する移送工程と、
前記汚泥受入タンク内の汚泥を前記加熱された混合機に移送する移送工程と、
前記加熱された混合機に移送された前記汚泥と前記中間焼成材とを、汚泥(固形分)/中間焼成材=2.5〜10(重量比)の混合割合で、加熱・混合する混合工程と、
前記混合工程で発生したガスを、セメントクリンカー焼成工程における温度が700℃以上の部位に導入する工程と、
前記混合工程によって加熱・混合された混合物を該セメント製造工場におけるセメント焼成系に導入する導入工程
とを有することを特徴とする汚泥を用いたセメントの製造方法。 - 混合工程によって混合された混合物の導入部位がキルンである
ことを特徴とする請求項1又は請求項2の汚泥を用いたセメントの製造方法。 - 汚泥から発生するガスを、セメントクリンカー焼成工程における温度が700℃以上の部位に導入する工程を有する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかの汚泥を用いたセメントの製造方法。
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